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特開2024-131577セパレート型の自動車用ハンドルカバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131577
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】セパレート型の自動車用ハンドルカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041926
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114709
【氏名又は名称】槌屋ヤック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】中村 優花
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DB52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】嵌め込みだけで強固に装着でき、しかも装着部分に装着痕が残らず、握り心地のよいセパレート型の自動車用ハンドルカバーを提供する。
【解決手段】自動車用ハンドルカバーAはセパレート型で左右一対のカバーパーツAr・Alで構成されている。カバーパーツAr・Alはインナー部材1とアウター部材10とで構成されている。インナー部材1は軟質部材で、ハンドルHのグリップ部分Gr・Glの曲線形状に合わせて曲成され、内周側にインナー開口部が形成されている。アウター部材10は硬質部材で、インナー部材1を外から覆うように形成されている。インナー部材1の外形形状は、アウター部材10の外形形状より大きく、グリップ部分Gr・Glにそれぞれを装着された時に、インナー部材1の外周縁がアウター部材10の外周縁から露出するように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ハンドルHのリムRの両側部であるグリップ部分Gr・Glに外側から取り付けられる左右一対のカバーパーツAr・Alで構成されたセパレート型の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記グリップ部分Gr・Glの曲線形状に合わせて曲成され、その内周側の全長に亘って前記グリップ部分Gr・Glが挿脱するインナー開口部9が形成され、軟質部材で形成されたインナー部材1と、
硬質部材で形成され、前記インナー部材1を覆うアウター部材10とを含み、
前記インナー部材1の外形形状は、前記アウター部材10の外形形状より大きく、前記グリップ部分Gr・Glにそれぞれを装着された時に、前記インナー部材1の外周縁2が前記アウター部材10の外周縁12から露出するように形成されてなることを特徴とする自動車用ハンドルカバー。
【請求項2】
自動車用ハンドルHのリムRの両側部であるグリップ部分Gr・Glに外側から取り付けられる左右一対のカバーパーツAr・Alで構成されたセパレート型の自動車用ハンドルカバーAであって、
硬質部材にて前記グリップ部分Gr・Glの曲線形状に合わせて曲成され、その内周側の全長に亘って前記グリップ部分Gr・Glが挿脱するアウター開口部19が形成されたアウター部材10と、
軟質部材にて前記アウター部材10の内面に一体的に設けられ、前記アウター部材10の外形形状より大きく、前記グリップ部分Gr・Glにそれぞれを装着された時に、前記アウター部材10の外周縁12からその外周縁2が露出するように形成されたインナー部材1とを含むことを特徴とする自動車用ハンドルカバー。
【請求項3】
前記インナー部材1の摩擦係数は前記アウター部材10の摩擦係数より大であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用ハンドルカバー。
【請求項4】
前記アウター部材10に窓部15が設けられ、前記インナー部材1に前記窓部15に嵌り込み、外部に露出する凸部5が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用ハンドルカバー。
【請求項5】
前記窓部15は、前記左右のグリップ部分Gr・Glに前記左右一対のアウター部材10がそれぞれ装着された時、前記左右一対のアウター部材10の背の上部三分の一の範囲に穿設されていることを特徴とする請求項4に記載の自動車用ハンドルカバー。
【請求項6】
前記窓部15の下に、前記左右一対のアウター部材10の背から側辺13に掛けてV形窪み18が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動車用ハンドルカバー。
【請求項7】
前記アウター部材10に内面が空洞となった膨出部16が設けられ、
前記膨出部16に嵌り込む凸部5が前記インナー部材1に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用ハンドルカバー。
【請求項8】
前記膨出部16は、前記左右のグリップ部分Gr・Glに前記左右一対のアウター部材10がそれぞれ装着された時、前記左右一対のアウター部材10の背の上部三分の一の範囲に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の自動車用ハンドルカバー。
【請求項9】
前記膨出部16の下に、前記左右一対のアウター部材10の背から側辺13に掛けてV形窪み18が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の自動車用ハンドルカバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ハンドルのリムの左右のグリップ部分にそれぞれ装着して使用されるセパレート型の自動車用ハンドルカバーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に標準装備されているハンドルの中には、リム径の細いものがあるが、このような細いリム径のものは握り難く、運転がし難いというユーザーの声があった。標準ハンドルは黒を基調としたものが一般的であるため、単調でデザイン性に乏しいとの声もあった。また、従来のハンドルカバーはデザイン性が乏しく、また、ハンドルのリム全面を覆ってしまうので、もともとの純正ハンドルのデザイン性を生かすことができず、車両との一体感が得られないという欠点もあった。
【0003】
このようなユーザーの声を解消すべく、ハンドルのリムの全周に装着して使用される丸型のハンドルカバーが従来から提供されている(非特許文献1参照)。
【0004】
従来の丸型ハンドルカバーの構造について簡単に説明しておくと、丸型ハンドルカバーは正面視環状の中空部材で、その内周面には切開部が全周にわたって形成されている。丸型ハンドルカバーの周方向に対して直交する方向の断面形状は、切開部が僅かな幅を以って切開されているため、略C字状をなしており、その内部空間であるリム収容部内にリムを嵌め込むことで丸型ハンドルカバーのリムへの装着が完了する。
【0005】
しかし、このような従来の丸型ハンドルカバーは、安全対策上、運転中にハンドルからハンドルカバーがずれたり、外れたりしないように伸び難い材料で且つハンドルに対して若干きつめに作られている。そのため、自動車用ハンドルカバーのリムへの装着は、大変な労力を伴うものであった。
【0006】
そこで、弾性体で構成され、左右2パーツに分かれた中空で断面C字状のセパレート型のハンドルカバーが提案された(特許文献1)。これら2パーツをカバーパーツとする。
このセパレート型のカバーパーツは、ハンドルのリムに対応して形成された左右一対のリムカバー体と、該リムカバー体の内周面から内側に一体的に伸びたスポークカバー体とで構成され、その下面にはハンドルのリムやスポークが挿脱される開口部が形成されている。
【0007】
このセパレート型のカバーパーツのリム及びスポークへの装着に当たっては、上記開口部を開きながらハンドルのリム及びスポークにワンタッチで嵌め込む。これによってカバーパーツの弾発力でリム及びスポークに左右のハンドルカバーが固定される。そして、このハンドルカバーはスポークカバー体が有るので、リムの周方向のズレは生じない。そして、その弾発力でリム及びスポークに嵌め込まれた左右のハンドルカバーはリム及びスポークから容易に離脱しない。装着に関しては、弾発力だけで接着剤や両面テープを使用することはない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】槌屋ヤック株式会社ホームページ、”ハンドルカバー ハイブリッドレザー S BK/RE”、[online]、槌屋ヤック株式会社、[令和1年6月7日検索]、インターネット<URL:https://www.yacjp.co.jp/products/detail/231>
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7-6037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のセパレート型のハンドルカバーは、上記のように開口部を開きながら上からハンドルのリム及びスポークにワンタッチで嵌め込むことができるので、丸型ハンドルカバーと異なり装脱に非常に便利であるが、それ故、ユーザーの好みの変化に合わせて取り換えられることが多い。
【0011】
この従来のセパレート型のハンドルカバーは、上記のように接着剤や両面テープを使用せず、嵌め込みだけで強固にハンドルに固定されるため、カバーパーツの周縁がハンドルのグリップ部分の表面に強く接するように設計されている。その結果、左右のカバーパーツをグリップ部分から外すとカバーパーツの周縁が強く当たっていた部分に圧迫痕として線状の凹みがハンドルの表面に残ってしまい、ユーザーに不評であった。なお、この従来のセパレート型のハンドルカバーのカバーパーツは、全体として同じ太さでその表面は平坦な円弧曲面の作りであったので、その表面のデザインを、例えば、花柄や毛皮調の化粧面とするなどの工夫をするだけで、握り心地の改善までには至っていなかった。
【0012】
本発明は、掛かる従来の問題点に鑑みてなされたもので、接着剤や両面テープを使用せず、嵌め込みだけで強固に装着でき、しかも装着部分に装着痕が残らず、握り心地のよいセパレート型の自動車用ハンドルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載した発明は、左右一対のカバーパーツAr・Alがインナー部材1とアウター部材10の2パーツで構成され、分離している場合である(図2)。
自動車用ハンドルHのリムRの両側部であるグリップ部分Gr・Glに外側から取り付けられる左右一対のカバーパーツAr・Alで構成されたセパレート型の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記グリップ部分Gr・Glの曲線形状に合わせて曲成され、その内周側の全長に亘って前記グリップ部分Gr・Glが挿脱するインナー開口部9が形成され、軟質部材で形成されたインナー部材1と、
硬質部材で形成され、前記インナー部材1を覆うアウター部材10とを含み、
前記インナー部材1の外形形状は、前記アウター部材10の外形形状より大きく、前記グリップ部分Gr・Glにそれぞれを装着された時に、前記インナー部材1の外周縁2が前記アウター部材10の外周縁12から露出するように形成されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載した発明は、左右一対のカバーパーツAr・Alがインナー部材1とアウター部材10の2パーツで構成され、両者が一体化している場合である(図1)。
自動車用ハンドルHのリムRの両側部であるグリップ部分Gr・Glに外側から取り付けられる左右一対のカバーパーツAr・Alで構成されたセパレート型の自動車用ハンドルカバーAであって、
硬質部材にて前記グリップ部分Gr・Glの曲線形状に合わせて曲成され、その内周側の全長に亘って前記グリップ部分Gr・Glが挿脱するアウター開口部19が形成されたアウター部材10と、
軟質部材にて前記アウター部材10の内面に一体的に設けられ、前記アウター部材10の外形形状より大きく、前記グリップ部分Gr・Glにそれぞれを装着された時に、前記アウター部材10の外周縁12からその外周縁2が露出するように形成されたインナー部材1とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記インナー部材1の摩擦係数は前記アウター部材10の摩擦係数より大であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載した発明は、請求項1又は2に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記アウター部材10に窓部15が設けられ、前記インナー部材1に前記窓部15に嵌り込み、外部に露出する凸部5が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記窓部15は、前記左右のグリップ部分Gr・Glに前記左右一対のアウター部材10がそれぞれ装着された時、前記左右一対のアウター部材10の背の上部三分の一の範囲に穿設されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載した発明は、請求項4に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記窓部15の下に、前記左右一対のアウター部材10の背から側辺13に掛けてV形窪み18が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載した発明は、請求項1又は2に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記アウター部材10に内面が空洞となった膨出部16が設けられ、
前記膨出部16に嵌り込む凸部5が前記インナー部材1に設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載した発明は、請求項7に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記膨出部16は、前記左右のグリップ部分Gr・Glに前記左右一対のアウター部材10がそれぞれ装着された時、前記左右一対のアウター部材10の背の上部三分の一の範囲に形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載した発明は、請求項7に記載の自動車用ハンドルカバーAであって、
前記膨出部16の下に、前記左右一対のアウター部材10の背から側辺13に掛けてV形窪み18が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、インナー部材1の外形形状がアウター部材10の外形形状より大きく、グリップ部分Gr・Glにこれらをそれぞれ装着した時に、インナー部材1の外周縁2がアウター部材10の外周縁12から露出して食み出すように形成されているので、装着部分であるグリップ部分Gr・Glに装着痕が残らないという利点がある。加えて、本自動車用ハンドルHは、以下のような工夫がなされているので運転の安全性向上にもつながる。
【0023】
インナー部材1の摩擦係数がアウター部材10の摩擦係数より大となるようにしてあるので、本自動車用ハンドルカバーAを接着剤や両面テープを使用しなくても嵌め込みだけでハンドルHの所定の位置に強固に装着できるという利点がある。
【0024】
また、アウター部材10に窓部15が設けられ、インナー部材1に該窓部15に嵌り込み、外部に露出する凸部5が設けられておれば、自動車用ハンドルカバーAを握った時、柔らかい感触の凸部5に触れることで、硬いイメージの自動車用ハンドルHにソフトな感触を与えることができる。また、凸部5によりハンドルHの回転角度を視認することが出来、特に車庫入れの場合に安全である。ハンドルHの回転角度を視認することが出来る点は、アウター部材10に膨出部16を設けた場合にも適用できる。
【0025】
そして、自動車用ハンドルHに装着されたハンドルカバーAの上部三分の一の範囲に窓部15を形成しておけば、常時、ここからハンドルHを握った手のひらに柔らかい感触の凸部5が触れ、通常の硬いハンドルHと違った感覚を運転者に与え続けることが出来る。
【0026】
また、窓部15又は膨出部16の下に、V形窪み18を形成しておけば、握り位置を変えるためにハンドルHの中間部分に握り直した時、親指と人差し指とがV形窪み18に沿って嵌り込み、より握りやすさを実感することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る自動車用ハンドルカバーの装着状態の正面図である。
図2】カバーパーツが内外2つのパーツで構成されている場合の分解正面図である。
図3】カバーパーツのインナー部材の正面図である。
図4図3の右側面図である。
図5図3の左側面図である。
図6図5のA-A断面図である。
図7図3の平面図である。
図8】カバーパーツのアウター部材の正面図である。
図9図8の右側面図である。
図10図8の左側面図である。
図11図10のB-B断面図である。
図12図10の平面図である。
図13図1の右側のカバーパーツの縦断面図である。
図14】右側のカバーパーツの上部を握った状態の部分正面図である。
図15】右側のカバーパーツの中間部を握った状態の部分正面図である。
図16図13のC-C断面矢視図である。
図17】窓部の代わりにアウター部材に膨出部を設けた図1の右側のカバーパーツの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図面に従って説明する。本発明にかかる自動車用ハンドルカバーAは、左右対称で一対のカバーパーツAr・Alで構成されている。そして、カバーパーツAr・Alはそれぞれインナー部材1とアウター部材10の2パーツで構成されている。インナー部材1とアウター部材10とは一体的に形成されている場合と、図2のように分離している場合とがある。図1はカバーパーツAr・AlがハンドルHのリムRに装着されている場合で、インナー部材1とアウター部材10とが一体的に形成されている場合、一体として装着されることになる。これに対して分離している場合は、インナー部材1を装着した後、その上から被せるようにアウター部材10を装着することになる。
本発明にかかる自動車用ハンドルカバーAが適用される自動車ハンドルHのリムRは、丸型の他、図示していないが、ヨークハンドルにも適用できる。なお、構成部材を左右で区別する必要がある場合は、それぞれの符号に小文字のr又はlを付して区別する。
【0029】
インナー部材1の外形形状は、アウター部材10の外形形状より大きく、図の実施例では相似形である。勿論、インナー部材1の外形形状の方がアウター部材10の外形形状より若干大きければよく、相似形である必要はない。
従って、自動車用ハンドルHのリムRの所定の位置(左右側部のグリップ部分Gr・Gl)にインナー部材1を装着し、その上からアウター部材10を嵌め込むと、アウター部材10の外周縁12からインナー部材1の外周縁2が食み出し、アウター部材10の外周縁12がリムRの装着位置に接触しないように保護している。
【0030】
これらカバーパーツAR・ALは自動車用ハンドルHのリムRの上下方向の中心線から左右振り分けでθ1~θ2、-θ1~-θ2の範囲をそれぞれ覆うようになっている。本実施例では約40°~約140°、約-40°~約-140°位の範囲で、この範囲がリムRのグリップ部分Gr・Glとなる。勿論、上記範囲は約0°~180°、約0°~約-180°として、リムRを左右二分し、それぞれに左右から装着するようにしてもよいし、上記の範囲より狭い範囲でも良い。
【0031】
インナー部材1は、リムRやアウター部材10に対して殆ど滑らない程度の高い摩擦係数を持つ、例えば、シリコンゴムのような摩擦係数の高い軟質樹脂シートで形成され、その断面は湾曲した浅いC形に成形されており、その内周側には上端から下端に至るインナー開口部9が設けられている。
インナー部材1の外周縁2の上面には全周にわたって凸条3が設けられている。この凸条3に後述するアウター部材10の外周縁12が接触又は近接するので、凸条3の突出代はアウター部材10の外周縁12の肉厚にほぼ等しい高さに形成されている。
【0032】
インナー部材1の外周縁2は図3に示すように、波形に形成されており、インナー部材1を上部1a、中間部1b、下部1cと三分割した場合、上部1aと中間部1bの間の部分と中間部1bと下部1cの間の部分が内側に抉られて凹湾曲している。これらを上凹湾曲部2m、下凹湾曲部2nとする。本実施例では、約三分の一ずつに三分割した例を示すが、勿論、これに限られることはない。
これに対して、インナー部材1の上部1a、中間部1b、下部1cの各部分の外周縁2は外側に凸湾曲し、リムRの内側まで入り込むようになっている。これらを上部凸湾曲部2p、中間凸湾曲部2q及び下部凸湾曲部2rとする。本実施例では、インナー部材1の外周縁2が波形に形成された場合を示したが、勿論、これに限られず、波形とせず外周に対して同心円状に形成してもよい。
【0033】
インナー部材1の上部1aの背には、上部1aの6割程度の長さでインナー部材1の長手方向に凸部5が突設されている。凸部5の下端部分はV字形に形成されている。この部分をV形成部分5vとする。
この凸部5は、後述するアウター部材10の窓部15(又は、膨出部16の内面形状)と同じ形状で、インナー部材1にアウター部材10を装着した場合、凸部5が窓部15より若干外に飛び出す高さ(又は、膨出部16内に嵌り込む大きさ)に形成されている。そして、凸部5の上端とインナー部材1の上端との間には、アウター部材10の上部枠15wが嵌り込むスペースが設けられている。
【0034】
凸部5の内面側は中空に形成されており、本実施例では、1本の長い縦リブ5rと3本の短い横リブ5sが設けられている。リブの本数は勿論、限られることはない。
これら縦リブ5rと横リブ5sとは装着時、グリップ部分Gr・Glの外面に接する高さに形成されている(図13図17)。
凸部5が、後述するように窓部15から露出している場合、凸部5を背の部分から押した場合にこれら縦リブ5rと横リブ5sが抵抗となり、凸部5の強い弾力性を実現し、両側から摘まめば凸部5が容易に凹んで弾性を伴う柔らかさを実現する。
【0035】
アウター部材10は、窓部15を設けたものと、窓部15の代わりに膨出部16を設けたものがある。最初に、窓部15を設けたアウター部材10を説明し、その後で、膨出部16を設けたアウター部材10を説明する。膨出部16を設けたアウター部材10の説明では窓部15を設けたアウター部材10と同じ部分は説明を省略し、異なった部分を中心に説明する。省略した部分は窓部15を設けたアウター部材10の説明を援用する。
【0036】
窓部15(膨出部16)を設けたアウター部材10は本体部分21と表面の装飾部分11に分かれている。本体部分21は例えばポリカーボネートやポリプロピレンのような硬質プラスチック(エンジニアリング・プラスチック)で成形されている。
装飾部分11は本体部分21の外面全面に貼り合わされている。装飾部分11としては、合成皮革、布、化粧シートなどが使用される。これらを装飾部分11全面に使用してもよいし、パッチワーク的に素材を変えてもよい。
【0037】
本体部分21の内面形状は、リムRの装着部分(グリップ部分Gr・Gl)の形状に合わせて正面視で湾曲した浅いC形で成形されており、その長手方向に直交する断面は同装着部分の断面に合わせて深いC形に成形され、内周側に全長に亘ってアウター開口部19が形成されている。
【0038】
アウター部材10の内径寸法は、装着時に後述するインナー部材1をリムRの装着部分に強く締め付けることが出来るようにリムRに装着されたインナー部材1の肉厚より小さく形成されている。
【0039】
アウター部材10の外面形状も、インナー部材1に合わせて上部10a、中間部10b及び下部10cの3つに分かれている。例えば、上部10a、中間部10b及び下部10cの割合は、上部10a:中間部10b:下部10c=ほぼ1:1:0.3~0.5に分かれている。(勿論、この分割比は限定されるものではない。)この点はインナー部材1も同様である。上部10aと中間部10bとが通常の握り部分となる。
【0040】
アウター部材10の外周縁12はインナー部材1に合わせてグリップ時の指の位置に合わせて波形に形成されている。
アウター部材10を上部10a、中間部10b、下部10cと三分割した場合、上部10aと中間部10bの間の部分と、中間部10bと下部10cの間の部分が内側に抉られて凹湾曲している。これらを上凹湾曲部12m、下凹湾曲部12nとする。
これに対して、アウター部材10の上部10a、中間部10b、下部10cの各部分の外周縁12は外側に凸湾曲し、リムRの内側まで入り込むようになっている。これらを上部凸湾曲部12p、中間凸湾曲部12q及び下部凸湾曲部12rとする。
【0041】
アウター部材10の上部10aの背には窓部15が穿設されている。窓部15の形状はインナー部材1の凸部5の形状に合わせて穿設されている。窓部15の下端部を形成する上部10aのV形に形成されている部分を下枠V形成部分15vとする。
【0042】
そして、アウター部材10の上部10aの背の部分に設けられた窓部15の周囲は上記下枠V形成部分15vも含めて盛り上がっており、下枠V形成部分15vはインナー部材1の背の部分から離れ、この部分に空間が形成されている。下枠V形成部分15vは上部10aの両外周縁12まで伸びている。
ただし、両外周縁12を含む上部10aの上部凸湾曲部12pはインナー部材1を介してリムRのグリップ部分Gr・Glに強く接触するように装着されたインナー部材1のほぼ肉厚分だけ小さく形成されている。
また、窓部15の上部を構成する上部枠15wは同様にインナー部材1を介してリムRのグリップ部分Gr・Glに強く接触するように形成されている(図13丸枠内)。
【0043】
アウター部材10の中間部10bの背の部分は、上部10aと下部10cより一段低く作られており、内面はインナー部材1の外面に密着する。中間部10bの上部は上記下枠V形成部分15vに合わせ、且つ下枠V形成部分15vより一段低くV形に形成されている。この一段低くV形に形成されている部分をV形窪み18とする(図10)。
V形窪み18はアウター部材10の上凹湾曲部12mまで繋がっている。そして、V形窪み18の傾斜面17は下枠V形成部分15vからなだらかな凹曲面に形成され、ドライバーの親指と人差し指の手のひら側の曲面にフィットするように形成されている。
【0044】
アウター部材10の中間部10bの下の部分はグリップした手の掌底が当たる部分で、中間部10bの下縁は半円形に形成され、該半円形の下縁がアウター部材10の中間凸湾曲部12qまで外周縁12に沿って斜めに伸びている。
アウター部材10の中間部10bの背の部分は手のひらに合わせたなだらかな凸曲面に形成され、上記半円形の下縁の部分は掌底の形状に合わせた急な凹円弧面に形成されている。
なお、アウター部材10の中間部10bの中間凸湾曲部12qは中間部10bをグリップ部分Gr・Glにしっかりと装着できるように、インナー部材1の中間凸湾曲部2qに食い込むようにほぼその肉厚分だけ小さく形成されている。
【0045】
アウター部材10の下部10cは、中間部10bより一段高くなるように形成されている。アウター部材10の下部10cの下縁はインナー部材1の下縁に弾接するように形成され、アウター部材10の下部10cとインナー部材1との間には三角形の隙間が生じるようになっている(図13丸枠)。
そして、下部10cの下部凸湾曲部12rも上記同様、インナー部材1の下部凸湾曲部2rに食い込むようにほぼその肉厚分だけ小さく形成されている
【0046】
膨出部16を設けたアウター部材10は、窓部15の代わりに窓部15の位置に膨出部16が設けられている。膨出部16の内面形状は凸部5の外面形状に一致し、装着時、凸部5が膨出部16の空洞内面に嵌り込むことになる。それ以外は窓部15を設けたアウター部材10と同じである。
【0047】
次に、自動車用ハンドルカバーA(左右一対のカバーパーツAr・Alがインナー部材1とアウター部材10の2パーツで構成されて分離し、且つアウター部材10に窓部15が設けられている場合)を自動車用ハンドルHのリムRの両側部であるグリップ部分Gr・Glに装着する手順を説明する。
まず、左右のインナー部材1のインナー開口部9を開き、これらをリムRの所定の箇所(左右のグリップ部分Gr・Gl)に対称に取り付ける。左右のインナー部材1は柔軟樹脂製であるから、簡単に上記範囲においてリムRの接触部分全面で接触する。左右のインナー部材1の摩擦係数は大であるので、リムRに対してスリップすることはない。
【0048】
次に、左右のアウター部材10のアウター開口部19を開き、上記左右のインナー部材1を覆うように装着する。インナー部材1の凸部5はアウター部材10の窓部15に嵌り込み、窓部15から若干突出する。
本実施例では、アウター部材10の外形形状はインナー部材1の外形形状と相似形(勿論、相似形でなく、アウター部材10の外形形状がインナー部材1の外形形状より大きければ足る。)で、アウター部材10よりインナー部材1の方が若干大きく形成されているので、インナー部材1の外周縁2の凸条3がアウター部材10の外周縁12より食み出した状態となる。これによって、アウター部材10の外周縁12は全周にわたって自動車用ハンドルHのリムRの表面に接触しない。凸条3はアウター部材10の外周縁12と同じ高さなので、凸条3に手が触れたとしても違和感を生じさせない。
【0049】
また、アウター部材10のインナー部材1に接触する部分(特に、上部凸湾曲部12p、中間凸湾曲部12q及び下部凸湾曲部12r)の内径は、リムRに装着されたインナー部材1の肉厚より若干小さく形成されているので、アウター部材10はインナー部材1を締め付け、インナー部材1の高い摩擦力と相俟ってインナー部材1がリムRに対して滑りを生じることがない。同時に、アウター部材10は上記のようにリムRに装着されたインナー部材を強く締め付けているので、アウター部材10がインナー部材に対して滑りや脱離を生じることがない。
【0050】
自動車用ハンドルカバーA(左右一対のカバーパーツAr・Alがインナー部材1とアウター部材10の2パーツで構成されて分離し、且つアウター部材10に膨出部16が設けられている場合)を自動車用ハンドルHのリムRの両側部であるグリップ部分Gr・Glに装着する手順は、凸部5が膨出部16の内面に嵌り込む点以外は上記と同じである。
【0051】
上記はセパレート型のハンドルカバーAのカバーパーツAr・Alが、インナー部材1とアウター部材10の分離した2パーツで形成された場合を示したが、インナー部材1をアウター部材10に接着して一体としてもよい。
或いは、アウター部材10を金型に嵌め込み、インナー部材1の素材を加圧加熱成形してアウター部材10の内面に上記形状で一体的に貼り付けてもよい。
【0052】
この場合は、一体となったカバーパーツAr・Alをインナー開口部9で開き、グリップ部分Gr・Glに押し込んで装着することになる。この時、インナー部材1の外周縁2の凸条3がアウター部材10の外周縁12から食み出した状態で形成されているので、上記装着時に凸条3が内側に巻き込まれるようなことがない。
【0053】
このように自動車用ハンドルカバーAが装着された自動車用ハンドルHの操作に付いて説明する。
通常、ドライバーはカバーパーツAr・Alのアウター部材10の上部10aの部分を握る。
窓部15を設けたアウター部材10の場合、この部分はインナー部材1の凸部5がアウター部材10の窓部15から突出しているため、常時、この柔らかい凸部5がドライバーの手のひらに心地よい刺激を与え続ける。
【0054】
しかしながら、ドライバーは運転中、同じ場所を握り続けることはなく、ハンドルを切ったり、グリップ場所を変える。ドライバーがカバーパーツAr・Al(即ち、アウター部材10)の中間部10bを握ることもある。この場合、アウター部材10の中間部10bの下枠V形成部分15vの傾斜面17に手の親指と人差し指とがフィットして握りやすい。手を下にずらすと掌底が中間部10bの半円部分にフィットすることになり、安定感を感じさせる。
【0055】
進路変更や方向転換、バック運転のためにハンドルHを回す場合、アウター部材10の窓部15から突出しているインナー部材1の凸部5(或いはアウター部材10の膨出部16)や、凹んでいるV形窪み18が手に触れ、特にバック運転時にハンドルHの回転角度を確認しやすいというメリットもある。
そして、上記のようにハンドルカバーAの左右のカバーパーツAr・Alが、ハンドルHのリムRにそれぞれ強固に取り付けられているので、運転中に左右のカバーパーツAr・Alに個別に大きな力が加わってもカバーパーツAr・AlがリムRからずれたり、離脱したりすることがなく安全運転が実現する。
【0056】
そして、ハンドルカバーAを交換する場合、カバーパーツAr・Alが分離した2パーツで形成されている場合、アウター開口部19を開きつつアウター部材10を外側に強く引っ張れば、アウター部材10がグリップ部分Gr・Glから外れる。続いてインナー部材1を外側に軽く引っ張れば、インナー開口部9が開き、インナー部材1がグリップ部分Gr・Glから簡単に外れる。
【0057】
これに対して、カバーパーツAr・Alが一体化されている場合、インナー開口部9を開きつつカバーパーツAr・Alを外側に強く引っ張れば、カバーパーツAr・Alがグリップ部分Gr・Glから外れる。
【0058】
この時、インナー部材1の外周縁2がアウター部材10の外周縁12から食み出しているので、アウター部材10の外周縁12の全周がグリップ部分Gr・Glの表面に非接触となり、グリップ部分Gr・Glを傷付けるというようなことがない。
【符号の説明】
【0059】
A:セパレート型の自動車用ハンドルカバー、Ar・Al:カバーパーツ、Gr・Gl:グリップ部分、H:自動車用ハンドル、R:リム、1:インナー部材、1a:上部、1b:中間部、1c:下部、2:インナー部材の外周縁、2m:上凹湾曲部,2n:下凹湾曲部,2p:上部凸湾曲部,2q:中間凸湾曲部,2r:下部凸湾曲部,3:凸条、5:凸部、5r:縦リブ,5s:横リブ,5v;V形成部分、9:インナー開口部、10:アウター部材、10a:上部、10b:中間部、10c:下部、11:装飾部分、12:アウター部材の外周縁、12p:上部凸湾曲部、12q:中間凸湾曲部、12r:下部凸湾曲部、12m:上凹湾曲部,12n:下凹湾曲部,13:アウター部材の側辺、15:窓部、15v:下枠V形成部分、15w:上部枠、16:膨出部、17:V形窪みの傾斜面、18:V形窪み、19:アウター開口部,21:本体部分

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