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特開2024-131523柱の接合構造及び柱の接合構造の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131523
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】柱の接合構造及び柱の接合構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240920BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20240920BHJP
   E04C 3/293 20060101ALI20240920BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E04B1/58 503P
E04B1/30 Z
E04C3/293
E04C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041845
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】太田 行孝
(72)【発明者】
【氏名】和泉 信之
(72)【発明者】
【氏名】西村 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤木 薫
(72)【発明者】
【氏名】仁科 智貴
(72)【発明者】
【氏名】恒成 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 達稀
(72)【発明者】
【氏名】濱田 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】大月 智弘
【テーマコード(参考)】
2E125
2E163
2E164
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG27
2E125AG28
2E125AG32
2E125AG41
2E125AG48
2E125AG60
2E125BA02
2E125BB08
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE07
2E125CA04
2E125CA82
2E125EA12
2E125EA33
2E163FA02
2E163FB09
2E163FF17
2E164AA02
2E164BA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、接合鋼管部32の高さを抑えて作業性に優れた柱の接合構造1を提供する。
【解決手段】柱の接合構造1は、鋼管柱12に鉄骨梁14が接合される柱梁接合部10と、鉄筋コンクリート柱30とを接合する柱の接合構造1である。接合構造1は、柱梁接合部10から上方に突出する筒状の接合鋼管部32と、接合鋼管部32の内面32aから内側に水平方向に突出する環状の水平固定板34と、を備える。鉄筋コンクリート柱30は、接合鋼管部32内に延びる複数の主筋38を備える。複数の主筋38の下端38aは、水平固定板34に固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管柱に鉄骨梁が接合される柱梁接合部と、鉄筋コンクリート柱とを接合する柱の接合構造であって、
前記接合構造は、
前記柱梁接合部から上方に突出する筒状の接合鋼管部と、
前記接合鋼管部の内面から内側に水平方向に突出する環状の水平固定板と、
を備え、
前記鉄筋コンクリート柱は、前記接合鋼管部内に延びる複数の主筋を備え、
前記複数の主筋の下端は、前記水平固定板に固定される、柱の接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の前記柱の接合構造において、
前記内面から内側に突出しかつ鉛直方向に延びる複数の鉛直固定板をさらに備え、
前記水平固定板は、前記複数の鉛直固定板に接合される、柱の接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の前記柱の接合構造において、
前記水平固定板は、第1水平固定板であり、
前記接合構造は、前記第1水平固定板の上方に間隔を空けた位置に前記接合鋼管部の前記内面から内側に水平方向に突出する環状の第2水平固定板をさらに備え、
前記第2水平固定板は、複数の貫通孔が互いに間隔を空けて形成されると共に、前記複数の鉛直固定板に接合され、
前記複数の主筋は、前記複数の貫通孔を貫通する、柱の接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の前記柱の接合構造において、
前記複数の主筋は、前記第2水平固定板に固定される、柱の接合構造。
【請求項5】
鋼管柱に鉄骨梁が接合される柱梁接合部と、鉄筋コンクリート柱とを接合する柱の接合構造の構築方法であって、
前記柱梁接合部から上方に筒状の接合鋼管部が突出し、前記接合鋼管部の内面から内側に環状の水平固定板が水平方向に突出し、
前記鉄筋コンクリート柱の複数の主筋の下端を前記水平固定板に固定した後、前記接合鋼管部内にコンクリートを打設する、柱の接合構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱と鉄筋コンクリート柱とを接続して構成される柱の接合構造及び柱の接合構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RC造(鉄筋コンクリート造)の超高層建築物が大規模な再開発案件で多く採用されている。これらの超高層建築物は多用途を目的とした複合施設が多い。そして、用途が異なると要求される柱スパンや階高なども異なり、骨組みの構成に適した構造種別も異なるものが用途に合わせて要求される。
【0003】
例えば、低層階に店舗・事務所など柱スパンが比較的大きな空間を要求される用途が配置され、高層階に住宅・ホテルなど柱スパンが小さく剛性と遮音性の高い空間が要求される用途が配置されることがある。その場合、下層階にS造(鉄骨造)やCFT造(コンクリート充填鋼管構造)が採用され、上層階にRC造が採用されることがある。このように骨組みの構造種別を途中階で切り替えて、施設の用途に合わせた合理的な構造を構築することが求められる。
【0004】
従来、このような途中階でS造やCFT造からRC造の柱を接続する接合構造が提案されている(例えば、特許文献1,2)。特許文献1のCFT柱から上方に延びる接合鋼管と上層階のRC柱との接合構造は、RC柱の主筋と接合鋼管は直接的に接合されていないためコンクリートを介して応力伝達を行う。また、特許文献2のCFT柱とRC柱との接合構造は、柱梁接合部を超えてCFT柱の上端までRC柱の主筋が延ばされてプレートナットで定着されてコンクリートを介して応力伝達を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-557号公報
【特許文献2】特開2016-132948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の接合構造ではRC柱の主筋と接合鋼管が直接的に接合されておらず、コンクリートを介して応力伝達を行うことから、特許文献1の接合構造では接合鋼管の高さが比較的高く、また特許文献2の接合構造ではCFT柱まで主筋が延びるため、施工時に主筋に対する作業性が低くなる傾向がある。
【0007】
そこで、本発明は、RC柱の主筋と接合鋼管を直接的に接合して応力伝達を行うことにより、接合鋼管部の高さを抑えて作業性に優れた柱の接合構造及び柱の接合構造の構築方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[1]本発明に係る柱の接合構造の一態様は、
鋼管柱に鉄骨梁が接合される柱梁接合部と、鉄筋コンクリート柱とを接合する柱の接合構造であって、
前記接合構造は、
前記柱梁接合部から上方に突出する筒状の接合鋼管部と、
前記接合鋼管部の内面から内側に水平方向に突出する環状の水平固定板と、
を備え、
前記鉄筋コンクリート柱は、前記接合鋼管部内に延びる複数の主筋を備え、
前記複数の主筋の下端は、前記水平固定板に固定されることを特徴とする。
【0010】
[2]前記柱の接合構造において、
前記接合構造は、前記内面から内側に突出しかつ鉛直方向に延びる複数の鉛直固定板をさらに備え、
前記水平固定板は、前記複数の鉛直固定板に接合されることができる。
【0011】
[3]前記柱の接合構造において、
前記水平固定板は、第1水平固定板であり、
前記接合構造は、前記第1水平固定板の上方に間隔を空けた位置に前記接合鋼管部の前記内面から内側に水平方向に突出する環状の第2水平固定板をさらに備え、
前記第2水平固定板は、複数の貫通孔が互いに間隔を空けて形成されると共に、前記複数の鉛直固定板に接合され、
前記複数の主筋は、前記複数の貫通孔を貫通することができる。
【0012】
[4]前記柱の接合構造において、
前記複数の主筋は、前記第2水平固定板に固定されることができる。
【0013】
[5]本発明に係る柱の接合構造の構築方法の一態様は、
鋼管柱に鉄骨梁が接合される柱梁接合部と、鉄筋コンクリート柱とを接合する柱の接合構造の構築方法であって、
前記柱梁接合部から上方に筒状の接合鋼管部が突出し、前記接合鋼管部の内面から内側に環状の水平固定板が水平方向に突出し、
前記鉄筋コンクリート柱の複数の主筋の下端を前記水平固定板に固定した後、前記接合鋼管部内にコンクリートを打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る柱の接合構造及び柱の接合構造の構築方法によれば、接合鋼管部の高さを抑えることで主筋に対する作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る柱の接合構造を模式的に示す縦断面図である。
図2図1における(a)A-A断面図と、(b)B-B断面図である。
図3】第2実施形態に係る柱の接合構造を模式的に示す縦断面図である。
図4図3におけるC-C断面図である。
図5】第3実施形態に係る柱の接合構造を模式的に示す縦断面図である。
図6】引張軸力3089kN(鉄筋コンクリート柱の引張降伏耐力の0.5倍に相当)における試験体の柱せん断力と柱部材角との関係を示すグラフである。
図7】圧縮軸力6943kN(鉄筋コンクリート柱の圧縮強度の0.2倍に相当)における試験体の柱せん断力と柱部材角との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない
【0017】
1.第1実施形態
1-1.柱の接合構造
図1及び図2を用いて、第1実施形態に係る柱の接合構造1について以下説明する。図1は、第1実施形態に係る柱の接合構造1を模式的に示す縦断面図であり、図2(a)は、図1におけるA-A断面図であり、図2(b)は、図1におけるB-B断面図である。図2(a)では水平固定板34の下方にある鉛直固定板36と固定部材40を破線で示し、図2(b)では接合鋼管部32の内側にコンクリート17(網掛け)が打設された状態を示す。
【0018】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る柱の接合構造1は、鋼管柱12に鉄骨梁14が接合される柱梁接合部10と、鉄筋コンクリート柱30とを接合する柱の接合構造1である。接合構造1が適用される建築物としては、下層部の骨組みの構造種別と上層部の骨組みの構造種別とが異なる例えば超高層建築物などである。本実施形態では、下層階にCFT造が採用され、上層階にRC造が採用された建築物の例について説明するが、下層階がCFT造に替えてS造を採用してもよい。
【0019】
柱梁接合部10は、建築物の下層部のCFT造の一部を構成し、柱梁接合部10から下方へ延びる断面が例えば角筒状の鋼管柱12と、鋼管柱12から水平方向外側に向けて延びる複数の鉄骨梁14と、鋼管柱12の内部に打設されたコンクリート17と、を備える。鋼管柱12の上端内側には打設孔16aが形成された環状のダイヤフラム16を備える。ダイヤフラム16に代えて、鋼管柱12から外側に延びる外ダイヤフラムを備えてもよい。図2では角筒状の鋼管柱12について説明するが円筒状であってもよい。
【0020】
鉄筋コンクリート柱30は、建築物の上層部のRC造の一部を構成する。鉄筋コンクリート柱30は、接合鋼管部32内に延びる複数の主筋38と、図示を省略した帯筋と、コンクリート17と、を備える。図1及び図2ではコンクリート17が打設された範囲を網掛け処理で示す。主筋38は、鉄筋コンクリート柱30の外周付近に沿って複数本が配筋される。複数の主筋38は、鉄筋コンクリート柱30内でY軸に沿った方向(鉛直方向)に沿って延在する。主筋38は、例えば継手部39によって長手方向に延長されてもよい。継手部39は、機械式継手の例を示すが、公知の他の継手形式であってもよい。
【0021】
接合構造1は、接合鋼管部32と、水平固定板34と、を備える。接合構造1は、複数の鉛直固定板36をさらに備えることができる。水平固定板34及び鉛直固定板36は、リブプレートと呼ばれることがある。接合構造1は、柱梁接合部10と鉄筋コンクリート柱30との間にあって、異なる骨組み構造同士を比較的短い距離で合理的に接合する。また、接合構造1は、鉄筋コンクリート柱30の地震耐力に影響を与えることがない。本実施形態においては鉛直固定板36を備えた例について説明するが、鉛直固定板36がなくても水平固定板34により鉄筋コンクリート柱30の主筋38に生じる引抜力を接合鋼管部32に伝達する効果を有する。そして、本実施形態のように鉛直固定板36をさらに備えることにより、鉛直固定板36が無い場合よりもより大きな引抜力を伝達する効果を得ることができる。
【0022】
接合鋼管部32は、柱梁接合部10から上方に突出する。接合鋼管部32は、筒状の鋼管であり、その下端が柱梁接合部10と一体に接合され、上端が開口する。図2に示すように接合鋼管部32は、横断面が略正方形の角筒状であるが円筒状であってもよい。接合鋼管部32としては、CFT造の柱梁接合部10に用いる鋼管と同じ材質を採用できる。接合鋼管部32の内面32aには水平固定板34と鉛直固定板36が溶接されて一体化されている。接合鋼管部32は、工場で組み立てられて施工現場に搬入されてから柱梁接合
部10と溶接してもよいし、工場で柱梁接合部10と一体に組み立てられてから施工現場に搬入されてもよい。接合鋼管部32の内側には、上方から複数の主筋38が延在して設けられ、複数の主筋38の下端38aはそれぞれ水平固定板34に固定される。接合鋼管部32と継手部39から下の主筋38とがプレキャストコンクリート(PCa)により工場で生産されて施工現場に搬入されてもよく、その場合には下層部へコンクリートを流し込む打設孔をPCa内に設けることができる。
【0023】
水平固定板34は、接合鋼管部32の内面32aから内側に水平方向(X軸に沿った方向)に突出する環状の鋼板である。水平固定板34は、複数の鉛直固定板36に接合される。水平固定板34の外周端は内面32aに溶接されて一体化している。水平固定板34は、後述する固定部材40を主筋38の下端38aに取り付ける作業性に影響を与えない範囲でなるべく柱梁接合部10に近い高さに設けられる。図2の(a)に示すように、水平固定板34は、角筒状の接合鋼管部32の内面32aに沿って形成されるため、中央が四角く開口したロの字状である。水平固定板34は、接合鋼管部32内に延びる全ての主筋38に対応する位置にY軸に沿った貫通孔が複数形成される。主筋38は、これらの貫通孔に主筋38の下端38aを挿通した状態で、固定部材40により水平固定板34に固定される。固定部材40による固定は、例えば、主筋38の下端38aに形成されたねじに、一組のナット形状の固定部材40を螺合して水平固定板34を挟み込むように固定できる。固定部材40としては、鉄筋と鋼板との固定に用いる公知の定着具を用いることができる。主筋38の下端38aはダイヤフラム16との間に固定部材40の定着作業を妨げない高さであって、かつ、接合鋼管部32の高さを抑えるためなるべく低い位置に配置される。
【0024】
鉛直固定板36は、接合鋼管部32の内面32aから内側に突出しかつ鉛直方向(Y軸に沿った方向)に延びる例えば鋼板である。鉛直固定板36の外端部は内面32aに溶接されて接合鋼管部32と一体に固定される。図1に示すように、上下一組の鉛直固定板36が水平固定板34を挟み込むようにして水平固定板34の上面及び下面に溶接されて固定される。鉛直固定板36が水平固定板34に固定されることで、地震動によって主筋38が鉛直方向に応力を受けた場合に、水平固定板34が鉛直方向へ変形することを抑制し、接合構造1の損傷を防止する。鉛直固定板36の下端がダイヤフラム16の上面に溶接で固定されてもよい。鉛直固定板36は、内面32aから例えば水平固定板34の突出幅と同じ幅で突出してもよく、少なくとも主筋38が固定される位置まで内面32aから突出することが好ましい。
【0025】
図2の(b)に示すように、鉛直固定板36は、隣り合う主筋38の間に設けられるが、これに限らず、設計上要求される強度を確保するために、この例の数より少なくてもよいし多くてもよい。また、この例では鉛直固定板36が上下で2枚あって環状の水平固定板34を挟み込むように固定することとしたが、水平固定板34は鉛直固定板36と一体化されるものであるので、鉛直固定板36が上下に連続する1枚のものとして、隣り合う鉛直固定板36の各間に短い水平固定板34が一体化されてもよい。この場合も鉛直固定板36を介して水平固定板34が環状に連続している。
【0026】
このように柱の接合構造1によれば、接合鋼管部32が主筋38と水平固定板34を介して強固に接合されるため、接合鋼管部32の高さを低く抑えることができる。接合鋼管部32の高さが低いと、施工時に主筋38の下端38aまで手が届きやすくなり、作業性が向上する。また、水平固定板34が鉛直固定板36により補強されることにより、主筋38に生じるより大きな引抜力を接合鋼管部32に伝達することができる。
【0027】
1-2.柱の接合構造の構築方法
図1及び図2を用いて、柱の接合構造1の構築方法について以下説明する。なお、実施
形態2,3における構築方法も基本的には第1実施形態の構築方法と同様である。
【0028】
本実施形態に係る柱の接合構造1の構築方法は、鋼管柱12に鉄骨梁14が接合される柱梁接合部10と、鉄筋コンクリート柱30とを接合する柱の接合構造1の構築方法である。
【0029】
まず、下層部がCFT造により構築される。鋼管柱12へのコンクリート17の打設は上層部の鉄筋コンクリート柱30と共に行われてもよい。
【0030】
下層部の柱梁接合部10の上には、柱梁接合部10から上方に筒状の接合鋼管部32が突出し、接合鋼管部32の内面32aから内側に環状の水平固定板34が水平方向に突出している。また、本実施形態では、さらに内面32aから内側に突出しかつ鉛直方向に複数の鉛直固定板36が延び、水平固定板34が複数の鉛直固定板36に接合される。接合鋼管部32は、水平固定板34及び鉛直固定板36が固定された状態で柱梁接合部10に施工現場で溶接してもよいし、あらかじめ工場で柱梁接合部10と一体に製造されてCFT柱に固定してもよい。
【0031】
次に、鉄筋コンクリート柱30の複数の主筋38の下端38aを水平固定板34に固定した後、接合鋼管部32内にコンクリート17を打設する。上述したように接合構造1によれば接合鋼管部32の高さを抑えることができ、作業性に優れる。なお、コンクリート17は、ダイヤフラム16に開口した打設孔16aを通して下層部の鋼管柱12内にも充填される。
【0032】
2.第2実施形態
図3及び図4を用いて、第2実施形態に係る柱の接合構造1aについて以下説明する。図3は、第2実施形態に係る柱の接合構造1aを模式的に示す縦断面図であり、図4は、図3におけるC-C断面図である。接合構造1aの基本的な構成は、第1実施形態に係る接合構造1と同じであるので、重複する部分の説明は省略する。また、図3におけるD-D断面は、図2の(a)と同じ状態となるため図示を省略する。
【0033】
図3に示すように、接合構造1aは、接合鋼管部32の内面32aから上下に二枚の水平固定板(34a,35)が設けられる点が第1実施形態と異なる。第1実施形態における水平固定板34は、第2実施形態における第1水平固定板34aに相当する。接合構造1aは、第1水平固定板34aの上方に間隔を空けた位置に接合鋼管部32の内面32aから内側に水平方向に突出する環状の第2水平固定板35をさらに備える。第2実施形態の接合鋼管部32は、第2水平固定板35を設けた分、第1実施形態の接合鋼管部32よりも高さが多少高くなる。
【0034】
図4に示すように、第2水平固定板35は、第1水平固定板34aと同じ形状であってもよい。第2水平固定板35は、環状の鋼板である。第1水平固定板34a及び第2水平固定板35は、複数の鉛直固定板36に接合される。第2水平固定板35の外周端は内面32aに溶接されて一体化している。第2水平固定板35は、中央が四角く開口したロの字状であるが、上述したように第1水平固定板34aと共に接合鋼管部32の内面32aの形状に合わせた形状であってもよい。図4に示すように、第2水平固定板35は、複数の貫通孔35aが互いに間隔を空けて形成される。貫通孔35aは、接合鋼管部32内に延びる全ての主筋38に対応する位置に開口する。なお、図4では符号を記入するスペースの関係上、貫通孔35aの符号は四隅にのみ記載する。複数の主筋38は、複数の貫通孔35aを貫通する。各主筋38は、貫通孔35aに挿通された状態で、下端38aを固定部材40により第1水平固定板34aに固定される。
【0035】
鉛直固定板36の上端は、第2水平固定板35の下面に溶接されて一体化する。第2水平固定板35は、鉛直固定板36により上方への変形が抑制される。第1水平固定板34aの上方に第2水平固定板35が設けられることにより、主筋38が上方へ引っ張られることで第1水平固定板34aよりも上にあるコンクリート17が上方へ膨らむように変形することを抑制できる。このような変形を抑制することにより、地震動による接合構造1aにおける損傷を防止することができる。
【0036】
なお、第2実施形態の接合鋼管部32は、第1実施形態の接合鋼管部32に比べて高さが高くなるが、主筋38と第1水平固定板34aを介して強固に接合されるので、特許文献1のような高さは必要ない。そのため、接合鋼管部32内部における作業性は良好である。
【0037】
柱の接合構造1aの構築方法は、主筋38を第2水平固定板35に挿通した後で下端38aを固定部材40により固定する点が異なるが、他の工程は基本的に第1実施形態に係る構築方法と同じであるため、説明を省略する。
【0038】
3.第3実施形態
図5を用いて、第3実施形態に係る柱の接合構造1bについて以下説明する。図5は、第3実施形態に係る柱の接合構造1bを模式的に示す縦断面図である。接合構造1bの基本的な構成は、第1実施形態に係る接合構造1及び第2実施形態に係る接合構造1aと同じであるので、重複する部分の説明は省略する。
【0039】
図5に示すように、接合構造1bは、第2水平固定板35に主筋38が固定部材40により固定される点が第2実施形態と異なる。複数の主筋38は、第2水平固定板35に固定される。固定部材40は、第1実施形態に用いた固定部材40と同じでよい。
【0040】
主筋38が第2水平固定板35にも固定されることにより、主筋38と接合鋼管部32とが第1実施形態及び第2実施形態に比べてより強固に接合することになる。なお、第2実施形態及び第3実施形態ではいずれも鉛直固定板36を用いる例について説明したが、第1実施形態で説明したように鉛直固定板36が無くてもよい。
【0041】
柱の接合構造1bの構築方法は、主筋38を第2水平固定板35に挿通し固定部材40で固定した後で下端38aをさらに固定部材40により固定する点が異なるが、他の工程は基本的に第1実施形態に係る構築方法と同じであるため、説明を省略する。
【実施例0042】
上述した第2実施形態及び第3実施形態の接合構造1a,1bを採用した試験体を用いて静的繰り返し載荷実験を行った。以下、図3図5の符号を用いて説明する。
【0043】
(試験体)
CFT造の柱梁接合部10を上下に設け、2つの柱梁接合部10の間に高さ3300mmの鉄筋コンクリート柱30を構築した試験体を製作した。一方の柱梁接合部10に断面四角形の接合鋼管部32を溶接で接合してその内部に接合構造1a,1bを組み合わせて構築した。接合鋼管部32には、上下2枚の第1水平固定板34a及び第2水平固定板35と、第2水平固定板35からダイヤフラム16まで延びる24枚の鉛直固定板36とが内面32aに溶接された。全ての主筋38の下端38aが第1水平固定板34aを貫通した状態で定着プレート(固定部材40)を用いて固定された。接合鋼管部32は、高さ400mm、幅と奥行きが704mm、板厚が32mmであり、2枚の水平固定板(34a,35)は、中央開口の大きさが440×440mmで幅と奥行きが640mm、板厚が28mmであり、鉛直固定板36は高さが300mm、板厚が12mmであった。2枚の
水平固定板(34a,35)には24本の主筋38に対応して24か所に貫通孔が設けられた。その内、正面から見て右側にある第2水平固定板35の13か所の貫通孔35aでは主筋38を固定せず、左側にある11か所の貫通孔35aでは主筋38を定着プレート(固定部材40)で固定した。
【0044】
(実験条件)
試験体には軸力を+3089kN(引張軸力:鉄筋コンクリート柱30の引張降伏耐力の0.5倍に相当)、-6943kN(圧縮軸力:鉄筋コンクリート柱30の圧縮強度の0.2倍に相当)と変化させて、各軸力を一定に維持しながら徐々に変形角を大きくして繰返し水平載荷試験を行った。水平載荷は、載荷梁中心位置の水平変位δを下スタブ上面から上スタブ下面位置までの高さhで除した柱部材角(=δ/h)に基づいて変位制御した。
【0045】
(実験結果)
実験結果は、図6及び図7に示す通りである。図6は引張軸力3089kNにおける試験体の柱せん断力と柱部材角との関係を示すグラフであり、図7は圧縮軸力6943kNにおける試験体の柱せん断力と柱部材角との関係を示すグラフである。各グラフの縦軸が柱せん断力(kN)であり、横軸が柱部材角(×10-3rad)である。
【0046】
各図における破線が鉄筋コンクリート柱30の曲げ耐力の計算値である。各グラフに示す柱せん断力の実験値は鉄筋コンクリート柱30の曲げ耐力の計算値を超えており、柱の接合構造1a,1bは鉄筋コンクリート柱30の地震耐力に影響を与えることがない。また、接合構造1a,1bは終始損壊していなかった。
【0047】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b…柱の接合構造、10…柱梁接合部、12…鋼管柱、14…鉄骨梁、16…ダイヤフラム、16a…打設孔、17…コンクリート、30…鉄筋コンクリート柱、32…接合鋼管部、32a…内面、34…水平固定板、34a…第1水平固定板、35…第2水平固定板、35a…貫通孔、36…鉛直固定板、38…主筋、38a…下端、39…継手部、40…固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7