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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131598
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/84 20060101AFI20240920BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240920BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E02F3/84 A
E02F9/20 Q
F15B11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041965
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】竹野 陽
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AB01
2D003AB05
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003FA02
3H089AA21
3H089BB05
3H089BB30
3H089CC01
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB43
3H089DB44
3H089DB48
3H089DC02
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】容易に走行時の挙動を安定化することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】ホイールローダ10は、本体1と、作業機3と、走行ダンパ部25と、IMU24と、コントローラ26と、を備える。本体1は、走行可能である。作業機3は、本体1に取り付けられている。走行ダンパ部25は、作業機3の振動を減衰可能である。IMU24は、本体1の振動に関する情報を検出する。コントローラ26は、IMU24が検出した振動に関する情報に基づいて、走行ダンパ部25を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機の振動を減衰可能な減衰部と、
前記作業機械本体の振動に関する情報を検出する振動情報検出センサと、
前記振動情報検出センサが検出した前記振動に関する情報に基づいて、前記減衰部を制御するコントローラと、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記減衰部を、前記作業機の振動を減衰する機能が発揮される第1状態および、前記作業機の振動を減衰する機能が発揮されない第2状態との間で切り替え可能であり、
前記コントローラは、前記振動に関する情報に基づいて前記作業機械本体が振動していると判定した場合、前記減衰部を前記第1状態に切り替える、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記作業機を駆動する油圧シリンダを更に備え、
前記減衰部は、
開閉弁と、
前記開閉弁を介して前記油圧シリンダに接続されるアキュムレータと、を有し、
前記開閉弁が開状態の場合に、前記減衰部は前記第1状態となり、
前記開閉弁が閉状態の場合に、前記減衰部は前記第2状態となり、
前記コントローラは、前記振動に関する情報に基づいて、前記開閉弁を制御する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記振動に関する情報は、前記作業機械本体に生じる加速度であり、
前記コントローラは、前記加速度の振幅が所定閾値より大きいこと、および前記加速度の周波数が所定閾値より大きいことの少なくとも一方を満たす場合に前記作業機械本体が振動していると判定する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記振動に関する情報は、前記作業機械本体に生じるピッチ角であり、
前記コントローラは、前記ピッチ角の振幅が所定閾値より大きいこと、および前記ピッチ角の周波数が所定閾値より大きいことの少なくとも一方を満たす場合に前記作業機械本体が振動していると判定する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項6】
走行可能な作業機械本体と、前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、を備えた作業機械の制御方法であって、
前記作業機械本体の振動に関する情報を取得する振動情報取得ステップと、
前記振動に関する情報に基づいて、前記作業機の振動を減衰する減衰部を制御する減衰制御ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダのような作業機械では、バケットに土砂等を積み込んだ状態で走行することがある。このような場合、作業機の質量が大きくなるため、走行時の振動が大きくなる。
【0003】
このため、作業機を駆動するシリンダにアキュムレータを接続して走行時の振動を減少させる構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1では、シリンダとアキュムレータとの間に弁が設けられており、弁の開閉を切り替えることによって走行時にはシリンダとアキュムレータとの間を接続し、積込作業時にはシリンダとアキュムレータとの接続を遮断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3122246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、弁を手動で操作しているため、走行する前または走行中にオペレータは弁を開操作する必要があり、オペレータの作業を複雑化していた。
【0006】
本開示は、容易に走行時の挙動を安定化することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る作業機械は、作業機械本体と、作業機と、減衰部と、振動情報検出センサと、コントローラと、を備える。作業機械本体は、走行可能である。作業機は、作業機械本体に取り付けられている。減衰部は、作業機の振動を減衰可能である。振動検出センサは、作業機械本体の振動に関する情報を検出する。コントローラは、振動情報検出センサが検出した振動に関する情報に基づいて、減衰部を制御する。
【0008】
本開示の第2態様に係る作業機械の制御方法は、走行可能な作業機械本体と、作業機械本体に取り付けられた作業機と、を備えた作業機械の制御方法であって、振動情報検出ステップと、減衰制御ステップと、を備える。振動情報検出ステップは、作業機械本体の振動に関する情報を検出する。減衰制御ステップは、振動に関する情報に基づいて、作業機の振動を減衰する減衰部を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、容易に走行時の挙動を安定化することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ホイールローダの側面図である。
図2】ホイールローダのシステム構成を示すブロック図である。
図3】IMUによる検出を説明するための図である。
図4】ホイールローダのコントローラの構成を示すブロック図である。
図5】加速度の振動波形の一例を示す図である。
図6】ホイールローダの状態遷移の判定を説明するための図である。
図7】コントローラによる走行ダンパ制御を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ホイールローダの概要)
作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは、運転席から前方を見た状態を基準とする向きである。「車幅方向」は、「左右方向」と同義である。
【0012】
図1は、本実施形態に係るホイールローダ10の全体構成を示す側面図である。
【0013】
ホイールローダ10は、本体1(作業機械本体の一例)及び作業機3を備える。本体1は、車体フレーム2、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7と、アーティキュレートシリンダ8と、を備える。
【0014】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0015】
一対のアーティキュレートシリンダ8は、油圧によって駆動される。一対のアーティキュレートシリンダ8は、連結軸部13を挟んで車幅方向の左右側に並んで配置されている。各々のアーティキュレートシリンダ8は、一端がフロントフレーム11に取り付けられており、それぞれの他端が、リアフレーム12に取り付けられている。アーティキュレートシリンダ8の伸縮によって、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の角が調整される。
【0016】
作業機3は、本体1に取り付けられる。作業機3は、種々の作業(例えば、土砂の積み込み作業、土砂の排出作業など)に用いられる。作業機3は、後述する油圧ポンプ64からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16(油圧シリンダの一例)と、バケットシリンダ17と、ベルクランク18と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0017】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0018】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置される。キャブ5の内部には、ホイールローダ10の走行方向を変更させるためのハンドル55、作業機3を操作するための作業機操作レバー56、各種ペダル、各種スイッチ、表示装置などが配置される(図2参照)。
【0019】
エンジンルーム6は、キャブ5の後側においてリアフレーム12上に配置される。エンジンルーム6には、後述するエンジン31が収納される。エンジンルーム6の後方には、カウンタウェイト6aが配置される。カウンタウェイト6aは、リアフレーム12の後端部上に配置される。
【0020】
(ホイールローダのシステム構成)
図2は、ホイールローダ10のシステム構成を模式的に示すブロック図である。
【0021】
ホイールローダ10は、走行部21、制動部22、操作部23、IMU24(振動情報検出センサの一例)、走行ダンパ部25(減衰部の一例)、及びコントローラ26を備える。
【0022】
(走行部21)
走行部21は、エンジン31、HST(Hydro Static Transmission)32、トランスファ33、アクスル34、フロントタイヤ4及びリアタイヤ7を有する。
【0023】
エンジン31は、例えばディーゼル式のエンジンである。HST32は、ポンプ32a、モータ32b及び油圧回路32cを含む。
【0024】
ポンプ32aは、斜板式可変容量型のポンプである。ポンプ32aの斜板の角は、ソレノイド32dによって変更可能である。ポンプ32aは、エンジン31によって駆動されることによって作動油を吐出する。ポンプ32aから吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、斜板式ポンプである。モータ32bの斜板の角は、ソレノイド32eによって変更可能である。
【0025】
油圧回路32cは、ポンプ32a及びモータ32bに接続される。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と第2駆動回路32c2とを含む。第1駆動回路32c1を介してポンプ32aからモータ32bに作動油が供給されることにより、モータ32bが一方向(例えば、前進方向)に駆動される。第2駆動回路32c2を介してポンプ32aからモータ32bに作動油が供給されることにより、モータ32bが他方向(例えば、後進方向)に駆動される。なお、第1駆動回路32c1又は第2駆動回路32c2への作動油の吐出方向は、ソレノイド32dによって変更可能である。
【0026】
モータ32bは、ドライブ軸35を介してトランスファ33に連結される。ドライブ軸35には、車速センサ36が設けられる。車速センサ36は、本体1の速度(以下、車速という。)を検出する。車速センサ36は、ドライブ軸35の回転速度に基づいて車速を検出する。車速センサ36は、車速を示す検出信号をコントローラ26に送信する。
【0027】
トランスファ33は、前側のアクスル34及び後側のアクスル34にエンジン31からの出力を分配する。前側のアクスル34には、一対のフロントタイヤ4が接続されている。一対のフロントタイヤ4は、前側のアクスル34に分配された出力によって回転する。後側のアクスル34には、一対のリアタイヤ7が接続されている。一対のリアタイヤ7は、後側のアクスル34に分配された出力によって回転する。
【0028】
(制動部22)
制動部22は、ブレーキ弁41、サービスブレーキ42及びパーキングブレーキ43を有する。ブレーキ弁41は、例えばEPC弁(Electric Proportional Valve)である。サービスブレーキ42に送られる作動油量は、ブレーキ弁41の開度に応じて調整される。ブレーキ弁41の開度は、コントローラ26によって制御される。コントローラ26は、後述するブレーキペダル54の操作量に応じてブレーキ弁41の開度を制御する。
【0029】
サービスブレーキ42は、前側のアクスル34及び後側のアクスル34に設けられる。サービスブレーキ42は、油圧式のブレーキである。サービスブレーキ42の制動力は、ブレーキ弁41の開度が大きいほど強くなる。
【0030】
パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられる。パーキングブレーキ43としては、例えば、制動状態と非制動状態に切り替え可能な湿式多段式のブレーキや、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0031】
(操作部23)
操作部23は、アクセル51、FNRレバー52、パーキングスイッチ53、ブレーキペダル54、ハンドル55、作業機操作レバー56、及び自動走行ダンパスイッチ57を有する。
【0032】
アクセル51は、キャブ5内に設けられる。アクセル51は、アクセル操作量を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいてエンジン31のスロットル開度を制御する。
【0033】
FNRレバー52は、キャブ5内に設けられる。FNRレバー52は、前進位置、ニュートラル位置及び後進位置のいずれかに切り替え可能である。FNRレバー52は、FNRレバー52の位置を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいてソレノイド32dを制御することによって、前進、ニュートラル又は後進を切り替える。
【0034】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられる。パーキングスイッチ53は、オン位置及びオフ位置のいずれかに切り替え可能である。パーキングスイッチ53は、パーキングスイッチ53の位置を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいて、パーキングブレーキ43を制動状態又は非制動状態にする。
【0035】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられる。ブレーキペダル54は、ペダル操作量及びペダル操作速度を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいて、ブレーキ弁41の開度を制御する。
【0036】
ハンドル55は、キャブ5内に設けられる。ハンドル55は、ハンドル操作方向及びハンドル操作量を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいて、車体フレーム2に配置されたアーティキュレートシリンダ8を伸縮させる。
【0037】
作業機操作レバー56は、キャブ5内に設けられる。作業機操作レバー56は、リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17の操作量を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいて、油圧ポンプ64、リフトシリンダ制御弁65およびバケットシリンダ制御弁81を制御する。油圧ポンプ64を駆動し、リフトシリンダ制御弁65およびバケットシリンダ制御弁81を制御することによって、リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17に作動油が供給され、作業機3が駆動する。
【0038】
自動走行ダンパスイッチ57は、キャブ5内に設けられる。例えば、自動走行ダンパスイッチ57は、ディスプレイ上に表示されてもよいが、物理的なスイッチであってもよい。自動走行ダンパスイッチ57は、オン状態及びオフ状態のいずれかに切り替え可能である。自動走行ダンパスイッチ57は、自動走行ダンパスイッチ57の状態を示す操作信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、受信した操作信号に基づいて、自動走行ダンパ制御を作動状態又は非作動状態にする。自動走行ダンパ制御の作動状態では、後述するが、コントローラ26が自動で走行ダンパ部25の走行ダンパ機能をオン状態またはオフ状態にする。
【0039】
(IMU24)
IMU24は、慣性計測ユニットである。IMU24は、図1に示すように、リアフレーム12に配置されている。IMU24は、加速度センサとジャイロセンサを有する。IMU24は、図3に示すX軸、Y軸、およびZ軸の加速度と角速度を計測する。ここでX軸は、本体1の前方向を向き、Y軸は、本体1の右方向を向き、Z軸は、本体1の下方向を向く。また、X軸、Y軸、およびZ軸の加速度と角速度からピッチ角pθ、ヨー角yθ、およびロール角rθが算出される。
【0040】
IMU24は、X軸、Y軸、およびZ軸の加速度と角速度と、ピッチ角pθ、ヨー角yθ、およびロール角rθの情報を含む検出信号をコントローラ26に出力する。
【0041】
(走行ダンパ部25)
走行ダンパ部25は、油圧回路61、開閉弁62、アキュムレータ63、油圧ポンプ64、リフトシリンダ制御弁65及び作動油タンク66を有する。
【0042】
油圧回路61は、一対のリフトシリンダ16、開閉弁62及びリフトシリンダ制御弁65に接続される。
【0043】
開閉弁62は、各リフトシリンダ16及びアキュムレータ63の間に配置される。開閉弁62は、開位置X(開状態)及び閉位置Y(閉状態)のいずれかに切り替え可能な2位置切換え弁である。開閉弁62の位置は、コントローラ26によって制御される。
【0044】
開閉弁62が開位置Xに位置する場合、開閉弁62は、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63とを連通させる。これにより、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63とが接続され、ホイールローダ10の走行ダンパ機能がオン状態(第1状態の一例)になる。開閉弁62が閉位置Yに位置する場合、開閉弁62は、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63とを遮断する。これにより、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63との接続が切断され、ホイールローダ10の走行ダンパ機能はオフ状態(第2状態の一例)になる。
【0045】
アキュムレータ63は、開閉弁62を介して油圧回路61に接続される。アキュムレータ63は、開閉弁62が開位置Xに位置する場合、油圧回路61を介して各リフトシリンダ16に接続される。この場合、アキュムレータ63は、各リフトシリンダ16の振動を低減させるダンパ機構として機能する。
【0046】
アキュムレータ63は、開閉弁62が閉位置Yに位置する場合、リフトシリンダ16との接続が開閉弁62によって切断される。この場合、アキュムレータ63は、各リフトシリンダ16の振動を低減させるダンパ機構として機能しない。
【0047】
油圧ポンプ64は、エンジン31によって駆動される。油圧ポンプ64は、リフトシリンダ制御弁65及び油圧回路61を介して、作動油タンク66に貯留された作動油を各リフトシリンダ16に供給する。また、油圧ポンプ64は、バケットシリンダ制御弁81を介して作動油タンク66に貯留された作動油をバケットシリンダ17に供給する。
【0048】
(コントローラ26)
コントローラ26は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、記憶装置に記憶されているプログラムに従ってホイールローダ10の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読取り可能な記録媒体の一例である。
【0049】
図4は、コントローラ26の構成を示すブロック図である。ただし、図4では、走行部21に関する基本的なシステム構成は省略されている。
【0050】
コントローラ26は、走行判定部71と、算出部72と、振動判定部73と、走行ダンパ制御部74と、を有する。プロセッサが記憶装置に記憶されているプログラムを実行することで、走行判定部71と、算出部72と、振動判定部73、および走行ダンパ制御部74の機能を実現する。
【0051】
走行判定部71は、車速センサ36から受信する検出信号に基づいて走行中であるか否かを判定する。走行判定部71は、車速が所定閾値より大きい場合に走行中であると判定し、車速が所定閾値以下の場合には、走行中ではないと判定する。
【0052】
算出部72は、IMU24から入力された検出信号から、Z軸方向の加速度の振動の周波数と振幅を算出する。Z軸方向の加速度は、上下方向の加速度ともいえる。図5は、Z軸方向の加速度の時間変化を示すグラフである。縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。算出部72は、検出信号から図5に示す振幅Aと周波数fを算出する。周波数fは、図5における周期Tの逆数である。
【0053】
振動判定部73は、算出された振幅および周波数に基づいて、ホイールローダ10に振動が発生しているか否かを判定する。図6は、ホイールローダ10の振動状態を示す状態遷移図である。振動判定部73は、条件(1)を満たす場合にホイールローダ10が振動なし状態M1から振動中状態M2に遷移したと判定する。条件(1)を満たす場合とは、振幅Aが所定閾値よりも大きく且つ周波数fが所定閾値よりも大きい場合である。すなわち、振動判定部73は、加速度の振幅Aが所定閾値よりも大きく且つ加速度の周波数fが所定閾値よりも大きい場合に本体1に振動が発生していると判断する。図5には、振幅Aの所定閾値として+A0と-A0が示されている。振幅Aが所定閾値よりも大きいとは、例えば、図5に示すように、上向きの振幅が+A0よりも大きく、下向きの振幅が-A0よりも小さいことである。条件(1)における振幅が所定閾値よりも大きいとする判定は、適宜設定すればよい。例えば、上向きの振幅が+A0よりも大きく、下向きの振幅が-A0よりも小さいことが所定回数(若しくは所定時間)繰り返された場合に、振幅Aが所定閾値よりも大きいと判定されてもよい。上向きの振幅が+A0よりも大きいこと、および下向きの振幅が-A0よりも小さいことのいずれか一方が成立した場合に振幅Aが所定閾値よりも大きいと判定されてもよい。条件(1)における周波数が所定閾値よりも大きいとする判定についても、適宜設定すればよい。周期Tは、例えば、振幅が最大になった時刻と振幅が最小になった時刻から求めてもよいし、振幅が所定閾値を超えた時刻と所定閾値よりも小さくなった時刻から求めてもよい。この周期Tから求めた周波数fが、所定時間の間継続して所定閾値よりも大きい場合に、周波数fが所定閾値よりも大きいと判定してもよい。
【0054】
一方、振動判定部73は、条件(1)を満たさない場合、ホイールローダ10は振動なし状態M1を維持し、振動が発生していないと判定する。すなわち、振動判定部73は、振幅Aが所定閾値以下、または周波数fが所定閾値以下の場合にホイールローダ10に振動が発生していないと判定する。
【0055】
また、振動判定部73は、本体1が振動中状態M2であると判定した後に、条件(2)を満たした場合、本体1の状態が振動中状態M2から振動なし状態M1に遷移し、振動が発生しなくなったと判定する。条件(2)を満たす場合とは、条件(1)を満たさない状態が所定閾値時間以上継続する場合である。
【0056】
走行ダンパ制御部74は、振動判定部73によってホイールローダ10が振動中状態M2である判定された場合、開閉弁62を開位置Xに切り替え、ホイールローダ10の走行ダンパ機能をオン状態にする。走行ダンパ制御部74は、振動判定部73によってホイールローダ10が振動なし状態M1であると判定された場合、開閉弁62を閉位置Yに切り替え、ホイールローダ10の走行ダンパ機能をオフ状態にする。
【0057】
なお、上記では振動の判定にZ軸方向の加速度が用いられるが、IMU24から入力されるピッチ角pθが用いられてもよい。算出部72は、ピッチ角pθの振動の周波数と振幅を算出する。振動判定部73は、算出したピッチ角pθの振幅が所定閾値よりも大きく且つピッチ角pθの周波数が所定閾値よりも大きい場合、振動が発生していると判断する。
【0058】
また、上下方向の加速度とピッチ角の双方について判定を行い、いずれか一方において条件(1)を満たした場合には、振動が発生していると判定されてもよい。すなわち、加速度の振幅Aが所定閾値A0よりも大きく且つ加速度の周波数fが所定閾値よりも大きい場合、または、ピッチ角pθの振幅が所定閾値よりも大きく且つピッチ角pθの周波数が所定閾値よりも大きい場合に、振動判定部73は振動が発生していると判定する。上下方向の加速度またはピッチ角が、振動に関する情報の一例に対応する。
【0059】
(制御動作)
次に、本実施形態のホイールローダ10の制御動作について説明する。図7は、本実施形態のホイールローダ10の制御動作を示すフロー図である。
【0060】
はじめに、ステップS10において、コントローラ26は、自動走行ダンパスイッチ57がオン状態であるか否かを判定する。ステップS10において自動走行ダンパスイッチ57がオフ状態の場合、制御は終了する。ステップS10において、自動走行ダンパスイッチ57がオン状態の場合、制御は、ステップS11に進む。
【0061】
次に、ステップS11において、コントローラ26の走行判定部71は、車速センサ36から受信する検出信号に基づいて走行中であるか否かを判定する。
【0062】
ステップS11において、走行中であると判定された場合、ステップS12において、コントローラ26の算出部72は、IMU24から検出信号を取得する。ステップS12は、振動情報取得ステップの一例に対応する。
【0063】
次に、ステップS13において、コントローラ26の算出部72は、IMU24からの検出信号に含まれる上下の加速度の振動の周波数と振幅を算出する。なお、上述したように、ピッチ角pθの振動の周波数と振幅を算出してもよい。
【0064】
次に、ステップS14において、コントローラ26の振動判定部73は、条件(1)(振幅が所定閾値よりも大きく且つ周波数が所定閾値よりも大きい)が成立しているか否かを判定する。ステップS14において、条件(1)が成立する場合、コントローラ26の振動判定部73は、本体1が振動中状態M2であると判定する。
【0065】
次に、ステップS15において、コントローラ26の走行ダンパ制御部74は、開閉弁62を開位置Xに設定し、ホイールローダ10の走行ダンパ機能をオン状態にする。ステップS15は、減衰制御ステップの一例に対応する。
【0066】
次に、ステップS16において、コントローラ26の振動判定部73は、条件(2)(条件(1)が所定時間以上継続して未成立)が成立しているか否かを判定する。条件(2)が成立する場合、コントローラ26の振動判定部73は、本体1が振動中状態M2から振動なし状態M1に遷移したと判定する。
【0067】
次に、ステップS16において条件(2)が成立すると判定された場合、ステップS17において、コントローラ26の走行ダンパ制御部74は、開閉弁62を閉位置Yに切り替え、ホイールローダ10の走行ダンパ機能をオフ状態とし、制御が終了する。ステップS17は、減衰制御ステップの一例に対応する。
【0068】
なお、ステップS11において、走行中ではないと判定された場合、制御はステップS16に進み、コントローラ26の走行ダンパ制御部74は、開閉弁62を閉位置Yに設定し、ホイールローダ10の走行ダンパ機能をオフ状態とし、制御が終了する。
【0069】
また、ステップS14において、条件(1)が成立していない場合、ホイールローダ10は振動なし状態M1であると判定され、コントローラ26の走行ダンパ制御部74は、開閉弁62を閉位置Yに設定し、ホイールローダ10の走行ダンパ機能をオフ状態とし、制御が終了する。
【0070】
また、ステップS16において、条件(2)が成立しない場合、ホイールローダ10は振動中状態M2が維持されていると判定し、制御を終了する。
【0071】
上記ステップS15において、開閉弁62が予め開位置Xである場合には、コントローラ26は開閉弁62を動作しなくてもよい。また、上記ステップS17で開閉弁62が予め閉位置Yである場合には、コントローラ26は開閉弁62を動作させなくてもよい。
【0072】
(特徴等)
(1)
本実施形態のホイールローダ10は、本体1と、作業機3と、走行ダンパ部25と、IMU24と、コントローラ26と、を備える。本体1は、走行可能である。作業機3は、本体1に取り付けられている。走行ダンパ部25は、作業機3の振動を減衰可能である。IMU24は、本体1の振動に関する情報を検出する。コントローラ26は、IMU24が検出した振動に関する情報に基づいて、走行ダンパ部25を制御する。
【0073】
これにより、IMU24が検出した振動に関する情報に基づいて、走行ダンパ部25の制御を自動で行うことができる。そのため、ホイールローダ10の走行時の挙動を容易に安定化することができる。
【0074】
(2)
本実施形態のホイールローダ10では、コントローラ26は、走行ダンパ部25を、作業機3の振動を減衰する機能が発揮される走行ダンパ機能オン状態および、作業機3の振動を減衰する機能が発揮されない走行ダンパ機能オフ状態との間で切り替え可能である。コントローラ26は、振動に関する情報に基づいて本体1が振動していると判断した場合、走行ダンパ部25を走行ダンパ機能オン状態に切り替える。
【0075】
これにより、IMU24が検出した振動に関する情報に基づいて本体1が振動中状態M2であると判定した場合、自動で走行ダンパ部25を走行ダンパ機能オン状態にすることができる。
【0076】
(3)
本実施形態のホイールローダ10は、作業機3を駆動する一対のリフトシリンダ16を更に備える。走行ダンパ部25は、開閉弁62と、アキュムレータ63と、を有する。アキュムレータ63は、開閉弁62を介してリフトシリンダ16に接続される。開閉弁62が開位置Xの場合に、走行ダンパ部25は走行ダンパ機能オン状態となり、開閉弁62が閉位置Yの場合に、走行ダンパ部25は走行ダンパ機能オフ状態となる。コントローラ26は、振動に関する情報に基づいて、開閉弁62を制御する。
【0077】
これにより、作業機3の振動を減衰する機能を発揮する走行ダンパ機能オン状態と、作業機3の振動を減衰する機能を発揮しない走行ダンパ機能オフ状態の間で走行ダンパ部25の状態を切り替えることができる。
【0078】
(4)
本実施形態のホイールローダ10では、振動に関する情報は、本体1に生じる加速度である。コントローラ26は、加速度の振幅が所定閾値より大きいこと、および加速度の周波数が所定閾値より大きいことを満たす場合に本体1が振動していると判定する。
【0079】
このように本体1に生じる加速度を検出することによって本体1が振動しているか否かを判定することができる。
【0080】
(5)
本実施形態のホイールローダ10では、振動に関する情報は、本体1に生じるピッチ角である。コントローラ26は、ピッチ角の振幅が所定閾値より大きいこと、およびピッチ角の周波数が所定閾値より大きいことを満たす場合に本体1が振動していると判定する。
【0081】
このように本体1に生じるピッチ角を検出することによって本体1が振動しているか否かを判定することができる。
【0082】
(6)
本実施形態のホイールローダ10の制御方法は、走行可能な本体1と、本体1に取り付けられた作業機3と、を備えた作業機械の制御方法であって、ステップS12とステップS14とを備える。ステップS12は、本体1の振動に関する情報を取得する。ステップS14は、振動に関する情報に基づいて、作業機3の振動を減衰する走行ダンパ部25を制御する。
【0083】
これにより、ステップS12において取得した振動に関する情報に基づいて、走行ダンパ部25の制御を自動で行うことができる。そのため、ホイールローダ10の走行時の挙動を容易に安定化することができる。
【0084】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0085】
(A)
上記実施形態では、ピッチ角pθは、IMU24が算出してコントローラ26に入力されているが、IMU24から入力されるX軸、Y軸、およびZ軸の加速度と角速度からコントローラ26がピッチ角pθを算出してもよい。
【0086】
(B)
上記実施形態では、走行中であるか否かの判定を、車速センサ36の検出信号に基づいて行っているが、これに限らなくてもよい。例えばアクセル51から入力される操作信号またはFNRレバー52の操作信号に基づいて走行中であるか否かの判定が行われてもよい。
【0087】
(C)
上記実施形態では、コントローラ26は、加速度の振幅が所定閾値より大きいこと、および加速度の周波数が所定閾値より大きいことを満たす場合に本体1が振動中状態M2であると判定しているが、これに限らなくてもよい。例えば、コントローラ26は、加速度の振幅が所定閾値より大きいこと、および加速度の周波数が所定閾値より大きいことの少なくとも一方を満たす場合に本体1が振動中状態M2であると判定してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、コントローラ26は、ピッチ角の振幅が所定閾値より大きいこと、およびピッチ角の周波数が所定閾値より大きいことを満たす場合に本体1が振動中状態M2であると判定しているが、これに限らなくてもよい。例えば、コントローラ26は、ピッチ角の振幅が所定閾値より大きいこと、およびピッチ角の周波数が所定閾値より大きいことの少なくとも一方を満たす場合に本体1が振動中状態M2であると判定してもよい。
【0089】
(D)
上記実施形態では、ホイールローダ10にIMU24が設けられているが、IMUに限らなくてもよい。例えば、上下方向の加速度を用いて振動の判定を行う場合には、IMUに代えて加速度センサが設けられていてもよい。また、ピッチ角を用いて振動の判定を行う場合には、IMUに代えて角度センサが設けられていてもよい。
【0090】
(E)
上記実施形態では、IMU24はリアフレーム12に設けられているが、これに限らなくてもよい。例えば、IMU24は、フロントフレーム11に設けられていてもよいが、作業機3の動作による影響が少ない場所が好ましい。
【0091】
(F)
上記実施形態において、ホイールローダ10は、一対のリフトシリンダ16を備えることとしたが、これに限られない。ホイールローダ10は、リフトシリンダ16を1つ以上備えていればよい。
【0092】
(G)
上記実施形態では、作業機械の一例としてホイールローダ10について説明したが、作業機械としては、ホイールローダのほか、車輪を備える油圧ショベル及びバックホーローダーなどが挙げられる。
【0093】
(H)
上記実施形態において、ホイールローダ10は、変速機としてHST32を備えることとしたが、これに限られない。変速機としては、例えば、HMT(Hydro Mechanical Transmission)、T/C(トルクコンバータ)などを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示の作業機械および作業機械の制御方法によれば、容易に走行時の挙動を安定化することが可能な効果を有し、例えばホイールローダ等に有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 :本体
3 :作業機
10 :ホイールローダ
24 :IMU
25 :走行ダンパ部
26 :コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7