(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131578
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240920BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240920BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240920BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/08
C08K3/013
C08F210/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041928
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 修平
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB05X
4J002BB11W
4J002BB12W
4J002DE066
4J002DE076
4J002DE086
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4J002DE116
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4J002DE146
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4J002DE236
4J002DG046
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4J002DJ036
4J002DJ046
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4J002GN00
4J100AA02P
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4J100DA09
4J100DA11
4J100DA13
4J100DA42
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】得られる成形体の表面外観と流動性とのバランスに優れ、引張破断ひずみの誤差が小さいプロピレン系樹脂組成物およびその組成物を含むペレットを提供すること。
【解決手段】要件(A1-a)を満たすプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上含有するプロピレン系重合体(A)30~95質量部と、要件(B-a)~要件(B-e)をすべて満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)5~40質量部と、無機物(C)0~30質量部と(ただし、前記プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部とする。)を含有する、プロピレン系樹脂組成物。要件(A-a)および要件(B-a)~要件(B-e)の詳細は明細書中に示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A1-a)を満たすプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上含有するプロピレン系重合体(A)30~95質量部と、
下記要件(B-a)~要件(B-e)をすべて満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)5~40質量部と、
無機物(C)0~30質量部と(ただし、前記プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部とする。)
を含有する、プロピレン系樹脂組成物。
要件(A1-a):ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が1~200g/10分の範囲にある。
要件(B-a):エチレンに由来する構成単位(i)70~95モル%と、1-ブテンに由来する構成単位(ii)5~30モル%と(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする。)を含む。
要件(B-b):密度が850~880kg/m3の範囲にある。
要件(B-c):ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が2.0~20.0g/10分の範囲にある。
要件(B-d):ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)に対する、ASTM D1238に準拠した190℃、10kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR10)の比(MFR10/MFR2.16)が7.1~9.5の範囲にある。
要件(B-e):デカリン中135℃で測定した極限粘度が1.00dl/g以上1.29dl/g未満の範囲にある。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体(A1)の室温(23℃)におけるデカン可溶部量が、プロピレン系重合体(A1)の全質量に対して5~30質量%の範囲にある、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記プロピレン系重合体(A1)のデカン可溶部における、デカリン中135℃で測定した極限粘度が1.0~10.0dl/gの範囲にある、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含むペレット。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む、自動車用内装材および外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、その優れた物性を活用して自動車部品、機械部品、電気部品などの広範な分野で利用されているが、用途毎に要求される物性に対応するために、樹脂における分子構造の変更、あるいは種々の添加剤を配合する等の処方をとっている。例えば、自動車部品などの高い機械強度を要求する分野では、プロピレン系ブロック共重合体にエチレン・1-ブテン共重合体などのエラストマーや無機充填剤を配合した組成物を調製している。
【0003】
特に自動車の無塗装内外装材用途において、高光沢(光の反射)であることにより運転者の視界を妨げる事があるため、低光沢である内外装材が求められる。また、自動車用途の普遍的なニーズである薄肉化に対して、高流動であること、および引張破断ひずみの誤差が小さくなることが求められる。特許文献1および2には、エチレン・1-ブテン共重合体を含むプロピレン系樹脂組成物が開示され、低光沢を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-124272号公報
【特許文献2】特開2007-92049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエチレン・1-ブテン共重合体を含むプロピレン系樹脂組成物では、低光沢を実現し、さらに高流動で引張破断ひずみの誤差を小さくすることは困難であった。本発明の課題は、得られる成形体の表面外観と流動性とのバランスに優れ、引張破断ひずみの誤差が小さいプロピレン系樹脂組成物およびその組成物を含むペレットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]
下記要件(A1-a)を満たすプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上含有するプロピレン系重合体(A)30~95質量部と、
下記要件(B-a)~要件(B-e)をすべて満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)5~40質量部と、
無機物(C)0~30質量部と(ただし、前記プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部とする。)
を含有する、プロピレン系樹脂組成物。
要件(A1-a):ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が1~200g/10分の範囲にある。
要件(B-a):エチレンに由来する構成単位(i)70~95モル%と、1-ブテンに由来する構成単位(ii)5~30モル%と(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする。)を含む。
要件(B-b):密度が850~880kg/m3の範囲にある。
要件(B-c):ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が2.0~20.0g/10分の範囲にある。
要件(B-d):ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)に対する、ASTM D1238に準拠した190℃、10kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR10)の比(MFR10/MFR2.16)が7.1~9.5の範囲にある。
要件(B-e):デカリン中135℃で測定した極限粘度が1.00dl/g以上1.29dl/g未満の範囲にある。
【0007】
[2]
前記プロピレン系重合体(A1)の室温(23℃)におけるデカン可溶部量が、プロピレン系重合体(A1)の全質量に対して5~30質量%の範囲にある、[1]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【0008】
[3]
前記プロピレン系重合体(A1)のデカン可溶部における、デカリン中135℃で測定した極限粘度が1.0~10.0dl/gの範囲にある、[1]または[2]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【0009】
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を含むペレット。
【0010】
[5]
[1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【0011】
[6]
[1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を含む、自動車用内装材および外装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る一実施形態によれば、得られる成形体の表面外観、流動性に優れ、引張破断ひずみの誤差が小さいプロピレン系樹脂組成物およびその組成物を含むペレットが提供される。また、本発明に係る一実施形態によれば、表面外観、流動性に優れ、引張破断ひずみの誤差が小さい成形体ならびに自動車用内装材および外装材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本明細書において、特に限定しない限りにおいて、組成物中の各成分、または、ポリマー中の各構成単位は1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
本明細書において、組成物中の各成分、または、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、または、ポリマー中の各構成単位に該当する物質または構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する物質またはポリマー中に存在する複数の各構成単位の合計量を意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
(プロピレン系樹脂組成物)
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、下記要件(A1-a)を満たすプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上含有するプロピレン系重合体(A)30~95質量部と、下記要件(B-a)~要件(B-e)をすべて満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)5~40質量部と、無機物(C)0~30質量部と(ただし、前記プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部とする。)を含有する。
要件(A1-a):ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が1~200g/10分の範囲にある。
要件(B-a):エチレンに由来する構成単位(i)70~95モル%と、1-ブテンに由来する構成単位(ii)5~30モル%と(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする)を含む。
要件(B-b):密度が850~880kg/m3の範囲にある。
要件(B-c):ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が2.0~20.0g/10分の範囲にある。
要件(B-d):ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)に対する、ASTM D1238に準拠した190℃、10kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR10)の比(MFR10/MFR2.16)が7.1~9.5の範囲にある。
要件(B-e):デカリン中135℃で測定した極限粘度が1.00dl/g以上1.29dl/g未満の範囲にある。
【0015】
前記プロピレン系樹脂組成物は、前記構成を有することで、得られる成形体の表面外観と流動性に優れ、かつ引張破断ひずみの誤差が小さい。
この理由は明らかではないが、以下のように推察される。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、要件(A1-a)を満たすプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上含有するプロピレン系重合体(A)30~95質量部と、特定のMFR2.16およびメルトフローレートの比(MFR10/MFR2.16)を有するエチレン・1-ブテン共重合体(B)5~40質量部とを含有する。したがって、溶融後固化した状態のプロピレン系樹脂組成物中において、プロピレン系重合体(A)相に分散したエチレン・1-ブテン共重合体(B)相の構造の扁平度が低くなっており、この現象が、プロピレン系樹脂組成物の表面外観と流動性に優れ、かつ引張破断ひずみの誤差が小さくなる理由であると推察している。
以下、プロピレン系樹脂組成物の各構成について詳細に説明する。
【0016】
<プロピレン系重合体(A)>
プロピレン系重合体(A)としては、特に制限はなく、プロピレン単独重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィン(以下、「他のα-オレフィン」ともいう。)との共重合体であってもよい。前記共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
表面外観と流動性に優れ、かつ引張破断ひずみの誤差が小さくなるという観点から、プロピレン系重合体(A)は、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0017】
プロピレン系重合体(A)は、プロピレンを主成分とするプロピレン系重合体である。プロピレン系重合体(A)において、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、プロピレン系重合体(A)を構成する全構成単位の合計100モル%に対して50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
前記他のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テ卜ラドデセン、1-ヘキサドデセン、1-オクタドデセン、1-エイコセン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ジエチル-1-ブテン、トリメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジメチル-1-ペンテン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、メチルエチル-1-へプテン、トリメチル-1-へプテン、エチル-1-オクテン、メチル-1-ノネン等のエチレンおよび炭素原子数4~20のα-オレフィンが挙げられる。
【0019】
これらの中でも、他のα-オレフィンとしては、エチレンおよび炭素原子数4~8のα-オレフィンが好ましく、エチレン、1-ヘキセンおよび1-オクテンがより好ましい。
前記他のα-オレフィンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0020】
プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体の好適な具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体としては、プロピレン・エチレン共重合体が好ましい。
【0021】
プロピレン系重合体(A)を構成するモノマーであるプロピレンおよび他のα-オレフィンは、例えば、化石燃料由来のモノマーまたはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
表面外観と流動性に優れ、かつ引張破断ひずみの誤差が小さくなるという観点から、プロピレン系重合体(A)は、プロピレン系ブロック共重合体およびプロピレン系ランダム共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体であることが好ましく、プロピレン・エチレンブロック共重合体およびプロピレン・エチレンランダム共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体であることがより好ましく、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることがさらに好ましい。
【0023】
プロピレン系重合体(A)は、要件(A1-a)を満たすプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上含有する。
【0024】
<<要件(A1-a)>>
ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が1~200g/10分の範囲にある。
プロピレン系重合体(A1)のMFRが前記範囲にあると、流動性に優れ、得られる自動車用内装材および自動車用外装材の成形性に優れる。
前記観点から、プロピレン系重合体(A1)の前記MFRは、好ましくは5~175g/10分、より好ましくは10~150g/10分、さらに好ましくは20~120g/10分の範囲にある。
【0025】
プロピレン系重合体(A1)の室温(23℃)におけるデカン可溶部量は、プロピレン系重合体(A1)の全質量に対して5~30質量%の範囲にあることが好ましい。
前記室温(23℃)におけるデカン可溶部とは、プロピレン系重合体(A1)をn-デカン溶媒で分別した際の、23℃のn-デカンに可溶な成分(以下、「デカン可溶部」ともいう。)を示す。また、室温(23℃)におけるデカン不溶部とは、プロピレン系重合体(A)をn-デカン溶剤で分別した際の、23℃のn-デカンに不溶な成分(以下、「デカン不溶部」ともいう。)を示す。
デカン可溶部量およびデカン不溶部量は、後述する実施例で採用された方法により測定される。
【0026】
デカン可溶部量は、前記プロピレン系重合体(A1)の全質量に対して、好ましくは5~30質量%、より好ましくは7~25質量%、さらに好ましくは10~20質量%の範囲にある。デカン不溶部量は、好ましくは、70~95質量%、より好ましくは75~93質量%、さらに好ましくは80~90質量%の範囲にある。
デカン可溶部量およびデカン不溶部量が前記範囲にあると、前記プロピレン系樹脂組成物より形成される自動車用内装材および自動車用外装材は、流動性に優れる。
【0027】
デカン可溶部は、主としてプロピレン系重合体(A1)が共重合体である場合、好ましくはプロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、プロピレン単独重合体の一部、例えば低分子量化合物等の重合の際に生じる副生物などが含まれ得る。
プロピレン系重合体(A1)がプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体である場合、デカン可溶部に含まれる他のα-オレフィンとしては、エチレンおよび/または炭素原子数4~12のα-オレフィンなどが挙げられる。デカン可溶部に含まれる他のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンおよび1-ドデセンが挙げられる。これらの中でも、他のα-オレフィンとしては、エチレンが好ましい。
【0028】
デカン不溶部は通常プロピレンに由来する構成単位のみからなるが、プロピレン系重合体(A1)が前記プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体である場合、デカン不溶部は、少量、例えば10モル%以下、好ましくは5モル%以下のプロピレン以外の他のモノマーに由来する構成単位を含有していてもよい。
【0029】
前記プロピレン以外の他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン等のプロピレン以外のα-オレフィン;スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン等のビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;共役ジエン;およびジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等の非共役ポリエン類が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、前記プロピレン以外の他のモノマーとしては、エチレンおよび炭素原子数4~10のα-オレフィンが好ましい。これらはプロピレンに対して1種単独で共重合されていてもよく、2種以上が共重合されていてもよい。
【0031】
プロピレン系重合体(A1)のデカン可溶部における、135℃デカリン中で測定した極限粘度([η])は、好ましくは1.0~10.0dl/g、より好ましくは1.2~9.8dl/g、さらに好ましくは1.5~9.5dl/g、特に好ましくは2.0~9.0dl/gの範囲にある。
デカン可溶部の極限粘度([η])が前記範囲にあると、前記プロピレン系樹脂組成物より形成される自動車用内装材および自動車用外装材は、表面外観と流動性とのバランスに優れる。
【0032】
プロピレン系重合体(A1)の製造方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えば、特開2004-323545号公報の段落[0018]~[0026]に記載の方法を参照して製造することができる。
【0033】
プロピレン系重合体(A)はプロピレン系重合体(A1)を80質量%以上、好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有する。プロピレン系重合体(A)におけるプロピレン系重合体(A1)含有量の上限は100質量%であってもよい。
プロピレン系重合体(A1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
プロピレン系重合体(A)は、ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重の条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)が通常1~200g/10分、好ましくは5~175g/10分、より好ましくは10~150g/10分、さらに好ましくは20~120g/10分の範囲にある。
【0035】
プロピレン系重合体(A)の含有量は、プロピレン系重合体(A)、後述するエチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計100質量部に対して、30~95質量部である。得られる成形体の表面外観と流動性に優れ、引張破断ひずみの誤差が小さいという観点からは、プロピレン系重合体(A)の含有量は、好ましくは39~90質量部であり、より好ましくは47~85質量部であり、さらに好ましくは55~77質量部である(ただし、プロピレン系重合体(A)、後述するエチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部とする)。
プロピレン系重合体(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<エチレン・1-ブテン共重合体(B)>
本発明に用いられるエチレン・1-ブテン共重合体(B)は、下記要件(B-a)~要件(B-e)をすべて満たす。
【0037】
<<要件(B-a)>>
エチレンに由来する構成単位(i)70~95モル%と、1-ブテンに由来する構成単位(ii)5~30モル%と(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする。)を含む。
【0038】
エチレン・1-ブテン共重合体の構成単位(i)および構成単位(ii)の含有量が前記範囲にあると、前記プロピレン系樹脂組成物より形成される自動車用内装材および自動車用外装材は機械強度と耐衝撃性のバランスに優れる。
前記観点から、前記構成単位(i)の含有量の範囲の下限値は、好ましくは73モル%、より好ましくは76モル%、さらに好ましくは80モル%である。前記構成単位(i)の含有量の範囲の上限値は、好ましくは92モル%、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは88モル%である。
【0039】
前記観点から、前記構成単位(ii)の含有量の範囲の下限値は、好ましくは8モル%、より好ましくは10モル%、さらに好ましくは12モル%である。前記構成単位(ii)の含有量の範囲の上限値は、好ましくは27モル%、より好ましくは24モル%、さらに好ましくは20モル%である。
前記構成単位(i)および構成単位(ii)の含有量は、後述する実施例に記載の条件で13C-NMRを測定することで、算出することができる。
【0040】
エチレン・1-ブテン共重合体(B)を構成するモノマーであるエチレンおよび1-ブテンは、例えば、化石燃料由来のモノマーまたはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<<要件(B-b)>>
密度が850~880kg/m3の範囲にある。
密度が前記範囲内にあるエチレン・1-ブテン共重合体(B)を含む前記プロピレン系樹脂組成物より形成される成形体は、軽量であり、かつ、機械強度と成形性とのバランスに優れる。
【0042】
前記観点から、前記密度の範囲の下限値は、好ましくは853kg/m3、より好ましくは855kg/m3、さらに好ましくは857kg/m3である。前記密度の範囲の上限値は、好ましくは879kg/m3、より好ましくは877kg/m3、さらに好ましくは875kg/m3である。
前記密度は、後述する実施例で採用された方法により測定される。
【0043】
<<要件(B-c)>>
ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が2.0~20.0g/10分の範囲にある。
エチレン・1-ブテン共重合体のMFR2.16が前記範囲にあると、前記プロピレン系樹脂組成物より形成される自動車用内装材および自動車用外装材は成形性および表面外観に優れる。
前記観点から、エチレン・1-ブテン共重合体(B)のMFR2.16の下限値は、好ましくは2.1g/10分、より好ましくは2.2g/10分、さらに好ましくは2.5g/10分である。エチレン・1-ブテン共重合体(B)のMFR2.16の上限値は、好ましくは15.0g/10分、より好ましくは10.0g/10分、さらに好ましくは8.0g/10分である。
【0044】
<<要件(B-d)>>
ASTM D1238に準拠した、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)に対する、ASTM D1238に準拠した190℃、10kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR10)の比(MFR10/MFR2.16)が7.1~9.5の範囲にある。
【0045】
エチレン・1-ブテン共重合体(B)のMFR10/MFR2.16が前記範囲にあると、プロピレン系重合体(A)にエチレン・1-ブテン共重合体(B)が分散されやすくなり、プロピレン系重合体(A)中に分散したエチレン・1-ブテン共重合体(B)の相構造の扁平度が低くなるため、前記プロピレン系樹脂組成物より形成される自動車用内装材および自動車用外装材は成形性と表面外観のバランスに優れる。
【0046】
前記観点から、前記MFR10/MFR2.16の下限値は、好ましくは7.2、より好ましくは7.3、さらに好ましくは7.4である。前記MFR10/MFR2.16の範囲の上限値は、好ましくは9.4、より好ましくは9.3、さらに好ましくは9.2である。
【0047】
<<要件(B-e)>>
デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が1.00dl/g以上1.29dl/g未満である。
エチレン・1-ブテン共重合体(B)の極限粘度[η]が前記範囲にあると、前記プロピレン系樹脂組成物より形成される自動車用内装材および自動車用外装材は成形性と表面外観とのバランスに優れる。
【0048】
前記観点から、極限粘度[η]は、好ましくは1.02dl/g以上、より好ましくは1.04dl/g以上、さらに好ましくは1.06dl/g以上である。極限粘度[η]は、好ましくは1.28dl/g以下、より好ましくは1.27dl/g以下である。
【0049】
前記エチレン・1-ブテン共重合体(B)において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリプロピレン換算の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn:分子量分布)は、通常4.0以下であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.5以下である。
分子量分布が前記範囲にあるエチレン・1-ブテン共重合体(B)は、得られる成形体の機械強度に優れる。
【0050】
エチレン・1-ブテン共重合体(B)の含有量は、前記プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および後述する無機物(C)の合計100質量部に対して、5~40質量部である。得られる成形体の表面外観と流動性に優れるという観点からは、エチレン・1-ブテン共重合体(B)の含有量は、好ましくは7~35質量部であり、より好ましくは10~30質量部であり、さらに好ましくは15~25質量部である(但し、プロピレン系重合体(A)、後述するエチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部とする)。
【0051】
〈エチレン・1-ブテン共重合体(B)の製造方法〉
前記エチレン・1-ブテン共重合体(B)は、その製造方法に特に制限はないが、メタロセン系触媒を用いることにより好適に製造することができる。
【0052】
<無機物(C)>
前記プロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて無機物(C)を含むことができる。
前記無機物(C)は、無機化合物であれば特に限定はなく、公知のものが利用できる。
【0053】
前記無機物(C)としては、例えば、カーボンブラックまたはグラファイトもしくはシランカップリング剤などにより表面処理が施されたカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカ(煙霧質シリカ、沈降性シリカ、珪藻土および石英などを含む)、アルミナ、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化チタン、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化バリウムおよび酸化カルシウムなどを含む酸化物系フィラー;水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどを含む水酸化物系フィラー;珪酸アルミニウム(クレー)、珪酸マグネシウム(タルク)、マイカ、カオリン、珪酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなどを含む珪酸塩系フィラー;珪藻土および石灰岩などを含む堆積岩系フィラー、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、およびベントナイトなどを含む粘土鉱物系フィラー、フェライト、鉄およびコバルトなどを含む磁性系フィラー;銀、金、銅およびこれらの合金などを含む導電性フィラー;炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、シリコンカーバイト、窒化ボロンが挙げられる。
【0054】
前記無機物(C)としては、シリカ、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムおよびタルクが好ましく、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよびタルクがより好ましく、価格、性能、取扱い性、供給安定性等のバランスの点から、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよびタルクがさらに好ましく、タルクが特に好ましい。
前記無機物(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記無機物(C)の粒径(平均粒子径)は、加工性の点から、好ましくは0.01~100μm、より好ましくは0.01~80μm、さらに好ましくは0.01~50μmの範囲にある。
前記無機物(C)の粒径(平均粒子径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した、積算%の分布曲線から得られる50%粒子径(d50)である。
【0056】
前記プロピレン系樹脂組成物に無機物(C)が含有される場合、無機物(C)の含有量は、前記プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計100質量部に対して、30質量部以下である。得られる成形体の剛性に優れるという観点からは、無機物(C)の含有量は、好ましくは3~26質量部であり、より好ましくは5~23質量部であり、さらに好ましくは8~20質量部である(但し、プロピレン系重合体(A)、後述するエチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)の合計を100質量部である)。
【0057】
<成分(A)~(C)の含有量>
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物において、プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)および無機物(C)のそれぞれの含有量は、成分(A)~(C)の含有量の合計100質量部に対して、プロピレン系重合体(A)30~95質量部、エチレン・1-ブテン共重合体(B)5~40質量部、無機物(C)0~30質量部であり、好ましくはプロピレン系重合体(A)39~90質量部であり、エチレン・1-ブテン共重合体(B)7~35質量部、無機物(C)3~26質量部であり、より好ましくはプロピレン系重合体(A)47~85質量部であり、エチレン・1-ブテン共重合体(B)10~30質量部、無機物(C)5~23質量部であり、特に好ましくはプロピレン系重合体(A)55~77質量部であり、エチレン・1-ブテン共重合体(B)15~25質量部、無機物(C)8~20質量部である。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、成分(A)~(C)の含有量が上記範囲内であると、軽量化しても高い耐衝撃強度を有する。
【0058】
<他の成分>
前記プロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、前記プロピレン系重合体(A)およびエチレン・1-ブテン共重合体(B)以外のその他の重合体、および前記無機物(C)以外の添加剤をさらに含んでもよい。
前記プロピレン系樹脂組成物が前記その他の重合体および/または前記添加剤を含む場合、その含有量は、プロピレン系樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは合計10質量%以下であり、より好ましくは合計5質量%以下であり、さらに好ましくは合計1質量%以下である。
【0059】
前記添加剤としては、例えば、耐候性安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、有機充填剤、離型剤、界面活性剤および軟化剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は単独で含んでいてもよいし、複数を併用して含んでいてもよい。
【0060】
前記軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどを含む石油系物質;コールタールおよびコールタールピッチなどを含むコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などを含む脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどを含むロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸12-水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などを含む脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどを含む合成高分子化合物;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどを含むエステル系可塑剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物;ならびに液状チオコールが挙げられる。
【0061】
前記軟化剤としては、さらに、例えば、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジカルボン酸エステル(アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)が挙げられる。
【0062】
前記離型剤としては、例えば、高級脂肪酸の低級(C1~4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4~30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィンが挙げられる。
【0063】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、リン系(テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンジホスフォネート等)、アミン系(N,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等)の酸化防止剤が挙げられる。
【0064】
前記難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2-シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステルおよびその他のリン化合物;塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、およびテトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系が挙げられる。
【0066】
前記抗菌剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
【0067】
前記界面活性剤としては、例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0068】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0069】
前記帯電防止剤としては、例えば、前記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸やオレイン酸のエステルが挙げられ、高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0070】
前記顔料としては、例えば、無機顔料(酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。前記染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系が挙げられる。
【0071】
前記スリップ剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級脂肪酸塩(ステアリン酸カルシウム等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等)が挙げられる。
【0072】
<プロピレン系樹脂組成物の製造方法>
前記プロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、特に限定はなく、例えば従来公知の製造方法が挙げられる。プロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、前記各成分(A)~(C)を溶融混練する溶融混練法が好ましい。溶融混練法としては、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いて、例えば、180~250℃下で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法が挙げられる。当該方法により、各成分(A)~(C)および必要に応じて用いられる添加剤が均一に分散混合された高品質の前記プロピレン系樹脂組成物のペレットを得ることができる。
【0073】
<ペレット>
本発明に係るペレットは、前記プロピレン系樹脂組成物を含む。ペレットは、本発明の効果を損なわない範囲において、前記プロピレン系樹脂組成物以外の成分をさらに含んでいてもよい。前記プロピレン系樹脂組成物以外の成分としては、例えば、天然油、合成油、界面活性剤等の添加助剤が挙げられる。
【0074】
ペレットの形状としては特に制限はなく、例えば粒状、柱状、板状、球状であってもよい。ペレットの平均粒子径は、特に限定されないが、成形機への樹脂の供給や樹脂の溶融を円滑に行いやすくする観点などから、ストランド方向に1~7mm、好ましくは2~5mmであり、カッティング方向(ストランド方向と直交する方向)に1~5mm、好ましくは2~4mmである。
【0075】
前記ペレットの製造方法としては、特に制限はないが、前記プロピレン系樹脂組成物の各成分を溶融混練した後、造粒または粉砕する工程を経て製造する方法が挙げられる。ペレットの製造方法におけるポリアミド樹脂組成物の各成分を溶融混練する方法は、前記プロピレン系樹脂組成物の製造方法における溶融混練する方法と同義である。
【0076】
前記ペレットは、種々の成形体の製造に用いることができる。前記成形体の用途としては、特に限定されず、例えば、後述する自動車用内装材および外装材が挙げられる。
【0077】
前記プロピレン系樹脂組成物は、軽量化した場合であっても高い耐衝撃強度を有する。
この特性を活かして、前記プロピレン系樹脂組成物から種々の成形体を製造することができる。
【0078】
<成形体>
前記プロピレン系樹脂組成物を含む成形体は、前記プロピレン系樹脂組成物を従来公知の成形法、例えば、ブロー成形法、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、インフレーション成形法、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、真空成形法、カレンダー成形法、溶融Tダイキャスティング法により成形して得ることができる。前記成形法の中でも、成形体は、射出成形法により成形した射出成形体が好ましい。
【0079】
<自動車用内装材および外装材>
軽量化した場合であっても高い耐衝撃強度を有するという観点から、成形体としては、プロピレン系樹脂組成物を含む自動車の内装材および外装材等の自動車部品等が好適に挙げられる。
前記自動車の内装材および外装材としては、特に制限されず、例えば、射出成形などで成形された自動車部品が挙げられる。前記自動車用内装材としては、例えば、トリム、インストルメントパネル、コラムカバーが挙げられる。前記自動車用外装材としては、例えば、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーが挙げられる。
【実施例0080】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下の実施例および比較例で用いた各成分は次のとおりである。
【0081】
プロピレン系重合体(A1)として、以下の物性を有するプロピレン系重合体(A1-1)を用いた。
プロピレン系重合体(A1-1):プロピレン単独重合体とプロピレン・エチレンランダム共重合体とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体
MFR(230℃、2.16kg荷重):30g/10分
23℃におけるn-デカン不溶部量:86質量%
23℃におけるn-デカン可溶部量:14質量%
前記n-デカン可溶部におけるデカリン中135℃で測定した極限粘度[η]:3.2dl/g
【0082】
前記極限粘度[η]は、以下の方法で測定した。
プロピレン系重合体(A1-1)約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈し、その後同様にして比粘度ηSPを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηSP/Cの値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(ηSP/C)(C→0)
【0083】
エチレン・1-ブテン共重合体(B)として、以下のエチレン・1-ブテン共重合体(B-1)~(B-3)を用いた。
【0084】
[エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)]
エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)として、以下の製造方法で得たエチレン・1-ブテン共重合体を用いた。
【0085】
<製造例1:エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)の製造>
撹拌羽根を備えた内容積130Lの連続重合器の一つの供給口に、共触媒としてトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を12mmol/hr、主触媒としてビス(4-メチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロ-1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチルジベンゾ(b,h)フルオレン-12-イル)ジルコニウムジメチルのヘキサン溶液を0.0082mmol/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのヘキサンスラリー溶液を0.034mmol/hrの割合で供給し、触媒溶液と重合溶媒として用いる脱水精製したノルマルヘキサンとの合計が37.3L/hrとなるように、前記ノルマルヘキサンを連続的に供給した。
【0086】
同時に、重合器の別の供給口に、エチレンを6.9kg/hr、1-ブテンを9.8kg/hr、水素を110NL/hrの割合で連続供給し、重合温度130℃、全圧2.5MPaG、滞留時間0.5時間の条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したエチレン・1-ブテン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液を、重合器のサイドに設けられた排出口を介して連続的に排出させ、エチレン・1-ブテン共重合体のノルマルヘキサン溶液が130℃となるように、ジャケット部が3kg/cm2スチームで加熱された連結パイプに導いた。
【0087】
スチームジャケット付き連結パイプ内で約200℃に保温されたエチレン・1-ブテン共重合体のノルマルヘキサン溶液は、約2.5MPaGを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた圧力制御バルブの開度の調整によって連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、圧力制御バルブ直後には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設されており、約11L/hrの速度でメタノールを注入してエチレン・1-ブテン共重合体のノルマルヘキサン溶液に合流させた。また、フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が約0.05MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約200℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定が行われた。その後、ダイス温度を170℃に設定した単軸押出機を通し、水槽にてストランドを冷却し、ペレットカッターにてストランドを切断し、ペレットとしてエチレン・1-ブテン共重合体(B-1)を得た。収量は7.4kg/2hrであった。
【0088】
<製造例2:エチレン・1-ブテン共重合体(B-2)>
1-ブテンの供給量、エチレンの供給量および重合温度を表1に示すように調製した以外は、前記製造例1と同様にしてエチレン・1-ブテン共重合体(B-2)を製造した。
【0089】
<製造例3:エチレン・1-ブテン共重合体(B-3)>
1-ブテンの供給量、エチレンの供給量および重合温度を表1に示すように調整した以外は、前記製造例1と同様にしてエチレン・1-ブテン共重合体(B-3)を製造した。
【0090】
<エチレン・1-ブテン共重合体(b-1)>
ダウ・ケミカル製、商品名:ENGAGE7447を用いた。
<エチレン・1-ブテン共重合体(b-2)>
ダウ・ケミカル製、商品名:ENGAGE7467を用いた。
【0091】
エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)~(B-3)および(b-1)~(b-2)の各種物性を以下の方法で測定した。
エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)~(B-3)の収量、エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)~(B-3)および(b-1)~(b-2)の各種物性測定結果は、表1に示した。
【0092】
〔エチレンに由来する構成単位の含有量、1-ブテンに由来する構成単位の含有量〕
核磁気共鳴(NMR)測定装置(日本電子(株)製、JNM GX-400型)を用いてエチレンに由来する構成単位の含有量を測定した。試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mLに加熱溶解させた。この溶液をグラスフィルター(G2)により濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mLを加え内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C-NMR測定を行った。積算回数は8000回以上とした。得られた13C-NMRスペクトルにより、エチレン・1-ブテン共重合体中のエチレンに由来する構成単位の含有量(モル%)を定量した。また、同様の方法で1-ブテンに由来する構成単位の含有量(モル%)も定量した。
【0093】
〔密度〕
密度は、ASTM D1505に準拠して測定した。
【0094】
〔メルトフローレート〕
メルトフローレート(MFR2.16およびMFR10)を、ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重および190℃、10kg荷重の条件で測定し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR2.16)に対する190℃、10kg荷重の条件で測定したメルトフローレート(MFR10)の比(MFR10/MFR2.16)を求めた。
【0095】
〔極限粘度[η]〕
エチレン・1-ブテン共重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈し、その後同様にして比粘度ηSPを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηSP/Cの値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(ηSP/C)(C→0)
【0096】
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、各フラクションのポリスチレン換算分子量Mi-PStを得た。次に、Mi-PStを、
[η]i-PSt×Mi-PSt=[η]i-EPR×Mi-EPR
[η]i-PSt=1.37×10-4×Mi-PSt
0.686、および
[η]i-EPR=7.2×10-4×Mi-EPR
0.667
の式を用いて、EPR換算分子量Mi-EPRに変換した。EPR換算分子量を用いて、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0097】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC-2000型を用いて、以下条件で測定した。
分離カラム:TSKgel GNH6-HTを2本、TSKgel GNH6-HTLを2本
カラムサイズ:直径7.5mm、長さ300mm
カラム温度:140℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(富士フイルム和光純薬(株))
酸化防止剤:BHT(武田薬品工業(株)製)0.025質量%
移動速度:1.0mL/分
試料濃度:15mg/10mL
試料注入量:500μL
検出器:示差屈折計
標準ポリスチレン:Mw<1000およびMw>4×106については東ソー(株)製、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製
【0098】
【0099】
〔実施例1〕
プロピレン系重合体(A1-1)65質量部と、エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)20質量部と、無機物(C)としてタルク(C-1)を含むタルクマスターバッチ(浅田製粉(株)製「HG-170」、タルクの平均粒子径:6μm、タルク含有量:70質量%、キャリア樹脂:ポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重):30g/10分))15質量部(タルク11質量部)とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合してドライブレンド物を調製した。なお、タルクにおけるキャリア樹脂であるポリプロピレンを成分(A)に含めた、プロピレン系重合体(A)、エチレン・1-ブテン共重合体(B)、および無機物(C)の配合比を表2に示した。
【0100】
次いで、前記ドライブレンド物を200℃に設定した二軸押出機(L/D=40、30mmφ)の主投入口に投入しながら、プロピレン系樹脂組成物のペレットを調製した。この際スクリュー回転数210rpm、吐出量15kg/hrで押出した。
得られたプロピレン系樹脂組成物のペレットを用いて射出成形を行い、物性試験用試験片(成形体)を作製した。続いて、下記の方法により、プロピレン系樹脂組成物および成形体の物性評価を行った。なお、試験片の状態調製は、乾燥状態、23℃の温度で2日間行なった。
【0101】
(1)表面外観(グロス)
シリンダー温度210℃、射出圧力80MPa、金型温度40℃とした70t型締力の射出成形機にて、100mm×100mm、厚さ3mmの角板を成形し、60°鏡面光沢度をJIS Z8741に準拠し測定した。グロス60°の値が小さいほど表面外観に優れる。評価結果を表2に示す。
【0102】
(2)流動性(スパイラルフロー)
シリンダー温度210℃、射出圧力100MPa、金型温度40℃とした50t型締力の射出成形機にて、3.8mmφ半円のスパイラル状の溝を持った金型に射出成形し、流動距離を測定した。評価結果を表2に示す。
【0103】
(3)引張破断ひずみ
厚さ3mmの試験片を用い、ASTM D638に従って、23℃において、引張速度50mm/minで破断する際の強度(破断強度)と伸び(引張伸び)を測定した。引張破断ひずみ(%)は、引張試験を行う前の試験片の長さに対する、引張後の試験片の長さの割合である。測定は5回行った。各測定結果、その平均値および標準偏差を表2に示す。
【0104】
〔実施例2~3〕
表2に示すプロピレン系重合体(A)およびエチレン・1-ブテン共重合体(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~3のプロピレン系樹脂組成物を調製した。
実施例1と同様に、プロピレン系樹脂組成物の物性評価を行った。物性の評価結果を表2に示す。
【0105】
〔比較例1~2〕
エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)に替えて、エチレン・1-ブテン共重合体(b-1)または(b-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1~2のプロピレン系樹脂組成物を調製した。
実施例1と同様に、プロピレン系樹脂組成物の物性評価を行った。物性の評価結果を表2に示す。
【0106】