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特開2024-131579デジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131579
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】デジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20240920BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240920BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20240920BHJP
   H03M 1/74 20060101ALI20240920BHJP
   H03M 1/68 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03M1/10 B
G09G3/20 623F
G09G3/3275
H03M1/74
H03M1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041929
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土 弘
【テーマコード(参考)】
5C080
5C380
5J022
【Fターム(参考)】
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD22
5C080FF11
5C080FF12
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ05
5C380AA01
5C380AB06
5C380BA11
5C380CA04
5C380CA12
5C380CA16
5C380CA32
5C380CA33
5C380CA35
5C380CA36
5C380CB01
5C380CF07
5C380CF09
5C380CF24
5C380CF26
5C380CF28
5C380CF48
5C380CF64
5J022AB06
5J022BA03
5J022BA06
5J022CB01
5J022CD03
5J022CF02
5J022CF04
5J022CF09
5J022CG01
(57)【要約】
【目的】出力誤差を抑えることが可能なデジタルアナログ変換器、当該デジタルアナログ変換器を含むデータドライバ、及び表示装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、差動増幅器と、デジタルデータに基づき複数の入力端の各々に第1又は第2の電圧を振り分けて供給する第1のデコーダと、を含む。差動増幅器は、夫々が個別に受けたテイル電流で駆動される2のK乗個の差動対と、2のK乗個の差動対に個別にテイル電流を供給するテイル電流制御回路と、を有する。テイル電流制御回路は、2のK乗個の差動対のうちの2つの差動対の各々に流すテイル電流の電流比を、当該2つの差動対を除く他の差動対の各々に流すテイル電流の電流比よりも大きくする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Kビット(Kは2以上の正数)のデジタルデータをアナログの出力電圧に変換して出力するデジタルアナログ変換器であって、
複数の入力端を有し、前記複数の入力端で夫々受けた電圧を直線補間によって2のK乗個に分割した電圧レベル群のうちで、前記Kビットのデジタルデータに対応した1の電圧レベルを有する前記出力電圧を自身の出力端子から出力する差動増幅器と、
第1の電圧及び第2の電圧を受け、前記Kビットのデジタルデータに基づき、前記差動増幅器の前記複数の入力端の各々に、前記第1の電圧又は前記第2の電圧を振り分けて供給する第1のデコーダと、を含み、
前記差動増幅器は、
前記出力電圧が共通に入力される反転入力端、前記複数の入力端で受けた電圧のうちの1つが入力電圧として供給される非反転入力端、及び出力対を夫々が含み、夫々の前記出力対同士が共通接続されており、夫々が個別に受けたテイル電流で駆動される2のK乗個の差動対と、
前記2のK乗個の差動対各々の前記出力対の一方又は両方の出力に基づく増幅作用により前記出力電圧を生成する増幅段と、
前記2のK乗個の差動対の各々に前記テイル電流を個別に供給するテイル電流制御回路と、を有し、
前記テイル電流制御回路は、前記2のK乗個の差動対のうちの2つの差動対を除く各差動対に流す前記テイル電流における基準電流値に対する電流比を所定の基準値とし、前記2つの差動対の各々に流す前記テイル電流の前記電流比を前記基準値より大きな値に設定することを特徴とするデジタルアナログ変換器。
【請求項2】
前記第1のデコーダは、前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの一方の電圧を前記2つの差動対のうちの一方の差動対の前記非反転入力端に供給し、前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの他方の電圧を前記2つの差動対のうちの他方の差動対の前記非反転入力端に供給することを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項3】
前記テイル電流制御回路は、前記2つの差動対の各々に流す前記テイル電流の電流比を前記基準値より大きい所定の第1の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項4】
前記テイル電流制御回路は、前記Kビットのデジタルデータに拘わらず、前記2つの差動対の各々に流す前記テイル電流の電流比を前記第1の値に固定することを特徴とする請求項3に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項5】
前記テイル電流制御回路は、前記Kビットのデジタルデータに基づき、前記2つの差動対の各々に流す前記テイル電流の電流比を前記第1の値又は前記第1の値とは異なる第2の値に切り換えることを特徴とする請求項3に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項6】
前記テイル電流制御回路は、前記Kビットのデジタルデータに基づき、前記他方の差動対を、前記2のK乗個の差動対のうちで前記一方の差動対を除く1の差動対に切り換えることを特徴とする請求項3に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項7】
前記第1のデコーダは、前記Kビットのデジタルデータに拘わらず、前記2のK乗個の差動対のうち所定の2つの差動対の前記非反転入力端に前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの一方の電圧を共通に供給することを特徴とする請求項3に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項8】
前記2のK乗個の差動対の各々は、同一導電型で同等な特性を有するトランジスタ対で構成され、差動対同士も互いに同一導電型で同等な特性を有するトランジスタ対とされていることを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項9】
異なる電圧値を有する複数の参照電圧を生成する参照電圧生成部と、
前記Kビットのデジタルデータを含むM(MはK+1より大きい整数)ビットのデジタルデータ及び前記複数の参照電圧を受け、前記Mビットの前記デジタルデータの上位側の(M-K)ビットに基づき、前記複数の参照電圧のうちから隣接する2つの参照電圧を選択し夫々を前記第1の電圧及び前記第2の電圧として前記第1のデコーダに供給する第2のデコーダと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項10】
請求項1又は8に記載の前記デジタルアナログ変換器を複数含み、
各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を表示パネルの複数のデータ線に夫々供給することを特徴とするデータドライバ。
【請求項11】
複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータ線を有する表示パネルと、
請求項1又は8に記載の前記デジタルアナログ変換器を複数含み、
各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を前記表示パネルの前記複数のデータ線に夫々供給するデータドライバと、を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルアナログ変換器、当該デジタルアナログ変換器を含むデータドライバ、及びこのデータドライバを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アクティブマトリクス型の表示装置として、液晶表示装置、或いは有機EL表示装置等が主流となっている。このような表示装置には、複数のデータ線と複数の走査線が交差状に配線され、複数のデータ線に画素スイッチを介して接続されている表示セルがマトリクス状に配列された表示パネルと共に、表示パネルの複数のデータ線へ階調レベルに対応したアナログ電圧信号を供給するデータドライバと、表示パネルの複数の走査線へ各画素スイッチのオン、オフを制御する走査信号を供給する走査ドライバが搭載されている。データドライバには、映像デジタル信号を輝度レベルに対応したアナログの電圧に変換し、これを増幅した電圧信号を表示パネルの各データ線に供給するデジタルアナログ変換部が含まれている。
【0003】
以下に、データドライバの概略構成について説明する。
【0004】
データドライバは、例えばシフトレジスタ、データレジスタラッチ、レベルシフタ、デジタルアナログ変換部を含む。
【0005】
シフトレジスタは、表示コントローラから供給されたスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチに供給する。データレジスタラッチは、シフトレジスタから供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、表示コントローラから供給された映像デジタルデータを所定のS個(Sは2以上の整数)毎に取り込み、S個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタに供給する。レベルシフタは、データレジスタラッチから供給されたS個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たS個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号をデジタルアナログ変換部に供給する。
【0006】
デジタルアナログ変換部は、参照電圧群生成部、デコーダ部及び増幅部を含む。
【0007】
参照電圧群生成部は、互いに電圧値が異なる複数の参照電圧を生成してデコーダ部に供給する。例えば、参照電圧群生成部は、少なくとも2つの基準電源電圧との間をラダー抵抗で分圧した複数の分圧電圧を参照電圧群としてデコーダ部に供給する。デコーダ部は、データドライバの各出力に夫々対応して設けられているS個のデコーダを有する。デコーダの各々は、参照電圧群生成部で生成された参照電圧群が供給されるとともに、レベルシフタから供給された映像デジタルデータ信号を受け、この映像デジタルデータ信号に対応した参照電圧を、複数の参照電圧のうちから選択し、選択した参照電圧を増幅部に供給する。増幅部は、デコーダ部の各デコーダで選択された参照電圧を個別に増幅して出力するS個の差動増幅器を有する。
【0008】
ところで、上記したデジタルアナログ変換部では、参照電圧群生成部で生成する参照電圧の数を多くするほど、表現できる輝度レベルの階調数(色数)を増やすことができる。しかしながら、参照電圧群生成部で生成する参照電圧の数を増やすと、その分の配線領域や参照電圧を選択するデコーダに含まれるスイッチ素子の数も増加し、データドライバのチップサイズ(製造コスト)が増加する。
【0009】
そこで、上記した差動増幅器として、輝度レベルに基づいて選択された2つの参照電圧間を、所定の重み付けで分割することで、3つ以上の複数の電圧値を出力することが可能な差動増幅器を採用したデジタルアナログ変換器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
特許文献1には、2つの参照電圧を4個に分割する4個の電圧値のうちの1の電圧値を有する出力電圧を出力する負帰還型の差動増幅器と、それを用いたデジタルアナログ変換器が提案されている。
【0011】
かかる差動増幅器は、各々が同一のテイル電流で駆動され、自身の出力電圧が複数の反転入力端に共通に帰還入力されると共に、自身の非反転入力端に接続されており1対1対2の重み付けをもって、夫々が2つの参照電圧のうち1つを受ける4つの差動対を含む。
【0012】
当該差動増幅器では、デジタルデータ信号中の下位2ビットのデータに従って2つの参照電圧のうち1つを各差動対の非反転入力端へ入力し、該2つの参照電圧間を直線補間によって4分割した4個の電圧レベルのうちのいずれか1を有する出力電圧を出力する。
【0013】
また、該差動増幅器を含むデジタルアナログ変換器では、デジタルデータ信号の上位ビット群のデータに従って、4階調おきの参照電圧群から、隣接する2つの参照電圧を選択することで、参照電圧群の電圧数Fに対して、(F-1)の4倍の電圧レベルを該差動増幅器から出力することが可能である。このように、特許文献1に記載のデジタルアナログ変換器では、差動増幅器の差動対の数と、2つの入力電圧(参照電圧)間を線形補間にて分割する電圧レベルの数とが等しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002-43944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、特許文献1に記載のデジタルアナログ変換器では、搭載する差動対の数を増やすほど2つの参照電圧間を分割する電圧レベルの数が多くなり、デコーダの面積を削減することができる。
【0016】
しかしながら、この際、2つの参照電圧同士の電圧差が大きくなるほど、出力電圧として期待される期待値(2つの参照電圧間を直線補間にて複数に分割した電圧)に対して、実際に出力される出力電圧には誤差(出力誤差)が生じるという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、出力誤差を抑えることが可能なデジタルアナログ変換器、当該デジタルアナログ変換器を含むデータドライバ、及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るデジタルアナログ変換器は、Kビット(Kは2以上の正数)のデジタルデータをアナログの出力電圧に変換して出力するデジタルアナログ変換器であって、複数の入力端を有し、前記複数の入力端で夫々受けた電圧を直線補間によって2のK乗個に分割した電圧レベル群のうちで、前記Kビットのデジタルデータに対応した1の電圧レベルを有する前記出力電圧を自身の出力端子から出力する差動増幅器と、第1の電圧及び第2の電圧を受け、前記Kビットのデジタルデータに基づき、前記差動増幅器の前記複数の入力端の各々に、前記第1の電圧又は前記第2の電圧を振り分けて供給する第1のデコーダと、を含み、前記差動増幅器は、前記出力電圧が共通に入力される反転入力端、前記複数の入力端で受けた電圧のうちの1つが入力電圧として供給される非反転入力端、及び出力対を夫々が含み、夫々の前記出力対同士が共通接続されており、夫々が個別に受けたテイル電流で駆動される2のK乗個の差動対と、前記2のK乗個の差動対各々の前記出力対の一方又は両方の出力に基づく増幅作用により前記出力電圧を生成する増幅段と、前記2のK乗個の差動対の各々に前記テイル電流を個別に供給するテイル電流制御回路と、を有し、前記テイル電流制御回路は、前記2のK乗個の差動対のうちの2つの差動対を除く各差動対に流す前記テイル電流における基準電流値に対する電流比を所定の基準値とし、前記2つの差動対の各々に流す前記テイル電流の前記電流比を前記基準値より大きな値に設定することを特徴とする。
【0019】
本発明に係るデータドライバは、上記したデジタルアナログ変換器を複数含み、各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を表示パネルの複数のデータ線に夫々供給する。
【0020】
本発明に係る表示装置は、複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータ線を有する表示パネルと、上記したデジタルアナログ変換器を複数含み、各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を前記表示パネルの前記複数のデータ線に夫々供給するデータドライバと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るデジタルアナログ変換器は、複数の入力端で受けた入力電圧及び出力電圧を夫々の反転入力端及び非反転入力端で受ける2のK乗個の差動対を有する差動増幅器と、Kビットのデジタルデータに基づき差動増幅器の入力端の各々に、第1及び第2の電圧のうちの一方を振り分けて供給するデコーダと、を含む。差動増幅器は、2のK乗個の差動対を駆動するテイル電流を各差動対に個別に供給しつつ、2つの差動対を除く各差動対に流すテイル電流における基準電流値に対する電流比を所定の基準値とし、当該2つの差動対の各々に流すテイル電流の電流比を基準値より大きくするように制御するテイル電流比制御回路を含む。
【0022】
かかるテイル電流比制御回路により、各差動対に流すテイル電流の電流比を全て基準値に統一した場合に出力電圧に生じる、期待値に対する出力誤差とは逆方向の出力誤差が生じ、当該出力誤差が相殺される。
【0023】
よって、本発明によれば、デジタルアナログ変換器のアナログの出力電圧に生じる出力誤差を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る第1の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_1の構成を示す回路図である。
図2A】デジタルアナログ変換器100_1の基本仕様を表す図である。
図2B】デジタルアナログ変換器100_1の基本仕様にテイル電流比の補正を施した仕様を表す図である。
図3】本発明に係る第2の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_2の構成を示す回路図である。
図4A】デジタルアナログ変換器100_2の基本仕様(K=2)の一例を表す図である。
図4B】デジタルアナログ変換器100_2の基本仕様にテイル電流比の補正を施した仕様を表す図である。
図5】テイル電流制御回路13Aの一例を示す回路図である。
図6A】基本仕様でデジタルアナログ変換器100_2を動作させた際の出力誤差特性の一例を表す図である。
図6B】テイル電流比の補正値による出力誤差特性の一例を表す図である。
図6C】テイル電流比の補正を施した仕様でデジタルアナログ変換器100_2を動作させた際の出力誤差特性の一例を表す図である。
図7】各種テイル電流比(1.00、1.06、1.20)毎に、電圧VA及びVB間の電圧差に対する、デジタルアナログ変換器100_2における出力誤差の推移を表す図である。
図8A図4Aに示す基本仕様の変形例を示す図である。
図8B図8Aの基本仕様に示されるテイル電流比を補正した仕様を表す図である。
図9】テイル電流制御回路13Aの他の一例を示す回路図である。
図10】本発明に係る第3の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_3の構成を示す回路図である。
図11A】デジタルアナログ変換器100_3の基本仕様(K=3)の一例を表す図である。
図11B】デジタルアナログ変換器100_3の基本仕様にテイル電流比の補正を施した仕様を表す図である。
図12A】基本仕様でデジタルアナログ変換器100_3を動作させた際の出力誤差特性の一例を表す図である。
図12B】テイル電流比の補正値による出力誤差特性の一例を表す図である。
図12C】テイル電流比の補正を施した仕様でデジタルアナログ変換器100_3を動作させた際の出力誤差特性の一例を表す図である。
図13】各種テイル電流比(1.00、1.20、1.44)毎に、電圧VA及びVB間の電圧差に対する、デジタルアナログ変換器100_3における出力誤差の推移を表す図である。
図14A図11Aに示す基本仕様の変形例を示す図である。
図14B図14Aの基本仕様に示されるテイル電流比を補正した仕様を表す図である。
図15】テイル電流制御回路13Bの一例を示す回路図である。
図16】デジタルアナログ変換器100_3におけるテイル電流比補正後の仕様の他の一例を示す図である。
図17A】基本仕様でデジタルアナログ変換器100_3を動作させた際の出力誤差特性の一例を表す図である。
図17B図16に示すテイル電流比の補正値による出力誤差特性の一例を表す図である。
図17C】テイル電流比の補正を施した仕様でデジタルアナログ変換器100_3を動作させた際の出力誤差特性の一例を表す図である。
図18】本発明に係る第4の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_4の構成を示す回路図である。
図19】デジタルアナログ変換器100_4の仕様の一例を示す図である。
図20】本発明に係るデータドライバを含む表示装置200の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0025】
図1は、本発明に係る第1の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_1の構成を示す回路図である。
【0026】
図1に示すように、デジタルアナログ変換器100_1は、デコーダ50_1と、2のK(Kは2以上の整数)乗個の差動対を含む差動増幅器10_1と、を有し、Kビットのデジタルデータ信号DTを、アナログの電圧レベルを有する出力電圧信号Voutに変換する。
【0027】
デコーダ50_1は、デジタルデータ信号DT、及び互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_1は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_1の入力端子t<1>~t<2>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_1は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>~V<2>を、差動増幅器10_1の非反転入力端子である入力端子t<1>~t<2>に供給する。
【0028】
差動増幅器10_1は、電圧VA及びVB間を直線補間によって2のK乗個に分割した2のK乗個の電圧レベルのうちで、デジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_1は、各々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている2のK乗個の同一導電型(図1はNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)と、テイル電流制御回路13と、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。尚、上記2のK乗個の電圧レベルは、電圧VA又はVBのいずれか一方を含む。
【0029】
カレントミラー回路20は、ゲート同士が接続されており、且つ同一のサイズを有するPチャネル型のトランジスタ21及び22を含む。トランジスタ21及び22各々のソースには高位電源電圧VDDAが印加されている。また、トランジスタ21のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ22のゲート及びドレインがノードn12に接続されている。ノードn11、n12は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の出力対にそれぞれ接続されている。かかる構成により、カレントミラー回路20は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)の共通負荷として動作する。
【0030】
差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)12_1~12_2各々のゲートには、出力電圧信号Voutが帰還入力されている。差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の非反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)11_1~11_2各々のゲートは、入力端子t<1>~t<2>に接続されている。すなわち、差動対トランジスタ11_1~11_2各々のゲートには、夫々が電圧VA又はVBを有する入力電圧V<1>~V<2>が供給される。
【0031】
トランジスタ11_1~11_2は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn11によって共通に接続されている。トランジスタ12_1~12_2は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn12によって共通に接続されている。すなわち2のK乗個の差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)は出力対同士が共通接続された並列形態の接続構成とされている。差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のトランジスタのソース同士が互いに接続されており、夫々が個別にテイル電流制御回路13に接続されている。
【0032】
なお、以降、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々を構成する差動対トランジスタが等価な特性を有するものとして動作を説明する。つまり、実際の構成では、例えば入力が共通な複数の差動対を差動対トランジスタのサイズを変更した一つの差動対に置き換えるケースもあるが、説明の便宜上、各差動対の差動対トランジスタの特性は同一とし、それと等価な構成も本発明に含むものとする。最もシンプルな具体例として、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)の各差動対トランジスタは全て同一サイズとする。
【0033】
テイル電流制御回路13は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のソースと低位電源電圧VSSAとの間に個別に接続されている電流源13_1~13_2を含む。電流源13_1~13_2は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のソースに供給するテイル電流を生成する。
【0034】
ここで、電流源13_1~13_2のうちで、特定の2つの電流源を除く各電流源は所定の基準電流値に対する電流比が「1」の電流値を有するテイル電流を生成する。一方、上記した特定の2つの電流源は当該基準電流値に対する電流比が「1+α」(αは1未満の実数)の電流値を有するテイル電流を生成する。この際、特定の2つの電流源とは、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)のうちで上記電圧VAを受ける差動対にテイル電流を流す電流源と、電圧VBを受ける差動対にテイル電流を流す電流源である。尚、当該特定の2つの電流源については、上記した2つの電圧VA及びVB間の電圧差や、デジタルデータ信号DTの下位Lビット(Lは2以上の整数)に基づき、その電流比を「1」又は「1+α」に切替可能な可変電流源であっても良い。また、特定の2つの電流源については、夫々に接続されている差動対各々のうちの一方が電圧VA、他方が電圧VBを受けているものであれば、デジタルデータ信号DTの下位Lビットに基づき、適宜他の電流源に切り換えても良い。
【0035】
また、電流源13_1~13_2のうちの特定の3つの電流源で、基準電流値に対する電流比を「1」又は「1+α」とし、他の電流源の各々で電流比を「1」に固定しても良い。この際、当該特定の3つの電流源のうちの1つを電流比が「1+α」固定の固定電流源とし、残りの2つの電流源を、デジタルデータ信号DTの下位Lビットに基づき夫々の電流比が「1」又は「1+α」に切替可能な可変電流源としても良い。
【0036】
増幅段30は、共通接続された2のK乗個の差動対の出力対(ノードn11、n12)の一方又は両方に生じた電圧に基づく増幅作用により得られた信号を、出力電圧信号Voutとして生成し、これを出力端子Skを介して出力する。
【0037】
以下に、図1に示す差動増幅器10_1の増幅動作について説明する。
【0038】
尚、説明の便宜上、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)の夫々にテイル電流を供給する電流源13_1~13_2の設定電流を夫々、m<1>Io~m<2>Ioとする。ここで、Ioは上記した基準電流値であり、m<1>~m<2>の各々は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々に流すテイル電流の電流比(テイル電流比とも称する)である。また、電流源13_1~13_2のうちの特定の2つの電流源の電流比は「1+α」とされるが、電流比合計に対しては十分小さい値とする。つまり、基準電流値Ioに対する係数であるテイル電流比m<1>~m<2>は、以下の数式(1)が成り立つ。
【0039】
m<1>+m<2>+…+m<2>=2+2α≒2(1)
尚、計算の便宜上、2=nとすると、
m<1>+m<2>+…+m<n>=n (1a)
となる。
【0040】
また、n(=2)個のi番目の差動対について、非反転入力端側の差動対トランジスタの電流をIai、反転入力端側の差動対トランジスタの電流をIbiとすると、以下の数式(2)及び(3)が成り立つ。
【0041】
Iai=Is+gmi・(V<i>-Vs) (2)
Ibi=Is+gmi・(Vout-Vs) (3)
尚、Is、Vsは差動対トランジスタのIV特性曲線上の直線補間可能な電圧範囲内の所定動作点を表し、V<i>、VoutはVs近傍(直線補間範囲内)の電圧を表す。また、非反転入力端側及び反転入力端側の差動対トランジスタの動作点の相互コンダクタンスgmをgmiと表す。
【0042】
ここで、i番目の差動対に供給する電流の電流重み付け比をm<i>とすると、
上記した数式(2)及び(3)は以下の数式(4)及び(5)で表される。
【0043】
m<i>Iai=m<i>Is+gmim<i>(V<i>-Vs) (4)
m<i>Ibi=m<i>Is+gmim<i>(Vout-Vs) (5)
そして、数式(4)及び(5)の差分をとると以下の数式(6)が得られる。
【0044】
m<i>(Iai-Ibi)=gmim<i>(V<i>-Vout)(6)
更に、各差動対(任意のi値)に供給する電流における、電流重み付け比の変動に対する動作点の変動も直線補間範囲内とすると、gmを一定(gmi=gm)に近似することができる。
【0045】
上記した数式(6)をi=1~nについて、左辺同士を加算すると共に、右辺同士を加算すると、以下の数式(7)及び(8)が得られる。
【0046】
左辺=(m<1>Ia+…+m<n>Ia
-(m<1>Ib+…+m<n>Ib) (7)
右辺=g((m<1>V<1>+…+m<n>V<n>)
-(m<1>+…+m<n>)Vout)) (8)
【0047】
ここで、上記した左辺は、非反転入力端側の差動対トランジスタと反転入力端側の差動対トランジスタのそれぞれの合計電流の差分であり、カレントミラー回路20における入力電流と出力電流との関係に対応している。この際、非反転入力端側の差動対トランジスタの各々に流れる電流の合計と、反転入力端側の差動対トランジスタの各々に流れる電流の合計と、は互いに等しいことから、その合計電流同士の差分はゼロ、つまり上記した左辺はゼロとなる。
【0048】
一方、上記した右辺の出力電圧信号Voutの係数(m<1>+…+m<n>)は、数式(1a)により一定値n(=2)となり、数式(7)及び8)により、以下の数式(9)及び(10)ように表される。
【0049】
Vout=(m<1>V<1>+…+m<n>V<n>)/n (9)
ここで、nを2に戻すと、出力電圧信号Voutは以下の式で表される。
【0050】
Vout=(m<1>V<1>+…+m<2>V<2>)
/(m<1>+…+m<2>) (10)
【0051】
以上により、図1に示す差動増幅器10_1の出力電圧信号Voutは、数式(10)に示されるように、各差動対の非反転入力端子の入力電圧に対して、入力電圧の重み付けとテイル電流比の重み付けの積算値の加重平均値となる。
【0052】
なお、数式(10)において、テイル電流比m<1>~m<2>の平均は所定の基準値であり、テイル電流比合計(又は平均)が約一定とされる。
【0053】
よって、数式(10)で表される出力電圧信号Voutは、各差動対の非反転入力端子に供給される2つの電圧(VA、VB)の組合せ及び各差動対のテイル電流比の組合せにより、電圧VA及びVB間を直線補間にて均等に分割した多値電圧を取りうる。その中で、最適な2つの電圧(VA、VB)の組合せ及びテイル電流比の組合せにより、電圧VA及びVB間を2のK乗個にほぼ均等分割する電圧レベルを生成することができる。
【0054】
以下に、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の仕様例について図2A及び図2Bを参照して説明する。
【0055】
図2Aは、デコーダ50_1がデジタルデータ信号DTに基づき、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の非反転入力端子に供給する入力電圧V<1>~V<2>の内容を表す入力電圧設定仕様、及び、デジタルデータ信号DTの各デジタルコードに対応して設定される、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のテイル電流比m<1>~m<2>の基本仕様の一例を示す図である。
【0056】
図2Aの基本仕様において、出力電圧信号Voutは、電圧VA及びVB間を2のK乗個に分割する電圧レベルを有し、電圧VAを除く2のK乗個の電圧レベルがデジタルデータ信号DTのKビットからなるD0~D(K-1)の各コードに対応している。
【0057】
例えば、デジタルデータ信号DTにおけるビットD0~D(K-1)が最大値を表す場合(全ビットが論理レベル1)、入力電圧V<1>~V<2>の各々として電圧VBのみが割り当てられる。
【0058】
また、図2Aに示す基本仕様では、上記したような最大値を表す場合(全ビットが論理レベル1)を除き、ビットD0~D(K-1)の内容に拘わらず、入力電圧V<1>として電圧VBが割り当てられ、入力電圧V<2>として電圧VAが割り当てられる。また、図2Aに示す仕様では、上記したような最大値を表す場合(全ビットが論理レベル1)を除き、ビットD0~D(K-1)の内容に拘わらず、入力電圧V<1>として電圧VBが割り当てられ、入力電圧V<2>として電圧VAが割り当てられる。更に図2Aに示す仕様では、入力電圧V<2>~V<2-1>の各々には、ビットD0~D(K-1)にて表されるデジタルコード毎に電圧VA又はVBが割り当てられる。
【0059】
また、図2Aに示す基本仕様では、全ての差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)のテイル電流比m<1>~m<2>は、デジタルデータ信号DTによる各デジタルコードに拘わらず、基準値「1」に固定するように制御される。
【0060】
ここで、図2Aの基本仕様にて示す入力電圧V<1>~V<2>及びテイル電流比m<1>~m<2>の値は、デジタルデータ信号DTによるデジタルコードに対応した2のK乗個の出力電圧信号Voutの電圧レベルが上記した数式(10)を満たすように電圧VA及びVB間を直線補間した特性に沿ったものになるように求めたものである。
【0061】
しかしながら、電圧VA及びVB間の電圧差が比較的大きい場合、あるいは、低電力化のためにテイル電流の基準電流値Ioが低く抑えられる場合に、図2Aの基本仕様に従って実際にデジタルアナログ変換器100_1を動作させると、出力電圧信号Voutの電圧レベルにやや大きな誤差(出力誤差と称する)が生じる。この理由は、差動対トランジスタの実際のIV特性曲線が2次曲線であるためで、差動対トランジスタのIV特性曲線上の動作点が、電圧差が大きい2電圧間の領域で動作する場合や閾値電圧に近い低電流領域で動作する場合は、直線補間とのずれが大きくなるからである。
【0062】
そこで、このような出力誤差を抑えるために、図2Aの基本仕様に示される基準値「1」からなるテイル電流比m<1>~m<2>に対して以下のような補正を施す。
【0063】
図2Bは、図2Aの基本仕様にて示されるテイル電流比に対して補正を施したテイル電流比m<1>~m<2>の補正後の仕様の一例を表す図である。
【0064】
図2Bに示す一例では、電流源13_2~13_(2-1)各々によるテイル電流比m<2>~m<2-1>については基本仕様と同様に全て基準値「1」に設定される。
【0065】
ただし、図2Bに示すように、デジタルデータ信号DTに拘わらず電圧VBを入力電圧V<1>として受ける差動対(11_1、12_1)にテイル電流を流す電流源13_1のテイル電流比m<1>は、デジタルデータ信号DTに拘わらず「1+α」に設定される。また、デジタルデータ信号DTが最大値を表す場合、つまりD0~D(K-1)が全て論理レベル1を表す場合を除き、電圧VAを入力電圧V<2>として受ける差動対(11_2、12_2)にテイル電流を流す電流源13_2のテイル電流比m<2>も「1+α」に設定される。
【0066】
つまり、デジタルアナログ変換器100_1では、図2Bに示すように、テイル電流比m<1>~m<2>のうちの2つのテイル電流比m<1>及びm<2>の値を、他のテイル電流比m<2>~m<2-1>各々の値「1」に「α」を加算した「1+α」に補正している。これにより、デジタルアナログ変換器100_1では、2個の差動対を用いて電圧VA及びVB間を直線補間によって分割することで2個の電圧レベルの出力電圧信号Voutを生成するにあたり、差動対を為すトランジスタの実際のIV特性曲線が2次曲線であることで生じる出力誤差を低減させている。特に、電圧VA及びVB間の電圧差が比較的大きい場合や、あるいは、低電力化のためにテイル電流の基準電流値Ioを低く抑える場合において、出力誤差の低減効果が大きい。
【0067】
よって、図2Bに示す仕様に従って動作するデジタルアナログ変換器100_1によれば、出力誤差を抑えた高精度なアナログ電圧の出力が可能となる。
【0068】
なお、差動増幅器10_1に含まれるカレントミラー回路20としては、図1に示す構成に限らず、例えばカスコード型等の任意のカレントミラー回路を採用しても良い。
【0069】
また、差動増幅器10_1に含まれる差動対(11_1,12_1)~(11_2,12_2)としては、図1に示すNチャネル型の差動対に代えて、Pチャネル型の差動対や、Nチャネル型のトランジスタ及びPチャネル型のトランジスタで対を為す両導電型の差動対を採用しても良い。
【0070】
また、図2A及び図2Bでは、Kビットの各デジタルコードを、電圧VA及びVB間を2のK乗個に分割した電圧レベルのうち、電圧VAを除いた電圧VBまでの2のK乗個の電圧レベルに割り当てた仕様例で説明したが、Kビットの各デジタルコードを、電圧VAを含み電圧VBを除く2のK乗個の電圧レベルに割り当てた仕様に置き換えることも可能である。
【0071】
以下の各実施例においても説明の便宜上、図1と同様な2のK乗個のNチャネル型の差動対を備えた差動増幅器の構成例、及び、図2A図2Bと同様なKビットの各デジタルコードを、電圧VAを除いた2のK乗個の電圧レベルに割り当てた仕様例で説明する。この際、上記したような差動増幅器の部分的置換やデジタルコードの割り当ての置換が同様に可能であることは勿論である。
【実施例0072】
図3は、本発明に係る第2の実施例によるデジタルアナログ変換器100_2の構成を示す回路図である。
【0073】
デジタルアナログ変換器100_2は、2ビットのデジタルデータ信号DTを受け、これを出力電圧信号Voutに変換して出力する。デジタルアナログ変換器100_2は、デコーダ50_2及び差動増幅器10_2を含む。
【0074】
デコーダ50_2は、2ビット(D0、D1)のデジタルデータ信号DTと共に互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_2は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_2の入力端子t<1>~t<4>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_2は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>~V<4>を、差動増幅器10_2の非反転入力端子である入力端子t<1>~t<4>に供給する。
【0075】
差動増幅器10_2は、電圧VA及びVB間を直線補間によって分割した4個の電圧レベルのうちで、2ビットのデジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_2は、夫々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている4つの同一導電型(図3ではNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)と、テイル電流制御回路13Aと、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。
【0076】
尚、デジタルアナログ変換器100_2は、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の差動増幅器10_1に含まれる差動対の数を4つ、つまりK=2としたものであり、その他の構成及び基本動作は上述したデジタルアナログ変換器100_1と同一であるので、構成及び基本動作の説明は省略する。
【0077】
以下に、デジタルアナログ変換器100_2を動作させる仕様について説明する。
【0078】
図4Aは、デジタルアナログ変換器100_2の基本仕様を示す図である。
【0079】
尚、図4Aでは、2ビット(D0、D1)のデジタルデータ信号DTに基づきデコーダ50_2が差動増幅器10_2に供給する入力電圧V<1>~V<4>として夫々に割り当てる2つの電圧(VA、VB)の組合せと、テイル電流比m<1>~m<4>と、出力電圧信号Voutとの関係を表す。また、図4Aでは、2ビット(D0、D1)の各デジタルコードに対して、電圧VA及びVB間を4分割して得られた5個の電圧レベルのうちから電圧VAを有する電圧レベルを除く4個の電圧レベルを割り当てた仕様例を示す。
【0080】
図4Aに示す基本仕様では、図2Aと同様に、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)に夫々対応したテイル電流比m<1>~m<4>を全て基準値「1」とする。更に、デコーダ50_2が受ける2つの電圧(VA、VB)を電圧レベル(4.08ボルト、4.00ボルト)としている。よって、デコーダ50_2は、図4Aに示すように、2ビット(D0、D1)のデジタルデータ信号DTの各デジタルコード毎に、夫々が4.08又は4.00ボルトを有する入力電圧V<1>~V<4>を差動増幅器10_2に供給する。
【0081】
これにより、差動増幅器10_2から出力される出力電圧信号Voutの期待値は、式(10)より以下の式で表される。
【0082】
Vout=(m<1>V1+m<2>V2+m<3>V3+m<4>V4
/(m<1>+m<2>+m<3>+m<4>)
すなわち、電圧レベル4.00ボルト及び4.08ボルトの間を直線補間にて4分割した際における、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの期待値は、図4Aに示すように、
4.0000ボルト、
4.0200ボルト、
4.0400ボルト、
4.0600ボルト、
4.0800ボルト、
となる。
【0083】
ところで、図4Aに示す入力電圧V<1>~V<4>、テイル電流比m<1>~m<4>を用いて実際に差動増幅器10_2を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、
4.0006ボルト、
4.0200ボルト、
4.0406ボルト、
4.0613ボルト、
4.0806ボルト、
となる。
【0084】
よって、図4Aに示すように、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対して、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsは、
0.0006ボルト、
0.0000ボルト、
0.0006ボルト、
0.0013ボルト、
0.0006ボルト、
となる。尚、出力誤差Voffsのうち0.6ミリボルトは差動増幅器の構成に依存する固有の出力誤差で、出力電圧信号Voutの各電圧レベルに一律に含まれる。この差動増幅器の構成に依存する固有の出力誤差は、2つの電圧(VA、VB)の直線補間による出力誤差とは異なるため、下記に説明する補正の対象外とする。
【0085】
すなわち、図4Aに示すように、出力電圧信号Voutには、各期待値に対して、それよりも大又は小となるプラスマイナス約0.7ミリボルトの出力誤差Voffsが生じる。
【0086】
そこで、テイル電流制御回路13Aでは、期待値に対して出力電圧信号Voutの電圧レベルが小(大)となる場合には、この電圧レベルが期待値よりも大(小)となる方向に誤差を生じさせるように、テイル電流比m<1>及びm<4>を補正する。
【0087】
図4Bは、図4Aの基本仕様にて示される基準値「1」のテイル電流比m<1>及びm<4>に、上記した補正値「α」による補正を施したデジタルアナログ変換器100_2の仕様の一例を示す図である。尚、図4Bに示す仕様において、デジタルデータ信号DTに基づく入力電圧V<1>~V<4>各々の値、及び出力電圧信号Voutの期待値は図4Aに示すものと同一である。
【0088】
図4Bに示す仕様では、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)に夫々対応したテイル電流比m<1>~m<4>のうちで、テイル電流比m<1>及びm<4>各々の値のみを、基準値「1」に「α」としての「0.06」を加えた「1.06」に補正している。
【0089】
図5は、テイル電流制御回路13Aとして、このようなテイル電流比m<1>~m<4>に基づくテイル電流m<1>Io~m<4>を生成する電流源13_1~13_4の具体的な回路構成を示す回路図である。
【0090】
図5に示すように、テイル電流制御回路13Aは、電流源13_1~13_4としてのNチャネル型の電流源トランジスタQ11~Q14を含む。電流源トランジスタQ11~Q14各々のソースには低位電源電圧VSSAが印加されており、夫々のドレインが差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)のソースに個別に接続されている。
【0091】
ここで、電流源トランジスタQ11及びQ14は、所定のバイアス電圧信号BS1を自身のゲートで受けることで、基準電流値Ioに、図4Bに示すように補正が施されたテイル電流比「1.06」を乗算した定電流Iaを生成する。一方、電流源トランジスタQ12及びQ13は、所定のバイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、基準電流値Ioにテイル電流比「1」を乗算した定電流Ibを生成する。
【0092】
よって、図4Bに示すテイル電流比m<1>~m<4>、及び入力電圧V<1>~V<4>を用いて実際に差動増幅器10_2を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、図4Bに示すように、
4.0006ボルト、
4.0204ボルト、
4.0406ボルト、
4.0608ボルト、
4.0806ボルト、
となる。
【0093】
その結果、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対して、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsは、図4Bに示すように、
0.0006ボルト、
0.0004ボルト、
0.0006ボルト、
0.0008ボルト、
0.0006ボルト、
となる。
【0094】
ここで、図6Aは、図4Aに示す基本仕様に従って差動増幅器10_2を動作させた際に生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表し、図6Bは、上記したテイル電流比の補正で基準値「1」に加算された「0.06」によって生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表す。更に、図6Cは、図4Bに示す補正後の仕様に従って差動増幅器10_2を動作させた際に生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表す図である。
【0095】
すなわち、上記したテイル電流比の補正により、図6Aに示すような基本仕様で差動増幅器10_2を動作させた際に生じる出力誤差特性に対して、図6Bに示すような逆方向の出力誤差を生じさせることで直線補間による出力誤差分を相殺する。これにより、図6Cに示すように、直線補間による出力誤差の幅がプラスマイナス約0.2ミリボルトに低下する。
【0096】
図7は、テイル電流比m<1>及びm<4>各々のテイル電流比が、基準値「1」である場合(破線にて示す)と、前述した「1.06」に補正した場合(太実線にて示す)と、「1.20」に補正した場合(一点鎖線)とで出力誤差特性を対比して表す図である。
【0097】
図7に示すように、テイル電流比m<1>及びm<4>各々のテイル電流比を基準値である「1」とした場合、電圧VA及びVB間の電圧差(|VA-VB|)が大きくなるほど出力誤差が増加して行く。一方、テイル電流比を「1」より大きくすると、図7に示すように電圧VA及びVB間の電圧差が増加しても、出力誤差の増加分を抑えることができる。ただし、過度にテイル電流比を増加(例えばテイル電流比:1.20)させると、電圧VA及びVB間の電圧差が小さい場合(例えば図7に示す80ミリボルト以下)に出力誤差が大きくなる。そこで、実際に採用する電圧VA及びVB間の電圧差に基づき、出力誤差が許容範囲内となるように、テイル電流比m<1>及びm<4>各々の基準値「1」に対する最適な補正量「α」を決定する。
【実施例0098】
図8Aは、図4Aに示す基本仕様の変形例を示す図であり、図8Bは、図8Aの基本仕様に示されるテイル電流比を補正した仕様を表す図である。
【0099】
図8Aに示す基本仕様では、デコーダ50_2が、デジタルデータ信号DTとして、ビットD0が論理レベル0、ビットD1が論理レベル1となるデジタルコードを受けた場合の入力電圧V<2>を、図4Aで示される4ミリボルトから4.08ミリボルトに変更し、入力電圧V<3>を4.08ミリボルトから4ミリボルトに変更している。これにより、図8Aに示す基本仕様では、図4Aに示す基本仕様に対して入力電圧V<3>及びV<4>を共通化している。
【0100】
よって、図4Aに示す基本仕様を採用した場合のデコーダ50_2は、2ビット(D0、D1)のデジタルデータ信号DTにより2つの電圧VA及びVBを入力電圧V<3>及びV<4>として個別に選択出力する回路構成(図示せず)であるのに対し、図8Aに示す基本仕様を採用した場合のデコーダ50_2は、入力電圧V<3>又はV<4>のいずれか一方のみを選択出力し、その選択電圧を差動増幅器10_2の入力端子t<3>及びt<4>に共通に供給する構成となる。したがって、図8Aの基本仕様に対応したデコーダ50_2は、回路構成に必要な選択スイッチ数が削減される。
【0101】
尚、図8Aに示す基本仕様では、上記した変更点を除く他の事項については図4A及び図6Aに示すものと同一である。
【0102】
一方、図8Bに示すテイル電流比の補正後の仕様では、図6Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差に対して、図6Bに示すような逆方向の出力誤差を生じさせるようにデジタルデータ信号DTに基づくテイル電流比m<1>~m<4>が規定されている。
【0103】
つまり、図8Bに示す仕様を採用する場合、テイル電流m<2>Io及びm<3>Ioを生成する、図3に示す電流源13_2及び13_3の各々を可変電流源とする。そして、テイル電流制御回路13Aは、デジタルデータ信号DTに基づき、図8Bに示すようにテイル電流比m<2>及びm<3>各々の値を個別に「1.06」又は基準値「1」に制御する。尚、テイル電流比m<1>の値は「1.06」に固定され、テイル電流比m<4>値は基準値「1」に固定される。
【0104】
この際、図8Bに示すテイル電流比補正後の仕様を採用した場合でも出力誤差Voffsの出力誤差特性は図6Cと略同一となる。
【0105】
図9は、図8Bに示す仕様を採用した場合に差動増幅器10_2に含まれるテイル電流制御回路13Aの具体的な回路構成を示す回路図である。
【0106】
図9に示す構成では、テイル電流制御回路13Aは、Nチャネル型の電流源トランジスタQ11~Q14及びトランジスタスイッチSW1~SW4を含む。
【0107】
電流源トランジスタQ11及びQ12は、バイアス電圧信号BS1を夫々のゲートで受けることで、テイル電流比「1.06」に基準電流値Ioを乗算して得られた定電流Iaを生成する。この際、電流源トランジスタQ11にて生成された定電流Iaがそのままテイル電流m<1>Ioとして、図3に示す差動対(11_1、12_1)に流れる。また電流源トランジスタQ13及びQ14は、バイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、基準電流値Ioにテイル電流比「1」を乗算した定電流Ibを生成する。この際、電流源トランジスタQ14にて生成された定電流Ibがそのままテイル電流m<4>Ioとして、図3に示す差動対(11_4、12_4)に流れる。
【0108】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD1に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD1の反転ビットXD1に応じてオンオフ制御される。この際、デジタルデータ信号DTのビットD1に基づき、トランジスタスイッチSW1及びSW2がオン状態、トランジスタスイッチSW3及びSW4がオフ状態になると、電流源トランジスタQ12にて生成された定電流Iaがテイル電流m<2>Ioとして図3に示す差動対(11_2、12_2)に流れる。更に、この際、電流源トランジスタQ13にて生成された定電流Ibがテイル電流m<3>Ioとして図3に示す差動対(11_3、12_3)に流れる。一方、トランジスタスイッチSW1及びSW2がオフ状態、トランジスタスイッチSW3及びSW4がオン状態になると、電流源トランジスタQ12にて生成された定電流Iaがテイル電流m<3>Ioとして差動対(11_3、12_3)に流れる。更に、この際、電流源トランジスタQ13にて生成された定電流Ibがテイル電流m<2>Ioとして差動対(11_2、12_2)に流れる。
【0109】
このように、電流源トランジスタQ12及びQ13の各々に流す電流の経路をトランジスタスイッチSW1~SW4にて選択することで、テイル電流m<2>Io及びm<3>Ioを生成する。
【0110】
つまり、図8Bに示す仕様により、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎に、テイル電流比m<2>及びm<3>が基準値「1」又は「1.06」の2値に変更制御される。
【0111】
この際、図8Bに示す仕様では、テイル電流比が基準値「1」より大きい「1.06」に同時設定される差動対は2つであり、そのうちの一方は、テイル電流比m<1>に対応した差動対(11_1、12_1)である。また、当該テイル電流比が「1.06」に同時設定される2つの差動対のうちの他方は、テイル電流比m<2>に対応した差動対(11_2、12_2)又はテイル電流比m<3>に対応した差動対(11_3、12_3)である。
【0112】
このように、上記した2つの差動対のうちの他方については、テイル電流制御回路13Aが、デジタルデータ信号DTに基づき、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)のうちで差動対(11_1、12_1)を除く差動対である差動対(11_2、12_2)又は(11_3、12_3)のうちの1つの差動対に切り換えている。
【実施例0113】
図10は、本発明に係る第3の実施例によるデジタルアナログ変換器100_3の構成を示す回路図である。
【0114】
デジタルアナログ変換器100_3は、3ビットのデジタルデータ信号DTを受け、これを出力電圧信号Voutに変換して出力する。デジタルアナログ変換器100_3は、デコーダ50_3及び差動増幅器10_3を含む。
【0115】
デコーダ50_3は、3ビット(D0~D2)のデジタルデータ信号DTと共に、互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_3は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_3の入力端子t<1>~t<8>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_3は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>~V<8>を、差動増幅器10_3の非反転入力端子である入力端子t<1>~t<8>に供給する。
【0116】
差動増幅器10_3は、電圧VA及びVB間を直線補間によって分割した8個の電圧レベルのうちで、3ビットのデジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_3は、夫々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている8つの同一導電型(図10ではNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)と、テイル電流制御回路13Bと、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。
【0117】
尚、デジタルアナログ変換器100_3は、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の差動増幅器10_1に含まれる差動対の数を8つ、つまりK=3としたものであり、その他の構成及び基本動作は上述したデジタルアナログ変換器100_1と同一であるので、構成及び基本動作の説明は省略する。
【0118】
以下に、デジタルアナログ変換器100_3を動作させる仕様について説明する。
【0119】
図11Aは、デジタルアナログ変換器100_3の基本仕様を示す図である。
【0120】
尚、図11Aでは、3ビット(D0~D2)のデジタルデータ信号DTに基づきデコーダ50_3が差動増幅器10_3に供給する入力電圧V<1>~V<8>として夫々に割り当てる2つの電圧(VA、VB)の組合せと、テイル電流比m<1>~m<8>と、出力電圧信号Voutとの関係を表す。また、図11Aでは、3ビット(D0~D2)の各デジタルコードに対して、電圧VA及びVB間を8分割して得られた9個の電圧レベルのうちから電圧VAを有する電圧レベルを除く8個の電圧レベルを割り当てた仕様例を示す。
【0121】
図11Aに示す基本仕様では、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)に夫々対応したテイル電流比m<1>~m<8>を全て基準値「1」とする。更に、デコーダ50_3が受ける2つの電圧(VA、VB)を電圧レベル(4.12ボルト、4.00ボルト)としている。よって、デコーダ50_3は、図11Aに示すように、3ビット(D0~D2)のデジタルデータ信号DTの各デジタルコード毎に、夫々が4.12又は4.00ボルトを有する入力電圧V<1>~V<8>を差動増幅器10_2に供給する。
【0122】
これにより、差動増幅器10_3から出力される出力電圧信号Voutの期待値は、式(10)より以下の式で表される。
【0123】
Vout=(m<1>V1+m<2>V2+、・・・、+m<8>V8
/(m<1>+m<2>+、・・・、+m<8>)
よって、電圧レベル4.12ボルト及び4.00ボルトの間を直線補間にて8分割した際における、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの期待値は、図11Aに示すように、
4.000ボルト、
4.015ボルト、
4.030ボルト、
4.045ボルト、
4.060ボルト、
4.075ボルト、
4.090ボルト、
4.105ボルト、
4.120ボルト、
となる。
【0124】
ところで、図11Aに示す入力電圧V<1>~V<8>、テイル電流比m<1>~m<8>を用いて実際に差動増幅器10_3を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、
4.0005ボルト、
4.0133ボルト、
4.0279ボルト、
4.0439ボルト、
4.0606ボルト、
4.0775ボルト、
4.0933ボルト、
4.1077ボルト、
4.1205ボルト、
となる。
【0125】
よって、図11Aに示すように、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対して、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsは、
0.0005ボルト、
-0.0017ボルト、
-0.0022ボルト、
-0.0011ボルト、
0.0006ボルト、
0.0025ボルト、
0.0033ボルト、
0.0027ボルト、
0.0005ボルト、
となる。尚、出力誤差Voffsのうち0.5ミリボルトは差動増幅器の構成に依存する固有の出力誤差で、出力電圧信号Voutの各電圧レベルに一律に含まれる。この差動増幅器の構成に依存する固有の出力誤差は、2つの電圧(VA、VB)の直線補間による出力誤差とは異なるため、下記に説明する補正の対象外とする。
【0126】
すなわち、図11Aに示すように、出力電圧信号Voutには、各期待値に対して、それよりも大又は小となる出力誤差の幅がプラスマイナス約2.7ミリボルトの出力誤差Voffsが生じる。
【0127】
そこで、テイル電流制御回路13Bでは、期待値に対して出力電圧信号Voutの電圧レベルが小(大)となる場合には、この電圧レベルが期待値よりも大(小)となる方向に誤差を生じさせるように、テイル電流比m<1>及びm<8>を補正する。
【0128】
図11Bは、図11Aの基本仕様にて示される基準値「1」のテイル電流比m<1>及びm<8>に上記した補正値「α」による補正を施したデジタルアナログ変換器100_3の仕様の一例を示す図である。尚、図11Bに示す仕様において、デジタルデータ信号DTに基づく入力電圧V<1>~V<8>各々の値、及び出力電圧信号Voutの期待値は図11Aに示すものと同一である。
【0129】
図11Bに示す仕様では、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)に夫々対応したテイル電流比m<1>~m<8>のうちで、テイル電流比m<1>及びm<8>各々の値のみを、基準値「1」に「α」としての「0.2」を加えた「1.2」に補正している。
【0130】
ここで、図11Bに示すテイル電流比m<1>~m<8>、及び入力電圧V<1>~V<8>を用いて実際に差動増幅器10_3を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、図11Bに示すように、
4.0005ボルト、
4.0151ボルト、
4.0292ボルト、
4.0446ボルト、
4.0606ボルト、
4.0768ボルト、
4.0920ボルト、
4.1060ボルト、
4.1205ボルト、
となる。
【0131】
その結果、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対して、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsは、図11Bに示すように、
0.0005ボルト、
0.0001ボルト、
-0.0008ボルト、
-0.0004ボルト、
0.0006ボルト、
0.0018ボルト、
0.0020ボルト、
0.0010ボルト、
0.0005ボルト、
となる。
【0132】
ここで、図12Aは、図11Aに示す基本仕様に従って差動増幅器10_3を動作させた際に生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表し、図12Bは、上記したテイル電流比の補正で基準値「1」に加算された「0.2」によって生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表す。更に、図12Cは、図11Bに示す補正後の仕様に従って差動増幅器10_3を動作させた際に生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表す図である。
【0133】
すなわち、上記したテイル電流比の補正により、図11Aに示す基本仕様で差動増幅器10_3を動作させた際に生じる出力誤差特性に対して、図12Bに示すような逆方向の出力誤差を生じさせることで直線補間による出力誤差分を相殺する。これにより、図12Cに示すように、直線補間による出力誤差の幅がプラスマイナス約1.5ミリボルトに低下する。
【0134】
図13は、テイル電流比m<1>及びm<8>各々のテイル電流比が、基準値「1」である場合(破線にて示す)と、前述した「1.20」に補正した場合(太実線にて示す)と、「1.44」に補正した場合(一点鎖線)とで出力誤差特性を対比して表す図である。
【0135】
図13に示すように、テイル電流比m<1>及びm<8>各々のテイル電流比を基準値である「1」とした場合、電圧VA及びVB間の電圧差(|VA-VB|)が大きくなるほど出力誤差が増加して行く。一方、テイル電流比を「1」より大きくすると、図13に示すように電圧VA及びVB間の電圧差が増加しても、出力誤差の増加分を抑えることができる。ただし、過度にテイル電流比を増加(例えばテイル電流比:1.44)させると、電圧VA及びVB間の電圧差が小さい場合(例えば図13に示す80ミリボルト以下)に出力誤差が大きくなる。そこで、実際に採用する電圧VA及びVB間の電圧差に基づき、出力誤差が許容範囲内となるように、テイル電流比m<1>及びm<8>各々の基準値「1」に対する最適な補正量「α」を決定する。
【実施例0136】
図14Aは、図11Aに示す基本仕様の変形例を示す図であり、図14Bは、図14Aの基本仕様に示されるテイル電流比を補正した仕様を表す図である。
【0137】
図14Aに示す基本仕様では、デコーダ50_3がデジタルデータ信号DTのビットD0~D2が論理レベル0、1、0、又は論理レベル0、0、1、或いは論理レベル0、1、1となるデジタルコードを受けた場合における入力電圧V<2>を、図11Aの基本仕様で示される4ミリボルトから4.12ミリボルトに変更している。また、図14Aに示す基本仕様では、当該デジタルデータ信号DTのビットD0~D2が論理レベル0、1、0となるデジタルコードを受けた場合における入力電圧V<4>を、図11Aの基本仕様で示される4.12ミリボルトから4ミリボルトに変更している。また、図14Aに示す基本仕様では、当該デジタルデータ信号DTのビットD0~D2が論理レベル0、0、1となるデジタルコードを受けた場合における入力電圧V<6>を、図11Aの基本仕様で示される4.12ミリボルトから4ミリボルトに変更している。更に、図14Aに示す基本仕様では、当該デジタルデータ信号DTのビットD0~D2が論理レベル0、1、1となるデジタルコードを受けた場合における入力電圧V<8>を、図11Aの基本仕様で示される4.12ミリボルトから4ミリボルトに変更している。これにより、図14Aに示す基本仕様では、図11Aに示す基本仕様に対して入力電圧V<3>及びV<4>を共通化し、また入力電圧V<5>及びV<6>を共通化し、更に入力電圧V<7>及びV<8>を共通化している。
【0138】
よって、図11Aに示す基本仕様を採用した場合のデコーダ50_3は、3ビット(D0、D1、D2)のデジタルデータ信号DTにより2つの電圧VA及びVBを入力電圧V<3>~V<8>を個別に出力する回路構成(図示せず)である。一方、図14Aに示す基本仕様を採用した場合のデコーダ50_3は、入力電圧V<3>又はV<4>のいずれか一方のみを選択出力し、その選択電圧を差動増幅器10_3の入力端子t<3>及びt<4>に共通に供給し、また入力電圧V<5>又はV<6>のいずれか一方のみを選択出力し、その選択電圧を差動増幅器10_3の入力端子t<5>及びt<6>に共通に供給し、更に入力電圧V<7>又はV<8>のいずれか一方のみを選択出力し、その選択電圧を差動増幅器10_3の入力端子t<7>及びt<8>に共通に供給する構成となる。したがって、図14Aの基本仕様に対応したデコーダ50_3は、回路構成に必要な選択スイッチ数が削減される。
【0139】
尚、図14Aに示す基本仕様において上記した変更点を除く他の事項については、図11Aに示すものと同一である。
【0140】
一方、図14Bに示すテイル電流比の補正後の仕様では、図12Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差に対して図12Bに示すような逆方向の出力誤差を生じさせるようにテイル電流比m<1>~m<8>を制御する。
【0141】
つまり、図14Bに示す仕様を採用する場合、テイル電流m<2>Io及びm<7>Ioを生成する、図10に示す電流源13_2及び13_7の各々を可変電流源とする。そして、図10に示すテイル電流制御回路13Bは、デジタルデータ信号DTに基づき、図14Bに示すようにテイル電流比m<2>及びm<7>各々の値を個別に「1.20」又は基準値「1」に制御する。尚、テイル電流比m<1>の値は「1.20」に固定され、テイル電流比m<8>値は基準値「1」に固定される。
【0142】
この際、図14Bに示すテイル電流比補正後の仕様を採用した場合でも出力誤差Voffsの出力誤差特性は図12Cと略同一となる。
【0143】
図15は、図14Bに示す仕様を採用した場合に差動増幅器10_3に含まれるテイル電流制御回路13Bの具体的な回路構成を示す回路図である。
【0144】
図15に示す構成では、テイル電流制御回路13Bは、Nチャネル型の電流源トランジスタQ11~Q18及びトランジスタスイッチSW1~SW4を含む。
【0145】
電流源トランジスタQ11及びQ12は、バイアス電圧信号BS1を夫々のゲートで受けることで、テイル電流比「1.20」に基準電流値Ioを乗算して得られた定電流Iaを生成する。この際、電流源トランジスタQ11にて生成された定電流Iaがそのままテイル電流m<1>Ioとして、図10に示す差動対(11_1、12_1)に流れる。
【0146】
また、電流源トランジスタQ13~Q18は、バイアス電圧信号BS2を夫々のゲートで受けることで、テイル電流比「1」に基準電流値Ioを乗算して得られた定電流Ibを生成する。この際、電流源トランジスタQ14~Q18の各々が生成した定電流Ibがそのままテイル電流m<3>Io~m<6>Io及びテイル電流m<8>Ioとして、図10に示す差動対(11_3、12_3)~(11_6、12_6)、及び差動対(11_8、12_8)に夫々流れる。
【0147】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD0の反転ビットXD0に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD0に応じてオンオフ制御される。この際、デジタルデータ信号DTのビットD0に基づき、トランジスタスイッチSW1及びSW2がオン状態、トランジスタスイッチSW3及びSW4がオフ状態になると、電流源トランジスタQ12にて生成された定電流Iaがテイル電流m<2>Ioとして図10に示す差動対(11_2、12_2)に流れる。更に、この際、電流源トランジスタQ13にて生成された定電流Ibがテイル電流m<7>Ioとして図10に示す差動対(11_7、12_7)に流れる。一方、トランジスタスイッチSW1及びSW2がオフ状態、トランジスタスイッチSW3及びSW4がオン状態になると、電流源トランジスタQ12にて生成された定電流Iaがテイル電流m<7>Ioとして差動対(11_7、12_7)に流れる。更に、この際、電流源トランジスタQ13にて生成された定電流Ibがテイル電流m<2>Ioとして差動対(11_2、12_2)に流れる。
【0148】
このように、電流源トランジスタQ12及びQ13の各々に流す電流の経路をトランジスタスイッチSW1~SW4にて選択することで、テイル電流m<2>Io及びm<7>Ioを生成する。
【0149】
つまり、図14Bに示すように、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎にテイル電流比m<2>及びm<7>が基準値「1」又は「1.20」の2値に変更制御される。更に、図15に示す構成により、テイル電流比m<1>は「1.20」、テイル電流比m<3>~m<6>及びm<8>は基準値「1」に制御される。
【実施例0150】
図16は、図11Aの基本仕様にて示される基準値「1」のテイル電流比m<1>及びm<8>に補正を施したデジタルアナログ変換器100_3の仕様の他の一例を示す図である。尚、図16に示す仕様において、デジタルデータ信号DTに基づく入力電圧V<1>~V<8>各々の値、及び出力電圧信号Voutの期待値は図11Bに示すものと同一である。
【0151】
図16に示す仕様では、テイル電流比m<1>~m<8>のうちのm<1>及びm<8>各々の値を、デジタルデータ信号DTに基づき、基準値「1」に「0.2」を加えた「1.2」、当該基準値「1」に「0.4」を加えた「1.4」、及び当該基準値「1」に「0.6」を加えた「1.6」の3段階に切り替える。
【0152】
ここで、図17Aは、図11Aの基本仕様に従って差動増幅器10_3を動作させた際に生じる出力誤差Voffsの期待値に対する出力誤差特性を表し、図17Bは、図16に示す形態でテイル電流比m<1>及びm<8>各々の基準値「1」に加算する「0.2」、「0.4」及び「0.6」にて生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表す。更に、図17Cは、図16に示すテイル電流比の補正後の仕様に従って差動増幅器10_3を動作させた際に生じる出力誤差Voffsによる出力誤差特性を表す図である。
【0153】
このように、図16に示す仕様に従って差動増幅器10_3を動作させることで図17Cに示すように、出力誤差の幅がプラスマイナス約0.2ミリボルトとなる。よって、図11Bに示す仕様に従って差動増幅器10_3を動作させた場合(図12C)のプラスマイナス約1.5ミリボルトの出力誤差幅に比べて、出力誤差を大幅に低減することができる。
【実施例0154】
図18は、本発明に係る第4の実施例によるデジタルアナログ変換器100_4の構成を示す回路図である。
【0155】
デジタルアナログ変換器100_4は、図1に示す2のK乗個の差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)を含む差動増幅器10_1を用いて、変換対象となるデジタルデータ信号DTのビット数をKビットよりも多いM(MはKより大きい整数)ビットに拡張したものである。
【0156】
尚、デジタルアナログ変換器100_4は、図1に示すデコーダ50_1に代えてデコーダ50_4及び参照電圧生成部90を採用したものであり、差動増幅器10_1の構成については図1に示すものと同一である。
【0157】
参照電圧生成部90は、直流の基準電源電圧VGH、及び基準電源電圧VGHより低電圧の基準電源電圧VGLを受ける。参照電圧生成部90は、基準電源電圧VGH及びVGLに基づき、夫々電圧値が異なる参照電圧Vg0~VgR(Rは2以上の整数)を生成し、かかる参照電圧Vg0~VgRをデコーダ50_5に供給する。
【0158】
デコーダ50_4は、サブデコーダ50S_1及び50S_2を含む。
【0159】
サブデコーダ50S_2は、Mビットのデジタルデータ信号DT及び参照電圧Vg0~VgRを受け、当該デジタルデータ信号DTの上位ビット、例えば上位(M-K)ビットに基づき、参照電圧Vg0~VgRのうちから、互いに隣接する一対の電圧を2つの電圧(VA、VB)として選択する。サブデコーダ50S_2は、選択した2つの2つの電圧(VA、VB)をサブデコーダ50S_1に供給する。
【0160】
サブデコーダ50S_1は、デジタルデータ信号DTの下位のKビット及び2つの電圧(VA、VB)に基づき、電圧(VA,VB)のうちの一方又は他方を、差動増幅器10_1の入力端子t<1>~t<2>に夫々振り分ける組合せを選択する。サブデコーダ50S_1は、電圧(VA,VB)を入力端子t<1>~t<2>に夫々振り分けた電圧群を、入力電圧V<1>~V<2>として、差動増幅器10_1の入力端子t<1>~t<2>に供給する。尚、差動増幅器10_1の動作は、前述した図2A及び図2Bを用いて説明したものと同一である。
【0161】
図19は、図18に示すデジタルアナログ変換器100_4におけるK=3とした場合の仕様の一例を示す図である。尚、図19に示す仕様では、Mビットデジタルデータの上位側(M-K)ビットに基づきサブデコーダ50S_2が選択する2つの電圧(VA、VB)と、下位のKビットに応じたサブデコーダ50S_2及び差動増幅器10_1の作用で出力端子Skか出力される電圧レベル(出力レベル)と、を示す。
【0162】
かかる仕様では、サブデコーダ50S_2は、上位(M-K)ビットのデジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧(VA、VB)の電圧レベルを、8つの出力レベルおき、つまり、(0,8)、(8,16)、(16,24)、・・・のように選択する。これにより、アナログの出力電圧信号Voutとして、出力レベル1~8、9~16、17~24、・・・を得ることができる。
【実施例0163】
図20は、上記したデジタルアナログ変換器(100_1~100_4)を含むデータドライバを有する表示装置200の構成を示すブロック図である。
【0164】
表示装置200は、表示パネル15、表示コントローラ16、走査ドライバ17及びデータドライバ18を含む。
【0165】
表示パネル15は、例えば液晶又は有機ELパネル等からなり、2次元画面の水平方向に伸張するm個(mは2以上の自然数)の水平走査線GL1~GLmと、2次元画面の垂直方向に伸張するn個(nは2以上の自然数)のデータ線DL1~DLnと、を含む。水平走査線及びデータ線の各交叉部には、画素を担う表示セルが形成されている。
【0166】
表示コントローラ16は、映像信号VDに基づき、スタートパルス、クロック信号、垂直及び水平同期信号等の各種制御信号、並びに各画素の輝度レベルを表す映像デジタルデータ片の系列を含む映像デジタル信号DVSを生成する。
【0167】
表示コントローラ16は、上記した水平同期信号に対応した走査タイミング信号を生成しこれを走査ドライバ17に供給すると共に、上記した映像デジタル信号DVSをデータドライバ18に供給する。
【0168】
走査ドライバ17は、表示コントローラ16から供給された走査タイミング信号に基づいて、水平走査パルスを表示パネル15の水平走査線GL1~GLmの各々に順次印加する。
【0169】
データドライバ18は、シフトレジスタ80、データレジスタラッチ70、レベルシフタ60、参照電圧生成部90、n個のデコーダ50及びn個の差動増幅器10を含む。
【0170】
シフトレジスタ80は、映像デジタル信号DVSに含まれるスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチ70に供給する。
【0171】
データレジスタラッチ70は、シフトレジスタ80から供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、映像デジタル信号DVSに含まれる映像デジタルデータ片を所定個(例えばn個)毎に取り込み、各映像デジタルデータ片を表すn個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタ60に供給する。
【0172】
レベルシフタ60は、データレジスタラッチ70から供給されたn個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たn個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号を、データドライバ18のn個の出力チャネルに夫々対応して設けられたn個のデコーダ50の各々に供給する。
【0173】
参照電圧生成部90は、直流の基準電源電圧VGH、及び基準電源電圧VGHよりも低電圧の基準電源電圧VGLを受ける。参照電圧生成部90は、基準電源電圧VGH及びVGLに基づき、夫々電圧値が異なる参照電圧Vg0~VgRを生成し、n個のデコーダ50の各々に供給する。
【0174】
デコーダ50の各々は、上記した参照電圧群のうちから、レベルシフタ60にてレベルシフトされた映像デジタルデータ信号に対応した一対の参照電圧を選択する。そして、デコーダ50の各々は、選択した一対の参照電圧を2つの電圧(VA、VB)として、データドライバ18のn個の出力チャネルに夫々対応して設けられている差動増幅器10に供給する。
【0175】
差動増幅器10は、入力された電圧VA及びVB間を分割する例えば8レベルの電圧のうちの1つを有する出力電圧信号Voutを生成し、この出力電圧信号Voutを駆動信号として出力する。この際、n個の差動増幅器10から出力されたn個の駆動信号は、駆動信号S1~Snとして表示パネル15のデータ線DL1~DLnに夫々供給される。
【0176】
ここで、図20に示されるデータドライバ18の出力チャネル毎に設けられるデコーダ50及び差動増幅器10、並びに参照電圧生成部90として、図18に示すデジタルアナログ変換器100_4を適用することができる。これにより、データドライバ18の省面積化を図ることが可能となる。
【0177】
以上、詳述したように、本発明では、Kビット(Kは1以上の正数)のデジタルデータをアナログの出力電圧(Vout)に変換して出力するデジタルアナログ変換器として、以下の差動増幅器及び第1のデコーダを含むものを採用している。
【0178】
差動増幅器(10_1~10_4)は、複数の入力端(t<1>~t<2>)を有し、かかる入力端で夫々受けた電圧を直線補間によって2のK乗個に分割した電圧レベル群のうちで、Kビットのデジタルデータに対応した1の電圧レベルを有する出力電圧(Vout)を自身の出力端子から出力する。第1のデコーダ(50_1~50_4)は、第1及び第2の電圧(VA、VB)を受け、Kビットのデジタルデータに基づき差動増幅器の複数の入力端の各々に、第1の電圧(VA)又は第2の電圧(VB)を振り分けて供給する。
【0179】
ここで、差動増幅器は、以下の2のK乗個の差動対、増幅段、及びテイル電流制御回路を含む。
【0180】
2のK乗個の差動対(11_1、12_1~11_2、12_2)の各々は、出力電圧(Vout)が共通に入力される反転入力端、複数の入力端で受けた電圧(V<1>~V<2>)のうちの1つが入力電圧として供給される非反転入力端、及び出力対を含む。これら2のK乗個の差動対の出力対同士が共通接続されており、夫々が個別に受けたテイル電流(m<1>Io~m<2>Io)で駆動される。
【0181】
増幅段(30)は、2のK乗個の差動対各々の出力対の一方又は両方の出力に基づく増幅作用により出力電圧(Vout)を生成する。
【0182】
テイル電流制御回路(13、13A、13B)は、2のK乗個の差動対の各々にテイル電流を個別に供給する。この際、テイル電流制御回路は、2のK乗個の差動対のうちの2つの差動対を除く各差動対に流すテイル電流における基準電流値(Io)に対する電流比を所定の基準値(例えば「1」)とし、2つの差動対の各々に流すテイル電流の電流比を基準値より大(例えば「1.06」、「1.2」)に制御する。
【0183】
これにより、各差動対に流すテイル電流の電流比を全て基準値に統一した場合に出力電圧に生じる、期待値に対する出力誤差(例えば図6A)とは逆方向の出力誤差(例えば図6B)が生じ、当該出力誤差が相殺される(例えば図6C)。
【0184】
よって、本発明によれば、デジタルアナログ変換器のアナログの出力電圧に生じる出力誤差を低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0185】
10_1~10_4 差動増幅器
13、13A、13B テイル電流制御回路
50_1~50_4 デコーダ
100_1~100_4 デジタルアナログ変換器
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20