(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131613
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】操作検出装置、操作検出ユニットおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240920BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20240920BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/0362 461
G06F3/041 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041990
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】天野 崇
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA09
5B087BC13
(57)【要約】
【課題】把持部材の回転に応じてクリック感を生じさせるノブ部材の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制した「操作検出装置、操作検出ユニットおよび操作検出方法」を提供する。
【解決手段】操作検出装置14は、静電容量式のセンサパネル3の検出面4に対して回転可能に支持された把持部材10を有し、把持部材10が一定の角度である規定角度、回転する度にクリック感を生じさせるノブ部材7に対する操作を検出する制御部16を備え、制御部16は、センサパネル3の検出結果に基づいて、所定周期で被検出体の位置の推移を検出すると共に、周期ごとの被検出体の移動量である一周期移動量を検出し、一周期移動量の推移に基づいて、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または規定角度を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量式のセンサパネルの検出面に対して回転可能に支持された把持部材を有し、前記把持部材が一定の角度の規定角度、回転する度にクリック感を生じさせるノブ部材に対する操作を検出する制御部を備え、
前記制御部は、前記センサパネルの検出結果に基づいて、所定周期で被検出体の位置の推移を検出すると共に、周期ごとの前記被検出体の移動量である一周期移動量を検出し、前記一周期移動量の推移に基づいて、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または前記規定角度を検出する
ことを特徴とする操作検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、一のタイミングの直前の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量に対して、当該一のタイミング、または当該一のタイミングを含み当該一のタイミングの後に連続する複数のタイミングの前記一周期移動量が統計学的に小さい側に外れた外れ値である場合に、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、
一のタイミングの直前の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量に対して、当該一のタイミング、または当該一のタイミングを含み当該一のタイミングの後に連続する複数のタイミングの前記一周期移動量が統計学的に小さい側に外れた外れ値である場合に、密期間に至ったことを検出する一方、大きい側に外れた外れ値である場合に粗期間に至ったことを検出し、
密期間、粗期間、密期間の順番で各期間に至ったことを検出するか、または粗期間、密期間の順番で各期間に至ったことを検出したときに、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
所定周期で、現時点を含む過去の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量について統計学的なばらつきを示す指標値を導出し、
前記指標値が所定回数以上、連続して閾値を上回った後に前記閾値を下回り、かつ、前記閾値を上回った後のタイミングの前記一周期移動量が、前記閾値を上回る前のタイミングの前記一周期移動量よりも小さい場合に、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
所定周期で、現時点を含む過去の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量について統計学的なばらつきを示す指標値を導出し、
前記指標値が所定回数以上、連続して閾値を上回った後に前記閾値を下回り、かつ、前記閾値を上回った後のタイミングの前記一周期移動量が、前記閾値を上回る前のタイミングの前記一周期移動量よりも小さい場合に、密期間に至ったことを検出する一方、大きい場合に粗期間に至ったことを検出し、
前記密期間、前記粗期間、前記密期間の順番で各期間に至ったことを検出するか、または前記粗期間、前記密期間の順番で各期間に至ったことを検出したときに、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
一のタイミングの直前の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量に対して、当該一のタイミング、または当該一のタイミングを含み当該一のタイミングの後に連続する複数のタイミングの前記一周期移動量が統計学的に小さい側に外れた外れ値である場合に、密期間に至ったことを検出し、
第1の密期間に至ったことが検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置と、前記第1の密期間に連続する第2の密期間に至ったことが検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置とが前記把持部材の中心部についてなす中心角に基づいて前記規定角度を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
一のタイミングの直前の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量に対して、当該一のタイミング、または当該一のタイミングを含み当該一のタイミングの後に連続する複数のタイミングの前記一周期移動量が統計学的に大きい側に外れた外れ値である場合に、粗期間に至ったことを検出し、
第1の粗期間に至ったことが検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置と、前記第1の粗期間に連続する第2の粗期間に至ったことが検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置とが前記把持部材の中心部についてなす中心角に基づいて前記規定角度を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
所定周期で、現時点を含む過去の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量について統計学的なばらつきを示す指標値を導出し、
前記指標値が所定回数以上、連続して閾値を上回った後に前記閾値を下回り、かつ、前記閾値を上回った後のタイミングの前記一周期移動量が、前記閾値を上回る前のタイミングの前記一周期移動量よりも小さい場合に、密期間に至ったことを検出し、
第1の密期間が検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置と、前記第1の密期間に連続する第2の密期間が検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置とが前記把持部材の中心部についてなす中心角を前記規定角度として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項9】
前記制御部は、
所定周期で、現時点を含む過去の一定期間に属する各タイミングの前記一周期移動量について統計学的なばらつきを示す指標値を導出し、
前記指標値が所定回数連続して閾値を上回った後に前記閾値を下回り、かつ、前記閾値を上回った後のタイミングの前記一周期移動量が、前記閾値を上回る前のタイミングの前記一周期移動量よりも大きい場合に、粗期間に至ったことを検出し、
第1の粗期間が検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置と、前記第1の粗期間に連続する第2の粗期間が検出されたタイミングにおける前記被検出体の位置とが前記把持部材の中心部についてなす中心角を前記規定角度として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の操作検出装置。
【請求項10】
静電容量式のセンサパネルと、前記センサパネルの検出面に対して回転可能に支持された把持部材を有し、前記把持部材が一定の角度の規定角度、回転する度にクリック感を生じさせるノブ部材とを有する入力装置と、
前記センサパネルの検出結果に基づいて、所定周期で被検出体の位置の推移を検出すると共に、周期ごとの前記被検出体の移動量である一周期移動量を検出し、前記一周期移動量の推移に基づいて、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または前記規定角度を検出する制御部を有する操作検出装置とを備える
ことを特徴とする操作検出ユニット。
【請求項11】
静電容量式のセンサパネルの検出面に対して回転可能に支持された把持部材を有し、前記把持部材が一定の角度の規定角度、回転する度にクリック感を生じさせるノブ部材に対する操作を検出する操作検出装置による情報処理方法であって、
前記操作検出装置の制御部が、前記センサパネルの検出結果に基づいて、所定周期で被検出体の位置の推移を検出すると共に、周期ごとの前記被検出体の移動量である一周期移動量を検出するステップと、
前記操作検出装置の前記制御部が、前記一周期移動量の推移に基づいて、前記把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または前記規定角度を検出するステップとを含む
ことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作検出装置、操作検出ユニットおよび操作検出方法に関し、特に、把持部材の回転に応じてクリック感を生じさせるノブ部材に対する操作を検出する操作検出装置、当該操作検出装置を含んで構成された操作検出ユニット、および当該操作検出装置による情報処理方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式のセンサパネルを備え、センサパネルの検出面に対して回転可能に支持された把持部材を有するノブ部材が設けられた入力装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、タッチパネル260(センサパネル)と、タッチパネル260に対して回転可能に支持された把持部310(把持部材)を有する操作ノブ230(ノブ部材)とを備える電子機器200(入力装置)が開示されている。
【0003】
ノブ部材は、その把持部材が把持され、回転されることによって操作されるものである。このノブ部材に関し、把持部材が一定の角度の規定角度だけ回転する度にクリック感を生じさせるものがある。この種のノブ部材が搭載された入力装置では、操作を検出する機能が実装された操作検出装置が、センサパネルの検出結果に基づいて把持部材が規定角度だけ回転したときに、そのことを検出すると共に入力を有効とし、対応するアクションを実行する。一例として、ノブ部材はオーディオ装置の音量の調整に用いられ、操作検出装置は、把持部材が規定角度だけ時計回りに回転したときに1単位だけ音量を増大し、規定角度だけ反時計回りに回転したときに1単位だけ音量を減少させる。ユーザは、ノブ部材の操作中、触覚を通じてクリック感を得ることにより、把持部材を規定角度、回転したことを認識することができる。以下、「ノブ部材」と表現する場合、特に説明がない場合には、把持部材の回転に応じてクリック感を生じさせる機能をもったものであるものとする。
【0004】
また入力装置には、ノブ部材を取り換え可能に構成されたものが存在する。この種の入力装置によれば、ユーザは、ノブ部材のデザイン性や操作性などを考慮して、自由にノブ部材を取り換えることができ、ユーザの満足度および利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらノブ部材を取り換え可能な入力装置については、以下の問題があった。すなわちノブ部材は、把持部材が規定角度だけ回転したときにクリック感を生じさせる機能を持っているが、この規定角度はノブ部材の種類ごとに固有の値であり、異なる種類のノブ部材では規定角度の値が異なる場合がある。例えばノブ部材の種類によって、規定角度は72°であったり、36°であったりする(当然、他の角度のケースもある)。
【0007】
今、ノブ部材Xについて規定角度が72°であり、ノブ部材Yについて規定角度が36°であったとする。そしてユーザがノブ部材Xをノブ部材Yに取り換えたとする。上述した通り操作検出装置は、把持部材が規定角度だけ回転したときに、そのことを検出する機能を有しており、ノブ部材Xが取り付けられていたときには把持部材の72°の回転を検出する機能を有している。そしてノブ部材Xをノブ部材Yに取り換えた後は、把持部材の36°の回転に応じて入力が有効となるようにする必要があるため、把持部材の36°の回転を検出する機能を操作検出装置に実装する必要が生じる。このとき従来は、操作検出装置のファームウェア、その他のプログラムを人為的な作業により更新したり、ファームウェア等のプログラムが参照する設定ファイルを人為的な作業により更新したりすることによって、把持部材の36°の回転を検出する機能を操作検出装置に実装することが行われていた。このような作業は、難易度が高く煩雑なため負担が大きかった。この負担の大きさは、ノブ部材を取り換えることによるカスタマイズを躊躇する要因となり得、カスタマイズ性を損ねる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、把持部材の回転に応じてクリック感を生じさせるノブ部材の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明は、センサパネルの検出結果に基づいて、所定周期で被検出体の位置の推移を検出すると共に、周期ごとの被検出体の移動量である一周期移動量を検出し、一周期移動量の推移に基づいて、把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または規定角度を検出する。
【発明の効果】
【0010】
把持部材の規定角度の回転に応じてクリック感を生じさせるノブ部材では、クリック感の発生期間において、把持部材の回転に抗する抵抗力が急峻に付与され、これによりクリック感が発生する。そして、この抵抗力の発生に起因して、把持部材の回転に伴って移動する被検出体(把持部材をつまむ指や、把持部材に設けられた導電部材)の周期ごとの移動量(一周期移動量)は、抵抗力の発生の状況に応じた特徴的な態様で変移する。以上を踏まえ上記のように構成した本発明によれば、一周期移動量の推移に基づいて把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または規定角度が検出されるため、一周期移動量がクリック感に伴う抵抗力の状況に応じた特徴的な態様で変移することを好適に活用して、把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったこと、または規定角度を的確に検出することが可能である。そして、把持部材の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出することによって、ノブ部材の種類にかかわらずクリック感の発生期間と同期して入力を有効とすることが可能となり、従って人為的な作業によるファームウェアの変更等を伴うことなく、取り換え後の新しいノブ部材について規定角度の回転に応じて入力を有効とすることが可能となる。また規定角度を検出することによって、従って人為的な作業によるファームウェアの変更等を伴うことなく、取り換え後の新しいノブ部材について自動で規定角度を検出し、必要な設定を行うことが可能となる。すなわち本発明によれば、把持部材の回転に応じてクリック感を生じさせるノブ部材の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示入力装置の正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る操作検出装置の機能構成例を、操作検出ユニットの構成と共に示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る操作検出装置による情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図6】検出面の各検出点に検出された静電容量対応値を記入した図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る操作検出装置による情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図12】大側外れ値および小側外れ値の説明に用いる図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る操作検出装置による情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図17】第1変形例に係る操作検出装置による情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図18】第1変形例に係る操作検出装置による情報処理方法を示すフローチャートである。
【
図21】第2変形例に係る操作検出装置による情報処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る表示入力装置1(入力装置)の正面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
図1、2で示す表示入力装置1は、各部材の構造を非常に単純化して示すものである。また図面中の各部材の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。以下では、表示入力装置1を基準とした前後方向、左右方向、上下方向を、
図1、2の矢印で示したように定義する。
【0013】
図1、2で示すように、表示入力装置1は、液晶ディスプレイや有機ELパネル等の表示パネル2と、この表示パネル2に重ねて配置されたセンサパネル3とを備えている。センサパネル3には、ユーザによる操作を検出する検出面4が形成されている。センサパネル3については後に詳述する。表示入力装置1は、表示パネル2に映像を表示する機能、および、ユーザによる検出面4への操作を受け付ける機能を備えている。表示入力装置1は、例えば車両のインストルメンタルパネル、車両のセンターコンソール、その他の車両の所定の場所に設けられる。ただし表示入力装置1が設けられる場所は例示した場所に限られない。表示入力装置1は、車室以外の場所に設けられてもよい。
【0014】
図1、2で示すように、センサパネル3の前面には、ガラス、その他の透明部材で構成されたカバー部材5が配置されている。カバー部材5の所定の位置には、ノブ部材7が設けられている。
図2で示すようにノブ部材7は、基端部材8を備えている。基端部材8は、その裏面が、カバー部材5の表面に接着、ねじ止めその他の手段によって固定されている。ただし基端部材8は、取り外すことが全くできない状態でカバー部材5に取り付けられているわけではなく、人為的な手段によって意図的に取り外すことが可能な状態でカバー部材5に取り付けられている。
【0015】
基端部材8には、柱状の支持部材9が回転可能な状態で支持されている。支持部材9は、基端部材8に対して時計回りY1(
図1)或いは反時計回りY2(
図1)に回転可能な状態で、基端部材8に支持されている。支持部材9には、把持部材10が固定されている。つまり把持部材10は、支持部材9を介して基端部材8に回転可能に支持されている。このため把持部材10は、検出面4に対して時計回りY1或いは反時計回りY2に回転可能である。把持部材10の形状は有底円筒状であり、有底円筒の底の部分に相当する正面視で円状の前面部分11が前方に位置し、その開口部がカバー部材5と対向するように設置されている。把持部材10の内部の空洞に基端部材8が配置される。
【0016】
基端部材8には、クリック機構が設けられている。クリック機構は、把持部材10が一定の角度の規定角度だけ回転する度にクリック感を生じさせる機構である。クリック感とは、以下を意味する。すなわち把持部材10がつままれた状態で回転されているときに、あるタイミングにおいて急峻に回転抵抗力が上昇した後、急峻に回転抵抗力が下降する。そして、このような回転操作に対する回転抵抗力の急激な変化によって発生する触覚が、クリック感である。ユーザは、触覚を通じてクリック感を得ることにより、回転操作に抗して把持部材10がその位置で引っかかったような操作感触(急にブレーキがかかり、その位置を超えたときにブレーキが急に解除されるような操作感触)を得ることができる。これによりユーザは、把持部材10が規定角度だけ回転する度にそのことを触覚を通じて認識できる。
【0017】
なおクリック機構には、既存の機構が用いられる。一例として、把持部材10が規定角度だけ回転する度に、付勢されたボール状の部材が穴部に入り込み、これによりクリック感を発生させる機構をクリック機構として採用できる。ただし、これはあくまで一例である。
【0018】
図3の(A)、(B)は、ノブ部材7の使用態様の説明に用いる図である。
図3(A)、(B)で示すように、ノブ部材7は、把持部材10がユーザの手の指でつままれて使用されることが想定されている。本実施形態では単純化した一例として、ノブ部材7は、オーディオ装置(不図示)の音量の調整に使用可能であるものとする。例えばユーザは、
図3で例示する態様で把持部材10をつまんだ後、把持部材10を時計回りY1(
図1、3(A))に回転させることによって、オーディオ装置の音量を段階的に増大させることができる。この場合、把持部材10の外周12に接触する指のそれぞれは、把持部材10の回転と共に時計回りY1に変移する。一方ユーザは、ノブ部材7をつまんだ後、把持部材10を反時計回りY2(
図1、3(A))に回転させることによって、オーディオ装置の音量を段階的に低減させることができる。この場合、把持部材10の外周12に接触する指のそれぞれは、外周に沿って反時計回りY2に変移する。
【0019】
なおノブ部材7の構造は、本実施形態で例示する構造に限られない。ノブ部材7は、把持部材10が回転可能であり、かつ、把持部材10が規定角度、回転する度にクリック感を発生させる機能を有してれば、その構造はどのようなものでもよい。
【0020】
図4は、本実施形態に係る操作検出装置14の機能構成例を、操作検出ユニット15の構成と共に示すブロック図である。
図4で示すように操作検出ユニット15は、表示入力装置1と、操作検出装置14とを含んで構成される。表示入力装置1は、表示パネル2と、センサパネル3とを含んで構成される。操作検出装置14は機能構成として、制御部16を備えている。制御部16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、制御部16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0021】
制御部16は、表示パネル2に映像を表示する機能を有する。以下の説明では、制御部16による表示パネル2への映像の表示は適切に行われるものとして、この機能についての詳細な説明は省略する
【0022】
制御部16は、センサパネル3の検出面4に形成された検出点のそれぞれついて、静電容量の変化に対応する静電容量対応値を検出する静電容量対応値検出機能を備える。以下まず、制御部16の静電容量対応値検出機能について説明する。
【0023】
センサパネル3は静電容量式のタッチセンサであり、センサパネル3の検出面4の全域にはマトリックス状に検出点が形成されている。検出点のそれぞれは、静電容量の変化が検出されると共に、静電容量の変化に対応する静電容量対応値が検出される対象となる点である。また操作検出装置14のRAM等の記憶領域には静電容量対応値テーブルが記憶される。この静電容量対応値テーブルは、全ての検出点について、座標を示す座標情報(検出点を一意に識別する識別情報としても機能する)と、制御部16により検出された静電容量対応値とが対応付けて登録される。なお静電容量対応値テーブルは、センサパネル3の検出結果が反映されたデータである。従って制御部16により静電容量対応値テーブルが参照されて実行される処理は、センサパネル3の検出結果に基づいて実行される処理である。
【0024】
そして制御部16は所定周期で、センサパネル3の検出結果に基づいて、全ての検出点の静電容量の変化を検出し、全ての検出点について、静電容量の変化の大きさを示す静電容量対応値を検出する。本実施形態では説明の便宜のため、静電容量対応値は0~100点(「点」は、便宜上つけた単位)の範囲で値をとるものとし、静電容量に変化がない場合には最低値の0点となり、想定される最大の変化が生じた場合には、最大値の100点となるものとする。制御部16は、全ての検出点の静電容量対応値を検出した後、検出した各検出点についての静電容量対応値に基づいて静電容量対応値テーブルを更新する。この結果、所定周期で、静電容量対応値テーブルに登録された各検出点の静電容量対応値の値が、直近で制御部16により検出された値に更新される。
【0025】
なおセンサパネル3の方式は自己容量方式または相互容量方式の何れでもよく(当然、他の方式でもよい)、制御部16は、センサパネル3の方式に対応する方法で各検出点における静電容量の変化の検出および静電容量対応値の検出を行う。一例としてセンサパネル3は相互容量方式であり、センサパネル3には左右方向の静電容量の変化を検出すべく透明電極がパターニングされたX側センサと、上下方向の静電容量の変化を検出すべく透明電極がパターニングされたY側センサとが重ねて設けられる。そして制御部16は、X側センサの各電極の静電容量の大きさと、Y側センサの各電極の静電容量の大きさとを所定周期で取得し、これらに基づいて各検出点における静電容量の変化の大きさを検出すると共に、静電容量の変化の大きさを静電容量対応値に変換する。
【0026】
ところで、上述したようにノブ部材7は取り外し可能である。そしてユーザは、ノブ部材7について、所望の種類のノブ部材7に自由に取り換えることができる。このようにユーザがノブ部材7のデザイン性や操作性などを考慮して、自由にノブ部材7を取り換えることができるため、ユーザの満足度および利便性が高い。ここでノブ部材7は、把持部材10が規定角度だけ回転したときにクリック感を生じさせる機能を持っているが、この規定角度はノブ部材7の種類ごとに固有の値であり、異なる種類のノブ部材7では規定角度の値が異なる場合がある。一例として、規定角度が72°のノブ部材7もあれば、規定角度が36°或いは18°のノブ部材7もある。上述したように従来は、ノブ部材を取り換えた場合、ユーザは、人為的な手段で操作検出装置のファームウェア、その他のプログラムを更新したり、ファームウェア等が参照する設定ファイルを更新したりすることによって、新しいノブ部材に対応する規定角度の回転を検出する機能を操作検出装置に実装していた。このような作業は、難易度が高く煩雑なため負担が大きかった点は上述した通りである。
【0027】
本実施形態に係る操作検出装置14は、ノブ部材7の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制すべく、以下の処理を実行する。
【0028】
図5のフローチャートFAは、操作検出装置14による情報処理方法の一例を示すフローチャートであり、特にノブ部材7に対する操作を検出する処理の手順を示している。
図5のフローチャートFAの処理は、ノブ部材7に対する操作が受け付けられている間、操作検出装置14により継続して実行される。
【0029】
図5で示すように操作検出装置14の制御部16は、所定の記憶領域に記憶された静電容量対応値テーブルを参照する(ステップSA1)。上述したように静電容量対応値テーブルには、検出面4に形成された検出点のそれぞれについて、座標情報と、直近で検出された静電容量対応値とが登録されている。以下の説明において、特に言及しない場合であっても、制御部16は、必要に応じて静電容量対応値テーブルを参照し、静電容量対応値テーブルの内容に基づいて(つまり、センサパネル3の検出結果に基づいて)各種処理を実行する。
【0030】
次いで制御部16は、反応ポイント検出処理を実行する(ステップSA2)。詳述すると反応ポイントAとは、静電容量対応値が検出閾値TH1以上である検出点の群(互いに隣接する1つ以上の検出点の集合)のことである。以下、静電容量対応値が検出閾値TH1以上である検出点を「反応検出点B」という。検出閾値TH1は、ノブ部材7の把持部材10が指によってつままれているときに、把持部材10の外周12に接触する各指の後方に、静電容量対応値が検出閾値TH1以上である検出点の群が出現するような値に設定されている。特に
図3(B)で示すように把持部材10に接触している指は、表示入力装置1の表面17に接触せずに、表面17から離れた状態となる場合がある。このことを考慮して検出閾値TH1は、ノブ部材7がどのような態様でつままれている場合であっても、ノブ部材7をつまむ指のそれぞれに対応する位置に、静電容量対応値が検出閾値TH1以上となる検出点の群が出現するような値に設定されている。
【0031】
なお反応ポイントAは、静電容量対応値が検出閾値TH1以上である検出点の群であるため、ノブ部材7をつまむ指に対応して出現するだけでなく、検出面4の任意の場所において、何らかの被検出体(指でなくてもよい)が検出面4に近接した場合に、その被検出体に対応する位置に反応ポイントAが出現することになる。
【0032】
ステップSA2において制御部16は、静電容量対応値テーブルに基づいて、各検出点の位置と静電容量対応値との関係を認識し、当該関係に基づいて反応検出点Bの分布を認識し、当該分布に基づいて反応ポイントAを検出する。反応ポイントAは、1つも検出されないこともあれば、1つ以上検出されることもある。
【0033】
なお本実施形態では制御部16は、「反応検出点Bの群」を全て反応ポイントAとして検出する。しかしながら制御部16が、「反応検出点Bの群」を全て反応ポイントAとするのではなく、「反応検出点Bの群」のうち、指が検出面4に近接していることによって出現した可能性が十分に高いもののみを反応ポイントAとして検出する構成でもよい。この構成の場合、例えば制御部16は、許容範囲を超えて細長く反応検出点Bが分布している「反応検出点Bの群」を、反応ポイントAとして検出しない。このような反応検出点Bの分布は、ノイズに起因して発生するものだからである。また例えば制御部16は、許容範囲を超えて広い或いは狭い範囲に反応検出点Bが分布する「反応検出点Bの群」を反応ポイントAとして検出しない。このような反応検出点Bの分布は、指以外の被検出体が検出面4に接触し或いは近接することによって発生するものだからである。
【0034】
ステップSA2の処理後、制御部16は、反応ポイントAが存在するか否かを判別する(ステップSA3)。反応ポイントAが1つも存在しない場合(ステップSA3:NO)、制御部16は、フローチャートFAの処理を終了する。制御部16は、フローチャートFAの処理の終了後、再びフローチャートFAの処理を最初のステップから実行する。この点は、他のルートでフローチャートFAの処理を終了した場合も同様である。一方、反応ポイントAが1つ以上存在する場合(ステップSA3:YES)、制御部16は、処理手順をステップSA4へ移行する。
【0035】
ステップSA4において制御部16は、反応ポイントAのそれぞれについて反応ポイント位置および反応ポイント値を決定する。詳述すると制御部16は、反応ポイントAを構成する1つ以上の反応検出点B(静電容量対応値が検出閾値TH1以上の検出点)のうち、静電容量対応値が最も高い反応検出点Bを特定する。そして制御部16は、静電容量対応値が最も高い反応検出点Bの、その静電容量対応値を反応ポイント値と決定し、更にその位置を反応ポイント位置と決定する。
【0036】
図6は、検出面4を検出点ごとにマトリックス状に分割し、各マスに各検出点の静電容量対応値を記入した図である。今、仮に検出閾値TH1が「60点」であるとする。また検出面4のある領域において、
図6で示すように各検出点について静電容量対応値が検出されたとする。
図6の例では、薄く塗り潰した領域に反応ポイントA-1が検出される。
図6の例では反応ポイントA-1に属する反応検出点Bのうち、静電容量対応値が「87点」である反応検出点B-1が、静電容量対応値が最も高い反応検出点Bである。従って制御部16は、反応ポイントA-1について、反応ポイント位置を反応検出点B-1の位置と決定し、反応ポイント値を「87点」と決定する。
【0037】
なお反応ポイントAの反応ポイント位置および反応ポイント値を決定する方法は、本実施形態で例示する方法に限られない。例えば反応ポイント位置に関し、制御部16が、反応ポイントAの重心に最も近い位置を反応ポイント位置とする構成でもよい。また例えば反応ポイント値に関し、制御部16が、反応ポイントAを構成する反応検出点Bの静電容量対応値について、何らかの統計学的計算を施して反応ポイント値を導出する構成でもよい。
【0038】
ステップSA4の処理後、制御部16は、周縁ポイント検出処理を実行する(ステップSA5)。以下、ステップSA5の処理について詳述する。本実施形態ではノブ部材7の周縁に周縁領域19が定義されている。
図7は、周縁領域19を説明するため、ノブ部材7の周辺を正面から見た図である。
図7で示すように周縁領域19は、ノブ部材7の中心点Oを中心として、ノブ部材7の半径よりもNミリだけ大きい半径の円状の領域である。周縁領域19は、ユーザがノブ部材7をつまんだときに、ノブ部材7をつまむ指のそれぞれに対応する反応ポイント位置のそれぞれが、周縁領域19内で検出されるようにするという観点で定義されている。N(ミリ)の値は、一例として一般的な指幅を考慮して15(ミリ)程度とされる。
【0039】
ステップSA5において制御部16は、反応ポイントAのうち、その反応ポイント位置が周縁領域19に属するポイントを「周縁ポイントD」として検出する。換言すれば、反応ポイントAのうち、周縁領域19内に存在するものが「周縁ポイントD」とされ、周縁領域19内に存在しないものは「周縁ポイントD」とされない。例えば
図7を参照し、ノブ部材7の周辺で
図7に示す態様で反応ポイントA-2、A-3、A-4が出現していたとする。なお
図7では、反応ポイントA-2、A-3、A-4を円で示すと共に、各反応ポイントAの反応ポイント位置を円の中の黒点で示している。
図7の例では、反応ポイントA-2は、その反応ポイント位置が周縁領域19内に存在しない一方、反応ポイントA-3、A-4は、その反応ポイント位置が周縁領域19内に存在している。この場合、制御部16は、反応ポイントA-2を「周縁ポイントD」として検出しない一方、反応ポイントA-3、A-4のそれぞれを「周縁ポイントD」として検出する。周縁ポイントDは、1つも検出されない場合もあれば、1つ以上検出される場合もある。
【0040】
ステップSA5の処理後、制御部16は、周縁ポイントDが1つ以上、存在するか否かを判別する。1つも存在しない場合(ステップSA6:NO)、制御部16は、処理を終了する。一方、1つ以上、存在する場合(ステップSA6:YES)、制御部16は、処理手順をステップSA7へ移行する。
【0041】
ここで周縁ポイントDは、以下のケースにおいて出現する。すなわちユーザがノブ部材7をつまんだ場合に、ノブ部材7をつまむ指のそれぞれについて、対応する周縁ポイントDが出現する。このことを考慮すると、ステップSA6の処理は、ユーザによりノブ部材7がつままれかどうかを判別する処理ということができる。
【0042】
ステップSA7において制御部16は、注目ポイントEを決定する。詳述するとステップSA5の周縁ポイント検出処理において、周縁ポイントDは1つ以上検出される場合がある。ステップSA7において制御部16は、周縁ポイントDのうち、注目する1つの周縁ポイントDを注目ポイントEとして決定する。具体的には制御部16は、周縁ポイントDが1つ検出されている場合には、この1つの周縁ポイントDを注目ポイントEとして決定する。一方、制御部16は、周縁ポイントDが2つ以上検出されている場合には、2つ以上の周縁ポイントDのうち、反応ポイント値が最も大きな周縁ポイントDを注目ポイントEとして決定する。
【0043】
ここで
図3で例示したように、把持部材10が正常な態様でつままれている場合には、把持部材10は基本的には複数の指によってつままれる。従って正常な態様で把持部材10がつままれている状況では、周縁ポイントDが複数、出現することになる。これを踏まえステップSA7の処理は、複数の周縁ポイントDのうち、注目する周縁ポイントDを1つに絞り、以下の処理の単純化を図る目的で実行される。
【0044】
ステップSA7の処理後、制御部16は、注目ポイント位置記録処理を開始する(ステップSA8)。注目ポイント位置記録処理は、ステップSA8で開始された後、処理が停止されるまで継続して実行される。注目ポイント位置記録処理において制御部16は、静電容量対応値テーブルに基づいて所定周期で「注目ポイントEの反応ポイント位置」を検出し、注目ポイントEの位置の座標を示す情報を、現時点のタイミングを識別する情報と対応付けて注目ポイント位置推移データに記録する。現時点のタイミングを識別する情報は、例えば、現時点をミリ秒まで刻まれた日時(日付+時刻)によって示す情報である。以下、タイミングを識別する情報を「タイミング識別情報」という。また以下では、注目ポイントEの反応ポイント位置を特に「注目ポイント位置F」という。注目ポイント位置Fは、時間の経過に応じてその座標が変移することが想定される。特に注目ポイントEは、ノブ部材7の把持部材10をつまむ指に対応して出現する。そして把持部材10をユーザが回転させた場合、把持部材10の回転に応じて指も回転し、これに伴って注目ポイント位置Fも時間の経過に応じて変移する。
【0045】
図8は、注目ポイント位置記録処理の説明に利用する図であり、検出面4を示している。なお
図8は、後述する一周期移動量記録処理の説明にも利用する。今、
図8で示すようにタイミングTx0で位置P0に注目ポイント位置F-0が出現し、タイミングTx1で位置P1に注目ポイント位置F-1が出現し、タイミングTx2で位置P2に注目ポイント位置F-2が出現し、タイミングTx3で位置P3に注目ポイント位置F-3が出現したとする。タイミングTx0、Tx1、Tx2、Tx3は所定周期で連続するタイミングである。このケースの場合、注目ポイント位置記録処理において制御部16は、タイミングTx0で注目ポイント位置F-0を検出し、注目ポイント位置F-0の座標を示す情報をタイミング識別情報と対応付けて注目ポイント位置推移データに記録する。同様に制御部16は、タイミングTx1、Tx2、Tx3のそれぞれで、注目ポイント位置F-1、F-2、F-3のそれぞれを検出し、注目ポイント位置F-1、F-2、F-3の座標を示す情報をタイミング識別情報と対応付けて注目ポイント位置推移データに記録する。
【0046】
このように注目ポイント位置推移データには、注目ポイント位置Fが時系列で記録される。注目ポイント位置推移データは、所定の記憶領域に記憶されている。なお注目ポイント位置推移データは、センサパネル3の検出結果が反映されたデータである。従って制御部16により注目ポイント位置推移データが参照されて実行される処理は、センサパネル3の検出結果に基づいて実行される処理である。以下では特に説明しない場合であっても、制御部16は、必要に応じて注目ポイント位置推移データを参照し、各種処理を実行する。
【0047】
更に制御部16は、注目ポイント位置記録処理の開始と併せて、一周期移動量記録処理を開始する(ステップSA9)。一周期移動量記録処理は、ステップSA9で開始された後、処理が停止されるまで継続して実行される。一周期移動量記録処理において制御部16は、注目ポイント位置推移データに基づいて、所定周期で以下の処理を実行する。すなわち制御部16は、現時点のタイミングにおける注目ポイント位置Fと、直前のタイミング(=一周期分前のタイミング)における注目ポイント位置Fとの距離(移動量)を検出し、検出した距離を示す情報を、タイミング識別情報と対応付けて一周期移動量推移データに記録する。制御部16は、注目ポイント位置推移データを参照し、各タイミングにおける注目ポイント位置を認識した上で一周期移動量記録処理を実行する。以下、一周期移動量記録処理において、所定周期で検出される距離(移動量)を「一周期移動量」という。一周期移動量は、周期ごとの被検出体の移動量に相当する。
【0048】
例えば
図8で示す態様で注目ポイント位置Fが出現した場合、一周期移動量記録処理において制御部16は、以下の処理を実行する。すなわち制御部16は、タイミングTx1において、タイミングTx1(=現時点のタイミング)に係る注目ポイント位置F-1と、タイミングTx0(=タイミングTx1の一周期分前のタイミング)に係る注目ポイント位置F-0との距離L1(一周期移動量)を検出し、検出した距離L1を示す情報をタイミング識別情報と対応付けて一周期移動量推移データに記録する。続くタイミングTx2で制御部16は、タイミングTx2に係る注目ポイント位置F-2と、タイミングTx1に係る注目ポイント位置F-1との距離L2を検出し、検出した距離L2を示す情報をタイミング識別情報と対応付けて一周期移動量推移データに記録する。続くタイミングTx3で制御部16は、タイミングTx3に係る注目ポイント位置F-3と、タイミングTx2に係る注目ポイント位置F-2との距離L3を検出し、検出した距離L3を示す情報をタイミング識別情報と対応付けて一周期移動量推移データに記録する。
【0049】
このように一周期移動量推移データには、一周期移動量が時系列で記録される。一周期移動量推移データは、所定の記憶領域に記憶されている。なお一周期移動量推移データは、センサパネル3の検出結果が反映されたデータである。従って制御部16により一周期移動量推移データが参照されて実行される処理は、センサパネル3の検出結果に基づいて実行される処理である。以下では特に説明しない場合であっても、制御部16は、必要に応じて一周期移動量推移データを参照し、各種処理を実行する。
【0050】
更に制御部16は、一周期移動量推移データに基づいて第1境界タイミング検出処理を開始する(ステップSA10)。第1境界タイミング検出処理は、ステップSA10で開始された後、処理が停止されるまで継続して実行される。以下、ユーザが把持部材10を回転させた場合の注目ポイント位置Fの推移について説明し、その後に第1境界タイミング検出処理を説明する。
【0051】
図9は、ノブ部材7の把持部材10を時計回りY1に回転させたときに、所定周期で出現する注目ポイント位置Fを、検出面4に対応する2次元座標系(左右方向をx軸とし、上下方向をy軸とする座標系)にプロットした図である。実際の注目ポイント位置Fを検出する所定周期は、例えば10ミリ秒程度の非常に短い時間であるが、
図9では説明の便宜および図面の見易さのため、所定周期を相当に長くしている。また
図9ではユーザは、意図的に途中で回転を止めたり、意図的に途中で回転を速くしたり遅くしたりすることなく、できるだけスムーズに回転させる意識をもって自然に把持部材10を回転させている。また
図9において、符号Oは、把持部材10の中心点の位置を示している。
図9では時間の経過に応じてスタート位置G-1からエンド位置G-2に向かって、中心点Oを中心として時計回りY1に注目ポイント位置Fがプロットされていった様子を示している。
【0052】
図9で示すように、注目ポイント位置Fを時系列でプロットすると、時間の経過に応じて密期間Jと粗期間Kとが交互に出現する。密期間Jは、連続するプロット点の間隔が粗期間Kと比較して小さい期間である。粗期間Kは、連続するプロット点の間隔が密期間Jと比較して大きな期間である。そして密期間Jはクリック感を発生させるための回転抵抗力が働いている期間に対応し、粗期間Kはこのような回転抵抗力が働いていない期間(つまり密期間J以外の期間)に対応する。以下、クリック感が発生する瞬間を含み、クリック感を発生するために把持部材10の回転に抗する回転抵抗力が働いている期間を「クリック感の発生期間」という。
【0053】
密期間Jと粗期間Kとが交互に出現する理由は以下である。すなわち上述した通りクリック感は、急峻な回転抵抗力の上昇/下降によって発生する触覚である。そしてクリック感の発生期間は回転抵抗力が働くため、把持部材10を回転させる力に抗して回転抵抗力が働き、この結果、単位時間当たりの把持部材10の回転量が、回転抵抗力が働いていない期間と比較して小さくなる。以上の理由により、クリック感の発生期間に対応して密期間Jが出現する。またクリック感の発生期間以外の期間は回転抵抗力が働かないため、把持部材10がスムーズに回転し、単位時間当たりの把持部材10の回転量が、回転抵抗力が働いている期間と比較して大きくなる。以上の理由により「クリック感の発生期間」以外の期間に粗期間Kが出現する。
【0054】
次にステップSA10で開始する第1境界タイミング検出処理について説明する。
図10は、一周期移動量の推移の一例を示す図である。特に
図10では、注目ポイント位置Fが把持部材10をつまむ指に対応するものであり、把持部材10が回転されているときに検出される典型的な一周期移動量の推移を示している。
図10において横軸は時間の経過を示し、縦軸は各タイミングで一周期移動量記録処理において検出された移動量を示している。上述したように把持部材10の回転期間中は、密期間Jと粗期間Kとが交互に出現する。
図10では密期間Jおよび粗期間Kを明示している。
図10で示すように、密期間Jでは、粗期間Kと比較して各タイミングで検出される一周期移動量が小さくなり、粗期間Kでは、密期間Jと比較して各タイミングで検出される一周期移動量が大きくなる。第1境界タイミング検出処理において、制御部16は、密期間Jに至ったことを、密期間開始タイミングL(後述)を検出することによって検出し、更に粗期間Kに至ったことを、粗期間開始タイミングM(後述)を検出することによって検出する。
【0055】
以下の説明では、基準とするタイミングをタイミングT[0]と表現する場合がある。そしてこの場合において、タイミングT[0]以外のタイミングについては、括弧内の数字(+/-付きの数字)によりタイミングT[0]から何周期前或いは後であるかを示す。例えばタイミングT[-1]はタイミングT[0]よりも1周期前のタイミングであり、タイミングT[-2]はタイミングT[0]よりも2周期前のタイミングである。またタイミングT[+1]はタイミングT[0]よりも1周期後のタイミングであり、タイミングT[+2]はタイミングT[0]よりも2周期後のタイミングである。
【0056】
また以下の説明では、特に説明しない場合であっても制御部16は適宜、一周期移動量推移データを参照し、各タイミングにおいて検出された一周期移動量を認識する。また以下の説明では、あるタイミングで検出された一周期移動量のことを単に、「そのタイミングの一周期移動量」という。なお上述したように、あるタイミングの一周期移動量は、そのタイミングにおける注目ポイント位置Fと、そのタイミングの1周期前のタイミングにおける注目ポイント位置Fとの離間量(移動量)である。
【0057】
図11のフローチャートFBは、操作検出装置14による情報処理方法の一例を示すフローチャートであり、特に第1境界タイミング検出処理の手順を示している。以下、フローチャートFBの処理を「通常監視処理」という。操作検出装置14の制御部16は第1境界タイミング検出処理において、所定周期でフローチャートFBの処理を実行する。ただし後に明らかとなるように、所定の場合には後述するフローチャートFC或いはフローチャートFDの処理を実行する。以下の説明において、制御部16は、タイミングT[0]でフローチャートFBの処理を開始したものとする。
【0058】
図11を参照し、タイミングT[0]において制御部16は、{タイミングT[-1]の一周期移動量、タイミングT[-2]の一周期移動量、タイミングT[-3]の一周期移動量、タイミングT[-4]の一周期移動量}について、標準偏差と平均値とを求める(ステップSB1)。以下、ここで求められた標準偏差を「直前標準偏差」といい、平均値を「直前平均値」という。{タイミングT[-1]の一周期移動量、タイミングT[-2]の一周期移動量、タイミングT[-3]の一周期移動量、タイミングT[-4]の一周期移動量}は、「一のタイミングの直前の一定期間に属する各タイミングの一周期移動量」に相当する。このようにステップSB1では、制御部16は、現時点より1周期前のタイミングを含み、1周期前のタイミングから遡って4周期分の各タイミングの一周期移動量の標準偏差および平均値を求める。
【0059】
次いで制御部16は、タイミングT[0]の一周期移動量が、直前標準偏差および直前平均値を考慮して、タイミングT[-1]、T[-2]、T[-3]、T[-4]の一周期移動量に対して、「統計学的に大きい側に外れた外れ値」であるか否かを判別する(ステップSB2)。以下、「統計学的に大きい側に外れた外れ値」を「大側外れ値」という。本実施形態では
図12で示すように制御部16は、タイミングT[0]の一周期移動量が、直前平均値に対して「直前標準偏差の2倍」を超えて大きい場合、タイミングT[0]の一周期移動量が大側外れ値と判定する。タイミングT[0]の一周期移動量が大側外れ値である場合(ステップSB2:YES)、制御部16は、次のタイミングT[+1]で実行する処理を「大側継続処理」(
図13(A)のフローチャートFC)と決定し(ステップSB3)、処理を終了する。
【0060】
タイミングT[0]の一周期移動量が大側外れ値ではない場合(ステップSB2:NO)、制御部16は、タイミングT[0]の一周期移動量が、直前標準偏差および直前平均値を考慮して、タイミングT[-1]、T[-2]、T[-3]、T[-4]の一周期移動量に対して、「統計学的に小さい側に外れた外れ値」であるか否かを判別する(ステップSB4)。以下、「統計学的に小さい側に外れた外れ値」を「小側外れ値」という。本実施形態では
図12で示すように制御部16は、タイミングT[0]の一周期移動量が、直前平均値に対して「直前標準偏差の2倍」を超えて小さい場合、タイミングT[0]の一周期移動量が小側外れ値と判定する。タイミングT[0]の一周期移動量が小側外れ値である場合(ステップSB4:YES)、制御部16は、次のタイミングT[+1]で実行する処理を「小側継続処理」(
図13(B)のフローチャートFD)と決定し(ステップSB5)、処理を終了する。
【0061】
タイミングT[0]の一周期移動量が小側外れ値ではない場合(ステップSB4:NO)、制御部16は、次のタイミングT[+1]で実行する処理を「通常監視処理」(
図11のフローチャートFB)と決定し(ステップSB6)、処理を終了する。このように、タイミングT[0]の一周期移動量が大側外れ値でも小側外れ値でもない場合、制御部16は、次のタイミングで通常監視処理を実行する。以下では、大側外れ値および小側外れ値を総称して「外れ値」という。
【0062】
図13(A)のフローチャートFCは、大側継続処理の手順を示すフローチャートである。以下では、
図13(A)のフローチャートFCの処理が、タイミングT[0]で行われた通常監視処理(
図11のフローチャートFB)のステップSB3において、タイミングT[+1]で実行する処理が大側継続処理と決定された後に、タイミングT[+1]が到来して実行されるものとする。
【0063】
図13(A)で示すように大側継続処理において制御部16は、タイミングT[+1]の一周期移動量が、直前標準偏差および直前平均値を考慮して大側外れ値であるか否かを判別する(ステップSC1)。なおステップSC1の処理で利用する「直前標準偏差および直前平均値」は、タイミングT[+1]で新たに導出された値ではなく、タイミングT[0]の通常監視処理において導出された値である。つまりタイミングT[-1]、T[-2]、T[-3]、T[-4]の一周期移動量に基づく直前標準偏差および直前平均値である。
【0064】
タイミングT[+1]の一周期移動量が大側外れ値の場合(ステップSC1:YES)、制御部16は、タイミングT[+1]を粗期間開始タイミングMと判定する(ステップSC2)。粗期間開始タイミングMとは、密期間Jから粗期間Kへと切り替わって、粗期間Kに至ったタイミングを意味する。次いで制御部16は、次のタイミングT[+2]で実行する処理を通常監視処理(
図11のフローチャートFB)と決定し(ステップSC3)、処理を終了する。一方、タイミングT[+1]の一周期移動量が大側外れ値ではない場合(ステップSC1:NO)、制御部16は、次のタイミングT[+2]で実行する処理を「通常監視処理」(
図11のフローチャートFB)と決定し(ステップSC4)、処理を終了する。
【0065】
以上の通り本実施形態では制御部16は、2回連続で大側外れ値が出現した場合、粗期間Kに至ったことを検出する。具体的には制御部16は、2回目に大側外れ値が出現したタイミングを粗期間開始タイミングMとして検出する。
【0066】
図13(B)のフローチャートFDは、小側継続処理の手順を示すフローチャートである。以下では、
図13(B)のフローチャートFDの処理が、タイミングT[0]で行われた通常監視処理(
図11のフローチャートFB)のステップSB5において、タイミングT[+1]で実行する処理が小側継続処理と決定された後に、タイミングT[+1]が到来して実行されるものとする。
【0067】
図13(B)で示すように小側継続処理において制御部16は、タイミングT[+1]の一周期移動量が、直前標準偏差および直前平均値を考慮して小側外れ値であるか否かを判別する(ステップSD1)。なおステップSD1の処理で利用する「直前標準偏差および直前平均値」は、タイミングT[+1]で新たに導出された値ではなく、タイミングT[0]の通常監視処理において導出された値である。つまりタイミングT[-1]、T[-2]、T[-3]、T[-4]の一周期移動量に基づく直前標準偏差および直前平均値である。
【0068】
タイミングT[+1]の一周期移動量が小側外れ値の場合(ステップSD1:YES)、制御部16は、タイミングT[+1]を密期間開始タイミングLと判定する(ステップSD2)。密期間開始タイミングLとは、粗期間Kから密期間Jへと切り替わって、密期間Jに至ったタイミングを意味する。次いで制御部16は、次のタイミングT[+2]で実行する処理を通常監視処理(
図11のフローチャートFB)と決定し(ステップSD3)、処理を終了する。一方、タイミングT[+1]の一周期移動量が小側外れ値ではない場合(ステップSD1:NO)、制御部16は、次のタイミングT[+2]で実行する処理を「通常監視処理」(
図11のフローチャートFB)と決定し(ステップSD4)、処理を終了する。
【0069】
以上の通り本実施形態では制御部16は、2回連続で小側外れ値が出現した場合、密期間Jに至ったことを検出する。具体的には制御部16は、2回目に小側外れ値が出現したタイミングを密期間開始タイミングLとして検出する。
【0070】
以下、通常監視処理、大側継続処理および小側継続処理の具体例およびその意義を、
図10を援用して説明する。
図10を参照し、
図10では、タイミングT0~T5が密期間Jであり、タイミングT6~T15が粗期間Kであり、タイミングT16~T22が密期間Jであり、タイミングT23~T26が粗期間Kであり、タイミングT27、28が密期間Jである。今、タイミングT5において制御部16が、通常監視処理を実行したとする。この場合、制御部16は、タイミングT1~T4に基づく直前平均値および直前標準偏差を導出し、これらに基づいてタイミングT5の一周期移動量が外れ値であるかどうかを判別する。ここで、タイミングT5の一周期移動量は外れ値でないものとする。この場合、制御部16は、次のタイミングT6において通常監視処理を実行すると決定する。
【0071】
タイミングT6において制御部16は、通常監視処理を実行する。この通常監視処理において制御部16は、タイミングT2~T5に基づく直前平均値および直前標準偏差を導出し、これらに基づいてタイミングT6の一周期移動量が外れ値であるかどうかを判別する。ここで、タイミングT6の一周期移動量は大側外れ値であるものとする。この場合、制御部16は、次のタイミングT7において大側継続処理を実行すると決定する。
【0072】
タイミングT7において制御部16は、大側継続処理を実行する。この大側継続処理において制御部16は、既に導出したタイミングT2~T5(タイミングT3~T6ではない)に基づく直前平均値および直前標準偏差を利用してタイミングT7の一周期移動量が外れ値であるかどうかを判別する。ここで、タイミングT7の一周期移動量は大側外れ値であるものとする。この場合、制御部16は、タイミングT7を粗期間開始タイミングMと判定する。なお制御部16は、次のタイミングT8において通常監視処理を実行すると決定する。
【0073】
以下、以上の方法で粗期間開始タイミングMを判定することの妥当性について説明する。上述した通り、粗期間Kでは、密期間Jと比較して各タイミングで検出される一周期移動量が大きくなる。ただし粗期間Kにおける一周期移動量の大体の値、密期間Jにおける一周期移動量の大体の値、および、密期間Jの一周期移動量に比して粗期間Kの一周期移動量がどの程度大きくなるかは、ノブ部材7の種類/個体或いはノブ部材7を操作するユーザによってバラバラである。一方で、(1)密期間Jにおける一周期移動量に比して、粗期間Kにおける一周期移動量が相対的に大きいこと、(2)密期間Jは相当数の周期に跨って継続し、同様に粗期間Kは相当数の周期に跨って継続することは、ノブ部材7の種類/個体或いは操作するユーザによらず共通する。従って、密期間Jから粗期間Kへと切り替わると、切り替わる直前の複数のタイミング(いずれも密期間Jに属するタイミング)の一周期移動量に比して、切り替わった後の複数のタイミング(何れも粗期間Kに属するタイミング)の一周期移動量が、統計学的に外れ値とみなせる程度に大きくなる。以上より、本実施形態の方法で粗期間開始タイミングMを判定することは妥当性がある。
【0074】
なお本実施形態では、あるタイミングにおいて一周期移動量が大側外れ値となった場合、制御部16は、そのタイミングを粗期間開始タイミングMと判定するのではなく、2回連続で一周期移動量が大側外れ値となったときに粗期間開始タイミングMであると判定する。これは
図14のタイミングTy6のように、密期間Jにおいて何らかの理由(例えばノイズ)で単発的に一周期移動量が大側外れ値となったときに、このタイミングが粗期間開始タイミングMと判定されないようにするためである。従って本実施形態では、2回連続で一周期移動量が大側外れ値となったときに粗期間開始タイミングMと判定する構成であるが、「2回連続」の部分は、「2回連続」に限られるものではない。すなわち連続回数は、粗期間開始タイミングMが適切に検出され、できるだけ少ない回数であればよい。連続回数は、1回であってもよい。また本実施形態では、過去4周期分の平均値および標準偏差を導出する構成であるが、これは説明の簡単を考慮した一例である。平均値および標準偏差を導出する対象を何周期分とするかは、密期間Jの想定される継続期間を考慮して、粗期間開始タイミングMを適切に検出するという観点の下で適宜、設定することができる。以上の点は、密期間開始タイミングLを判定する処理についても同様である。
【0075】
また
図10を参照し、制御部16が、タイミングT15で通常監視処理を実行したとする。この場合、制御部16は、タイミングT11~T14に基づく直前平均値および直前標準偏差を導出し、これらに基づいてタイミングT15の一周期移動量が外れ値であるかどうかを判別する。ここで、タイミングT15の一周期移動量は外れ値でないものとする。この場合、制御部16は、次のタイミングT16において通常監視処理を実行すると決定する。
【0076】
タイミングT16において制御部16は、通常監視処理を実行する。この通常監視処理において制御部16は、タイミングT12~T15に基づく直前平均値および直前標準偏差を導出し、これらに基づいてタイミングT16の一周期移動量が外れ値であるかどうかを判別する。ここで、タイミングT16の一周期移動量は小側外れ値であるものとする。この場合、制御部16は、次のタイミングT17において小側継続処理を実行すると決定する。
【0077】
タイミングT17において制御部16は、小側継続処理を実行する。この小側継続処理において制御部16は、既に導出したタイミングT12~T15(タイミングT13~T16ではない)に基づく直前平均値および直前標準偏差を利用してタイミングT17の一周期移動量が外れ値であるかどうかを判別する。ここで、タイミングT17の一周期移動量は大側外れ値であるものとする。この場合、制御部16は、タイミングT17を密期間開始タイミングLと判定する。なお制御部16は、次のタイミングT18において通常監視処理を実行すると決定する。以下、密期間開始タイミングLを判定する以上の方法は、粗期間開始タイミングMを判定する方法と同様、妥当性がある。
【0078】
以上の通り、第1境界タイミング検出処理において制御部16は、密期間開始タイミングLおよび粗期間開始タイミングMを検出する。以下、密期間開始タイミングLおよび粗期間開始タイミングMを総称して、「境界タイミング」という。
【0079】
さて
図5に戻り、ステップSA10において第1境界タイミング検出処理を開始した後、制御部16は、密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番で境界タイミングが変移したか否かを判別する(ステップSA11)。以下、「密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番」を「特定順番」という。以下、ステップSA11の処理について詳述する。なお特定順番で境界タイミングが変移した場合、制御部16は、最後の密期間開始タイミングLを検出したタイミングで、特定順番で境界タイミングが変移したと判定する。以下、ステップSA11の処理について詳述する。
【0080】
図15は、ノブ部材7の正面図を示すと共に、把持部材10をつまむ指に対応する注目ポイント位置Fが把持部材10の回転に応じて変移する様子を説明に適した態様で示す図である。
図15のノブ部材7は規定角度が72°であるとする。また
図15において、把持部材10の時計回りY1への回転に伴って、注目ポイント位置Fが、スタート位置G-3から時計回りY1に変移してエンド位置G-4に至ったものとする。そして注目ポイント位置Fが位置P4、P5、P6に至ったときにクリック感が発生したものとする。この場合、把持部材10をつまむ指のうち、注目された一本の指が位置P4、P5、P6に至ったときにユーザは触覚によりクリック感を得ることになる。
図15の例では、注目ポイント位置Fが変移する過程で、クリック感の発生期間に対応する範囲HJ1、HJ2、HJ3に注目ポイント位置Fが位置している期間が、密期間Jに相当する。一方で、注目ポイント位置Fが変移する過程で、範囲HK1、HK2、HK3、HK4に注目ポイント位置Fが位置している期間が、粗期間Kに相当する。
【0081】
把持部材10の時計回りY1への回転に伴って、
図15で示す態様で注目ポイント位置Fが、スタート位置G-3から時計回りY1に変移してエンド位置G-4に至ったものとする。この場合において、一周期移動量の推移が
図16で示すものであったとする。
図16では、
図10の範囲HJ1、HJ2、HJ3、HK1、HK2、HK3、HK4を明示している。そして
図16で示すように制御部16が、タイミングT100で密期間開始タイミングLを検出し(「L検出」と描画。以下同じ)、タイミングT200で粗期間開始タイミングMを検出し(「M検出」と描画。以下同じ)、タイミングT300で密期間開始タイミングLを検出し、タイミングT400で粗期間開始タイミングMを検出し、タイミングT500で密期間開始タイミングLを検出し、タイミングT600で粗期間開始タイミングMを検出したとする。
【0082】
以上の場合において、タイミングT100において制御部16は、特定順番で開始タイミングが変移したと判定しない。タイミングT100の前で、タイミングT100で密期間開始タイミングLが検出されているものの、その前に境界タイミングが検出されておらず、密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLという順番で開始タイミングが変移していないからである。同様にタイミングT200において制御部16は、特定順番で開始タイミングが変移したと判定しない。一方、タイミングT300において制御部16は、特定順番で開始タイミングが変移したと判定する。タイミングT100で密期間開始タイミングLが検出され、タイミングT200で粗期間開始タイミングMが検出され、タイミングT300で密期間開始タイミングLが検出されており、タイミングT300の時点で「密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番」で境界タイミングが変移したからである。従って制御部16は、タイミングT300において、特定順番で境界タイミングが変移したと判定し(ステップSA11:YES)、処理手順をステップSA12に進める。
【0083】
またタイミングT400において制御部16は、特定順番で境界タイミングが変移したと判定しない。一方、タイミングT500において制御部16は、特定順番で開始タイミングが変移したと判定する。タイミングT500の時点で、タイミングT300:密期間開始タイミングL→タイミングT400:粗期間開始タイミングM→タイミングT500:密期間開始タイミングLという順番で開始タイミングが変移したからである。従って制御部16は、タイミングT500において、特定順番で境界タイミングが変移したと判定し(ステップSA11:YES)、処理手順をステップSA12に進める。タイミングT600において制御部16は、特定順番で境界タイミングが変移したと判定しない。
【0084】
ステップSA11において特定順番で境界タイミングが変移したと判定した場合(ステップSA11:YES)、制御部16は、処理手順をステップSA12へ移行する。一方、開始タイミングが変移したと判定しなかった場合(ステップSA11:NO)、制御部16は、処理手順をステップSA15へ移行する。
【0085】
ステップSA12において制御部16は、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する。このように本実施形態では、制御部16は、密期間J、粗期間K、密期間Jの順番で各期間に至ったことを検出したときに、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する。
【0086】
次いで制御部16は、ユーザの操作に基づく入力を有効と判定する(ステップSA13)。次いで制御部16は、注目ポイント位置Fの回転方向に応じたアクションを実行する(ステップSA14)。本実施形態の単純化した一例では制御部16は、注目ポイント位置Fが時計回りY1に回転している場合、オーディオ装置の音量を1単位だけ増大させる。一方、制御部16は、注目ポイント位置Fが反時計回りY2に回転している場合、オーディオ装置の音量を1単位だけ低減させる。ステップSA14の処理後、制御部16は、処理手順をステップSA11に戻す。
【0087】
以上の通り本実施形態によれば、制御部16は、特定順番(密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番)で境界タイミングを検出したときに、クリック感の発生期間に至ったことを検出すると共に入力を有効とし、対応するアクションを実行する。これにより以下の効果を奏する。すなわち特定順番で開始タイミングが変移した場合、最後の密期間開始タイミングLでは、実際にクリック感が発生していると強く推定できる。理由は以下である。すなわち「密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番」での境界タイミングの変移は、把持部材10が回転していることに伴って密期間Jと粗期間Kとが交互に出現した場合に発生する変移であり、このような順番で境界タイミングが変移したということは、ユーザが把持部材10をつまみ、把持部材10を回転さている状態であると強く推定できる。そして粗期間Kは、クリック感の発生期間に対応する期間である。以上より、特定順番で境界タイミングが変移した場合、密期間開始タイミングLでは、実際にクリック感が発生していると強く推定できる。
【0088】
以上を踏まえ、「密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番」で境界タイミングが検出されたときにクリック感の発生期間に至ったことを検出すると共に入力を有効とすることによって、クリック感の発生期間と、入力を有効とするタイミングとを同期させることができる。そして、この「クリック感の発生期間と、入力を有効とするタイミングとの同期」は、ノブ部材7の規定角度にかかわらず、実現できる。
【0089】
さてステップSA15において制御部16は、注目ポイントEが存在するか否かを判別する。なお注目ポイントEが存在しないということは、周縁領域19において検出面4に近接する被検出体が存在しないということであり、ユーザがノブ部材7から手を離し、ノブ部材7に対する操作を解除したものと推定される。
【0090】
ステップSA15において注目ポイントEが存在すると判定した場合(ステップSA15:YES)、制御部16は、処理手順をステップSA11へ戻す。一方、注目ポイントEが存在しないと判定した場合(ステップSB15:NO)、制御部16は、注目ポイント位置記録処理、一周期移動量記録処理および第1境界タイミング検出処理を停止し(ステップSA16)、処理を終了する。
【0091】
以上説明したように本実施形態に係る操作検出装置14の制御部16は、センサパネル3の検出結果に基づいて、所定周期で被検出体の位置の推移を検出すると共に、周期ごとの被検出体の移動量である一周期移動量を検出し、一周期移動量の推移に基づいて、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出する。
【0092】
この構成によれば、一周期移動量の推移に基づいて把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことが検出されるため、一周期移動量がクリック感に伴う抵抗力の状況に応じた特徴的な態様で変移することを好適に活用して、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを的確に検出することが可能である。そして、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出することによって、ノブ部材7の種類にかかわらずクリック感の発生期間と同期して入力を有効とすることが可能となり、従って人為的な作業によるファームウェアの変更等を伴うことなく、取り換え後の新しいノブ部材7について規定角度の回転に応じて入力を有効とすることが可能となる。すなわち上記構成によれば、把持部材の回転に応じてクリック感を生じさせるノブ部材7の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制することができる。
【0093】
なお上記実施形態では、制御部16は、「密期間開始タイミングL→粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番」で境界タイミングを検出したときに、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを検出した。この点に関し、制御部16が、境界タイミングの出現順番にかかわらず、密期間開始タイミングLを検出したときにクリック感の発生期間に至ったことを検出する構成でもよい。密期間Jは、クリック感の発生期間と推定できるからである。この場合、
図16の例では、制御部16は、タイミングT100、T300、T500でクリック感の発生期間に至ったことを検出する。
【0094】
また制御部16が、「粗期間開始タイミングM→密期間開始タイミングLの順番」で境界タイミングを検出したときに、クリック感の発生期間に至ったことを検出する構成でもよい。把持部材10が回転されているときには、このような境界タイミングの変移を経た後、密期間Jにおいてクリック感が発生するからである。この場合、
図16の例では、制御部16は、タイミングT100、T300、T500でクリック感の発生期間に至ったことを検出する。
【0095】
また上記実施形態では、制御部16は、平均値および標準偏差を用いた手法で外れ値を検出したが、他の統計学的手法により外れ値を検出する構成でもよい。
【0096】
また、上記実施形態で説明した処理の流れは、実施形態の理解に重要な事項に特に注目したものであり、必要に応じて他の処理が実行されることは当然である。一例として、制御部16は、一周期移動量の推移が、把持部材10の回転に伴うものと想定されないイレギュラーな推移である場合には、これを検出し、必要な処理(一例として、入力を有効とせずに、ユーザに通知する処理)を実行する。
【0097】
<第1変形例>
次に上記実施形態の第1変形例を説明する。
図17のフローチャートFEは、本変形例に係る操作検出装置14による情報処理方法を示すフローチャートである。
図17と
図5との比較で明らかな通り、本変形例では、制御部16が、ステップSA10の処理に代えてステップSE1、SE2を実行し、またステップSA16の処理に代えてステップSE3を実行する点で上記実施形態と相違している。
【0098】
ステップSE1において制御部16は、一周期移動量推移データに基づいて対応標準偏差記録処理を開始する。対応標準偏差記録処理は、ステップSE1で開始された後、処理が停止されるまで継続して実行される。対応標準偏差記録処理において制御部16は、所定周期で以下の処理を実行する。すなわち処理を実行するタイミングをタイミングT[0]とすると、制御部16は一周期移動量推移データを参照し、タイミングT[0]、T[-1]、T[-2]、T[-3]の4個のタイミングの一周期移動量について、標準偏差を導出する。以下、ここで導出された標準偏差を「対応標準偏差」という。対応標準偏差は、「現時点を含む過去の一定期間に属する各タイミングの一周期移動量について統計学的なばらつきを示す指標値」に相当する。なお対応標準偏差の導出の対象とするタイミングの個数は4個である必要はない。当該個数は、境界タイミングを検出するという観点の下、実験やシミュレーション等の結果に基づいて適切に定められる。
【0099】
対応標準偏差を導出した後、制御部16は、導出した対応標準偏差をタイミング識別情報と対応付けて対応標準偏差推移データに記録する。対応標準推移データは所定の記憶領域に記憶されている。このように対応標準偏差推移データには、各タイミングで導出された対応標準偏差が時系列で記録される。なお対応標準推移データは、センサパネル3の検出結果が反映されたデータである。従って制御部16により対応標準偏差推移データが参照されて実行される処理は、センサパネル3の検出結果に基づいて実行される処理である。
【0100】
例えば一周期移動量の推移が
図10で示すものであったとする。この場合タイミングT5において制御部16は、タイミングT2~T5のそれぞれの一周期移動量に基づく対応標準偏差を導出し、対応標準偏差推移データに記録する。またタイミングT6において制御部16は、タイミングT3~T6のそれぞれの一周期移動量に基づく対応標準偏差を導出し、対応標準偏差推移データに記録する。
【0101】
図17で示すようにステップSE1において対応標準偏差記録処理を開始した後、制御部16は、第2境界タイミング検出処理を開始する(ステップSE2)。第2境界タイミング検出処理は、ステップSE2で開始された後、処理が停止されるまで継続して実行される。以下、ステップSE2の第2境界タイミング検出処理について詳述する。
図18のフローチャートFFは操作検出装置14による情報処理方法を示すフローチャートであり、特に第2境界タイミング検出処理の手順を示している。制御部16は、フローチャートFFの処理を所定周期で実行する。以下の説明において、制御部16は、タイミングT[0]でフローチャートFFの処理を開始したものとする。
【0102】
図18で示すように制御部16は対応標準偏差推移データを参照し、タイミングT[-1]までに対応標準偏差が3回以上連続で判定用閾値TH2を上回った後に、タイミングT[0]において判定用閾値TH2を下回った状態となったか否かを判別する(ステップSF1)。つまりステップSF1において制御部16は、対応標準偏差が3回以上連続で判定用閾値TH2を上回ったあとに、判定用閾値TH2を下回った状態となったか否かを判別する。以下、「対応標準偏差が3回以上連続で判定用閾値TH2を上回ったあとに、判定用閾値TH2を下回った状態」を「注目状態」という。また、あるタイミングで検出された対応標準偏差を「そのタイミングの標準偏差」という。
【0103】
図19は、横軸が時間軸、縦軸が対応標準偏差の座標上で対応標準偏差の推移の一例を示す図である。
図19のように例えばタイミングT[-3]の対応標準偏差、タイミングT[-2]の対応標準偏差、タイミングT[-1]の対応標準偏差の全てが判定用閾値TH2を上回り、かつタイミングT[0]の対応標準偏差が判定用閾値TH2を下回っている場合、制御部16は、タイミングT[0]において注目状態となったと判定する。
【0104】
注目状態となっていない場合(ステップSF1:NO)、制御部16は、処理を終了する。一方、注目状態となった場合(ステップSF1:YES)、制御部16は、一周期移動量推移データを参照し、判定用閾値TH2を上回った後のタイミングの一周期移動量が、判定用閾値TH2を上回る前のタイミングの一周期移動量よりも小さいかどうかを判定する(ステップSF2)。
図19の例では、制御部16は、判定用閾値TH2を上回った後のタイミングであるタイミングT[-3]の一周期移動量(対応標準偏差ではない)が、判定用閾値TH2を上回る前のタイミングであるタイミングT[-4]の一周期移動量(対応標準偏差ではない)よりも小さいかどうかを判定する。なお判定用閾値TH2を上回った後のタイミングを、判定用閾値TH2を上回った“直後”のタイミング(
図19の例ではタイミングT[-3])とする必要はなく、例えば「判定用閾値TH2を上回った直後のタイミング」の1、2周期程度後のタイミング(
図19の例ではタイミングT[-2]、T[―1])としてもよい。同様に判定用閾値TH2を上回る前のタイミングは、判定用閾値TH2を上回る“直前”のタイミング(
図19の例ではタイミングT[-4])とする必要はなく、例えば「判定用閾値TH2を上回る直前のタイミング」の1、2周期程度前のタイミング(
図19の例ではタイミングT[-5]、T[―6])としてもよい。
【0105】
小さい場合(ステップSF2:YES)、制御部16は、タイミングT[0]を密期間開始タイミングLと判定し(ステップSF3)、処理を終了する。小さくない場合(ステップSF2:NO)、制御部16は、タイミングT[0]を粗期間開始タイミングMと判定し(ステップSF4)、処理を終了する。
【0106】
以下、第2境界タイミング検出処理の具体例を説明する。
図10のタイミングT4~T10に着目する。タイミングT4~T10について、対応標準偏差の推移は、
図20(A)で示す推移となる。このような推移となる理由は以下である。すなわちタイミングT4では、タイミングT1~T4に基づいて対応標準偏差が導出される。タイミングT1~T4は全て密期間Jに属しており、各タイミングにおける一周期移動量のばらつきが小さく、対応標準偏差は小さい。続くタイミングT5では、タイミングT2~T5に基づいて対応標準偏差が導出される。タイミングT2~T5は全て密期間Jに属しており、各タイミングにおける一周期移動量の差が小さく、対応標準偏差は小さい。
【0107】
続くタイミングT6では、タイミングT3~T6に基づいて対応標準偏差が導出される。そしてタイミングT3~T5は密期間Jに属する一方、タイミングT6は粗期間Kに属する。これに起因して各タイミングにおける一周期移動量のばらつきがタイミングT4、T5のときと比較して大きくなり、従って対応標準偏差の値がタイミングT4、T5の時と比較して大きくなる。続くタイミングT7では、タイミングT4~T7に基づいて対応標準偏差が導出される。そしてタイミングT4、T5は密期間Jに属する一方、タイミングT6、T7は粗期間Kに属する。これに起因して各タイミングにおける一周期移動量のばらつきがタイミングT4、T5のときと比較して大きくなり、従って対応標準偏差の値がタイミングT4、T5の時と比較して大きくなる。続くタイミングT8では、タイミングT5~T8に基づいて対応標準偏差が導出される。そしてタイミングTT5は密期間Jに属する一方、タイミングT6~T8は粗期間Kに属する。これに起因して各タイミングにおける一周期移動量のばらつきがタイミングT4、T5のときと比較して大きくなり、従って対応標準偏差の値がタイミングT4、T5の時と比較して大きくなる。続くタイミングT9では、タイミングT6~T9に基づいて対応標準偏差が導出される。そしてタイミングT6~T9は全て粗期間Kに属しており、各タイミングにおける一周期移動量のばらつきが小さく、対応標準偏差の値は小さい。続くタイミングT10では、タイミングT7~T10に基づいて対応標準偏差が導出される。そしてタイミングT7~T10は全て粗期間Kに属しており、各タイミングにおける一周期移動量のばらつきが小さく、対応標準偏差の値は小さい。以上の理由により、対応標準偏差の推移は
図21で示す通りとなる。
【0108】
以上の通り、密期間Jから粗期間Kへと切り替わる期間では、対応標準偏差が「安定して小さい状態」→「複数回、連続して大きくなる状態」→「安定して小さい状態」へと変移する。このことは、密期間Jから粗期間Kへと切り替わる期間だけでなく、粗期間Kから密期間Jへと切り替わる期間についても同様である。そして本実施形態では、判定用閾値TH2は、「安定して小さい状態」のときは対応標準偏差が判定用閾値TH2を超えず、かつ、「複数回、連続して大きくなる状態」のときは対応標準偏差が判定用閾値TH2を超えるような値に設定されている。判定用閾値TH2は、事前のテスト或いはシミュレーションの結果に基づいて適切に設定される。
図20では、判定用閾値TH2を明示している。
【0109】
図10、20を参照し、第2境界タイミング検出処理において、制御部16は、タイミングT4~T8では、注目状態となったと判定しない。一方、制御部16は、タイミングT9において注目状態となったと判定する(ステップSF1:YES)。更に制御部16は、タイミングT6(判定用閾値TH2を上回った後のタイミング)の一周期移動量の方が、タイミングT5(判定用閾値TH2を上回る前のタイミング)の一周期移動量よりも小さくないと判定し(ステップSF2:NO)、タイミングT9を粗期間開始タイミングMと判定する(ステップSF3)。なお、タイミングT6の一周期移動量とタイミングT6の一周期移動量との大小関係は
図10で示されている。
【0110】
また
図10のタイミングT14~T20に着目する。この場合、タイミングT14~T20では、対応標準偏差の推移は
図20(B)で示す推移となる。この場合において制御部16は、タイミングT19において注目状態となったと判定する(ステップSF1:YES)。更に制御部16は、タイミングT16(判定用閾値TH2を上回った後のタイミング)の一周期移動量の方が、タイミングT15(判定用閾値TH2を上回る前のタイミング)の一周期移動量よりも小さいと判定し(ステップSF2:YES)、タイミングT19を密期間開始タイミングLと判定する(ステップSF3)。
【0111】
図17で示すようにステップSE2の処理後、制御部16は、処理手順をステップSA11へ移行する。上述したようにステップSA11では、特定順番で境界タイミングが変移したかどうかが判別される。
【0112】
ステップSE3において制御部16は、注目ポイント位置記録処理、一周期移動量記録処理および境界タイミング検出処理と併せて、対応標準偏差記録処理を停止する。
【0113】
本変形例の構成によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、一周期移動量がクリック感に伴う抵抗力の状況に応じた特徴的な態様で変移することを好適に活用して、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを的確に検出することが可能である。その上でノブ部材7の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制することができる。
【0114】
なお本変形例では、制御部16は、統計学的なばらつきを示す指標値として、標準偏差を用いた。しかしながら、指標値は、他の統計学的な手法(一例として分散)で導出される値であってもよい。
【0115】
また本変形例では、制御部16は、対応標準偏差が“3回”以上連続で判定用閾値TH2を上回ったあとに、判定用閾値TH2を下回った状態となったか否かを判別した。この点について、判定用閾値TH2を上回った回数を何回以上とするかは、「3回」に限られるものではない。この回数は、境界タイミングを的確に検出するという観点の下、テストやシミュレーションの結果に基づいて適宜、設定される。また、制御部16が、対応標準偏差が“〇回”以上かつ“×回”未満(〇、×には整数が入る。ただし〇<×)、連続で判定用閾値TH2を上回ったあとに、判定用閾値TH2を下回った状態となったか否かを判別する構成でもよい。
【0116】
<第2変形例>
次に第2変形例について説明する。上記実施形態では、操作検出装置14の制御部16は、クリック感の発生期間に至ったことをリアルタイムで検出した。一方で本変形例では、操作検出装置14の制御部16は、クリック感の発生をリアルタイムで検出する処理は行わない。一方で、ノブ部材7が取り換えられた後に、取り換え後の新しいノブ部材7の規定角度を検出し、設定する。そして以後は、ノブ部材7が設定した規定角度だけ回転したかどうか否かを判別し、回転したときに入力を有効とする。以下、本変形例に係る操作検出装置14の処理について詳述する。
【0117】
まず、ユーザによりノブ部材7が取り換えられた場合、これに伴ってユーザにより以下の作業が行われる。すなわちユーザは、動作モードをキャリブレーションモードへ移行し、その状況でノブ部材7の把持部材10をつまみ、把持部材10を180°程度、回転させる。なお180°というのは、ノブ部材7の種類が何であっても把持部材10の回転に伴って2回以上クリック感が発生するようにするという観点で定められている。なおノブ部材7の取り換えに応じて上記作業を行うべきことはユーザに対して適切な手段で事前に通知される。なお、キャリブレーションモード時のユーザの作業は、ファームウェアや設定ファイルを人為的に自動で更新する作業と比較して、専門的な知識がいらないため難易度が低く、更に極めて簡単な作業である。
【0118】
そしてキャリブレーションモードにおいて操作検出装置14の制御部16は、以下の処理を実行する。
図21のフローチャートFGは、操作検出装置14の情報処理方法を示すフローチャートであり、特にキャリブレーションモードにおける操作検出装置14の処理の手順を示している。
【0119】
図21で示すように操作検出装置14の制御部16は、ユーザによる把持部材10の回転に応じて注目ポイント位置推移データおよび一周期移動量推移データを生成する(ステップSG1)。制御部16は、上記実施形態と同じ方法で注目ポイント位置推移データおよび一周期移動量推移データを生成する。次いで制御部16は、一周期移動量推移データを分析し、密期間開始タイミングLのそれぞれを検出する(ステップSG2)。例えば一周期移動量が
図16で示す態様で推移した場合、制御部16は、タイミングT100、タイミングT300およびタイミングT500を密期間開始タイミングLとして検出する。制御部16は、上記実施形態と同じ方法で密期間開始タイミングLを検出する。ただし制御部16が、第1変形例の方法で密期間開始タイミングLを検出する構成でもよい。この場合、制御部16は、ステップSG1において対応標準偏差推移データを生成する。
【0120】
次いで制御部16は、注目ポイント位置推移データに基づいて、検出した密期間開始タイミングLのそれぞれについて、注目ポイント位置Fを検出する(ステップSG3)。次いで制御部16は、連続する2つの密期間開始タイミングLについて、2つの注目ポイント位置Fが把持部材10の中心点Oについてなす中心角を導出する(ステップSG4)。密期間開始タイミングLが3つ以上検出されている場合には、導出される中心角は2つ以上となる。
図22は、ノブ部材7の周辺を示す図である。例えば一周期移動量の推移が
図16で示すものである場合において、
図22で示すように、タイミングT100で注目ポイント位置F-4が出現し、タイミングT200で注目ポイント位置F-5が出現し、タイミングT300で注目ポイント位置F-6が出現したとする。この場合、ステップSG4において制御部16は、注目ポイント位置F-4と注目ポイント位置F-5との中心角としてθ1を導出し、更に注目ポイント位置F-5と注目ポイント位置F-6との中心角θ2を導出する。
【0121】
ここでクリック感の発生期間は、把持部材10の規定角度分の回転に応じて出現する。これを踏まえると、ステップSG4で導出された中心角のそれぞれは、規定角度に対応する角度である
【0122】
次いで制御部16は、ステップSG4で導出した中心角のそれぞれの平均値を導出する(ステップSG5)。次いで制御部16は、複数の規定角度の候補のうち、ステップSG5で導出した平均値に最も近い候補を検出し、当該平均値に最も近い候補を、取り換え後の新しいノブ部材7の規定角度として検出する(ステップSG6)。規定角度の候補は、ノブ部材7の規定角度として採用され得る角度のそれぞれである。一例として規定角度の候補は、18°、36°、72°である。規定角度の候補は、現在すでに存在するノブ部材7の種類および将来出現し得るノブ部材7の種類を考慮して、十分な種類が用意されている。例えば、規定角度の候補として18°、36°、72°が存在し、かつステップSG5で導出した平均値が18.26°であった場合、制御部16は、「18°」を取り換え後の新しいノブ部材7の規定角度として検出する。
【0123】
次いで制御部16は、ステップSG6で検出した規定角度を、取り換え後の新しいノブ部材7の規定角度として設定する(ステップSG7)。ステップSG7の処理は、設定された規定角度が、以後の処理に利用される状態が構築されればよく、例えば規定角度が設定ファイルに記録される場合には、制御部16は、設定ファイルにおける規定角度の値を更新する。つまり本変形例では制御部16は、従来、ノブ部材7の取り換えに応じてユーザが人為的に行っていた規定角度の再設定について、規定角度を自動で検出すると共に、規定角度の設定を自動で実行する。
【0124】
以上のようにして規定角度を設定した後、制御部16は、以下の方法でノブ部材7に対する操作の検出にあたって、設定した規定角度を利用する。例えば制御部16は、注目ポイント位置Fの変移を監視し、注目ポイント位置Fが中心点Oを中心として規定角度だけ回転したか否かを監視し、回転したときに入力を有効とする。
【0125】
以上の通り本変形例では制御部16は、第1の密期間に至ったことが検出されたタイミングにおける被検出体の位置と、第1の密期間に連続する第2の密期間に至ったことが検出されたタイミングにおける被検出体の位置とが把持部材10の中心部についてなす中心角に基づいて規定角度を検出する。本変形例の構成によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、一周期移動量がクリック感に伴う抵抗力の状況に応じた特徴的な態様で変移することを好適に活用して、把持部材10の回転中にクリック感の発生期間に至ったことを的確に検出することが可能である。その上でノブ部材7の取り換えが行われたときに、取り換えに応じて難易度が高く煩雑な作業が発生することを抑制することができる。
【0126】
なお本変形例では制御部16は、第1の密期間開始タイミングLに係る注目ポイント位置Fと、密期間開始タイミングLに係る注目ポイント位置Fとがなす中心角に基づいて規定角度を導出したが、密期間開始タイミングLを粗期間開始タイミングMへと変えてもよい。連続する粗期間開始タイミングMに係る注目ポイント位置Fがなす中心角も、規定角度に対応するからである。
【0127】
つまり、本変形例において制御部16は、少なくとも以下のパターンで処理を実行できる。<第1パターン>制御部16は、上記実施形態で示した方法で密期間開始タイミングL(密期間Jに至ったこと)を検出し、第1の密期間開始タイミングLにおける注目ポイント位置F(被検出体の位置)と、第1の密期間開始タイミングLに連続する第2の密期間開始タイミングLにおける注目ポイント位置Fとが把持部材10の中心点Oについてなす中心角に基づいて規定角度を検出する。<第2パターン>制御部16は、上記実施形態で示した方法で粗期間開始タイミングM(粗期間Kに至ったこと)を検出し、第1の粗期間開始タイミングMにおける注目ポイント位置Fと、第1の密期間開始タイミングMに連続する第2の密期間開始タイミングMにおける注目ポイント位置Fとが把持部材10の中心点Oについてなす中心角に基づいて規定角度を検出する。<第3パターン>制御部16は、第1変形例で示した方法で密期間開始タイミングL(密期間Jに至ったこと)を検出し、第1の密期間開始タイミングLにおける注目ポイント位置Fと、第1の密期間開始タイミングLに連続する第2の密期間開始タイミングLにおける注目ポイント位置Fとが把持部材10の中心点Oについてなす中心角に基づいて規定角度を検出する。<第4パターン>制御部16は、第1変形例で示した方法で粗期間開始タイミングM(粗期間Kに至ったこと)を検出し、第1の粗期間開始タイミングMにおける注目ポイント位置Fと、第1の密期間開始タイミングMに連続する第2の密期間開始タイミングMにおける注目ポイント位置Fとが把持部材10の中心点Oについてなす中心角に基づいて規定角度を検出する。
【0128】
以上、本発明の一実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0129】
上記実施形態では、制御部16は、ノブ部材7の周縁で検出面4に近接する被検出体の位置を注目ポイント位置とした。この点に関し、把持部材10に、導電性を有する被検出体が予め設けられ、制御部16が、この被検出体の位置を注目ポイント位置として検出する構成でもよい。
【0130】
例えば操作検出装置14の機能ブロックが実行すると説明した処理の一部を操作検出装置14と外部装置とが協働して実行する構成としてもよい。この場合、操作検出装置14と外部装置とが協働して「操作検出装置」として機能する。一例として外部装置は、操作検出装置14とネットワークを介して通信可能なクラウドサーバである。
【0131】
また例えば、操作検出装置14のコンピュータが実行するプログラムの提供、または、このプログラムをコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体の提供を実施形態に含めることができる。上記記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリーデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray(登録商標)Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型の、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。
【0132】
また例えば、例示したフローチャートについて、目的を実現でき、処理に矛盾が起こらない限り、処理の順番を変更したり、処理をより細かく分割したり、処理を追加したり、処理を削除したりしてもよい。
【0133】
また上述した各実施形態では、操作検出装置14をセンサパネル3から独立した装置として説明したが、操作検出装置14は、単独で流通し得る独立した装置である必要はない。一例として、センサパネル3と同じ筐体に実装された回路或いはユニットであってもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 表示入力装置
3 センサパネル
4 検出面
7 ノブ部材
10 把持部材
14 操作検出装置
15 操作検出ユニット
16 制御部