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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131621
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】微小振動体の実装構造
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5691 20120101AFI20240920BHJP
【FI】
G01C19/5691
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041999
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB09
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD06
2F105CD13
(57)【要約】
【課題】三次元曲面を有する微小振動体が異なる材料で構成された実装基板に搭載された実装構造において、対向する微小振動体の表面電極と実装基板の電極との距離の温度変動が低減する。
【解決手段】微小振動体2が搭載される実装基板3は、第1基板4と第2基板7とが接着されている。第1基板4は、微小振動体2よりも線膨張係数が大きい材料で構成されている。第2基板7は、微小振動体2とは反対側に配置されると共に、微小振動体2との線膨張係数の差が第1基板4よりも小さい材料で構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記曲面部の内側中心に延設された接続部(22)とを有する微小振動体(2)と、
前記曲面部のうち前記接続部とは反対側の端部をリム(211)として、前記リムと対向すると共に、前記リムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部(52)を有する実装基板(3)と、を備え、
前記微小振動体は、前記接続部が前記実装基板に接合されると共に、前記曲面部が他の部材と接触しない中空状態であり、
前記実装基板は、前記微小振動体が接合される搭載面(4a)に前記複数の電極部が形成されている第1基板(4)と、前記第1基板のうち前記搭載面とは反対側の他面(4b)に接着される第2基板(7)とを有してなり、
前記第1基板は、前記微小振動体よりも線膨張係数が大きい材料により構成されると共に、前記複数の電極部を構成する上部基板(5)と前記上部基板の下地となる下部基板(6)とが積層されてなり、
前記第2基板は、前記微小振動体との線膨張係数の差が前記第1基板よりも小さい材料により構成されている、微小振動体の実装構造。
【請求項2】
前記第1基板のうち前記複数の電極部が形成されている電極形成部(62)は、前記第2基板に接着されている固定部(8)と、前記固定部から前記リムに向かって延設された延設部(9)とを有してなり、
前記複数の電極部は、前記延設部に形成されており、
前記延設部は、前記第2基板とは隙間を隔てて配置されている、請求項1に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項3】
前記固定部は、平行配置された一組の第1アンカー(81)と、平行配置された一組の第2アンカー(82)とを有し、
前記延設部は、前記一組の第1アンカーのそれぞれから延伸された2つの延伸部(91)と、前記一組の第2アンカーを繋ぐレバー(92)と、前記電極部が形成された電極直下部(93)とを有し、
前記2つの延伸部は、前記第1基板の平面方向のうち前記微小振動体が接合される部位を中心軸とする径方向に沿って、前記レバーに接続されており、
前記レバーは、前記中心軸に対する周方向に沿って延設されると共に、前記径方向に変位可能となっており、
前記電極直下部は、前記一組の第1アンカーおよび前記一組の第2アンカーよりも前記微小振動体に近い位置に配置され、前記レバーのうち前記2つの延伸部が接続された部分の間に前記径方向に沿って接続されている、請求項2に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項4】
前記一組の第2アンカーは、前記一組の第1アンカーよりも前記電極直下部に近い位置に配置されており、
前記電極形成部は、正の線膨張係数である材料で構成されている、請求項3に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項5】
前記一組の第1アンカーは、前記一組の第2アンカーよりも前記電極直下部に近い位置に配置されており、
前記電極形成部は、負の線膨張係数である材料で構成されている、請求項3に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項6】
前記延伸部、前記一組の第1アンカー、前記一組の第2アンカーおよび前記レバーは、前記第1基板のうち前記微小振動体の直下に位置する領域に配置されている、請求項4または5に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項7】
前記電極形成部は、前記電極部が形成された部位とは異なる部位に温度調節素子(67)が配置されている、請求項2に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項8】
前記第2基板は、複数の接着部(10)を介して前記第1基板に部分的に接合されており、
前記複数の接着部は、前記他面のうち前記微小振動体の前記接続部を囲む枠体部(51)を投影した部分である第1投影部(4ba)と前記複数の電極部を投影した部分である第2投影部(4bb)との間に配置された第1接着部(101)と、前記第2投影部よりも前記微小振動体が接合される部位を中心軸とする径方向の外側の領域に配置されている第2接着部(102)とを有する、請求項2に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項9】
前記第1接着部および前記第2接着部は、それぞれ、前記中心軸に対する周方向に沿って、島状に複数配置されており、
前記第2接着部は、前記第1接着部を通る前記径方向の延長線上に配置されている、請求項8に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項10】
前記第1接着部および前記第2接着部は、それぞれ、前記中心軸に対する周方向に沿った1つの環状形状である、請求項8に記載の微小振動体の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元曲面形状を有する微小振動体の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転のシステム開発が進められており、この種のシステムでは、高精度の自己位置の推定技術が必要である。例えば、いわゆるレベル3の自動運転向けに、GNSS(Global Navigation Satellite Systemの略)とIMU(Inertial Measurement Unitの略)とを備える自己位置推定システムの開発が進められている。IMUは、例えば、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサから構成される6軸の慣性力センサである。将来的に、いわゆるレベル4以上の自動運転を実現するためには、現状よりもさらに高感度のIMUが求められる。
【0003】
このような高感度のIMUを実現するためのジャイロセンサとしては、BRG(Bird-bath Resonator Gyroscopeの略)が有力視されており、ワイングラスモードで振動する略半球形状の三次元曲面を有する微小振動体が実装基板に搭載されてなる。この微小振動体は、振動の状態を表すQ値が10以上に達するため、従来よりも高感度が見込まれる。
【0004】
この種の微小振動体と実装基板との実装構造としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。この実装構造は、微小振動体のうち略半球形の三次元曲面の頂点付近からその半球の内側中心に向かって延設された柱状の接合部が、実装基板のうち略環状枠体に囲まれた接合領域に挿入されている。この実装構造は、微小振動体の全面を覆う表面電極と実装基板の接合領域に形成された配線とが接合されており、実装基板の当該配線を介して微小振動体の表面電極に所定の電圧を印加可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第107036705号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の実装構造は、例えば、微小振動体が石英ガラス、実装基板が珪ホウ酸ガラスといったように、異なる材料で構成されている。この実装構造は、温度が高い環境におかれると、微小振動体と実装基板との線膨張係数差に起因し、微小振動体の表面電極と実装基板のうちこれと対向する電極との間の距離が変化し、これらの電極間の静電容量が変化してしまう。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、微小振動体が異なる材料で構成された実装基板に搭載されてなり、対向する微小振動体の表面電極と実装基板の電極との距離の温度変化に伴う変化量が低減された微小振動体の実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の微小振動体の実装構造は、環状曲面を有する曲面部(21)と、曲面部から曲面部の内側中心に延設された接続部(22)とを有する微小振動体(2)と、曲面部のうち接続部とは反対側の端部をリム(211)として、リムと対向すると共に、リムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部(52)を有する実装基板(3)と、を備え、微小振動体は、接続部が実装基板に接合されると共に、曲面部が他の部材と接触しない中空状態であり、実装基板は、微小振動体が接合される搭載面(4a)に複数の電極部が形成されている第1基板(4)と、第1基板のうち搭載面とは反対側の他面(4b)に接着される第2基板(7)とを有してなり、第1基板は、微小振動体よりも線膨張係数が大きい材料により構成されると共に、複数の電極部を構成する上部基板(5)と上部基板の下地となる下部基板(6)とが積層されてなり、第2基板は、微小振動体との線膨張係数の差が第1基板よりも小さい材料により構成されている。
【0009】
この実装構造は、三次元曲面を有する微小振動体と、微小振動体のうちリムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部を有する第1基板、および第1基板に接着される第2基板によりなる実装基板とを有してなる。この実装構造は、第1基板が微小振動体よりも線膨張係数が大きい材料により構成され、第2基板が第1基板よりも微小振動体との線膨張係数の差が小さい材料で構成されている。これにより、温度変化により高温または低温になった場合、第1基板は、微小振動体との線膨張係数の差が小さい第2基板により拘束され、熱膨張もしくは収縮が抑制され、複数の電極部の位置変化が抑制される。このため、この実装構造は、温度変化に伴う複数の電極部と微小振動体のリムとの対向距離、すなわち電極間距離の変動が低減される。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の微小振動体の実装構造を示す斜視図である。
図2】微小振動体の断面を示す断面図である。
図3図1のIII-III間の断面図である。
図4図1のIV-IV間の断面図である。
図5】比較例の実装構造を示す図であって、図4に相当する断面図である。
図6】比較例の実装構造における第1電極部とリムとの温度変化に伴う距離変動についての説明図である。
図7図1の実装構造における第1電極部とリムとの温度変化に伴う距離変動抑制を示す図である。
図8】第2実施形態の微小振動体の実装構造を示す断面図である。
図9】第1電極形成部の高温時における膨張の説明図である。
図10】第2実施形態の微小振動体の実装構造の変形例を示す断面図である。
図11】第3実施形態の実装構造のうち第1電極部を示す平面図である。
図12図11のXII方向から見た矢視図である。
図13】第3実施形態の実装構造の高温時における膨張の説明図である。
図14】第3実施形態の実装構造の変形例であって、第1電極部の配置を示す説明図である。
図15図14のXV方向から見た矢視図である。
図16図14に示す第1電極形成部の高温時における膨張の説明図である。
図17】第4実施形態の実装構造のうち第1電極部を示す平面図である。
図18図17のXVIII方向から見た矢視図である。
図19】第4実施形態の実装構造の高温時における収縮の説明図である。
図20】第4実施形態の実装構造の変形例であって、第1電極部の配置を示す説明図である。
図21図20のXXI方向から見た矢視図である。
図22図20に示す第1電極形成部の高温時における収縮の説明図である。
図23】第5実施形態の微小振動体の実装構造を示す断面図である。
図24】接着部の配置の一例を示す斜視図である。
図25】接着部の配置の他の一例を示す斜視図である。
図26図23の実装構造における第1電極部とリムとの高温時における距離変動抑制を示す図である。
図27図23の実装構造における第1電極部とリムとの低温時における距離変動抑制を示す図である。
図28】他の実施形態に係る実施構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。本実施形態の実装構造1は、ワイングラスモードで振動する微小振動体2を有し、微小振動体2の振動特性を利用した各種デバイス、例えば、BRG等のジャイロセンサ等の慣性センサに適用されると好適である。本明細書では、実装構造1がBRGに適用された場合を代表例として説明するが、この用途に限定するものではない。
【0014】
図1では、後述する微小振動体2および実装基板3の構成を分かり易くするため、実装基板3の外郭のうち図1に示す角度から見えない部分については破線で示している。
【0015】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、実装基板3のなす平面方向における一方向であって、外郭の一辺に沿った方向を「x方向」と、同平面方向においてx方向に直交する方向を「y方向」と、xy平面に対する法線方向を「z方向」と、それぞれ称する。図2以降の図中のx、y、z方向は、図1のx、y、z方向にそれぞれ対応するものである。また、本明細書における「上」とは、図中のz方向に沿った方向であって、矢印側を意味し、「下」とは上の反対側を意味する。さらに、本明細書では、z方向上側から実装構造1または実装基板3を見た状態を「上面視」と称することがある。
【0016】
〔基本構成〕
本実施形態の実装構造1は、例えば図1に示すように、微小振動体2と、実装基板3とを備え、微小振動体2の一部が実装基板3に接合されてなる。実装構造1は、ワイングラスモードで振動することが可能な薄肉の微小振動体2と実装基板3のうち後述する複数の第1電極部52との間における静電容量の変化に基づき、実装構造1に印加された角速度を検出する構成となっている。
【0017】
微小振動体2は、例えば図1図2に示すように、環状曲面を有する曲面部21と、曲面部21のなす仮想半球の頂点側から当該半球の内側中心に向かうように延設された接続部22とを備える。曲面部21は、例えば、半球形状の三次元曲面の外形を含むように構成されている。接続部22は、例えば、有底筒状の凹部となっている。微小振動体2は、例えば、曲面部21が椀状の三次元曲面を有し、その振動のQ値が10以上となっている。
【0018】
曲面部21のうち接続部22とは反対側の端部をリム211として、リム211は、環状形状、例えば、略円筒形状とされる。微小振動体2は、例えば、実装基板3に搭載された際に、リム211が、表面2a側が実装基板3のうち複数の第1電極部52と向き合うと共に、複数の第1電極部52との間隔が等間隔となるように搭載される。微小振動体2は、実装基板3への実装時において、リム211を含む曲面部21が他の部材とは接触しない中空状態となっている。微小振動体2は、実装基板3に搭載されたとき、複数の第1電極部52への電圧印加により、中空状態のリム211がワイングラスモードで振動可能な構造となっている。
【0019】
微小振動体2は、例えば、図2に示すように、外径が大きいほうの面を表面2aとし、その反対面を裏面2bとして、この両面の一部または全部を覆う表面電極23を有する。微小振動体2は、接続部22のうち裏面2b側の面が実装基板3と向き合う実装面22bとなっている。微小振動体2は、例えば、接続部22の底面のうち実装面22bとは反対の面が微小振動体2の吸着搬送に用いられる吸着面22aとなっている。
【0020】
表面電極23は、例えば、限定するものではないが、下地側からCr(クロム)あるいはTi(チタン)と、Au(金)やPt(白金)等の任意の導電性材料との積層膜、またはTiN(窒化チタン)等の基材と密着性のある導電性材料の単層膜で構成される。表面電極23は、例えば、スパッタリングや蒸着、ALD(原子層堆積法)等の任意の成膜法により微小振動体2の表面2aおよび裏面2bに成膜される。表面電極23は、本実施形態では、少なくとも実装面22b、およびリム211の表面2aもしくは裏面2bに成膜され、これらの部位が電気的に接続される構成となっている。表面電極23は、微小振動体2の表裏面の全域を覆うベタ形状であってもよいし、パターニングされ、表裏面の一部を覆うパターン形状であってもよい。微小振動体2は、例えば図3に示すように、表面電極23のうち接続部22の実装面22bを覆う部分が、実装基板3のうち後述する配線65と接合部材611を介して接続される。
【0021】
なお、微小振動体2と実装基板3との接合については、例えば、はんだ等の導電性材料によりなる接合部材611を用いる方法が挙げられるが、これに限定されず、表面電極23と配線65とを金属接合で接合するなどの他の公知の方法であってもよい。また、微小振動体2と実装基板3との位置合わせは、例えば、図示しない撮像装置を用い、公知の画像処理技術によりエッジ検出により微小振動体2の特徴点を抽出することで、実装基板3との相対位置を調整するといった方法で行うことができる。
【0022】
微小振動体2は、例えば、石英、ホウケイ酸ガラスなどの添加物含有のガラス、金属ガラス、シリコンやセラミック等の材料で構成される。なお、微小振動体2は、三次元曲面形状とされた曲面部21および接続部22を形成でき、ワイングラスモードでの振動が可能なものであればよく、前述の材料に限定されない。微小振動体2は、例えば、上記した材料で構成された薄肉基材を加工して形成されることで、曲面部21および接続部22の厚みが10μm~100μmといった具合のマイクロメートルオーダーの薄肉部材となっている。微小振動体2は、例えば、実装基板3の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、高さ方向の寸法が2.5mm、リム211の表面2a側の外径が5mmといったミリサイズの形状となっている。
【0023】
なお、微小振動体2は、Z方向を回転軸として回転対称な略ハーフトロイダル形状とされるが、曲面部21が椀状の三次元曲面形状を有し、ワイングラスモードで振動可能な構成であればよく、図示したBRの形状にのみ限定されるものではない。例えば、接続部22は、有底筒状の凹部のほか、柱状の形状とされてもよい。なお、BRとは、Bird-bath Resonatorの略称である。
【0024】
微小振動体2は、例えば、厚み100μm以下の石英板を、凹部と凹部の中心にて石英板の加熱軟化時にその一部を支える支柱部とを備える図示しない型にセットし、火炎等の加熱手段により軟化させつつ、凹部内を真空引きすることで曲面部21が形成される。例えば、この工程により、石英板のうち図示しない型の支柱部に支えられた部分が接続部22となり、凹部からはみ出した部分については加工されずに残るが、後工程で除去される。そして、例えば、図示しない型の凹部を常圧に戻して、略半球形の曲面部21が形成された石英板を型から取り外し、任意の硬化性樹脂材料によりなる封止材で石英板を封止する。その後、例えば、封止材ごとを加工後の石英板のうち不要な部分を研磨およびCMPにより除去した後、加熱や薬液等の任意の方法により封止材をすべて除去し、石英板を取り出す。CMPとは、Chemical Mechanical Polishingの略称である。最後に、例えば、スパッタリングや蒸着等の成膜プロセスにより、上記した加工後の石英板の表裏面の両面に表面電極23を形成する。表面電極23は、必要に応じて、図示しないマスク等を用いる等の公知の方法によりパターニングされてもよい。微小振動体2は、例えば、上記のような製造プロセスにより製造されるが、この製法例に限定されるものではなく、他の公知の方法を採用されても構わない。
【0025】
実装基板3は、例えば図1に示すように、第1基板4と、第2基板7とを備え、これらが図示しないガラス用接着剤などにより接着された構成となっている。実装基板3は、第1基板4が微小振動体2よりも線膨張係数が大きい材料で構成され、第2基板7が微小振動体2との線膨張係数の差が第1基板4よりも小さい材料で構成されている。例えば、実装基板3は、微小振動体2が石英(線膨張係数:約5~6×10-7-1)で構成されるとき、第1基板4がシリコンおよびホウケイ酸ガラス(線膨張係数:約2~3×10-6-1)で構成され、第2基板7が石英で構成されうる。
【0026】
第1基板4は、例えば、絶縁材料のホウケイ酸ガラスにより構成された下部基板6に、半導体材料のSi(シリコン)により構成された上部基板5を陽極接合することで得られる。第1基板4は、例えば、ホウケイ酸ガラスをパターニングした後に金属配線を形成して下部基板6を構成し、シリコン基板を下部基板6と陽極接合し、電極膜を形成した後にDRIEによりエッチングしてパターニングし、上部基板5を形成することで製造される。DRIEとは、Deep Reactive Ion Etchingの略称である。そして、実装基板3は、第1基板4に図示しない公知のガラス用接着剤で第2基板7を接着することで得られる。
【0027】
上部基板5は、例えば、微小振動体2の接続部22を囲む枠体部51と、枠体部51を囲むように互いに離れた配置された複数の第1電極部52と、第1電極部52よりも外側において互いに離れて配置された第2電極部53とを備える。枠体部51、第1電極部52の基部521および第2電極部の基部531は、例えば、上部基板5を構成する導電性シリコン基板にエッチングを施すことにより分離形成されるものであり、同一の材料で構成される。
【0028】
枠体部51は、上面視にて、例えば、全体として1つの円環形状となす形状とされ、その内側には微小振動体2の接続部22が挿入される。例えば、枠体部51は、図3図4に示すように、少なくともその外側が微小振動体2に当接しない寸法となっている。なお、枠体部51は、例えば、1つの円環枠体をその周方向に沿って複数個に分割して得られる構成であってもよい。また、枠体部51は、その内側の寸法が微小振動体2の接続部22の裏面2b側における外径および外形に合わせた寸法、形状とされ、微小振動体2を実装基板3に搭載する際の位置決め治具として機能する構成であってもよい。
【0029】
複数の第1電極部52は、例えば図1に示すように、枠体部51および微小振動体2を囲むように互いに離れて配置されている。複数の第1電極部52は、例えば図4に示すように、基部521と、基部521の上面に形成される電極膜522とを有してなる。複数の第1電極部52は、電極膜522に図示しない導電性のワイヤが接続され、外部の図示しない電源等との電気的なやり取りが可能となっている。複数の第1電極部52の一部は、電圧が印加されることで微小振動体2への静電引力を生じさせ、微小振動体2を駆動振動させる駆動電極として機能する。複数の第1電極部52の一部は、微小振動体2のリム211と対向する部位がリム211と共にキャパシタを形成し、キャパシタの静電容量を検出する検出電極として機能する。
【0030】
第2電極部53は、例えば、実装基板3のうち第1電極部52よりも外周側に配置される。第2電極部53は、例えば図3に示すように、下部基板6に形成される配線65を介して、微小振動体2の接続部22に接続されている。第2電極部53は、基部531と、基部531の上面に形成される電極膜532とを備える。第2電極部53は、例えば、配線65と同数形成されると共に、基部531が配線65のうち微小振動体2とは反対側の他端上に配置されており、配線65と電気的に接続されている。第2電極部53は、例えば、電極膜532に図示しない導電性のワイヤが接続されており、外部の図示しない電源により微小振動体2の表面電極23への電圧印加を可能としている。
【0031】
下部基板6は、例えば、微小振動体2が接続される接合部61と、第1電極部52の直下に位置する複数の第1電極形成部62と、第2電極部53の直下に位置する複数の第2電極形成部63と、配線形成部64と、配線65と、連結部66とを備える。接合部61、複数の第1電極形成部62、複数の第2電極形成部63、配線形成部64、および連結部66は、例えば、下部基板6を構成するホウケイ酸ガラスにエッチングを施すことによりパターン形成されるものであり、同一の材料で構成される。複数の第1電極形成部62および第2電極形成部63は、例えば、互いに離れて配置されると共に、連結部66により接続されている。接合部61は、例えば、配線形成部64により第2電極形成部63に接続されている。配線形成部64は、例えば、第2電極形成部63と同数設けられると共に、第1電極形成部62の隙間を通るように延設される。配線形成部64は、例えば、微小振動体2のリム211と接触しないように、有底の溝641がウェットエッチング等により形成されている。配線形成部64は、例えば、配線形成部64に沿って形成され、溝641を跨ぐ配線65がスパッタリング等により形成されている。配線65は、複数の第2電極部53と微小振動体2の接続部22とを繋ぐものであって、第1電極部52とは電気的に接続されていない。下部基板6は、上記のパターン形状とされることで、第2基板7との接着により、温度変化に伴う第1電極部52の位置変動が抑制されている。この詳細については後述する。
【0032】
なお、微小振動体2がz方向におけるリム211の位置が接続部22の実装面22bよりも高い構成である場合、すなわち実装面22bがリム211よりもz方向下側に突き出している構成の場合、配線形成部64は、溝641を有しなくてもよい。このような微小振動体2は、例えば、レーザ加工等により、リム211を形成することで得られる。
【0033】
第2基板7は、例えば図3に示すように、第1基板4のうち微小振動体2が接続される面を搭載面4aとし、この反対面を他面4bとして、他面4bに図示しない接着剤で接着されている。第1基板4の搭載面4aは、下部基板6のうち電極部52、53が形成される側の面である。第1基板4の他面4bは、下部基板6のうち電極部52、53と向き合う面の反対面である。第2基板7は、第1基板4よりも微小振動体2との線膨張係数の差が小さい材料、より好ましくは微小振動体2と同一の線膨張係数の材料で構成される。第2基板7は、例えば、微小振動体2の主部が石英で構成される場合、同じ石英で構成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、第1基板4よりも温度変化に伴う寸法変化が小さい材料で構成されていればよい。つまり、第2基板7は、温度変化に伴う熱膨張および熱収縮が第1基板4よりも小さく、第1基板4の寸法変化、特に第1電極部52の位置変動を抑制する役割を果たす。第2基板7は、例えば、ベタの平板形状とされ、下部基板6と図示しないガラス用接着剤などにより接着されると共に、下部基板6と向き合う面のうち下部基板6との接着部分以外の部分についてむき出しとなっている。
【0034】
以上が、本実施形態の実装構造1の基本的な構成である。本実施形態の実装構造1は、例えば、微小振動体2および実装基板3を用意し、図示しないマウンタ装置で保持された実装基板3に接合部材611を塗布した後、微小振動体2を図示しない搬送装置で吸着搬送し、加熱接合することで製造される。
【0035】
〔第1電極部とリムとの距離変動抑制〕
次に、本実施形態の実装構造1の効果について、図5図6に示す比較例の実装構造100と対比して説明する。
【0036】
なお、図6では、高温時における微小振動体2の動きの方向を太線の矢印で、実装基板30の動きの方向を白抜き矢印で示している。図6図7では、微小振動体2および実装基板3、30の熱膨張の差を分かり易くするため、熱膨張が大きいほうを白抜き矢印で示し、熱膨張が小さいほうを太線矢印で示し、同種の矢印の場合には熱膨張が大きいほうについて矢印を長く描いている。また、図6図7では、実装基板3、30の熱膨張前の外郭を破線で示している。
【0037】
なお、本明細書における「低温」および「高温」とは、例えば、25℃程度を常温としたとき、常温よりも相対的に低い温度もしくは高い温度を意味する。例えば、限定するものではないが、低温とは10℃以下の温度、高温とは40℃以上の温度などをいう。
【0038】
まず、比較例の実装構造100について、実装構造1との相違点を主に説明する。
【0039】
実装構造100は、例えば図5に示すように、微小振動体2が実装基板3に接合された構造となっているが、実装基板30が上部基板5と下部基板31とにより構成され、第2基板7を有していない。下部基板31は、下部基板6と同様に、微小振動体2よりも線膨張係数が大きい材料で構成されるが、略平板形状となっている。具体的には、下部基板31は、リム211と接触しないように、リム211の直下に位置する部分が環状の有底溝311を有している。また、下部基板31は、有底溝311以外の部分についてはパターニングやエッチングがなされておらず、第1電極部52、第2電極部53および第2電極部53に接続される配線の直下部分が貫通溝等で隔てられた構成とはなっていない。
【0040】
ここで、例えば図6に示すように、25℃程度の常温の環境下において、実装構造100のうち第1電極部52とリム211との対向する面同士の距離(以下「電極間距離」という)をD1であるとする。このとき、実装構造100は、例えば、高温時には、微小振動体2および実装基板30が熱膨張するものの、線膨張係数の違いによって、微小振動体2よりも実装基板30のほうが大きく膨張する。この結果、実装構造100は、複数の第1電極部52がリム211よりも外側に向かって位置が変化し、第1電極部52とリム211との電極間距離がD1よりも大きいD2となる。また、図示しないが、低温の場合には、微小振動体2および実装基板30が熱収縮すると共に、線膨張係数の差により、微小振動体2よりも実装基板30のほうが大きく収縮し、電極間距離がD1よりも小さくなる。
【0041】
例えば、微小振動体2を線膨張係数6.1×10-7-1の石英ガラス、下部基板31を線膨張係数3.25×10-6-1のホウケイ酸ガラスでそれぞれ構成した場合であって、微小振動体2のリム211の直径が2.2mmであるとする。この場合、本発明者らの検討によれば、-40℃から120℃に温度が変化したとき、電極間距離は、1.1μm程度変化する。このように、実装構造100は、温度変化に起因して、キャパシタを構成する電極間距離が大きく変化してしまう。そして、キャパシタの静電容量は、対向する第1電極部52とリム211との距離に反比例する。このため、実装構造100は、温度変化によって電極間距離が変化し、電気特性、特に第1電極部52の検出電圧が変化してしまう。
【0042】
これに対して、本実施形態の実装構造1は、実装基板3が第1基板4と第2基板7とが接着されてなり、第2基板7が第1基板4よりも微小振動体2との線膨張係数差が小さい材料で構成されている。このため、実装基板3は、温度変化に伴う第1基板4の熱膨張あるいは熱収縮を第2基板7が抑制する構造となっている。つまり、実装構造1は、例えば図7に示すように、高温時には微小振動体2および第2基板7が同程度の熱膨張をし、第1基板4が微小振動体2よりも大きい熱膨張をするものの、第2基板7によりその度合いが抑制される。また、図示しないが、実装構造1は、低温時には微小振動体2および第2基板7の熱収縮が第1基板4よりも小さく、かつ第1基板4の熱収縮が第2基板7により低減される。この結果、実装構造1は、温度変化に伴う電極間距離の変化が小さくなり、ひいてはキャパシタの電気的特性の変動が抑制され、安定した検出精度を保つことが可能となっている。
【0043】
本実施形態によれば、実装構造1は、微小振動体2との線膨張係数の差が小さい第2基板7により拘束された第1基板4の熱膨張および熱収縮が抑制される実装基板3に、微小振動体2が接合されてなる。このため、実装構造1は、温度変化に伴う複数の第1電極部52の位置変化が抑制され、電極間距離の変動が低減される。よって、実装構造1は、温度変化による電気的特性の変動が低減され、安定した検出精度が得られる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。図9では、図7と同様に、第1電極形成部62の熱膨張による動きの方向を太線矢印で示し、第1電極部52および延設部9の熱膨張前における外郭位置を破線で示している。
【0045】
本実施形態の実装構造1は、例えば図8に示すように、複数の第1電極形成部62の構成が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0046】
第1電極形成部62は、本実施形態では、例えば図8に示すように、第2基板7に接着固定された固定部8と、固定部8のうち第2基板7とは反対の上面側から接合部61側に向かって延設された中空状態の延設部9とを備える。ここでいう中空状態とは、第2基板7から距離を隔てて配置され、第2基板7とは接触していない状態を意味する。延設部9は、接合部61のうち上面視にて接続部22の中心位置の直下に位置する部分を「中心点」とし、中心点を通り、z方向に沿った仮想直線を「中心軸」として、中心軸に対する径方向に沿って、中心点に向かうように延設されている。
【0047】
以下、説明の便宜上、上記の中心軸に対する径方向に沿った方向のうち中心軸に向かう方向を「径方向内側」と称し、中心軸から離れる方向を「径方向外側」と称し、同中心軸に対する周方向を単に「周方向」と称する。
【0048】
第1電極形成部62は、延設部9のうちリム211に近い先端側に第1電極部52が形成されている。第1電極形成部62は、高温時には、例えば図9に示すように、固定部8が第1基板4全体の熱膨張により接合部61とは反対側に動こうとする一方で、延設部9が接合部61に向かう方向に熱膨張する構成となっている。つまり、第1電極形成部62は、高温時には、第1基板4全体の熱膨張により第1電極部52がリム211から遠ざかろうとする動きを、延設部9の熱膨張により打ち消すように変形する結果、電極間距離の変動が小さくなる構成である。また、図示しないが、第1電極形成部62は、低温時には、第1基板4全体の熱収縮により第1電極部52がリム211側に近づこうとする動きを、延設部9の熱収縮により打ち消すことで、電極間距離の変動が小さくなる。
【0049】
第1基板4は、本実施形態では、例えば、次のような工程で製造される。下部基板6は、上部基板5との接合前に、下部基板6の構成材料のうち固定部8となる部位を保護膜等で保護しつつ、他面4bとなる面の側から延設部9となる部位にハーフエッチングを施す。その後、例えば、下部基板6の構成材料のうち搭載面4aとなる面側にパターン形状の配線をスパッタリング等で形成した後、パターン形状の保護膜をフォトリソグラフィーエッチング法により形成し、不要な部分をウェットエッチングにより除去する。これにより、接合部61、第1電極形成部62、第2電極形成部63、配線形成部64、配線65および連結部66を有する下部基板6を形成することができる。そして、例えば、上記第1実施形態と同様に、下部基板6にシリコン基板を陽極接合した後、パターニングして上部基板5を形成することで第1基板4を製造することができる。
【0050】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。また、第1電極形成部62が固定部8と延設部9とを有し、延設部9の先端部分に第1電極部52が形成され、固定部8と延設部9とが互いに打ち消し合う方向で熱による膨張/収縮をする構成である。このため、本実施形態では、電極間距離の変動がより小さくなり、温度変化における電気的特性の変動がより低減される効果も得られる。
【0051】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、実装構造1は、例えば図10に示すように、第1電極形成部62のうち第1電極部52とは異なる位置に温度調節素子67が配置された構成であってもよい。温度調節素子67は、例えば、固定部8と延設部9との境界部分を含む位置に配置され、特に延設部9を所定の温度となるように加熱あるいは冷却し、熱による膨張あるいは収縮の度合いを制御する役割を果たす。温度調節素子67は、例えば、ヒータやペルチェ素子とされ、図示しない外部の制御部に接続されている。温度調節素子67は、図示しない外部の制御部により駆動制御がなされ、延設部9の温度を制御することで電極間距離の変化を低減する。言い換えると、本変形例の実装構造1は、温度調節素子67により延設部9の熱変形を自律的に補正することが可能となっている。
【0052】
本変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。また、変形例に係る実装構造1は、温度調節素子67を備えることで、電極間距離の変化が温度制御によってさらに低減可能となる効果も得られる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。
【0054】
図11図13では、構成を分かり易くするため、1つの第1電極部52および第1電極形成部62、並びに微小振動体2のうち当該1つの第1電極部52に対向する部分のみを示している。これは、後述する図14についても同様である。また、図11図13では、上面視では見えない、第1アンカー81と延伸部91との境界、および第2アンカー82とレバー92との境界を破線で示している。図11図13では、見易くするために連結部66については省略しているが、図示しない連結部66は、例えば後述する第1アンカー81に接続される。図13では、高温時における第1電極形成部62の熱膨張の方向を太線矢印で示している。
【0055】
本実施形態の実装構造1は、例えば図11に示すように、第1電極形成部62の構成が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0056】
第1電極形成部62は、本実施形態では、例えば図11に示すように、固定部8が一組の第1アンカー81と一組の第2アンカー82とを有し、延設部9が延伸部91、レバー92および電極直下部93を有する構成となっている。第1アンカー81および第2アンカー82は、例えば図12に示すように、第2基板7に図示しない接着剤で接着固定されている。
【0057】
第1アンカー81は、例えば、中心軸に対する周方向に沿って2つ平行配置されると共に、第2アンカー82よりもリム211から遠い位置に配置されている。2つの第1アンカー81は、いずれも上面側からリム211側に向かって延伸された延伸部91が形成されている。
【0058】
第2アンカー82は、例えば、中心軸に対する周方向に沿って2つ平行配置されている。第2アンカー82は、上面側から他方の第2アンカー82に向かって延設されたレバー92が形成されている。つまり、2つの第2アンカー82は、1つの板状のレバー92により接続されている。
【0059】
2つの延伸部91は、第2基板7に接触していない中空状態の部位であり、例えば、第1アンカー81と同じ幅の板状となっている。延伸部91は、例えば、リム211側の先端が他の部位よりも幅が小さい腕911となっており、腕911がレバー92のうち第2アンカー82の近傍に接続されている。2つの延伸部91は、例えば、互いに略平行となるように延設されている。
【0060】
レバー92は、延伸部91と同様に中空状態の部位であり、例えば、第2アンカー82よりも幅が小さい板状となっている。レバー92は、例えば図11に示すように、2つの第2アンカー82の中心位置からリム211側に延設された腕921を有しており、腕921が電極直下部93に接続されている。レバー92は、延伸部91の熱による膨張/収縮に伴って変形し、当該変形を電極直下部93に伝達する役割を果たす。また、レバー92は、延伸部91と電極直下部93との間における変位の伝達を大きくするように変形ため、延伸部91の長さを短くすることを可能とする。このため、上面視にて、第1電極形成部62の径方向における長さを短くでき、実装構造1全体の平面サイズを小型化することができる効果が得られる。
【0061】
電極直下部93は、例えば図12に示すように、延伸部91およびレバー92と同様に中空状態であって、第1電極部52の直下に位置する部位である。電極直下部93は、例えば、第1電極部52よりも平面サイズが大きい構成とされ、外郭内側に第1電極部52が形成されている。
【0062】
第1電極形成部62は、例えば図13に示すように、高温時には、延伸部91がリム211側に向かって膨張すると共に、レバー92が延伸部91に押されて変形し、電極直下部93がレバー92によりリム211側に押されることとなる。一方、第1アンカー81および第2アンカー82は、延伸部91とは反対側に膨張する。これにより、第1電極形成部62は、第1基板4全体の熱膨張により第1電極部52が径方向外側へ向かう動きを、延伸部91およびレバー92の熱膨張により打ち消すこととなり、高温時における電極間距離の変動を抑制することができる。また、図示しないが、第1電極形成部62は、低温時には、第1基板4全体の熱膨張により第1電極部52が径方向内側へ向かう動きを、延伸部91およびレバー92の熱収縮により打ち消すことで、電極間距離の変動を抑制する。
【0063】
本実施形態によれば、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。また、第1電極形成部62の延設部9が延伸部91、レバー92、電極直下部93の順に接続され、延伸部91の変位がレバー92で拡大される構造であり、その拡大分だけ延伸部91を短くできるため、平面サイズを小型化できる効果も得られる。
【0064】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態の実装構造1は、例えば図14に示すように、第1電極形成部62のうち電極直下部93を除く他の部位について配置が変更されてもよい。図14図16では、第1電極形成部62のうち上面視にて微小振動体2の直下に位置する部分の外郭も実線で示している。
【0065】
具体的には、第1電極形成部62は、例えば図14図15に示すように、アンカー81、82、延伸部91およびレバー92が微小振動体2の直下領域に配置されてもよい。この場合、第1電極形成部62は、第1アンカー81が第2アンカー82よりも径方向における外側、すなわちリム211に近い位置に配置される。第1アンカー81は、上面側から延伸部91がリム211とは反対側に向かって延設されている。レバー92は、2つの第2アンカー82における中心位置から腕921が、リム211よりも径方向外側に位置する電極直下部93に向かって延設されている。腕921は、径方向に沿って延設されると共に、電極直下部93の近傍がリム211よりも外側に位置し、残部がリム211よりも内側に位置している。
【0066】
第1電極形成部62は、例えば図16に示すように、高温時には、延伸部91が膨張し、レバー92がこれに伴って径方向内側に変位することに伴い、電極直下部93をリム211側に引っ張ることで、電極間距離の変動を抑制する。つまり、第1電極形成部62は、上記第3実施形態とは配置が変更されているが、第1基板4全体が径方向外側に膨張する動きを、延伸部91およびレバー92の熱膨張により打ち消す構成である。また、図示しないが、低温時には、第1電極形成部62は、第1基板4全体の径方向内側への熱収縮を、延伸部91およびレバー92の熱収縮により打ち消すことで、電極間距離の変動を抑制する。
【0067】
本変形例によっても、上記第3実施形態と同様の実装構造1となる。また、第1電極形成部62のうち電極直下部93およびこの近傍を除く部分が微小振動体2の直下領域に配置されるため、実装構造1の平面サイズをより小型化することができる効果も得られる。
【0068】
(第4実施形態)
第4実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。
【0069】
図17図19では、構成を分かり易くするため、図11と同様に、1つの第1電極部52、第1電極形成部62、および微小振動体2のリム211の一部のみを示している。これは、後述する図20についても同様である。また、図17図19では、図11と同様に、第1電極形成部62を構成する部位同士の上面視では見えない境界を破線で示している。図17図19では、図11と同様に、見易くするために連結部66については省略しているが、連結部66は、例えば、第2アンカー82に接続される。図19では、高温時における第1電極形成部62の熱収縮の方向を太線矢印で示している。
【0070】
本実施形態の実装構造1は、例えば図17に示すように、第1電極形成部62の構成および構成材料が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0071】
第1電極形成部62は、例えば図17図18に示すように、上記第3実施形態と同様に、固定部8が2つの第1アンカー81および第2アンカー82を有し、延設部9が延伸部91、レバー92および電極直下部93を有するが、その配置関係が変更されている。第1電極形成部62は、例えば図17に示すように、周方向に沿って平行配置された2つの第2アンカー82が、周方向に沿って平行配置された2つの第1アンカー81よりも径方向外側に配置されている。第1電極形成部62は、第1アンカー81から径方向外側に延伸された延伸部91が、その先端に位置する腕911を介して、周方向に延設されたレバー92に接続されている。レバー92は、例えば、2つの第2アンカー82の中心位置から径方向内側に向かって延設された腕921を介して、電極直下部93に接続されている。
【0072】
第1電極形成部62は、上記各実施形態では正の線膨張係数を有する材料で構成されるのに対し、本実施形態では、負の線膨張係数を有する材料で構成されており、高温時に熱収縮する構成となっている。負の線膨張係数を有する材料としては、例えば、β-ユークリプタイト(LiAlSiO)やタングステン酸ジルコニウム(ZrW)などが挙げられる。第1電極形成部62は、本実施形態では、例えば図19に示すように、高温時には、延伸部91が径方向内側に向かって熱収縮し、レバー92がこの熱収縮に伴って径方向内側に向かって変位することで、電極直下部93がリム211側に動くこととなる。この結果、第1電極形成部62は、高温時に電極間距離が大きくなることが抑制される。一方、低温時には、第1電極形成部62は、ほとんど熱膨張しないため、電極間距離の変動が抑制される。
【0073】
本実施形態によれば、上記第3実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。
【0074】
(第4実施形態の変形例)
上記第4実施形態の実装構造1は、例えば図20に示すように、第1電極形成部62のうち電極直下部93を除く他の部位について配置が変更されてもよい。図20図22では、図14と同様に、第1電極形成部62のうち上面視にて微小振動体2の直下に位置する部分の外郭も実線で示している。
【0075】
具体的には、第1電極形成部62は、例えば図20図21に示すように、アンカー81、82、延伸部91およびレバー92が微小振動体2の直下領域に配置されてもよい。この場合、第1電極形成部62は、リム211よりも内側において、第1アンカー81が第2アンカー82よりも径方向における内側に配置されている。第1アンカー81は、上面側から延伸部91がリム211側に向かって延設されている。レバー92は、2つの第1アンカー81よりもリム211に近い位置に配置されると共に、2つの第2アンカー82の中心位置から腕921が、リム211よりも径方向外側に位置する電極直下部93に向かって延設されている。腕921は、例えば、径方向に沿って延設されると共に、電極直下部93の近傍がリム211よりも外側に位置し、残部がリム211よりも内側に位置している。
【0076】
第1電極形成部62は、例えば図22に示すように、高温時には、延伸部91が収縮し、レバー92がこれに伴って径方向内側に変位することに伴い、電極直下部93をリム211側に引っ張ることで、電極間距離の変動を抑制する。また、図示しないが、低温時には、第1電極形成部62は、ほとんど熱膨張しないため、電極間距離の変動が抑制される。
【0077】
本変形例によっても、上記第4実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。また、第1電極形成部62の一部が微小振動体2の直下領域に配置されるため、平面サイズを小型化することができる効果も得られる。
【0078】
(第5実施形態)
第5実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。
【0079】
図24図25では、後述する第1接着部101および第2接着部102の形状および配置を分かり易くするため、上面視にて目視できないこれらの外郭を破線で示すと共に、第1基板4のうち枠体部51および第1電極部52以外の部分を省略している。図26図27では、温度変化による実装構造1の動きを分かり易くするため、微小振動体2、枠体部51、第1電極部52、下部基板6、第2基板7および後述する接着部10のみを示し、微小振動体2および第1電極部52についてはデフォルメしている。
【0080】
本実施形態の実装構造1は、例えば図23に示すように、第1基板4と第2基板7とが複数の接着部10を介して部分的に接着され、接着部10が配置されていない部分については隙間が生じている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0081】
第1基板4は、本実施形態では、図23図24に示すように、下部基板6が一様な平板形状となっている。言い換えると、下部基板6は、上記各実施形態において、接合部61、第1電極形成部62、第2電極形成部63、配線形成部64および連結部66に相当する部位が貫通溝で分離しておらず、すべて一体化した構成となっている。第1基板4は、他面4bのうち枠体部51と第1電極部52との間に相当する位置、および第1電極部52に相当する位置よりも径方向外側の領域に接着部10が配置され、第2基板7が部分的に接着されている。
【0082】
接着部10は、第1接着部101と、第1接着部101よりも径方向外側に配置される第2接着部102とを有してなる。具体的には、第1基板4の他面4bのうち枠体部51を投影した部分を第1投影部4baとし、第1電極部52を投影した部分を第2投影部4bbとして、第1接着部101は、例えば、第1投影部4baと第2投影部4bbとの中間に配置される。第2接着部102は、例えば、第2投影部4bbよりも径方向外側に位置する領域に配置される。これにより、第1基板4は、接着部10で第2基板7に接着された部分を支点として、それ以外の部分が熱による膨張あるいは収縮が可能な構成となっている。
【0083】
第1接着部101は、例えば図24に示すように、島状とされ、周方向に沿って、中心軸を中心とする1つの仮想円の円周に位置するように等間隔で複数配置される。また、第2接着部102は、例えば、第1接着部101と同様に島状とされ、複数の第1接着部101が描く仮想円よりも直径が大きい同心円状の仮想円に沿って、等間隔で複数配置される。この場合、複数の第2接着部102は、例えば、それぞれ第1接着部101を通る径方向の延長線上であって、第1電極部52よりも径方向の外側に配置される。言い換えると、第1接着部101および第2接着部102は、1つの第1電極部52を挟んで、径方向に沿って対向配置されている。第1接着部101および第2接着部102は、例えば、それぞれ第1電極部52の数と同数とされ、上面視にて、1つの第1電極部52と共に径方向に沿って並べて配置される。
【0084】
また、第1接着部101および第2接着部102は、例えば図25に示すように、それぞれ1つの環状とされ、同心円状に配置されてもよい。
【0085】
第1接着部101および第2接着部102は、例えば、上記したように、それぞれ複数の島状あるいは1つの環状とされうるが、上面視にて、第1電極部52がこれらの間に位置するように配置されればよい。例えば、第1接着部101は、第2接着部102よりも第1電極部52に近い位置に配置される。
【0086】
本実施形態の実装構造1は、高温時には、例えば図26に示すように、下部基板6のうち接着部101、102の間に位置するフリーの部分が熱膨張をし、搭載面4a側が凸となるように当該フリーの部分が変位する。この場合、実装構造1は、第1電極部52については下部基板6のフリー部分の変位に伴い、径方向内側に向かって倒れ込むように変位する。この結果、リム211と第1電極部52とが近づくように変位し、第1基板4全体の熱膨張による電極間距離の拡大を抑制することとなり、電極間距離の変動が抑制される。
【0087】
本実施形態の実装構造1は、低温時には、例えば図27に示すように、下部基板6のうち接着部101、102の間に位置するフリーの部分が熱収縮をし、搭載面4a側が凹となるように当該フリーの部分が変位する。この場合、実装構造1は、第1電極部52が下部基板6のフリー部分の変位に伴い、径方向外側に向かって倒れ込むように変位する。この結果、リム211と第1電極部52とが遠ざかるように変位し、第1基板4全体の熱収縮による電極間距離の縮小を抑制することとなり、電極間距離の変動が抑制される。
【0088】
本実施形態によれば、第1基板4の下部基板6と第2基板7とが部分的に接着され、下部基板6のフリーの部分に第1電極部52が形成され、第1電極部52が低温時には径方向外側に、高温時には径方向内側に、それぞれ倒れ込むように変位する。これにより、第2基板7を有しない場合に比べて、温度変化に伴う電極間距離の変動が抑制され、上記第1実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。
【0089】
(他の実施形態)
(1)本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0090】
(2)上記第1実施形態ないし第4実施形態において、第1電極形成部62は、例えば図28に示すように、個々で分離独立した構成とされてもよい。この場合、複数の第1電極形成部62およびその上に形成される第1電極部52は、連結部66により他の部位に接続されないため、個々で独立して熱による膨張あるいは収縮をすることとなる。この結果、変形例に係る実装構造1は、第1電極部52の熱による変位、ひいては電極間距離の変動がより抑制される効果が得られる。
【0091】
本変形例の実装構造1は、例えば、次のような工程で形成されうる。まず、例えば、下部基板6を構成する材料のうち他面4bとなる側の面から連結部66に相当する部位をハーフエッチングで残しておき、接合部61等の各部位を形成した後に上部基板5となるシリコン基板と陽極接合する。そして、シリコン基板をDRIE等でエッチングし、枠体部51、電極部52、53を形成し、上部基板5を形成することで第1基板4の主部を構成する。その後、ガラス接着剤で第1基板4の主部のうち下部基板6と第2基板7とを接着した後、連結部66に相当する部分を除去することで実装基板3を形成し、微小振動体2を搭載することで、実装構造1が得られる。
【0092】
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
2…微小振動体、21…曲面部、211…リム、22…接続部、3…実装基板
4…第1基板、4a…搭載面、4b…他面、4ba…第1投影部、4bb…第2投影部
5…上部基板、52…電極部、6…下部基板、62…電極形成部、67…温度調節素子
7…第2基板、8…固定部、81…第1アンカー、82…第2アンカー、9…延設部
91…延伸部、92…レバー、93…電極直下部、10…接着部、101…第1接着部
102…第2接着部
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