(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131591
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置および窒化物半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240920BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/80 F
H01L27/04 H
H01L27/04 P
H01L27/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041956
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】舘 毅
【テーマコード(参考)】
5F038
5F102
【Fターム(参考)】
5F038AC15
5F038AR06
5F038BH15
5F038CA02
5F038EZ02
5F038EZ20
5F102FA06
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5F102GT01
5F102GT02
5F102GT03
5F102GT04
5F102GT06
5F102GV03
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
(57)【要約】
【課題】必要に応じて電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つことができる窒化物半導体装置および窒化物半導体モジュールを提供すること。
【解決手段】窒化物半導体装置10Aは、窒化物半導体によって形成されたスイッチング素子と、スイッチング素子のソース電極に電気的に接続されたソースパッド41と、スイッチング素子のドレイン電極に電気的に接続されたドレインパッド42と、スイッチング素子のゲート電極に電気的に接続されたゲートパッド43と、スイッチング素子のソース電極に電気的に接続された容量素子60と、容量素子60に電気的に接続された第1パッド47と、第1パッド47に電気的に接続された抵抗素子70と、抵抗素子70に電気的に接続された第2パッド48と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体によって形成され、ソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極を含むスイッチング素子と、
前記ソース電極に電気的に接続されたソースパッドと、
前記ドレイン電極に電気的に接続されたドレインパッドと、
前記ゲート電極に電気的に接続されたゲートパッドと、
前記ソース電極に電気的に接続された容量素子と、
前記容量素子に電気的に接続された第1パッドと、
前記第1パッドに電気的に接続された抵抗素子と、
前記抵抗素子に電気的に接続された第2パッドと、
を備える窒化物半導体装置。
【請求項2】
平面視で前記ソースパッドと少なくとも部分的に重なり、前記第1パッドに電気的に接続された電極層と、
前記ソースパッドと前記電極層との間に設けられた誘電体層と、を備え、
前記ソースパッドは、平面視において前記電極層と重なる部分を前記容量素子の2つの対向電極のうちの一方に対応する第1電極として含み、
前記電極層は、平面視において前記ソースパッドと重なる部分を前記容量素子の2つの対応電極のうちの他方に対応する第2電極として含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記電極層は、平面視において前記ソースパッドと前記第1パッドとの双方に跨って設けられており、
前記第1パッドと前記電極層との間に設けられた絶縁層を備え、
前記第1パッドは、前記絶縁層を貫通する第1貫通導体を介して前記電極層に接続されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記誘電体層は、前記絶縁層と同一材料で形成されるとともに、前記絶縁層と同一層に位置している、請求項3に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記電極層の下方に位置し、平面視において前記ソースパッドと前記第1パッドとの双方に跨がって設けられた導電層と、
前記第1パッドと前記導電層との間に設けられた第1絶縁層と、
前記電極層と前記導電層との間に設けられた第2絶縁層と、を備え、
前記第1パッドは、前記第1絶縁層を貫通する第1貫通導体を介して前記導電層に接続されており、
前記電極層は、前記第2絶縁層を貫通する第2貫通導体を介して前記導電層に接続されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記誘電体層は、前記第1絶縁層と同一材料で形成されており、
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層と異なる材料で形成されている、請求項5に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記第2絶縁層は、前記スイッチング素子の前記ゲート電極を覆う層であり、
前記第1絶縁層は、前記スイッチング素子の前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆う層である、請求項5に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記抵抗素子は、前記第1パッドに電気的に接続された第1抵抗素子部分と、前記第2パッドに電気的に接続された第2抵抗素子部分とを含み、
前記第1抵抗素子部分と前記第2抵抗素子部分との間に設けられ、前記第1抵抗素子部分と前記第2抵抗素子部分とに電気的に接続された第3パッドをさらに備える請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記スイッチング素子はアクティブ領域に設けられており、
前記第1パッド、前記第2パッド、前記容量素子、および前記抵抗素子は、平面視において前記アクティブ領域を囲む周辺領域に設けられている、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記第1パッドは、平面視において前記ソースパッドの隣りに位置している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記第2パッドは、平面視において前記ドレインパッドの隣りに位置している、請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記スイッチング素子は、
第1窒化物半導体によって構成された電子走行層と、
前記電子走行層上に設けられ、前記第1窒化物半導体よりも大きなバンドギャップを有する第2窒化物半導体によって構成された電子供給層と、
前記電子供給層上の一部に設けられ、アクセプタ型不純物を含む第3窒化物半導体によって構成されたゲート層と、
前記ゲート層上に設けられた前記ゲート電極と、
前記電子供給層に接している前記ソース電極および前記ドレイン電極と、
を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記スイッチング素子はアクティブ領域に設けられており、
前記第1パッド、前記第2パッド、前記容量素子、および前記抵抗素子は、平面視において前記アクティブ領域を囲む周辺領域に設けられており、
前記電極層は、前記周辺領域に窒化物半導体によって形成された外周部上に設けられている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記電極層は、前記ゲート電極と同一材料で形成されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記電極層は、前記ソース電極および前記ドレイン電極と同一材料で形成されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記電極層は、Cu、Al、AlSiCu、AlCu、W、Ti、およびTiNのうちの少なくとも1つによって形成されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置と、
ソースリード、ドレインリード、およびゲートリードと、
前記ソースリードを前記ソースパッドに接続するソースワイヤと、
前記ドレインリードを前記ドレインパッドに接続するドレインワイヤと、
前記ゲートリードを前記ゲートパッドに接続するゲートワイヤと、
前記第2パッドを前記ドレインリードに接続する第1ワイヤと、
を備える窒化物半導体モジュール。
【請求項18】
請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置と、
ソースリード、ドレインリード、およびゲートリードと、
前記ソースリードを前記ソースパッドに接続するソースワイヤと、
前記ドレインリードを前記ドレインパッドに接続するドレインワイヤと、
前記ゲートリードを前記ゲートパッドに接続するゲートワイヤと、
前記第1パッドを前記ドレインリードに接続する第2ワイヤと、
を備える窒化物半導体モジュール。
【請求項19】
請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置と、
前記窒化物半導体装置がフリップチップ実装される実装基板と、を備え、
前記実装基板は、
前記ソースパッドに接続されるソース接続部と、
前記ドレインパッドに接続されるドレイン接続部と、
前記ゲートパッドに接続されるゲート接続部と、
前記ドレイン接続部から延在して前記第2パッドを前記ドレインパッドに接続する第1接続延在部と、
を含む、窒化物半導体モジュール。
【請求項20】
請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置と、
前記窒化物半導体装置がフリップチップ実装される実装基板と、を備え、
前記実装基板は、
前記ソースパッドに接続されるソース接続部と、
前記ドレインパッドに接続されるドレイン接続部と、
前記ゲートパッドに接続されるゲート接続部と、
前記ドレイン接続部から延在して前記第1パッドを前記ドレインパッドに接続する第2接続延在部と、
を含む、窒化物半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置および窒化物半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化ガリウム(GaN)等の窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)の製品化が進んでいる。特許文献1は、窒化物半導体を用いたHEMT構造の一例を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速スイッチング素子である窒化物半導体HEMTは、低スイッチング損失による高い変換効率をもたらす一方、高速スイッチングに伴いスイッチング遷移時間が短くなるほどスイッチング時の電圧サージおよび電圧リンギング(回路共振)が生じ易くなる。したがって、窒化物半導体HEMTが搭載されるシステム側の要求に応じて電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つことができるチップ構造の提案が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である窒化物半導体装置は、窒化物半導体によって形成され、ソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極を含むスイッチング素子と、前記ソース電極に電気的に接続されたソースパッドと、前記ドレイン電極に電気的に接続されたドレインパッドと、前記ゲート電極に電気的に接続されたゲートパッドと、前記ソース電極に電気的に接続された容量素子と、前記容量素子に電気的に接続された第1パッドと、前記第1パッドに電気的に接続された抵抗素子と、前記抵抗素子に電気的に接続された第2パッドと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の窒化物半導体装置および窒化物半導体モジュールによれば、必要に応じて電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる例示的な窒化物半導体装置の概略平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のF2-F2線に沿った概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のF3領域の窒化物半導体装置の部分の拡大図である。
【
図4】
図4は、
図3のF4領域の窒化物半導体装置の部分の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図4のF5-F5線に沿った概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のF6-F6線に沿った概略断面図である。
【
図7】
図7は、
図1のF7-F7線に沿った概略平面図である。
【
図8】
図8は、抵抗素子の第1構造例の概略断面図である。
【
図9】
図9は、抵抗素子の第2構造例の概略断面図である。
【
図10】
図10は、第1実装例にしたがってワイヤ実装された
図1の窒化物半導体装置を備える窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
【
図11】
図11は、
図10の窒化物半導体モジュールによって提供されるRCスナバ回路付きスイッチング素子の等価回路図である。
【
図12】
図12は、第2実装例にしたがってワイヤ実装された
図1の窒化物半導体装置を備える窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
【
図13】
図13は、
図12の窒化物半導体モジュールによって提供されるCスナバ回路付きスイッチング素子の等価回路図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態にかかる例示的な窒化物半導体装置の一部の概略断面図である。
【
図15】
図15は、第3実装例にしたがってフリップチップ実装された
図1の窒化物半導体装置を備える窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
【
図16】
図16は、第4実装例にしたがってフリップチップ実装された
図1の窒化物半導体装置を備える窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
【
図17】
図17は、変形例にかかる窒化物半導体装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本開示の窒化物半導体装置および窒化物半導体モジュールの種々の実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図ではハッチング線が省略されている場合がある。なお、添付の図面は本開示の実施形態を例示するものに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0009】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図していない。
【0010】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図13を参照して、第1実施形態にかかる窒化物半導体装置10Aおよび窒化物半導体モジュール100について説明する。
【0011】
[1.窒化物半導体装置の概略構造]
図1は、窒化物半導体装置10Aの概略平面構造を示している。
なお、本開示において使用される「平面視」という用語は、
図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸方向に窒化物半導体装置10Aおよびその関連する構成を視ることをいう。また、本開示において、Y軸方向は「第1方向」に対応し、X軸方向は、平面視において第1方向と直交する「第2方向」に対応する。以下では、説明の便宜上、
図1に示される窒化物半導体装置10Aにおいて、+Z方向を上、-Z方向を下、+X方向を右、-X方向を左と定義する。
【0012】
図1に示されるように、窒化物半導体装置10Aは、半導体基板11と、半導体基板11上に形成されたスイッチング素子としてのトランジスタT(
図1では図示略)と、トランジスタTを覆う絶縁層12とを含む。
【0013】
半導体基板11としては、例えばシリコン(Si)基板を用いることができる。あるいは、Si基板に代えて、シリコンカーバイド(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、またはサファイア基板を用いることもできる。半導体基板11の厚さは、例えば200μm以上1500μm以下とすることができる。なお、以下の説明において、明示的に別段の記載がない限り、「厚さ」とは、Z軸方向に沿った寸法を指す。
【0014】
絶縁層12は、例えば窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al2O3)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうちいずれか1つを含む材料によって構成され得る。一例では、絶縁層12は、SiNを含む材料によって形成されている。
【0015】
窒化物半導体装置10Aは、アクティブ領域A1と、平面視においてアクティブ領域A1を囲む周辺領域A2とを含む。
図1の例では、アクティブ領域A1は、平面視で半導体基板11の中央部分に位置し、周辺領域A2は、半導体基板11の外周側に枠状に位置している。アクティブ領域A1は、トランジスタTが形成されている領域であり、周辺領域A2は、トランジスタTが形成されていない領域である。
【0016】
[2.トランジスタ構造]
図2は、
図1のF2-F2線に沿った窒化物半導体装置10Aの部分の概略断面図であり、トランジスタTの概略断面構造の一例を示している。なお、
図2では、トランジスタTの上方を覆う絶縁層12の部分の図示を省略している。
【0017】
図2に示されるように、トランジスタTは、窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)である。トランジスタTは、半導体基板11上に形成されたバッファ層14と、バッファ層14上に形成された電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18とを含む。
【0018】
バッファ層14は、半導体基板11と電子走行層16との間の熱膨張係数の不整合によるウェハ反りやクラックの発生を抑制することができる任意の材料によって構成され得る。バッファ層14は、窒化物半導体によって構成された1つまたは複数の窒化物半導体層を含む。バッファ層14は、例えば、窒化物アルミニウム(AlN)層、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、および異なるアルミニウム(Al)組成を有するグレーテッドAlGaN層のうち少なくとも1つを含んでもよい。例えば、バッファ層14は、AlNの単膜、AlGaNの単膜、AlGaN/GaN超格子構造を有する膜、AlN/AlGaN超格子構造を有する膜、またはAlN/GaN超格子構造を有する膜等によって構成されていてもよい。
【0019】
一例において、バッファ層14は、半導体基板11上に形成されたAlN層である第1バッファ層と、AlN層(第1バッファ層)上に形成されたAlGaN層である第2バッファ層を含む。第1バッファ層は例えば200nmの厚さを有するAlN層であってよく、第2バッファ層は例えば300nmの厚さを有するグレーテッドAlGaN層であってよい。なお、バッファ層14におけるリーク電流を抑制するために、バッファ層14の一部に不純物を導入することによってバッファ層14の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、例えば炭素(C)または鉄(Fe)である。不純物濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0020】
電子走行層16は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層16は、例えばGaN層であってよい。電子走行層16の厚さは、例えば0.5μm以上2μm以下とすることができる。なお、電子走行層16におけるリーク電流を抑制するために、電子走行層16の一部に不純物を導入することによって電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。この場合、不純物は、例えばCである。不純物の濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0021】
電子走行層16は、不純物濃度の異なる複数のGaN層、一例ではCドープGaN層とノンドープGaN層を含むことができる。この場合、CドープGaN層は、バッファ層14上に形成されている。CドープGaN層の厚さは、例えば0.3μm以上2μm以下とすることができる。CドープGaN層中のC濃度は、例えば5×1017cm-3以上9×1019cm-3以下とすることができる。ノンドープGaN層は、CドープGaN層上に形成されている。ノンドープGaN層の厚さは、例えば0.05μm以上0.4μm以下とすることができる。ノンドープGaN層は、電子供給層18と接している。一例では、電子走行層16は、厚さ0.4μmのCドープGaN層と、厚さ0.4μmのノンドープGaN層とを含む。CドープGaN層中のC濃度は約2×1019cm-3である。
【0022】
電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。電子供給層18は、例えばAlGaN層であってよい。窒化物半導体では、Al組成が高いほどバンドギャップが大きくなるため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する。一例では、電子供給層18はAlxGa1-xNによって構成されており、ここで、xは、例えば0<x<0.4であり、より好ましくは0.1<x<0.3である。電子供給層18の厚さは、例えば5nm以上20nm以下とすることができる。
【0023】
電子走行層16と電子供給層18とは、バルク領域において異なる格子定数を有する。したがって、電子走行層16と電子供給層18とは格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層16および電子供給層18の自発分極と、電子走行層16のヘテロ接合部が受ける圧縮応力に起因するピエゾ分極とによって、電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の距離)において電子走行層16内には二次元電子ガス(2DEG)20が広がっている。
【0024】
トランジスタTは、電子供給層18上に形成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成されたゲート電極24と、電子供給層18、ゲート層22、およびゲート電極24を覆う絶縁層26とを含む。ゲート電極24は、ゲート層22上の一部に形成されている。絶縁層26は、X軸方向におけるゲート層22の両側にゲート層22から離間して設けられたソース開口部26Aおよびドレイン開口部26Bを含む。すなわち、ソース開口部26Aとドレイン開口部26Bとは、X軸方向に互いに離間している。
【0025】
ゲート層22は、ソース開口部26Aとドレイン開口部26Bとの間に位置している。ゲート層22は、X軸方向においてドレイン開口部26Bよりもソース開口部26A寄りに配置されている。すなわち、X軸方向におけるゲート層22とドレイン開口部26Bとの間の距離は、X軸方向におけるゲート層22とソース開口部26Aとの間の距離よりも長い。
【0026】
ゲート層22は、窒化物半導体によって構成されている。例えば、ゲート層22は、AlGaN層である電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有する任意の材料によって構成され得る。また、第1実施形態では、ゲート層22は、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されている。一例では、ゲート層22は、アクセプタ型不純物がドープされたGaN層(p型GaN層)である。アクセプタ型不純物は、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、およびCのうち少なくとも1つを含むことができる。ゲート層22中のアクセプタ型不純物の最大濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0027】
なお、本開示において、電子走行層16を構成する窒化物半導体は、第1窒化物半導体に対応し、電子供給層18を構成する窒化物半導体は、第2窒化物半導体に対応する。また、ゲート層22を構成する窒化物半導体は、第3窒化物半導体に対応する。
【0028】
ゲート層22にアクセプタ型不純物が含まれることにより、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられる。その結果、ゲート層22の直下の領域において電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルは、フェルミ準位とほぼ同じか、またはそれよりも大きくなる。したがって、ゲート電極24に電圧を印加していないゼロバイアス時において、ゲート層22の直下の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されない。一方、ゲート層22の直下の領域以外の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されている。
【0029】
このように、アクセプタ型不純物がドープされたゲート層22の存在によってゲート層22の直下の領域で2DEG20によるチャネルが消失する。これにより、トランジスタTのノーマリーオフ動作が実現される。ゲート電極24に適切なオン電圧が印加されると、ゲート電極24の直下の領域における電子走行層16に2DEG20によるチャネルが形成されるため、ソース-ドレイン間が導通する。
【0030】
ゲート層22の形状は特に限定されない。
図2の例では、ゲート層22は、ステップ(段差)構造を有している。例えば、ゲート層22は、ゲート層本体部22Aと、ゲート層本体部22Aの第1側面(
図2では左側面)からソース開口部26Aに向かって延在する第1延在部22Bと、ゲート層本体部22Aの第2側面(
図2では右側面)からドレイン開口部26Bに向かって延在する第2延在部22Cとを含む。ゲート電極24はゲート層本体部22A上に位置している。ゲート層本体部22Aは、例えばXZ平面において矩形状、台形状、またはリッジ状等の任意の断面形状を有し得る。ゲート層本体部22Aの厚さ、すなわち、ゲート層本体部22Aの上面からゲート層本体部22Aの下面(電子供給層18に接するゲート層22の下面)までの距離は、80nm以上150nm以下とすることができる。
【0031】
第1延在部22Bは、ゲート層本体部22Aからソース開口部26Aに向けて延在しつつ、ソース開口部26Aから離間している。第2延在部22Cは、ゲート層本体部22Aからドレイン開口部26Bに向けて延在しつつ、ドレイン開口部26Bから離間している。
図2の例では、第2延在部22Cは、X軸方向に第1延在部22Bよりも長く形成されている。ただし、第1延在部22Bと第2延在部22Cとは同じ長さであってもよい。第1延在部22BのX軸方向の長さは、例えば0.2μm以上0.3μm以下とすることができる。第2延在部22CのX軸方向の長さは、例えば0.2μm以上1.5μm以下とすることができる。
【0032】
ゲート電極24は、1つまたは複数の金属層によって構成されている。ゲート電極24は、一例では窒化チタン(TiN)層である。あるいは、ゲート電極24は、Tiを含む材料によって形成された第1金属層と、第1金属層上に積層され、TiNを含む材料によって形成された第2金属層とを含んでもよい。ゲート電極24が例えばTiNで構成される場合、ゲート電極24はゲート層22とショットキー接合を形成する。ゲート電極24は、平面視でゲート層本体部22Aよりも小さい領域に形成されている。ただし、ゲート電極24は、平面視でゲート層本体部22Aと同じ領域に形成されてもよい。ゲート電極24の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下とすることができる。
【0033】
絶縁層26は、電子供給層18上に形成されている。絶縁層26は、トランジスタTを覆う絶縁層12の一部である。絶縁層26は、パッシベーション層とも呼ばれる。絶縁層26は、ゲート層22およびゲート電極24を覆っている。絶縁層26の厚さは、例えば80nm以上150nm以下とすることができる。
【0034】
トランジスタTは、ソース開口部26Aを介して電子供給層18に接するソース電極28と、ドレイン開口部26Bを介して電子供給層18に接するドレイン電極30とをさらに含む。
【0035】
ソース電極28およびドレイン電極30は、1つまたは複数の金属層(例えば、Ti、Al、AlCu、TiN等)によって構成されている。ソース電極28は、ソース開口部26Aを介して電子供給層18と接するソースコンタクト部28Aを含み、ソース開口部26Aを介してソースコンタクト部28Aの直下の2DEG20とオーミック接触している。ドレイン電極30は、ドレイン開口部26Bを介して電子供給層18と接するドレインコンタクト部30Aを含み、ドレイン開口部26Bを介してドレインコンタクト部30Aの直下の2DEG20とオーミック接触している。
【0036】
トランジスタTは、絶縁層26上に形成されたフィールドプレート電極31をさらに含み得る。フィールドプレート電極31は、ゲート層22とドレイン電極30との間の領域に延在しつつ、ドレイン電極30からは離間している。したがって、フィールドプレート電極31は、平面視でドレイン電極30(ドレイン開口部26B)とゲート層22との間に位置する端部31Aを含む。
【0037】
フィールドプレート電極31は、ソース電極28に電気的に接続されている。
図2の例では、フィールドプレート電極31は、ソース電極28と連続して一体的に形成されている。このような一体化電極の場合、ソース開口部26Aに埋設された電極部分、または、それに加えてソース開口部26A近傍に位置する電極部分がソース電極28に対応し得る。フィールドプレート電極31は、一体化電極のうちソース電極28以外の残りの部分に対応し得る。フィールドプレート電極31は、ゲート電極24にゲート電圧が印加されていないゼロバイアス時にゲート層22の端部近傍およびゲート電極24の端部近傍の電界集中を緩和する役割を果たす。
【0038】
図3は、
図1のF3領域における窒化物半導体装置10Aの部分の拡大図であり、
図4は、
図3のF4領域における窒化物半導体装置10Aの部分の拡大図である。なお、
図4では、ソース開口部26Aに埋設されたソース電極28の部分、ドレイン開口部26Bに埋設されたドレイン電極30の部分、およびゲート電極24が透過して視えるように示されている。
【0039】
図4に示されるように、ソース電極28、ドレイン電極30、およびゲート電極24はY軸方向に長尺状に延在している。なお、図示は省略しているが、ゲート層22およびフィールドプレート電極31もY軸方向に長尺状に延在している。すなわち、
図2に示すトランジスタT(HEMT)はY軸方向に連続して形成されている。なお、アクティブ領域A1には複数のトランジスタT(単位トランジスタ)がアレイ状に配置されており、そのうちの1つが
図2に示されている。例えば、アクティブ領域A1にはX軸方向およびY軸方向の各々に沿って複数のトランジスタT1が並んで配置されている。なお、
図4には示されていないが、ゲート電極24の端部はアクティブ領域A1から突出して周辺領域A2に位置している。
【0040】
[3.各種電極パッドおよび各種配線の構造、ならびに周辺構造]
図1に示されるように、窒化物半導体装置10Aは、絶縁層12の上面12Aにそれぞれ形成されたソースパッド41、ドレインパッド42、およびゲートパッド43を含む。ソースパッド41、ドレインパッド42、およびゲートパッド43は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、AlCu合金、タングステン(W)、チタン(Ti)、および窒化チタン(TiN)のうちの少なくとも1つを含む任意の導体材料によって構成することができる。
【0041】
ソースパッド41は、ソース電極28に電気的に接続される電極パッドである。
図1の例では、ソースパッド41は、アクティブ領域A1の右側(+X方向側)位置にアクティブ領域A1と並んで周辺領域A2内に配置されている。ソースパッド41は、平面視でY軸方向に延在する矩形状である。ソースパッド41は、Y軸方向に沿ってアクティブ領域A1の寸法とほぼ同じ寸法で形成され得る。
【0042】
ドレインパッド42は、ドレイン電極30に電気的に接続される電極パッドである。
図1の例では、ドレインパッド42は、アクティブ領域A1の左側(-X方向側)位置にアクティブ領域A1と並んで周辺領域A2内に配置されている。ドレインパッド42は、平面視でY軸方向に延在する矩形状である。ドレインパッド42は、Y軸方向に沿ってアクティブ領域A1の寸法とほぼ同じ寸法で形成され得る。
【0043】
ゲートパッド43は、ゲート電極24に電気的に接続される電極パッドである。
図1の例では、ゲートパッド43は、ソースパッド41の上側(+Y方向側)位置、すなわち、アクティブ領域A1の上側位置にソースパッド41と並んで周辺領域A2内に配置されている。
【0044】
図1および
図3に示されるように、窒化物半導体装置10Aは、ソースパッド41から延出する複数のソース配線44、ドレインパッド42から延出する複数のドレイン配線45、およびゲートパッド43から延出するゲート配線46を含む。ソース配線44、ドレイン配線45、およびゲート配線46は、絶縁層12の上面12Aに形成されている。なお、
図1においては、ソース配線44およびドレイン配線45の図示を省略している。
【0045】
ソース配線44は、ソースパッド41からドレインパッド42に向けてX軸方向に櫛状に延在している。ソース配線44は周辺領域A2およびアクティブ領域A1の双方に跨って設けられるとともに、ソース配線44の先端はアクティブ領域A1に位置している。ソース配線44は、Y軸方向に等間隔に離間して配置されている。なお、ソース配線44はソースパッド41と一体に形成されている。
【0046】
ドレイン配線45は、ドレインパッド42からソースパッド41に向けてX軸方向に櫛状に延在している。ドレイン配線45は、周辺領域A2およびアクティブ領域A1の双方に跨って設けられるとともに、ドレイン配線45の先端は、アクティブ領域A1に位置している。ドレイン配線45は、Y軸方向に等間隔に離間して配置されている。また、ソース配線44とドレイン配線45とは、Y軸方向に1つずつ交互に、互いに離間しつつ配置されている。なお、ドレイン配線45は、ドレインパッド42と一体に形成されている。
【0047】
図1に示されるように、ゲート配線46は、平面視においてゲートパッド43から環状に延在している。互いに接続されたゲート配線46およびゲートパッド43は全体として、アクティブ領域A1、ソースパッド41、およびドレインパッド42を囲む枠状に配置されている。なお、ゲート配線46は、ゲートパッド43と一体に形成されている。
【0048】
図5は、
図4のF5-F5線に沿った窒化物半導体装置10Aの部分の概略断面図であり、
図6は、
図4のF6-F6線に沿った窒化物半導体装置10Aの部分の概略断面図である。なお、
図5および
図6では、図示を分かり易くするために、トランジスタTの断面構造が
図2の断面構造と比較して簡略化して示されている。例えば、ゲート層22はゲート電極24の直下の部分のみが簡略化して示されている。また、ソース電極28とフィールドプレート電極31との一体化電極の形状は簡略化されている。また、半導体基板11およびバッファ層14の図示は省略されている。
【0049】
図5および
図6に示されるように、周辺領域A2には電子供給層18が形成されていない。周辺領域A2に位置する電子走行層16は、電子走行層16の上部が除去された状態で第1窒化物半導体(例えばGaN)によって形成された外周部として設けられており、この外周部上に接して絶縁層12が形成されている。外周部として設けられた電子走行層16上には電子供給層18が存在しないため、外周部に2DEG20は発生しない。
【0050】
図4および
図5に示されるように、ソース配線44は、平面視でソース電極28(およびそれと一体的に形成されたフィールドプレート電極31)と重なる重なり部分44Aを含む。この重なり部分44Aに対応する位置にてソース配線44とソース電極28との間の絶縁層12には、絶縁層12を貫通してソース配線44とソース電極28とを電気的に接続するビアVsが形成されている。
【0051】
図4および
図6に示されるように、ドレイン配線45は、平面視でドレイン電極30と重なる重なり部分45Aを有している。この重なり部分45Aに対応する位置にてドレイン配線45とドレイン電極30との間の絶縁層12には、絶縁層12を貫通してドレイン配線45とドレイン電極30とを電気的に接続するビアVdが形成されている。
【0052】
なお、図示は省略するが、ゲート配線46は、周辺領域A2に突出したゲート電極24の端部と平面視で重なる重なり部分を含み、この重なり部分に対応する位置で絶縁層12を貫通するビアによりゲート電極24と電気的に接続されている。
【0053】
図4~
図6に示されるように、アクティブ領域A1内の外周部分には、アクティブ領域A1の中央部分を囲む四角枠状の第1外周ガードリング51および第2外周ガードリング52が設けられている。
【0054】
第1外周ガードリング51の一例は、電子供給層18上に接して設けられた半導体層51Aと、半導体層51A上に接して設けられた第1導電層51Bと、第1導電層51Bの上方において、絶縁層12内に埋め込まれた第2導電層51Cとを含む。半導体層51Aは、例えば、ゲート層22と同じ材料により構成されている。第1導電層51Bは、例えば、ゲート電極24と同じ材料により構成されている。第2導電層51Cは、例えば、ソース電極28およびドレイン電極30と同じ材料により構成されている。
【0055】
第2外周ガードリング52は、第1外周ガードリング51よりもアクティブ領域A1の外周側において第1外周ガードリング51を囲むように設けられている。第2外周ガードリング52の一例は、電子供給層18上に接して設けられた導電層である。第2外周ガードリング52は、例えば、ソース電極28およびドレイン電極30と同じ材料により構成されている。
【0056】
[4.容量素子]
図1および
図7に示されるように、窒化物半導体装置10Aは容量素子60を含む。
図7は、
図1のF7-F7線に沿った窒化物半導体装置10Aの部分の概略断面図である。
【0057】
図7の例に示す第1実施形態では、容量素子60は、絶縁層12と、絶縁層12の上面12Aに形成されたソースパッド41と、絶縁層12の下面12Bに形成された電極層62とを用いて形成されている。ソースパッド41および電極層62はともに、周辺領域A2に設けられている。したがって、容量素子60は、周辺領域A2に設けられている。
【0058】
容量素子60は、第1電極41Aと、第1電極41Aに対向する第2電極62Aと、第1電極41Aと第2電極62Aとの間に介在する誘電体層12Cとを含む。第1電極41Aは、容量素子60の2つの対向電極の一方に対応し、第2電極62Aは、容量素子60の2つの対向電極の他方に対応する。
【0059】
第1電極41Aは、ソース電極28に電気的に接続されたソースパッド41の少なくとも一部によって形成されている。第1電極41Aは、平面視で電極層62と重なるソースパッド41の部分に相当する。言い換えれば、ソースパッド41は、平面視で電極層62と重なる部分を第1電極41Aとして含む。したがって、第1電極41Aはソース電位を有し、容量素子60はソース電極28に電気的に接続されている。
【0060】
第2電極62Aは、電極層62の少なくとも一部によって形成されている。電極層62は、平面視でソースパッド41と少なくとも部分的に重なるように設けられている。
図7の例では、電極層62の一部が平面視でソースパッド41と重なっている。第2電極62Aは、平面視でソースパッド41と重なる電極層62の部分に相当する。言い換えれば、電極層62は、平面視でソースパッド41と重なる部分を第2電極62Aとして含む。
【0061】
図1に示されるように、第2電極62Aは、平面視矩形状を有し、ソースパッド41に沿ってY軸方向に延在している。X軸方向における第2電極62Aの幅は、X軸方向におけるソースパッド41の幅よりも狭い。ただし、第2電極62Aの幅は、ソースパッド41の幅よりも広くてもよい。なお、第2電極62Aの平面視の形状は、必ずしも矩形状でなくてもよい。
【0062】
また、
図1の例では、平面視で電極層62と重なるソースパッド41の一部が第1電極41Aとして形成されているが、ソースパッド41の全体が第1電極41Aとして形成されてもよい。この場合には、電極層62が平面視でソースパッド41以上の大きさで形成されることによって、第2電極62Aがソースパッド41と同じ大きさで形成される。なお、
図1および
図7には示されていないが、上記したように、ソースパッド41は、絶縁層12に形成されたビアVs(
図6参照)を通じてソース電極28に電気的に接続されている。
【0063】
誘電体層12Cは、絶縁層12の一部によって形成されている。したがって、第1実施形態では、誘電体層12Cは、絶縁層12と同一材料で形成されており、かつ絶縁層12と同一層に位置する。なお、
図7では、分かり易くするために、第2電極62Aの境界および誘電体層12Cの境界を点線で示しているが、このような境界線は明確に存在するわけではない。
【0064】
電極層62は、周辺領域A2における電子走行層16の外周部(2DEG20が発生しない領域)上に、絶縁層12の下面12Bに接して設けられている。電極層62は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、アルミニウムシリコン銅(AlSiCu)、アルミニウム銅(AlCu)、タングステン(W)、チタン(Ti)、および窒化チタン(TiN)のうちの少なくとも1つを含む任意の導体材料によって構成することができる。電極層62の材料の一例は、ゲート電極24と同じ材料、例えばTiNである。この場合、電極層62は、ゲート電極24と同時にパターニングすることで形成される。電極層62の別の材料の例は、ソース電極28およびドレイン電極30と同じ材料、例えばAlCuである。この場合、電極層62は、ソース電極28およびドレイン電極30と同時にパターニングすることで形成される。
【0065】
電極層62はさらに、第2電極62Aに加えて、接続部62Bを含む。
図7の例では、第2電極62Aと接続部62Bとは一体に形成されている。接続部62Bは、第2電極62A以外の電極層62の部分に対応し得る。すなわち、接続部62Bは、ソースパッド41と平面視で重ならない電極層62の部分に対応し得る。接続部62Bは、容量素子60と後述する特定パッド(
図7の第1パッド47)とを電気的に接続するための配線層として機能する。
【0066】
容量素子60は、第1電極41Aと第2電極62Aとの間に、次式(1)に基づく特定容量C
spを形成する。
C
sp=ε×(S/d)…(1)
ここで、式(1)において、Sは、互いに対向する第1電極41Aおよび第2電極62Aの各々の面積、すなわち対向面積である。dは、第1電極41Aと第2電極62Aとの間の距離、すなわち電極間距離である。
図7に示す例では、電極間距離dは、誘電体層12Cの厚さに等しい。εは、第1電極41Aと第2電極62Aとの間に介在する誘電体層12Cの誘電率である。したがって、特定容量C
spは、対向面積S、電極間距離d、および誘電体層12Cの誘電率εのうちの1つ以上を変更することによって変化させることができる。
【0067】
一例として、対向面積Sは、例えば0.02mm2以上0.4mm2以下とすることができる。電極間距離d(すなわち、誘電体層12Cの厚さ)は、例えば50nm以上3000nm以下とすることができる。誘電体層12Cの誘電率εは、誘電体層12Cの種類(すなわち、絶縁層12の材料)を変更することによって変化させることができる。
【0068】
[5.特定パッド]
図1に示されるように、窒化物半導体装置10Aは、2つの特定パッドとして設けられた第1パッド47および第2パッド48を含む。第1パッド47および第2パッド48は絶縁層12の上面12Aに設けられている。第1パッド47および第2パッド48は、例えばソースパッド41、ドレインパッド42、およびゲートパッド43と同一の導体材料によって構成することができる。
【0069】
第1パッド47は、周辺領域A2内に配置されている。
図1の例では、第1パッド47は、アクティブ領域A1の下側(-Y方向側)位置にソースパッド41と並んで周辺領域A2内に配置されている。第1パッド47とソースパッド41との間にはゲート配線46が位置している。第1パッド47は、例えば平面視正方形状を有し得る。ただし、第1パッド47は、正方形状以外の他の矩形状、円形状、または楕円形状であってもよい。第1パッド47の平面視の大きさも特に限定されない。
【0070】
第2パッド48は、周辺領域A2内に配置されている。
図1の例では、第2パッド48は、アクティブ領域A1の下側(-Y方向側)位置にドレインパッド42と並んで周辺領域A2内に配置されている。第2パッド48とドレインパッド42との間にはゲート配線46が位置している。第2パッド48は、例えば平面視正方形状を有し得る。ただし、第2パッド48は、正方形状以外の他の矩形状、円形状、または楕円形状であってもよい。第2パッド48の平面視の大きさも特に限定されない。
【0071】
第1パッド47および第2パッド48は、窒化物半導体装置10Aが半導体チップとして提供されるときには、無電位すなわち電気的にフローティングな状態であり、どの電極パッドにも電気的に接続されていない。第1パッド47および第2パッド48は、後述する窒化物半導体モジュールへの窒化物半導体装置10Aの搭載時に必要に応じてドレインパッド42に電気的に接続される。すなわち、第1パッド47および第2パッド48は、ドレインパッド42との電気的接続用に設けられている。
【0072】
図1および
図7に示されるように、第1パッド47は、平面視で接続部62Bすなわち電極層62と重なる位置に設けられている。したがって、電極層62は、平面視でソースパッド41と第1パッド47との双方に跨がって設けられている。
図7の例では、接続部62Bは、第2電極62AからY軸方向(-Y方向)に延出するとともに、その一部が第1パッド47の下方に位置している。接続部62Bと第1パッド47とが平面視で重なる領域において接続部62Bと第1パッド47との間の絶縁層12には、絶縁層12を貫通して接続部62Bと第1パッド47とを電気的に接続するビアV1が形成されている。したがって、第1パッド47は、ビアV1を介して電極層62に接続されている。すなわち、第1パッド47は、ビアV1と接続部62Bとを介して第2電極62Aに接続されている。このため、例えば、第1パッド47がドレインパッド42に電気的に接続された場合には、容量素子60の第2電極62Aがドレイン電位に設定される。なお、本開示において、ビアV1は、第1貫通導体の一例である。
【0073】
図7に示されるように、窒化物半導体装置10Aは、絶縁層12の上面12Aに設けられた保護膜49を含む。保護膜49は、各パッド(ソースパッド41、ドレインパッド42、ゲートパッド43、第1パッド47、および第2パッド48)の一部を覆いつつそれらを露出させるように形成され得る。
図7の例では、保護膜49は、ソースパッド41と第1パッド47との間に位置するゲート配線46も覆っている。なお、
図7(および後述する
図14)以外の図面においては、保護膜49の図示を省略している。保護膜49は、例えばポリイミド等の絶縁材料によって構成され得る。
【0074】
[6.抵抗素子]
図1に示されるように、窒化物半導体装置10Aは抵抗素子70を含む。抵抗素子70は、第1パッド47および第2パッド48に電気的に接続されている。抵抗素子70は、第1パッド47と第2パッド48との間に接続された接続経路71を含む。接続経路71は、平面視で蛇行して形成されている。抵抗素子70の構造については特に限定されない。以下に、抵抗素子70の2つの構造例について説明する。
【0075】
[6-1.抵抗素子の第1構造例]
図8は、抵抗素子70の第1構造例の概略断面図である。第1構造例では、抵抗素子70は、電子走行層16に発生する2DEG20の経路を接続経路71として有する。例えば、抵抗素子70が形成される領域において、電子供給層18は、
図1に接続経路71として示される形状に倣って平面視で蛇行して形成される。これにより、電子供給層18の直下の電子走行層16に2DEG20(接続経路71)が蛇行して形成される。
【0076】
抵抗素子70は、2DEG20により形成された接続経路71の両端部に電気的に接続される第1端子72Aおよび第2端子72Bを含む。第1端子72Aおよび第2端子72Bは、絶縁層12を貫通して電子供給層18上に設けられており、電子供給層18の直下の2DEG20(接続経路71)にオーミック接触している。例えば、第1端子72Aおよび第2端子72Bには、ソース電極28およびドレイン電極30と同じ金属材料を用いることができる。第1端子72Aは絶縁層12から露出する上端部を含み、第1端子72Aの上端部には第1パッド47が接続されている。第2端子72Bは絶縁層12から露出する上端部を含み、第2端子72Bの上端部には第2パッド48が接続されている。
【0077】
第1構造例による抵抗素子70において、接続経路71の抵抗値Rは、接続経路71として形成される2DEG20の長さおよび幅に応じて設定される。例えば、2DEG20のシート抵抗を500Ω/sq、接続経路71の幅を1μm、接続経路71の長さを1000μmとした場合、接続経路71の抵抗値Rは、500kQ(R=500[Ω/sq]×1000[μm]/1[μm])として得られる。
【0078】
[6-2.抵抗素子の第2構造例]
図9は、抵抗素子70の第2構造例の概略断面図である。第2構造例では、抵抗素子70は、電子走行層16上に形成された絶縁膜74と、絶縁膜74上に形成された導電層76とを含む。導電層76の材料の一例はポリシリコンであるが、ポリシリコンに限定されず他の任意の導電材料を導電層76に用いることができる。第2構造例による抵抗素子70は、導電層76の経路を接続経路71として有する。例えば、抵抗素子70が形成される領域において、導電層76は、
図1に接続経路71として示される形状に倣って平面視で蛇行して形成される。これにより、導電層76を用いた接続経路71が蛇行して形成される。
【0079】
第2構造例による抵抗素子70は、導電層76により形成された接続経路71の両端部に電気的に接続される第1端子72Aおよび第2端子72Bを含む。第1端子72Aおよび第2端子72Bは、導電層76に直接接して設けられてよい。第1構造例と同様、第2構造例でも、例えば、第1端子72Aおよび第2端子72Bには、ソース電極28およびドレイン電極30と同じ金属材料を用いることができる。第1端子72Aの上端部には第1パッド47が接続されており、第2端子72Bの上端部には第2パッド48が接続されている。第2構造例による抵抗素子70において、接続経路71の抵抗値Rは、接続経路71として形成される導電層76の長さおよび幅に応じて設定される。
【0080】
[7.窒化物半導体モジュール]
次に、
図10~
図13を参照して、
図1の窒化物半導体装置10Aを備える窒化物半導体モジュール100の例示的構成を説明する。以下に、窒化物半導体装置10Aの2つの実装例について説明する。
【0081】
[7-1.窒化物半導体装置の第1実装例]
図10は、第1実装例にしたがってワイヤ実装された窒化物半導体装置10Aを備える窒化物半導体モジュール100の概略平面図である。
【0082】
窒化物半導体モジュール100は、ダイパッド101と、ダイパッド101に実装された窒化物半導体装置10Aと、窒化物半導体装置10Aを封止する封止樹脂102とを備える。ダイパッド101は矩形板状に形成されている。ダイパッド101は、例えば銅(Cu)または銅を含む合金によって形成されている。封止樹脂102は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、またはフェノール樹脂などの絶縁性樹脂材料によって形成されている。
【0083】
窒化物半導体モジュール100は、封止樹脂102からそれぞれ部分的に露出するソースリード103、ドレインリード104、およびゲートリード105を含む。ソースリード103は、ダイパッド101に一体に形成されている。
【0084】
窒化物半導体モジュール100はさらに、ソースワイヤ106、ドレインワイヤ107、およびゲートワイヤ108を含む。ソースワイヤ106は、ダイパッド101(すなわち、ソースリード103)をソースパッド41に接続する。ドレインワイヤ107は、ドレインリード104をドレインパッド42に接続する。ゲートワイヤ108は、ゲートリード105をゲートパッド43に接続する。ソースワイヤ106、ドレインワイヤ107、およびゲートワイヤ108は、封止樹脂102によって封止されている。
【0085】
窒化物半導体モジュール100はさらに、特定ワイヤ109を含む。特定ワイヤ109は、第2パッド48をドレインリード104に接続する。このため、第2パッド48は、特定ワイヤ109を介してドレイン電位に設定される。特定ワイヤ109は、封止樹脂102によって封止されている。なお、本開示において、特定ワイヤ109は第1ワイヤに対応する。
【0086】
ソースワイヤ106、ドレインワイヤ107、ゲートワイヤ108、および特定ワイヤ109の各々は、図示しないワイヤボンディング装置によって形成されるボンディングワイヤであり、例えば金(Au)、Al、Cu等の導体材料によって形成されている。なお、各ワイヤは同一材料(例えばCu)によって形成されてもよいし、それらのワイヤのうちの少なくとも1本が他のワイヤと異なる材料によって形成されてもよい。
【0087】
図11は、
図10の窒化物半導体モジュール100によって提供されるRCスナバ回路付きスイッチング素子の等価回路図である。すなわち、第1実装例は、特定ワイヤ109を用いて第2パッド48にドレイン電位を与えることで、窒化物半導体装置10AをRCスナバ回路付きスイッチング素子として実装する例を示している。
【0088】
第1実装例では、特定ワイヤ109を用いて第2パッド48がドレインリード104に接続される(すなわち、第2パッド48をドレイン電位に設定する)ことで、抵抗素子70がトランジスタTのドレイン端子D(
図11参照)に電気的に接続される。このため、第1パッド47が抵抗素子70を介してドレイン端子Dに電気的に接続される。ここで、第1パッド47は容量素子60の第2電極62A(
図7参照)に電気的に接続されており、容量素子60の第1電極41Aはソース電位に設定されている。したがって、トランジスタTのドレイン端子Dとソース端子S(
図11参照)との間には、抵抗素子70と容量素子60とが直列に接続される。このように、第1実装例による窒化物半導体モジュール100では、
図1の窒化物半導体装置10AをRCスナバ回路付きスイッチング素子として実装することができる。
【0089】
[7-2.窒化物半導体装置の第2実装例]
図12は、第2実装例にしたがってワイヤ実装された窒化物半導体装置10Aを備える窒化物半導体モジュール100の概略平面図である。
【0090】
なお、第2実装例は、上記した第1実装例の特定ワイヤ109に代えて特定ワイヤ110を用いるものであり、その他の構成は、
図11の窒化物半導体モジュール100の構成と同じである。このため、
図11の窒化物半導体モジュール100の構成と同一構成については詳細な説明を省略する。なお、本開示において、特定ワイヤ110は第2ワイヤに対応する。
【0091】
特定ワイヤ110は、第1パッド47をドレインリード104に接続する。このため、第1パッド47は、特定ワイヤ110を介してドレイン電位に設定される。特定ワイヤ110は、封止樹脂102によって封止されている。特定ワイヤ110は、特定ワイヤ109と同様な導体材料によって形成することができる。なお、第2実装例では、第2パッド48は無電位のままである。
【0092】
図13は、
図12の窒化物半導体モジュール100によって提供されるCスナバ回路付きスイッチング素子の等価回路図である。すなわち、第2実装例は、特定ワイヤ110を用いて第1パッド47にドレイン電位を与えることで、窒化物半導体装置10AをCスナバ回路付きスイッチング素子として実装する例を示している。
【0093】
第2実装例では、特定ワイヤ110を用いて第1パッド47がドレインリード104に接続される(すなわち、第1パッド47をドレイン電位に設定する)ことで、容量素子60がトランジスタTのドレイン端子D(
図13参照)に電気的に接続される。上記のように、第1パッド47は容量素子60の第2電極62A(
図7参照)に電気的に接続されており、容量素子60の第1電極41Aはソース電位に設定されている。したがって、トランジスタTのドレイン端子Dとソース端子S(
図13参照)との間には、容量素子60が接続される。ここで、第2パッド48は無電位のままであるため、ドレイン端子Dとソース端子Sとの間に抵抗素子70は接続されない。このように、第2実装例による窒化物半導体モジュール100では、
図1の窒化物半導体装置10AをCスナバ回路付きスイッチング素子として実装することができる。
【0094】
[8.作用]
次に、第1実施形態の窒化物半導体装置10Aおよび窒化物半導体モジュール100の作用を説明する。
【0095】
窒化物半導体装置10Aは、トランジスタT(スイッチング素子)と、トランジスタTのソース電極28に電気的に接続された容量素子60と、容量素子60に電気的に接続された第1パッド47とを含む。また、窒化物半導体装置10Aは、第1パッド47に電気的に接続された抵抗素子70と、抵抗素子70に電気的に接続された第2パッド48とを含む。窒化物半導体装置10Aは、そのチップ状態では第1パッド47および第2パッド48を無電位パッドとして有している。
【0096】
窒化物半導体HEMTであるトランジスタTは、高速スイッチング素子として提供される。この種のトランジスタTは、低スイッチング損失による高い変換効率をもたらす。一方、高速スイッチングに伴いスイッチング遷移時間が短くなるほどスイッチング時の電圧サージおよび電圧リンギング(回路共振)が生じ易くなる。したがって、トランジスタTが搭載されるシステム側の要求に応じて電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つことが求められる。窒化物半導体装置10Aは、この要求に応えるチップ構造を有している。
【0097】
窒化物半導体装置10Aによれば、それを窒化物半導体モジュール100として提供する際に、RCスナバ回路付きスイッチング素子(
図10)として実装するか、またはCスナバ回路付きスイッチング素子(
図12)として実装するかを選択することができる。したがって、窒化物半導体装置10Aは、トランジスタT(スイッチング素子)に対してRCスナバ回路およびCスナバ回路のうちの一方を選択的に付加できるチップ構造を有している。これにより、例えば、窒化物半導体装置10Aが搭載されるシステム側の要求に応じて、電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つことができる。なお、一般的には動作周波数が高くなるにつれてRCスナバ回路における抵抗素子70での電力消費が大きくなることから、例えば、動作周波数が高い場合には、RCスナバ回路に代えてCスナバ回路を選択することができる。
【0098】
ここで、スナバ回路をトランジスタ(スイッチング素子)に付加すると、トランジスタのドレイン-ソース間容量が増加することで、スイッチング速度が低下する。その結果、スイッチング損失が増加することで、電源効率が低下する。したがって、窒化物半導体HEMTによる高速スイッチング特性を最大限活かすためには、電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つ必要がない場合には、スナバ回路を付加せずにトランジスタTのみを実装することが望ましい。
【0099】
窒化物半導体装置10Aによれば、スナバ回路が必要ない場合(すなわち、電圧サージ対策および電圧リンギング対策が必要ない場合)には、窒化物半導体モジュール100への実装時に第1パッド47および第2パッド48を無電位パッドのままとすればよい。これにより、トランジスタT(スイッチング素子)のみが実装されるため、窒化物半導体HEMTによる高速スイッチング特性を最大限活かすことができる。
【0100】
第1実施形態における窒化物半導体装置10Aおよび窒化物半導体モジュール100は、以下の利点を有する。
(1-1)
窒化物半導体装置10Aは、スイッチング素子としてのトランジスタTと、容量素子60と、抵抗素子70と、第1パッド47と、第2パッド48とを含む。窒化物半導体装置10Aは、第2パッド48にドレイン電位が印加されることで、RCスナバ回路付きスイッチング素子(
図10)として機能し、第1パッド47にドレイン電位が印加されることで、Cスナバ回路付きスイッチング素子(
図12)として機能する。したがって、RCスナバ回路付きスイッチング素子およびCスナバ回路付きスイッチング素子のうちの一方を選択的に実装可能なチップ構造を提供することができる。これにより、必要に応じて電圧サージ対策および電圧リンギング対策を打つことができる。
【0101】
(1-2)
窒化物半導体装置10Aは、スナバ回路が必要ない場合(すなわち、電圧サージ対策および電圧リンギング対策が必要ない場合)には、第1パッド47および第2パッド48を無電位パッドとしたままで実装される。この場合、トランジスタT(スイッチング素子)のみが実装されるため、窒化物半導体HEMTによる高速スイッチング特性を最大限活かすことができる。
【0102】
(1-3)
容量素子60は、対向面積S、電極間距離d、および誘電体層12Cの誘電率εに応じた特定容量spを有している。対向面積Sは、第1電極41Aおよび第2電極62Aの各々の面積に依存し、電極間距離dは、第1電極41Aと第2電極62Aとの間の距離に依存する。誘電体層12Cの誘電率εは、誘電体層12Cの種類(絶縁層12の材料)に依存する。したがって、これらのパラメータを変化させることでスナバ回路の容量素子60の特定容量spを任意の値に設定することができる。
【0103】
(1-4)
容量素子60の第1電極41Aはソースパッド41を用いて形成され、容量素子60の誘電体層12Cは絶縁層12を用いて形成されている。したがって、第2電極62Aを含む電極層62を追加することで容量素子60を形成することができる。このため、トランジスタT(スイッチング素子)用に設けられた部材を利用してスナバ回路用の容量素子60を容易に形成することができる。
【0104】
(1-5)
容量素子60の誘電体層12Cは、絶縁層12と同一材料で形成されるとともに絶縁層12と同一層に位置している。この構成によれば、容量素子60を追加してもチップ厚が増加しない。
【0105】
(1-6)
第1パッド47、第2パッド48、容量素子60、および抵抗素子70は、トランジスタT(スイッチング素子)が設けられたアクティブ領域A1を囲む周辺領域A2に設けられている。この構成によれば、周辺領域A2の空きスペースを利用して第1パッド47、第2パッド48、容量素子60、および抵抗素子70を配置することができる。したがって、スナバ回路(RCスナバ回路およびCスナバ回路)の追加による窒化物半導体装置10Aのチップサイズの増加を抑えることができる。
【0106】
(1-7)
第1パッド47は、平面視においてソースパッド41の隣りに位置している。この構成によれば、平面視でソースパッド41および第1パッド47の双方に跨がる電極層62の形成を容易化することができるだけでなく、電極層62のサイズを小さくすることができる。これにより、窒化物半導体装置10Aのチップサイズの増加を抑えることができる。
【0107】
(1-8)
また、第2パッド48は、平面視においてドレインパッド42の隣りに位置している。この構成によれば、周辺領域A2の空きスペースを有効利用して、第1パッド47と第2パッド48との間に接続される抵抗素子70を形成することができる。
【0108】
(1-9)
トランジスタT(スイッチング素子)におけるゲート層22は、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって形成されている。この構成によれば、ノーマリーオフ型のトランジスタTを提供することができる。
【0109】
(1-10)
第2電極62Aを含む電極層62は、ゲート電極24と同一材料で形成することができる。この場合、ゲート電極24のパターニングと同時に電極層62(第2電極62A)を形成できるため、製造工程の追加が発生しない。
【0110】
(1-11)
あるいは、第2電極62Aを含む電極層62は、ソース電極28およびドレイン電極30と同一材料で形成することができる。この場合も、ソース電極28およびドレイン電極30のパターニングと同時に電極層62(第2電極62A)を形成できるため、製造工程の追加が発生しない。
【0111】
(1-12)
窒化物半導体モジュール100は、第2パッド48をドレインリード104にワイヤ接続することでRCスナバ回路付きスイッチング素子(
図10)として提供される。また、窒化物半導体モジュール100は、第1パッド47をドレインリード104にワイヤ接続することでCスナバ回路付きスイッチング素子(
図12)として提供される。したがって、ワイヤ接続位置を変更するだけで、RCスナバ回路およびCスナバ回路のうちの一方を選択的にトランジスタT(スイッチング素子)に付加することができる。
【0112】
<第2実施形態>
次に、
図14を参照して、第2実施形態にかかる窒化物半導体装置10Bについて説明する。第2実施形態では、第1実施形態の容量素子60の構造およびその接続構造が変更されており、その他の構成については、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と同様な構成要素については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成要素について説明する。
【0113】
図14は、第2実施形態にかかる例示的な窒化物半導体装置10Bの一部の概略断面図である。なお、
図14の断面構造は、第1実施形態における
図7の断面構造に対応するものとして示されている。
【0114】
第2実施形態では、第1実施形態の電極層62(
図7参照)に代えて電極層64が設けられている。電極層64は、平面視でソースパッド41と少なくとも部分的に重なっており、誘電体層12Cの下面に接して設けられている。例えば電極層64は、ソースパッド41の全体と重なるように平面視でソースパッド41と同じ大きさで形成されてもよい。あるいは、電極層64は、ソースパッド41の一部と重なるように平面視でソースパッド41より小さく形成されてもよい。第2実施形態では、電極層64の全体が容量素子60の第2電極64Aとして設けられている。
【0115】
電極層64の下方には、平面視でソースパッド41と第1パッド47との双方に跨がって設けられた導電層66が設けられている。この導電層66と第1パッド47とが平面視で重なる領域において導電層66と第1パッド47との間の絶縁層12には、絶縁層12を貫通して導電層66と第1パッド47とを電気的に接続するビアV1が形成されている。なお、ビアV1は第1貫通導体の一例である。
【0116】
また、導電層66と電極層64とが平面視で重なる領域において導電層66と電極層64との間の絶縁層12には、絶縁層12を貫通して導電層66と電極層64(第2電極64A)とを電気的に接続するビアV2が形成されている。したがって、第1パッド47は、ビアV1、導電層66、およびビアV2を介して、第2電極64Aに電気的に接続されている。なお、ビアV2は第2貫通導体の一例である。
【0117】
導電層66と電極層64との間に介在する絶縁層12は、例えば絶縁層26、すなわちトランジスタTのゲート電極24(
図2参照)を覆うように電子供給層18上に形成されたパッシベーション層(例えばSiN等)とすることができる。したがって、誘電体層12Cの材料と、導電層66と電極層64との間に介在する絶縁層26の材料とは異なっていてもよい。なお、第2実施形態において、第1パッド47と導電層66との間に設けられた絶縁層12は第1絶縁層に対応する。また、電極層64と導電層66との間に設けられた絶縁層26は第2絶縁層に対応する。
【0118】
電極層64は、例えば、Cu、Al、AlSiCu、AlCu、W、Ti、およびTiNのうちの少なくとも1つを含む任意の導体材料によって構成することができる。電極層64の材料の一例は、ソース電極28およびドレイン電極30と同じ材料、例えば、AlCuである。この場合、電極層64は、ソース電極28およびドレイン電極30と同時にパターニングすることで形成される。
【0119】
同様に、導電層66は、例えば、Cu、Al、AlSiCu、AlCu、W、Ti、およびTiNのうちの少なくとも1つを含む任意の導体材料によって構成することができる。導電層66の材料の一例は、ゲート電極24と同じ材料、例えば、TiNである。この場合、導電層66は、ゲート電極24と同時にパターニングすることで形成される。
【0120】
第2実施形態の窒化物半導体装置10Bは、第1実施形態の(1-1)~(1-4)および(1-6)~(1-12)と同様な利点またはそれらに準じた利点に加えて、以下の利点を有する。
【0121】
(2-1)
第2実施形態では、第2電極64Aとして設けられる電極層64が、導電層66の上方に位置する絶縁層内に、すなわち、絶縁層12と絶縁層26との間に埋め込まれている。このように、第1パッド47にビアV1を介して接続される導電層66とは異なる層位置に配置された電極層64を用いて容量素子60の第2電極64Aを形成することも可能である。この構造によれば、容量素子60の設計の自由度が向上する。
【0122】
<変更例>
上記各実施形態は例えば以下のように変更できる。上記各実施形態と以下の各変更例は、技術的な矛盾が生じない限り、互いに組み合せることができる。なお、以下の変更例において、上記各実施形態と共通する部分については、上記各実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0123】
・窒化物半導体モジュール100において、第1パッド47または第2パッド48をドレイン電位に設定する構成は、
図10および
図12を参照して説明したボンディングワイヤ接続を用いる構成に限定されない。例えば、窒化物半導体モジュール100は、チップサイズパッケージのように、ボンディングワイヤを用いない構成であってもよい。以下に、ワイヤ実装に代わるフリップチップ実装の例として、RCスナバ回路付きスイッチング素子を実装する場合とCスナバ回路付きスイッチング素子を実装する場合とについてそれぞれ説明する。
【0124】
・
図15は、第3実装例にしたがってフリップチップ実装された窒化物半導体装置10Aを備える窒化物半導体モジュール100の概略平面図である。なお、
図15は、プリント配線基板などの実装基板200に窒化物半導体装置10Aがフリップチップ実装された状態を実装基板200の裏面側から視た図として示されており、窒化物半導体装置10Aが透過して視えるように実装基板200が破線で示されている。
【0125】
実装基板200は、窒化物半導体装置10Aが実装される実装表面を有している。この実装基板200の実装表面には、ソースパッド41に接続されるソース接続部201と、ドレインパッド42に接続されるドレイン接続部202と、ゲートパッド43に接続されるゲート接続部203とが複数の配線部として形成されている。また、ドレイン接続部202には第1接続延在部202Aが一体に形成されている。この第1接続延在部202Aは、ドレイン接続部202から延在して第2パッド48をドレインパッド42に接続する。このような第3実装例を用いた場合にも、
図10の第1実装例(特定ワイヤ109を用いたワイヤ実装)の場合と同様に、窒化物半導体装置10AをRCスナバ回路付きスイッチング素子として実装することができる。
【0126】
・
図16は、第4実装例にしたがってフリップチップ実装された窒化物半導体装置10Aを備える窒化物半導体モジュール100の概略平面図である。上述した
図15と同様、
図16は、実装基板200に窒化物半導体装置10Aがフリップチップ実装された状態を実装基板200の裏面側から視た図として示されており、窒化物半導体装置10Aが透過して視えるように実装基板200が破線で示されている。
【0127】
第4実装例では、上述した
図15の第3実装例と同様、実装基板200の実装表面に、ソース接続部201と、ドレイン接続部202と、ゲート接続部203とが複数の配線部として形成されている。ドレイン接続部202には第2接続延在部202Bが一体に形成されている。この第2接続延在部202Bは、ドレイン接続部202から延在して第1パッド47をドレインパッド42に接続する。なお、第2接続延在部202Bの形状(配線パターン)は特に限定されない。このような第4実装例を用いた場合にも、
図12の第2実装例(特定ワイヤ110を用いたワイヤ実装)の場合と同様に、窒化物半導体装置10AをCスナバ回路付きスイッチング素子として実装することができる。
【0128】
・
図17は、変形例にかかる窒化物半導体装置10Aの概略平面図である。
図17に示されるように、第1パッド47および第2パッド48に加えて、第3パッド50をさらに設けてもよい。この変形例では、窒化物半導体装置10Aは、
図1の抵抗素子70の代わりに抵抗素子170を含む。抵抗素子170は、第1パッド47に電気的に接続された第1抵抗素子部分172と、第2パッド48に電気的に接続された第2抵抗素子部分174とを含む。第3パッド50は、第1抵抗素子部分172と第2抵抗素子部分174との間に設けられており、第1抵抗素子部分172と第2抵抗素子部分174とに電気的に接続されている。
【0129】
図17の変形例では、第1パッド47をドレイン電位に設定することで、窒化物半導体装置10AがCスナバ回路付きスイッチング素子として実装される。また、第2パッド48または第3パッド50をドレイン電位に設定することで、窒化物半導体装置10AがRCスナバ回路付きスイッチング素子として実装される。このとき、第2パッド48を使用した場合には、第1および第2抵抗素子部分172,174を含む抵抗素子170の全体によってスナバ回路の抵抗値が決定され、第3パッド50を使用した場合には、第1抵抗素子部分172によってスナバ回路の抵抗値が決定される。したがって、RCスナバ回路の抵抗値を選択することが可能となる。
【0130】
・あるいは、第1パッド47と第2パッド48との間に2つ以上の特定パッドが設けられてもよい。この場合には、窒化物半導体装置10A(または窒化物半導体装置10B)によって実装されるRCスナバ回路の抵抗値をより細かく選択することが可能となる。
【0131】
・上記各実施形態および各変形例では、各窒化物半導体装置10A,10Bは、トランジスタT(スイッチング素子)とともに、容量素子60、抵抗素子70、第1パッド47、および第2パッド48を含むが、抵抗素子70と第2パッド48を省略してもよい。すなわち、各窒化物半導体装置10A,10Bは、Cスナバ回路付きスイッチング素子のみを実装可能とするべく、トランジスタT(スイッチング素子)とともに、容量素子60および第1パッド47のみを含む構成であってもよい。
【0132】
・ソースパッド41、ドレインパッド42、およびゲートパッド43の各電極パッドに関して、その平面視形状、数、および絶縁層12の上面12A上における配置は上記実施形態に限定されない。また、第1パッド47および第2パッド48に関して、その平面視形状および絶縁層12の上面12A上における配置も上記実施形態に限定されない。
【0133】
・上記各実施形態において、トランジスタTは、ノーマリーオフ型に限定されず、ノーマリーオフ型として実現されてもよい。この場合、ゲート層22はアクセプタ型不純物を含まない。
【0134】
・上記各実施形態において、ゲート層22は、第1延在部22Bおよび第2延在部22Cを含まず、ゲート層本体部22Aのみで形成されてもよい。
・上記各実施形態において、アクティブ領域A1および周辺領域A2の配置は、
図1に示すレイアウトに限定されない。
【0135】
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」との双方の意味を含む。したがって、「第1層が第2層上に形成される」という表現は、或る実施形態では第1層が第2層に接触して第2層上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1層が第2層に接触することなく第2層の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1層と第2層との間に他の層が形成される構造を排除しない。
【0136】
本開示で使用されるZ軸方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造(例えば、
図2,
図3に示される構造)は、本明細書で説明されるZ軸方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えば、X軸方向が鉛直方向であってもよく、またはY軸方向が鉛直方向であってもよい。
【0137】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。
<付記>
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0138】
(付記A1)
窒化物半導体によって形成され、ソース電極(28)、ドレイン電極(30)、およびゲート電極(24)を含むスイッチング素子(T)と、
前記ソース電極(28)に電気的に接続されたソースパッド(41)と、
前記ドレイン電極(30)に電気的に接続されたドレインパッド(42)と、
前記ゲート電極(24)に電気的に接続されたゲートパッド(43)と、
前記ソース電極(28)に電気的に接続された容量素子(60)と、
前記容量素子(60)に電気的に接続された第1パッド(47)と、
前記第1パッド(47)に電気的に接続された抵抗素子(70;170)と、
前記抵抗素子(70;170)に電気的に接続された第2パッド(48)と、
を備える窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0139】
(付記A2)
平面視で前記ソースパッド(41)と少なくとも部分的に重なり、前記第1パッド(47)に電気的に接続された電極層(62;64)と、
前記ソースパッド(41)と前記電極層(62;64)との間に設けられた誘電体層(12C)と、を備え、
前記ソースパッド(41)は、平面視において前記電極層(62;64)と重なる部分を前記容量素子(60)の2つの対向電極のうちの一方に対応する第1電極(41A)として含み、
前記電極層(62;64)は、平面視において前記ソースパッド(41)と重なる部分を前記容量素子(60)の2つの対応電極のうちの他方に対応する第2電極(62A;64A)として含む、付記A1に記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0140】
(付記A3)
前記電極層(62)は、平面視において前記ソースパッド(41)と前記第1パッド(47)との双方に跨って設けられており、
前記第1パッド(47)と前記電極層(62)との間に設けられた絶縁層(12)を備え、
前記第1パッド(47)は、前記絶縁層(12)を貫通する第1貫通導体(V1)を介して前記電極層(62)に接続されている、付記A2に記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0141】
(付記A4)
前記誘電体層(12C)は、前記絶縁層(12)と同一材料で形成されるとともに、前記絶縁層(12)と同一層に位置している、付記A3に記載の窒化物半導体装置(10A)。
【0142】
(付記A5)
前記電極層(64)の下方に位置し、平面視において前記ソースパッド(41)と前記第1パッド(47)との双方に跨がって設けられた導電層(66)と、
前記第1パッド(47)と前記導電層(66)との間に設けられた第1絶縁層(12)と、
前記電極層(64)と前記導電層(66)との間に設けられた第2絶縁層(26)と、を備え、
前記第1パッド(47)は、前記第1絶縁層(12)を貫通する第1貫通導体(V1)を介して前記導電層(66)に接続されており、
前記電極層(64)は、前記第2絶縁層(26)を貫通する第2貫通導体(V2)を介して前記導電層(66)に接続されている、付記A2に記載の窒化物半導体装置(10B)。
【0143】
(付記A6)
前記誘電体層(12C)は、前記第1絶縁層(12)と同一材料で形成されており、
前記第2絶縁層(26)は、前記第1絶縁層(12)と異なる材料で形成されている、付記A5に記載の窒化物半導体装置(10B)。
【0144】
(付記A7)
前記第2絶縁層(26)は、前記スイッチング素子(T)の前記ゲート電極(24)を覆う層であり、
前記第1絶縁層(12)は、前記スイッチング素子(T)の前記ソース電極(28)および前記ドレイン電極(30)を覆う層である、付記A5またはA6に記載の窒化物半導体装置(10B)。
【0145】
(付記A8)
前記抵抗素子(170)は、前記第1パッド(47)に電気的に接続された第1抵抗素子部分(172)と、前記第2パッド(48)に電気的に接続された第2抵抗素子部分(174)とを含み、
前記第1抵抗素子部分(172)と前記第2抵抗素子部分(174)との間に設けられ、前記第1抵抗素子部分(172)と前記第2抵抗素子部分(174)とに電気的に接続された第3パッド(50)をさらに備える付記A1~A7のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0146】
(付記A9)
前記スイッチング素子(T)はアクティブ領域(A1)に設けられており、
前記第1パッド(47)、前記第2パッド(48)、前記容量素子(60)、および前記抵抗素子(70;170)は、平面視において前記アクティブ領域(A1)を囲む周辺領域(A2)に設けられている、付記A1~A8のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0147】
(付記A10)
前記第1パッド(47)は、平面視において前記ソースパッド(41)の隣りに位置している、付記A1~A9のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0148】
(付記A11)
前記第2パッド(48)は、平面視において前記ドレインパッド(42)の隣りに位置している、付記A10に記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0149】
(付記A12)
前記スイッチング素子(T)は、
第1窒化物半導体によって構成された電子走行層(16)と、
前記電子走行層(16)上に設けられ、前記第1窒化物半導体よりも大きなバンドギャップを有する第2窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)と、
前記電子供給層(16)上の一部に設けられ、アクセプタ型不純物を含む第3窒化物半導体によって構成されたゲート層(22)と、
前記ゲート層(22)上に設けられた前記ゲート電極(24)と、
前記電子供給層(18)に接している前記ソース電極(28)および前記ドレイン電極(30)と、を含む、付記A1~A11のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0150】
(付記A13)
前記スイッチング素子(T)はアクティブ領域(A1)に設けられており、
前記第1パッド(47)、前記第2パッド(48)、前記容量素子(60)、および前記抵抗素子(70;170)は、平面視において前記アクティブ領域(A1)を囲む周辺領域(A2)に設けられており、
前記電極層(62)は、前記周辺領域(A2)に窒化物半導体によって形成された外周部上に設けられている、付記A2に記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0151】
(付記A14)
前記電極層(62;64)は、前記ゲート電極(24)と同一材料で形成されている、付記A2~A7のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0152】
(付記A15)
前記電極層(62;64)は、前記ソース電極(28)および前記ドレイン電極(30)と同一材料で形成されている、付記A2~A7のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0153】
(付記A16)
前記電極層(62;64)は、Cu、Al、AlSiCu、AlCu、W、Ti、およびTiNのうちの少なくとも1つによって形成されている、付記A2~A7のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)。
【0154】
(付記A17)
付記A1~A16のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)と、
ソースリード(103)、ドレインリード(104)、およびゲートリード(105)と、
前記ソースリード(103)を前記ソースパッド(41)に接続するソースワイヤ(106)と、
前記ドレインリードを前記ドレインパッド(42)に接続するドレインワイヤ(107)と、
前記ゲートリードを前記ゲートパッド(43)に接続するゲートワイヤ(108)と、
前記第2パッド(48)を前記ドレインリード(104)に接続する第1ワイヤ(109)と、
を備える窒化物半導体モジュール(100)。
【0155】
(付記A18)
付記A1~A16のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)と、
ソースリード(103)、ドレインリード(104)、およびゲートリード(105)と、
前記ソースリード(103)を前記ソースパッド(41)に接続するソースワイヤ(106)と、
前記ドレインリード(104)を前記ドレインパッド(42)に接続するドレインワイヤ(107)と、
前記ゲートリード(105)を前記ゲートパッド(43)に接続するゲートワイヤ(108)と、
前記第1パッド(47)を前記ドレインリード(104)に接続する第2ワイヤ(110)と、
を備える窒化物半導体モジュール(100)。
【0156】
(付記A19)
付記A1~A16のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)と、
前記窒化物半導体装置(10A;10B)がフリップチップ実装される実装基板(200)と、を備え、
前記実装基板(200)は、
前記ソースパッド(41)に接続されるソース接続部(201)と、
前記ドレインパッド(42)に接続されるドレイン接続部(202)と、
前記ゲートパッド(43)に接続されるゲート接続部(203)と、
前記ドレイン接続部(202)から延在して前記第2パッド(48)を前記ドレインパッド(42)に接続する第1接続延在部(202A)を含む、窒化物半導体モジュール(100)。
【0157】
(付記A20)
付記A1~A16のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置(10A;10B)と、
前記窒化物半導体装置(10A;10B)がフリップチップ実装される実装基板(200)と、を備え、
前記実装基板(200)は、
前記ソースパッド(41)に接続されるソース接続部(201)と、
前記ドレインパッド(42)に接続されるドレイン接続部(202)と、
前記ゲートパッド(43)に接続されるゲート接続部(203)と、
前記ドレイン接続部(202)から延在して前記第1パッド(47)を前記ドレインパッド(42)に接続する第2接続延在部(202B)を含む、窒化物半導体モジュール(100)。
【0158】
(付記B1)
窒化物半導体によって形成され、ソース電極(28)、ドレイン電極(30)、およびゲート電極(24)を含むスイッチング素子(T)と、
前記ソース電極(28)に電気的に接続されたソースパッド(41)と、
前記ドレイン電極(30)に電気的に接続されたドレインパッド(42)と、
前記ゲート電極(24)に電気的に接続されたゲートパッド(43)と、
前記ソース電極(28)に電気的に接続された容量素子(60)と、
前記容量素子(60)に電気的に接続された第1パッド(47)と、
を備える窒化物半導体装置(10A;10B)。
【符号の説明】
【0159】
10A,10B…窒化物半導体装置
11…半導体基板
12…絶縁層
12A…上面
12B…下面
12C…誘電体層
14…バッファ層
16…電子走行層
18…電子供給層
20…2DEG(二次元電子ガス)
22…ゲート層
22A…ゲート層本体部
22B…第1延在部
22C…第2延在部
24…ゲート電極
26…絶縁層
26A…ソース開口部
26B…ドレイン開口部
28…ソース電極
28A…ソースコンタクト部
30…ドレイン電極
30A…ドレインコンタクト部
31…フィールドプレート電極
31A…端部
41…ソースパッド
41A…第1電極
42…ドレインパッド
43…ゲートパッド
44…ソース配線
44A…重なり部分
45…ドレイン配線
45A…重なり部分
46…ゲート配線
47…第1パッド
48…第2パッド
49…保護膜
50…第3パッド
51…第1外周ガードリング
52…第2外周ガードリング
60…容量素子
62,64…電極層
62A,64A…第2電極
62B…接続部
66…導電層
70,170…抵抗素子
71…接続経路
100…窒化物半導体モジュール
102…封止樹脂
103…ソースリード
104…ドレインリード
105…ゲートリード
106…ソースワイヤ
107…ドレインワイヤ
108…ゲートワイヤ
109…特定ワイヤ(第1ワイヤ)
110…特定ワイヤ(第2ワイヤ)
172…第1抵抗素子部分
174…第2抵抗素子部分
200…実装基板
201…ソース接続部
202…ドレイン接続部
202A…第1接続延在部
202B…第2接続延在部
203…ゲート接続部
A1…アクティブ領域
A2…周辺領域
Csp…特定容量
T…トランジスタ(スイッチング素子)
V1…ビア(第1貫通導体)
V2…ビア(第2貫通導体)