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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131507
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両用のドア押出装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/622 20150101AFI20240920BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E05F15/622
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041814
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】地代所 清貴
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA08
2E052EA02
(57)【要約】
【課題】車両ドアの幅方向寸法を小さくできる車両用のドア押出装置を提供する。
【解決手段】車両用のドア押出装置30は、電動モータの出力する回転動力によりドア幅方向に平行な軸線を中心として回転するように構成されるホイールギア36と、ホイールギア36に同軸に配置されホイールギア36と一体に回転するように構成されるスピンドルスクリュー37と、スピンドルスクリュー37の回転によって第一位置と一部が筐体31から突出する第二位置とに直線移動するように構成される押圧ナット32とを備え、ホイールギア36は、ドア幅方向の一端側が開口し押圧ナット32の少なくとも一部を収容可能に構成されるカップ状の形状を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して開閉可能な車両ドアに配置される車両用のドア押出装置であって、
アクチュエータが出力する回転動力により、前記車両ドアが閉止状態であるときの車幅方向に略平行な方向である第一方向に延伸する軸線を中心として回転可能な歯車部材と、
前記歯車部材に同軸に配置され前記歯車部材と一体に回転する雄ネジ部材と、
前記ネジ部材と螺合しており、前記ネジ部材の回転により前記第一方向に沿って、前記筐体に収容される第一位置と、前記第一位置よりも車内側に位置し少なくとも一部が前記筐体から前記車内側に突出する第二位置と、に移動可能な雌ネジ部材と、
を備え、
前記歯車部材は、前記雌ネジ部材の少なくとも一部を収容可能なように前記第一方向の前記車内側端が開口するカップ状の構成を備える、
車両用のドア押出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のドア押出装置であって、
歯車部材は、内部に前記雌ネジ部材の少なくとも一部を収容可能な円筒状の部分を備え、
前記歯車部材の前記アクチュエータの回転動力を受ける歯は、前記円筒状の部分の外周面に設けられる、
車両用のドア押出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用のドア押出装置であって、
前記歯車部材は、前記アクチュエータの回転動力により前記第一方向に略直角な軸線を中心として回転するウォームと噛み合う前記歯が設けられるウォームホイール部を備え、
前記ウォームホイール部は、前記歯車部材の前記第一方向の中心よりも前記車内側に偏倚した位置に設けられる、
車両用のドア押出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用のドア押出装置であって、
前記アクチュエータは電動モータであり、
前記ウォームは前記電動モータの回転軸に取付けられる、
車両用のドア押出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用のドア押出装置であって、
前記電動モータの本体は、前記雄ネジ部材の前記車外側端よりも前記車内側に位置している、
車両用のドア押出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用のドア押出装置であって、
前記雌ネジ部材を前記筐体に対して前記第一方向に直線移動可能であるが、前記筐体に対する回転を規制するようにガイドするガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記第一方向の前記車内側端が開口し内部に前記押圧ナットを収容可能な空間が設けられるカップ状の構成を備えるとともに、少なくとも一部が前記歯車部材に収容可能に構成される、
車両用のドア押出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用のドア押出装置であって、
前記雌ネジ部材の前記第一位置は、前記雌ネジ部材の前記車外側の端部が、前記歯車部材の前記車内側端よりも前記車外側に位置する位置である、
車両用のドア押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドア押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ドアには、車両ドアを閉止状態に保持するラッチ状態と車両ドアの開放を許容するアンラッチ状態とに切り替え可能に構成されるドアロック装置が搭載される。そして、ドアが閉止状態にあるときにドアロック装置がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わると、車両ドアは、車体との間に介在するウェザーシールの弾性力によって閉位置から開位置へ向かって移動する(押し出される)。しかしながら、付着した雨水などによってウェザーシールが凍結している場合などには、車両ドアが閉位置から開位置に向かって移動しないことがある。
【0003】
特許文献1には、モータの回転動力によって筐体から突出するように構成されるロッドを備え、車両ドアに配置されるドア押出装置が開示されている。特許文献1に開示されるドア押出装置は、ロッドが筐体から突出する際に車体を押すことによって、その反力により車両ドアを閉位置から開位置へ向かって移動させることができる。このようなドア押出装置によれば、ウェザーシールが凍結している場合であっても、車両ドアを閉位置から開位置へ向かって移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国公開公報US2022/0136308A1
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、車両ドアのドア本体部は、その上部に窓ガラスを収容可能に構成される。このため、ドア押出装置は、窓ガラスおよびその移動軌跡と干渉しないように配置しなければならない。したがって、ドア押出装置をドア本体部の上部に配置する場合には、ドア本体部を構成するドアパネルとドア本体部に収容される窓ガラス(およびその移動軌跡)との間に配置できるよう、ドア押出装置のドア幅方向の寸法の小型化が求められる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ドア幅方向寸法の小型化を図ることができる車両用のドア押出装置を提供することである。
【0007】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用のドア押出装置は、
車体に対して開閉可能な車両ドアに配置される車両用のドア押出装置であって、
アクチュエータが出力する回転動力により、前記車両ドアが閉止状態であるときの車幅方向に略平行な方向である第一方向に延伸する軸線を中心として回転可能な歯車部材と、
前記歯車部材に同軸に配置され前記歯車部材と一体に回転する雄ネジ部材と、
前記雄ネジ部材と螺合しており、前記ネジ部材の回転により前記第一方向に沿って、前記筐体に収容される第一位置と、前記第一位置よりも車内側に位置し少なくとも一部が前記筐体から前記車内側に突出する第二位置と、に移動可能な雌ネジ部材と、
を備え、
前記歯車部材は、前記雌ネジ部材の少なくとも一部を収容可能なように前記第一方向の前記車内側端が開口するカップ状の構成を備える。
なお、「第一方向」は車両ドアの幅方向、または車両ドアの厚さ方向、ということもできる。
【0008】
本発明によれば、歯車部材と雌ネジ部材とが「車両ドアが閉止状態であるときの車両ドアの車幅方向」である第一方向(すなわち、ドア幅方向)に重畳する部分を備えるようにできる(第一方向に直角な方向視において重畳する部分を備えるようにできる)。このため、歯車部材と雌ネジ部材とが第一方向に重畳する部分を備えない構成と比較して、ドア押出装置の第一方向寸法を小さくできる。すなわち、歯車部材が従来の円板状のギアである場合、歯車部材と雌ネジ部材とは第一方向に並び、第一方向に重畳しない。このため、従来構成では、ドア押出装置の第一方向の寸法は、歯車部材の第一方向寸法と雌ネジ部材の第一方向寸法の合算寸法よりも大きくなる。これに対して、本実施形態では、歯車部材と雌ネジ部材とが第一方向に重畳する部分を備えるようにできるため、重畳する部分を備えない構成に比較して、車両用のドア押圧装置の第一方向寸法(ドア幅方向寸法)を小さくできる。
【0009】
歯車部材は、内部に前記雌ネジ部材の少なくとも一部を収容可能な円筒状の部分を備え、前記歯車部材の前記アクチュエータの回転動力を受ける歯は、前記円筒状の部分の外周面に設けられる、という構成であってもよい。
【0010】
そして、前記歯車部材は、前記アクチュエータの回転動力により前記第一方向に略直角な軸線を中心として回転するウォームと噛み合うウォームホイール部を備え、
前記ウォームホイール部は、前記歯車部材の前記第一方向の中心よりも前記車内側に偏倚した位置に設けられる、
という構成であってもよい。
【0011】
このような構成によれば、ウォームを歯車部材の第一方向の車外端よりも車内側に偏倚した位置に配置できる。このため、ウォームが歯車部材の第一方向の車外端よりも車外側に位置する部分を備える構成に比較して、車両用のドア押圧装置の第一方向寸法を小さくできる。
【0012】
前記アクチュエータは電動モータであり、
前記ウォームは前記電動モータの回転軸に取付けられる、
という構成であってもよい。
【0013】
このような構成によれば、アクチュエータである電動モータの回転軸は第一方向に略直角な方向に延伸し、かつ、第一方向に関して歯車部材の第一方向の車外側端より車内側寄りに位置する。このため、このような構成によれば、電動モータの本体が歯車部材の第一方向の車外側端から車外側に突出しないようにできるか、または、突出寸法を小さくできる。したがって、車両用のドア押圧装置の第一方向寸法を小さくできる。
【0014】
前記電動モータの本体は、前記雄ネジ部材の前記車外側端よりも前記車内側に位置している、
という構成であってもよい。
【0015】
このような構成によれば、電動モータの本体が歯車部材の第一方向の車外側端から車外側に突出しないから、車両用のドア押圧装置の第一方向寸法を小さくできる。
【0016】
前記雌ネジ部材を前記筐体に対して前記第一方向に直線移動可能であるが、前記筐体に対する回転を規制するようにガイドするガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記第一方向の前記車内側端が開口し内部に前記押圧ナットを収容可能な空間が設けられるカップ状の構成を備えるとともに、少なくとも一部が前記歯車部材に収容可能に構成される、
という構成であってもよい。
【0017】
そして、この場合には、前記雌ネジ部材の前記第一位置は、前記雌ネジ部材の前記車外側の端部が、前記歯車部材の前記車内側端よりも前記車外側に位置する位置である、
という構成であってもよい。
【0018】
このような構成によれば、歯車部材にガイド部材が収容され、かつ、ガイド部材に雌ネジ部材が収容された状態で、歯車部材と雌ネジ部材とが第一方向に重畳する部分を有するようにできる。したがって、歯車部材と雌ネジ部材とが第一方向に重畳する部分を有さない構成と比較して、ドア押出装置の第一方向の寸法の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、車両ドアの構成を示す模式図である。
図1B図1Bは、車両ドアの構成を示す模式図である。
図2図2は、車両用のドア押出装置の構成を示す分解斜視図である。
図3図3は、車両用のドア押出装置の構成を示す側面図である。
図4図4は、押圧ナット、ガイド、ホイールギア、およびスピンドルスクリューの拡大図である。
図5図5は、車両用のドア押出装置の構成および動作を示す断面図である。
図6図6は、車両用のドア押出装置の構成および動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、車両用のドア押出装置および車両用のドア押出装置の各部材の方向は、車両ドアの各方向を基準とする。各図においては、車両ドアの前側を矢印Frで示し、車両ドアの後側を矢印Rrで示し、車両ドアの上方を矢印Upで示し、車両ドアの下方を矢印Dwで示し、車両ドアの幅方向(左右方向、厚さ方向寸法)の車外側を矢印Outで示し、車両ドアの幅方向の車内側を矢印Inで示す。なお、車両ドアの幅方向を、以下「ドア幅方向」と記すことがある。ドア幅方向は、「車両ドアが閉止状態であるときの車幅方向」である。ドア幅方向に略平行な方向が、本発明の第一方向の例である。また、以下の説明では、車両用のドア押出装置を、単に「ドア押出装置」と記すことがある。
【0021】
(車両ドア)
図1Aは、ドア押出装置30を備える車両ドア11の側面図であり、車外側から見た図である。図1Bは、ドア押出装置30を備える車両ドア11の後端部近傍の断面図であり、図1AのIB-IB矢視断面図である。
【0022】
車両ドア11は、車体10に対して開閉可能に取り付けられる。具体的には、車両ドア11は、その前端部が車体10に対して回転可能に連結されており、前端部を中心として車体10に対して回転する(振り子状に揺動する)ことにより閉位置と開位置とに移動可能である。閉位置は、車両ドア11が車体10に設けられている乗降用の開口部を塞ぐ位置であり、開位置は前記開口部を塞がない位置である。
【0023】
車両ドア11は、その下半部を構成するドア本体部12と、その上半部に設けられるドアサッシュ13とを備える。ドア本体部12は、アウターパネル14、インナーパネル15、およびトリム16を備える。なお、ドア本体部12は、内部(インナーパネル15およびアウターパネル14に囲まれる領域)に窓ガラス17を収容可能に構成される。アウターパネル14は、車両ドア11の車外側面を構成する。インナーパネル15は、アウターパネル14の車内側に位置しており、アウターパネル14に固定される。トリム16は、インナーパネル15の車内側に固定されており、ドア本体部12の車内側面を構成する。
【0024】
車両ドア11のドア本体部12には、ドア押出装置30のほかに、ドアロック装置18およびドアクローザ装置19が配置される。ドアロック装置18は、フルラッチ状態、ハーフラッチ状態、およびアンラッチ状態に切替え可能に構成される装置である。フルラッチ状態は、車両ドア11が全閉位置(閉位置に含まれる位置であり、車両ドア11の可動範囲の一端の位置)に位置するときに車両ドア11を閉止状態に保持する状態(換言すると、閉位置から開位置へ移動しないように車両ドア11の移動を規制する状態)である。ハーフラッチ状態は、車両ドア11が半閉位置(閉位置に含まれる位置であり、全閉位置からわずかに開位置側に移動した位置)に位置するときに車両ドア11を閉止状態に保持する状態である。アンラッチ状態は、車両ドア11の開放(閉位置から開位置への移動)を許容する状態である。
【0025】
ドアクローザ装置19は、ドアロック装置18とワイヤーやロッドなどの連結部材によって連結される。そして、ドアクローザ装置19は、アクチュエータ35の駆動力によって連結部材を引っ張ることにより、ドアロック装置18をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替えるように構成される。なお、ドアロック装置18は、車両ドア11のドア本体部12の内部の後端部近傍に配置される。また、ドアクローザ装置19は、車両ドア11のドア本体部12の内部の後端部近傍であって、ドアロック装置18の下方に配置される。
【0026】
(ドア押出装置)
ドア押出装置30は、図1Aに示すように、ドア本体部12の内部の後端部近傍かつ上端部近傍に配置される。また、ドア押出装置30は、図1Bに示すように、ドア本体部12の内部であって、窓ガラス17の移動軌跡とインナーパネル15との間に配置される。なお、窓ガラス17は、図1Bにおいて紙面に対して略直角な方向に移動する。
【0027】
図2はドア押出装置30の分解斜視図であり、図3はドア押出装置30のドア幅方向の車内側から見た側面図である。図2および図3に示すように、ドア押出装置30は、筐体31と、押圧ナット32と、ガイド部材33と、フレーム34と、アクチュエータ35と、ホイールギア36と、スピンドルスクリュー37と、回路基板38とを備える。
【0028】
筐体31は、ハウジング40、カバー41、および防水カバー42を含む。ハウジング40は、ドア幅方向の車内側が開口するトレイ状(底の浅い箱状、ということもできる)の構成を備える部材である。ハウジング40には、ホイールギア収容部401、スピンドルスクリュー支持部402、およびアクチュエータ収容部403が設けられる。ホイールギア収容部401は、ドア幅方向視において、略円形でドア幅方向の車内側が開口する有底の凹部が設けられる部分であり、後述するホイールギア36のドア幅方向の車外側端部およびその近傍の部分を収容可能に構成される。スピンドルスクリュー支持部402は、ホイールギア収容部401の車内側を向く面(凹部の底面に相当する面)に設けられる。スピンドルスクリュー支持部402は、ドア幅方向視で略円形でドア幅方向の車内側が開口する有底の凹部が設けられる部分であり、後述するスピンドルスクリュー37の被支持軸部374を回転可能に支持できるように構成される(換言すると挿入可能に構成される)。アクチュエータ収容部403は、ドア幅方向の車内側が開口する有底の凹部が設けられる部分であり、アクチュエータ35を収容可能に構成される。
【0029】
カバー41は、ハウジング40のドア幅方向の車内側に取付けられる部材である。カバー41は、ドア幅方向の車外側が開口する有底のトレイ状(底の浅い箱状、ということもできる)の構成を備える部材である。カバー41には、押圧ナット挿通孔411が設けられる。押圧ナット挿通孔411は、ドア幅方向に貫通する貫通孔であり、押圧ナット32を挿通可能に構成される。防水カバー42は、少なくともハウジング40およびカバー41の上面、前面、および後面(すなわち、ハウジング40とカバー41の接合箇所が現れる面のうちの下面を除く面)を覆うように構成される部材である。防水カバー42にも、カバー41と同様に押圧ナット挿通孔421が設けられる。
【0030】
図4は、押圧ナット32、ガイド部材33、ホイールギア36、およびスピンドルスクリュー37の拡大図である。押圧ナット32は、本発明の雌ネジ部材の例である。押圧ナット32は、袋ナット状の部材であり、後述するスピンドルスクリュー37と螺合可能に構成される。具体的には、押圧ナット32は、軸線方向の一端が開口する有底のネジ孔321が設けられた有底の円筒状(カップ状ということもできる)の形状を備える。押圧ナット32の側面(外周面)には、ガイド突起部322が設けられる。ガイド突起部322は、半径方向外側に突出する突起状の構成を備える部分であり、後述するガイド部材33に設けられるガイド溝部431に係合可能に(ガイド溝部431に嵌まり込むことができるように)構成される。
【0031】
ガイド部材33は、押圧ナット32を筐体31に対してドア幅方向に直線往復移動可能であるが、筐体31に対して回転しないように(具体的には、ドア幅方向に平行な軸線回りに回転しないように)ガイドする(支持する、ということもできる)部材である。ガイド部材33は、軸線方向の一端が開口するカップ状の構成(有底の筒状の構成、ということもできる)を備える。具体的には、ガイド部材33は、ガイド筒部43とガイド端板部44とを備える。ガイド筒部43は、内部に空間が形成される略円筒状の部分である。ガイド端板部44は、ガイド筒部43の一方の端部に設けられ軸線方向に直角な方向に延伸する板状の部分である。そして、ガイド筒部43は、押圧ナット32を開口する側の端部(ガイド端板部44とは反対側の端部)から収容可能かつ挿抜自在に構成される。また、ガイド部材33のドア幅方向の車外側寄りの部分(ドア幅方向の車外側端およびその近傍の部分)は、後述するホイールギア36に挿入可能に(換言すると遊挿可能に)構成される。
【0032】
ガイド筒部43の内周面にはガイド溝部431が設けられる。ガイド溝部431は、ガイド筒部43の軸線方向に延伸する溝状の構成を備える部分であり、押圧ナット32のガイド突起部322が係合可能に(ガイド突起部322が入り込むことができるように)構成される。ガイド溝部431に押圧ナット32のガイド突起部322が係合することにより、押圧ナット32は、ガイド部材33に対して軸線方向に直線往復移動可能であるが、ガイド部材33に対して筒状部の軸線回りに回転しないようにガイドされる。
【0033】
ガイド端板部44には、スピンドルスクリュー挿通孔441が設けられる。スピンドルスクリュー挿通孔441は、ガイド端板部44と同軸で軸線方向に貫通する断面略円形の貫通孔であり、後述するスピンドルスクリュー37のガイド挿通部372を挿通可能に(遊挿可能に、ということもできる)に構成される。スピンドルスクリュー挿通孔441は、スピンドルスクリュー37のガイド挿通部372が挿通された状態で、スピンドルスクリュー37のガイド部材33に対する回転を許容するように構成される。
【0034】
フレーム34は、ガイド部材33を筐体31に固定する機能を備える部材である。フレーム34は、例えば金属板からなる。フレーム34は、ガイド部材33をネジ止め可能に構成されるとともに、筐体31に対してネジ止め可能に構成される。
【0035】
アクチュエータ35は、押圧ナット32の往復移動の駆動力源である。アクチュエータ35には、正逆両方向の回転動力を出力可能な電動モータが適用される。電動モータの回転軸351にはウォーム352が取り付けられる。なお、アクチュエータ35である電動モータは、回転軸351の軸線方向寸法が回転軸351の半径方向寸法よりも大きい柱状の形状を備える。
【0036】
ホイールギア36は、本発明の歯車部材の例である。ホイールギア36は、アクチュエータ35が出力する回転動力をスピンドルスクリュー37に伝達する部材である。ホイールギア36は、軸線方向の一端側が開口する有底のカップ状の構成を備える。なお、ホイールギア36は、軸線方向の一端側が開口する有底の円筒状の構成を備える、ということもできる。具体的には、ホイールギア36は、ギア筒部45とギア端板部46とを備える。ギア筒部45は、内部に空間が形成される略円筒状の構成を備える部分である。ギア端板部46は、「カップの底」に相当する部分であり、ギア筒部45の軸線方向の一方の端部に設けられ軸線方向に直角な方向に延伸する板状の構成を備える部分である。
【0037】
ホイールギア36は、ガイド部材33のドア幅方向の車外側寄りの部分(ガイド端板部44が設けられる側の端部およびその近傍の部分)を収容可能に(遊挿可能に、ということもできる)構成されるとともに、ガイド部材33が収容された状態で、ガイド部材33に対して回転できるように構成される。
【0038】
ギア筒部45の外周面には、ウォーム352と噛合可能なウォームホイール部451(すなわち、ギアの歯が配列される部分)が設けられる。なお、ウォームホイール部451はギア筒部45の開口する端部(ギア端板部46が設けられる側とは反対側の端部)側に偏倚した位置に設けられる。具体的には、ウォームホイール部451の歯幅寸法はギア筒部45の軸線方向寸法よりも小さい。そして、ウォームホイール部451の歯幅中心は、ギア筒部45の軸線方向中心よりも開口する端部の側に偏倚している。
【0039】
ギア端板部46には、スピンドルスクリュー係合孔461が設けられる。スピンドルスクリュー係合孔461は、断面非円形で軸線方向(ギア端板部46の板厚方向)に貫通する貫通孔であり、スピンドルスクリュー37のホイールギア係合部373を挿入可能に構成される。そして、スピンドルスクリュー37のホイールギア係合部373がホイールギア36のスピンドルスクリュー係合孔461に入り込んだ状態では、ホイールギア36とスピンドルスクリュー37とは一体に回転する。本実施形態では、スピンドルスクリュー係合孔461には断面非円形の貫通孔(より具体的には長孔)が適用される。
【0040】
スピンドルスクリュー37は、本発明の雄ネジ部材の例であり、アクチュエータ35の回転動力により回転することによってナットを軸線方向に移動させる部材である。スピンドルスクリュー37には、雄ネジ部371、ガイド挿通部372、ホイールギア係合部373、および被支持軸部374が、前記記載の順で一端側から軸線方向に並ぶように設けられる。雄ネジ部371は、外周面にネジ山が設けられる部分であり、押圧ナット32のネジ孔321に螺合可能に構成される。
【0041】
スピンドルスクリュー37のガイド挿通部372は、ガイド部材33のガイド端板部44に設けられるスピンドルスクリュー挿通孔441に挿通可能(挿入可能、ということもできる)に構成される部分であり、断面略円形の円板状に構成される部分である。なお、ガイド挿通部372がスピンドルスクリュー挿通孔441に挿通された状態で、スピンドルスクリュー37はガイド部材33に対して回転可能である。
【0042】
スピンドルスクリュー37のホイールギア係合部373は、ホイールギア36のギア端板部46のスピンドルスクリュー係合孔461に挿通可能(挿入可能ということもできる)に構成される部分であり、軸線方向視においてスピンドルスクリュー係合孔461と略同じまたは略相似の形状を備える部分である。ホイールギア係合部373がスピンドルスクリュー係合孔461に挿通された状態では、スピンドルスクリュー37はホイールギア36に対して回転できず、ホイールギア36と一体に回転する。
【0043】
スピンドルスクリュー37の被支持軸部374は、スピンドルスクリュー37の軸線方向の一方の端部に設けられる部分であり、ハウジング40のスピンドルスクリュー支持部402に挿入可能に構成される。具体的には、スピンドルスクリュー37の被支持軸部374は、断面略円形の部分である。、スピンドルスクリュー37は、被支持軸部374がスピンドルスクリュー支持部402に挿入された状態で、ハウジング40に対して(すなわち筐体31に対して)回転可能である。
【0044】
回路基板38は、ドア押出装置30の外部の制御装置などとアクチュエータ35を含むドア押出装置30に配置される電気機器類とを電気的に接続するように構成される基板である。回路基板38には、ドア押出装置30の外部に配策されるハーネスのコネクタを接続するためのコネクタ部と、所定の配線パターンとを備える。なお、回路基板38の構成は特に限定されるものではない。
【0045】
次に、ドア押出装置30の組付け構造について説明する。図5および図6はドア押出装置30の構成および動作を示す断面図であり、図3のV-V矢視断面図である。スピンドルスクリュー37、ホイールギア36、ガイド部材33、および押圧ナット32は、互いに同軸で、かつ軸線がドア幅方向に略平行な向きで配置される。アクチュエータ35は、回転軸351がドア幅方向に略直角な向き(本実施形態では、回転軸351が前後方向に略平行な向き)で配置される。
【0046】
スピンドルスクリュー37は、ハウジング40のドア幅方向の車内側に、被支持軸部374がドア幅方向の車外側に位置し雄ネジ部371がドア幅方向の車内側に位置する向きで配置される。そして、被支持軸部374がハウジング40のスピンドルスクリュー支持部402に挿入される。これにより、スピンドルスクリュー37のドア幅方向の車外側の端部は、ハウジング40に対して回転可能に支持される。
【0047】
ホイールギア36は、ギア端板部46が設けられる側がドア幅方向の車外側に位置する向きで、ハウジング40のドア幅方向の車内側に配置される。そして、ホイールギア36は、ホイールギア収容部401に収容される。この状態では、ギア端板部46のドア幅方向の車外側の面がハウジング40のホイールギア収容部401のドア幅方向の車内側の面に近接して対向する。なお、ギア端板部46のドア幅方向の車外側の面の少なくとも一部がハウジング40のホイールギア収容部401のドア幅方向の車内側の面に接触してもよい。ホイールギア36およびスピンドルスクリュー37がハウジング40に配置された状態では、スピンドルスクリュー37のホイールギア係合部373がホイールギア36のスピンドルスクリュー係合孔461に入り込んだ状態になる。このため、ホイールギア36が回転すると、スピンドルスクリュー37はホイールギア36と一体に回転する。
【0048】
ガイド部材33は、開口する側がドア幅方向の車内側に位置しスピンドルスクリュー挿通孔441が設けられる側がドア幅方向の車外側に位置する向きで配置される。そして、ガイド部材33は、フレーム34を介して筐体31に固定される。例えば、ガイド部材33がフレーム34にネジにより固定される。そして、ガイド部材33が固定されたフレーム34は、ハウジング40とカバー41とに挟持され、ハウジング40とカバー41とを締結するためのネジによりハウジング40およびカバー41に共締めされる。このため、ガイド部材33は筐体31に対して回転およびドア幅方向の移動ができない。
【0049】
ガイド部材33が配置されると、ガイド部材33のドア幅方向の車外側寄りの部分は、ホイールギア36の内部に収容される。この状態では、スピンドルスクリュー37のガイド挿通部372はガイド部材33のスピンドルスクリュー挿通孔441に挿通され、スピンドルスクリュー37の雄ネジ部371はガイド端板部44からドア幅方向の車内側に突出する(雄ネジ部371がガイド筒部43の内部に位置する)。なお、スピンドルスクリュー37のガイド挿通部372とガイド部材33のスピンドルスクリュー挿通孔441はいずれも断面略円形であるため、スピンドルスクリュー37はガイド部材33に干渉されることなく筐体31に対して回転できる。また、ガイド部材33が配置された状態では、ガイド端板部44のドア幅方向の車外側の面とホイールギア36のギア端板部46のドア幅方向の車内側の面とは、近接して対向する。なお、ガイド端板部44のドア幅方向の車外側の面の少なくとも一部が、ホイールギア36のギア端板部46のドア幅方向の車内側の面に接触してもよい。
【0050】
押圧ナット32は、開口する側(ネジ孔321が露出する側)がドア幅方向の車外側に位置する向きで配置される。押圧ナット32は、少なくとも一部がガイド部材33の内部に収容される。また、ガイド部材33のドア幅方向の車外側寄りの部分はホイールギア36の内部に収容されるので、押圧ナット32は、ドア幅方向に関し、ホイールギア36およびガイド部材33と重畳する部分を備えることになる。すなわち、押圧ナット32は、ドア幅方向に関し、ホイールギア36のドア幅方向の車外側端と車内側端との間に位置する部分を有するとともに、ガイド部材33のドア幅方向の車外側端と車内側端との間に位置する部分を有する。
【0051】
また、押圧ナット32は、ネジ孔321にスピンドルスクリュー37の雄ネジ部371が螺合し、ガイド突起部322がガイド部材33に設けられるガイド溝部431に係合するように配置される。このような構成であると、押圧ナット32は、ガイド部材33によってドア幅方向に略平行な方向に移動可能であるが、筐体31に対する軸線方向周りの回転は規制される。このため、スピンドルスクリュー37が筐体31に対して回転すると、押圧ナット32は筐体31に対して回転することなく、スピンドルスクリュー37の回転方向に応じてドア幅方向の車外側またはドア幅方向の車内側に直線移動する。
【0052】
アクチュエータ35は、回転軸351がドア幅方向に直角な向きで、ウォーム352がホイールギア36のウォームホイール部451と噛み合うように配置される。そして、アクチュエータ35は、ハウジング40に設けられるアクチュエータ収容部403に収容される(嵌め込まれる)。本実施形態では、アクチュエータ35は、ウォーム352がホイールギア36の上側に位置し、回転軸351が前後方向に略平行な向きで配置される。
【0053】
カバー41は、ハウジング40のドア幅方向の車内側に取付けられる。そして、ハウジング40にカバー41が取り付けられた状態で、ハウジング40およびカバー41の上部を覆うように、防水カバー42が取り付けられる。カバー41および防水カバー42が取り付けられた状態で、カバー41および防水カバー42の押圧ナット挿通孔411,421は、押圧ナット32の同軸に位置し、かつ、互いに略同軸に連通する。そして、押圧ナット32のドア幅方向の車内側の端面は、カバー41および防水カバー42の押圧ナット挿通孔411,421を通じて露出する。
【0054】
前記のとおり、ホイールギア36のウォームホイール部451は、ギア筒部45の軸線方向の中心からドア幅方向の車内側に偏倚した位置に設けられる。アクチュエータ35の回転軸351は、ホイールギア36のギア端板部46のドア幅方向の車外側の面よりもドア幅方向の車内側に偏倚した位置(より詳しくは、ホイールギア36の軸線方向中心よりもドア幅方向の車内側に偏倚した位置)に位置する。このため、図5および図6に示すように、アクチュエータ35の本体のドア幅方向の車外側端を、ホイールギア36のギア端板部46のドア幅方向の車外側の面よりもドア幅方向の車内側に位置するようにできる。なお、アクチュエータ35の本体は、本実施形態では、電動モータの本体である。電動モータの本体は、ステータおよびロータが設けられる部分であり、「モータのケース」ということもできる部分である。また、アクチュエータ35の本体のドア幅方向の車内側端は、ガイド部材33のドア幅方向の車内側端よりもドア幅方向の車外側に位置する。すなわち、ドア幅方向に関し、アクチュエータ35は、ホイールギア36のギア端板部46のドア幅方向の車外側の面とガイド部材33のドア幅方向の車内側の面との間に収まるように配置される。
【0055】
次に、ドア押出装置30の動作について説明する。アクチュエータ35が動作すると、アクチュエータ35の回転軸351の回転は、ウォーム352およびホイールギア36を介してスピンドルスクリュー37に伝達される。押圧ナット32はスピンドルスクリュー37の雄ネジ部371と螺合しており、ガイド部材33によって軸線方向に直線移動可能であるが回転しないようにガイドされる。このため、押圧ナット32は、スピンドルスクリュー37の回転によって、軸線方向に直線移動する。
【0056】
押圧ナット32は、筐体31に対してドア幅方向に移動することにより、第一位置(図5参照)と第二位置(図6参照)と、に移動可能に構成される。第一位置は、移動可能な範囲のドア幅方向の車外側端の位置であり、押圧ナット32の全体が筐体31に収容される位置である。第二位置は、移動可能な範囲のドア幅方向の車内側端の位置であり、押圧ナット32の一部(ドア幅方向の車内側寄りの部分)が筐体31の押圧ナット挿通孔411,421からドア幅方向の車内側に突出する位置である。
【0057】
車両ドア11が閉止状態である間(換言すると、ドア押出装置30が動作していない間)は、押圧ナット32は図5に示す第一位置に保持される。そして、ドアロック装置がアンラッチ状態に切り替えられ、且つ車両ドア11が凍結等によって開放できないと判断される場合に、ドア押出装置30が動作する。ドア押出装置30が動作すると、アクチュエータ35の回転動力により、押圧ナット32は、ドア幅方向の車内側寄りの部分が筐体31の押圧ナット挿通孔411,421から突出することにより、第一位置から第二位置に向かって移動する。その際に、押圧ナット32が車体10の所定の部位(例えば、ピラーの車幅方向の車外側の面)に当接して車体10を押すため、その反力によって車両ドア11は閉位置からわずかに(具体的には、押圧ナット32の移動量に応じた距離を)開位置に向かって移動する。これにより、車両ドア11が凍結している場合であっても、車両ドア11を開放することができる。その後、アクチュエータ35の駆動力によって、押圧ナット32は第二位置から第一位置に戻る。
【0058】
本実施形態によれば、ホイールギア36がカップ状の構成を有し、その内部に押圧ナット32のドア幅方向の車外側寄りの一部が収容される。このような構成によれば、ホイールギア36と押圧ナット32とがドア幅方向に重畳する部分を備える(ドア幅方向に直角な方向視において重畳する部分を備える)。より具体的には、押圧ナット32の少なくとも一部が、ドア幅方向に関して、ホイールギア36のドア幅方向の車外側端と車内側端との間に位置する。このため、ホイールギア36と押圧ナット32とがドア幅方向に重畳する部分を備えない構成と比較して、ドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくできる。
【0059】
すなわち、ホイールギア36が単純な円板状の部材である場合、ホイールギア36と押圧ナット32とがドア幅方向に並び、ドア幅方向に重畳しないため、ドア押出装置30のドア幅方向寸法は、押圧ナット32のドア幅方向寸法とホイールギア36のドア幅方向寸法の合算寸法よりも大きくなる。これに対して、本実施形態では、ホイールギア36と押圧ナット32とがドア幅方向に重畳する部分を備えるため、重畳する部分を備えない構成に比較して、ドア幅方向の寸法を小さくできる。
【0060】
また、ホイールギア36の開口する側の端部(すなわち、ドア幅方向の車内側端)に偏倚した位置にウォームホイール部451が設けられ、当該ウォームホイール部451はアクチュエータ35である電動モータの回転軸351に設けられたウォーム352と噛み合っている。このため、アクチュエータ35の回転軸351はドア幅方向に直角な方向に延伸し、かつ、ドア幅方向に関してホイールギア36のドア幅方向の車内側端近傍に位置する。このような構成によれば、ホイールギア36のドア幅方向の車外側の端部に歯が設けられる構成(または、ホイールギア36が略円板状の構成を備え、押圧ナット32のドア幅方向の車外側に隣接して儲けれる構成)に比較して、ウォーム352をドア幅方向の車内側(筐体31のドア幅方向略中心)に配置できる。このため、ウォーム352がホイールギア36のギア端板部46のドア幅方向の車外側の面から車外側に突出しないようにできる(または、車外側に突出する部分の寸法を小さくできる)。したがって、ドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくできる。
【0061】
また、本実施形態では、アクチュエータ35の本体は、ドア幅方向に関し、ホイールギア36のドア幅方向の車外側端とガイド部材33のドア幅方向の車内側端との間に位置する。換言すると、アクチュエータ35の本体は、ドア幅方向に関し、ホイールギア36のドア幅方向の車外側端よりもドア幅方向の車外側に突出しておらず、かつ、ガイド部材33のドア幅方向の車内側端よりもドア幅方向の車内側に突出してない。このような構成によれば、ハウジング40に設けられるアクチュエータ収容部403をホイールギア収容部401よりもドア幅方向の車内側に設けることができる(換言すると、アクチュエータ収容部403をホイールギア収容部401よりもドア幅方向の車外側に突出させなくてもよい)から、ドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくできる。
【0062】
また、本実施形態では、ガイド部材33がカップ状の構成を備え、内部に押圧ナット32の先端部(一部)が収容可能に構成される。さらに、ホイールギア36もカップ状の構成を備え、内部にガイド部材33が収容される。このような構成であると、ドア押出装置30が動作していない間は、押圧ナット32のドア幅方向の車外側寄りの少なくとも一部が、ホイールギア36の内部空間に収容される。すなわち、ドア幅方向に関して押圧ナット32とホイールギア36とが、ドア幅方向に関して互いに重畳する部分を備える。このため、ドア幅方向に関して押圧ナット32とホイールギア36とが互いに重畳する部分を備えない構成に比較して、ドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくできる。
【0063】
そして、ドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくできるから、ドア押出装置30をドア本体部12の上部に配置することが容易になる。前記のとおり、ドアロック装置18およびドアロック装置18を駆動するドアクローザ装置19を備える車両ドア11においては、ドアロック装置18がドア本体部12の後端部近傍に配置され、ドアクローザ装置19がドアロック装置18の下方であってドア本体部12の後端部近傍且つ下端部近傍に配置される。このような構成であると、ドア本体部12の下端部近傍にはドア押出装置30を配置するスペースを確保することが困難であるため、ドア押出装置30を車両ドア11のドア本体部12の後端部かつ上端部近傍に配置しなければならない。しかしながら、ドア本体部12の上端部寄りの部分は窓ガラス17が収容されるため、ドア押出装置30を、窓ガラス17と干渉しないように、窓ガラス17の移動軌跡から外れた位置に配置しなければならない。具体的には、ドア押出装置30を窓ガラス17(窓ガラス17の移動軌跡)とインナーパネル15との間に配置しなければならない。このため、ドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくしなければならない。
【0064】
本実施形態では、前記のようにドア押出装置30のドア幅方向寸法を小さくできるから、車両ドア11のドア本体部12の上部(より具体的には、ドア幅方向視においてドア本体部12に収容された窓ガラス17と重畳する位置)に配置できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
例えば、前記実施形態では、押圧ナット32にガイド突起部322が設けられ、ガイド部材33にガイド溝部431が設けられる構成を示したが、このような構成に限定されない。例えば、押圧ナット32の外周面(側面)に軸線方向に延伸するガイド溝部が設けられ、ガイド部材33の筒状部の内周面にガイド突起部が設けられる構成であってもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、電動モータの回転軸351にウォーム352が取り付けられ、ホイールギア36がこのウォーム352と噛合している構成を示したが、このような構成に限定されない。例えば、電動モータとホイールギア36との間に、電動モータの回転動力をホイールギア36に伝達するように構成される他の歯車または歯車列などが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…車体、11…車両ドア、30…ドア押出装置、31…ドア押出装置の筐体、32…押圧ナット、33…ガイド、35…アクチュエータ、36…ホイールギア、37…スピンドルスクリュー、451…ウォームホイール部、351…アクチュエータの回転軸、352…ウォーム
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6