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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013154
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】し渣搬送装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
C02F11/00 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115134
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 潤
(72)【発明者】
【氏名】間々下 義広
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE01
4D059BE37
4D059BJ00
4D059BK11
4D059CB06
4D059EA20
4D059EB20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、し渣と水を混合する混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、混合部から分離部への導入における搬送経路上の閉塞発生を抑制し、し渣搬送に係る搬送効率の向上及び安定した稼働を可能とするし渣搬送装置を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、し渣と水を混合する混合部と、混合部で処理された混合水をし渣と分離水に分離する分離部と、分離水を混合部へ循環させる循環路と、混合部の内部にし渣を破砕する破砕部とを備え、混合水は一軸ねじポンプを介して混合部から分離部に導入され、分離水は破砕部のし渣流入側から循環させ、混合部内に分離水の流れを形成するし渣搬送装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
し渣と水を混合する混合部と、
前記混合部で処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離部と、
前記分離部で分離した分離水を前記混合部へ循環させる循環路と、
前記混合部の内部に、し渣を破砕するための破砕部と、を備え、
前記混合水は、一軸ねじポンプを介して前記混合部から前記分離部に導入され、
前記循環路は、前記分離水を前記破砕部のし渣流入側に循環させ、
前記混合部内には、し渣を搬送するための前記分離水の流れを形成することを特徴とする、し渣搬送装置。
【請求項2】
し渣を破砕する破砕部と、
し渣と水を混合する混合部と、
前記破砕部及び前記混合部で処理された混合水を、破砕されたし渣と分離水に分離する分離部と、
前記分離部で分離した分離水を前記混合部へ循環させる循環路と、
前記混合部に水を補給する水補給部と、を備え、
前記混合水は、一軸ねじポンプを介して前記混合部から前記分離部に導入され、
前記混合部内には、し渣を搬送するための前記分離水の流れを形成することを特徴とする、し渣搬送装置。
【請求項3】
前記水補給部は、水を貯留できることを特徴とする、請求項2に記載のし渣搬送装置。
【請求項4】
前記混合部の水位を制御する制御部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のし渣搬送装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し渣搬送装置に関する。更に詳しくは、し渣を破砕する機能を備えたし渣搬送装置であって、し渣の搬送を促進するとともに、搬送経路上において破砕後のし渣による閉塞発生を抑制することが可能なし渣搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備では、汚水中のし渣がバースクリーン等で捕集され、レーキ等により沈砂池から掻き揚げられる。掻き揚げられたし渣は、破砕機を介してし渣混合槽に投入される。し渣混合槽は、さらに水が供給され、破砕されたし渣と水を混合する。この破砕されたし渣と水の混合水は、ポンプの動力により配管移送され、し渣分離槽に搬送される。このようなし渣搬送装置では、し渣混合槽に常時多量の水を補給する必要があり、不経済であるばかりでなく、十分な水を補給できない場合には、採用できない。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、し渣と水との混合水を洗浄槽に搬送し、洗浄槽内からし渣を取り出して排出するし渣搬送方法において、洗浄槽の水を混合水に戻す方法が開示されている。また、特許文献1には、このし渣搬送方法により、水の補給をほとんど必要とせず、十分な補給水が得られない場所でも、し渣の搬送を可能とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-239596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法に基づくし渣搬送では、し渣と水の混合水をポンプ等の動力によって搬送する際に、し渣と水を混合する混合部の底にし渣が溜まってしまうことが課題となっている。
そこで、本発明者らは、し渣と水を混合する混合部内のし渣の搬送を促進するために、混合部で処理されたし渣と水の混合水を、し渣と分離水に分離する分離部に導入し、この分離水を混合部に循環させることで、混合部内に分離水の流れを形成し、し渣の搬送を促進できるという知見を得た。
【0006】
また、本発明者らは、この知見に基づき、さらに検討を重ねた結果、搬送対象となるし渣が増加し、破砕後のし渣を含む混合水の濃度(スラリー濃度)が高くなると、混合部からの混合水を分離部に導入するに当たり、移送に用いるポンプにおいて閉塞が発生しやすくなり、円滑なし渣搬送が困難になるという問題が生じることが分かった。
【0007】
したがって、本発明の課題は、し渣の搬送において、し渣と水を混合する混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、混合部から分離部への導入における搬送経路上の閉塞発生を抑制し、し渣搬送に係る搬送効率の向上及び安定した稼働を図ることができるし渣搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、し渣と水の混合水から分離された分離水を混合部へ循環させる際に、混合部内にし渣を搬送するための分離水の流れを形成するとともに、混合部からの混合水を分離部に導入するに当たり、特定のポンプを使用することにより、分離水の流れによる混合部内のし渣搬送促進と併せて、混合部から分離部への搬送経路上における閉塞発生の抑制を可能とし、し渣搬送効率を向上させ、かつ安定した稼働が可能になることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のし渣搬送装置である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のし渣搬送装置は、し渣と水を混合する混合部と、混合部で処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離部と、分離部で分離した分離水を混合部へ循環させる循環路と、混合部の内部に、し渣を破砕するための破砕部と、を備え、混合水は、一軸ねじポンプを介して混合部から分離部に導入され、循環路は、分離水を破砕部のし渣流入側に循環させ、混合部内には、し渣を搬送するための分離水の流れを形成することを特徴とする。
このし渣搬送装置によれば、し渣の搬送において、し渣の破砕と併せ、し渣と水の混合水から分離された分離水を利用し、し渣を搬送するための分離水の流れを混合部内に形成することで、常時多量の水を補給することなく、混合部内のし渣の搬送を促進することができる。
また、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明のし渣搬送装置の別態様は、し渣を破砕する破砕部と、し渣と水を混合する混合部と、破砕部及び混合部で処理された混合水を、破砕されたし渣と分離水に分離する分離部と、分離部で分離した分離水を混合部へ循環させる循環路と、混合部に水を補給する水補給部と、を備え、混合水は、一軸ねじポンプを介して混合部から分離部に導入され、混合部内には、し渣を搬送するための分離水の流れを形成することを特徴とする。
このし渣搬送装置によれば、し渣の搬送において、し渣の破砕及び分離水の活用と併せ、混合部に水を補給して混合部内の水量を増加することができるため、分離水の循環量が低下した場合でも、混合部内のし渣の搬送を促進することができる。
また、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0011】
また、本発明のし渣搬送装置の一実施態様としては、水補給部は、水を貯留できるという特徴を有する。
この特徴によれば、混合部内の水が不足した際に、貯留された水を補給することができるため、水の補給を迅速に実行することができる。
【0012】
また、本発明のし渣搬送装置の一実施態様としては、混合部の水位を制御する制御部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、混合部内においてし渣の搬送に必要な水量を維持することができるため、より一層安定的なし渣の搬送を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、し渣の搬送において、し渣と水を混合する混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、混合部から分離部への導入における搬送経路上の閉塞発生を抑制し、し渣搬送に係る搬送効率の向上及び安定した稼働を図ることができるし渣搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様のし渣搬送装置で用いる一軸ねじポンプの構造の一例を示す概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
図4】本発明の第3の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
図5】本発明の第4の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
図6】本発明の第5の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のし渣搬送装置は、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集され、レーキ等により沈砂池から掻き揚げられたし渣の搬送に用いられる。
また、本発明のし渣搬送装置は、し渣搬送において、ポンプ等により配管移送を行うものである。本発明によれば、し渣を配管で移送するため、汚水の飛散や臭気の漏れ等を防止することができる。
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るし渣搬送装置の実施態様を詳細に説明する。また、実施態様に記載するし渣搬送装置については、本発明に係るし渣搬送装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様におけるし渣搬送装置1Aの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るし渣搬送装置1Aは、図1に示すように、し渣と水が投入され、し渣と水を混合する混合部2Aと、混合部2Aの内部に設置され、し渣を破砕する破砕部3Aと、破砕されたし渣と水の混合水(以下、単に「混合水」という。)をし渣と分離水に分離する分離部4と、分離部4から排出された分離水を混合部2Aに循環する循環路L1と、を備えた構成からなる。また、図1に示すように、し渣搬送装置1Aは、混合部2Aと分離部4とを接続し、混合水を搬送する混合水搬送路L2と、混合水搬送路L2上に設けられる一軸ねじポンプ5と、を備える。なお、図1中の矢印は水の流れを示すものである。
【0018】
本実施態様に係るし渣搬送装置1Aによるし渣の搬送について、概略を説明する。
まず、し渣及び水を混合部2Aに投入し、混合部2A内に設けられた破砕部3Aでし渣を破砕した後、得られた混合水を、破砕部3Aの後段側から混合部2A外に排出し、混合水搬送路L2及び一軸ねじポンプ5を介して分離部4に搬送する。そして、この混合水は、分離部4でし渣と分離水に分離される。さらに、この分離水が、循環路L1を介して混合部2Aに供給されることで、し渣搬送装置1A内を分離水が循環し、分離水の流れが混合部2A内に形成される。
以下、本実施態様におけるし渣搬送装置1Aの各構成について説明する。
【0019】
[混合部]
混合部2Aは、し渣と水を混合する工程を行うためのものであり、所定の水位まで水が貯められている水路型の槽からなるものが挙げられる。
混合部2Aには、沈砂池設備から掻き揚げられた(除去された)し渣が、し渣搬送機により投入されるとともに、し渣をスラリー化するための水が投入される。
本実施態様において、混合部2Aに対するし渣及び水の投入手段及び投入に係る構造については特に限定されない。例えば、し渣搬送装置1Aの前段にし渣と水を予め混合する混合槽(不図示)を設けることや、し渣搬送装置1Aに対してし渣を投入する箇所と水を導入する箇所をそれぞれ独立して設けること等が挙げられる。
また、混合部2Aに投入される水については特に限定されず、上水、用水、処理水などが挙げられる。水の調達に係るコストを鑑みると、下水処理場などの処理施設から排出される処理水を活用することが特に好ましい。
【0020】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Aは、混合部2Aの一端側に、し渣及び水を投入するとともに、後述する分離部4による固液分離処理を経た分離水を投入する分離水投入部21Aを設け、混合部2Aの他端側には、破砕部3Aを通過した混合水を排出する混合水排出部22が設けられている。そして、混合部2Aの内部には、し渣を搬送するための分離水の流れF1が形成されている。
図1に示すように、本実施態様のし渣搬送装置1Aにおける分離水の流れF1の方向は、分離水投入部21Aから混合部2Aの内部に設置された破砕部3Aの方向に向かっており、この分離水の流れF1により、混合部2Aの底に溜まったし渣を破砕部3Aに搬送することができる。さらに、破砕部3Aを通過した混合水は、分離水の流れF1によって、混合水排出部22まで搬送される。
【0021】
混合部2A内で分離水の流れF1を形成するための手段としては、特に制限されず、例えば、図1に示すように、混合部2Aの底面を傾斜させ、分離水を投入する分離水投入部21Aと混合水を排出する混合水排出部22の間に高低差を設け、混合部2A内の位置エネルギーを利用することが挙げられる。
また、分離水の流れF1を形成する他の手段としては、循環路L1内に分離水を流通させるためのポンプや重力等のエネルギーを利用することのほか、混合部2A内にスクリュー等の動力により流れを形成する装置(撹拌装置等)を設けることなどが挙げられる。さらに他の手段としては、混合部2A内には流れを形成するための装置(撹拌装置等)を特に設けず、混合水排出部22から排出した混合水を分離部4まで移送するためのポンプ(一軸ねじポンプ5)等の作用によって混合部2A内に分離水の流れF1を形成することもできる。
【0022】
分離水の流れF1を形成する手段は複数設けるものとしてもよい。例えば、本実施態様におけるし渣搬送装置1Aとしては、混合部2Aの底面を傾斜させることによる位置エネルギーを利用することに加え、循環路L1内に分離水を流通させるためのエネルギーを利用して、混合部2Aの底部付近に分離水の流れF1を形成することが挙げられる。
具体的な構成としては、分離部4を地上に設置して、この分離部4と地下に設けられた混合部2Aを配管からなる循環路L1により連結する。そして、分離部4から混合部2Aの位置エネルギーによって循環路L1内に分離水を流通させることができる。なお、循環路L1内に分離水を流通させるためのエネルギーとしては、どのようなものでもよく、ポンプ等を利用してもよい。
【0023】
混合部2Aには、し渣搬送を円滑に行うための各種構成を設けるものとしてもよい。
例えば、混合部2Aに水位計Sを設け、観測した水位に応じた対応を行うものとしてもよい。より具体的には、水位計Sの測定結果に応じ、混合部2Aの水位を制御する制御部を設けることが好ましい。
制御部による制御の一例としては、混合部2Aの水位が所定値より低下した場合に、し渣の搬送を継続する際には、制御部により、混合部2Aに投入される水の投入量を増加させるという対応を行うことが挙げられる。これにより、混合部2内でし渣の搬送に必要な水量が維持されるため、安定的なし渣の搬送を実現することができる。
また、水位計Sの観測結果に応じた対応の別態様としては、混合部2Aにドレン部を設け、必要に応じて混合部2Aに残存するし渣や混合水をドレンとして系外に排出することや、混合部2A上部に排水部を設け、オーバーフローによる排水を行うこと等が挙げられる。
【0024】
[破砕部]
破砕部3Aは、し渣を破砕する工程を行うために使用されるものである。し渣を破砕することにより、混合部2A内のし渣の搬送をより促進することができる。また、し渣は、下水や汚水等に含まれる金属類やプラスチック類、下着、雑巾、脱脂綿等の繊維類等であり、これらのし渣は、ポンプ、脱水機、撹拌機等の後段の機器に絡みついて機器の故障の原因となる。そのため、破砕部3Aによりし渣を破砕することにより、機器の故障等を防止することができる。また、し渣を破砕することにより、し渣の洗浄効率を高めることもできる。
【0025】
本実施態様における破砕部3Aは、図1に示すように、混合部2Aの内部に設置される。また、破砕部3Aとしては、破砕機を用いることが挙げられる。
ここで、破砕部3Aとして用いる破砕機は、どのような形式のものを使用してもよく、例えば、駆動軸に複数の破砕刃を備えた二軸破砕機等を用いればよい。本実施態様においては、破砕機を混合部2Aの内部に設置することから、駆動軸を立設する縦型の二軸破砕機が特に好ましい。
また、破砕機の設置に関しては、混合部2Aの水面に対して傾斜させることが好ましい。より具体的には、混合部2Aの傾斜した底面に対し、縦型の二軸破砕機の駆動軸が傾斜あるいは垂直となるように立設することが好ましい。これにより、破砕機の上流側にし渣が滞留することを抑制して、破砕機へし渣を容易に流入させることができる。その結果、し渣の破砕をより促進することができる。
【0026】
破砕部3Aで破砕されたし渣と水とが混合した混合水は、混合水排出部22より排出される。混合部2Aから排出された混合水は、後述する一軸ねじポンプ5によって混合水搬送路L2を通って分離部4に搬送される。
【0027】
[混合水搬送路]
混合水搬送路L2は、混合部2Aから排出された混合水を分離部4に搬送するためのものであり、混合部2Aの混合水排出部22と、分離部4とを接続する配管からなるものが挙げられる。なお、混合水搬送路L2上には、後述する一軸ねじポンプ5が設けられる。
【0028】
また、図1に示すように、混合水搬送路L2を分岐させ、混合部2Aへ混合水を返送する混合水返送路L3を設けるものとしてもよい。混合水返送路L3によれば、分離部4を一時停止する場合などにおいても、混合水搬送路L2の一軸ねじポンプ5の駆動状態を維持することができ、し渣搬送自体を完全に停止させる必要がないため、安定した稼働が可能となる。また、混合部2A内の分離水の流れを促進することもできる。
【0029】
なお、混合水返送路L3を直接又は分岐して循環路L1に連結してもよい。これにより、返送される混合水が分離水の流れを形成するために利用されるため、混合部2Aの底部に溜まったし渣の搬送をより促進することができる。
【0030】
[一軸ねじポンプ]
一軸ねじポンプ5は、混合水搬送路L2上に設けられ、混合部2Aから排出された混合水を、混合水搬送路L2を通じて分離部4に搬送するために用いられるものである。
一軸ねじポンプ5は、一軸偏心ねじポンプ、モーノポンプとも呼称され、容積式ポンプの一種である。一般に、一軸ねじポンプは、他の容積式ポンプ(ロータリーポンプ等)と比べ、圧送時の脈動が少なく、定量精度に優れるという利点を有することが知られている。また、流動性の低い搬送対象物の搬送にも利用されている。
【0031】
図2は、本実施態様のし渣搬送装置1Aで用いる一軸ねじポンプ5の構造の一例を示す概略説明図である。
図2に示すように、本実施態様で用いる一軸ねじポンプ5としては、駆動部50と、ポンプ本体51と、吸込部52と、吐出部53と、を備えるものが挙げられる。
【0032】
駆動部50には、ケーシング501内に取り付けられた軸受を介し、駆動源(不図示)と連結した駆動軸502が回転可能となるように設けられている。
【0033】
ポンプ本体51には、ケーシング510内において内面が雌ねじ状となるように形成されたステータ511と、ステータ511内に回転可能に挿通される雄ねじ状のロータ512が設けられている。そして、ステータ511とロータ512の間には空間513が形成される。この空間513は、ロータ512がステータ511内で偏心回転することにより、強い吸引力の発生を伴いながら、吐出部53側へと移動する。これにより、吸込部52を介して導入された搬送対象物は、空間513内に取り込まれるとともに、吐出部53側へと連続搬送されることになる。また、空間513の移動に際し、強い吸引力の発生を伴うため、流動性の低い搬送対象物の搬送にも好適に利用することができる。
ここで、ロータ512の横断面の形状としては、円形が挙げられる。また、ステータ511の横断面の形状としては、対向する2つの半円と、この半円を結ぶ直線からなる長円形が挙げられる。
【0034】
吸込部52には、駆動部50とポンプ本体51とを接続するように設けられるケーシング520に対し、搬送対象物を一軸ねじポンプ5内に導入するための吸込口521が設けられる。
また、吸込部52のケーシング520内には、駆動軸502とロータ511とを接続するためのジョイント部522として、ユニバーサルジョイント(自在継手)522aとロッド(自在継手軸)522bが設けられる。なお、ジョイント部522は、ロータ512を偏心回転させるための構成の一例であり、他の構造物・機構により、ロータ512の偏心回転が可能である場合、省略することも可能である。
【0035】
吐出部53には、ポンプ本体51のケーシング520端部、あるいはステータ511と接続した吐出口531が設けられる。これにより、吸込口521からポンプ本体51に導入された搬送対象物(混合水)は、吐出口531を介して搬送箇所(分離部4)へと搬送される。
【0036】
一軸ねじポンプ5では、空間513の断面積が、ロータ512の位置によらず、常に一定の値を示すことになる。このため、一軸ねじポンプ5から吐出される搬送対象物の量も常に一定となり、圧送時の脈動が少ない定量移送を行うことが可能となる。
【0037】
従来、し渣搬送においては、無閉塞ポンプとして、回転軸に取り付けられた羽根車の回転による遠心力を利用した非容積式ポンプ(ターボポンプ)が主に用いられてきた。
一方、本発明者らは、し渣搬送に係る検討を続けた結果として、し渣搬送装置に供給されるし渣の量が増加し、破砕されたし渣を含む混合水中のし渣濃度が増加すると、無閉塞ポンプにおける遠心力を発生するための機構(羽根車や回転軸等)にし渣が絡みつきやすくなり、その結果、搬送経路上で閉塞を起こしやすくなる傾向を示すという知見を得た。
【0038】
ここで、一軸ねじポンプ5は、上述のとおり、定量移送とともに、流動性の低い搬送対象物の搬送にも利用される。しかし、一軸ねじポンプ5を用いて破砕前のし渣を搬送した場合、繊維類のような紐状物質が一軸ねじポンプ5を構成する部品に絡みつくことによる過負荷が生じることや、し渣自体及びし渣に付着した付着物により一軸ねじポンプ5を構成する部品の摩耗を早めるおそれがある。
一方、本実施態様のし渣搬送装置1Aでは、一軸ねじポンプ5(混合水搬送路L2)における搬送対象物である混合水は、混合部2A及び破砕部3Aを経ることで、破砕及び洗浄処理されたし渣を含む混合水である。このため、し渣濃度が高まった場合においても、し渣自体は紐状物質が細断され、付着物が除去されたものとなるから、一軸ねじポンプ5を構成する部品に対する絡みつきや部品の摩耗を抑制することが可能となる。
したがって、本実施態様のし渣搬送装置1Aにおいて、混合部2Aから分離部4に混合水を導入するに際し、一軸ねじポンプ5を用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0039】
[分離部]
分離部4は、混合部2Aから混合水搬送路L2を介して供給される混合水を、し渣と分離水に分離する工程を行うためのものである。
分離部4は、固液分離処理を行うことができる装置であればどのようなものでもよく、例えば、ドラム型の濾過装置や、遠心分離装置等が挙げられる。
分離部4で分離された分離水は、循環路L1を通って混合部2Aに供給される。これにより、上述したように、混合部2A内では分離水の流れF1が形成される。一方、分離部4で分離されたし渣は、脱水機やし渣洗浄機等で処理される。
なお、分離部4には、固液分離処理後の装置内を洗浄する洗浄水を供給するものとしてもよい。
【0040】
以上のように、本実施態様におけるし渣搬送装置により、し渣の搬送において、し渣の破砕と併せ、し渣と水の混合水から分離された分離水を利用し、し渣を搬送するための分離水の流れを混合部内に形成することで、常時多量の水を補給することなく、混合部内のし渣の搬送を促進することができる。また、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0041】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様のし渣搬送装置1Bの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るし渣搬送装置1Bは、図3に示すように、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aの構成に加え、混合部2Aに水を補給する水補給部6を備えるものである。
なお、本実施態様におけるし渣搬送装置1Bの構成のうち、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0042】
[水補給部]
水補給部6は、混合部2A内の水が不足した場合や、混合部2A内の水を交換する場合に、混合部2Aに水を補給するためのものである。水補給部6から混合部2Aに補給する水は、どのようなものを使用してもよく、例えば、下水処理場、浄水場、ポンプ場等の水処理設備から発生する処理水や、農業用水、工業用水等の用水や、上水等が利用される。また、し渣搬送装置1Bから排出される排水を利用してもよい。
【0043】
水補給部6は、配管を介して用水や上水から取水してもよいが、水を貯留可能な補給水槽6aを備えていることが好ましい。これにより、混合部2A内の水が不足した場合に、貯留された水を補給することができるため、水の補給を迅速に実行することができる。また、混合部2A内の水を交換する場合にも、早期の立ち上げが可能であり、維持管理作業が容易になる。
【0044】
また、水補給部6による水の補給は、混合部2Aの水位を制御する制御部により制御されるものとしてもよい。例えば、混合部2Aに設けた水位計Sにより、混合部2A内の水が不足したことを検知した際、制御部から水補給部6に指令が送られ、補給水槽6a内の水を混合部2Aに補給することが挙げられる。これにより、混合部2A内にし渣の搬送に必要な水量が維持されるため、安定的なし渣の搬送を実現することができる。
【0045】
また、図3に示すように、水補給部6から循環路L1に水を供給してもよい。これにより、分離水の流れF1に係る強度(流速)を高めることができ、混合部2A内のし渣の搬送をより促進することができる。なお、循環路L1への水の供給は、補給水槽6aを介して給水してもよい。
【0046】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Bにおいては、し渣の搬送において、し渣の破砕及び分離水の活用と併せ、混合部に水を補給して混合部内の水量を増加することができるため、分離水の循環量が低下した場合でも、混合部内のし渣の搬送を促進することができる。
また、し渣搬送装置1Bにおいても、上述したし渣搬送装置1Aと同様に、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0047】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様のし渣搬送装置1Cの構造を示す概略説明図である。
本実施態様におけるし渣搬送装置1Cは、第2の実施態様におけるし渣搬送装置1Bの混合部2Aに代えて、略水平な底面を有する構造からなる混合部2Bを備えている。また、本実施態様に係るし渣搬送装置1Cは、第2の実施態様におけるし渣搬送装置1Bの破砕部2Aに代えて、破砕部3Bとして横型の二軸破砕機を使用するものであり、破砕部3Bは混合部2Bの外部に設置されている。
なお、本実施態様におけるし渣搬送装置1Cの構成のうち、第2の実施態様のし渣搬送装置1Bの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0048】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Cでは、し渣は、破砕部3Bで破砕した後に、混合部2Bに投入される。この構成によれば、し渣が破砕されて小さくなっていることから、混合部2Bの底部で溜まりにくいという効果がある。
【0049】
し渣搬送装置1Cにおいて、分離部4からの分離水を混合部2Bに投入するに当たり、上述した分離水投入部21Aを用いるものとしてもよいが、分離水投入部21Aに代えて、図4に示す分離水投入部21Bを用いることが好ましい。
図4に示すように、分離水投入部21Bは、循環路L1を構成する配管が、混合部2Bの底部付近まで延設し、該配管の末端が混合水排出部22の方向に向けて屈折し、吐出部を形成しているものである。分離水投入部21Bは、混合水排出部22の方向に分離水を投入するため、分離水投入部21Bの吐出部と反対側の水を分離水の流れ方向に引き込む作用がある。すなわち、分離水投入部21Bの吐出部の反対側(背面側)では、分離水の流れF2が形成される。そのため、破砕部3Bは、分離水投入部21Bの吐出部の背面側に設置されているが、し渣の搬送が促進されるものとなる。
【0050】
また、し渣搬送装置1Cにおいても、上述したし渣搬送装置1Bと同様に、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0051】
〔第4の実施態様〕
図5は、本発明の第4の実施態様のし渣搬送装置1Dの構成を示す概略説明図である。このし渣搬送装置1Dは、第3の実施態様のし渣搬送装置1Cの循環路L1の配管を分岐して、循環する分離水の一部を破砕部3Bに投入する構成である。この構成によれば、分離水投入部21Bの吐出部の反対側(背面側)における分離水の流れF2が強まるため、し渣の搬送をより促進することができる。
【0052】
また、し渣搬送装置1Dにおいても、上述したし渣搬送装置1Cと同様に、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0053】
〔第5の実施態様〕
図6は、本発明の第5の実施態様のし渣搬送装置1Eの構成を示す概略説明図である。このし渣搬送装置1Eは、第3の実施態様のし渣搬送装置1Cの破砕部3Bの位置を、分離水投入部21Bより分離水の流れ方向上流側(混合水排出部22側)に設置した構成である。この構成によれば、分離水の流れF1が強い領域にし渣が投入されるため、混合部2Bの底面におけるし渣の溜まりが抑制され、し渣の搬送をより促進することができる。
【0054】
また、し渣搬送装置1Eにおいても、上述したし渣搬送装置1Cと同様に、破砕されたし渣を含む混合水を混合部から分離部に搬送するに当たり、容積型ポンプの一種であり、圧送時の脈動が少なく、流動性の低い搬送対象物の搬送に適した一軸ねじポンプを用いることで、搬送経路上における閉塞発生を抑制し、安定したし渣搬送とともに、装置全体の安定稼働が可能となる。
【0055】
なお、上述した実施態様はし渣搬送装置の一例を示すものである。本発明に係るし渣搬送装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るし渣搬送装置を変形してもよい。
【0056】
例えば、本実施態様のし渣搬送装置において、破砕されたし渣と水が混合した混合水は、混合水排出部を介して混合部外に排出される。このとき、混合水中のし渣含有量に偏りが存在すると、混合水排出部や一軸ねじポンプの閉塞を生じさせるおそれがあるため、混合水を均一化して排出することが望ましい。
混合水の均一化を行う手段としては、混合水を撹拌する手段を設けることが挙げられる。これにより、混合水の均一化に加え、破砕後のし渣洗浄を促進することができる。
ここで、上述したとおり、し渣には繊維類が含まれることから、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌では、これらのし渣が破砕後に再度集まったり、撹拌羽根に絡みつくなどして、撹拌機の過負荷や混合水排出部の閉塞を発生させることがある。そのため、機械撹拌によらない撹拌手段を設けることが好ましく、例えば、破砕部の後段に清水を供給し、供給した清水により混合部内に旋回流を発生させることが挙げられる。これにより、機械撹拌によらず、混合水を撹拌し、均一化を図ることが可能となる。また、混合水の円滑な搬送をより確実に行うことができる。
【0057】
また、本実施態様のし渣搬送装置において、分離部に洗浄水を導入し、洗浄操作を行う場合、分離水には分離部を洗浄した洗浄水が含まれるため、混合部から搬送された混合水よりも水量が増加するという状況が生じる。このため、分離部から直接分離水を混合部に循環させると、混合部ではオーバーフローが起きることになる。このオーバーフローの頻度が増加すると、し渣搬出機により混合部に投入されたし渣が、破砕部に向かって搬送される前に混合部外に排出されてしまい、し渣搬送効率が低下するという問題が生じてしまう。このため、混合部に流入させる分離水の流入量を調整することが望ましい。
混合部に流入させる分離水の流入量を調整する手段としては、特に限定されないが、例えば、分離部と混合部を接続する循環路上に、分離水の一部を排水する手段を設けることが挙げられる。
具体例としては、分離水を一時貯留する調整槽を循環路上に設け、調整槽内に設けられた堰を越えた分離水のみを循環路を介して混合部に導入することが挙げられる。このとき、堰の形状や、調整槽内に配置する堰の高さや位置を設計することによって、混合部には一定量(所定量)の分離水を流入させ、し渣搬送装置として分離水の循環を適切に行うことが可能となる。これにより、分離水の流量調整に機械的な操作を必要とせず、不具合が生じにくいという利点を奏する。
また、別の例としては、循環路から分岐した分岐配管及び開閉弁を設けることが挙げられる。この開閉弁を開放することで、循環路内を流れる分離水の一部を排水し、混合部に流入させる分離水の流入量を調整することが可能となる。このとき、開閉弁の開閉操作については、作業者が適宜行うものとしてもよく、制御部による開閉操作の制御を行うものとしてもよい。制御部による開閉弁の開閉操作に係る制御の一例としては、例えば、開操作と閉操作を所定間隔で定期的に繰り返すことや、混合部に設けた水位計の測定結果に基づき開閉操作に係る制御を行うことなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のし渣搬送装置は、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣の搬送に好適に用いられる。また、本発明のし渣搬送装置は、分離水を循環して使用するため、利用可能な水が少ないポンプ場等において、特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B,1C,1D,1E し渣搬送装置、2A,2B 混合部、21A,21B 分離水投入部、22 混合水排出部、3A,3B 破砕部、4 分離部、5 一軸ねじポンプ、50 駆動部、501 ケーシング、502 駆動軸、51 ポンプ本体、510 ケーシング、511 ステータ、512 ロータ、513 空間、52 吸込部、520 ケーシング、521 吸込口、522 ジョイント部、522a ユニバーサルジョイント、522b ロッド、53 吐出部、531 吐出口、6 水補給部、6a 補給水槽、F1,F2 分離水の流れ、L1 循環路、L2 混合水搬送路、L3 混合水返送路、S 水位計
図1
図2
図3
図4
図5
図6