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特開2024-131581空調システム、空調方法及び空調システムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131581
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】空調システム、空調方法及び空調システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20240920BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240920BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 10/627 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M10/633
H05K7/20 H
H05K7/20 V
G06F1/20 B
G06F1/20 D
H01M10/627
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/6563
H01M10/6566
H01M10/615
H01M10/663
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041932
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 律也
(72)【発明者】
【氏名】森 公一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 喜久雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 雅博
(72)【発明者】
【氏名】トゥライラッタナピラック ナワクン
(72)【発明者】
【氏名】孫 如凱
【テーマコード(参考)】
5E322
5H031
【Fターム(参考)】
5E322AB10
5E322BA05
5E322BB03
5E322BB05
5E322BB08
5E322EA02
5E322EA05
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】複数の発熱機器の温度を均平化しつつ、空気調和機の消費電力を抑制することが可能な空調システム、空調方法及び空調システムの製造方法を提供すること。
【解決手段】空調システムは、筐体内を、発熱体が格納可能な格納部1に区画する、上下方向に沿って設けられる仕切部と、前記筐体の内部温度を所定範囲に保つよう動作する空気調和機3と、前記格納部1毎に設けられ、前記格納部外部の空気を内部へ吸入する、又は、前記格納部内部の空気を外部へ排出する送風機2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内を、発熱体が格納可能な格納部に区画する、上下方向に沿って設けられる仕切部と、
前記筐体の内部温度を所定範囲に保つよう動作する空気調和機と、
前記格納部毎に設けられ、前記格納部外部の空気を内部へ吸入する、又は、前記格納部内部の空気を外部へ排出する送風機と
を備える空調システム。
【請求項2】
前記空気調和機が冷房運転を行っている場合、前記送風機を吸入制御し、前記空気調和機が暖房運転を行っている場合、前記送風機を排出制御する制御部
を更に備える請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記仕切部は前記筐体内の第1方向に沿って複数設けられており、
前記仕切部は前記第1方向と交差する第2方向に向けて開口部を有する
請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記仕切部は板状樹脂で形成してある
請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記送風機は上下方向に送風可能なように、前記格納部の上部に取り付けられており、
前記制御部は、
前記筐体の上部に取り付けられた前記空気調和機が冷房運転を行っている場合、前記送風機を吸入制御して、前記空気調和機から前記筐体の上部へ排出された冷気を、前記格納部内に導入し、
前記空気調和機が暖房運転を行っている場合、前記送風機を排出制御して、前記空気調和機から前記筐体の下部へ排出され前記格納部内から導入された暖気を排出する
請求項2に記載の空調システム。
【請求項6】
前記格納部それぞれには温度センサが設けられ、
前記制御部は各温度センサが検出した温度に基づき、対応する前記格納部に設けられた前記送風機を個別に制御する
請求項2に記載の空調システム。
【請求項7】
前記格納部内の上部に第1温度センサ、下部に第2温度センサが設けられ、
前記制御部は前記第1温度センサ及び前記第2温度センサが検出する温度、並びに、所定の第1閾値及び第2閾値に基づき、前記送風機を制御する
請求項2に記載の空調システム。
【請求項8】
前記制御部は温度センサが検出した温度と目標温度とにより算出される標準偏差に基づき、評価指数を算出し、
前記評価指数に基づく評価指標を表示出力する
請求項6に記載の空調システム。
【請求項9】
筐体内に、発熱体が格納可能な格納部に区画する仕切部を、上下方向に沿って設け、
空気調和機を、前記筐体の内部温度を所定範囲に保つよう動作させ、
前記格納部毎に設けた送風機を、前記格納部外部の空気を内部へ吸入する、又は、前記格納部内部の空気を外部へ排出するよう動作させる
空調方法。
【請求項10】
筐体内を、発熱体が格納可能な格納部に区画する仕切部を、上下方向に沿って設け、
前記筐体の内部温度を所定範囲に保つよう動作する空気調和機を前記筐体に設置し、
前記格納部外部の空気を内部へ吸入する、又は、前記格納部内部の空気を外部へ排出する送風機を前記格納部毎に設置する
空調システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内の温度を調整する空調システム、空調方法及び空調システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンターのサーバコンピュータや瞬時電圧低下補償装置等の発熱機器や蓄電池類はコンテナ等に収容され、空気調和機(以下、「空調機」ともいう。)により適切な温度管理が行われている。その中で、瞬時電圧低下補償装置等で使用される蓄電池は、停電時や必要時に放電し発熱する。いずれの機器も温度が上昇すると寿命や信頼性の低下を招く。一般的な運用では、これらの発熱機器をコンテナ等に一括して収容し、コンテナ等の内部に設置した空調機でコンテナ等の内部の温度管理し、寿命や信頼性の低下を抑制している。
【0003】
例えば、特許文献1には、閉空間内に設けられた複数の蓄電池モジュールと、冷却装置と、冷却装置から閉空間へ冷却した空気を供給する吹き出し口と、閉空間から冷却装置へ温度が上昇した空気を排出する排気口と、蓄電池モジュールへと送風を行うファンと、蓄電池モジュールの温度を検知する温度検知手段と、蓄電池モジュール監視制御装置と、ファンの起動または停止の制御指令を発信するシステム監視制御装置とを備える蓄電システムが提案されている。当該システムでは、閉空間内で温度にむらが生じた場合にファンの起動または停止により温度偏差の低減を目指すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6151062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では以下の問題が生じる。温度偏差を低減するため、空気調和機の出力風量を増加すると、増加分に応じて空気調和機の消費電力が増大する。また、発熱機器の隅々まで効率的に冷気が届かず、十分な冷却ができていない。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものである。その目的は、複数の発熱機器の温度を均平化しつつ、空気調和機の消費電力を抑制することが可能な空調システム、空調方法及び空調システムの製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の一態様に係る空調システムは、筐体内を、発熱体が格納可能な格納部に区画する、上下方向に沿って設けられる仕切部と、前記筐体の内部温度を所定範囲に保つよう動作する空気調和機と、前記格納部毎に設けられ、前記格納部外部の空気を内部へ吸入する、又は、前記格納部内部の空気を外部へ排出する送風機とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本願の一態様にあっては、複数の発熱機器の温度を均平化しつつ、空気調和機の消費電力を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】空調システムの構成例を示す斜視図である。
図2】空調システムの構成例を示す平面図である。
図3】ラックの構成例を示す斜視図である。
図4】電池ユニットの構成例を示す斜視図である。
図5】制御装置の構成例を示すブロック図である。
図6】設定DBの例を示す説明図である。
図7】履歴DBの例を示す説明図である。
図8】キュービクル内での空気の流れの例を示す説明図である。
図9】送付機の回転数制御の例を示す説明図である。
図10】基本制御処理の手順例を示すフローチャートである。
図11】冷房時制御処理又は暖房時制御処理の手順例を示すフローチャートである。
図12】制御装置の処理部に含まれる機能部の例を示す機能ブロック図である。
図13】起動処理の手順例を示すフローチャートである。
図14】ポーリング処理の手順例を示すフローチャートである。
図15】ACファン及びDCファンの性能を比較するグラフ図である。
図16】通報処理の手順例を示すフローチャートである。
図17】製造手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下実施の形態を、図面を参照して説明する。以下の説明においては、発熱体の一例として蓄電池を取り上げる。発熱体を収容する筐体は、キュービクル式高圧受変電設備に用いられる筐体とする。キュービクル式高圧受変電設備を省略してキュービクルというが、キュービクル式高圧受変電設備に用いる直方体状の金属製の筐体をキュービクルと呼ぶことも有る。以下の説明においては、キュービクルは当該金属製の筐体を示すものとする。
【0011】
図1は空調システムの構成例を示す斜視図である。図2は空調システムの構成例を示す平面図である。空調システム100はラック1、送風機2、空気調和機3、制御装置4、電池ユニット5、上部温度センサ6、下部温度センサ7、搬送ファン8及びキュービクル9を含む。ラック1はキュービクル9内に複数設置が可能である。電池ユニット5、送風機2、上部温度センサ6及び下部温度センサ7は、ラック1毎に設置する。ラック1は格納部の一例である。上部温度センサ6は第1温度センサの一例であり、下部温度センサ7は第2温度センサの一例である。図1において、ラック1の並び方向が第1方向の一例であり、上下方向が、第2方向の一例である。
【0012】
図3はラックの構成例を示す斜視図である。ラック1は直方体状をなす。ラック1は天板11、背板12、左側板13、右側板14、正面右板15及び正面左板16を含む。ラック1は底板を有せず、下方が開口部としてある。ラック1は既存製品の利用を想定している。例えば、ラック1は、図示しない複数のL型アングルを互いに接続して形成した直方体状のフレームに、鉄又はステレンス等の金属製の上記各板をネジ止め等で固定して形成されている。また、ラック1は板金加工等で形成したものでもよく、1枚の板を曲げて複数の板部を形成してもよい。天板11には円形状の孔部111が形成してある。天板11には送風機2が取り付けられ、孔部111は給排気口として機能する。正面右板15及び正面左板16は、ラック1内に納める電池ユニット5の出し入れを行うために、取り外しが容易となっていることが望ましい。正面右板15及び正面左板16は上下方向にわたる開口部が形成されるよう左右方向に間を隔てて、固定されている。ラック1はキュービクル9の床面に作られたベースの上に載せられ、ボルトによって、ベースに固定される。ラック1は棚板を備えている。図3に示すラック1は、1つのラック1で1つの区画を形成する構成であるが、1つのラックに複数の仕切壁を設けて、複数の区画を形成する構成であってもよい。この場合、隣り合う区間の左側板と右側板とを共通化することが可能である。左側板13及び右側板14は仕切部の一例である。正面右板15及び正面左板16はラック1の内部が見えるように透明な樹脂板(板状樹脂)、例えば、アクリル板で構成してもよい。また、正面右板15及び正面左板16に替えて、断熱性がある間仕切りカーテンやスリットカーテンを採用してもよい。
【0013】
送風機2は、例えば羽根をモータにて回転することにより回転軸方向の空気の流れを起こす装置である。送風機2はモータを正転又は逆転することにより、方向が互いに約180度異なる2つの空気の流れを選択的に起こすことが可能である。また、モータは回転速度の制御が可能であり、流れる空気の量を調整可能である。なお、2つの空気の流れを形成でき、流れる空気の量を調整可能であるならば、送風機2をファンレス扇風機と言った羽根を有しない扇風機で構成してもよい。
【0014】
空気調和機3はいわゆるエアコン(エアコンディショナー)と呼ばれる装置である。空気調和機3はキュービクル9内の温度が、所定範囲となるように、温風又は冷風を吹き出す。空気調和機3は吹き出す風がキュービクル9の内に行き渡るよう、キュービクル9の上方に設置する。空気調和機3はキュービクル9の出入口が設置された壁と対向する側壁に設置する。
【0015】
制御装置4は上部温度センサ6及び下部温度センサ7による計測結果により、送風機2の制御を行う。制御装置4はワンボードマイコン、シングルボードコンピュータ等で構成する。
【0016】
図4は電池ユニットの構成例を示す斜視図である。電池ユニット5は複数の蓄電池モジュール51の集合体である。蓄電池モジュール51の数は、出力として要求される電圧等によって異なる。
【0017】
上部温度センサ6及び下部温度センサ7は室温を計測可能な温度センサである。上部温度センサ6及び下部温度センサ7は、測温抵抗体、サーミスタ又は熱電対を用いて、温度を計測する。上部温度センサ6及び下部温度センサ7が計測した温度は有線又は無線通信により、制御装置4へ送信される。通信の信頼性や安定性の観点からから有線通信が望ましいが、設備の重要度があまり高くない場合は、無線通信でもよい。上部温度センサ6はラック1の上部に、下部温度センサ7はラック1の下部に設置ずる。以降、上部温度センサ6及び下部温度センサ7をまとめて温度センサと呼ぶ。
【0018】
搬送ファン8はキュービクル9内の空気を循環させるため、吸気及び排気を行う。搬送ファン8はキュービクル9の出入口上方に設置する。搬送ファン8はエアーカーテンとしても動作し、出入口開放時の外気の侵入遮断や、外部からのホコリ、虫などの侵入防止の機能を持たせてもよい。なお、搬送ファン8は、空調システム100において必須の構成ではない。
【0019】
キュービクル9は、上述したようにキュービクル式高圧受変電設備に用いる直方体状の金属製の筐体である。キュービクル9は高圧受変電設備に用いることから、強度が高く、感電・火災の危険性が低い。そのため、キュービクル9は大量の蓄電池モジュール51を収納するのに適している。なお、十分な性能を発揮できるのであれば、キュービクル9以外の筐体を採用してもよい。通常のキュービクルは換気できる構造となっているが、本明細書におけるキュービクル9は、空調システム100による温度制御を行うため、気密性に特化した構造である。
【0020】
図5は制御装置の構成例を示すブロック図である。制御装置4は処理部41、記憶部42、入出力部43及び通信部44を含む。
【0021】
処理部41は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置や、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の主記憶部装置を含む。処理部41は、記憶部42に記憶されたプログラム4P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行い、計画取得部41a、冷暖判定部41b、温度取得部41c、回転数制御部41d、履歴記憶部41e等の機能部を実現する。基本機能を実現にあたっては、処理部41の機能をこのように細く切り分けることは必要ではない。これらの機能部については、追加機能の説明において言及する。
【0022】
記憶部42はフラッシュメモリ又はSSD(Solid State Drive)等であり、処理部41が処理を実行するために必要なプログラム4Pや各種DB(Database)を記憶する。記憶部42は、設定DB421及び履歴DB422を記憶する。記憶部42を着脱可能なmicroSDカードとしてもよい。基本機能を実現にあたっては、設定DB421及び履歴DB422は必須の構成ではない。
【0023】
入出力部43は入出力インタフェースである。送風機2、空気調和機3、上部温度センサ6及び下部温度センサ7と通信を行う。通信形式はパラレル通信、シリアル通信であってもよい。また、通信路は有線でも無線でもよい。
【0024】
通信部44はインターネット等の通信ネットワークNを介して、キュービクル9の外部と通信を行う。通信部44は例えば、キュービクル9内の状況を監視する監視センタ10と通信を行う。また、処理部41は、通信部44を介して、気象情報提供サイトと通信を行い、予想最高気温、予想最低気温の情報を取得する。
【0025】
図6は設定DBの例を示す説明図である。設定DB421は空気調和機3の運転設定等を記憶する。設定DB421は開始列、終了列、モード列及び変更条件列を含む。開始列は期間の開始日を記憶する。終了列は期間の終了日を記憶する。モード列は空気調和機3の運転モードを記憶する。変更条件列はモード列に記憶した運転モードを変更する条件を記憶する。図6の例では、2月25日から10月10日までの期間では、空気調和機3は冷房運転を行い、10月11日から2月24日までの期間では、空気調和機3は暖房運転を行う旨の設定がされている。但し、予想最低気温が10度以下の場合は、2月25日から10月10日までの期間であっても暖房運転をし、予想最高気温が15度以上の場合は、10月11日から2月24日までの期間であっても冷房運転をすることが、変更条件として設定されている。
【0026】
図7は履歴DBの例を示す説明図である。履歴DB422は温度センサによる計測結果を記憶する。履歴DB422は日付列、時刻列、区画列、上部温度列及び下部温度列を含む。日付列は温度を計測した日付を記憶する。時刻列は温度を計測した時刻を記憶する。区画列は温度を計測した区画を記憶する。例えば区画はラック1毎に振られた順番号である。上部温度列は上部温度センサ6で計測した温度を記憶する。下部温度列は下部温度センサ7で計測した温度を記憶する。履歴DB422が記憶する計測結果は、定期的に監視センタ10へ送信してもよい。なお、履歴DB422は各送風機2の回転数、空気調和機3の運転モードと設定温度とを記憶してもよい。
【0027】
次に、空調システム100の動作について説明する。図8はキュービクル内での空気の流れの例を示す説明図である。図8Aは空気調和機3を冷房運転する場合を示す。冷房運転の場合、空気調和機3から冷気を天井(筐体の上部)に沿うように排出させる。各ラック1では送風機2が、外部(格納部外部)の空気を内部(格納部内部)に取り込むような向きで回転している。冷気は送風機2により、ラック1の上部から内部に導かれ、発熱体である電池ユニット5を冷却する。温まった空気はラック1の下部から排出され、空気調和機3で冷やされる。このような空気循環により、発熱体が適正温度となるように空調システム100は動作する。
【0028】
図8Bは空気調和機3を暖房運転する場合を示す。暖房運転の場合、空気調和機3から暖気を床(筐体の下部)に向かって下方に排出させる。各ラック1では送風機2が内部の空気を外部に排出するような向きで回転している。暖気は各ラック1の下部から内部に導かれ、電池ユニット5を加熱する。冷めた空気は送風機2により、ラック1の上部から外部に排出される。冷めた空気は空気調和機3で温められる。このような空気循環により、発熱体が適正温度となるように空調システム100は動作する。
【0029】
図9は送付機の回転数制御の例を示す説明図である。図9は上部温度又は下部温度と、送風機2の回転数との関係を定めたグラフである。横軸が温度、単位は摂氏度である。縦軸は回転数、単位はrpm(revolutions per minute又はround per minute)である。Tloは下限温度、Thiは上限温度である。Tlo及びThiは予め定めておく。Tloは第1閾値の一例であり、Thiは第2閾値の一例である。
【0030】
図9Aは空気調和機3が冷房運転している場合の例である。この場合、制御装置4は以下の動作を行う。処理部41が上部温度センサ6及び下部温度センサ7から得た上部温度をT1、下部温度をT2とする。空気調和機3が冷房運転の場合、処理部41はT1とT2の大きい方の値を選択する。選択した温度をTとする。処理部41は、TがTloを下回ったときは送風機2を停止する。処理部41は、TがTlo以上のときは送風機2をグラフに従った回転数で動作させる。このとき送風機2をラック1外部の空気を内部に取り込む流れができるような向きで回転させる。処理部41は、TがThiに達したときは、送風機2を最大の回転数で回転させる。最大の回転数とした後、所定時間以上、経過しても、TがThi以下とならないときは、制御装置4は異常事態と判定する。
【0031】
図9Bは空気調和機3が暖房運転をしている場合の例である。この場合、制御装置4は以下の動作を行う。処理部41はT1とT2の小さい方の値を選択する。選択した温度をTとする。処理部41は、TがThiに達したときは、送風機2を停止させる。処理部41はTがThiを下回り、Tlo以上のときは送風機2をグラフに従った回転数で動作させる。このとき送風機2をラック1の内部の空気を外部に排出する流れができるような向きで回転させる。処理部41は、TがTloまで下がったときは、送風機2を最大の回転数で回転させる。最大の回転数とした後、所定時間以上、経過しても、TがTlo 以上とならないときは、制御装置4は異常事態と判定する。
【0032】
(基本機能)
続いて、制御装置4が行う情報処理について、説明する。図10は基本制御処理の手順例を示すフローチャートである。基本制御処理は、運用時、制御装置4で常に実行している処理である。処理部41は動作判定を行う(ステップS1)。動作判定は空気調和機3の運転状態で判定する。空気調和機3はいわゆる自動運転モードで動作しており、キュービクル9の室温が予め設定された目標温度に近づくように、冷房運転又は暖房運転をしている。制御装置4が通信により空気調和機3から運転状態を取得可能である場合、処理部41は空気調和機3から運転状態を取得して、冷暖判定を行う。通信により空気調和機3から運転状態を取得できない場合、例えば以下の方法で、処理部41は判断を行う。空気調和機3の吸い込み口と吹き出し口とに、予め温度センサを設置しておく。吹き出し口の温度Toが、吸い込み口の温度Tiより、3度を上回って高いとき、処理部41は暖房運転と判定する。吹き出し口の温度Toが、吸い込み口の温度Tiより、3度を上回って低いとき、処理部41は冷房運転と判定する。どちらにも該当しない場合、処理部41は冷暖いずれとも判定しない。処理部41は結果が冷房または暖房か、いずれでもないかを判定する(ステップS2)。処理部41は結果が冷房でも暖房でもないと判定した場合(ステップS2でNO)、処理をステップS1へ戻す。処理部41は結果が冷房又は暖房あると判定した場合(ステップS2でYES)、処理部41は結果が冷房であるか否かを判定する(ステップS3)。処理部41は結果が冷房であると判定した場合(ステップS3でYES)、冷房時制御を行う(ステップS4)。処理部41は結果が冷房でないと判定した場合(ステップS3でNO)、暖房時制御を行う(ステップS5)。処理部41は処理をステップS1へ戻す。なお、図10に示す基本制御処理は無限ループとなっているので、割り込み等により、処理を終了するようにしてもよい。この場合、割り込みルーチンにより、送風機2を停止させてから、基本制御処理を終了させることが望ましい。
【0033】
図11は冷房時制御処理又は暖房時制御処理の手順例を示すフローチャートである。冷房時制御処理及び暖房時制御処理は類似する処理であるため、一つのフローチャートで表現している。制御装置4の処理部41は制御対象とする区画(ラック1)を選択する(ステップS11)。処理部41は選択した区画の送風機2の状態を取得する(ステップS12)。例えば、状態は回転向き、回転数である。処理部41は選択した区画の上部温度センサ6及び下部温度センサ7から、測定した温度を取得する(ステップS13)。処理部41は上部温度及び下部温度に基づいて、送風機2の回転数を決定する(ステップS14)。決定方法は上述したとおりである。冷房時制御処理においては、図9Aで示したグラフを用いて、回転数を決定する。暖房時制御処理においては、図9Bで示したグラフを用いて、回転数を決定する。なお、回転数0はファンの停止を意味する。処理部41はステップS12で取得した送風機2の回転数と、ステップS14で決定した回転数とを対比し、回転数を変更するか否かを判定する(ステップS15)。処理部41は回転数を変更しないと判定した場合(ステップS15でNO)、処理をステップS17へ進める。処理部41は回転数を変更すると判定した場合(ステップS15でYES)、送風機2へ決定した回転数で回転するよう制御信号を出力する(ステップS16)。処理部41は未処理の区画が有るか否かを判定する(ステップS17)。処理部41は未処理の区画が有ると判定した場合(ステップS17でYES)、処理をステップS11へ戻し、未処理の区画に対する処理を行う。処理部41は未処理の区画がないと判定した場合(ステップS17でNO)、処理を終了する。
【0034】
(性能評価)
空調システム100の性能評価について述べる。空調システム100においては、送風機2、空気調和機3として、種々なものが採用可能であり、発熱体も様々なものが採用可能である。そのため、個々の空調システム100の性能を評価する場合において、統一的な評価指標が必要である。以下、評価指標の一例を説明する。
【0035】
空調システム100は発熱体の周囲温度、すなわちラック1内の温度を一定に保つこと、また、ラック1毎に送風機2を設け、ファンの回転速度を個別制御することで、冷暖房効率を上げ、消費電力の抑制を実現する。その観点から評価指標の基となる評価指数は、目標温度に対する温度の標準偏差と消費電力量とに基づくものとする。評価指数の値は、例えば、以下の式(1)で計算する。
【0036】
評価指数=α×1/温度標準偏差×β×1/電力量・・・(1)
【0037】
温度標準偏差Sは以下の式(2)で計算する。電力量は送風機2、空気調和機3及び搬送ファン8の消費電力の合計、単位は例えばkwh(キロワットアワー)である。α及びβは重みである。評価をするのにあたり、温度標準偏差、電力量の何れを重視するのかによって、重み付けをすればよい。また、温度標準偏差の値と電力量の値とのオーダの差を考慮して重み付けすることが望ましい。
【0038】
【数1】
nは温度センサの数、Tiは測定温度、TOは目標温度である。
【0039】
評価指数から評価指標の算出は、例えば次のように行う。9時から19時の範囲において、1時間毎に評価指数を算出する。算出した10個の評価指数の合計を評価指標の値とする。
【0040】
本実施の形態においては、次の効果を奏する。区画毎に設けた上部温度センサ6、下部温度センサ7により、発熱体の周囲温度を測定し、測定した温度に基づいて、ラック1毎に設置された送風機2の回転数を制御する。それによって、区画ごとに発熱体の発熱量に差があっても、区画ごとの周囲温度を均質化することが可能となる。また、その結果、空気調和機の運転効率が向上し、消費電力を抑制することが可能となる。さらに、評価指数により、空調システム100の性能を数値評価することが可能となる。
【0041】
(追加機能)
上述した基本制御処理にて実現する基本機能に機能を追加した形態について説明する。 図12は制御装置の処理部に含まれる機能部の例を示す機能ブロック図である。制御装置4の起動時又は所定の時刻に、計画取得部41aは設定DB421から運転設定等を読み出す。計画取得部41aは読み出した運転設定等を冷暖判定部41bへ出力する。冷暖判定部41bは計画取得部41aから得た運転設定等と、気象情報提供サイトから得た予想最高気温及び予想最低気温とに基づき、空気調和機3を冷房運転するか、暖房運転するかを判定する。冷暖判定部41bは運転モードを空気調和機3へ指示する。冷暖判定部41bは処理を温度取得部41cへ渡す。温度取得部41cは各ラック1の上部温度センサ6及び下部温度センサ7から測定温度を取得する。上部温度センサ6が計測した温度を上部温度、下部温度センサ7が計測した温度を下部温度という。上部温度、又は、下部温度は、内部温度の一例である。温度取得部41cは取得した測定温度を、ラック1の区画と、測定時刻と、上部/下部の区別とを対応付けて、回転数制御部41d及び履歴記憶部41eへ出力する。回転数制御部41dは上部温度及び下部温度に基づいて、送風機2の回転数を決定する。回転数制御部41dは決定した回転数で動作する旨の制御信号を送風機2へ出力する。回転数制御部41dは、ラック1毎に回転数の決定、制御信号の送風機2への出力を行う。履歴記憶部41eは温度取得部41cより得たラック1毎の上部温度及び下部温度、並びに、区画、測定日及び測定時刻を対応付けて、履歴DB422に記憶する。温度取得部41c、回転数制御部41d及び履歴記憶部41eは上記の動作を周期的に、例えば10分毎に繰り返し行う。
【0042】
図13は起動処理の手順例を示すフローチャートである。起動処理は制御装置4が起動した直後に実行される処理である。起動処理は起動時に一度実行するが、季節の変わり目などで日によって気温の高低が激しく、暖房運転と冷房運転とを日毎に切り替える可能性があるときは、1日に1回、朝などに起動してもよい。制御装置4の処理部41は設定DB421から運転計画等の設定を取得する(ステップS31)。処理部41は、取得した設定、気象情報サービスから取得した予想最低気温や予想最高気温等から、空気調和機3の運転モードを、冷房運転、暖房運転のいずれにするかを判定する(ステップS32)。処理部41は判定結果を記憶するとともに(ステップS33)、空気調和機3の運転モードを設定する。処理部41は制御対象とする区画(ラック1)を選択する(ステップS34)。処理部41は選択した区画の送風機2を一旦停止させる(ステップS35)。処理部41は選択した区画の上部温度センサ6及び下部温度センサ7から、測定した温度を取得する(ステップS36)。処理部41は上部温度及び下部温度に基づいて、送風機2の回転数を決定する(ステップS37)。決定方法は上述したとおりである。なお、回転数0はファンの停止を意味する。処理部41はファンを作動させるか否かを判定する(ステップS38)。処理部41はファンを作動させないと判定した場合(ステップS38でNO)、処理をステップS40へ進める。処理部41はファンを作動させると判定した場合(ステップS38でYES)、決定した回転数でファンを作動するよう、送風機2へ制御信号を出力する(ステップS39)。制御信号に含まれる回転数には符号が有り、例えば+は順回転、-は逆回転を示す。例えば、順回転はラック1の外部の空気を内部へ吸い込む動作であり、逆回転はラック1の内部の空気を外部へ排出する動作である。回転方向と動作との対応は逆でもよいが、全ての送風機2において、同じとすることが望ましい。処理部41は未処理の区画が有るか否かを判定する(ステップS40)。処理部41は未処理の区画が有ると判定した場合(ステップS40でYES)、処理をステップS34へ戻し、未処理の区画に対する処理を行う。処理部41は未処理の区画がないと判定した場合(ステップS40でNO)、区画、温度の測定日時、並びに、測定した上部温度及び下部温度を履歴DB422に記憶し(ステップS41)、処理を終了する。
【0043】
図14はポーリング処理の手順例を示すフローチャートである。ポーリング処理は各ラック1内の温度が目標温度範囲内に有るか否かを定期的に測定し、必要に応じて送風機2の動作回転数を変更する処理である。図13で説明した起動処理とほぼ同様であるので、起動処理と同じ内容については簡単に説明する。処理部41は冷暖判定を行う(ステップS51)。ポーリング処理においても冷暖判定を行うのは、キュービクル9の設置環境により、数時間単位で冷房運転と暖房運転とが入れ替わる可能性があるからである。例えば、冬場であっても昼間は直射日光がよく当たるため冷房運転をするが、夜間は暖房運転するような場合も想定されるからである。処理部41は制御対象とする区画を選択する(ステップS52)。処理部41は選択した区画の送風機2への制御内容を取得する(ステップS53)。制御内容は、送風機2へ出力した制御信号により指定した回転向き及び回転数等である。制御内容は履歴DB422又は記憶部42に記憶しておく。また、処理部41は制御内容を送風機2へ問い合わせて回答を得てもよい。処理部41は選択した区画の上部温度センサ6及び下部温度センサ7から、測定した温度を取得する(ステップS54)。処理部41は上部温度及び下部温度に基づいて、送風機2の回転数を決定する(ステップS55)。処理部41は回転数を変更するか否かを判定する(ステップS56)。ステップS53で得た回転数と、ステップS54で得た回転数とを比較して、処理部41は判定する。処理部41は回転数を変更しないと判定した場合(ステップS56でNO)、処理をステップS58へ進める。処理部41は回転数を変更すると判定した場合(ステップS56でYES)、送風機2へ変更後の回転数を含む制御信号を出力する(ステップS57)。処理部41は変更後の回転数を記憶部に記憶してもよい。処理部41は未処理の区画が有るか否かを判定する(ステップS58)。処理部41は未処理の区画が有ると判定した場合(ステップS58でYES)、処理をステップS52へ戻し、未処理の区画に対する処理を行う。処理部41は未処理の区画がないと判定した場合(ステップS58でNO)、区画、温度の測定日時、並びに、測定した上部温度及び下部温度を履歴DB422に記憶し(ステップS59)、処理を終了する。処理部41は履歴DB422に変更後の回転数を記憶してもよい。処理部41はポーリング処理を定期的に繰り返し実行する。
【0044】
上述の説明において、目標温度範囲(上限温度Thi 、及び、下限温度Tlo)は、区画毎に共通であることを前提としたが、それに限らない。区画毎に目標温度範囲を異ならせてもよい。但し、複数の区間で、目標温度範囲の重なりがない場合や、目標温度範囲に重なりがあったとしても、上限温度Thi 、又は、下限温度Tloに開きが大きい場合、送風機2の回転数制御だけでは、各区画の目標温度範囲を満たす制御は困難となるので、十分な考慮が必要である。
【0045】
発熱体の例として、蓄電池を上げたが、それに限らない。安定した動作のためには周囲温度の管理が必要なサーバコンピュータ、ファイアウォール機器、ネットワーク機器等を発熱体として採用してもよい。また、発熱体ではなく、周囲温度を一定範囲に保ちながら保管が望ましい食品や飲料、例えば、生鮮食品やチーズ等の発酵食品、ワインや日本酒等の酒類の保管場所として、ラック1を利用してもよい。
【0046】
履歴DB422の内容を定期的に収集し、ラック1の温度、発熱体の周囲温度が目標温度範囲内に保てていたことを示す報告書を作成してもよい。
【0047】
ラック1を納める筐体として、キュービクル9を採用した。キュービクル9を採用する利点は、上述した点以外に、サイズの自由度が高い(パーツ単位でサイズが調整可能)、小型から中型の機器の収容に適している、小さいパーツごとに運搬可能なため、運搬の負担が少ない等がある。ラック1をキュービクル9等の筐体に納めるのではなく、プレハブ建屋やコンテナ等に納めてもよい。また、ラック1を納める筐体等は壁となる部分に断熱材を入れて、外部温度によって内部の温度を大きく変動しないようにすることが望ましい。
【0048】
次に、送風機2について補足する。送風機2として採用するいわゆる冷却ファンとしては、ACモータを用いたACファンと、DCモータを用いたDCファンとがある。以下に説明するように、本空調システム100においては、DCファンが望ましい。2つのファンについて、性能比較を行ったので、説明する。なお、発熱体は電池ユニットではなく、電気ヒータを用いた。評価を行う時間帯は9時から19時とし、正午から午後3時の3時間、電気ヒータをオンとして、発熱負荷を与えた。評価指数を計算するあたり、電力量については、送風機2のみの消費電力量を用いた。
【0049】
図15はACファン及びDCファンの性能を比較するグラフ図である。図15は時間帯毎の温度標準偏差と、送風機2としてACファンを採用した場合と、DCファンを採用した場合との消費電力量を示している。図15AはACファンの場合のグラフ図であり、図15BはDCファンの場合のグラフ図である。図15A図15Bにおいて、横軸は時間帯である。縦軸は温度標準偏差及び消費電力量である。温度標準偏差の単位は摂氏度、消費電力量の単位はキロワットアワーである。図15A図15Bとを比較すると、温度標準偏差は、DCファンの場合の方が少なく、かつ電力量も少ないことがわかる。評価指標は、ACファンの場合が33,426であるの対して、DCファンの場合は87,644となった。DCファンの方が評価指標の値が大きく、性能が高いことを示している。
【0050】
(異常通報)
異常通報機能について説明する。空調システム100において、送風機2及び空気調和機3の性能が十分でなく、発熱体の周囲温度が所定時間以上、目標温度範囲を外れた場合、人が駆けつけて対応する必要がある。異常通報は、発熱体の周囲温度が所定時間以上、目標温度範囲を外れた場合に通報を行う機能である。図16は通報処理の手順例を示すフローチャートである。処理部41は処理対象とする区画を選択する(ステップS71)。処理部41は選択した区画の直近の測定温度を、履歴DB422から取得する(ステップS72)。処理部41は温度異常であるか否かを判定する(ステップS73)。処理部41は取得した測定温度が目標温度範囲内であれば、温度正常と判定する。処理部41は取得した測定温度が目標温度範囲外であれば、温度異常と判定する。処理部41は温度異常であると判定した場合(ステップS73でYES)、カウンタの値を加算する(ステップS74)。加算値は例えば1である。カウンタの記憶領域は記憶部42等に設ける。なお、カウンタは区画ごとに設ける。処理部41はカウンタ値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS75)。処理部41はカウンタ値が閾値を超えていると判定した場合(ステップS75でYES)、異常信号を監視センタ10へ送信する(ステップS76)。処理部41は処理をステップS77へ移す。処理部41はカウンタ値が閾値を超えていないと判定した場合(ステップS75でNO)、処理をステップS77へ移す。閾値は、異常判定すべき継続時間と通報処理を実行する間隔とに基づいて定める。処理部41は温度異常でないと判定した場合(ステップS73でNO)、カウンタをクリアする(ステップS78)。処理部41は、未処理の区画が有るか否かを判定する(ステップS77)。処理部41は未処理の区画が有ると判定した場合(ステップS77でYES)、処理をステップS71へ戻し、未処理の区画に対する処理を行う。処理部41は未処理の区画がないと判定した場合(ステップS77でNO)、処理を終了する。処理部41は通報処理を定期的に繰り返し実行する。なお、通報処理をポーリング処理に組み込んでもよい。
【0051】
異常通報機能により、ラック1に収められた発熱体の周囲温度が、所定時間以上、目標温度範囲外となった場合、監視センタ10は制御装置4から異常信号を受信する。このとき、対処員をキュービクル9に向かわせて、対応を行えば、温度異常に起因する不具合や事故の発生を抑制することが可能となる。
【0052】
上述において、評価指標は、9時から19時の範囲において、1時間毎に算出した評価指数を足し合わせた値としたがそれに限らない。9時から翌日9時までの範囲としてよい。評価指数を算出する間隔も1時間でなく、1時間以下であっても、1時間以上であってもよい。また、評価指標を運用時の履歴データの項目として、履歴DB422に記憶してもよい。
【0053】
(製造方法)
空調システム100の製造方法について、述べる。図17は製造手順の例を示すフローチャートである。まず、適切な容積のキュービクル9(筐体)を組み立てる(ステップS91)。キュービクル9を区画する仕切板(仕切部)を設置する(ステップS92)。区画の背面板としてキュービクル9の壁を利用する場合は、少なくとも区画の左右を仕切り、床から天井近傍まで上下方向に沿った仕切板を設置する。上述したようにラック1を用いて区画を構成する場合、キュービクル9内でラック1を組み立て設置するか、組み上がったラック1をキュービクル9内へ設置することで、ラック1に含む仕切板が設置される。キュービクル9内に空気調和機3を設置する(ステップS93)。空気調和機3が排出する冷気又は暖気が、キュービクル9内に循環しやすいように、空気調和機3を設置することが望ましい。設置する空気調和機3の台数に制限はないが、消費電力を考慮すると1台が望ましい。キュービクル9内に制御装置4を設置する(ステップS94)。各区画に送風機2並びに上部温度センサ6及び下部温度センサ7を設置する(ステップS95)。送風機2は区画の天井部分に設置する。ラック1を利用する場合、送風機2並びに上部温度センサ6及び下部温度センサ7は、ラック1を組み立てる際に設置してもよい。区画内に発熱体を設置する(ステップS96)。正面板(正面右板15、正面左板16)を取り付ける(ステップS97)。ラック1を利用する場合、ラック1を組み立てる際に発熱体を設置し、正面板を取り付けてもよい。機器間の通信ケーブルの接続等の結線を行い、動作確認を行う(ステップS98)。不具合があれば対処し、動作に問題がなければ終了する。上述したように、正面右板15及び正面左板16に替えて、断熱性がある間仕切りカーテンやスリットカーテンを採用した場合、間仕切りカーテンやスリットカーテンを取り付けた後に、発熱体を設置してもよい。
【0054】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
また、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0055】
100 :空調システム
1 :ラック(格納部)
11 :天板
12 :背板
13 :左側板
14 :右側板
15 :正面右板
16 :正面左板
111 :孔部
2 :送風機
3 :空気調和機
4 :制御装置
41 :処理部
41a :計画取得部
41b :冷暖判定部
41c :温度取得部
41d :回転数制御部
41e :履歴記憶部
42 :記憶部
421 :設定DB
422 :履歴DB
43 :入出力部
44 :通信部
4P :プログラム
5 :電池ユニット
51 :蓄電池モジュール
6 :上部温度センサ
7 :下部温度センサ
8 :搬送ファン
9 :キュービクル
10 :監視センタ
N :通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17