(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131524
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ヒ-トサ-モ式水位計
(51)【国際特許分類】
G01F 23/22 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01F23/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041846
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 暁
(72)【発明者】
【氏名】小園 俊晃
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝弘
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014AC05
2F014CA03
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い温度計も兼ねるヒ-トサ-モ式水位計を提供する。
【解決手段】ヒ-トサ-モ式水位計10Aは、水深方向に間隔を空けて配置される複数の第1温度センサ11
n(n=1~5)と、これら第1温度センサ11
n(n=1~5)の周囲に熱エネルギーを放出するヒータ15と、外側と同じ水位を保つ内側に第1温度センサ11
n(n=1~5)及びヒータ15が配置される筒状体16A(16)と、この筒状体16Aの外周面に配置される第2温度センサ12
n(n=1~5)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水深方向に間隔を空けて配置される複数の第1温度センサと、
前記第1温度センサの周囲に熱エネルギーを放出するヒータと、
外側と同じ水位を保つ内側に前記第1温度センサ及び前記ヒータが配置される筒状体と、
前記筒状体の外周面に配置される第2温度センサと、を備えるヒ-トサ-モ式水位計。
【請求項2】
請求項1に記載のヒ-トサ-モ式水位計において、
前記筒状体は、前記外側と前記内側を隔てる隔壁が中空構造を持つヒ-トサ-モ式水位計。
【請求項3】
請求項2に記載のヒ-トサ-モ式水位計において、
前記隔壁の前記中空構造は減圧密閉されるか又は媒体を循環されるヒ-トサ-モ式水位計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヒ-トサ-モ式水位計において、
前記筒状体の前記水深方向に前記第2温度センサが複数配置されているヒ-トサ-モ式水位計。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヒ-トサ-モ式水位計において、
前記ヒータに電流を流して前記熱エネルギーを放出させる通電部と、
複数の前記第1温度センサから温度信号を受信する第1受信部と、
前記熱エネルギーを放出後の複数の前記第1温度センサの温度信号の変化量に基づいて水位を判定する水位判定部と、
複数の前記第2温度センサから温度信号を受信する第2受信部と、
前記ヒータに前記熱エネルギーが放出されているか否かにかかわらず、受信した前記第2温度センサの温度信号に基づいて、前記筒状体の前記外側の水又は気体の温度を判定する温度判定部と、を備えるヒ-トサ-モ式水位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、温度計も兼ねるヒ-トサ-モ式水位計に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの燃料プールに設置される水位計としてヒ-トサ-モ式水位計が適用されている。このヒ-トサ-モ式水位計は、温度計とヒ-タを持ち、気中と水中の熱伝達性の違いを利用し、ヒータをONにした時の温度計の温度上昇の違いから、気中と水中を判別する。このため、ヒ-タをONにした場合、温度計の温度信号は、燃料プールの水温を正確に反映していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来のヒ-トサ-モ式水位計では、ヒータをONにするとその近傍の水温が上昇するため、水位と水温を同時計測できない。そこで、水位と水温を同時計測するために、ヒ-トサ-モ式水位計とは別に温度計を設置する必要がある。しかし、水温計測の信頼性を確保するためには、別個に設置する温度計を離してヒータ発熱の影響を排除する必要があり、機器が大きくなる課題がある。
【0005】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、信頼性の高い温度計も兼ねる小型のヒ-トサ-モ式水位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計において、水深方向に間隔を空けて配置される複数の第1温度センサと、前記第1温度センサの周囲に熱エネルギーを放出するヒータと、外側と同じ水位を保つ内側に前記第1温度センサ及び前記ヒータが配置される筒状体と、前記筒状体の外周面に配置される第2温度センサと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、信頼性の高い温度計も兼ねる小型のヒ-トサ-モ式水位計を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態を示すヒ-トサ-モ式水位計の概念を示すZ-X縦断面図及びその制御部のブロック図。
【
図2】第1実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計のX-Y水平断面図。
【
図3】本発明の第2実施形態を示すヒ-トサ-モ式水位計の概念を示すZ-X縦断面図。
【
図4】第2実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計のX-Y水平断面図。
【
図5】本発明の第3実施形態を示すヒ-トサ-モ式水位計の概念を示すZ-X縦断面図。
【
図6】第3実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計のX-Y水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示すヒ-トサ-モ式水位計10A(10)の概念を示すZ-X縦断面図及びその制御部20のブロック図である。
図2はヒ-トサ-モ式水位計10A(10)のX-Y水平断面図である。
【0010】
このようにヒ-トサ-モ式水位計10Aは、水深方向(Z軸方向)に間隔を空けて配置される複数の第1温度センサ11n(n=1~5)と、これら第1温度センサ11n(n=1~5)の周囲に熱エネルギーを放出するヒータ15と、外側と同じ水位を保つ内側に第1温度センサ11n(n=1~5)及びヒータ15が配置される筒状体16A(16)と、この筒状体16Aの外周面に配置される第2温度センサ12n(n=1~5)と、を備えている。
【0011】
ヒータ15は、
図1に示すように、下端の第1温度センサ11
1から上端の第1温度センサ11
5まで水深方向(Z軸方向)に沿って、断面視において
図2に示すように、電気抵抗が大きい二本で一対の素線で構成されている。この二本で一対の素線は、熱伝導度の高い酸化マグネシウムを充填した封入管に、封入されている。このヒータ15の通電で、ジュール熱の発生による熱エネルギーは、液相31及び気相32を介し外部放出される。
【0012】
なお図示においてヒータ15は、複数の第1温度センサ11n(n=1~5)の深さ方向全長にわたり、二本で一対の素線を配置したものを例示している。しかし、適用されるヒータ15は、これに限定されず、複数の第1温度センサ11n(n=1~5)の各々に、複数の二本で一対の素線の各々を対応して配置させることもできる。
【0013】
複数の第1温度センサ11n(n=1~5)は、その周囲が気相32であるか液相31であるかによって、熱エネルギーの熱拡散率が異なるために、ヒータ15を通電した後の出力値に違いが生じる。つまり第1温度センサ11nが気相32に露出している場合、ヒータ15から供給された熱エネルギーは、熱拡散率の小さな気相32に拡散しないために、その出力値を大きく上昇させる。その一方で第1温度センサ11nが液相31に浸漬している場合、ヒータ15から供給された熱エネルギーは、熱拡散率の大きな液相31に拡散するために、その出力値はあまり上昇しない。
【0014】
筒状体16A(16)は、容体30に収容された液相31に浸漬させた場合、その外側と内側が同じ水位17を保つように構成されている。すなわち、筒状体16A(16)は、深さ方向の下端と上端は開口を有し、容体30の液相31の水位17が変化した場合であっても、その内側において水位17が追従するように構成されている。
【0015】
筒状体16A(16)を形成する隔壁は、容体30に収容された液相31を、筒状体16Aの内側と外側に仕切るものである。このため筒状体16A(16)の内側でヒータ15が放出した熱エネルギーは、筒状体16A(16)の内側に留まりその外側への漏れを抑制できる。このため筒状体16A(16)の外周面に配置される第2温度センサ12n(n=1~5)は、ヒータ15が放出した熱エネルギーの影響を受けずに、その外側の液相31の温度(水温)を正確に検出できる。
【0016】
なお液相31を内側と外側に仕切る筒状体16Aの隔壁の材質は、金属、ガラス、樹脂等が挙げられ特に限定されないが、熱伝達係数の小さいものが望ましい。筒状体16Aの水平断面も円筒形状を例示しているがこれに限定されず、矩形、楕円等、任意の形状をとることができる。
【0017】
第1温度センサ11n(n=1~5)及び第2温度センサ12n(n=1~5)は、共通の構成を持つもので、先端が閉じられているシース管に熱電対の素線を収容したものである。そして、このシース管には、素線とともに絶縁材として酸化マグネシウムが充填されている。熱電対は、異種金属の素線が先端において溶接され、その反対端で検出される熱起電力に基づいて、この先端の周辺温度が計測される。
【0018】
そして
図2に示すように、第1温度センサ11
n(n=1~5)は、X-Y水平断面視においてヒータ15の外周に、同心円状に配置されている。また第2温度センサ12
n(n=1~5)も、X-Y水平断面視において筒状体16A(16)の外周に、同心円状に配置されている。なおX-Y水平断面視における第1温度センサ11
n(n=1~5)及び第2温度センサ12
n(n=1~5)の配置は特に限定されない。
【0019】
また第2温度センサ12n(n=1~5)は、筒状体16の長さ方向に、第1温度センサ11n(n=1~5)と、それぞれの高さを揃えて複数配置されている。これにより、容体30に収容されている液相31及び気相32の温度及び第1温度センサ11nによる水位判定の妥当性を検証することができる。さらには、液相31や気相32の深さ方向の温度分布を調べることもできる。しかし、そのような形態に限定されるものではなく、第2温度センサ12n(n=1~5)は、第1温度センサ11n(n=1~5)とそれぞれの高さを揃える必要はなく、数も合わせる必要もなく、例えば一つだけでもよい。
【0020】
図1に戻って説明を続ける。ヒ-トサ-モ式水位計の制御部20は、ヒータ15に電流を流し熱エネルギーを放出させる通電部25と、複数の第1温度センサ11
n(n=1~5)から温度信号を受信する第1受信部21と、熱エネルギーを放出後の複数の第1温度センサ11
n(n=1~5)の温度信号の変化量に基づいて水位17を判定する水位判定部26と、複数の第2温度センサ12
n(n=1~5)から温度信号を受信する第2受信部22と、ヒータ15から熱エネルギーが放出されているか否かにかかわらず受信した第2温度センサ12
n(n=1~5)の温度信号に基づいて液相31の温度(水温)を判定する温度判定部27と、を備えている。
【0021】
通電部25は、オペレータの指令に基づいて、ヒータ15に電流を流しジュール熱を発生させ、周辺に一定量の熱エネルギーを放出させる。なおヒータ15に流す電流の大きさ及び時間は、予め設定することができ水位判定部26から制御される。
【0022】
第1受信部21及び第2受信部22の各々は、複数の第1温度センサ11n(n=1~5)及び複数の第2温度センサ12n(n=1~5)の各々から温度信号を受信する。これら第1受信部21及び第2受信部22の各々は、通電部25の動作とは無関係にリアルタイムで温度信号を受信している。
【0023】
第1温度センサ11n(n=1~5)及び第2温度センサ12n(n=1~5)の各々からは、mVオーダーの電圧が温度信号として常時出力されている。ヒータ15に電流を流して発生させたジュール熱は、その周囲が気相32であるか液相31であるかによって熱拡散率が異なるために、電圧出力(温度信号)に違いを生じさせる。
【0024】
第1受信部21及び第2受信部22の各々は、第1温度センサ11n及び第2温度センサ12nから出力される微弱な電圧出力をアナログ回路で処理可能な電圧レベルの温度信号に変換して水位判定部26に出力する。
【0025】
水位判定部26は、ヒータ15による熱エネルギー放出後の温度信号の変化量に基づいて、対応する第1温度センサ11n(n=1~5)が液相31及び気相32のいずれに存在するか識別する。具体的には、温度信号の変化量が規定値より小さければ液相31、大きければ気相32に、対応する第1温度センサ11nが位置していると、認定される。そして水位判定部26は、液相31及び気相32の識別結果が切り替わる二つの第1温度センサ11nの間に水位17があると判定する。
【0026】
その一方で、温度判定部27では、ヒータ15に熱エネルギーが放出されているか否かにかかわらず、第2受信部22で受信した温度信号に基づいて、液相31と判定された位置の温度を判定する。また、気相32と判定された位置の温度も判定することができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に
図3から
図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図3は本発明の第2実施形態を示すヒ-トサ-モ式水位計10B(10)の概念を示すZ-X縦断面図である。
図4は第2実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計10B(10)のX-Y水平断面図である。第2実施形態のヒ-トサ-モ式水位計10Bは、上述した第1実施形態のヒ-トサ-モ式水位計10Aの構成のうち、筒状体16B(16)の構造が異なる。なお、
図3及び
図4において
図1及び
図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0028】
第2実施形態のヒ-トサ-モ式水位計10Bにおいて、筒状体16Bは、その外側と内側を隔てる隔壁が中空構造35を持つ。このように筒状体16Bの隔壁が二重壁で密閉された中空構造35を持つことで、筒状体16Bの内側と外側の断熱効果が向上し、外側に配置される第2温度センサ12n(n=1~5)は、内側でヒータ15が放出した熱エネルギーの影響を受けずに、液相31又は気相32の温度をさらに正確に検出できる。
【0029】
そして筒状体16Bの隔壁の中空構造35は減圧密閉して真空状態にすることで、さらに断熱効果が向上し、第2温度センサ12n(n=1~5)の液相31又は気相32の温度をさらに正確に検出できる。なお、第2実施形態における筒状体16Bは隔壁が二重壁で密閉された中空構造35とすることで筒状体16の内側と外側の断熱効果を向上させるため、第1実施形態における筒状体16Aほど隔壁の材質を限定する必要は無い。
【0030】
(第3実施形態)
次に
図5から
図6を参照して本発明における第3実施形態について説明する。
図5は本発明の第3実施形態を示すヒ-トサ-モ式水位計10C(10)の概念を示すZ-X縦断面図である。
図6は第3実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計10C(10)のX-Y水平断面図である。第3実施形態のヒ-トサ-モ式水位計10Cは、上述した第1実施形態及び第2実施形態のヒ-トサ-モ式水位計10A、10Bの構成のうち、筒状体16C(16)の構造が異なる。なお、
図5及び
図6において
図1及び
図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0031】
第3実施形態のヒ-トサ-モ式水位計10Cにおいて、筒状体16Cは、隔壁の中空構造35で循環させる媒体38のインレット36とアウトレット37が設けられている。このように、インレット36から導入された媒体38は、筒状体16Cの中空構造35の水深方向及び周方向を循環して、アウトレット37から排出される。これにより、筒状体16Cの内側でヒータ15が放出した熱エネルギーは、媒体38とともに外部に排出される。
【0032】
これにより、第2温度センサ12n(n=1~5)までヒータ15の熱エネルギーが到達することが抑制され、液相31または気相32の温度をさらに正確に検出できる。なお、第3実施形態における筒状体16Cは中空構造35に媒体38を循環させることで断熱効果を向上させるため、第1実施形態における筒状体16Aほど隔壁の材質を限定する必要は無い。また循環させる媒体38としては、液体や気体も取り得る。
【0033】
各実施形態に係るヒ-トサ-モ式水位計10によれば、口径の小さい配管に挿入し、内部の水位及び温度を同時に計測できる。すなわち、各実施形態で記載された構成を備えることにより、筒状体16は、ヒータ15の熱エネルギーが第2温度センサ12に伝わることを防ぐ。これにより、第2温度センサ12およびヒータ15の距離を近づけた場合でも、ヒータ15が放出した熱エネルギーの影響を受けずに、第2温度センサ12が液相31または気相32の温度を正確に検出できる。つまり、ヒートサーモ式水位計10のX―Y水平断面における断面積を小さくできるので、ヒートサーモ式水位計10を口径の小さい配管に挿入し、内部の水位及び水温を同時に計測できる。
【0034】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のヒ-トサ-モ式水位計によれば、筒状体の内側に第1温度センサ及びヒータが配置し、その外周面に第2温度センサを配置することにより、信頼性の高い温度計も兼ねる小型のヒ-トサ-モ式水位計が提供される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
10(10A,10B,10C)…ヒートサーモ式水位計、11…第1温度センサ、12…第2温度センサ、15…ヒータ、16(16A,16B,16C)…筒状体、17…水位、20…制御部、21…第1受信部、22…第2受信部、25…通電部、26…水位判定部、27…温度判定部、30…容体、31…液相、32…気相、35…中空構造、36…インレット、37…アウトレット、38…ガス媒体。