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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131614
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60Q5/00 650A
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 620Z
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 650D
B60Q5/00 660Z
B60Q5/00 680D
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 680E
B60Q5/00 650C
B60Q5/00 660K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041991
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝幸
(57)【要約】
【課題】音による演出効果の向上に役立つ音響装置を提供する。
【解決手段】音響装置10は、音を車外に発するように車両100上の別々の場所に設置可能な複数の発音装置20と、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御するコントローラ30と、を備える。車両100には可動部品例えばスライドドア装置110が設けられていてもよく、コントローラ30は、可動部品の動作中に音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を車外に発するように車両上の別々の場所に設置可能な複数の発音装置と、
前記音が移動して聞こえるように、前記複数の発音装置の音量を個別に制御するコントローラと、を備えることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記車両には可動部品が設けられており、
前記コントローラは、前記可動部品の動作中に前記音が移動して聞こえるように、前記複数の発音装置の音量を個別に制御することを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記可動部品の第1動作中に前記音が第1方向に移動して聞こえるように、前記複数の発音装置の音量を個別に制御し、
前記可動部品の前記第1動作と異なる第2動作中に前記音が前記第1方向と異なる第2方向に移動して聞こえるように、前記複数の発音装置の音量を個別に制御することを特徴とする請求項2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記複数の発音装置は、前記車両の第1部分に設置可能な第1発音装置と、前記車両の前記第1部分と異なる第2部分に設置可能な第2発音装置とを含み、
前記コントローラは、前記第1部分から前記第2部分へと前記音が移動して聞こえるように、前記第1発音装置の音量を減少させるとともに前記第2発音装置の音量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記音の音源データを有し、
前記コントローラは、前記音の間欠的な吹鳴パターンを表す吹鳴パターン情報を取得し、前記吹鳴パターン情報に従って前記音源データを間欠的に再生するように前記複数の発音装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項6】
各灯具ユニットが前記複数の発音装置のうち対応する発音装置を搭載した複数の灯具ユニットをさらに備え、
前記コントローラは、前記複数の発音装置および前記複数の灯具ユニットを制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の音響装置。
【請求項7】
音を車外に発するように車両に設置可能な発音装置と、
前記音の音源データを有するコントローラであって、前記音の間欠的な吹鳴パターンを表す吹鳴パターン情報を取得し、前記吹鳴パターン情報に従って前記音源データを間欠的に再生するように前記発音装置を制御するコントローラと、を備えることを特徴とする音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、例えば、自動車などの車両への搭載に適する車両用音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動開閉できる車両のスライドドア装置に警報音発生手段を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。ドア開閉時に警報音を鳴らし、近くの人に注意を促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-20697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなドア自動開閉の注意喚起に限られず、さまざまな目的のために、車外に向けて音を発するための装置が車両に搭載されることがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、音による演出効果の向上に役立つ音響装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の音響装置は、音を車外に発するように車両上の別々の場所に設置可能な複数の発音装置と、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置の音量を個別に制御するコントローラと、を備える。
【0007】
この態様によると、発せられた音を聞く人に対し、音の動きを利用した演出を提供できる。音による演出効果の向上に役立つ音響装置を提供することができる。
【0008】
車両には可動部品が設けられていてもよく、コントローラは、可動部品の動作中に音が移動して聞こえるように、複数の発音装置の音量を個別に制御してもよい。このようにすれば、音の動きによって可動部品の動作を表現することが可能になり、動きの無い静止した音を発する既存装置に比べて、より高い演出効果をこの可動部品の動作に与えることができる。
【0009】
コントローラは、可動部品の第1動作中に音が第1方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置の音量を個別に制御し、可動部品の第1動作と異なる第2動作中に音が第1方向と異なる第2方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置の音量を個別に制御してもよい。このようにすれば、可動部品の異なる動作を音の移動方向によって識別させることができる。
【0010】
複数の発音装置は、車両の第1部分に設置可能な第1発音装置と、車両の第1部分と異なる第2部分に設置可能な第2発音装置とを含んでもよい。コントローラは、第1部分から第2部分へと音が移動して聞こえるように、第1発音装置の音量を減少させるとともに第2発音装置の音量を増加させてもよい。このようにすれば、車両の第1部分から第2部分に向かう音の動きを表現することができる。
【0011】
コントローラは、音の音源データを有してもよい。コントローラは、音の間欠的な吹鳴パターンを表す吹鳴パターン情報を取得し、吹鳴パターン情報に従って音源データを間欠的に再生するように複数の発音装置を制御してもよい。このようにすれば、吹鳴パターンをあらかじめメモリに保管しておく必要が無く、音響装置のメモリ容量をその分節約することができる。
【0012】
音響装置は、各灯具ユニットが複数の発音装置のうち対応する発音装置を搭載した複数の灯具ユニットをさらに備えてもよい。コントローラは、複数の発音装置および複数の灯具ユニットを制御してもよい。このようにすれば、音響装置を車両用灯具に統合することができる。
【0013】
本発明の別の態様もまた、音響装置である。この装置は、音を車外に発するように車両に設置可能な発音装置と、音の音源データを有するコントローラであって、音の間欠的な吹鳴パターンを表す吹鳴パターン情報を取得し、吹鳴パターン情報に従って音源データを間欠的に再生するように発音装置を制御するコントローラと、を備える。
【0014】
この態様によると、吹鳴パターンをあらかじめメモリに保管しておく必要が無く、音響装置のメモリ容量をその分節約することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、音による演出効果の向上に役立つ音響装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る音響装置のブロック図である。
図2図2(a)および図2(b)は、実施の形態に係る音響装置の音量制御の一例を示す模式図である。
図3図3(a)から図3(c)は、実施の形態に係り、音の吹鳴パターンの例を示す模式図である。
図4】実施の形態に係る音響装置のブロック図である。
図5】実施の形態に係る吹鳴制御の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係り、車両の可動部品の他の一例を示す模式図である。
図7】実施の形態に係る音響装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0018】
図1は、実施の形態に係る音響装置10のブロック図である。音響装置10は、例えば自動車などの車両100に搭載されている。音響装置10は、車外に向けて少なくとも一種類の音を発するように構成されている。
【0019】
音響装置10は、例えば、車両接近通報装置として車両100に搭載されてもよい。知られているように、車両接近通報装置は、車両100の接近を車両100の周囲に接近通報音により通報可能である。接近通報音は、エンジン音を模擬する疑似エンジン音であってもよい。車両接近通報装置は、歩行者や他車両に車両100の接近を知らせることができ、安全性の向上に役立つ。とくに、ハイブリッド車や電気自動車など車両100が電気モータを走行駆動源とする場合には低速時のモータ音が静粛であり車両100の接近が気づかれにくいことから、車両接近通報装置は有用である。
【0020】
音響装置10は、接近通報音だけでなく、または接近通報音に代えて、例えばブザー音などの報知音、またはその他の音を発するように構成されてもよい。音響装置10が発する音は、特定の音程および音色をもつ単一の音であってもよい。音響装置10が発する音は、単一音に限られず、複数音からなる旋律を有してもよい。音響装置10は、こうした音を連続的に発してもよく、または、音を所定の吹鳴パターンに従って間欠的に発してもよい。
【0021】
この実施の形態では、音響装置10は、車両100に設けられた可動部品、例えばスライドドア装置110に連動して音を発するように構成されている。音響装置10は、例えば、可動部品が動作中であることを知らせたり、可動部品の動作に音の演出を付加したりするなど、様々な目的で、可動部品の動作に同期した効果音を発してもよい。音響装置10は、例えば、可動部品の動作に先行して及び/または動作の最中に効果音を発してもよい。
【0022】
スライドドア装置110は、車両100の側部に開閉可能に取り付けられたスライドドア111と、スライドドア111の開閉を駆動するスライドドアモータ112と、スライドドア111の開閉を制御するコントローラ、例えばスライドドアECU(Electronic Control Unit)113とを備える。スライドドアECU113は、スライドドア111の取っ手などドア開閉スイッチの操作を検知し、検知されたスイッチ操作に応じてスライドドア111の開動作(図1に矢印114で示す)または閉動作(図1に矢印115で示す)が行われるようにスライドドアモータ112を制御してもよい。また、スライドドアECU113は、スライドドア111の開動作または閉動作を表すスライドドア動作信号を出力してもよい。
【0023】
音響装置10は、複数の発音装置20、この実施の形態では、第1発音装置20aと第2発音装置20bを備える。これら発音装置20は、音を車外に発するように車両100上の別々の場所に設置可能であり、一例として、第1発音装置20aと第2発音装置20bは、車両100の前後に分かれて配置される。例えば、第1発音装置20aは、車両100の第1部分例えば前部中央に配置され、第2発音装置20bは、車両100の第2部分例えば後部中央に配置される。発音装置20は、例えばスピーカーであり、ボイスコイルとマグネットにより振動板を振動させることで音を発する構造であってもよい。あるいは、発音装置20は、音を発するその他の構造であってもよい。
【0024】
なお、発音装置20は車両100上で様々な配置をとりうる。例えば、第1発音装置20aと第2発音装置20bは、車両100の左右に分かれて配置されてもよく、第1発音装置20aが車両100の前部(または後部)で左端部に配置され、第2発音装置20bが車両100の前部(または後部)で右端部に配置されてもよい。また、この例では、音響装置10は2つの発音装置20を有するが、音響装置10が有する発音装置20の数は任意である。例えば、音響装置10は4つの発音装置20を有し、発音装置20が車両100の前後左右の四箇所それぞれに配置されてもよい。
【0025】
また、音響装置10は、発音装置20を制御するコントローラ30、例えば音響装置ECUを備える。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)やマイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。
【0026】
コントローラ30は、この実施の形態では、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御するように構成されている。例えば、コントローラ30は、車両100に設けられた可動部品の動作を把握し、この可動部品の動作中に、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。さらに、コントローラ30は、可動部品の第1動作中に音が第1方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御し、可動部品の第1動作と異なる第2動作中に音が第1方向と異なる第2方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置の音量を個別に制御してもよい。
【0027】
可動部品がスライドドア装置110である場合、音響装置10のコントローラ30は、スライドドア装置110からスライドドア動作信号を受信し、スライドドア動作信号に基づいてスライドドア装置110の動作(例えば、スライドドア111の開動作または閉動作)を把握してもよい。スライドドア動作信号は上述のように、スライドドアECU113から出力されてもよい。音響装置10のコントローラ30は、スライドドアECU113と例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などのネットワークプロトコルに準拠する車載ネットワーク、またはその他適宜の通信ネットワークを通じて通信可能であってもよく、こうしたネットワークを通じてスライドドア動作信号を取得してもよい。
【0028】
音響装置10が発する音によってスライドドア111の開動作を表現するために、コントローラ30は、スライドドア111の開動作中に、音が第1方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。第1方向は、スライドドア111の開動作に合わせた方向であってもよく、スライドドア111が開くとき前から後ろに向かって動く場合、前から後ろに向かう方向であってもよい。
【0029】
これに加えて、またはこれに代えて、音響装置10が発する音によってスライドドア111の閉動作を表現するために、コントローラ30は、スライドドア111の閉動作中に、音が第1方向と異なる第2方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。第2方向は、第1方向と逆向きであってもよい。第2方向は、スライドドア111の閉動作に合わせた方向であってもよく、スライドドア111が閉じるとき後ろから前に向かって動く場合、後ろから前に向かう方向であってもよい。
【0030】
図2(a)および図2(b)は、実施の形態に係る音響装置10の音量制御の一例を示す模式図である。図2(a)には、スライドドア装置110の開動作における音量制御の一例が示され、図2(b)には、スライドドア装置110の閉動作における音量制御の一例が示されている。図2(a)および図2(b)の上側には、第1発音装置20aの音量の例が示され、図2(a)および図2(b)の下側には、第2発音装置20bの音量の例が示されている。
【0031】
この例では、2つの発音装置20からは同じ音(つまり、音程および音色が同じ音)が連続的に発せられ、その音量のみが異なっている。例えば、同じブザー音が第1発音装置20aおよび第2発音装置20bから発せられてもよい。
【0032】
スライドドア装置110の開動作と同時に行われる音響装置10の動作では、図2(a)の上部に例示されるように、第1発音装置20aは、スライドドア111の開動作の開始とともに所定の初期音量で音を発し、開動作の最中に音量をこの初期音量から減少させる。スライドドア111の開動作の終了時に、第1発音装置20aの音量はゼロまで減少されてもよい(つまり、開動作の終了時に第1発音装置20aは音を発していなくてもよい)。または、開動作の終了時に、第1発音装置20aの音量は、非ゼロの所定の最終音量まで減少されてもよい。
【0033】
一方、図2(a)の下部に例示されるように、スライドドア111の開動作の開始時における第2発音装置20bの初期音量はゼロであってもよい(つまり、開動作の開始時に第2発音装置20bは音を発していなくてもよい)。または、第2発音装置20bの初期音量は、第1発音装置20aの初期音量より小さい所定の大きさであってもよい。第2発音装置20bの音量は、初期音量からスライドドア111の開動作の最中に増加され、開動作の終了時に所定の最終音量に達している。第2発音装置20bの最終音量は、第1発音装置20aの最終音量より大きくなっている。
【0034】
また、スライドドア装置110の閉動作と同時に行われる音響装置10の動作では、図2(b)の下部に例示されるように、第2発音装置20bは、スライドドア111の開動作の開始とともに所定の初期音量で音を発し、開動作の最中に音量をこの初期音量から減少させる。スライドドア111の開動作の終了時に、第2発音装置20bの音量はゼロまで減少されてもよい(つまり、開動作の終了時に第2発音装置20bは音を発していなくてもよい)。または、開動作の終了時に、第2発音装置20bの音量は、非ゼロの所定の最終音量まで減少されてもよい。
【0035】
一方、図2(b)の上部に例示されるように、スライドドア111の閉動作の開始時における第1発音装置20aの音量はゼロであってもよい(つまり、閉動作の開始時に第1発音装置20aは音を発していなくてもよい)。または、第1発音装置20aの初期音量は、第2発音装置20bの初期音量より小さい所定の大きさであってもよい。第1発音装置20aの音量は、初期音量からスライドドア111の閉動作の最中に増加され、閉動作の終了時に所定の最終音量に達している。第1発音装置20aの最終音量は、第2発音装置20bの最終音量より大きくなっている。
【0036】
第1発音装置20aおよび第2発音装置20bのこのような音量プロファイルは、一例にすぎない。図示の例では、スライドドア装置110の開動作(または閉動作)における第1発音装置20aと第2発音装置20bの合計音量は一定とされ、第1発音装置20aと第2発音装置20bの音量は相補的に変化している(例えば、開動作では、第1発音装置20aの音量の低下量と第2発音装置20bの音量の増加量とが等しくなるように2つの発音装置20の音量がそれぞれ変化している)が、これは必須ではない。例えば、スライドドア装置110の開動作(または閉動作)の開始から終了に向かって発音装置20の合計音量が増加または減少されてもよい。また、図示の例では、第1発音装置20aと第2発音装置20bの音量は時間とともにリニアに変化しているが、非線形に変化してもよい。
【0037】
コントローラ30は、このような音量プロファイルに従って第1発音装置20aおよび第2発音装置20bの音量を変化させるように、これら発音装置20を制御する。このようにして、スライドドア装置110の開動作では、第1発音装置20aが設けられた車両100の前部から、第2発音装置20bが設けられた車両100の後部へと音が移動して聞こえるように、音響装置10を動作させることができる。すなわち、前から後ろへの音の動きによって、スライドドア111の前から後ろに向かう動きを表現することができる。一方、スライドドア装置110の閉動作では逆に、車両100の後部から前部へと音が移動して聞こえるように音響装置10を動作させ、スライドドア111の後ろから前に向かう動きを表現することができる。
【0038】
したがって、実施の形態によると、スライドドア装置110の開閉と同期させて音響装置10から音を発することで、ドア開閉について近くの人に注意喚起することができる。このとき、音響装置10からの音は、スライドドア111の前後の動きに合わせて前後に移動して聞こえる。動きの無い静止した音を単に発する既存装置に比べて、より高い演出効果をスライドドア装置110の動作に与えることができる。車両100の可動部品の流動感や奥行き感が音によって生み出されるなど、音を用いた表現の幅を広げることができる。このような新たな表現によって車両100に高級感が与えられる等、車両100の付加価値向上につながりうる新規な音響装置10を提供することができる。
【0039】
また、この実施の形態によると、スライドドア装置110の開動作と閉動作を視覚に頼らずに音で識別することができる。これは、視線をスライドドア装置110に向けることなく開閉を認識できるので、便利である。また、視覚障害をもつ人にとっても、スライドドア装置110の開閉を容易に認識することができ、有利である。
【0040】
なお、上述の音量制御とともに、または音量制御に代えて、コントローラ30は、可動部品の第1動作(例えばスライドドア装置110の開動作)で第1の音を発するように発音装置20を制御し、可動部品の第1動作と異なる第2動作(例えばスライドドア装置110の閉動作)で第1の音と異なる第2の音を発するように発音装置20を制御してもよい。第2の音は、音色及び/または音程について第1の音と異なっていてもよい。このようにすれば、可動部品の異なる動作を音色や音程の変化によって識別させることができる。
【0041】
上述の実施の形態では、音響装置10は、可動部品の動作中に連続して音を鳴らすように構成されているが、これに限られない。音響装置10は、可動部品の動作中に、またはその他の任意のタイミングで、吹鳴と待機を繰り返す間欠的な吹鳴パターンで音を鳴らしてもよい。
【0042】
コントローラ30は、複数の音データを格納した不揮発性メモリ(例えば、図4に示される不揮発性メモリ32)を備え、これら音データからいずれかを選択し、選択された音データを再生するように発音装置20を制御するように構成されていてもよい。音データは、所定の吹鳴パターンをもつ音を表す。吹鳴パターンは、例えば、音の1回の吹鳴時間、吹鳴回数、吹鳴間隔(つまり吹鳴と吹鳴の間で無音となる待機時間)といったパラメータによって定義される。
【0043】
図3(a)から図3(c)は、実施の形態に係り、音の吹鳴パターンの例を示す模式図である。図3(a)に示される第1の吹鳴パターンの例では、1回の吹鳴時間が150ms、吹鳴間隔が200ms、吹鳴回数が2回である。この吹鳴パターンによると、短い音(例えばブザー音)を二度、例えば「ピッ、ピッ」のように鳴らすことができる。図3(b)に示される第2の吹鳴パターンの例では、1回の吹鳴時間が1000ms、吹鳴間隔が200ms、吹鳴回数が2回である。この吹鳴パターンによると、長い音を二度、例えば「ピーーッ、ピーーッ」のように鳴らすことができる。図3(c)に示される第3の吹鳴パターンの例では、1回の吹鳴時間が150ms、吹鳴間隔が50ms、吹鳴回数が4回である。この吹鳴パターンによると、短い音を四度、例えば「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」のように鳴らすことができる。このように、吹鳴パターンを変化させることで、1つの共通の音源からさまざまな報知音を作り出すことができる。
【0044】
さまざまな吹鳴パターンで音を鳴らすことが望まれる場合には、音データを吹鳴パターンごとにあらかじめ準備し、コントローラ30のメモリに格納しておくことになる。望まれる吹鳴パターンの数だけ音データを準備しなければならないため、その数が多いほど大容量のメモリが必要となりうる。これは音響装置10の製造コストの増加にもつながりうる。そこで、音のデータ容量を節約してメモリの逼迫を防ぐために、以下の実施の形態が提案される。
【0045】
図4は、実施の形態に係る音響装置10のブロック図である。音響装置10は、少なくとも1つの発音装置20と、発音装置20を制御するコントローラ30とを備える。発音装置20は、音を車外に発するように車両上に設置可能である。
【0046】
コントローラ30は、発音装置20から発すべき音の音源データ34を格納する不揮発性メモリ32を備える。コントローラ30は、音の間欠的な吹鳴パターンを表す吹鳴パターン情報Pを取得し、吹鳴パターン情報Pに従って音源データ34を間欠的に再生するように発音装置20を制御するように構成されている。吹鳴パターン情報Pは、上述の吹鳴時間、吹鳴間隔など吹鳴パターンを表す情報に加えて、音響装置10の吹鳴開始のトリガとなる吹鳴要求を含んでもよい。
【0047】
コントローラ30は、吹鳴パターン情報Pを例えばCANなどの車載ネットワークから受信し、それにより吹鳴パターン情報Pを取得してもよい。あるいは、コントローラ30は、音響装置10から音を鳴らすべきイベントの発生を示す情報をネットワークから受信し、このイベント情報に応答して当該イベントに対応する吹鳴パターンを作成し、それにより吹鳴パターン情報Pを取得してもよい。
【0048】
吹鳴パターン情報Pを取得すると、コントローラ30は、吹鳴パターン情報Pに従って音源データ34を間欠的に再生するように発音装置20を制御する。図5には、こうした吹鳴制御の一例が示される。図示されるように、本処理においてコントローラ30はまず、吹鳴要求の有無を判断する(S10)。吹鳴パターン情報Pが吹鳴要求を含む場合、コントローラ30は、吹鳴パターン情報Pの受信により、吹鳴要求ありと判断し(S10のY)、吹鳴パターン情報Pを用いた吹鳴を開始する(S12)。吹鳴要求が無い場合には(S10のN)、本処理は終了する。
【0049】
S12では、コントローラ30は、吹鳴パターン情報Pにより定められた吹鳴時間、音を鳴らすように発音装置20を制御する。このとき、コントローラ30は、内蔵されたタイマーで吹鳴時間をカウントする。コントローラ30は、吹鳴開始とともに計時を開始し、吹鳴時間が経過したら音を停止するように発音装置20を制御する。このようにして、コントローラ30は、1回の吹鳴を発音装置20に行わせることができる。
【0050】
次に、コントローラ30は、吹鳴パターン情報Pにより定められた吹鳴回数の吹鳴を完了したか否かを判定する(S14)。完了していれば(S14のY)、コントローラ30は、本処理を終了する。完了していなければ(S14のN)、コントローラ30は、吹鳴を再び行う(S12)。コントローラ30は、前回の吹鳴終了時に吹鳴間隔の計時を開始し、この吹鳴間隔が経過したとき今回の吹鳴を行うように発音装置20を制御する。その後再び吹鳴回数の確認が行われる(S14)。このようにして、音響装置10は、例えば図3(a)から図3(c)に例示するような吹鳴パターンに従って発音装置20から音を発することができる。
【0051】
図4および図5に示される実施の形態によると、吹鳴パターン情報Pを外部から取得することができるから、コントローラ30には1つの音源データを格納しておけばよい。望まれる吹鳴パターンの数に応じて音データを多数準備して不揮発性メモリ32にあらかじめ保管しておく必要が無く、メモリ容量をその分節約することができる。
【0052】
図4および図5に示される実施の形態においても、図1および図2を参照して述べた実施の形態と同様に、コントローラ30は、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ30は、車両100に設けられた可動部品の動作を把握し、この可動部品の動作中に、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。
【0053】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのように組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0054】
上述の実施の形態では、車両100の可動部品としてスライドドア装置110を例示しているが、音響装置10は他の可動部品と連動してもよい。例えば、図6に示されるように、車両100には、可動部品の例としてバックドア120が設けられていてもよい。図6では図示を省略しているが、車両100には上述の実施の形態と同様に、車両100の前後に設置された複数の発音装置20とこれら発音装置20を制御するコントローラ30とを備える音響装置10が設けられている。
【0055】
音響装置10が発する音によってバックドア120の開動作(図6では矢印121で示す)を表現するために、コントローラ30は、バックドア120の開動作中に、音が第1方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。第1方向は、バックドア120の開動作に合わせた方向であってもよく、後ろから前に向かう方向であってもよい。これに加えて、またはこれに代えて、音響装置10が発する音によってバックドア120の閉動作(図6では矢印122で示す)を表現するために、コントローラ30は、バックドア120の閉動作中に、音が第1方向と異なる第2方向に移動して聞こえるように、複数の発音装置20の音量を個別に制御してもよい。第2方向は、第1方向と逆向きであってもよい。第2方向は、バックドア120の閉動作に合わせた方向であってもよく、前から後ろに向かう方向であってもよい。
【0056】
また、図7に示されるように、音響装置10は、車両用灯具200に組み込まれてもよい。車両用灯具200は、複数の灯具ユニット210、例えば、第1灯具ユニット210aと第2灯具ユニット210bを備える。各灯具ユニット210が、複数の発音装置20のうち対応する発音装置を搭載してもよい。例えば、第1灯具ユニット210aは、例えばヘッドランプとして構成され、車両前部に設置され、第1発音装置20aを搭載してもよい。第2灯具ユニット210bは、例えばリアコンビネーションランプとして構成され、車両後部に設置され、第2発音装置20bを搭載してもよい。発音装置20は、灯具ユニット210の筐体内部に収納されてもよく、または筐体外側に取り付けられてもよい。
【0057】
コントローラ30は、複数の発音装置20および複数の灯具ユニット210を制御するように構成されている。コントローラ30は、上述の実施の形態と同様に、音が移動して聞こえるように、複数の発音装置20(すなわち第1発音装置20aおよび第2発音装置20b)の音量を個別に制御するように構成されている。コントローラ30は、車両用灯具200を制御する灯具ECUであってもよく、第1灯具ユニット210aおよび第2灯具ユニット210bのオンオフと光量を制御するように構成されてもよい。
【0058】
この場合にも、コントローラ30は、車両に設けられた可動部品(例えば、図1に示されるスライドドア装置110、図6に示されるバックドア120など)と連動して発音装置20を動作させてもよい。それとともに、またはそれに代えて、コントローラ30は、灯具ユニット210と連動して発音装置20を動作させてもよい。このようにすれば、光とともに音を利用して多彩な表現が可能となり、有利である。
【0059】
音響装置10を車両用灯具200に組み込むことにより、発音装置20を車両の前後左右の四箇所に配置することができる。この場合、音響装置10は、車両前後方向だけでなく他の方向に移動して聞こえるように発することができる。例えば、左右に配置された2つの発音装置20を利用して、左から右に(またはその逆向きに)移動して聞こえるように音響装置10から音を発することができる。あるいは、車両の前後左右の四隅に配置された4つの発音装置20から時計回りに(または反時計回りに)順番に音を鳴らすようにこれら発音装置20を制御することにより、車両まわりに回転移動して聞こえるように音響装置10から音を発することができる。
【0060】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0061】
10 音響装置、 20 発音装置、 20a 第1発音装置、 20b 第2発音装置、 30 コントローラ、 100 車両、 210 灯具ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7