(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131505
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置、製造方法およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 7/72 20060101AFI20240920BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20240920BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240920BHJP
B29C 48/06 20190101ALI20240920BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20240920BHJP
B29C 48/86 20190101ALI20240920BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240920BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240920BHJP
C08J 9/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B29B7/72
B29B7/38
B29B9/06
B29C48/06
B29C48/345
B29C48/86
B29C48/92
B29C44/00 G
C08J9/16 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041806
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】合田 高之
【テーマコード(参考)】
4F074
4F201
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA24A
4F074AC02
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA22
4F074CA31
4F201AA11
4F201AB02
4F201AG20
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4F201AR06
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4F201BA01
4F201BA02
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK74
4F201BL11
4F201BL25
4F201BL33
4F201BL43
4F207AA11
4F207AB02
4F207AG20
4F207AP05
4F207AR06
4F207AR16
4F207KA01
4F207KA11
4F207KK12
4F207KK45
4F207KL57
4F207KM05
4F207KM15
4F214AA11
4F214AB02
4F214AG20
4F214UA21
4F214UB01
(57)【要約】
【課題】ダイスの押出孔の詰まりの発生を抑制するとともに、製造されるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の品質を向上させることのできるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置を提供する。
【解決手段】発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物が押し出される複数の押出孔11が径方向中心部を囲むように周方向に配置されたダイス10と、複数の押出孔11から冷却水中に押し出された溶融混練物を切断する切断部20と、ダイス10における複数の押出孔11よりも径方向中心部側に設けられた中心部側ヒータ13と、ダイス10における中心部側ヒータ13よりも径方向中心部側に設けられ、ダイス10の温度を検出する中心部側温度センサ42と、中心部側温度センサ42によって検出された温度に基づいて、中心部側ヒータ13の出力を調整する制御部と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物が押し出される複数の押出孔が径方向中心部を囲むように周方向に配置されたダイスと、
複数の前記押出孔から冷却水中に押し出された溶融混練物を切断する切断部と、
前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向中心部側に設けられた中心部側ヒータと、
前記ダイスにおける前記中心部側ヒータよりも径方向中心部側に設けられ、前記ダイスの温度を検出する中心部側温度センサと、
前記中心部側温度センサによって検出された温度に基づいて、前記中心部側ヒータの出力を調整する制御部と、を備えた
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
【請求項2】
前記中心部側ヒータは、前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向中心部側において周方向に延在している
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
【請求項3】
前記中心部側ヒータは、複数の前記押出孔からの距離が30mm以下となる位置に配置されている
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
【請求項4】
前記中心部側温度センサは、前記中心部側ヒータからの距離が20mm以下となる位置に配置されている
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
【請求項5】
前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向外周部側に設けられた外周部側ヒータを備えた
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
【請求項6】
前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向外周部側に設けられ、前記ダイスの温度を検出する外周部側温度センサを備え、
前記制御部は、前記外周部側温度センサによって検出された温度に基づいて、前記外周部側ヒータの出力を調整する
請求項5に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置を用いた
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法によって製造されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形体を形成する
ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出発泡法を用いたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置、製造方法およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡粒子製造装置としては、発泡剤含有樹脂組成物の溶融混練物が押し出される複数の押出孔が径方向中心部を囲むように周方向に配置されたダイスと、ダイスの外面側において回転自在に設けられ、ダイスの押出孔から冷却水中に押し出された溶融混練物を切断する切断部と、を備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の発泡粒子製造装置は、ダイスにおける溶融混練物が押し出される面が冷却水に接しているため、冷却水によってダイスが冷却されることによって、押出孔を通過する溶融混練物が冷却されて凝固した場合に、押出孔に混練物の詰まりが生じることになる。このため、従来の発泡粒子製造装置は、ヒータによってダイスを加熱することによって押出孔の混練物の詰まりを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発泡粒子製造装置によって製造されるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、品質を向上させるために、ダイスの温度を低くした状態で溶融混練物を押出孔から押し出すことが好ましい。このため、従来の発泡粒子製造装置は、ダイスの押出孔に混練物の詰まりを生じさせることなく、プロピレン系樹脂予備発泡粒子の品質を向上させることが容易ではない。
【0006】
本発明の目的とするところは、ダイスの押出孔の詰まりの発生を抑制するとともに、製造されるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の品質を向上させることのできるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置、製造方法およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ダイスの径方向中心部側の温度を調整することによって、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本開示の態様は、以下のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置、製造方法およびポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
【0009】
[1] 発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物が押し出される複数の押出孔が径方向中心部を囲むように周方向に配置されたダイスと、
複数の前記押出孔から冷却水中に押し出された溶融混練物を切断する切断部と、
前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向中心部側に設けられた中心部側ヒータと、
前記ダイスにおける前記中心部側ヒータよりも径方向中心部側に設けられ、前記ダイスの温度を検出する中心部側温度センサと、
前記中心部側温度センサによって検出された温度に基づいて、前記中心部側ヒータの出力を調整する制御部と、を備えた
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
[2] 前記中心部側ヒータは、前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向中心部側において周方向に延在している
[1]に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
[3] 前記中心部側ヒータは、複数の前記押出孔からの距離が30mm以下となる位置に配置されている
[1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
[4] 前記中心部側温度センサは、前記中心部側ヒータからの距離が20mm以下となる位置に配置されている
[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
[5] 前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向外周部側に設けられた外周部側ヒータを備えた
[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
[6] 前記ダイスにおける複数の前記押出孔よりも径方向外周部側に設けられ、前記ダイスの温度を検出する外周部側温度センサを備え、
前記制御部は、前記外周部側温度センサによって検出された温度に基づいて、前記外周部側ヒータの出力を調整する
[5]に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置。
[7] [1]乃至[6]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置を用いた
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
[8] [7]に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法によって製造されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形体を形成する
ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダイスにおける複数の押出孔の周りの部分の温度を必要な温度に調整することが可能となるので、複数の押出孔のそれぞれの溶融混練物による詰まりを抑制するとともに、製造される予備発泡粒子の品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置の要部平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置の要部断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図3は、本発明の一実施形態を示すものであり、
図1はポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置の要部平面図であり、
図2はポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置の要部断面図であり、
図3はポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置の制御系を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置1は、例えば、直鎖状ポリプロピレン系樹脂に分岐構造を導入することによって得られる改質ポリプロピレン系樹脂を基材とする発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物から予備発泡粒子を製造するものである。改質ポリプロピレン系樹脂としては、分岐構造を有するホモポリプロピレン系樹脂、分岐構造を有するランダムポリプロピレン系樹脂、分岐構造を有するブロックポリプロピレン系樹脂等が考えられる。
【0014】
製造装置1は、
図2に示すように、発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物を押し出す押出機の先端部に設けられたダイス10と、ダイス10の外面側において押し出された溶融混練物を切断する切断部20と、ダイス10および切断部20が配置され、冷却水および予備発泡粒子が流通する流通路30と、を備えている。本実施形態の製造装置1は、所謂アンダーウォータカット式のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造装置である。
【0015】
ダイス10は、
図1および
図2に示すように、金属製の円板状に形成された部材からなる。ダイス10には、溶融混練物が通過する複数の押出孔11が厚さ方向に延在している。複数の押出孔11は、ダイス10の径方向中心部を囲むように周方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態のダイス10は、
図1に示すように、間隔を置いて配置される11個の押出孔11を有している。また、ダイス10の径方向外周部側には、ダイス10の複数の押出孔11よりも外周部側を加熱するための複数の外周部側ヒータ12が設けられている。複数の外周部側ヒータ12は、例えば、それぞれカートリッジヒータからなり、ダイス10の径方向外周部側において周方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態のダイス10は、
図1に示すように、間隔をおいて配置される8個の外周部側ヒータ12を有している。さらに、ダイス10の径方向中央部側には、ダイス10の複数の押出孔11よりも中心部側を加熱するための中心部側ヒータ13が設けられている。中心部側ヒータ13は、例えば、コイルヒータからなり、複数の押出孔11よりも径方向中心部側において周方向に延在し、環状に形成されている。中心部側ヒータ13は、複数の押出孔11からの距離が30mm以下となる位置に配置されている。
【0016】
切断部20は、
図2に示すように、流通路30においてダイス10の径方向中心部と同軸上に回転自在に配置された回転軸21と、回転軸21の先端部に設けられた保持円板22と、保持円板22に保持される複数の切断刃23と、を有している。切断部20の複数の切断刃23は、ダイス10の流通路30側において周方向に並ぶ複数の押出孔11に沿って移動することによって、ダイス10の流通路30側に押し出される溶融混練物を切断する。
【0017】
流通路30は、冷却水および予備発泡粒子の流通が可能な流路断面積を有している。流通路30には、図示しない流入口から流入した冷却水が流通するとともに、ダイス10の複数の押出孔11から押し出されて切断部20によって切断された予備発泡粒子が冷却水と共に流通し、図示しない流出口から流出する。
【0018】
また、製造装置1は、ダイス10の温度を調整するために、外周部側ヒータ12および中心部側ヒータ13のそれぞれの出力を調整する制御部40を有している。
【0019】
制御部40は、CPU、ROM、RAM等を有する。制御部40は、入力側に接続された装置から入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。制御部40の入力側には、ダイス10の複数の押出孔11よりも径方向外周部側の温度を検出する外周部側温度センサ41と、ダイス10の複数の押出孔11よりも径方向中心部側の温度を検出する中心部側温度センサ42と、が接続されている。また、制御部40の出力側には、外周部側ヒータ12および中心部側ヒータ13が接続されている。ここで、中心部側温度センサ42は、環状の中心部側ヒータ13の内周側に配置され、中心部側ヒータ13からの距離が20mmとなる位置に配置されている。
【0020】
以上のように構成された製造装置1において、予備発泡粒子を製造するためには、まず、発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物を、ダイス10の複数の押出孔11のそれぞれから押出機の内部よりも低圧に設定された流通路30に押し出す。複数の押出孔11から押し出された溶融混練物は、流通路30において発泡するとともに、流通路30を流通する冷却水によって冷却され、切断部20の切断刃23によって切断されて予備発泡粒子となり、冷却水と共に流通路30を流通する。
【0021】
このとき、制御部40は、外周部側温度センサ41の検出温度に基づいて、外周部側ヒータ12の出力を調整してダイス10の複数の押出孔11の外周部側の温度を制御するとともに、中心部側温度センサ42の検出温度に基づいて、中心部側ヒータ13の出力を調整してダイス10の複数の押出孔11の中心部側の温度を制御する。
【0022】
これにより、ダイス10の複数の押出孔11の周りの部分の温度が必要な温度に加熱されることになるため、複数の押出孔11のそれぞれの溶融混練物による詰まりが抑制され、製造されるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が必要以上に加熱されることがない。
【0023】
このため、製造装置1を用いることによって、外径寸法にばらつきが小さく、高品質のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造することが可能となる。
【0024】
また、製造装置1によって製造されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、金型内に充填されることで、例えば断熱材等の成形体となる。
【0025】
このように、本実施形態の発泡粒子製造装置によれば、発泡剤含有ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練物が押し出される複数の押出孔11が径方向中心部を囲むように周方向に配置されたダイス10と、複数の押出孔11から冷却水中に押し出された溶融混練物を切断する切断部20と、ダイス10における複数の押出孔11よりも径方向中心部側に設けられた中心部側ヒータ13と、ダイス10における中心部側ヒータ13よりも径方向中心部側に設けられ、ダイス10の温度を検出する中心部側温度センサ42と、中心部側温度センサ42によって検出された温度に基づいて、中心部側ヒータ13の出力を調整する制御部40と、を備えている。
【0026】
これにより、ダイス10における複数の押出孔11の周りの部分の温度を必要な温度に調整することが可能となるので、複数の押出孔11のそれぞれの溶融混練物による詰まりを抑制するとともに、製造される予備発泡粒子の品質を向上させることが可能となる。
【0027】
また、中心部側ヒータ13は、ダイス10における複数の押出孔11よりも径方向中心部側において周方向に延在している、ことが好ましい。
【0028】
これにより、複数の押出孔11のそれぞれと中心部側ヒータ13との距離を同一にすることが可能となるので、ダイス10における複数の押出孔11のそれぞれの周りの部分の温度を均一の温度にすることが可能となる。
【0029】
また、中心部側ヒータ13は、複数の押出孔11からの距離が30mm以下となる位置に配置されている、ことが好ましい。
【0030】
これにより、ダイス10における複数の押出孔11の周りの部分の温度を確実に必要な温度に加熱することが可能となる。
【0031】
また、中心部側温度センサ42は、中心部側ヒータ13からの距離が20mm以下となる位置に配置されている、ことが好ましい。
【0032】
これにより、中心部側ヒータ13から放出される熱を確実に検出することが可能となり、中心部側ヒータ13の出力の調整を確実に行うことが可能となる。
【0033】
また、ダイス10における複数の押出孔11よりも径方向外周部側に設けられた外周部側ヒータ12を備えている、ことが好ましい。
【0034】
これにより、外周部側ヒータ12によってダイス10の外周部側を加熱することが可能となるので、複数の押出孔11の周りの部分を含むダイス10の全体にわたって加熱することが可能となり、複数の押出孔11のそれぞれから安定的に溶融混練物を押し出すことが可能となる。
【0035】
また、ダイス10における複数の押出孔11よりも径方向外周部側に設けられ、ダイス10の温度を検出する外周部側温度センサ41を備え、制御部40は、外周部側温度センサ41によって検出された温度に基づいて、外周部側ヒータ12の出力を調整する、ことが好ましい。
【0036】
これにより、ダイス10における複数の押出孔11よりも外周部側の温度を必要な温度に加熱することが可能となるので、複数の押出孔11のそれぞれの溶融混練物による詰まりをより抑制することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、製造装置1を用いている。
【0038】
これにより、外径寸法の大きさにばらつきの小さい予備発泡粒子を安定的に製造することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態のポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、製造装置1によって製造されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形体を形成する。
【0040】
これにより、外径寸法にばらつきの小さい予備発泡粒子を用いて成形体を形成することによって、例えば、断熱材等の成形体の性能の向上を図ることが可能となる。
【0041】
尚、前記実施形態では、中心部側ヒータ13として、ダイス10の中心部側において周方向に延在する環状のコイルヒータを示したが、これに限られるものではなく、複数のヒータをダイスの中心部側において周方向に間隔をおいて配置してもよい。また、中心部側ヒータとしては、コイルヒータに限られず、カードリッジヒータであってもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、ダイス10の径方向外周部側を加熱するために、ダイス10の径方向外周部側において周方向に間隔をおいて配置された複数の外周部側ヒータ12として、カートリッジヒータを示したが、これに限られるものではない。ダイス10の径方向外周部側を加熱するためには、例えば、ダイスの外周側を周方向にわたって覆うように配置されるバンドヒータを用いてもよい。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0044】
図1乃至
図3に示す製造装置1において、予備発泡粒子を製造し、複数の押出孔11のうち、組成物による詰まりが生じる押出孔11の数を計測する試験を行った結果を表1に示す。表1には、実施例1、比較例1および比較例2についての試験結果を記載している。実施例における製造装置1は、複数の押出孔11のそれぞれから中心部側ヒータ13までの距離が25mmであり、複数の押出孔11のそれぞれから外周部側ヒータ12までの距離が50mmである。
【0045】
≪分岐構造を有するランダムポリプロピレン系樹脂の製造≫
実施例1、比較例1および比較例2においては、以下の材料を使用して溶融混練物を製造した。
〔材料〕
<原料樹脂>
・原料樹脂1:RD265CF(Borouge社製、直鎖状ランダムポリプロピレン系樹脂、融点:152℃、MFR:8g/10分)
・原料樹脂2:S229R(プライムポリマー社製、直鎖状ランダムポリプロピレン系樹脂、融点:144℃、MFR:60g/10分)
<共役ジエン化合物>
・イソプレン:クラレ社製、イソプレンモノマー
<ラジカル重合開始剤>
・t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート:日油社製、パーブチル(登録商標)I
<添加剤>
・タルク:林化成社製、タルカンPK-S
・カーボンブラック
尚、カーボンブラックは、カーボンブラックの濃度が40%のカーボンブラックマスターバッチとして使用した。カーボンブラックマスターバッチは、分岐状ポリプロピレン系樹脂に対して濃度が40%となるようにカーボンブラックを配合し、押出機によって溶融混練し、溶融混練した組成物を水中に押し出してカットすることよって作成した。
【0046】
〔分岐状ポリプロピレン系樹脂の製造〕
上記の材料を用いて以下のように分岐状ポリプロピレン系樹脂を製造した。
【0047】
二軸押出機に対して、まず、原料樹脂1を70kg/hで投入し、次に、原料樹脂1の100重量部に対してラジカル重合開始剤の1.0重合部を投入する。その後、溶融混練された樹脂材料およびラジカル重合開始剤が投入された二軸押出機に対して、樹脂材料の100重量部に対して共役ジエン化合物の0.4重合部を投入し、樹脂材料を含む組成物を調製した。
【0048】
調製した組成物を、シリンダ温度が200℃、スクリューの回転数が230rpmの二軸押出機で溶融混練し、分岐状プロピレン系樹脂を得た。得られた分岐状プロピレン系樹脂を、ダイスから押し出すことによってストランド状に形成し、冷却水によって冷却すると共に切断することによって、ペレット状(円柱形状)に形成した。
【0049】
〔ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造〕
上記の分岐状プロピレン系樹脂を用いて以下のように予備発泡粒子を製造した。
【0050】
まず、分岐状プロピレン系樹脂を55.55重量%、原料樹脂2を40重量%、カーボンブラックマスターバッチを4.25重量%、タルクを0.2重量%、で配合した混合物をドライブレンドすることによって樹脂組成物とした。
【0051】
予備発泡粒子の製造に使用する予備発泡粒子製造装置としては、軸径φ26mmの二軸押出機と、メルトクーラおよびダイスを備えたアンダーウォータカット装置が直列に連結された装置を使用した。
【0052】
上記の樹脂組成物を、予備発泡粒子製造装置の二軸押出機に供給し、200℃で樹脂組成物の押出量が10kg/hrで溶融混練した。また、二軸押出機の途中に設けられた圧入部から発泡剤である炭酸ガスを、樹脂組成物の押出量に対して2.5重量部にて、定量ポンプを用いて供給し、得られた組成物をさらに溶融混練することによって溶融混練物を得た。
【0053】
二軸押出機において得られた溶融混練物を、155℃に設定したメルトクーラを通過させて冷却した。メルトクーラにおいて冷却された溶融混練物を、メルトクーラの先端に設けられたダイス10の0.8mmの内径寸法を有する11個の押出孔11を介して、メルトクーラの内部よりも低圧で、75℃の冷却水が流通する流通路30に押し出して発泡させた。流通路30において発泡した溶融混練物を、ダイス10の先端部に設けられ、1500rpmの回転数で回転する切断部20の6枚の切断刃23によって切断することによって予備発泡粒子を製造した。
【0054】
〔押出孔の詰まり判定方法〕
アンダーウォータカット装置は、冷却水が流通する部分にダイス10が位置しており、押出孔11の詰まりを直接視認することができないため、以下の方法によって押出孔11の詰まりの有無を判定した。
【0055】
上述した樹脂組成物の押出量、押出孔11の数、切断部20の回転数、切断刃23の枚数において、複数の押出孔11の詰まりがない状態で、一の予備発泡粒子の重量は、計算上1.68mgとなる(計算式:押出量÷押出孔数÷切断部回転数÷切断刃数÷60×10^6)。
【0056】
このため、実施例1、比較例1および比較例2のそれぞれにおいて、得られた予備発泡粒子の1つの重量を計測し、1つの予備発泡粒子の重量が1.68mgよりも大きければ、一部の押出孔11に樹脂組成物による詰まりが生じていると判定した。
【0057】
また、実施例1、比較例1および比較例2のそれぞれにおいて得られた予備発泡粒子の1つの重量と、1.68mgと、を比較することによって詰まりが生じていない押出孔11の数を算出した。例えば、1つの予備発泡粒子の重量が3.08mgの場合には、11個の押出孔11のうち、詰まりが生じていない押出孔11の数が6個となる(計算式:1.68÷3.08×11=6)。
【0058】
(実施例1)
実施例1は、前述の製造装置1で説明したように、外周部側ヒータ12、中心部側ヒータ13、外周部側温度センサ41および中心部側温度センサ42を用いて、外周部側温度センサ41の検出温度に基づいて外周部側ヒータ12の出力を調整し、中心部側温度センサ42の検出温度に基づいて中心部側ヒータ13の出力を調整した。
【0059】
(比較例1)
比較例1は、前述の製造装置1における中心部側温度センサ42を用いることなく、外周部側ヒータ12、中心部側ヒータ13および外周部側温度センサ41を用いて、外周部側温度センサ41の検出温度に基づいて、外周部側ヒータ12の出力を調整するとともに、中心部側ヒータ13の出力を調整した。
【0060】
(比較例2)
比較例2は、前述の製造装置1における中心部側ヒータ13および中心部側温度センサ42を用いることなく、外周部側ヒータ12および外周部側温度センサ41を用いて、外周部側温度センサ41の検出温度に基づいて、外周部側ヒータ12の出力を調整した。
【0061】
【0062】
表1に示すように、比較例1では、11個の押出孔11のうち、5個の押出孔11が樹脂組成物による詰まりを生じた。また、比較例2では、11個の押出孔11のうち、10個の押出孔11が樹脂組成物による詰まりを生じた。一方、実施例1では、11個の押出孔11の全てが樹脂組成物による詰まりを生じることがなかった。即ち、本実施形態のように、中心部側ヒータ13および中心部側温度センサ42を有し、中心部側温度センサ42の検出温度に基づいて中心部側ヒータ13の出力を調整することによって、複数の押出孔11の全てにおいて、詰まりが生じることがなく予備発泡粒子を製造することができた。