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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131516
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】調光装置、及び調光方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20240920BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240920BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
G02F1/133 520
H02M7/48 E
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041832
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 勇介
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
5H770
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088HA06
2H088HA07
2H193ZB51
2H193ZF09
2H193ZJ11
2H193ZJ20
2H193ZQ07
2H193ZQ13
2H193ZR06
2H193ZR18
5H770BA07
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA41
5H770EA01
(57)【要約】
【課題】コストや体格の増加を抑え、ノイズの発生を抑制できる調光装置を提供する。
【解決手段】調光部材2の調光率を制御する調光装置1は、直流電圧を、所定の周期と振幅を要する交流電圧に変換するDC/ACインバータ30と、DC/ACインバータ30を開閉制御信号に基づいて駆動するインバータ駆動部35と、を備え、インバータ駆動部35は、DC/ACインバータ30が有するスイッチング素子の開閉状態を制御する開閉指令値を生成する指令値生成部37を有し、指令値生成部37は、正弦波からなる基本波に、複数の基本波の高調波成分を重畳することにより、開閉制御信号におけるピーク値を含むピーク領域とボトム値を含むボトム領域の夫々が、低曲率円弧状部と、当該低曲率円弧状部の両端が低曲率円弧状部の曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部とを有するように開閉指令値を生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光部材の調光率を制御する調光装置であって、
直流電圧を、所定の周期と振幅を要する交流電圧に変換するDC/ACインバータと、
前記DC/ACインバータを開閉制御信号に基づいて駆動するインバータ駆動部と、を備え、
前記インバータ駆動部は、前記DC/ACインバータが有するスイッチング素子の開閉状態を制御する開閉指令値を生成する指令値生成部を有し、
前記指令値生成部は、正弦波からなる基本波に複数の前記基本波の高調波成分を重畳することにより、前記開閉制御信号におけるピーク値を含むピーク領域とボトム値を含むボトム領域との夫々が、低曲率円弧状部と、その両端が前記低曲率円弧状部の曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部とを有するように前記開閉指令値を生成する調光装置。
【請求項2】
前記高調波成分は、前記基本波に対して3倍の周波数である第3次高調波成分及び前記基本波に対して5倍の周波数である第5次高調波成分である請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記指令値生成部は、前記開閉制御信号の振幅値が、前記基本波の波高値より小さく、且つ、前記調光部材の透過率が所定値以上となる期間が広がるように前記開閉指令値を生成する請求項1又は2に記載の調光装置。
【請求項4】
調光部材の調光率の制御をコンピュータが行う調光方法であって、
DC/ACインバータが開閉制御信号に基づいて駆動して、直流電圧を、所定の周期とで振幅を要する交流電圧に変換する変換ステップと、
前記DC/ACインバータを駆動する駆動ステップと、を備え、
前記駆動ステップは、前記DC/ACインバータが有するスイッチング素子の開閉状態を制御する開閉指令値を生成する指令値生成ステップを有し、
前記指令値生成ステップは、正弦波からなる基本波に複数の前記基本波の高調波成分を重畳することにより、前記開閉制御信号におけるピーク値を含むピーク領域とボトム値を含むボトム領域との夫々が、低曲率円弧状部と、その両端が前記低曲率円弧状部の曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部とを有するように前記開閉指令値を生成する調光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光部材の調光率を制御する調光装置、及びそのような調光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光が入射される部分における光の透過率を制御する技術が利用されてきた。このような技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、液晶調光装置について記載されている。この液晶調光装置は、矩形波や台形波状の信号に基づいて、液晶調光素子を駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-72895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
矩形波は、波形の立ち上がりが急峻である。また、矩形波や台形波は、正弦波に多くの高次高調波成分が重畳されて構成されるため、高調波ノイズの発生源となってしまい、調光部材の商品性が低下する。また、このようなノイズを低減するには、ノイズフィルタを設けることが考えられるが、コストや体格の増加要因となる。
【0006】
そこで、コストや体格の増加をすることなく、ノイズの発生を抑制できる調光装置、及びそのような調光方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調光装置の特徴構成は、調光部材の調光率を制御する調光装置であって、直流電圧を、所定の周期と振幅を要する交流電圧に変換するDC/ACインバータと、前記DC/ACインバータを開閉制御信号に基づいて駆動するインバータ駆動部と、を備え、前記インバータ駆動部は、前記DC/ACインバータが有するスイッチング素子の開閉状態を制御する開閉指令値を生成する指令値生成部を有し、前記指令値生成部は、正弦波からなる基本波に複数の前記基本波の高調波成分を重畳することにより、前記開閉制御信号におけるピーク値を含むピーク領域とボトム値を含むボトム領域との夫々が、低曲率円弧状部と、その両端が前記低曲率円弧状部の曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部とを有するように前記開閉指令値を生成する点にある。
【0008】
このような特徴を有する構成で、例えば矩形波のピーク値やボトム値におけるエッジが円弧状である開閉制御信号や、台形波のピーク値やボトム値におけるエッジが円弧状である開閉制御信号を生成して、DC/ACインバータを駆動する。その結果、透過率が一定値以上となる領域を拡げることが可能となるだけでなく、波形の急峻な立ち上がりを低減してノイズの発生を抑制できる。したがって、ノイズフィルタを設けることなく、ノイズの発生を抑制することができるので、コストや体格の増加をすることなく、ノイズの発生を抑制できる調光装置を実現することが可能となる。
【0009】
また、前記高調波成分は、前記基本波に対して3倍の周波数である第3次高調波成分及び前記基本波に対して5倍の周波数である第5次高調波成分であると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、基本波に重畳する第3次高調波成分及び第5次高調波成分の夫々の振幅を調整することで、開閉制御信号を、急峻な電圧変動のない滑らかな波形とすることができる。したがって、調光素子を調光した場合に、ちらつきがない良好な調光品位を実現することが可能となる。また、第3次高調波成分及び第5次高調波成分を基本波に重畳することで、開閉制御信号のボトム領域とピーク領域との間において、勾配を有するような開閉制御信号とすることができる。
【0011】
また、前記指令値生成部は、前記開閉制御信号の振幅値が、前記基本波の波高値より小さく、且つ、前記調光部材の透過率が所定値以上となる期間が広がるように前記開閉指令値を生成すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、例えば正弦波のような開閉制御信号により駆動する場合に比べて、波高値を抑えることができる。したがって、AC/DCインバータが有するスイッチング素子に印加される電圧値を抑制(低減)できるので、正弦波のような開閉制御信号により駆動する場合に比べて、耐電圧の低い安価なスイッチング素子を利用することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る調光方法の特徴構成は、調光部材の調光率の制御をコンピュータが行う調光方法であって、DC/ACインバータが開閉制御信号に基づいて駆動して、直流電圧を、所定の周期とで振幅を要する交流電圧に変換する変換ステップと、前記DC/ACインバータを駆動する駆動ステップと、を備え、前記駆動ステップは、前記DC/ACインバータが有するスイッチング素子の開閉状態を制御する開閉指令値を生成する指令値生成ステップを有し、前記指令値生成ステップは、正弦波からなる基本波に複数の前記基本波の高調波成分を重畳することにより、前記開閉制御信号におけるピーク値を含むピーク領域とボトム値を含むボトム領域との夫々が、低曲率円弧状部と、その両端が前記低曲率円弧状部の曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部とを有するように前記開閉指令値を生成する点にある。
【0014】
このような特徴を有する構成でも、例えば矩形波のピーク値やボトム値におけるエッジが円弧状である開閉制御信号や、台形波のピーク値やボトム値におけるエッジが円弧状である開閉制御信号を生成して、DC/ACインバータを駆動することにより、透過率が一定値以上となる領域を拡げることが可能となるだけでなく、波形の急峻な立ち上がりを低減してノイズの発生を抑制できる。したがって、ノイズフィルタを設けることなく、ノイズの発生を抑制することができるので、コストや体格の増加をすることなく、ノイズの発生を抑制できる調光方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】調光部材が備えられる車両を示す図である。
図2】調光装置の構成を模式的に示す図である。
図3】正弦波、第3次高調波成分、及び第5次高調波成分に基づく開閉制御信号を示す図である。
図4】開閉制御信号の説明図である。
図5】正弦波による調光と、開閉制御信号による調光との差異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る調光装置は、調光部材の調光率を制御することができるように構成される。以下、本実施形態の調光装置1について説明する。
【0017】
図1には、調光装置1により調光率が変更可能である調光部材2を備えた車両3が示される。本実施形態では、車両3の屋根3Aに設けられるサンルーフに調光部材2が備えられている。調光部材2は、印加する交流電圧の振幅値に応じて全光線透過率、拡散光線透過率、平行線透過率、これらから算出される曇り率といった光学的特性を制御可能な、例えば高分子分散型液晶(PDLC:polymer dispersed liquid crystal)を用いることが可能である。調光装置1は、このような調光部材2の調光率を変更して、車内に照射される透過光の拡散量を調整できるように構成される。ここで調光率とは、光の拡散度合いを調節する割合であって、例えば調光率が大きいと調光部材2を直進する平行線透過率が大きくなる為に透明になり、反対に透過率が小さいと調光部材2を直進する平行線透過率が少なくなる為に濁度が上がり不透明になる。したがって、調光率と平行線透過率とは、車両3の車内に照射される透過光の拡散量を調節する観点では、同じことを意味するものとする。なお、調光装置1は、調光部材2の全面に亘って調光率を変更するように構成してもよいし、所定のサイズに区分けされた部分毎に調光率を変更するように構成してもよい。
【0018】
図2は、調光装置1の構成を模式的に示したブロック図である。図2に示されるように、本実施形態の調光装置1は、調光制御部10と、変圧回路部20と、変圧制御部25と、DC/ACインバータ30と、インバータ駆動部35とを備えて構成され、各機能部は、調光部材2の調光率を変更するために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。なお、図2には、バッテリ5、及び車体制御部6も示される。
【0019】
変圧回路部20は、バッテリ5の出力電圧を、所定の電圧値の直流電圧に変換して出力する。バッテリ5とは、車両3に搭載されるバッテリである。このため、バッテリ5の出力電圧とは、バッテリ5から出力される直流電圧が相当する。ここで、調光装置1により行われる調光部材2の調光率の変更には、電圧振幅値が大きい交流電圧(例えば、100V以上の振幅)が必要となる。変圧回路部20は、このような電圧振幅値に応じた電圧値の直流電圧を生成して、後述するDC/ACインバータ30に出力する。
【0020】
変圧回路部20は、バッテリ5から出力される電圧の電圧値が、DC/ACインバータ30に出力すべき直流電圧の電圧値よりも低い場合には、昇圧用DC/DCコンバータを用いるとよい。また、バッテリ5から出力される電圧の電圧値が、DC/ACインバータ30に出力すべき直流電圧の電圧値よりも高い場合には、降圧用DC/DCコンバータを用いるとよい。更に、バッテリ5から出力される電圧の電圧値が、DC/ACインバータ30に出力すべき直流電圧の電圧値と同程度であれば、昇降圧用DC/DCコンバータを用いてもよいし、DC/DCコンバータを用いなくてもよい。また、上述したように、変圧回路部20に印加される電圧は大きいため、変圧回路部20は、1次側と2次側とが絶縁されている絶縁型のコンバータを利用すると好適である。
【0021】
変圧制御部25は、変圧回路部20を駆動する。変圧制御部25は、例えば変圧回路部20が有するスイッチング素子をPWM制御により駆動して、変圧回路部20の出力電圧が所期の電圧値になるように制御する。したがって、変圧制御部25は、変圧回路部20の出力電圧をモニタし、フィードバック制御により出力電圧が所期の電圧値になるように制御するとよい。
【0022】
ここで、本例では、車両3のユーザからの動作指示に基づく動作指令が車体制御部6から調光制御部10に伝達される。この動作指令には、例えば調光部材2の変更後の調光率を示す情報が含まれる。調光制御部10は、この動作指令に含まれる調光率に応じて、調光部材2への入力電圧振幅を算定し、直流電圧指令として変圧制御部25に指示する。変圧制御部25は、調光制御部10からの直流電圧指令に基づいて、変圧回路部20を制御する。
【0023】
DC/ACインバータ30は、直流電圧を、所定の周期と振幅を要する交流電圧に変換する。直流電圧とは、上述した変圧回路部20により生成された直流電圧である。DC/ACインバータ30は、2本の電源ラインの間に亘って、並列に接続された2本のレグ部が設けられ、2本のレグ部の夫々に、直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子とを有する。このように計4つのスイッチング素子から構成されるいわゆるフルブリッジ方式のDC/ACインバータ30から、交流電圧として、変圧回路部20の出力電圧を正負両振幅とする、例えば周波数が数十Hzの調光部材2を調光する調光信号が出力される。
【0024】
インバータ駆動部35は、DC/ACインバータ30を開閉制御信号に基づいて駆動する。開閉制御信号とは、調光部材2における所期の調光率に応じたDUTY比のPWM制御信号に相当する。
【0025】
インバータ駆動部35は、DC/ACインバータ30が有するスイッチング素子の個々の開閉状態を制御する開閉指令値を生成する指令値生成部37を有している。DC/ACインバータ30が有するスイッチング素子とは、上述したDC/ACインバータ30に設けられる2本のレグ部の夫々が有する、2組のハイサイドのスイッチング素子及びローサイドのスイッチング素子である。スイッチング素子の開閉状態とは、スイッチング素子の開状態と閉状態とが相当する。このような開閉状態を制御する指令値が開閉指令値に相当する。開閉指令値を生成するとは、開閉指令値を算定することを意味する。したがって、指令値生成部37は、DC/ACインバータ30に設けられる2本のレグ部の夫々が有する、2組のハイサイドのスイッチング素子及びローサイドのスイッチング素子の個々の開閉状態を制御する指令値が開閉指令値を算定する。インバータ駆動部35は、指令値生成部37により算定された開閉指令値に基づいて、開閉制御信号を生成し、DC/ACインバータ30が有する個々のスイッチング素子の開閉状態を制御する。
【0026】
ここで、本例では、上述したように、調光制御部10は、車体制御部6から伝達される動作指令に含まれる調光率に応じて、調光部材2に通電する時間を算定し、通電指令としてインバータ駆動部35に指示する。指令値生成部37は、調光制御部10からの通電指令に基づいて、開閉指令値を算定する。
【0027】
指令値生成部37は、正弦波からなる基本波に複数の基本波の高調波成分を重畳することにより、開閉制御信号におけるピーク値PVを含むピーク領域PRとボトム値BVを含むボトム領域BRとの夫々が、所定の曲率半径からなる低曲率円弧状部LLと、当該低曲率円弧状部LLの両端が低曲率円弧状部LLの曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部RLとを有するように開閉指令値を生成する(図4参照)。正弦波からなる基本波とは、指令値生成部37が生成する開閉制御信号の元となる波形である。この正弦波をf1(θ)とし、最大値をXとすると、f1(θ)は以下で示される。
【0028】
【数1】
ここで、Aは所定の係数である。
【0029】
複数の基本波の高調波成分とは、f1(θ)の第n次高調波成分(ただし、nは整数)が相当する。本実施形態では、高調波成分は、基本波に対して3倍の周波数である第3次高調波成分及び基本波に対して5倍の周波数である第5次高調波成分が利用される。第3次高調波成分をf3(θ)とし、第5次高調波成分をf5(θ)とすると、f3(θ)及びf5(θ)は、夫々、以下で示される。
【0030】
【数2】
【数3】
ここで、B及びCは所定の係数である。
【0031】
図3の(A)には、(1)式で示されるf1(θ)の波形が示される。また、図3の(B)には、(2)式で示されるf3(θ)の波形が示される。また、図3の(C)には、(3)式で示されるf5(θ)の波形が示される。指令値生成部37は、開閉制御信号が、図3の(A)の波形に、図3の(B)の波形及び図3の(C)の波形を重畳した波形となるような開閉指令値を生成する。
【0032】
ここで、図4には、開閉指令値により生成される開閉制御信号が示される。上述したピーク値PVを含むピーク領域PRには、低曲率円弧状部(「低曲率円弧状部LL」の一例)PLLと、第1ピーク側円弧状部(「大曲率円弧状部RL」の一例)PRL1と、第2ピーク側円弧状部(「大曲率円弧状部RL」の一例)PRL2とが含まれる。低曲率円弧状部PLLは、ピーク値PVが凡そ一定となる部分である。第1ピーク側円弧状部PRL1は、ピーク側直線状部PLLにおける一方の端部に繋がり、円弧状となる部分である。第2ピーク側円弧状部PRL2は、ピーク側直線状部PLLにおける他方の端部に繋がり、円弧状となる部分である。
【0033】
また、ボトム値BVを含むボトム領域BRには、低曲率円弧状部(「低曲率円弧状部LL」の一例)BLLと、第1ボトム側円弧状部(「大曲率円弧状部RL」の一例)BRL1と、第2ボトム側円弧状部(「大曲率円弧状部RL」の一例)BRL2とが含まれる。低曲率円弧状部BLLは、ボトム値BVが凡そ一定となる部分である。第1ボトム側円弧状部BRL1は、低曲率円弧状部BLLにおける一方の端部に繋がり、円弧状となる部分である。第2ボトム側円弧状部BRL2は、低曲率円弧状部BLLにおける他方の端部に繋がり、円弧状となる部分である。
【0034】
ここで、上述したように、大曲率円弧状部RLは、低曲率円弧状部LLの曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となるように構成される。具体的には、図4に示されるように、角度θを15度毎に区切った場合における、大曲率円弧状部RLの中央部に対する前後1点ずつを含む合計3点を通る円の曲率半径が、低曲率円弧状部LLの中央部に対する前後1点ずつを含む合計3点を通る円の曲率半径よりも小さく構成される。
【0035】
具体的には、15度、30度、及び45度の3点を通る円の曲率半径と、135度、150度、及び165度の3点を通る円の曲率半径と、195度、210度、及び225度の3点を通る円の曲率半径と、315度、330度、及び345度の3点を通る円の曲率半径とが、夫々、75度、90度、及び105度の3点を通る円の曲率半径や、255度、270度、及び285度の3点を通る円の曲率半径よりも小さく構成される。例えば、大曲率円弧状部RLの曲率半径が、低曲率円弧状部LLの曲率半径の1/30以下となるように(30倍以上の差となるように)設定すると好適である。
【0036】
指令値生成部37は、開閉制御信号が、図3の(A)の基本波と、図3の(B)の第3次高調波成分と、図3の(C)の第5次高調波成分とに基づいて、図3の(D)に示されるような波形となるように、開閉指令値を生成する。
【0037】
また、指令値生成部37は、開閉制御信号の振幅値が、基本波の波高値より小さく、且つ、調光部材2の透過率が所定値以上となる期間が広がるように開閉指令値を生成する。すなわち、図3の(A)に示されるように、基本波の波高値はXであるが、指令値生成部37は、図3の(D)に示されるように、開閉制御信号の波高値が少なくともXより小さくなるように、(1)式のA、(2)式のB、及び(3)式のCを設定する。指令値生成部37により生成された開閉指令値を、f(θ)とすると、f(θ)は以下で示される。
【0038】
【数4】
【0039】
また、指令値生成部37は、開閉制御信号の実効値が、基本波の実効値と同程度になるように開閉指令値を生成する。すなわち、開閉制御信号の実効値Xrmsが、
【数5】
となるように開閉指令値を生成する。これにより、例えば開閉制御信号の波高値を、最大値(X)の80%程度に低減することが可能となる。
【0040】
インバータ駆動部35は、このような開閉指令値に基づく開閉制御信号によりDC/ACインバータ30を制御する。したがって、調光部材2は、このような開閉制御信号に基づいて調光率が変更される。
【0041】
図5の(A)には、上述した開閉指令値に基づく開閉制御信号と、正弦波による開閉制御信号とが示される。以下では、開閉指令値に基づく開閉制御信号を、開閉制御信号(#1)とし、正弦波による開閉制御信号を開閉制御信号(#2)として説明する。
【0042】
図5の(B)には、調光部材2に印加される交流電圧の振幅値と平行線透過率(調光率)との関係が示される。図4の(B)の例では、振幅値がV0〔V〕以下では平行線透過率が0〔%〕である。振幅値がV1〔V〕では平行線透過率がT1〔%〕である。振幅値がV2〔V〕以上では平行線透過率がT2〔%〕である。振幅値がV1〔V〕からV2〔V〕までは、振幅値に比例するように平行線透過率が変化する。
【0043】
図5の(C)には、図5の(B)の振幅値と平行線透過率との関係を有する調光部材2に、図5の(A)の開閉制御信号(#1)に応じた交流電圧を印加した場合の平行線透過率(#3)、及び開閉制御信号(#2)に応じた交流電圧を印加した場合の平行線透過率(#4)が示される。図5の(B)に示されるように、調光部材2は振幅値がV0〔V〕より大きくなった場合に平行線透過率が大きくなる。図5の(A)に示されるように、開閉制御信号(#1)と開閉制御信号(#2)とは互いに実効値が同程度であるものの、電圧値がV0〔V〕以上となる時間は、開閉制御信号(#2)よりも開閉制御信号(#1)の方が長い。したがって、図4の(C)に示されるように、互いに実効値が同程度であっても、開閉制御信号(#2)を印加した場合よりも開閉制御信号(#1)を印加した場合の方が光を透過する割合を大きくできる。図5の(C)の例では、開閉制御信号(#2)を印加した場合の平均透過率がT2〔%〕の55%程度であるが、開閉制御信号(#1)を印加した場合の平均透過率はT2〔%〕の60%程度まで大きくできる。したがって、所期の平行線透過率を基準に鑑みると、例えば調光部材2に印加する交流電圧の振幅値を小さくできるので、消費電力を低減することが可能となる。
【0044】
以上のように、本調光装置1によれば、波高値の低減と高調波成分の抑制とを行いつつ、平行線透過率を向上させることが可能となる。上述した調光装置1の制御は、調光部材2の調光率の制御をコンピュータが行う調光方法として規定することも可能である。
【0045】
まず、変圧回路部20が、バッテリ5の出力電圧を、所定の電圧値の直流電圧に変換して出力する。このような変圧回路部20の制御は変圧制御部25により行われる。このような変圧制御部25による変圧回路部20の制御は、上述した調光方法における変圧回路制御ステップに相当する。また、変圧回路部20によりバッテリ5の出力電圧を、所定の電圧値の直流電圧に変換するステップは、上述した調光方法における電圧変換ステップに相当する。
【0046】
DC/ACインバータ30は、開閉制御信号に基づいて駆動して、変圧回路部20からの直流電圧を、所定の周期と振幅を要する交流電圧に変換する。このようなDC/ACインバータ30が、直流電圧を、交流電圧に変換するステップは、上述した調光方法における変換ステップに相当する。
【0047】
また、インバータ駆動部35は、DC/ACインバータ30を開閉制御信号に基づいて駆動する。このようなDC/ACインバータ30を開閉制御信号に基づいて駆動するステップは、上述した調光方法における駆動ステップに相当する。
【0048】
また、この駆動ステップでは、DC/ACインバータ30が有するスイッチング素子の開閉状態を制御する開閉指令値が生成される。このような開閉指令値を生成するステップは、上述した調光方法における指令値生成ステップに相当する。
【0049】
この指令値生成ステップでは、正弦波からなる基本波に、複数の基本波の高調波成分を重畳して、開閉制御信号が、ピーク値PVを含むピーク領域PRとボトム値BVを含むボトム領域BRとを有し、ピーク領域PR及びボトム領域BRの夫々が、ピーク値PV及びボトム値BVの夫々が低曲率円弧状部LLと、当該低曲率円弧状部LLの両端が低曲率円弧状部LLの曲率半径よりも小さい曲率半径の大曲率円弧状となる大曲率円弧状部RLとを有するように開閉指令値を生成する。
【0050】
調光装置1は、このような調光方法によって、調光部材2の調光率を変更することが可能となる。
【0051】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、調光部材2として、高分子分散型液晶(PDLC:polymer dispersed liquid crystal)を用いることが可能であるとして説明した。しかしながら、調光部材2は高分子分散型液晶以外にも、調光率の変更に、交流電圧の印加を要するものであれば、例えば高分子ネットワーク液晶(PNLC:polymer network liquid crystals)や、SPD(suspended particle device)や、ゲストホスト液晶(guest host liquid crystal)を用いることが可能である。もちろん、これら以外のものを用いることも可能である。
【0052】
上記実施形態では、調光部材2が車両3のルーフパネルに設けられている場合の例を挙げて説明したが、調光部材2は、車両3のサイドウィンドウ、リアウインドウ、フロントウィンドウ等に設けられていてもよい。
【0053】
上記実施形態では、調光部材2が車両3に備えられている場合の例を挙げて説明した。しかしながら、調光部材2は、車両3以外のもの(例えば、建築物)に設けられていてもよく、調光装置1は、このような車両3以外のものに設けられた調光部材2の調光率を変更するように構成することも可能である。
【0054】
上記実施形態では、調光部材2が1つである場合の例を挙げて説明した。調光部材2は、2つ以上であってもよい。この場合、調光装置1は、複数の調光部材2の夫々の調光率を、個別に変更するように構成することが可能となる。
【0055】
上記実施形態では、高調波成分は、基本波に対して3倍の周波数である第3次高調波成分及び基本波に対して5倍の周波数である第5次高調波成分であるとして説明した。しかしながら、高調波成分は、第3次高調波成分及び第5次高調波成分のうちの一方のみを用いることも可能である。また、高調波成分として、基本波に対して7倍の周波数である第7次高調波成分や、基本波に対して9倍の周波数である第9次高調波成分を用いることも可能である。なお、高調波成分は、第3次高調波成分及び第5次高調波成分であると説明したが、ごく僅かな他の高周波成分が含まれることも包含する。
【0056】
上記実施形態では、指令値生成部37は、開閉制御信号の振幅値が、基本波の波高値より小さく、且つ、調光部材2の透過率が所定値以上となる期間が広がるように開閉指令値を生成するとして説明した。しかしながら、指令値生成部37は、開閉制御信号の振幅値が、基本波の波高値と同程度となるように開閉指令値を生成するように構成してもよいし、開閉制御信号の振幅値が、基本波の波高値よりも大きくなるように開閉指令値を生成するように構成してもよい。
【0057】
本発明は、調光部材の調光率を制御する調光装置、及びそのような調光方法に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1:調光装置
2:調光部材
30:DC/ACインバータ
35:インバータ駆動部
37:指令値生成部
BR:ボトム領域
BV:ボトム値
LL:低曲率円弧状部
PR:ピーク領域
PV:ピーク値
RL:大曲率円弧状部
図1
図2
図3
図4
図5