(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131517
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】コンクリート床版の切断機
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20240920BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041833
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】598043571
【氏名又は名称】株式会社ニチワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋脇 就三
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】レール部材や牽引器を用いないで、スタッドジベルとコンクリートとを一緒に切断できるコンクリート床版の切断機を提供する。
【解決手段】コンクリート床版の切断機31は、コンクリート床版の上部を長手方向に沿って回転して移動する前部ローラ32と、前部ローラの両端部をそれぞれ回転自在に支持する前部支柱33と、前部ローラを回転させるための前部ローラ用モータ34と、後部ローラ35と、後部支柱36と、後部ローラ用モータ37と、前部ローラと後部ローラとの間に設けられる取付基板39と、取付基板に設けられる2台の駆動モータ40と、2台の駆動ローラ41と、駆動ローラに掛け回されて回転するバンドソー42と、取付基板の両方の端部がそれぞれ取り付けられる連結枠43とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁又は高架道路のコンクリート床版の底部に沿って水平に切断することにより、橋桁の定着用のアンカーとコンクリートとを一緒に切断することができるコンクリート床版の切断機であって、
該コンクリート床版の切断機は、
前記コンクリート床版の上部を長手方向に沿って回転して移動する前部ローラと、
該前部ローラの両方の端部をそれぞれ回転自在に支持する前部支柱と、
該前部支柱に設けられ、前記前部ローラを回転させるための前部ローラ用モータと、
前記コンクリート床版の上部を長手方向に沿って回転して移動する後部ローラと、
該後部ローラの両方の端部をそれぞれ回転自在に支持する後部支柱と、
該後部支柱に設けられ、前記後部ローラを回転させるための後部ローラ用モータと、
前記前部ローラと前記後部ローラとの間に設けられ、前記コンクリート床版を長手方向に沿って移動すると共に、当該コンクリート床版を通過するための切断開口部を有する取付基板と、
該取付基板に所定の間隔を開けて設けられる2台の駆動モータと、
該駆動モータの駆動に連動して駆動し、前記取付基板に設けられる2台の駆動ローラと、
該2台の駆動ローラに掛け回されて回転するバンドソーと、
前記取付基板の両方の端部がそれぞれ取り付けられる連結枠と、を少なくとも備えること
を特徴とするコンクリート床版の切断機。
【請求項2】
一対の前記前部支柱と、該前部支柱の上端部同士に掛け渡される前部横架材と、一対の前記後部支柱と、該後部支柱の上端部同士に掛け渡される後部横架材と、前記前部支柱と前記後部支柱との上端部同士に掛け渡される側部支柱と、前記前部支柱及び前記後部支柱のそれぞれの下端部に連結する前記連結枠と、で前記取付基板を移動するための移動用枠体が構成されること
を徴とする請求項1に記載のコンクリート床版の切断機。
【請求項3】
前記前部ローラ用モータと前記後部ローラ用モータとは、前記前部ローラと前記後部ローラとの相対する反対側の端部に設けられること
を徴とする請求項1に記載のコンクリート床版の切断機。
【請求項4】
前記前部ローラ及び前記後部ローラの両方の端部には、段部が形成されること
を徴とする請求項1に記載のコンクリート床版の切断機。
【請求項5】
前記取付基板の両方の端部には、上下位置の微調整装置が設けられること
を徴とする請求項1に記載のコンクリート床版の切断機。
【請求項6】
前記前部支柱と前記後部支柱とには、高さ位置調整用のスペーサーが取り付けられること
を徴とする請求項1に記載のコンクリート床版の切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や高架道路等のコンクリート床版を作業性よく切断することができるコンクリート床版の切断機に関するものであり、更に詳しくは、橋桁のフランジに設けられるスタッドジベル等の定着用アンカーとコンクリートとを一緒に切断することができるコンクリート床版の切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、橋梁や高架道路等のコンクリート床版1は、橋桁2のフランジ3の上部に設けられる定着用のスタッドジベル4を介してコンクリート5が一体に固着してなる。コンクリート5の上部には、
図8及び
図9に示すように、アスファルト7が敷設されている。
【0003】
コンクリート床版1は、経年劣化による老朽化や損傷等が生じた場合に、切断して撤去し、改築する必要がある。
【0004】
従来、コンクリート床版1を切断する作業は、コンクリートカッターなどを用いて、
図8の切断線6に沿って垂直に切断してから、切断線6の外側のコンクリート床版部分1aを撤去して、
図9に示すように、橋桁2の上部の残コンクリート床版部分1bを残存させる。
【0005】
この残存させた残コンクリート床版部分1bのスタッドジベル4とコンクリート5とを一緒に切断する切断機について説明する。
図10に示すように、切断機11は、切断機本体12と、切断機本体12の両側部に沿って設置され切断機本体12の移動を案内する案内用レール部材20とから構成される(特許文献1参照)。
【0006】
切断機本体12は、案内用レール部材20に沿って移動し且つ残コンクリート床版部分1bを通過するための切断開口部13を有する取付基板14と、取付基板14に設けられる駆動モータ15と、駆動モータ15の駆動に連動して駆動する駆動ローラ16と、駆動ローラ16と相対して設けられる従動ローラ17と、従動ローラ17と駆動ローラ16とで回転するワイヤー状のカッター18と、取付基板14をコンクリート床版1に沿って牽引すべく設けられる牽引器19とからなる。
取付基板14の外側には、側板23と車輪24とが設けられており(
図11参照)、これらの側板23と車輪24とがレール部22の側部と下部とに沿って移動する仕組みである。
【0007】
案内用レール部材20は、磁石部21と、磁石部21に沿って設けられるレール部22とからなる。案内用レール部材20は、
図11に示す橋桁2又は橋桁2のフランジ3から延長して設けた鋼製の橋桁延長部分8に設置される。
【0008】
そして、
図11に示すように、切断機本体12を残コンクリート床版部分1bの底部9に沿って水平方向に移動することにより、カッター18がスタッドジベル4とコンクリート5とを一緒に切断するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この従来例の切断機11においては、切断機本体12を移動するための案内用レール部材20や牽引器19が必要であり、その分の製品コストが増加するという問題点を有している。
また、案内用レール部材20を設置する作業手間や、牽引器19を操作する操作手間が煩雑であるという問題点も有している。
【0011】
さらに、橋桁2やフランジ3には、案内用レール部材20を設置するための橋桁延長部分8を設ける必要があり、その分がコスト高になると共に、橋桁延長部分8を設置する作業手間が煩雑であるという問題点を有している。
【0012】
従って、従来例における切断機11においては、案内用レール部材20や牽引器19をなくして、それらの設置や操作する手間をなくすことと、橋桁延長部分8をなくして、その設置手間をなくすこととに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、橋梁又は高架道路のコンクリート床版の底部に沿って水平に切断することにより、橋桁の定着用のアンカーとコンクリートとを一緒に切断することができるコンクリート床版の切断機であって、該コンクリート床版の切断機は、前記コンクリート床版の上部を長手方向に沿って回転して移動する前部ローラと、該前部ローラの両方の端部をそれぞれ回転自在に支持する前部支柱と、該前部支柱に設けられ、前記前部ローラを回転させるための前部ローラ用モータと、前記コンクリート床版の上部を長手方向に沿って回転して移動する後部ローラと、該後部ローラの両方の端部をそれぞれ回転自在に支持する後部支柱と、該後部支柱に設けられ、前記後部ローラを回転させるための後部ローラ用モータと、前記前部ローラと前記後部ローラとの間に設けられ、前記コンクリート床版を長手方向に沿って移動すると共に、当該コンクリート床版を通過するための切断開口部を有する取付基板と、該取付基板に所定の間隔を開けて設けられる2台の駆動モータと、該駆動モータの駆動に連動して駆動し、前記取付基板に設けられる2台の駆動ローラと、該2台の駆動ローラに掛け回されて回転するバンドソーと、前記取付基板の両方の端部がそれぞれ取り付けられる連結枠と、を少なくとも備えることである。
【0014】
また、一対の前記前部支柱と、該前部支柱の上端部同士に掛け渡される前部横架材と、一対の前記後部支柱と、該後部支柱の上端部同士に掛け渡される後部横架材と、前記前部支柱と前記後部支柱との上端部同士に掛け渡される側部支柱と、前記前部支柱及び前記後部支柱のそれぞれの下端部に連結する前記連結枠と、で前記取付基板を移動するための移動用枠体が構成されること、;
前記前部ローラ用モータと前記後部ローラ用モータとは、前記前部ローラと前記後部ローラとの相対する反対側の端部に設けられること、;
前記前部ローラ及び前記後部ローラの両方の端部には、段部が形成されること、;
前記取付基板の両方の端部には、上下位置の微調整装置が設けられること、;
前記前部支柱と前記後部支柱とには、高さ位置調整用のスペーサーが取り付けられること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンクリート床版の切断機によれば、前部ローラと後部ローラとがコンクリート床版の上部を長手方向に沿って回転移動するに伴い、移動用枠体が移動して、さらに、取付基板がコンクリート床版の長手方向に沿って移動する。その結果、取付基板のバンドソーがコンクリート床版の底部に沿って水平方向に移動し、バンドソーがスタッドジベル(定着用のアンカー)とコンクリートとを一緒に切断する。
この場合、従来例のような案内用レール部材や牽引器が必要ないので、それらの設置手間や操作手間が生じない。
さらには、従来例のような橋桁延長部分が必要ないので、部材コストが低減できるだけでなく、その設置手間が生じないという種々の優れた効果を奏する。
【0016】
一対の前記前部支柱と、該前部支柱の上端部同士に掛け渡される前部横架材と、一対の前記後部支柱と、該後部支柱の上端部同士に掛け渡される後部横架材と、前記前部支柱と前記後部支柱との上端部同士に掛け渡される側部支柱と、前記前部支柱及び前記後部支柱のそれぞれの下端部に連結する前記連結枠と、で前記取付基板を移動するための移動用枠体が構成されることによって、移動用枠体が強固で堅牢な構造を維持する。従って、取付基板が安定した状態でスムーズに移動できて、コンクリート床版の底部に沿って水平に切断できるという優れた効果を奏する。
【0017】
前部ローラ用モータと後部ローラ用モータとは、前部ローラと後部ローラとの相対する反対側の端部に設けられることによって、前部ローラ用モータと後部ローラ用モータとの回転駆動力の発生位置を前部ローラと後部ローラとで相対して異ならせることにより、全体的に前後均等な回転駆動力が生じることとなる。その結果、スムーズで安定した回転移動が実現するという優れた効果を奏する。
【0018】
前部ローラ及び後部ローラの両方の端部には、段部が形成されることによって、段部が回転移動するコンクリート床版上の位置ズレ(はみ出し)を防止する役目を果たすこととなる。その結果、コンクリート床版の長手方向に沿って正確に移動できるという優れた効果を奏する。
【0019】
取付基板の両方の端部には、上下位置の微調整装置が設けられることによって、コンクリート床版の底部位置、即ち切断位置に対応させて、取付基板のバンドソーの上下位置を微調整することができるという優れた効果を奏する。
【0020】
前部支柱と後部支柱とには、高さ位置調整用のスペーサーが取り付けられることによって、コンクリート床版の厚み等に対応させて、前部ローラ及び後部ローラの高さ位置を調整することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るコンクリート床版の切断機の正面図である。
【
図2】本発明に係るコンクリート床版の切断機の一部を破断した状態の平面図である。
【
図3】本発明に係るコンクリート床版の切断機の一部を省略した状態の略示的な側面図である。
【
図4】本発明に係るコンクリート床版の切断機の斜視図である。
【
図5】本発明に係るコンクリート床版の切断機の斜視図である。
【
図6】取付基板の上下位置の微調整装置を示す説明図である。
【
図7】取付基板の上下位置の微調整装置を示す説明図である。
【
図8】コンクリート床版を破断して示す橋梁の斜視図である。
【
図9】残コンクリート床版部分を破断して示す正面図である。
【
図10】従来例に係るコンクリート床版の切断機の斜視図である。
【
図11】従来例に係るコンクリート床版の切断機と切断する残コンクリート床版部分とを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解を容易にするため、従来例で説明した図面(
図8及び
図9)に対応する部分には、従来例と同一の符号を付けて説明する。
また、本発明のコンクリート床版の切断機31は、従来例で説明した橋桁2の上部の残コンクリート床版部分1bを切断するものであり、符号を「コンクリート床版1b」と記載する。
【0023】
まず、
図1から
図5において、符号31はコンクリート床版の切断機を示し、このコンクリート床版の切断機31は、コンクリート床版1bの上部を長手方向に沿って回転して移動する前部ローラ32と、前部ローラ32の両方の端部をそれぞれ回転自在に支持する前部支柱33と、前部支柱33に設けられ、前部ローラ32を回転させるための前部ローラ用モータ34と、コンクリート床版1bの上部を長手方向に沿って回転して移動する後部ローラ35と、後部ローラ35の両方の端部をそれぞれ回転自在に支持する後部支柱36と、後部支柱36に設けられ、後部ローラ35を回転させるための後部ローラ用モータ37と、前部ローラ32と後部ローラ35との間に設けられ、コンクリート床版1bを長手方向に沿って移動すると共に、当該コンクリート床版1bを通過するための切断開口部38を有する取付基板39と、取付基板39に所定の間隔を開けて設けられる2台の駆動モータ40と、駆動モータ40の駆動に連動して駆動し、取付基板39に設けられる2台の駆動ローラ41と、2台の駆動ローラ41に掛け回されて回転するバンドソー42と、取付基板39の両方の端部がそれぞれ取り付けられる連結枠43とから構成される。
【0024】
前部ローラ32は、円柱状に形成されており、コンクリート床版1bの上部を長手方向に沿って回転して移動する(
図1及び
図2参照)。
前部ローラ32の両方の端部には、段部44が形成されている。段部44の存在が、回転移動するコンクリート床版1b上の位置ズレ(はみ出し)を防止する役目を果たすこととなり、その結果、コンクリート床版1bの長手方向に沿って正確に移動できる。
【0025】
一対の前部支柱33は、前部ローラ32の両方の端部をそれぞれ回転自在に支持している。
前部支柱33の上端部同士には、前部横架材45が掛け渡されている。また、前部支柱33の下端部は、コ字状の連結枠43に連結している。
【0026】
前部ローラ用モータ34は、前部支柱33に設けられており、図示しないON/OFFスイッチによって駆動と停止の操作がなされて、前部ローラ32の回転及び停止をおこなう。
【0027】
後部ローラ35は、前部ローラ32と同様に円柱状に形成されており、コンクリート床版1bの上部を長手方向に沿って回転して移動する。
後部ローラ35の両方の端部には、前部ローラ32と同様に段部44が形成されている。段部44の存在が、回転移動するコンクリート床版1b上の位置ズレ(はみ出し)を防止する役目を果たすこととなり、その結果、コンクリート床版1bの長手方向に沿って正確に移動できる。
【0028】
一対の後部支柱36は、後部ローラ35の両方の端部をそれぞれ回転自在に支持している。
後部支柱36の上端部同士には、後部横架材47が掛け渡されている。また、後部支柱36の下端部は、コ字状の連結枠43に連結している。
【0029】
前部支柱33と後部支柱36との上端部同士には、側部支柱48が掛け渡されている。
側部支柱48には、吊り下げ用突起49が設けられており(
図4及び
図5参照)、クレーン等のフックを吊り下げ用突起49に係止して、コンクリート床版の切断機31を吊り上げて、所定位置にセットする。
また、前部横架材45あるいは後部横架材47の上部には、図示しない操作盤が設置される。
【0030】
一対の前部支柱33と、前部支柱33の上端部同士に掛け渡される前部横架材45と、一対の後部支柱36と、後部支柱36の上端部同士に掛け渡される後部横架材47と、前部支柱33と後部支柱36との上端部同士に掛け渡される側部支柱48と、前部支柱33及び後部支柱36のそれぞれの下端部に連結するコ字状の連結枠43とで、取付基板39を移動するための移動用枠体46が構成される(
図4及び
図5参照)。
移動用枠体46は、強固で堅牢な構造を維持するので、取付基板39が安定した状態でスムーズに移動できて、コンクリート床版1bの底部9に沿って水平に切断できる。
【0031】
前部支柱33と後部支柱36とには、
図4及び
図5に示すように、高さ位置調整用のスペーサー56が取付可能になっている。
このように、支柱の間にスペーサー56を介在させて、前部支柱33及び後部支柱36の高さ位置を調整できるので、コンクリート床版1bの厚み等に対応させて、前部ローラ32及び後部ローラ35の高さ位置を調整することができる。
【0032】
後部ローラ用モータ37は、後部支柱36に設けられており、図示しないON/OFFスイッチによって駆動と停止の操作がなされて、後部ローラ35の回転及び停止をおこなう。
【0033】
前部ローラ用モータ34と後部ローラ用モータ37とは、前部ローラ32と後部ローラ35との相対する反対側の端部に設けられる。例えば、
図2、
図4に示すように、前部ローラ32の左端部に前部ローラ用モータ34が設けられている場合は、後部ローラ35の右端部に後部ローラ用モータ37が設けられるのである。
このように、前部ローラ用モータ34及び後部ローラ用モータ37の回転駆動力の発生位置を前部ローラ32と後部ローラ35とで相対して異ならせることによって、全体的に前後均等な回転駆動力が生じることとなる。その結果、スムーズで安定した回転移動が実現できる。
【0034】
取付基板39は、所定の幅及び大きさに形成されており、
図2及び
図4に示すように、前部ローラ32と後部ローラ35との間に設けられている。
取付基板39の中央部分には、コンクリート床版1bを通過するための切断開口部38が設けられている。
取付基板39の両方の端部は、それぞれ連結枠43に取り付けられている。また、
図2に示すように、取付基板39はコンクリート床版1bの長手方向中心線50に対して切断角度を傾けた状態で推進できるように、所定の取付角度θ(例えば、長手方向中心線50に対して14~17度の範囲の角度θ)を有するように連結枠43に対して取り付けられている。
【0035】
このような構成の取付基板39は、前部ローラ32と後部ローラ35との回転移動に伴って、移動用枠体46と一緒に移動して、さらに、コンクリート床版1bの長手方向に沿って移動する。
この場合、
図2に示すように、取付基板39がコンクリート床版1bの長手方向の中心線57に対して、所定の取付角度θを有しているので、横方向に並列した複数本のスタッドジベル4をバンドソー42が同時に切断しないこととなる。つまり、横方向に並列した複数本のスタッドジベル4をバンドソー42が時間差をもって個々のタイミングで切断するので、切断時の抵抗が低減して、切断作業がスムーズに行えるのである。
【0036】
取付基板39の両方の端部には、上下位置の微調整装置51が設けられる。上下位置の微調整装置51は、
図6及び
図7に示すように、取付基板39の側部に連結部52aを介して設けられた本体52と、本体52に設けられた上昇ネジ53とを有しており、上昇ネジ53を回転して突出することにより(
図7参照)、連結枠43に設けられた固定板54を押圧して取付基板39を上昇させることができる。
なお、
図6及び
図7に示す符号55は、本体固定ネジを示す。
このように取付基板39に上下位置の微調整装置51が設けられることによって、コンクリート床版1bの底部9の位置、即ち切断位置に対応させて、取付基板39のバンドソー42の上下位置を微調整することができる。
【0037】
駆動モータ40は、取付基板39に所定の間隔を開けて2台設けられており、図示しないスイッチのON/OFF操作により、駆動と停止とがなされる。
【0038】
駆動ローラ41は、駆動モータ40の駆動に連動して駆動する仕組みになっており、取付基板39に2台設けられている。
【0039】
バンドソー42は、ワイヤー式の回転式カッターであり、2台の駆動ローラ41に掛け回されて高速で回転する。
【0040】
連結枠43は、コ字状に形成されており、その中央部近傍に取付基板39の端部が取り付けられている。
また、連結枠43の一方の端部が連結部43aを介して前部支柱33の下端部に連結しており、連結枠43の他方の端部が連結部43bを介して後部支柱36の下端部に連結している。
【0041】
以上のように構成されるコンクリート床版1の切断機31は、前部ローラ32と後部ローラ35とがコンクリート床版1bの上部を長手方向に沿って回転移動するに伴い、移動用枠体46が移動して、さらに、取付基板39がコンクリート床版1bの長手方向に沿って移動する。その結果、取付基板39のバンドソー42がコンクリート床版1bの底部9に沿って水平方向に移動し、バンドソー42がスタッドジベル4(定着用のアンカー)とコンクリート5とを一緒に切断する。
この場合、従来例のような案内用レール部材20や牽引器19が必要ないので、それらの設置手間や操作手間が生じない。
さらには、従来例のような橋桁延長部分8が必要ないので、部材コストが低減できるだけでなく、その設置手間が生じない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
橋桁2のフランジ3に設けられる定着用のスタッドジベル4は、コンクリート床版1bとコンクリート5との定着を図るための定着用のアンカーの総称を意味する。つまり、明細書、特許請求の範囲で用いられる、スタッドジベル4及び定着用のアンカーは、鉄筋、釘、締鉄、角鋼、鋼棒、ボルト、ずれ止め等の全ての金属製の定着用突起物を含むものである。
【符号の説明】
【0043】
1、1b コンクリート床版
1a 切断線の外側のコンクリート床版部分
1b 残存させた残コンクリート床版部分
2 橋桁
3 フランジ
4 スタッドジベル
5 コンクリート
6 切断線
7 アスファルト
8 橋桁延長部分
9 底部
11 切断機
12 切断機本体
13 切断開口部
14 取付基板
15 駆動モータ
16 駆動ローラ
17 従動ローラ
18 カッター
19 牽引器
20 案内用レール部材
21 磁石部
22 レール部
23 側板
24 車輪
31 コンクリート床版の切断機
32 前部ローラ
33 前部支柱
34 前部ローラ用モータ
35 後部ローラ
36 後部支柱
37 後部ローラ用モータ
38 切断開口部
39 取付基板
40 駆動モータ
41 駆動ローラ
42 バンドソー
43 連結枠
43a 連結部
43b 連結部
44 段部
45 前部横架材
46 移動用枠体
47 後部横架材
48 側部支柱
49 吊り下げ用突起
50 長手方向中心線
51 上下位置の微調整装置
52 本体
52a 連結部
53 上昇ネジ
54 固定板
55 本体固定ネジ
56 スペーサー
57 中心線