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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131605
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/34 20060101AFI20240920BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240920BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240920BHJP
   G11C 11/56 20060101ALI20240920BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20240920BHJP
   G11C 16/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G11C16/34 116
H10B43/27
H01L29/78 371
G11C11/56 210
G11C16/04 170
G11C16/08 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041973
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯村 洋一
【テーマコード(参考)】
5B225
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5B225BA08
5B225BA19
5B225CA19
5B225DB02
5B225DB08
5B225DB22
5B225EB10
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA10
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083ZA28
5F101BA45
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
(57)【要約】
【課題】一つの実施形態は、動作信頼性を向上できる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一つの実施形態によれば、半導体記憶装置において、第1のメモリセルに第1のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、第2のメモリセルに第1の転送電圧が印加される。第1のメモリセルは、第1の積層体における第1の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。第2のメモリセルは、第1の積層体における第2の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。半導体記憶装置では、第3のメモリセルに第2のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、第4のメモリセルに第2の転送電圧が印加される。第3のメモリセルは、第1の積層体における第3の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。第2のビット数は、第1のビット数より少ない。第4のメモリセルは、第1の積層体における第4の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。第2の転送電圧は、第1の転送電圧より低い。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電層が絶縁層を介して積層された第1の積層体と、
前記第1の積層体内を積層方向に延びる半導体膜と、
前記第1の積層体の複数の導電層と前記半導体膜との間を前記積層方向に延びる絶縁膜と、
を備え、
前記第1の積層体における第1の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第1のメモリセルに第1のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、前記第1の積層体における第2の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第2のメモリセルに第1の転送電圧が印加され、前記第1の積層体における第3の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第3のメモリセルに前記第1のビット数より少ない第2のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、前記第1の積層体における第4の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第4のメモリセルに前記第1の転送電圧より低い第2の転送電圧が印加される
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第3のメモリセルは、前記第1のメモリセルより前記半導体膜の基板側の一端に近い
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第3のメモリセルは、前記第1のメモリセルより前記半導体膜の基板と反対側の一端に近い
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2の転送電圧と前記第1の転送電圧との差は、前記第2のビット数と前記第1のビット数との差に対応する
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1のビット数は、2ビット以上であり、
前記第2のビット数は、1ビットである
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1のビット数は、3ビットであり、
前記第2のビット数は、1ビットであり、
前記第2の転送電圧と前記第1の転送電圧との差は、略4Vである
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第1の積層体に積層され、複数の導電層が絶縁層を介して積層された第2の積層体をさらに備え、
前記半導体膜は、前記第2の積層体内を前記積層方向に延び、
前記絶縁膜は、前記第2の積層体の複数の導電層と前記半導体膜との間を前記積層方向に延び、
前記第2の積層体における第5の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第5のメモリセルに前記第1のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、前記第2の積層体における第6の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第6のメモリセルに前記第1の転送電圧が印加され、前記第2の積層体における第7の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第7のメモリセルに前記第2のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、前記第2の積層体における第8の導電層と前記半導体膜とが交差する位置に配される第8のメモリセルに前記第2の転送電圧が印加される
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導電層が絶縁層を介して積層された積層体内を半導体膜が積層方向に延び、各導電層と半導体膜との近接する部分をメモリセルとして機能させる3次元構造の半導体記憶装置が知られている。この半導体記憶装置では、動作信頼性を向上することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-144075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、動作信頼性を向上できる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、第1の積層体と半導体膜と絶縁膜とを有する半導体記憶装置が提供される。第1の積層体は、複数の導電層が絶縁層を介して積層される。半導体膜は、第1の積層体内を積層方向に延びる。絶縁膜は、第1の積層体内を半導体膜の外側で積層方向に延びる。半導体記憶装置では、第1のメモリセルに第1のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、第2のメモリセルに第1の転送電圧が印加される。第1のメモリセルは、第1の積層体における第1の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。第2のメモリセルは、第1の積層体における第2の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。半導体記憶装置では、第3のメモリセルに第2のビット数に応じたプログラム電圧が印加される際に、第4のメモリセルに第2の転送電圧が印加される。第3のメモリセルは、第1の積層体における第3の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。第2のビット数は、第1のビット数より少ない。第4のメモリセルは、第1の積層体における第4の導電層と半導体膜とが交差する位置に配される。第2の転送電圧は、第1の転送電圧より低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかる半導体記憶装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態におけるメモリセルアレイの構成を示す斜視図。
図3】実施形態におけるブロックの構成を示す回路図。
図4】実施形態におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図。
図5】実施形態にかかる半導体記憶装置の動作モードを示す図。
図6】実施形態における半導体記憶装置の動作を示す斜視図。
図7】実施形態における半導体記憶装置の動作を示す斜視図。
図8】実施形態におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図。
図9】半導体記憶装置の動作を示す斜視図。
図10】ビット数の異なるメモリセルのライト時の転送電圧を同じした場合におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図。
図11】電荷の横抜けを示す断面図。
図12】実施形態の第1の変形例におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図。
図13】実施形態の第2の変形例におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図。
図14】実施形態の第3の変形例におけるメモリセルアレイの構成を示す断面図。
図15】実施形態の第3の変形例にかかる半導体記憶装置の動作モードを示す図。
図16】実施形態の第3の変形例における半導体記憶装置の動作を示す断面図。
図17】実施形態の第3の変形例における半導体記憶装置の動作を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体記憶装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(実施形態)
実施形態にかかる半導体記憶装置は、複数の導電層が絶縁層を介して積層された積層体内を半導体膜が積層方向に延び、各導電層と半導体膜との近接する部分がメモリセルとして機能するが、メモリセルの動作信頼性を向上するための工夫が施される。
【0009】
半導体記憶装置100は、図1に示すように構成され得る。図1は、半導体記憶装置100の構成を示すブロック図である。
【0010】
半導体記憶装置100は、例えばNAND型フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、図1に示すように構成され得る。半導体記憶装置100は、メモリセルアレイ130及び周辺回路150を有する。
【0011】
周辺回路150は、I/O制御部110、論理制御部111、制御部112、電圧発生回路113、コマンドレジスタ114、アドレスレジスタ115、ステータスレジスタ116、カラムアドレスバッファ117、カラムデコーダ118、データレジスタ119、センスアンプ120、ロウアドレスバッファ121、ロウデコーダ122、電源回路141、及びクロック生成回路142を有する。
【0012】
論理制御部111は、各種制御信号の入力ピン(CE,ALEなど)を介して各種制御信号の入力を受け付ける。I/O制御部110は、論理制御部111で受け付けた制御信号に基づいて、I/O信号の格納先のレジスタの振り分けを実行する。また、論理制御部111は、受け付けた制御信号を制御部112に転送する。論理制御部111の入力ピンとして示されているCEは、半導体記憶装置100のチップイネーブルピンを示している。
【0013】
制御部112は、論理制御部111を介して受信した各種制御信号に基づいて状態(ステート)遷移する状態遷移回路(ステートマシン)を含み、半導体記憶装置100全体の動作を制御する。
【0014】
I/O制御部110は、I/O信号ピンI/O0-I/O7、ストローブピンDQS,/DQSを介してコントローラ20との間でI/O信号、ストローブ信号を送受信するためのバッファ回路である。I/O制御部110がI/O信号ピンI/O0-I/O7を介してI/O信号として取り込んだコマンド、アドレス、データ(書き込みデータ)は、夫々、アドレスレジスタ115、コマンドレジスタ114、データレジスタ119に振り分けられて格納される。
【0015】
電源回路141は、電源ピンを介してコントローラ20から、例えば電源電圧Vcc、VccqおよびVssを受け、それらの電圧を半導体記憶装置100における各部に供給する。電源電圧Vccqは、例えば、I/O制御部110の動作に用いられる電源電圧である。電源電圧Vssは、例えば、グランド電圧である。
【0016】
制御部112は、電圧発生回路113に、発生すべき電圧値、電力供給タイミングを指示する。制御部112は、クロック生成回路142を含む。クロック生成回路142は、クロック信号CLKを、例えばチャージポンプ回路1に供給する。その他に、制御部112は、レディービジー信号R/Bをコントローラ20へ送信する。
【0017】
電圧発生回路113は、制御部112の制御に従って、所定の電圧を発生させる。電圧発生回路113は、発生された電圧をメモリセルアレイ130、ロウデコーダ122、及びセンスアンプ120に供給する。
【0018】
ステータスレジスタ116には、メモリセルアレイ130に対する書き込みが成功したか否かを示すステータス情報、メモリセルアレイ130に対する消去が成功したか否かを示すステータス情報などが格納される。これらのステータス情報は、I/O制御部110によってコントローラ20に応答信号として送信される。
【0019】
メモリセルアレイ130は、複数のメモリセルが配列されて構成されており、ホスト(図示せず)からのライトデータが格納される。
【0020】
ロウデコーダ122、カラムデコーダ118、センスアンプ120は、制御部112による制御に基づいて、メモリセルアレイ130に対するアクセスを実行する。
【0021】
ロウデコーダ122は、ロウアドレスに対応するワード線を選択し、選択したワード線を活性化する。
【0022】
カラムデコーダ118は、カラムアドレスに対応するビット線を選択して活性化する。ビット線は、後述するメモリストリングMSと電気的に接続可能である。
【0023】
センスアンプ120は、カラムデコーダ118により選択されたビット線に電圧を印加して、ロウデコーダ122が選択したワード線とカラムデコーダ118が選択したビット線(メモリストリングMS)との交点に位置するメモリセルトランジスタに、データレジスタ119に格納されているデータを書き込む。また、センスアンプ120は、ロウデコーダ122が選択したワード線とカラムデコーダ118が選択したビット線(メモリストリングMS)との交点に位置するメモリセルトランジスタに記憶されているデータをビット線経由で読み出し、読み出したデータをデータレジスタ119に格納する。
【0024】
データレジスタ119に格納されたデータは、データ線を通してI/O制御部110に送られ、I/O制御部110から外部(例えば、コントローラ)へ転送される。
【0025】
メモリセルアレイ130は、図2に示すように構成され得る。図2は、メモリセルアレイ130の構成を示す斜視図である。図2では、簡略化のため、絶縁層及び層間絶縁膜の図示を省略している。
【0026】
ソース線SLは、基板(図示せず)の上方において板状に延びる。以下では、ソース線SLの表面に垂直な方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面内で互いに直交する2方向をX方向及びY方向とする。ソース線SLの+Z側には、積層体SSTが積層される。
【0027】
積層体SSTでは、複数の導電層が絶縁層を介して積層される。例えば、ソース線SLの+Z側には、ソース側選択ゲート線SGSが導電層で形成されている。ソース側選択ゲート線SGSの+Z側には、複数層のダミーワード線DWL、複数層のワード線WL、複数層のダミーワード線DWLがそれぞれ導電層で形成されZ方向に積層されている。図2においては、2層のダミーワード線DWL1,DWL2、64層のワード線WL0~WL63、2層のダミーワード線DWL3,DWL4がそれぞれ導電層で形成され積層されている例を示している。最も+Z側のダミーワード線DWLの+Z側にはドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3が導電層で形成されている。
【0028】
ソース側選択ゲート線SGSは、ソース線SLの+Z側でXY方向に延びる。ダミーワード線DWL1,DWL2は、ソース側選択ゲート線SGSの+Z側でXY方向に延びる。ワード線WL0~WL64は、ダミーワード線DWL1,DWL2の+Z側でXY方向に延びる。ダミーワード線DWL3,DWL4は、ワード線WL0~WL64の+Z側でXY方向に延びる。ドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3は、ダミーワード線DWL3,DWL4の+Z側でY方向に延びる。
【0029】
柱状体12は、積層体SST内をZ方向に延びる。ソース側選択ゲート電極SGS、ダミーワード線DWL1,DWL2、ワード線WL0~WL63、ダミーワード線DWL3,DWL4、ドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3を貫くように、柱状体12がZ方向に延びる。ドレイン側選択ゲート電極SGD0~SGD3によって、それぞれ、ストリングユニットSUが構成される。すなわち、ストリングユニットSUは、Y方向に沿って配置された複数のメモリストリングMSを含み、ドレイン側選択ゲート電極SGD0~SGD3によって選択的にアクセスすることが可能な単位である。
【0030】
ドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3の+Z側には、ビット線BL0~BL2がX方向に延びる。ビット線BL0~BL2の延伸方向(X方向)は、ドレイン側選択ゲート電極SGD0~SGD3の延伸方向(Y方向)に直交し、ワード線WL0~WL63の積層方向(Z方向)に直交する。柱状体12は、例えば、ソース線SLからビット線BL0~BL2までZ方向に延伸する。
【0031】
柱状体12の中心には柱状絶縁体11が形成されている。この柱状絶縁体11の材料は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。柱状絶縁体11の外面と貫通孔4の内面との間にはチャネル半導体膜7が形成され、貫通孔4の内面とチャネル半導体膜7との間にはトンネル絶縁膜8が形成され、貫通孔4の内面とトンネル絶縁膜8との間には電荷蓄積膜9が形成され、貫通孔4の内面と電荷蓄積膜9との間にはブロック絶縁膜6が形成されている。
【0032】
例えば、チャネル半導体膜7、トンネル絶縁膜8、電荷蓄積膜9およびブロック絶縁膜6が、それぞれ、ソース側選択ゲート電極SGS、ダミーワード線DWL1,DWL2、ワード線WL0~WL63、ダミーワード線DWL3,DWL4、ドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3を貫くように構成されている。
【0033】
チャネル半導体膜7は、例えば、Siなどの半導体を用いることができる。トンネル絶縁膜8およびブロック絶縁膜6は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。電荷蓄積膜9は、例えば、シリコン窒化膜またはONO膜(シリコン酸化膜/シリコン窒化膜/シリコン酸化膜の3層構造)を用いることができる。
【0034】
なお、図2では、メモリセルMTを64層分積層した構成について説明したが、メモリセルMTの積層数は、64層に限定されず、63層以下でもよいし、65層以上でもよい。
【0035】
また、図2の例では、ソース側選択ゲート線SGS、ワード線WL0~WL3およびドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3を貫く柱状体12の中心に柱状絶縁体11を形成する方法について説明したが、柱状絶縁体11の代わりに柱状半導体を埋め込むようにしてもよい。
【0036】
メモリセルアレイ130は、複数のブロックを有する。各ブロックは、互いに離間して交差する複数のワード線および複数のビット線(メモリストリングMS)の交差位置に複数のメモリセルトランジスタMTを有する。以下では、メモリセルトランジスタMTを単にメモリセルMTと呼ぶことにする。図3は、1個のブロックの構成例を示す回路図である。
【0037】
ブロックBLKは、複数のストリングユニットSU0~SU3を有する。複数のストリングユニットSU0~SU3は、ドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3に対応しているとともにソース側選択ゲート線SGSを共有している。ストリングユニットSU0~SU3は、ドレイン側選択ゲート線SGD0~SGD3によって、それぞれ、選択的にアクセスすることが可能である。また、各ストリングユニットSU0~SU3は、複数のメモリストリングMSを含む。
【0038】
各メモリストリングMSは、例えば64個のメモリセルMT(MT0~MT63)および選択トランジスタST1,ST2を含んでいる。メモリセルMTは、コントロールゲートと電荷蓄積膜とを有し、データを不揮発に保持する。そして64個のメモリセルMT(MT0~MT63)は、選択トランジスタSDTのソースと選択トランジスタST2のドレインとの間に直列接続されている。なお、メモリストリングMS内のメモリセルMTの個数は64個に限定されない。
【0039】
ビット線BL0~BLp(各ビット線を区別しない場合には、BLで示すことにする)は、メモリストリングMSに接続されている。選択トランジスタST1がオンされた際に、メモリストリングMS内の各メモリセルMTのチャネル領域がビット線BLに導通され得る。各ビット線BLには、センスアンプ回路SAC内の複数のセンスアンプSA0~SApのうち対応するセンスアンプSAが接続されている。
【0040】
ワード線WL0~WL63(各ワード線を区別しない場合には、WLで示すことにする)は、物理ブロックBLK内の各ストリングユニットSU内の各メモリストリングMS間で、メモリセルMTのコントロールゲートを共通に接続している。つまり、物理ブロックBLK内の各ストリングユニットSU内において同一行にあるメモリセルMTのコントロールゲートは、同一のワード線WLに接続される。すなわち、物理ブロックBLKのストリングユニットSUは複数のワード線WLに対応した複数のメモリセルグループMCGを含み、各メモリセルグループMCGは同一のワード線WLに接続される(p+1)個のメモリセルMTを含む。各メモリセルMTに1ビットの値を保持可能に構成される場合(シングルレベルセル(SLC)モードで動作する場合)には、同一のワード線WLに接続される(p+1)個のメモリセルMT(すなわち、メモリグループMCG)は1つの物理ページとして取り扱われ、この物理ページごとにデータの書き込み処理及びデータの読み出し処理が行われる。
【0041】
また、ソース側選択ゲート線SGSとワード線WL0との間には、ダミーワード線DWL1及びダミーワード線DWL2が設けられる。各メモリストリングMSTにおける選択トランジスタST2とメモリセルMT0との間には、ダミーワード線DWL1及びダミーワード線DWL2に対応してダミーメモリセルDMT1とダミーメモリセルDMT2とが設けられる。ダミーメモリセルDMT1とダミーメモリセルDMT2とは、それぞれ、メモリセルMTと同様の構造を有する。
【0042】
ワード線WL63とドレイン側選択ゲート線SGDとの間には、ダミーワード線DWL3及びダミーワード線DWL4が設けられる。各メモリストリングMSTにおけるメモリセルMT63と選択トランジスタST1との間には、ダミーワード線DWL3及びダミーワード線DWL4に対応してダミーメモリセルDMT3とダミーメモリセルDMT4とが設けられる。ダミーメモリセルDMT3とダミーメモリセルDMT4とは、それぞれ、メモリセルMTと同様の構造を有する。
【0043】
各メモリセルMTに複数ビットの値を保持可能に構成される場合がある。例えば、各メモリセルMTがn(n≧2)ビットの値を記憶可能な場合、ワード線WL当たりの記憶容量はn個の物理ページ分のサイズに等しくなる。すなわち、各メモリセルグループMCGは、n個の物理ページとして取り扱われる。例えば、各メモリセルMTが2ビットの値を記憶するマルチレベルセル(MLC)モードでは、各ワード線WLに2個の物理ページ分のデータが保持される。あるいは、各メモリセルMTが3ビットの値を記憶するトリプルレベルセル(TLC)モードでは、各ワード線WLに3個の物理ページ分のデータが保持される。あるいは、各メモリセルMTが4ビットの値を記憶するクワッドレベルセル(QLC)モードでは、各ワード線WLに4個の物理ページ分のデータが保持される。あるいは、各メモリセルMTが5ビットの値を記憶するペンタレベルセル(PLC)モードでは、各ワード線WLに5個の物理ページ分のデータが保持される。
【0044】
不揮発性メモリ20は、図4に示すように、世代が進むにつれて、メモリセルアレイ23におけるリード時のメモリセルの信頼性に関して、マージンが厳しくなりつつある。図4は、メモリセルアレイ23の閾値分布を示す図である。
【0045】
例えば、メモリセルがSLCモードでライトされる場合、図4(a)に示すように、閾値電圧が制御される範囲(Vmin~Vmaxの範囲)内に、2個のステート(小領域)ST0~ST1が存在する。各ステートSTは、メモリセルの閾値電圧の分布を示す。各ステートSTには、異なる1ビットの値が対応付けられる。ステートST0,ST1に、それぞれ、“1”,“0”が対応付けられ得る。ステートST0,ST1間の電圧マージンΔVr0が比較的広く、リード電圧Vr1と両側のステートSTとの間の電圧マージンを広く確保できる。このため、リード電圧Vr1でメモリセルのデータをリードした際のビットエラーレート(BER)は比較的低いと考えられる。
【0046】
メモリセルがMLCモードでライトされる場合、図4(b)に示すように、閾値電圧が制御される範囲(Vmin~Vmaxの範囲)内に、4個のステートST0~ST3が存在する。各ステートSTは、メモリセルの閾値電圧の分布を示す。各ステートSTには、異なる2ビットの値が対応付けられる。ステートST0,・・・,ST3に、それぞれ、“11”,・・・,“00”が対応付けられ得る。ステートST0~ST3間の電圧マージンΔVr10がSLCの電圧マージンΔVr0より狭く、各リード電圧Vr11~Vr13と両側のステートSTとの間の電圧マージンがSLCより狭くなる。このため、各リード電圧Vr11~Vr13でメモリセルのデータをリードした際のビットエラーレート(BER)がSLCより増加すると考えられる。
【0047】
メモリセルがTLCモードでライトされる場合、図4(c)に示すように、閾値電圧が制御される範囲(Vmin~Vmaxの範囲)内に、8個のステートST0~ST7が存在する。各ステートSTは、メモリセルの閾値電圧の分布を示す。各ステートSTには、異なる3ビットの値が対応付けられる。ステートST0,・・・,ST7に、それぞれ、“111”,・・・,“000”が対応付けられ得る。ステートST0~ST7間の電圧マージンΔVr20がMLCの電圧マージンΔVr10より狭く、各リード電圧Vr21~Vr27と両側のステートSTとの間の電圧マージンがMLCより狭くなる。このため、各リード電圧Vr21~Vr27でメモリセルのデータをリードした際のビットエラーレート(BER)がMLCより増加すると考えられる。
【0048】
メモリセルがQLCモードでライトされる場合、図4(d)に示すように、閾値電圧が制御される範囲(Vmin~Vmaxの範囲)内に、16個のステートST0~ST15が存在する。各ステートSTは、メモリセルの閾値電圧の分布を示す。各ステートSTには、異なる4ビットの値が対応付けられる。ステートST0,・・・,ST15に、それぞれ、“1111”,・・・,“0000”が対応付けられ得る。各ステートST0~ST15間の電圧マージンがTLCの電圧マージンΔVr20より狭く、各リード電圧Vr31~Vr45と両側のステートSTとの間の電圧マージンがTLCより狭くなる。このため、各リード電圧Vr31~Vr45でメモリセルのデータをリードした際のビットエラーレート(BER)がTLCより増加すると考えられる。
【0049】
メモリセルがPLCモードでライトされる場合、図4(e)に示すように、閾値電圧が制御される範囲(Vmin~Vmaxの範囲)内に、32個のステートST0~ST31が存在する。各ステートSTは、メモリセルの閾値電圧の分布を示す。各ステートSTには、異なる5ビットの値が対応付けられる。ステートST0,・・・,ST31に、それぞれ、“11111”,・・・,“00000”が対応付けられ得る。ステートST0~ST31間の電圧マージンがQLCの電圧マージンより狭く、各リード電圧Vr51~Vr81と両側のステートSTとの間の電圧マージンがQLCより狭くなる。このため、各リード電圧Vr51~Vr81でメモリセルのデータをリードした際のビットエラーレート(BER)がQLCより増加すると考えられる。
【0050】
メモリセルアレイ130では、Z方向両端のワード線WL0,WL63は、内側のワード線WL1~WL62と異なり、隣接するワード線WLがZ方向片側にしか存在しない(図2参照)。このため、Z方向両端のワード線WL0,WL63は、内側のワード線WL1~WL62に比べて、他のワード線WLへプログラム電圧が印加されている際にその電界の影響をより受けやすい。
【0051】
この点を考慮し、半導体記憶装置100は、図5に示すような動作モードを有する。図5は、半導体記憶装置100の動作モードを示す図である。
【0052】
第1のモードでは、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルは、TLCモードでデータがライトされるが、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルは、SLCモードでデータがライトされる。このとき、ワード線WL0~WL63の-Z側のダミーワード線DWL1,DWL2に対応するメモリセルもSLCモードでデータがライトされ、ダミーワード線DWL1,DWL2及びワード線WL0に対応するメモリセルで、TLCモードに相当するデータ容量が実現され得る。ワード線WL0~WL63の+Z側のダミーワード線DWL3,DWL4に対応するメモリセルもSLCモードでデータがライトされ、ワード線WL63及びダミーワード線DWL3,DWL4に対応するメモリセルで、TLCモードに相当するデータ容量が実現され得る。
【0053】
第2のモードでは、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルは、TLCモードでデータがライトされるが、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルは、SLCモードでデータがライトされる。このとき、ワード線WL0~WL63の-Z側のダミーワード線DWL1,DWL2に対応するメモリセルには、データがライトされない。ワード線WL0~WL63の+Z側のダミーワード線DWL3,DWL4に対応するメモリセルには、データがライトされない。
【0054】
第1のモード及び第2のモードのいずれにおいても、複数のワード線WL0~WL63のうち、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルMTがTLCモードでライトされる。
【0055】
これに応じて、半導体記憶装置100は、図6及び図7に示すようなライト動作が行われる。図6及び図7は、それぞれ、半導体記憶装置100の動作を示す斜視図である。
【0056】
以下の説明においては、プログラム動作の対象となるページに接続されたワード線を選択ワード線WLと呼び、それ以外のワード線を非選択ワード線WLと呼ぶ。プログラム動作の対象となるページにおいて閾値電圧を上昇させるべきメモリセルMTを選択メモリセルMTと呼び、選択メモリセルMTを含むメモリストリングを選択メモリストリングMSと呼ぶ。同様に、プログラム動作の対象となるページにおいて閾値電圧を維持させるべきメモリセルMTを非選択メモリセルMTと呼び、非選択メモリセルMTを含むメモリストリングMSを非選択メモリストリングMSと呼ぶ。なお、プログラム動作の対象とならないページに属するメモリセルMTについても、非選択メモリセルMTと呼ぶ。選択メモリストリングMSに接続されるビット線BLを選択ビット線BLと呼び、非選択メモリストリングMSに接続されるビット線を非選択ビット線BLと呼ぶ。
【0057】
図6は、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルへのTLCモードでのライト動作を示す。例えば、選択ワード線WL1に対応する選択メモリセルMT1_0へTLCモードでデータがライトされる場合、選択ワード線WL1にプログラム電圧VPGMが印加され、非選択ワード線WL0,WL2~WL63及びダミーワード線DWL1~DWL4に転送電圧VPASS1が印加される。プログラム電圧VPGMは、例えば、TLCモードにおける最も高電圧側のステートST7のベリファイ電圧Vf27(図8参照)に略等しい。TLCモードにおけるステートST7のベリファイ電圧Vf27は、例えば、24Vである。転送電圧VPASS1は、例えば、10Vである。選択ビット線BL0に基準電圧VSS4が印加され、非選択ビット線BL1,BL2に書き込み禁止電圧VINHIBITが印加される。基準電圧VSS4は、例えば、0Vである。書き込み禁止電圧VINHIBITは、例えば、5Vである。
【0058】
選択ソース側選択ゲート線SGSに基準電圧VSS3が印加され、選択ドレイン側選択ゲート線SGD0に選択電圧VSGDが印加され、非選択ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に基準電圧VSS2が印加される。基準電圧VSS3は、例えば、0Vである。選択電圧VSGDは、例えば、2.5Vである。基準電圧VSS2は、例えば、0Vである。
【0059】
このとき、非選択のビット線BL1,BL2又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する選択トランジスタST1_1,ST1_2がオフし、非選択メモリストリングMS_1,MS_2がフローティング状態になる。非選択メモリストリングMS_1,MS_2は、非選択ワード線WL0,WL2~WL63とのカップリングにより所定電圧VBOOST1にブーストされ得る。所定電圧VBOOST1は、非選択ワード線WL0,WL2~WL63の転送電圧VPASS1に応じた電圧であり、転送電圧VPASS1に略等しくてもよい。これにより、選択ワード線WL1と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT1_1,MT1_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST1との電圧差ΔVDISTURB1に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB1について、次の数式1が成り立つ。
ΔVDISTURB1=VPGM-VBOOST1≒VPGM1-VPASS1・・・数式1
【0060】
例えば、VPGM=24V、VPASS1=10Vである場合、数式1により、電圧差ΔVDISTURB1≒14Vである。
【0061】
電圧差ΔVDISTURB1に応じたプログラムディスターブにより、TLCモードでライトされたメモリセルの閾値分布において、消去状態のステートST0は、図8(a)に点線で示す状態から実線で示す状態へシフトし得る。例えば、消去状態のステートST0は、電圧差ΔVDISTURB1(例えば、14V)に応じたシフト量VPD1で高電圧側へシフトし得る。
【0062】
図7は、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルへのライト動作を示す。例えば、選択ワード線WL0に対応する選択メモリセルMT0_0へSLCモードでデータがライトされる場合、選択ワード線WL0にプログラム電圧VPGMが印加され、非選択ワード線WL1~WL63及びダミーワード線DWL1~DWL4に転送電圧VPASS2が印加される。プログラム電圧VPGMは、例えば、SLCモードにおける最も高電圧側のステートST1のベリファイ電圧Vf1(図8参照)に略等しい。SLCモードにおけるステートST1のベリファイ電圧Vf1は、例えば、20Vである。転送電圧VPASS2は、転送電圧VPASS1より低い。数式2、数式3に示すように、転送電圧VPASS2は、ベリファイ電圧Vf27とベリファイ電圧Vf1との差分ΔVPGM1に応じて、転送電圧VPASS1より低くてもよい。
ΔVPGM1=Vf27-Vf1・・・数式2
PASS2=VPASS1-ΔVPGM1・・・数式3
【0063】
例えば、Vf27=24V、Vf1=20Vである場合、数式2により、ΔVPGM1=4Vである。VPASS1=10Vであれば、数式3により、VPASS2=6Vになる。
【0064】
選択ビット線BL0に基準電圧VSS4が印加され、非選択ビット線BL1,BL2に書き込み禁止電圧VINHIBITが印加される。基準電圧VSS4は、例えば、0Vである。書き込み禁止電圧VINHIBITは、例えば、5Vである。
【0065】
選択ソース側選択ゲート線SGSに基準電圧VSS3が印加され、選択ドレイン側選択ゲート線SGD0に選択電圧VSGDが印加され、非選択ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に基準電圧VSS2が印加される。基準電圧VSS3は、例えば、0Vである。選択電圧VSGDは、例えば、2.5Vである。基準電圧VSS2は、例えば、0Vである。
【0066】
このとき、非選択のビット線BL1,BL2又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する選択トランジスタST1_1,ST1_2がオフし、非選択メモリストリングMS_1,MS_2がフローティング状態になる。非選択メモリストリングMS_1,MS_2は、非選択ワード線WL0,WL2~WL63とのカップリングにより所定電圧VBOOST2にブーストされ得る。所定電圧VBOOST2は、非選択ワード線WL1~WL63の転送電圧VPASS2に応じた電圧であり、数式4に示すように、転送電圧VPASS2に略等しくてもよい。
BOOST2≒VPASS2・・・数式4
【0067】
数式4により、選択ワード線WL0と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT0_1,MT0_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST2との電圧差ΔVDISTURB2に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB2について、次の数式5が成り立つ。
ΔVDISTURB2=VPGM1-VBOOST2≒VPGM1-VPASS2・・・数式5
【0068】
例えば、VPGM=20V、VPASS2=6Vである場合、数式5により、電圧差ΔVDISTURB2≒14Vである。
【0069】
電圧差ΔVDISTURB2に応じたプログラムディスターブにより、SLCモードでライトされたメモリセルの閾値分布において、消去状態のステートST0は、図8(b)に点線で示す状態から実線で示す状態へシフトし得る。例えば、消去状態のステートST0は、電圧差ΔVDISTURB2(例えば、14V)に応じたシフト量VPD2で高電圧側へシフトし得る。
【0070】
すなわち、メモリセルMT1_0へTLCモードでデータがライトされる場合に比べて、メモリセルMT0_0へSLCモードでデータがライトされる場合、プログラム電圧VPGMが数式2で示すΔVPGM1分低いが、転送電圧も略ΔVPGM1分下げられたVPASS2とされる。数式5に示すように、両者の変化が相殺され、両者の電圧差ΔVDISTURB2としては同等程度の値(例えば、14V)になり得る。これにより、メモリセルMT0_0へSLCモードでデータがライトされる場合に非選択メモリセルMT0_1,MT0_2が受けるプログラムディスターブの程度を、メモリセルMT1_0へTLCモードでデータがライトされる場合に非選択メモリセルMT1_1,MT1_2が受けるプログラムディスターブの程度と同等にできる。
【0071】
すなわち、図8(a)に示すTLCモードでの消去状態のステートST0のシフト量VPD1図8(b)に示すSLCモードでの消去状態のステートST0のシフト量VPD2とは、同等程度であり、次の数式6が成り立つ。
PD1≒VPD2・・・数式6
【0072】
これにより、プログラムディスターブを受けた後における消去状態のステートST0の電圧位置をTLCモードとSLCモードとで同等程度にすることができる。これにより、TLCモードでライトされたメモリセルMTからSLCモードでライトされたメモリセルMTとへの電荷の横抜けを抑制できるなど、各メモリセルMTにおけるデータリテンション特性を向上できる。
【0073】
以上のように、実施形態では、半導体記憶装置1は、SLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS2の値をTLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS1の値より低くする。例えば、転送電圧VPASS2の値は、TLCモードにおける最も降圧側のステートST7のベリファイ電圧Vf27とSLCモードにおける最も降圧側のステートST1のベリファイ電圧Vf1との差分ΔVPGM1に応じて、転送電圧VPASS1の値より(例えば、略4V)低くされる。これにより、SLCモードにおけるプログラムディスターブとTLCモードにおけるプログラムディスターブとを同等程度にすることができる。この結果、TLCモードでライトされたメモリセルMTからSLCモードでライトされたメモリセルMTとへの電荷の横抜けを抑制できるなど、各メモリセルMTにおけるデータリテンション特性を向上できる。
【0074】
例えば、SLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS1の値をTLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS1の値と均等にする場合を考える。この場合、半導体記憶装置900において、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルへのSLCモードでのライト動作が、図9に示すように、次の点で図7に示すSLCモードでのライト動作と異なる。
【0075】
例えば、選択メモリセルMT0_0へSLCモードでデータがライトされる場合、非選択ワード線WL1~WL63及びダミーワード線DWL1~DWL4に印加される転送電圧VPASS1が、TLCモードのライト動作(例えば、図8に示すTLCモードでのライト動作)の転送電圧VPASS1と同様である。これに応じて、非選択メモリストリングMS_1,MS_2が非選択ワード線WL0,WL2~WL63とのカップリングによりブーストされ得る所定電圧VBOOST3が、図7に示すSLCモードでのライト動作より高くなる。所定電圧VBOOST3は、非選択ワード線WL1~WL63の転送電圧VPASS1に応じた電圧であり、数式7に示すように、転送電圧VPASS1に略等しくてもよい。
BOOST3≒VPASS1・・・数式7
【0076】
数式7により、選択ワード線WL0と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT0_1,MT0_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST3との電圧差ΔVDISTURB3に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB3について、次の数式8が成り立つ。
ΔVDISTURB3=VPGM-VBOOST3≒VPGM-VPASS1・・・数式8
【0077】
例えば、VPGM=20V、VPASS1=10Vである場合、数式8により、電圧差ΔVDISTURB3≒10Vである。
【0078】
電圧差ΔVDISTURB3に応じたプログラムディスターブにより、SLCモードでライトされたメモリセルの閾値分布において、消去状態のステートST0は、図10(b)に点線で示す状態から実線で示す状態へシフトし得る。図10は、ビット数の異なるメモリセルのライト時の転送電圧を同じした場合におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図であり、3ビット(TCLモード)及び1ビット(SLCモード)のメモリセルのライト時の転送電圧を同じした場合におけるメモリセルアレイの閾値分布を例示する。
【0079】
例えば、消去状態のステートST0は、電圧差ΔVDISTURB3(例えば、10V)に応じたシフト量VPD3で高電圧側へシフトし得る。
【0080】
数式1に示す電圧差ΔVDISTURB2(例えば、14V)に比べて、数式5に示す電圧差ΔVDISTURB3(例えば、10V)は小さい。これにより、図10(a)、図10(b)に示されるように、TLCモードにおける消去状態のステートST0のシフト量VPD1に比べて、SLCモードにおける消去状態のステートST0のシフト量VPD3は小さい。シフト後の状態において、TLCモードの消去状態のステートST0に比べてSLCモードの消去状態のステートST0が低電圧側になっている。
【0081】
これにより、図11に示すような電荷の横抜けが起こりやすくなる。図11は、電荷の横抜けを示す断面図である。図11では、簡略化のため、導電層WL間の絶縁層の図示が省略されている。
【0082】
例えば、ワード線WL1に対応するメモリセルMT1とワード線WL0に対応するメモリセルMT0とがZ方向に隣接し、メモリセルMT1がステートST7(図10(a)参照)にプログラムされており、メモリセルMT0が消去状態のステートST0(図10(b)参照)にあるとする。メモリセルMT1の電荷蓄積膜CTとメモリセルMT0の電荷蓄積膜CTとの間で蓄積電荷量の違いによる電界が生じる。この電界は、TLCモードの消去状態のステートST0に比べてSLCモードの消去状態のステートST0が低電圧側になっていることでより大きくなるため、図11に点線示すように、電子がメモリセルMT1からメモリセルMT0へ容易に抜け得る。これにより、メモリセルMT1に記憶された情報が消失するなど、メモリセルMT1のデータリテンション特性が劣化し得る。
【0083】
それに対して、実施形態では、半導体記憶装置1は、SLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS2の値をTLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS1の値より低くする。これにより、SLCモードにおけるプログラムディスターブとTLCモードにおけるプログラムディスターブとを同等程度にすることができる。この結果、TLCモードでライトされたメモリセルMTからSLCモードでライトされたメモリセルMTへの電荷の横抜けを抑制できるなど、各メモリセルMTにおけるデータリテンション特性を向上できる。
【0084】
なお、実施形態の考え方は、メモリセルアレイ130の各ブロックBLKにおけるZ方向両端のワード線WLに対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ内側のワード線WLに対応するメモリセルMTがSLCモードよりビット数が多い任意の動作モードに適用可能である。
【0085】
例えば、実施形態の考え方は、複数のワード線WL0~WL63(図2参照)のうち、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルMTがMLCモードでライトされる動作モードに適用されてもよい。
【0086】
あるいは、実施形態の第1の変形例として、実施形態の考え方は、複数のワード線WL0~WL63(図2参照)のうち、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルMTがQLCモードでライトされる動作モードに適用されてもよい。
【0087】
この場合、SLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS4の値をQLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS1の値より低くする。
【0088】
例えば、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルMTへのQLCモードでのライト動作では、図6と同様の電圧印加が行われる。
【0089】
このとき、選択ワード線WL1と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT1_1,MT1_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST1との電圧差ΔVDISTURB1に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB1について、数式1が成り立つ。プログラム電圧VPGMは、図12(a)に示すようなQLCモードにおける最も高電圧側のステートST15のベリファイ電圧Vf45に略均等であってもよい。図12は、実施形態の第1の変形例におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図である。例えば、VPGM=Vf45=26V、VPASS1=10Vである場合、数式1により、電圧差ΔVDISTURB1≒16Vである。
【0090】
また、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルMTへのSLCモードでのライト動作では、図7において転送電圧VPASS2が転送電圧VPASS4に置き換えられたのと同様の電圧印加が行われる。転送電圧VPASS4は、転送電圧VPASS1より低い。数式9、数式10に示すように、転送電圧VPASS4は、ベリファイ電圧Vf45とベリファイ電圧Vf1との差分ΔVPGM2図12(a)、図12(b)参照)に応じて、転送電圧VPASS1より低くてもよい。
ΔVPGM2=Vf45-Vf1・・・数式9
PASS4=VPASS1-ΔVPGM2・・・数式10
【0091】
例えば、Vf45=26V、Vf1=20Vである場合、数式9により、ΔVPGM2=6Vである。VPASS1=10Vであれば、数式10により、VPASS4=4Vになる。
【0092】
このとき、非選択のビット線BL1,BL2又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する選択トランジスタST1_1,ST1_2がオフし、非選択メモリストリングMS_1,MS_2がフローティング状態になる。非選択メモリストリングMS_1,MS_2は、非選択ワード線WL0,WL2~WL63とのカップリングにより所定電圧VBOOST4にブーストされ得る。所定電圧VBOOST4は、非選択ワード線WL1~WL63の転送電圧VPASS4に応じた電圧であり、数式11に示すように、転送電圧VPASS4に略等しくてもよい。
BOOST4≒VPASS4・・・数式11
【0093】
数式11により、選択ワード線WL0と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT0_1,MT0_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST4との電圧差ΔVDISTURB4に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB4について、次の数式12が成り立つ。
ΔVDISTURB4=VPGM-VBOOST4≒VPGM-VPASS4・・・数式12
【0094】
例えば、VPGM=20V、VPASS4=4Vである場合、数式12により、電圧差ΔVDISTURB4≒16Vである。数式12に示す電圧差ΔVDISTURB4の値は、数式1に示す電圧差ΔVDISTURB1の値と同等程度になり得る。
【0095】
このような動作によっても、SLCモードにおけるプログラムディスターブとQLCモードにおけるプログラムディスターブとを同等程度にすることができる。この結果、QLCモードでライトされたメモリセルMTからSLCモードでライトされたメモリセルMTとへの電荷の横抜けを抑制できるなど、各メモリセルMTにおけるデータリテンション特性を向上できる。
【0096】
あるいは、実施形態の第2の変形例として、実施形態の考え方は、複数のワード線WL0~WL63(図2参照)のうち、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルMTがPLCモードでライトされる動作モードに適用されてもよい。
【0097】
この場合、SLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS5の値をPLCモードで選択メモリセルMTへデータがライトされる際の転送電圧VPASS1の値より低くする。
【0098】
例えば、内側のワード線WL1~WL62に対応するメモリセルMTへのPLCモードでのライト動作では、図6と同様の電圧印加が行われる。
【0099】
このとき、選択ワード線WL1と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT1_1,MT1_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST1との電圧差ΔVDISTURB1に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB1について、数式1が成り立つ。プログラム電圧VPGMは、図13(a)に示すようなPLCモードにおける最も高電圧側のステートST31のベリファイ電圧Vf81に略均等であってもよい。図13は、実施形態の第2の変形例におけるメモリセルアレイの閾値分布を示す図である。例えば、VPGM=Vf81=28V、VPASS1=10Vである場合、数式1により、電圧差ΔVDISTURB1≒18Vである。
【0100】
また、Z方向両端のワード線WL0,WL63に対応するメモリセルMTへのSLCモードでのライト動作では、図7において転送電圧VPASS2が転送電圧VPASS5に置き換えられたのと同様の電圧印加が行われる。転送電圧VPASS5は、転送電圧VPASS1より低い。数式13、数式14に示すように、転送電圧VPASS4は、ベリファイ電圧Vf81とベリファイ電圧Vf1との差分ΔVPGM3図13(a)、図13(b)参照)に応じて、転送電圧VPASS1より低くてもよい。
ΔVPGM3=Vf81-Vf1・・・数式13
PASS5=VPASS1-ΔVPGM3・・・数式14
【0101】
例えば、Vf81=28V、Vf1=20Vである場合、数式13により、ΔVPGM3=8Vである。VPASS1=10Vであれば、数式14により、VPASS4=2Vになる。
【0102】
このとき、非選択のビット線BL1,BL2又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する選択トランジスタST1_1,ST1_2がオフし、非選択メモリストリングMS_1,MS_2がフローティング状態になる。非選択メモリストリングMS_1,MS_2は、非選択ワード線WL0,WL2~WL63とのカップリングにより所定電圧VBOOST5にブーストされ得る。所定電圧VBOOST5は、非選択ワード線WL1~WL63の転送電圧VPASS5に応じた電圧であり、数式15に示すように、転送電圧VPASS5に略等しくてもよい。
BOOST5≒VPASS5・・・数式15
【0103】
数式15により、選択ワード線WL0と非選択メモリストリングMS_1,MS_2との交差位置に対応するメモリセルMT0_1,MT0_2は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST5との電圧差ΔVDISTURB5に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB5について、次の数式16が成り立つ。
ΔVDISTURB5=VPGM-VBOOST5≒VPGM-VPASS5・・・数式16
【0104】
例えば、VPGM=20V、VPASS5=2Vである場合、数式16により、電圧差ΔVDISTURB5≒18Vである。数式16に示す電圧差ΔVDISTURB4の値は、数式1に示す電圧差ΔVDISTURB1の値と同等程度になり得る。
【0105】
このような動作によっても、SLCモードにおけるプログラムディスターブとPLCモードにおけるプログラムディスターブとを同等程度にすることができる。この結果、PLCモードでライトされたメモリセルMTからSLCモードでライトされたメモリセルMTとへの電荷の横抜けを抑制できるなど、各メモリセルMTにおけるデータリテンション特性を向上できる。
【0106】
あるいは、実施形態の第3の変形例として、実施形態の考え方は、複数のティアが積層された柱状体12iを含むメモリセルアレイ130iに適用されてもよい。
【0107】
例えば、図14に示す半導体記憶装置100iのメモリセルアレイ130iは、ソース線SLの上方に積層体SSTiが積層される。図14は、メモリセルアレイ130iの構成を示す断面図である。
【0108】
積層体SSTiでは、選択ゲート線SGS、ダミーワード線DWL1,DWL2、複数のワード線WL0~WL47、ダミーワード線DWL3~DWL6、複数のワード線WL48~WL95、ダミーワード線DWL7,DWL8、選択ゲート線SGD(SGD0~SGD3のいずれか)が互いに離間しながら積層される。積層体SSTiにおける選択ゲート線SGS、ダミーワード線DWL1,DWL2、複数のワード線WL0~WL47、ダミーワード線DWL3~DWL6、複数のワード線WL48~WL95、ダミーワード線DWL7,DWL8、選択ゲート線SGDは、積層方向に延びる柱状体4で貫通される。柱状体4iは、複数のティア4a,4bが積層された構造を有する。これに対応して、積層体SSTiは、複数の積層体SSTa,SSTbが積層された構造を有する。図14では、柱状体4が2つのティア4a,4bに分割され積層体SSTが2つの積層体SSTa,231bに分割される構造が例示されるが、柱状体4が3つ以上に分割されてもよく積層体SSTが3つ以上に分割されてもよい。
【0109】
積層体SSTaでは、選択ゲート線SGS、ダミーワード線DWL1,DWL2、複数のワード線WL0~WL47、ダミーワード線DWL3,DWL4が互いに離間しながら積層される。積層体SSTaでは、Z方向両端のワード線WL0,WL47は、内側のワード線WL1~WL46と異なり、隣接するワード線WLがZ方向片側にしか存在しない。このため、Z方向両端のワード線WL0,WL47は、内側のワード線WL1~WL46に比べて、他のワード線WLへプログラム電圧が印加されている際にその電界の影響をより受けやすい。
【0110】
積層体SSTbでは、ダミーワード線DWL5,DWL6、複数のワード線WL48~WL95、ダミーワード線DWL7,DWL8、選択ゲート線SGDが互いに離間しながら積層される。積層体SSTbでは、Z方向両端のワード線WL48,WL95は、内側のワード線WL49~WL94と異なり、隣接するワード線WLがZ方向片側にしか存在しない。このため、Z方向両端のワード線WL48,WL95は、内側のワード線WL49~WL94に比べて、他のワード線WLへプログラム電圧が印加されている際にその電界の影響をより受けやすい。
【0111】
この点を考慮し、半導体記憶装置100iは、図15に示すような動作モードを有する。図15は、半導体記憶装置100iの動作モードを示す図である。
【0112】
第1のモードでは、積層体SSTaの内側のワード線WL1~WL46に対応するメモリセルと積層体SSTbの内側のワード線WL49~WL94に対応するメモリセルとは、TLCモードでデータがライトされるが、積層体SSTaのZ方向両端のワード線WL0,WL47に対応するメモリセルと積層体SSTbのZ方向両端のワード線WL48,WL95に対応するメモリセルとは、SLCモードでデータがライトされる。
【0113】
このとき、積層体SSTaにおけるワード線WL0~WL47の-Z側のダミーワード線DWL1,DWL2に対応するメモリセルもSLCモードでデータがライトされ、ダミーワード線DWL1,DWL2及びワード線WL0に対応するメモリセルで、TLCモードに相当するデータ容量が実現され得る。ワード線WL0~WL47の+Z側のダミーワード線DWL3,DWL4に対応するメモリセルもSLCモードでデータがライトされ、ワード線WL47及びダミーワード線DWL3,DWL4に対応するメモリセルで、TLCモードに相当するデータ容量が実現され得る。
【0114】
同様に、積層体SSTbにおけるワード線WL48~WL95の-Z側のダミーワード線DWL5,DWL6に対応するメモリセルもSLCモードでデータがライトされ、ダミーワード線DWL5,DWL6及びワード線WL48に対応するメモリセルで、TLCモードに相当するデータ容量が実現され得る。ワード線WL48~WL95の+Z側のダミーワード線DWL7,DWL8に対応するメモリセルもSLCモードでデータがライトされ、ワード線WL95及びダミーワード線DWL7,DWL8に対応するメモリセルで、TLCモードに相当するデータ容量が実現され得る。
【0115】
第2のモードでは、積層体SSTaにおける内側のワード線WL1~WL46に対応するメモリセルは、TLCモードでデータがライトされるが、Z方向両端のワード線WL0,WL47に対応するメモリセルは、SLCモードでデータがライトされる。このとき、ワード線W0~WL47の-Z側のダミーワード線DWL1,DWL2に対応するメモリセルには、データがライトされない。ワード線W0~WL47の+Z側のダミーワード線DWL3,DWL4に対応するメモリセルには、データがライトされない。
【0116】
同様に、積層体SSTbにおける内側のワード線WL49~WL94に対応するメモリセルは、TLCモードでデータがライトされるが、Z方向両端のワード線WL48,WL95に対応するメモリセルは、SLCモードでデータがライトされる。このとき、ワード線W48~WL95の-Z側のダミーワード線DWL5,DWL6に対応するメモリセルには、データがライトされない。ワード線W48~WL95の+Z側のダミーワード線DWL7,DWL8に対応するメモリセルには、データがライトされない。
【0117】
第1のモード及び第2のモードのいずれにおいても、複数のワード線WL0~WL95のうち、各積層体SSTa,SSTbにおけるZ方向両端のワード線WL0,WL47,WL48,WL95に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL46,WL49~WL94に対応するメモリセルMTがTLCモードでライトされる。
【0118】
これに応じて、半導体記憶装置100iは、図16及び図17に示すようなライト動作が行われる。図16及び図17は、それぞれ、半導体記憶装置100iの動作を示す斜視図である。
【0119】
図16は、積層体SSTaにおける内側のワード線WL1~WL46に対応するメモリセル、又は、積層体SSTbにおける内側のワード線WL49~WL94に対応するメモリセルへのTLCモードでのライト動作を示す。例えば、選択ワード線WL49に対応する選択メモリセルMT49_0へTLCモードでデータがライトされる場合、選択ワード線WL49にプログラム電圧VPGMが印加され、非選択ワード線WL0~WL48,WL50~WL95及びダミーワード線DWL1~DWL8に転送電圧VPASS1が印加される。プログラム電圧VPGMは、例えば、TLCモードにおける最も高電圧側のステートST7のベリファイ電圧Vf27(図8参照)に略等しい。TLCモードにおけるステートST7のベリファイ電圧Vf27は、例えば、24Vである。転送電圧VPASS1は、例えば、10Vである。選択ビット線BL0に基準電圧VSS4が印加され、非選択ビット線BL1,BL2(図6参照)に書き込み禁止電圧VINHIBITが印加される。基準電圧VSS4は、例えば、0Vである。書き込み禁止電圧VINHIBITは、例えば、5Vである。
【0120】
選択ソース側選択ゲート線SGSに基準電圧VSS3が印加され、選択ドレイン側選択ゲート線SGD0に選択電圧VSGDが印加され、非選択ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に基準電圧VSS2が印加される。基準電圧VSS3は、例えば、0Vである。選択電圧VSGDは、例えば、2.5Vである。基準電圧VSS2は、例えば、0Vである。
【0121】
このとき、非選択のビット線BL1,BL2(図6参照)又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する選択トランジスタST1_1,ST1_2がオフし、例えば非選択メモリストリングMS_1,MS_2,MS_3がフローティング状態になる。非選択メモリストリングMS_1,MS_2,MS_3は、非選択ワード線WL0~WL48,WL50~WL95とのカップリングにより所定電圧VBOOST1にブーストされ得る。所定電圧VBOOST1は、非選択ワード線WL0~WL48,WL50~WL95の転送電圧VPASS1に応じた電圧であり、転送電圧VPASS1に略等しくてもよい。これにより、選択ワード線WL49と非選択メモリストリングMS_1,MS_2,MS_3との交差位置に対応するメモリセルMT49_1,MT49_2,MT49_3は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST1との電圧差ΔVDISTURB1に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB1について、数式1が成り立つ。
【0122】
例えば、VPGM=24V、VPASS1=10Vである場合、数式1により、電圧差ΔVDISTURB1≒14Vである。
【0123】
電圧差ΔVDISTURB1に応じたプログラムディスターブにより、TLCモードでライトされたメモリセルの閾値分布において、消去状態のステートST0は、図8(a)に点線で示す状態から実線で示す状態へシフトし得る。例えば、消去状態のステートST0は、電圧差ΔVDISTURB1(例えば、14V)に応じたシフト量VPD1で高電圧側へシフトし得る。
【0124】
図17は、積層体SSTaにおけるZ方向両端のワード線WL0,WL47に対応するメモリセル、又は、積層体SSTbにおけるZ方向両端のワード線WL48,WL95に対応するメモリセルへのライト動作を示す。例えば、選択ワード線WL48に対応する選択メモリセルMT48_0へSLCモードでデータがライトされる場合、選択ワード線WL48にプログラム電圧VPGMが印加され、非選択ワード線WL0~WL47,WL49~WL95及びダミーワード線DWL1~DWL8に転送電圧VPASS2が印加される。プログラム電圧VPGMは、例えば、SLCモードにおける最も高電圧側のステートST1のベリファイ電圧Vf1(図8参照)に略等しい。SLCモードにおけるステートST1のベリファイ電圧Vf1は、例えば、20Vである。転送電圧VPASS2は、転送電圧VPASS1より低い。数式2、数式3に示すように、転送電圧VPASS2は、ベリファイ電圧Vf27とベリファイ電圧Vf1との差分ΔVPGM1に応じて、転送電圧VPASS1より低くてもよい。
【0125】
例えば、Vf27=24V、Vf1=20Vである場合、数式2により、ΔVPGM1=4Vである。VPASS1=10Vであれば、数式3により、VPASS2=6Vになる。
【0126】
選択ビット線BL0に基準電圧VSS4が印加され、非選択ビット線BL1,BL2(図7参照)に書き込み禁止電圧VINHIBITが印加される。基準電圧VSS4は、例えば、0Vである。書き込み禁止電圧VINHIBITは、例えば、5Vである。
【0127】
選択ソース側選択ゲート線SGSに基準電圧VSS3が印加され、選択ドレイン側選択ゲート線SGD0に選択電圧VSGDが印加され、非選択ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に基準電圧VSS2が印加される。基準電圧VSS3は、例えば、0Vである。選択電圧VSGDは、例えば、2.5Vである。基準電圧VSS2は、例えば、0Vである。
【0128】
このとき、非選択のビット線BL1,BL2又は非選択のドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する選択トランジスタST1_1,ST1_2がオフし、非選択メモリストリングMS_1,MS_2がフローティング状態になる。非選択メモリストリングMS_1,MS_2は、非選択ワード線WL48,WL2~WL63とのカップリングにより所定電圧VBOOST2にブーストされ得る。所定電圧VBOOST2は、非選択ワード線WL0~WL47,WL49~WL95の転送電圧VPASS2に応じた電圧であり、数式4に示すように、転送電圧VPASS2に略等しくてもよい。
【0129】
数式4により、選択ワード線WL48と非選択メモリストリングMS_1,MS_2,MS_3との交差位置に対応するメモリセルMT48_1,MT48_2,MT48_3は、プログラム電圧VPGMと所定電圧VBOOST2との電圧差ΔVDISTURB2に応じたプログラムディスターブを受ける。電圧差ΔVDISTURB2について、数式5が成り立つ。
【0130】
例えば、VPGM=20V、VPASS2=6Vである場合、数式5により、電圧差ΔVDISTURB2≒14Vである。
【0131】
電圧差ΔVDISTURB2に応じたプログラムディスターブにより、SLCモードでライトされたメモリセルの閾値分布において、消去状態のステートST0は、図8(b)に点線で示す状態から実線で示す状態へシフトし得る。例えば、消去状態のステートST0は、電圧差ΔVDISTURB2(例えば、14V)に応じたシフト量VPD2で高電圧側へシフトし得る。
【0132】
すなわち、メモリセルMT49_0へTLCモードでデータがライトされる場合に比べて、メモリセルMT48_0へSLCモードでデータがライトされる場合、プログラム電圧VPGMが数式2で示すΔVPGM1分低いが、転送電圧も略ΔVPGM1分下げられたVPASS2とされる。数式5に示すように、両者の変化が相殺され、両者の電圧差ΔVDISTURB2としては同等程度の値(例えば、14V)になり得る。これにより、メモリセルMT48_0へSLCモードでデータがライトされる場合に非選択メモリセルMT48_1,MT48_2,MT48_3が受けるプログラムディスターブの程度を、メモリセルMT49_0へTLCモードでデータがライトされる場合に非選択メモリセルMT49_1,MT49_2,MT49_3が受けるプログラムディスターブと同等にできる。
【0133】
すなわち、図8(a)に示すTLCモードでの消去状態のステートST0のシフト量VPD1図8(b)に示すSLCモードでの消去状態のステートST0のシフト量VPD2とは、同等程度であり、数式6が成り立つ。
【0134】
このような構成及び動作によっても、プログラムディスターブを受けた後における消去状態のステートST0の電圧位置をTLCモードとSLCモードとで同等程度にすることができる。これにより、TLCモードでライトされたメモリセルMTからSLCモードでライトされたメモリセルMTとへの電荷の横抜けを抑制できるなど、各メモリセルMTにおけるデータリテンション特性を向上できる。
【0135】
なお、実施形態の考え方は、各積層体SSTa,SSTbにおけるZ方向両端のワード線WLに対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ内側のワード線WLに対応するメモリセルMTがSLCモードよりビット数が多い任意の動作モードに適用可能である。
【0136】
例えば、実施形態の考え方は、複数のワード線WL0~WL95(図14参照)のうち、各積層体SSTa,SSTbのZ方向両端のワード線WL0,WL47,WL48,WL95に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL46,WL49~WL94に対応するメモリセルMTがMLCモードでライトされる動作モードに適用されてもよい。
【0137】
あるいは、実施形態の考え方は、複数のワード線WL0~WL95(図14参照)のうち、各積層体SSTa,SSTbのZ方向両端のワード線WL0,WL47,WL48,WL95に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL46,WL49~WL94に対応するメモリセルMTがQLCモードでライトされる動作モードに適用されてもよい。
【0138】
あるいは、実施形態の考え方は、複数のワード線WL0~WL95(図14参照)のうち、各積層体SSTa,SSTbのZ方向両端のワード線WL0,WL47,WL48,WL95に対応するメモリセルMTがSLCモードでライトされ、内側のワード線WL1~WL46,WL49~WL94に対応するメモリセルMTがPLCモードでライトされる動作モードに適用されてもよい。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
6 ブロック絶縁膜、7 チャネル半導体膜、8 トンネル絶縁膜、9 電荷蓄積膜、100 半導体記憶装置、SST,SSTa,SSTb,SSTi 積層体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17