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特開2024-131604半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131604
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 51/20 20230101AFI20240920BHJP
   H10B 51/00 20230101ALI20240920BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H10B51/20
H10B51/00
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041972
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 究
(72)【発明者】
【氏名】浜井 貴将
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP43
5F083FR00
5F083FR05
5F083GA11
5F083JA06
5F083JA12
5F083JA39
5F083KA01
5F083PR21
5F101BA62
5F101BB02
5F101BB08
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BF01
5F101BF02
5F101BH02
(57)【要約】
【課題】一つの実施形態は、動作信頼性を向上できる半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一つの実施形態によれば、積層体と電極膜と複数の強誘電体膜とを有する半導体記憶装置が提供される。積層体は、複数の電極層が絶縁層を介して積層される。電極膜は、積層体内を積層方向に延びる。複数の強誘電体膜は、それぞれが電極層と電極膜との間に配される。積層体における電極層と電極膜とが強誘電体膜を介して交差する位置にメモリセルが設けられる。交差する位置において、強誘電体膜の積層方向の厚さは、電極層の積層方向の厚さより厚い。強誘電体膜の電極層側の側面は、積層方向に平坦である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極層が絶縁層を介して積層された積層体と、
前記積層体内を積層方向に延びる電極膜と、
それぞれが前記電極層と前記電極膜との間に配される複数の強誘電体膜と、
を備え、
前記積層体における前記電極層と前記電極膜とが前記強誘電体膜を介して交差する位置にメモリセルが設けられ、
前記交差する位置において、前記強誘電体膜の前記積層方向の厚さは、前記電極層の前記積層方向の厚さより厚い
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記強誘電体膜の前記電極層側の側面は、前記積層方向に平坦である
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記強誘電体膜の前記電極膜側の側面は、前記積層方向に平坦である
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記電極膜は、半導体膜を含み、
前記電極層は、導電層を含む
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記電極膜は、導電膜を含み、
前記電極層は、半導体層を含む
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記強誘電体膜は、初期の状態で反強誘電性を示す
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記強誘電体膜は、複数の結晶を含み、
前記複数の結晶のそれぞれは、分極軸を有し、
前記強誘電体膜は、初期の状態で前記電極層から前記電極膜へ向かう方向に前記分極軸が交差する結晶の割合が前記方向に前記分極軸が沿う結晶の割合より多い
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記複数の結晶のそれぞれは、
第1の結晶軸と、
前記第1の結晶軸より短い第2の結晶軸と、
前記第1の結晶軸より短く前記第2の結晶軸より長く前記分極軸として機能する第3の結晶軸と、
を有する
請求項7に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記強誘電体膜は、ハフニウム酸化物を主成分とする材料で形成される
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記強誘電体膜は、シリコン(Si)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を含む群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む材料で形成される
請求項9に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記電極膜の外側面は、前記複数の強誘電体膜に対応する複数の凸部を有する
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記電極膜の外側面は、前記複数の強誘電体膜に対応する複数の凹部を有する
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
酸化物を含む絶縁層を介して複数の半導体層を積層して積層体を形成することと、
前記積層体内を積層方向に貫通するホールを形成することと、
前記ホールに露出された前記複数の半導体層のそれぞれの端面を後退させ、前記ホールの内側面に複数の第1の凹部を形成することと、
前記ホールの内側面の前記複数の第1の凹部に強誘電体を埋め込み、前記複数の半導体層に対応する位置に複数の強誘電体膜を形成することと、
前記複数の半導体層のそれぞれにおける前記絶縁層に接する部分を酸化して、前記絶縁層を厚膜化し、前記半導体層を薄膜化することと、
を含む半導体記憶装置の製造方法。
【請求項14】
前記ホールの側面及び底面に半導体を堆積し、前記半導体の内側に絶縁物を堆積し、前記積層体を前記積層方向に貫通する電極膜及びコア部材を形成することをさらに備え、
前記酸化は、
前記電極膜における前記コア部材に接する部分を酸化して、前記コア部材を広径化し、前記電極膜を薄膜化することを含む
請求項13に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項15】
前記複数の強誘電体膜の形成の後、電極材の埋め込みの前に、前記ホールに露出された複数の絶縁層のそれぞれの端面を後退させ、前記ホールの内側面に複数の第2の凹部を形成することをさらに含む
請求項13に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体膜を用いたメモリセルが設けられる半導体記憶装置では、強誘電体膜へ印加する電界の向きに応じて、メモリセルへの情報の書き込み・消去が行われる。半導体記憶装置では、書き込み・消去のサイクル数が増えると書き込み・消去の特性が劣化し得る。半導体記憶装置では、書き込み・消去を含む動作の信頼性を向上することが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Maximilian Lederer,* Ricardo Olivo, David Lehninger, Sukhrob Abdulazhanov, Thomas Kampfe, Sven Kirbach, Clemens Mart, Konrad Seidel, and Lukas M. Eng “On the Origin of Wake-Up and Antiferroelectric-Like Behavior in Ferroelectric Hafnium Oxide”, Phys. Status Solidi RRL 2021, 2100086
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、動作信頼性を向上できる半導体記憶装置、及び半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、積層体と電極膜と複数の強誘電体膜とを有する半導体記憶装置が提供される。積層体は、複数の電極層が絶縁層を介して積層される。電極膜は、積層体内を積層方向に延びる。複数の強誘電体膜は、それぞれが電極層と電極膜との間に配される。積層体における電極層と電極膜とが強誘電体膜を介して交差する位置にメモリセルが設けられる。交差する位置において、強誘電体膜の積層方向の厚さは、電極層の積層方向の厚さより厚い。強誘電体膜の電極層側の側面は、積層方向に平坦である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態にかかる半導体記憶装置の構成を示す斜視図。
図2】第1の実施形態にかかる半導体記憶装置の構成を示すブロック図。
図3】第1の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す回路図。
図4】第1の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す断面図。
図5】第1の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す平面図。
図6】第1の実施形態における強誘電体膜の結晶軸の方向を示す斜視図。
図7】第1の実施形態におけるメモリセルの動作特定を示す図。
図8】第1の実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法を示す断面図。
図9】第1の実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法を示す断面図。
図10】第1の実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法を示す斜視図。
図11】第1の実施形態の変形例にかかる半導体記憶装置の製造方法を示す断面図。
図12】第2の実施形態にかかる半導体記憶装置の概略構成を示す斜視図。
図13】第2の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す断面図。
図14】第2の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す平面図。
図15】第3の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す断面図。
図16】第3の実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法を示す断面図。
図17】第3の実施形態における絶縁層リセス量を示す断面図。
図18】第3の実施形態における絶縁層リセス量とメモリセルの動作電圧との関係を示す図。
図19】第4の実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す断面図。
図20】第4の実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体記憶装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかる半導体記憶装置は、強誘電体膜を用いたメモリセルが設けられ、強誘電体膜へ印加する電界の向きに応じて、情報の書き込み・消去が行われるが、書き込み・消去を含む動作の信頼性を向上するための工夫が施される。
【0009】
半導体記憶装置1は、図1に示すように構成され得る。図1は、半導体記憶装置1の構成を示す斜視図である。
【0010】
半導体記憶装置1は、3次元的な半導体メモリであり、例えば、強誘電体メモリである。半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ2、ワード線WL、選択ゲート線SGD、選択ゲート線SGS、ビット線BL、及びソース線SLを有している。なお、以下では、ビット線BLの延在方向をY方向とし、メモリセルトランジスタの積層方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向とする。
【0011】
選択ゲート線SGSは、絶縁層7を介して基板SUBの上に積層される。図1の例では、選択ゲート線SGSは3層設けられる。ワード線WLは、最上層の選択ゲート線SGSの上に絶縁層7を介して積層される。図1の例では、ワード線WLはZ方向に沿って、絶縁層7と交互に複数層設けられる。選択ゲート線SGDは、最上層のワード線WLの上に絶縁層7を介して積層される。選択ゲート線SGS、ワード線WLおよび選択ゲート線SGDは、それぞれX方向及びY方向に延びる板状である。
【0012】
図1の例では、選択ゲート線SGD、ワード線WL、及び選択ゲート線SGSは、スリットSTによりY方向に分断され絶縁される。ソース線SLは、層間絶縁膜81を介して基板SUBの+Z側に配されている。スリットSTは、ソース線SLの+Z側に設けられ、X方向及びZ方向に延在する。
【0013】
選択ゲート線SGDは、例えば、分断膜SHEによりY方向に分断される。図1の例では、Y方向に分割された選択ゲート線SGD0と選択ゲート線SGD1が示されている。分断膜SHEは、ワード線WLの上方(+Z側)に設けられ、X方向及びZ方向に延在する。このため、ワード線WL上には、選択ゲート線SGD0と選択ゲート線SGD1とがY方向に並んで配置される。図1の例では、選択ゲート線SGD0および選択ゲート線SGD1は、それぞれ、3層設けられる。
【0014】
基板SUBは、例えば、シリコン基板である。選択ゲート線SGS、ワード線WL、選択ゲート線SGDは、例えば、タングステン(W)などの金属を主成分とする材料で形成され得る。絶縁層7および層間絶縁膜81は、例えば、酸化シリコンなどの絶縁体で形成され得る。
【0015】
半導体記憶装置1は、複数の柱状体4をさらに備える。柱状体4は、選択ゲート線SGS、ワード線WLおよび選択ゲート線SGDを貫いて、それらの積層方向であるZ方向に延びる。選択ゲート線SGDの上方には、複数のビット線BLが設けられる。
【0016】
柱状体4は、それぞれコンタクトプラグ31を介してビット線BLに電気的に接続される。例えば、選択ゲート線SGD0を共有する柱状体4のうちの1つと、選択ゲート線SGD1を共有する柱状体4のうちの1つは、1つのビット線BLに電気的に接続される。柱状体4は、柱状のチャネル領域を含む。
【0017】
なお、図1では、図示の簡略化のために、選択ゲート線SGDとビット線BLとの間に設けられる層間絶縁膜を省略している。
【0018】
半導体記憶装置1では、選択ゲート線SGD、ワード線WL、及び選択ゲート線SGSが、それぞれ、導電層で構成される。ソース線SLの+Z側には、導電層と絶縁層とが交互に積層された積層体SSTが構成される。柱状体4の柱状のチャネル領域は、半導体膜で構成される。積層体SSTが柱状体4で貫通されて3次元的なメモリセルの配列(メモリセルアレイ)が構成される。
【0019】
すなわち、半導体記憶装置1において、ワード線WLと柱状体4とが交差する部分がメモリセルとして機能するように構成され、複数のメモリセルが3次元的に配列されたメモリセルアレイ2が構成される。また、選択ゲート線SGSと柱状体4とが交差する部分がソース側の選択ゲートとして機能し、選択ゲート線SGD0,SGD1と柱状体4とが交差する部分がドレイン側の選択ゲートとして機能する。半導体記憶装置1では、積層体SSTにおけるワード線WLの積層数を増やすことによって、より微細なパターニング技術を利用しなくても、記憶容量を増加することが可能である。
【0020】
図2は、半導体記憶装置1の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ2、周辺回路100、及びインタフェース200を有している。周辺回路100は、WL駆動回路110、SGS駆動回路120、SGD駆動回路130、SL駆動回路140、及びセンスアンプ回路150を含む。
【0021】
WL駆動回路110は、ワード線WLへの印加電圧を制御する回路であり、SGS駆動回路120は、選択ゲート線SGSに印加する電圧を制御する回路である。SGD駆動回路130は、選択ゲート線SGDに印加する電圧を制御する回路であり、SL駆動回路140は、ソース線SLに印加する電圧を制御する回路である。センスアンプ回路150は、ビット線BLに印加する電圧を制御する回路であるとともに、選択されたメモリセルからの信号に応じて読み出したデータを判定する回路である。
【0022】
周辺回路100は、インタフェース200経由で外部(例えば、半導体記憶装置1が適用されるメモリシステムのメモリコントローラ)から入力された指示に基づいて、半導体記憶装置1の動作を制御する。
【0023】
次に、メモリセルアレイ2の回路構成について図3を用いて説明する。図3は、メモリセルアレイ2の構成を示す回路図である。
【0024】
メモリセルアレイ2は、各々が複数のメモリセルトランジスタMTの集合である複数のブロックBLKを有する。以下では、メモリセルトランジスタMTを単にメモリセルMTと呼ぶことにする。
【0025】
各ブロックBLKは、ワード線WLおよびビット線BLに関連付けられたメモリセルMTの集合である複数のストリングユニットSU0,SU1,SU2,SU3を有する。各ブロックBLKは、例えば、64本のワード線WL0~WL63及びk+1本のビット線BL0~BLkに関連付けられる。kは、任意の2以上の整数である。
【0026】
各ストリングユニットSU0~SU3は、メモリセルMTが直列接続された複数のメモリストリングMSTを有する。なお、図3では、4つのストリングユニットSU0~SU3が例示されるが、ストリングユニットSU0~SU3の数は2以下でもよいし、4以上でもよい。ストリングユニットSU内のメモリストリングMSTの数は任意である。
【0027】
複数のストリングユニットSU0,SU1,SU2,SU3は、複数の選択ゲート線SGD0,SGD1,SGD2,SGD3に対応しているとともに選択ゲート線SGSを共有しており、ブロックBLKにおける複数の駆動単位として機能する。各ストリングユニットSUは、その対応する選択ゲート線SGDと選択ゲート線SGSとで駆動され得る。また、各ストリングユニットSUは、複数のメモリストリングMSTを含む。
【0028】
各メモリストリングMSTは、ワード線WLに交差する位置にメモリセルMTを有する。例えば、各メモリストリングMSTは、64個のメモリセルMT(MT0~MT63)および選択トランジスタDGT,SGTを含んでいる。
【0029】
メモリセルMTは、電極層と電極膜との間に強誘電体膜を有し、電極層及び電極膜を介して強誘電体膜へ印加される電界の向きに応じて、情報の書き込み・消去が行われ得る。電極層は、ワード線WLに対応し、電極膜は、ビット線BLにストリング状に接続されたチャネル領域に対応する。
【0030】
64個のメモリセルMT(MT0~MT63)は、選択トランジスタDGTのソースと選択トランジスタSGTのドレインとの間に直列接続されている。なお、メモリストリングMST内のメモリセルMTの個数は64個に限定されない。
【0031】
各ストリングユニットSU0~SU3における選択トランジスタDGTのゲートは、それぞれ選択ゲート線SGD0~SGD3に接続される。これに対して各ストリングユニットSUにおける選択トランジスタSGTのゲートは、例えば選択ゲート線SGSに共通接続される。
【0032】
各ストリングユニットSU内にある各メモリストリングMSTの選択トランジスタDGTのドレインは、それぞれ異なるビット線BL0~BLkに接続される。また、ビット線BL0~BLkは、複数のブロックBLK間で各ストリングユニットSU内にある1つのメモリストリングMSTを共通に接続する。更に、各選択トランジスタSGTのソースは、ソース線SLに共通に接続されている。
【0033】
つまりストリングユニットSUは、異なるビット線BL0~BLkに接続され、且つ同一の選択ゲート線SGDに接続されたメモリストリングMSTの集合である。また各ブロックBLKは、ワード線WLを共通にする複数のストリングユニットSU0~SU3の集合である。そしてメモリセルアレイ2は、ビット線BL0~BLkを共通にする複数のブロックBLKの集合である。
【0034】
なお、ワード線WLを共有するメモリセルMTの群を「メモリセルグループMCG」と呼ぶことにすると、メモリセルグループMCGは、ワード線WLを介して一括して所定の電圧(例えば、書き込み電圧、読み出し電圧)を印加可能なメモリセルMTの集合の最小単位である。
【0035】
次に、メモリセルアレイ2の断面構成について図4を用いて説明する。図4は、メモリセルアレイ2の構成を示す断面図である。
【0036】
半導体記憶装置1において、基板SUBの+Z側には、層間絶縁膜81を介して導電層3が配される。導電層3は、不純物を含む半導体(例えば、シリコン)を主成分とする材料または導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。導電層3は、XY方向に板状に延び、ソース線SL(図1参照)として機能する。導電層3の+Z側には、複数の柱状体4が配される。図4では、複数の柱状体4のうちの1つが例示される。複数の柱状体4は、XY方向に配列される。各柱状体4は、積層体SST(図1参照)内をZ方向に延びる。
【0037】
各柱状体4は、Z方向に沿った中心軸CAを有する概ね柱形状を有し、例えば略円柱形状を有する。各柱状体4は、+Z側端の径に比べて-Z側端の径が狭いテーパ形状を有してもよい。各柱状体4は、+Z側端の径に比べて-Z側端の径が狭く且つ+Z側端及び-Z側端の間の所定のZ位置で径が広がったボーイング形状を有してもよい。図4では、簡略化のため、各柱状体4の形状として、略円柱形状が例示される。
【0038】
各柱状体4は、その外側面に複数の凸部を有する。複数の凸部は、Z方向に離間しながら配列される。各凸部は、中心軸CAを中心とする略中空円盤形状を有する。
【0039】
柱状体4は、図4及び図5に示すように、中心軸CA側から順にコア部材CR、半導体膜(電極膜)CH、強誘電体膜FEを有する。図5は、メモリセルMTの構成を示すXY方向の拡大断面図であり、図4をA-A線に沿って切った場合のXY断面図を拡大したものである。
【0040】
コア部材CRは、柱状体4の中心軸CA近傍に配され柱状体4の中心軸CAに沿って延びた略円柱形状を含む。コア部材CRは、絶縁物(例えば、シリコン酸化物などの半導体酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。
【0041】
半導体膜CHは、コア部材CRを外側から囲むように配され柱状体4の中心軸CAに沿って延びた略円筒状の形状を含む。半導体膜CHは、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。
【0042】
複数の強誘電体膜FEは、柱状体4の外側面に配され、外側面における複数の凸部を形成する。複数の強誘電体膜FEは、互いにZ方向に離間しながら、中心軸CAに沿ってZ方向に配列される。各強誘電体膜FEは、導電膜6に対応したZ位置に配される。各強誘電体膜FEは、半導体膜CHを外側から囲むように配され中心軸CAを内側に含む略中空円盤形状を含む。強誘電体膜FEの内側面8iは、中心軸CAを向く。強誘電体膜FEの外側面8は、中心軸CAと反対側を向く。
【0043】
強誘電体膜FEは、強誘電体を主成分とする材料で形成され得る。強誘電体膜FEは、例えば、ハフニウム酸化物(HfO)を主成分とする材料で形成され得る。強誘電体膜FEは、シリコン(Si)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を含む群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む材料で形成されてもよい。
【0044】
柱状体4の半導体膜CHは、-Z側でソース線SLとしての導電層3に接続され、+Z側でコンタクトプラグ31を介してビット線BLとして機能する導電層9に接続される。すなわち、半導体膜CHは、メモリストリングMSTにおけるチャネル領域(アクティブ領域)を含む。
【0045】
積層体SSTでは、導電層(電極層)6と絶縁層7とが交互に繰り返し積層される。各導電層6は、XY方向に板状に延びる。各導電層6は、導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。各絶縁層7は、XY方向に板状に延びる。各絶縁層7は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物などの半導体酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。
【0046】
なお、図示しないが、柱状体4は、半導体膜CH及び強誘電体膜FE間に絶縁膜が介在する構造であってもよい。また、各導電層6は、+Z側の面、-Z側の面、及び柱状体4に対向する面が絶縁膜で覆われていてもよい。
【0047】
積層体SSTにおいて、Z方向に互いに離間して配される複数の導電層6のうち、最も-Z側の導電層6は、選択ゲート線SGSとして機能し、最も+Z側の導電層6は、選択ゲート線SGDとして機能し、他の導電層6は、ワード線WL0~WL63として機能する。図4では、ワード線WL2~WL4として機能する導電層6が例示される。
【0048】
図示しないが、柱状体4は、選択ゲート線SGSの導電層6と交差する位置において、部分的に絶縁膜が配されていてもよく、選択ゲート線SGDの導電層6と交差する位置において、部分的に絶縁膜が配されていてもよい。
【0049】
選択ゲート線SGSの導電層6が半導体膜CHと交差する位置には、選択トランジスタSGT(図3参照)が形成される。選択ゲート線SGSの導電層6と半導体膜CHとの間に介在する絶縁膜がゲート絶縁膜として機能する。ワード線WL0の導電層6が半導体膜CH及び電荷蓄積膜CTと交差する位置には、メモリセルMT0(図3参照)が形成される。ワード線WL1の導電層6が半導体膜CHと交差する位置には、メモリセルMT1が形成される。ワード線WL2の導電層6が半導体膜CHと交差する位置には、メモリセルMT2が形成される。ワード線WL3の導電層6が半導体膜CHと交差する位置には、メモリセルMT3が形成される。ワード線WL4の導電層6が半導体膜CHと交差する位置には、メモリセルMT4が形成される。選択ゲート線SGDの導電層6が半導体膜CHと交差する位置には、選択トランジスタDGT(図3参照)が形成される。選択ゲート線SGDの導電層6と半導体膜CHとの間に介在する絶縁膜がゲート絶縁膜として機能する。
【0050】
ここで、各強誘電体膜FEは、略中空円盤形状を含み、電圧Eが半導体膜CHから導電層6へ向かう方向、又は、導電層6から半導体膜CHへ向かう方向に印加される。強誘電体膜FEの内側面8iと外側面8とに分極電荷が発生し得る。すなわち、電圧Eの印加方向は、XY平面に沿った方向であり、略XY平面内における中心軸CAからの放射方向又は放射方向の反対方向となる。図4に例示する中心軸CAを通るYZ断面では、Y方向に沿った方向である。
【0051】
各強誘電体膜FEは、多結晶の形態であってもよい。強誘電体膜FEでは、強誘電性を示す結晶と反強誘電性を示す結晶とが混在し得る。例えば、強誘電体膜FEでは、それぞれが直方晶である複数の結晶を含む。各結晶は、3つの結晶軸(a軸、b軸、c軸)を有する。3つの結晶軸のうち、b軸は、a軸より短い。c軸は、a軸より短く、b軸より長い。c軸は、分極軸として機能する。
【0052】
結晶が強誘電性を示すか反強誘電性を示すかは、強誘電体膜FEへの電圧Eの印加方向と強誘電体膜FEにおけるその結晶の配向方向とに依存する。c軸が電圧Eの印加方向に交差するように結晶が配向していれば、その結晶は、反強誘電性を示す傾向にある。c軸が電圧Eの印加方向に沿うように(例えば、c軸が電圧Eの印加方向に平行になるように)結晶が配向していれば、その結晶は、強誘電性を示す傾向にある。
【0053】
例えば、図6(a)に示す結晶の配向方向では、c軸が電圧Eの印加方向に交差する。図6は、強誘電体膜FEの結晶軸の方向を示す斜視図である。この結晶は、反強誘電性を示す。a軸は積層方向(Z方向)に略平行であり、b軸は平面方向(XY方向)内で電圧Eの印加方向に略平行であり、c軸は平面方向(XY方向)内で電圧Eの印加方向に略垂直である。中心軸CAを通るYZ断面(図4参照)では、a軸がZ方向に略平行であり、b軸がY方向に略平行であり、c軸がX方向に略平行である。
【0054】
図6(b)に示す結晶の配向方向では、c軸が電圧Eの印加方向に交差する。この結晶は、反強誘電性を示す。c軸は積層方向(Z方向)に略平行であり、電圧Eの印加方向に略垂直である。b軸は平面方向(XY方向)内で電圧Eの印加方向に略平行であり、a軸は平面方向(XY方向)内で電圧Eの印加方向に略垂直である。中心軸CAを通るYZ断面(図4参照)では、a軸がX方向に略平行であり、b軸がY方向に略平行であり、c軸がZ方向に略平行である。
【0055】
一方、図6(c)に示す結晶の配向方向では、c軸が電圧Eの印加方向に沿う。この結晶は、強誘電性を示す。a軸は積層方向(Z方向)に略平行であり、c軸は平面方向(XY方向)内で電圧Eの印加方向に略平行であり、b軸は平面方向(XY方向)内で電圧Eの印加方向に略垂直である。中心軸CAを通るYZ断面(図4参照)では、a軸がZ方向に略平行であり、b軸がX方向に略平行であり、c軸がY方向に略平行である。
【0056】
各メモリセルMTの強誘電体膜FEにおいて、反強誘電性を示す結晶の割合が多いと、自発分極しにくく、分極電荷量を確保しにくいため、メモリセルMTに情報をライトしにくい。強誘電性を示す結晶の割合が多ければ、自発分極しやすく、分極電荷量を確保しやすいため、メモリセルMTに情報をライトしやすい。
【0057】
各メモリセルMTにおいて、導電層6がゲート電極として機能し、半導体膜CHがチャネル領域として機能し、強誘電体膜FEが導電層6への接触界面と半導体膜CHへの接触界面とにそれぞれ分極電荷を発生可能な2端子素子として機能する。
【0058】
例えば、半導体膜CHに対して導電層6が正となる電界(E>0)が強誘電体膜FEに印加されると、メモリセルMTにVthが負方向シフトとなるライトが起こる。メモリセルMTに“1”がライトされ得る。メモリセルMTは、自発分極しやすければ、“1”を保持し得る。例えば、メモリセルMTが図7(b)に実線で示すような強誘電性を示す場合、強誘電体膜FEへの電圧Eの印加を解除した状態で、強誘電体膜FEは、その側面8i近傍に正極性の分極電荷量ΔQ=Q(>0)を保持する。分極電荷量ΔQ=Qは、ビット値“1”に相当する。
【0059】
半導体膜CHに対して導電層6が負となる電界(E<0)が強誘電体膜FEに印加されると、メモリセルMTにVthが正方向シフトとなるイレーズが起こる。メモリセルMTから“1”がイレーズされ得る。メモリセルMTは、自発分極しやすければ、“0”を保持し得る。例えば、メモリセルMTが図7(b)に実線で示すような強誘電性を示す場合、強誘電体膜FEへの電圧Eの印加を解除した状態で、強誘電体膜FEは、その側面8i近傍に負極性の分極電荷量ΔQ=Q(<0)を保持する。分極電荷量ΔQ=Qは、ビット値“0”に相当する。
【0060】
各メモリセルMTは、初期の状態で強誘電体膜FEにおける強誘電性を示す結晶の割合が多いと、耐久性(Endurance特性)が低い傾向にある。逆に、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多いと、耐久性(Endurance特性)が高い傾向にある。
【0061】
例えば、図7(a)に、メモリセルMTのライト・イレーズサイクル数に伴う分極電荷量ΔQの変化を示す。図7(a)において、縦軸は、“1”がライトされ電圧Eの印加が解除された状態の分極電荷量ΔQを示し、分極電荷量ΔQが多いほどライト特性が良好であることを示す。横軸は、ライト・イレーズサイクル数を示す。
【0062】
図7(a)に一点鎖線で示すように、初期の状態で強誘電体膜FEにおける強誘電性を示す結晶の割合が多い場合、強誘電体膜FE全体として強誘電性を示す。メモリセルMTは、初期の状態から、図7(b)に実線で示すように、電圧Eの印加を解除した状態における分極電荷量ΔQを確保しやすく、メモリセルMTに情報をライトしやすい。この場合、メモリセルMTへのライト・イレーズが繰り返し行われ、ライト・イレーズサイクル数が所定数Nthに達すると、図7(a)に示すように、電圧E非印加時の分極電荷量ΔQが急激に減少し、メモリセルMTのライト特性が急激に劣化する。
【0063】
実施形態における強誘電体膜FEは、図7(a)に二点鎖線で示すように、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなるように構成される。強誘電体膜FE全体として反強誘電性を示す。メモリセルMTは、初期の状態で、図7(b)に点線で示すように、電圧E非印加時の分極電荷量ΔQが少なく、メモリセルMTに情報をライトしにくい。
【0064】
この状態から、メモリセルMTへのライト・イレーズが繰り返し行われると、強誘電体膜FEにおける強誘電性を示す結晶の割合が増加し、強誘電体膜FE全体として概ね強誘電性を示すようになる。メモリセルMTは、図7(b)に実線で示すように、強誘電体膜FEへの電圧印加を解除した状態で、強誘電体膜FEの分極電荷が残るようになる。ライト・イレーズ数の増加に伴い強誘電体膜FEが概ね反強誘電性を示す状態から概ね強誘電性を示す状態へ遷移することは、ウェイクアップと呼ばれる。ウェイクアップにより、メモリセルMTは、電圧Eの印加を解除した状態における分極電荷量ΔQを確保しやすく、メモリセルMTに情報をライトしやすくなる。
【0065】
図7(a)に二点鎖線で示されるように、メモリセルMTへのライト・イレーズが繰り返し行われ、ライト・イレーズサイクル数が所定数Nthに達しても、メモリセルMTのライト特性が比較的良好に維持され得る。
【0066】
ここで、半導体記憶装置1は、図1図4図5に示すように、積層体SSTにおける導電層6と半導体膜CHとが強誘電体膜FEを介して交差する位置にメモリセルMTが設けられる。交差する位置において、強誘電体膜FEの積層方向(Z方向)の厚さは、導電層6の積層方向の厚さより厚い。この構造は、後述のように、反強誘電性を示す結晶の割合を多くする結晶配向制御で製造されるものであり、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなることに適した構造である。初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなる構造は、初期の状態で強誘電体膜FEにおける強誘電性を示す結晶の割合が多い構造に比べて、ライト・イレーズサイクル数の増加に対するライト特性の劣化を抑制でき(図7(a)、図7(b)参照)、耐久性(Endurance特性)を向上できる。
【0067】
すなわち、メモリセルMTが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが導電層6の積層方向の厚さより厚い構造により、半導体記憶装置1の動作信頼性を向上することに適した構造を提供できる。
【0068】
また、図4に示すように、強誘電体膜FEの導電層6側の側面8は、積層方向(Z方向)に平坦である。強誘電体膜FEの半導体膜CH側の側面8iは、積層方向(Z方向)に平坦である。この構造により、半導体膜CHから導電層6へ向かう方向、又は、導電層6から半導体膜CHへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面8,8iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面8iと外側面8とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置1の動作信頼性を向上できる。
【0069】
次に、半導体記憶装置1の製造方法について図8図10を用いて説明する。図8(a)~図8(c)、図9(a)~図9(c)は、半導体記憶装置1の製造方法を示す断面図である。図10(a)、図10(b)は、半導体記憶装置1の製造方法を示す斜視図である。
【0070】
図8(a)に示す工程では、基板SUB(図1参照)にトランジスタを形成し、基板SUB上に、コンタクトプラグ、配線膜及びビアプラグ等を形成するとともにそれらの周囲に層間絶縁膜を形成する。これにより、周辺回路100(図2参照)が形成される。その後、基板SUBの+Z側に層間絶縁膜81を堆積する。層間絶縁膜81(図1参照)は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物などの半導体酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。層間絶縁膜81の+Z側に導電層3(図4参照)が堆積される。導電層3は、不純物を含む半導体(例えば、シリコン)を主成分とする材料または導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。導電層3の+Z側に、絶縁層7aと半導体層5aとを交互に複数回堆積して積層体SSTaを形成する。絶縁層7aは、半導体酸化物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。半導体層5aは、半導体(例えば、アモルファスシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。各絶縁層7a及び各半導体層5aは、概ね同様な膜厚で堆積され得る。
【0071】
メモリホール10aの形成位置が開口されたレジストパターンを各積層体SSTaの最上の絶縁層7aの上に形成する。レジストパターンをマスクとしてRIE(Reactive Ion Etching)法などの異方性エッチングを行い、積層体SSTaを貫通し導電層3に到達するメモリホール10aを形成する。
【0072】
図8(b)に示す工程では、メモリホール10aで露出された半導体層5bの側面をエッチングして後退させる半導体層リセス処理を行う。半導体層リセス処理により、メモリホール10bの内側面に凹部10a1を形成する。凹部10a1は、積層体SSTaにおける半導体層5cのZ位置において、メモリホール10bの内側面に対してメモリホール10bの中心軸CAから遠ざかる方向に窪むように形成される。例えば、絶縁層7bに対する半導体層5cのエッチング選択比が高いエッチャントを用いてメモリホール10bの内側面をウェットエッチングする。あるいは、絶縁層7bに対する半導体層5cのエッチング選択比が高い処理ガスを用いた等方性エッチングの条件でメモリホール10bの内側面をドライエッチングする。これにより、メモリホール10bで露出された半導体層5cの側面をエッチングして後退させ、メモリホール10bの内側面に凹部10a1を形成することができる。メモリホール10bの内側面に対する凹部10a1の窪み幅(リセス量)は、エッチング時間で調整され得る。凹部10a1のZ方向の幅は、半導体層5cの膜厚とほぼ均等である。
【0073】
図8(c)に示す工程では、メモリホール10bの側面及び底面に、強誘電体膜FEaが堆積される。強誘電体膜FEaは、アモルファス状態で堆積される。このとき、凹部10a1内に強誘電体膜FEaが埋め込まれる。強誘電体膜FEaは、強誘電体を主成分とする材料で形成され得る。
【0074】
強誘電体膜FEは、例えば、ハフニウム酸化物(HfO)を主成分とする材料で形成され得る。強誘電体膜FEaは、シリコン(Si)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を含む群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む材料で形成されてもよい。
【0075】
図9(a)、図10(a)に示す工程では、メモリホール10cの形成位置が開口されたレジストパターンを各積層体SSTbの最上の(最も+Z側の)絶縁層7bの上に形成する。レジストパターンをマスクとしてRIE(Reactive Ion Etching)法などの異方性エッチングを行い、積層体SSTbを貫通し導電層3に到達するメモリホール10cを形成する。これにより、強誘電体膜FEaにおける凹部10a1に埋め込まれた部分を強誘電体膜FEとして残しながら、強誘電体膜FEaにおけるメモリホール10cに相当する部分が除去される。
【0076】
図9(b)、図10(b)に示す工程では、積層体SSTcが熱酸化される。これにより、アモルファス状態の強誘電体膜FEは、結晶化され、多結晶の状態になる。それとともに、半導体層5cにおける絶縁層7bへの接触面近傍の部分が酸化され、半導体層5dが薄膜化され、結晶化されるとともに絶縁層7が厚膜化される。
【0077】
このとき、図10(b)に示すように、各絶縁層7がZ方向に伸びる。例えば3層の絶縁層7に対する積層体の高さは、図10(a)に示すH1から図10(b)に示すH2(>H1)に伸びる。これにより、図9(b)、図10(b)に点線の矢印で示すように、各強誘電体膜FEには、Z方向に沿った引張応力Fが作用する。引張応力Fは、強誘電体膜FEの+Z側の絶縁層7が強誘電体膜FEを+Z側に引っ張る応力、又は、強誘電体膜FEの-Z側の絶縁層7が強誘電体膜FEを-Z側に引っ張る応力を含む。
【0078】
強誘電体膜FEは、結晶化された直後において、含まれる複数の結晶の配向方向がランダムである。引張応力Fの作用により、複数の結晶軸(a軸、b軸、c軸)のうち、最も長いa軸が引張応力Fに沿うような配向方向の結晶の割合が多くなり得る。図6(b)の配向方向の結晶の割合に比べて、図6(a)、図6(c)の配向方向の結晶の割合が多くなり得る。図6(a)の配向方向の結晶の割合と図6(c)の配向方向の結晶の割合とは均等になり得る。これにより、強誘電体膜FEでは図6(a)又は図6(c)の配向方向の結晶の割合が多くなり、強誘電体膜FE全体として反強誘電性を示すようになる。
【0079】
図9(c)に示す工程では、積層体SSTcの半導体層5dが除去される。除去によって形成された空隙に導電層6が埋め込まれる。導電層6は、導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。これにより、半導体層5dが導電層6でリプレースされ、導電層6と絶縁層7とが交互に繰り返し積層された積層体SSTが形成される。
【0080】
メモリホール10cの側面及び底面に半導体(電極材)が堆積され、半導体膜(電極膜)CHが形成される。半導体膜CHは、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。そして、メモリホール10cにコア部材CRが埋め込まれる。コア部材CRは、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。これにより、中心軸CAに対してコア部材CR、半導体膜CH、複数の強誘電体膜FEが同心円状に配され、積層体SSTをZ方向に貫通する柱状体4が形成される。
【0081】
このように、図8図10に示す製造方法により、図1図5に示す半導体記憶装置1を製造することができる。
【0082】
以上のように、第1の実施形態では、半導体記憶装置1において、積層体SSTにおける導電層(電極層)6と半導体膜(電極膜)CHとが強誘電体膜FEを介して交差する位置にメモリセルMTが設けられる。交差する位置において、強誘電体膜FEの積層方向の厚さは、導電層6の積層方向の厚さより厚い。この構造は、強誘電体膜FEにZ方向の引張応力Fが作用するような結晶配向制御で製造されるものであり、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなることに適した構造である。すなわち、メモリセルMTが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが導電層6の積層方向の厚さより厚い構造により、半導体記憶装置1の動作信頼性を向上することに適した構造を提供できる。
【0083】
また、第1の実施形態では、半導体記憶装置1において、強誘電体膜FEの導電層6側の側面8は、積層方向に平坦である。強誘電体膜FEの半導体膜CH側の側面8iは、積層方向に平坦である。この構造により、半導体膜CHから導電層6へ向かう方向、又は、導電層6から半導体膜CHへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面8,8iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面8iと外側面8とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置1の動作信頼性を向上できる。
【0084】
なお、各柱状体4は、コア部材CRが省略された構成であってもよい。
【0085】
また、図8図10では、半導体層5dが導電層6でリプレースされる製造方法が例示されるが、半導体層5dがリプレースされずにワード線として機能すべき導電層とされてもよい。この場合、図8(a)に示す工程において、半導体層5dは、不純物を含み導電性が付与された半導体(例えば、ドナー不純物を含むN型ポリシリコン又はアクセプター不純物を含むP型ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。また、図9(c)に示す工程において、半導体層5dの除去及び導電層6の埋め込みが省略される。それ以外の点は、図8図10に示す製造方法と同様である。
【0086】
また、第1の実施形態の変形例として、半導体記憶装置1は、強誘電体膜FEにZ方向の引張応力Fに加えてXY方向の圧縮応力が作用するような結晶配向制御で製造されてもよい。半導体記憶装置1の製造方法は、図11に示すように、次の点で第1の実施形態と異なる。図11(a)~図11(c)は、それぞれ、半導体記憶装置1の製造方法を示す断面図である。
【0087】
図8(a)~図9(a)に示す工程が第1の実施形態と同様に行われた後、図11(a)に示す工程が行われる。
【0088】
図11(a)に示す工程では、メモリホール10cの側面及び底面に半導体が堆積され、半導体膜CHaが形成される。半導体膜CHaは、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。そして、メモリホール10cにおける半導体膜CHaの内側に絶縁物が埋め込まれ、コア部材CRaが形成される。コア部材CRaは、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。
【0089】
図11(b)に示す工程では、積層体SSTbが熱酸化される。これにより、アモルファス状態の強誘電体膜FEは、結晶化され、多結晶の状態になる。それとともに、半導体層5cにおける絶縁層7bへの接触面近傍の部分が酸化され、半導体層5dが薄膜化され、結晶化されるとともに絶縁層7が厚膜化される。
【0090】
このとき、各絶縁層7がZ方向に伸びる(図10(b)参照)。これにより、図11(b)に点線の矢印で示すように、各強誘電体膜FEには、Z方向に沿った引張応力Fが作用する。
【0091】
また、半導体膜CHaにおけるコア部材CRaへの接触面近傍の部分と絶縁層7bへの接触面近傍の部分とがそれぞれ酸化され、半導体膜CHbが薄膜化されるとともにコア部材CRbがXY方向に広径化する。
【0092】
これにより、外側面に複数の凸部9を有する半導体膜CHbが形成される。複数の凸部9は、Z方向に離間しながら配列される。各凸部9は、中心軸CAを中心とする略中空円盤形状を有する。複数の凸部9は、複数の強誘電体膜FEに対応する。各凸部9のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置に対応する。例えば、各凸部9のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置と略同じである。各凸部9のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に対応する。例えば、各凸部9のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に略均等である。
【0093】
中心軸CAに対してコア部材CRb、半導体膜CHb、複数の強誘電体膜FEが同心円状に配され、積層体SSTcをZ方向に貫通する柱状体14が形成される。
【0094】
このとき、コア部材CRbがXY方向に膨張する。これにより、図11(b)に点線の矢印で示すように、各強誘電体膜FEには、XY方向に沿った圧縮応力fが作用する。圧縮応力fは、XY面内で中心軸CAからの放射方向、又はその反対方向に作用する。圧縮応力fは、半導体層5dが強誘電体膜FEを放射方向の反対方向に圧縮する応力、又は、半導体膜CHbが強誘電体膜FEを放射方向に圧縮する応力を含む。
【0095】
強誘電体膜FEでは、結晶化された直後において、含まれる複数の結晶の配向方向がランダムである。
【0096】
引張応力Fの作用により、複数の結晶軸(a軸、b軸、c軸)のうち、最も長いa軸が引張応力Fに沿うような配向方向の結晶の割合が多くなり得る。図6(b)の配向方向の結晶の割合に比べて、図6(a)、図6(c)の配向方向の結晶の割合が多くなり得る。
【0097】
圧縮応力fの作用により、複数の結晶軸(a軸、b軸、c軸)のうち、最も短いb軸が圧縮応力fに沿うような配向方向の結晶の割合が多くなり得る。図6(c)の配向方向の結晶の割合に比べて、図6(a)の配向方向の結晶の割合が多くなり得る。これにより、強誘電体膜FEでは図6(a)の配向方向の結晶の割合が多くなり、強誘電体膜FE全体としてさらに反強誘電性を示すようになる。
【0098】
図11(c)に示す工程では、半導体層5dが導電層6でリプレースされ、導電層6と絶縁層7とが交互に繰り返し積層された積層体SSTが形成される。これにより、半導体記憶装置1が製造される。
【0099】
このような製造方法によっても、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなる結晶配向制御を行いながら、半導体記憶装置1を製造することができる。
【0100】
また、半導体記憶装置1において、半導体膜CHbは、その外側面に、複数の強誘電体膜FEに対応する複数の凸部9を有する。この構造により、半導体膜CHbから導電層6へ向かう方向の電界、又は、導電層6から半導体膜CHbへ向かう方向の電界が容易に生成され得るので、メモリセルMTへのライト・イレーズ時に強誘電体膜FEに効率的に電界が印加され得る。
【0101】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる半導体記憶装置について説明する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0102】
第1の実施形態では、チャネル領域(半導体膜CH)がZ方向に延びワード線(導電層6)がXY方向に延びる3次元メモリセルアレイ2について例示するが、第2の実施形態では、チャネル領域(半導体層CHi)がXY方向に延びローカルワード線(導電膜LWL)がZ方向に延びる3次元メモリセルアレイ2iについて例示する。チャネル領域がXY方向に延びローカルワード線がZ方向に延びる3次元メモリセルアレイ2iを含む半導体記憶装置1iは、図12に示すように構成され得る。図12は、第2の実施形態にかかる半導体記憶装置1iの概略構成を示す斜視図である。
【0103】
図12に示すように、半導体記憶装置1iでは、複数の分断膜SLTが追加される。分断膜SLTは、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。複数の分断膜SLTは、X方向に並ぶ複数の柱状の導電膜LWLの間を埋めるように、X方向に複数配列される。各分断膜SLTは、複数の導電膜LWLの間でXZ方向に延びる。これにより、複数の分断膜SLTは、積層体SST(図1参照)を-Y側の積層体SST_1と+Y側の積層体SST_2とに分割し、柱状体4(図1参照)を-Y側の柱状体24aと+Y側の柱状体24bとに分割する。
【0104】
積層体SST_1は導電膜LWLの-Y側に配され、積層体SST_2は導電膜LWLの+Y側に配される。各積層体SST_1,積層体SST_2では、複数の半導体層(電極層)CHiが絶縁層7を介して積層される。半導体層CHiは、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。
【0105】
柱状体24aは積層体SST_1の+Y側の端部をZ方向に延びて貫通し、柱状体24bは積層体SST_2の-Y側の端部をZ方向に延びて貫通する。各柱状体24a,24bは、その積層体SST_1,SST_2側の側面に複数の凸部を有する。複数の凸部は、Z方向に離間しながら配列される。各凸部は、中心軸CAを中心とする略中空半円盤形状を有する。
【0106】
各柱状体24a,24bは、強誘電体膜FE及び導電膜(電極膜)LWLを含む。互いにY方向に並ぶ柱状体24aと柱状体24bとは、導電膜LWLを共有してもよい。各柱状体24a,24bにおいて、強誘電体膜FEは、半導体層CHiに対応したZ位置に配される。強誘電体膜FEは、強誘電体を主成分とする材料で形成され得る。導電膜LWLは、タングステンなどの金属を主成分とする材料で形成され得る。導電膜LWLは、-Z側でソース線SLとしての導電層3に接続され、+Z側でコンタクトプラグ31を介してワード線WLとして機能する導電層9に接続される。X方向に並びワード線WLに共通接続される複数の導電膜LWLは、それぞれ、ローカルワード線として機能する。
【0107】
これに応じて、図13及び図14に示すように、分断膜SLTは、メモリセルMTをメモリセルMTaとメモリセルMTbとに分割する。これにより、半導体記憶装置1iでは、メモリセルMTa,MTbの配置密度を容易に向上できる。図13は、メモリセルアレイ2iの構成を示す垂直方向(YZ方向)の断面図である。図14は、メモリセルMTa,MTbの構成を示す平面方向(XY方向)の断面図であり、図13をB-B線に沿ってXY方向に切った場合の断面図である。
【0108】
メモリセルMTaは、積層体SST_1の半導体層CHiと導電膜LWLとが交差する位置に設けられる。メモリセルMTbは、積層体SST_2の半導体層CHiと導電膜LWLとが交差する位置に設けられる。
【0109】
ここで、メモリセルMTa,MBbが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが半導体層CHiの積層方向の厚さより厚い。この構造は、反強誘電性を示す結晶の割合を多くする結晶配向制御で製造されるものであり、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなることに適した構造である。初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなる構造は、初期の状態で強誘電体膜FEにおける強誘電性を示す結晶の割合が多い構造に比べて、ライト・イレーズサイクル数の増加に対するライト特性の劣化を抑制でき(図7(a)、図7(b)参照)、耐久性(Endurance特性)を向上できる。
【0110】
すなわち、メモリセルMTa,MBbが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが導電層6の積層方向の厚さより厚い構造により、半導体記憶装置1iの動作信頼性を向上することに適した構造を提供できる。
【0111】
また、図13に示すように、強誘電体膜FEの半導体層CHi側の側面28は、積層方向(Z方向)に平坦である。強誘電体膜FEの導電膜LWL側の側面28iは、積層方向(Z方向)に平坦である。この構造により、半導体層CHiから導電膜LWLへ向かう方向、又は、導電膜LWLから半導体層CHiへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面28,28iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面28iと外側面28とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置1iの動作信頼性を向上できる。
【0112】
なお、半導体記憶装置1iの製造方法では、半導体層5dがリプレースされずにワード線として機能すべき導電層(半導体層CHi)とされる。この場合、図8(a)に示す工程において、半導体層5dは、不純物を含み導電性が付与された半導体(例えば、ドナー不純物を含むN型ポリシリコン又はアクセプター不純物を含むP型ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。また、図9(c)に示す工程において、半導体層5dの除去及び導電層6の埋め込みが省略され、半導体膜CH、コア部材CRに代えて導電膜LWL(図13参照)がメモリホール10cに埋め込まれる。それ以外の点は、図8図10に示す製造方法と同様である。
【0113】
以上のように、第2の実施形態では、半導体記憶装置1iにおいて、積層体SSTにおける半導体層(電極層)CHiと導電膜(電極膜)LWLとが強誘電体膜FEを介して交差する位置にメモリセルMTが設けられる。交差する位置において、強誘電体膜FEの積層方向の厚さは、半導体層CHiの積層方向の厚さより厚い。この構造は、強誘電体膜FEにZ方向の引張応力Fが作用するような結晶配向制御で製造されるものであり、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなることに適した構造である。すなわち、メモリセルMTが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが半導体層CHiの積層方向の厚さより厚い構造により、半導体記憶装置1iの動作信頼性を向上することに適した構造を提供できる。
【0114】
また、第2の実施形態では、半導体記憶装置1iにおいて、強誘電体膜FEの半導体層CHi側の側面28は、積層方向に平坦である。強誘電体膜FEの導電膜LWL側の側面28iは、積層方向に平坦である。この構造により、半導体層CHiから導電膜LWLへ向かう方向、又は、導電膜LWLから半導体層CHiへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面28,28iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面28iと外側面28とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置1iの動作信頼性を向上できる。
【0115】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態にかかる半導体記憶装置について説明する。以下では、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0116】
第1の実施形態では、半導体膜CHの外側面が積層方向に平坦である構造が例示されるが、第3の実施形態では、半導体膜CHcの外側面が強誘電体膜FEに対応するZ位置で凹部を有する構造が例示される。
【0117】
半導体記憶装置301におけるメモリセルアレイ302は、図15に示すように、次の点で第1の実施形態と異なる構成を有する。図15は、第3の実施形態におけるメモリセルアレイ302の構成を示す断面図である。
【0118】
半導体記憶装置301は、複数の柱状体4、積層体SST(図4参照)に代えて、複数の柱状体304、積層体SST300を有する。
【0119】
各柱状体304は、半導体膜CH(図4参照)に代えて半導体膜CHcを有する。半導体膜CHcは、その外側面に複数の凹部309を有する。複数の凹部309は、Z方向に離間しながら配列される。各凹部309は、中心軸CAを中心とする略中空円盤形状を有する。複数の凹部309は、複数の強誘電体膜FEに対応する。各凹部309のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置に対応する。例えば、各凹部309のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置と略同じである。各凹部309のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に対応する。例えば、各凹部309のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に略均等である。
【0120】
積層体SST300では、導電層(電極層)306と絶縁層7cとが交互に繰り返し積層される。積層体SST300では、導電層306と半導体膜CHcとが強誘電体膜FEを介して交差する位置において、強誘電体膜FEの積層方向(Z方向)の厚さは、導電層306の積層方向の厚さに略均等である。
【0121】
図15に示すように、強誘電体膜FEの導電層306側の側面308は、積層方向(Z方向)に平坦である。強誘電体膜FEの半導体膜CHc側の側面308iは、積層方向(Z方向)に平坦である。この構造により、半導体膜CHcから導電層306へ向かう方向、又は、導電層306から半導体膜CHcへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面308,308iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面308iと外側面308とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置301の動作信頼性を向上できる。
【0122】
半導体記憶装置301において、半導体膜CHcは、その外側面に、複数の強誘電体膜FEに対応する複数の凹部309を有する。この構造により、半導体膜CHcから導電層306へ向かう方向の電界、又は、導電層306から半導体膜CHcへ向かう方向の電界が容易に生成され得るので、メモリセルMTへのライト・イレーズ時に強誘電体膜FEに効率的に電界が印加され得る。
【0123】
また、半導体記憶装置301の製造方法が、図15図16に示すように、次の点で第1の実施形態と異なる。図16(a)、図16(b)は、半導体記憶装置301の製造方法を示す断面図である。図15は、メモリセルアレイ302の構成を示す断面図であるが、半導体記憶装置301の製造方法を示す断面図として流用することにする。
【0124】
図8(a)~図8(c)、図9(a)に示す工程が行われた後、図16(a)に示す工程が行われる。
【0125】
図16(a)に示す工程では、メモリホール10cで露出された絶縁層5bの側面をエッチングして後退させる絶縁層リセス処理を行う。絶縁層リセス処理により、メモリホール10cの内側面に凹部10c1を形成する。凹部10c1は、積層体SSTdにおける絶縁層7cのZ位置において、メモリホール10cの内側面に対してメモリホール10cの中心軸CAから遠ざかる方向に窪むように形成される。例えば、強誘電体膜FEに対する絶縁層7cのエッチング選択比が高いエッチャントを用いてメモリホール10cの内側面をウェットエッチングする。あるいは、強誘電体膜FEに対する絶縁層7cのエッチング選択比が高い処理ガスを用いた等方性エッチングの条件でメモリホール10cの内側面をドライエッチングする。
【0126】
これにより、メモリホール10cで露出された絶縁層7cの側面をエッチングして後退させ、メモリホール10cの内側面に凹部10c1を形成することができる。メモリホール10cの内側面に対する凹部10c1の窪み幅は、エッチング時間で調整され得る。窪み幅は、略XY平面内における中心軸CAからの放射方向における凹部10c1の深さを表す。この窪み幅は、リセス処理による窪み幅であり、絶縁層リセス量Wと呼ぶことにする。凹部10c1のZ方向の幅は、絶縁層7cの膜厚とほぼ均等である。
【0127】
図16(b)に示す工程では、積層体SSTdが熱酸化される。これにより、アモルファス状態の強誘電体膜FEは、結晶化され、多結晶の状態になる。
【0128】
その後、メモリホール10cの側面及び底面に半導体が堆積され、半導体膜CHcが形成される。半導体膜CHcは、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。
【0129】
これにより、外側面に複数の凹部309を有する半導体膜CHcが形成される。複数の凹部309は、Z方向に離間しながら配列される。各凹部309は、中心軸CAを中心とする略中空円盤形状を有する。複数の凹部309は、複数の強誘電体膜FEに対応する。各凹部309のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置に対応する。例えば、各凹部309のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置と略同じである。各凹部309のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に対応する。例えば、各凹部309のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に略均等である。
【0130】
メモリホール10cにおける半導体膜CHcの内側に絶縁物が埋め込まれ、コア部材CRが形成される。コア部材CRは、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。
【0131】
中心軸CAに対してコア部材CR、半導体膜CHc、複数の強誘電体膜FEが同心円状に配され、積層体SSTdをZ方向に貫通する柱状体304が形成される。
【0132】
図15に示す工程では、半導体層5bが導電層306でリプレースされ、導電層306と絶縁層7cとが交互に繰り返し積層された積層体SST300が形成される。これにより、半導体記憶装置301が製造される。
【0133】
次に、図16(a)に示す工程における絶縁層リセス量WとメモリセルMTの動作電圧との関係について説明する。絶縁層リセス量Wは、図17に示すように規定される。図17は、絶縁層リセス量Wを示す図である。
【0134】
図16(a)に示す工程で絶縁層リセス処理が行われず、メモリホール10cの直径がRCH(又は2RCH)でありメモリホール10cの内側面からの凹部10c1の窪み幅が実質的にゼロである場合、図16(b)に示す工程で形成される半導体膜CHcは、直径がRCH(又は2RCH)であり外側面の凹部309の深さが実質的にゼロである。この場合、図17(a)に示すように、絶縁層リセス量W≒0である。
【0135】
図16(a)に示す工程で絶縁層リセス処理が行われ、メモリホール10cの直径がRCH(又は2RCH)でありメモリホール10cの内側面からの凹部10c1の窪み幅が例えばWである場合、図16(b)に示す工程で形成される半導体膜CHcは、直径がRCH(又は2RCH)であり外側面の凹部309の深さがWである。この場合、図17(b)に示すように、絶縁層リセス量W=Wである。
【0136】
図16(a)に示す工程で絶縁層リセス処理が行われ、メモリホール10cの直径がRCH(又は2RCH)でありメモリホール10cの内側面からの凹部10c1の窪み幅が例えばWである場合、図16(b)に示す工程で形成される半導体膜CHcは、直径がRCH(又は2RCH)であり外側面の凹部309の深さがWである。この場合、図17(b)に示すように、絶縁層リセス量W=Wである。
【0137】
図16(a)に示す工程で絶縁層リセス処理が行われ、メモリホール10cの直径がRCH(又は2RCH)でありメモリホール10cの内側面からの凹部10c1の窪み幅が例えばWである場合、図16(b)に示す工程で形成される半導体膜CHcは、直径がRCH(又は2RCH)であり外側面の凹部309の深さがWである。この場合、図17(b)に示すように、絶縁層リセス量W=Wである。
【0138】
図16(a)に示す工程で絶縁層リセス処理が行われ、メモリホール10cの直径がRCH(又は2RCH)でありメモリホール10cの内側面からの凹部10c1の窪み幅が例えばWである場合、図16(b)に示す工程で形成される半導体膜CHcは、直径がRCH(又は2RCH)であり外側面の凹部309の深さがWである。この場合、図17(b)に示すように、絶縁層リセス量W=Wである。
【0139】
強誘電体膜FEが強誘電性を示す状態(ウェイクアップした状態)のメモリセルMTについて、図17に示すように絶縁層リセス量Wを変えた場合の動作電圧の変化をシミュレーションした。その結果を図18に示す。図18は、絶縁層リセス量WとメモリセルMTの動作電圧との関係を示す図である。図18では、縦軸がメモリセルMTの動作電圧を示し、横軸が絶縁層リセス量Wを示す。
【0140】
メモリセルMTの動作電圧は、図7(b)に実線で示すように、メモリセルMTが“0”を保持する消去状態で、分極電荷の極性が反転され“1”がライトされるための電圧である。メモリセルMTの動作電圧は、図7(b)に示す電圧Vに相当する。
【0141】
図18に白丸で示すように、半導体膜CHcの直径がRCHの場合、絶縁層リセス量をW≒0、W=W、W=W、W=W、W=Wと変えると、メモリセルMTの動作電圧がV=V、V=V(<V)、V=V(<V)、V=V(<V)、V=V(<V)と低電圧化していく。
【0142】
図18に黒丸で示すように、半導体膜CHcの直径が2RCHの場合、絶縁層リセス量をW≒0、W=W、W=W、W=W、W=Wと変えると、メモリセルMTの動作電圧がV=V10、V=V11(<V10)、V=V12(<V11)、V=V13(<V12)、V=V14(<V13)と低電圧化していく。
【0143】
なお、絶縁層リセス量がW≒0の場合、半導体膜CHcの直径をRCH、2RCHと変えると、メモリセルMTの動作電圧がV=V、V=V10(<V)と低電圧化していく。絶縁層リセス量がW=Wの場合、半導体膜CHcの直径をRCH、2RCHと変えると、メモリセルMTの動作電圧がV=V、V=V14(<V)と低電圧化していく。
【0144】
図18に示すシミュレーション結果から、半導体膜CHcの外側面の凹部309のXY方向深さ(≒絶縁層リセス量W)が深くなるほどメモリセルMTの動作電圧を低電圧できることが確認された。
【0145】
以上のように、第3の実施形態では、半導体記憶装置301において、半導体膜CHcは、その外側面に、複数の強誘電体膜FEに対応する複数の凹部309を有する。この構造により、半導体膜CHcから導電層306へ向かう方向の電界、又は、導電層306から半導体膜CHcへ向かう方向の電界が容易に生成され得るので、メモリセルMTへのライト・イレーズ時に強誘電体膜FEに効率的に電界が印加され得る。
【0146】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態にかかる半導体記憶装置について説明する。以下では、第1の実施形態から第3の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0147】
第4の実施形態では、第1の実施形態と第3の実施形態とが組み合わせられる。半導体記憶装置401におけるメモリセルアレイ402は、図19に示すように、次の点で第1の実施形態と異なる構成を有する。図19は、第4の実施形態におけるメモリセルアレイ402の構成を示す断面図である。
【0148】
半導体記憶装置401は、複数の柱状体4、積層体SST(図4参照)に代えて、複数の柱状体404、積層体SST400を有する。
【0149】
各柱状体404は、各柱状体304(図15参照)において、コア部材CRを広径化してコア部材CRdとし、半導体膜CHcを薄膜化して半導体膜CHdとすることで得られる。
【0150】
積層体SST400では、導電層(電極層)6と絶縁層7cとが交互に繰り返し積層される。積層体SST400では、導電層6と半導体膜CHcとが強誘電体膜FEを介して交差する位置において、強誘電体膜FEの積層方向(Z方向)の厚さは、導電層6の積層方向の厚さより厚い。この構造は、反強誘電性を示す結晶の割合を多くする結晶配向制御で製造されるものであり、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなることに適した構造である。初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなる構造は、初期の状態で強誘電体膜FEにおける強誘電性を示す結晶の割合が多い構造に比べて、ライト・イレーズサイクル数の増加に対するライト特性の劣化を抑制でき(図7(a)、図7(b)参照)、耐久性(Endurance特性)を向上できる。
【0151】
すなわち、メモリセルMTが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが導電層6の積層方向の厚さより厚い構造により、半導体記憶装置1の動作信頼性を向上することに適した構造を提供できる。
【0152】
図19に示すように、強誘電体膜FEの導電層6側の側面308は、積層方向(Z方向)に平坦である。強誘電体膜FEの半導体膜CHc側の側面308iは、積層方向(Z方向)に平坦である。この構造により、半導体膜CHcから導電層6へ向かう方向、又は、導電層6から半導体膜CHcへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面308,308iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面308iと外側面308とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置301の動作信頼性を向上できる。
【0153】
半導体記憶装置401において、半導体膜CHcは、その外側面に、複数の強誘電体膜FEに対応する複数の凹部309を有する。この構造により、半導体膜CHcから導電層306へ向かう方向の電界、又は、導電層306から半導体膜CHcへ向かう方向の電界が容易に生成され得るので、メモリセルMTへのライト・イレーズ時に強誘電体膜FEに効率的に電界が印加され得る。
【0154】
また、半導体記憶装置301の製造方法が、図19図20に示すように、次の点で第1の実施形態と異なる。図20(a)、図20(b)は、半導体記憶装置401の製造方法を示す断面図である。図19は、メモリセルアレイ402の構成を示す断面図であるが、半導体記憶装置401の製造方法を示す断面図として流用することにする。
【0155】
図8(a)~図8(c)、図9(a)、図16(a)、図16(b)に示す工程が行われた後、図20(a)に示す工程が行われる。
【0156】
図20(a)に示す工程では、積層体SSTd(図16(b)参照)が熱酸化される。これにより、アモルファス状態の強誘電体膜FEは、結晶化され、多結晶の状態になる。それとともに、半導体層5cにおける絶縁層7bへの接触面近傍の部分が酸化され、半導体層5dが薄膜化され、結晶化されるとともに絶縁層7dが厚膜化される。
【0157】
このとき、各絶縁層7dがZ方向に伸びる(図10(b)参照)。これにより、図20(a)に点線の矢印で示すように、各強誘電体膜FEには、Z方向に沿った引張応力Fが作用する。
【0158】
また、半導体膜CHcにおけるコア部材CRへの接触面近傍の部分と絶縁層7cへの接触面近傍の部分とがそれぞれ酸化され、半導体膜CHdが薄膜化されるとともにコア部材CRdがXY方向に広径化する。
【0159】
これにより、外側面に複数の凹部309を有する半導体膜CHdが形成される。複数の凹部309は、Z方向に離間しながら配列される。各凹部309は、中心軸CAを中心とする略中空円盤形状を有する。複数の凹部309は、複数の強誘電体膜FEに対応する。各凹部309のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置に対応する。例えば、各凹部309のZ位置は、強誘電体膜FEのZ位置と略同じである。各凹部309のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に対応する。例えば、各凹部309のZ方向幅は、強誘電体膜FEのZ方向幅に略均等である。
【0160】
中心軸CAに対してコア部材CRd、半導体膜CHd、複数の強誘電体膜FEが同心円状に配され、積層体SSTeをZ方向に貫通する柱状体404が形成される。
【0161】
このとき、コア部材CRdがXY方向に膨張する。これにより、図20(a)に点線の矢印で示すように、各強誘電体膜FEには、XY方向に沿った圧縮応力fが作用する。圧縮応力fは、XY面内で中心軸CAからの放射方向、又はその反対方向に作用する。圧縮応力fは、半導体層5dが強誘電体膜FEを放射方向の反対方向に圧縮する応力、又は、半導体膜CHdが強誘電体膜FEを放射方向に圧縮する応力を含む。
【0162】
強誘電体膜FEでは、結晶化された直後において、含まれる複数の結晶の配向方向がランダムである。
【0163】
引張応力Fの作用により、複数の結晶軸(a軸、b軸、c軸)のうち、最も長いa軸が引張応力Fに沿うような配向方向の結晶の割合が多くなり得る。図6(b)の配向方向の結晶の割合に比べて、図6(a)、図6(c)の配向方向の結晶の割合が多くなり得る。
【0164】
圧縮応力fの作用により、複数の結晶軸(a軸、b軸、c軸)のうち、最も短いb軸が圧縮応力fに沿うような配向方向の結晶の割合が多くなり得る。図6(c)の配向方向の結晶の割合に比べて、図6(a)の配向方向の結晶の割合が多くなり得る。これにより、強誘電体膜FEでは図6(a)の配向方向の結晶の割合が多くなり、強誘電体膜FE全体としてさらに反強誘電性を示すようになる。
【0165】
図20(b)に示す工程では、半導体層5dが導電層6でリプレースされ、図19に示すように、導電層6と絶縁層7dとが交互に繰り返し積層された積層体SST400が形成される。これにより、半導体記憶装置401が製造される。
【0166】
以上のように、第4の実施形態では、半導体記憶装置401において、積層体SST400における導電層(電極層)6と半導体膜(電極膜)CHdとが強誘電体膜FEを介して交差する位置にメモリセルMTが設けられる。交差する位置において、強誘電体膜FEの積層方向の厚さは、導電層6の積層方向の厚さより厚い。この構造は、強誘電体膜FEにZ方向の引張応力Fが作用するような結晶配向制御で製造されるものであり、初期の状態で強誘電体膜FEにおける反強誘電性を示す結晶の割合が多くなることに適した構造である。すなわち、メモリセルMTが設けられる交差位置において強誘電体膜FEの積層方向の厚さが導電層6の積層方向の厚さより厚い構造により、半導体記憶装置401の動作信頼性を向上することに適した構造を提供できる。
【0167】
また、第4の実施形態では、半導体記憶装置401において、強誘電体膜FEの導電層6側の側面308は、積層方向に平坦である。強誘電体膜FEの半導体膜CHd側の側面308iは、積層方向に平坦である。この構造により、半導体膜CHdから導電層6へ向かう方向、又は、導電層6dから半導体膜CHdへ向かう方向に電圧Eが印加される際に、各側面308,308iにおける電界集中の発生を抑制でき、強誘電体膜FEへ比較的一様な電界を印加することができる。これにより、強誘電体膜FEの内側面308iと外側面308とに効率的に分極電荷を発生させることができ、半導体記憶装置401の動作信頼性を向上できる。
【0168】
また、第4の実施形態では、半導体記憶装置401において、半導体膜CHdは、その外側面に、複数の強誘電体膜FEに対応する複数の凹部309を有する。この構造により、半導体膜CHdから導電層6へ向かう方向の電界、又は、導電層6から半導体膜CHdへ向かう方向の電界が容易に生成され得るので、メモリセルMTへのライト・イレーズ時に強誘電体膜FEに効率的に電界が印加され得る。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0170】
1,1i,301,401 半導体記憶装置、6,306 導電層、CH,CHc,CHd 半導体膜、CHi 半導体層、FE 強誘電体膜、LWL 導電膜、SST,SST_1,SST_2,SSTa,SSTb,SSTc,SSTe,SST300,SST400 積層体。
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