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特開2024-13163状態検出システム、検出装置、状態検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013163
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】状態検出システム、検出装置、状態検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20240124BHJP
   B65D 75/34 20060101ALI20240124BHJP
   A61J 1/03 20230101ALI20240124BHJP
【FI】
G01N27/22 C
B65D75/34
A61J1/03 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115149
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】新島 大樹
【テーマコード(参考)】
2G060
3E067
4C047
【Fターム(参考)】
2G060AA08
2G060AE40
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG11
2G060EA06
3E067AA11
3E067AB81
3E067AC04
3E067BA34A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC07A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB29
3E067EE41
3E067EE47
3E067FB04
3E067FC01
4C047AA25
4C047CC15
4C047GG22
(57)【要約】
【課題】被検体の状態を正確に検出すること。
【解決手段】状態検出システムは、被検体の状態を検出する検出装置と、アンテナを有し、検出装置に無線給電する情報処理端末と、を備え、検出装置は、誘電材料が一対の導電体に挟まれて形成される複数のコンデンサにより構成されて前記被検体に形成される検出部と、複数のコンデンサに電圧を印加する又は印加を停止する充放電回路と、複数のコンデンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、被検体の固有情報が記憶されたメモリとを有し、検出部と接続されたICチップと、ICチップに接続され、情報処理端末からの無線給電を受ける無線通信用アンテナと、を有し、複数のコンデンサの放電中に所定のタイミングで測定された検出部の電圧値に関する前記デジタル信号に基づいて、被検体の状態を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の状態を検出する検出装置と、
アンテナを有し、前記検出装置に無線給電する情報処理端末と、を備え、
前記検出装置は、
誘電材料が一対の導電体に挟まれて形成される複数のコンデンサにより構成されて前記被検体に形成される検出部と、
前記複数のコンデンサに電圧を印加する又は印加を停止する充放電回路と、前記複数のコンデンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記被検体の固有情報が記憶されたメモリとを有し、前記検出部と接続されたICチップと、
前記ICチップに接続され、前記情報処理端末からの前記無線給電を受ける無線通信用アンテナと、を有し、
前記複数のコンデンサの放電中に所定のタイミングで測定された前記検出部の電圧値に関する前記デジタル信号に基づいて、前記被検体の状態を検出する、
状態検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の状態検出システムであって、
前記ICチップは、前記充放電回路を、前記検出部を介して前記AD変換回路に接続する検出モードと、前記検出部を介さないで前記AD変換回路に接続する補正モードとを選択するセレクタ回路を有し、
前記検出モードにおいて、放電中に前記所定のタイミングで測定された前記複数のコンデンサを有する前記検出部の電圧値を測定し、
測定した電圧値が基準となる理論値よりも大きい場合には、前記測定のタイミングを前記所定のタイミングよりも遅く設定し、前記理論値よりも小さい場合には、前記測定のタイミングを前記所定のタイミングよりも早く設定する、
状態検出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の状態検出システムであって、
前記メモリは、書き換え可能なメモリであって、前記検出部が満充電されたことを判定するための情報として、前記検出部が充電開始から満充電になるまでに必要な充電時間が記憶されており、
前記充電時間に基づいて、前記検出部が満充電になったことを判定し、前記充放電回路を放電に切り換える、
状態検出システム。
【請求項4】
請求項1に記載の状態検出システムであって、
前記被検体は、内容物が封入される個包装部が複数形成された筐体基材と、前記筐体基材の前記個包装部のそれぞれを一体的に封止する封止シートとを有するPTPシートであって、
前記封止シートには、前記個包装部に対応する領域のそれぞれに、誘電材料から形成された基材シートと、前記基材シートの前記個包装部に対応する領域の表面及び裏面に配置された一対の導電性シートとを有する前記コンデンサが形成される、
状態検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の状態検出システムであって、
前記内容物は、薬剤である、
状態検出システム。
【請求項6】
請求項1に記載の状態検出システムであって、
前記情報処理端末との間でネットワークを介して無線通信を行う情報処理装置を、さらに備え、
前記情報処理装置は、前記複数のコンデンサの充電時間を記憶しており、
前記充電時間は、前記情報処理装置から前記情報処理端末を介して、前記ICチップに送信される、
状態検出システム。
【請求項7】
誘電材料が一対の導電体に挟まれて形成される複数のコンデンサにより構成されて、状態が検出される被検体に形成される検出部と、
前記複数のコンデンサに電圧を印加する又は印加を停止する充放電回路と、前記複数のコンデンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記被検体の固有情報が記憶されたメモリとを有するICチップと、
前記ICチップに接続され、外部からの前記無線給電を受ける無線通信用アンテナと、を備えた、
検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検出装置であって、
前記被検体は、内容物が封入される個包装部が複数形成された筐体基材と、前記筐体基材の前記個包装部のそれぞれを一体的に封止する封止シートとを有するPTPシートであって、
前記封止シートは、前記個包装部に対応する領域のそれぞれに、誘電材料から形成された基材シートと、前記基材シートの前記個包装部に対応する領域の表面及び裏面に配置された一対の導電性シートとを有する前記コンデンサが形成された、
検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検出装置であって、
前記内容物は、薬剤である、
検出装置。
【請求項10】
被検体の状態を検出する検出装置と、アンテナを有し、前記検出装置に無線給電する情報処理端末と、を備える状態検出システムのコンピュータによって実行される状態検出方法であって、
前記検出装置は、
誘電材料が一対の導電体に挟まれて形成される複数のコンデンサにより構成されて前記被検体に形成される検出部と、
前記複数のコンデンサに電圧を印加する又は印加を停止する充放電回路と、前記複数のコンデンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記被検体の固有情報が記憶されたメモリとを有し、前記検出部と接続されたICチップと、
前記検出部及び前記ICチップに接続され、前記情報処理端末からの前記無線給電を受ける無線通信用アンテナと、を有し、
前記複数のコンデンサの放電中に所定のタイミングで測定された前記検出部の電圧値に関する前記デジタル信号に基づいて、前記被検体の状態を検出する、
状態検出方法。
【請求項11】
被検体の状態を検出する検出装置と、アンテナを有し、前記検出装置に無線給電する情報処理端末と、を備える状態検出システムのコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記検出装置は、
誘電材料が一対の導電体に挟まれて形成される複数のコンデンサにより構成されて前記被検体に形成される検出部と、
前記複数のコンデンサに電圧を印加する又は印加を停止する充放電回路と、前記複数のコンデンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記被検体の固有情報が記憶されたメモリとを有し、前記検出部と接続されたICチップと、
前記検出部及び前記ICチップに接続され、前記情報処理端末からの前記無線給電を受ける無線通信用アンテナと、を有し、
前記複数のコンデンサの放電中に所定のタイミングで測定された前記検出部の電圧値に関する前記デジタル信号に基づいて、前記被検体の状態を検出する手順を、
前記コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態検出システム、検出装置、状態検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブリスター包装の収容部の開封を検出する技術として、開封を検出する対象となる収容部としての窪みが複数形成されたプラスチック製の収容シートと、収容シートの窪みを覆っており、収容部の開封に伴って断線する導線と当該導線に接続されたコンデンサとを有する回路部が挟まれた不導体シートとを有する開封検出シートが開示されている。回路部には、コンデンサに所定の電圧を供給するための電源部が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-216113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開封検出シートでは、包装が開封されたことによって、回路部の導線が破断するとコンデンサに電源部による電圧が印加できなくなり、静電容量が変化する。これにより、開封状態を検出していた。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された開封検出シートでは、被検体である収容部に対応するように配置されたコンデンサの各々の静電容量を正確に検出することが難しい場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、被検体の状態を正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、被検体の状態を検出する検出装置と、アンテナを有し、前記検出装置に無線給電する情報処理端末と、を備え、前記検出装置は、誘電材料が一対の導電体に挟まれて形成される複数のコンデンサにより構成されて前記被検体に形成される検出部と、前記複数のコンデンサに電圧を印加する又は印加を停止する充放電回路と、前記複数のコンデンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路と、前記被検体の固有情報が記憶されたメモリとを有し、前記検出部と接続されたICチップと、前記ICチップに接続され、前記情報処理端末からの前記無線給電を受ける無線通信用アンテナと、を有し、前記複数のコンデンサの放電中に所定のタイミングで測定された前記検出部の電圧値に関する前記デジタル信号に基づいて、前記被検体の状態を検出する、状態検出システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本態様によれば、被検体の状態を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る状態検出システムを説明する模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る薬剤パックの一例を説明する平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線における断面の一部を表した図である。
図4図4は、図2のIV-IV線における断面の一部を表した図である。
図5図5は、薬剤パックに搭載されるICチップの一例を説明する構成図である。
図6図6は、検出部としてのコンデンサの充放電を説明する模式図である。
図7図7は、本実施形態に係る情報処理端末の一例を説明する構成図である。
図8図8は、本実施形態に係る情報処理装置の一例を説明する構成図である。
図9図9は、状態検出システムにおけるキャリブレーション処理を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、状態検出システムにおけるキャリブレーション処理を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、状態検出システムにおける薬剤パックの開封検出処理を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、封止シートの変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[状態検出システム]
以下、本発明の実施形態に係る状態検出システム1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る状態検出システム1を説明する模式図である。
【0011】
図1に示される状態検出システム1は、状態が検出される被検体として、薬剤を包装する薬剤パック100に形成された検出装置110と、薬剤パック100と非接触通信が可能な情報処理端末2とを備え、薬剤パック100の開封又は未開封等の状態を検出するシステムである。
【0012】
本実施形態に係る状態検出システム1は、さらに、情報処理端末2とネットワークNWを介して通信可能な情報処理装置3を有する。
【0013】
<薬剤パック及び検出装置>
図2は、本発明の実施形態に係る、状態が検出される被検体の一例として、薬剤を包装する薬剤パック100を説明する平面図であり、図3は、図2のIII-III線における断面の一部を表した図であり、図4は、図2のIV-IV線における断面の一部を表した図である。
【0014】
薬剤パック100は、筐体基材111を有し、筐体基材111には内容物として、薬剤カプセルや錠剤等が封入される複数の個包装部112(112a,112b,112c,112d,112e,112f,112g,112h,112i,112j)が形成されている。
【0015】
薬剤パック100は、筐体基材111の個包装部112a-112jのそれぞれを一体的に封止する封止シート113を有する。薬剤パック100は、いわゆる、PTP(Push Through Pack)シートである。
【0016】
図3及び図4に示すように、封止シート113は、誘電材料から形成された基材シート114と、基材シート114の個包装部112のそれぞれに対応する領域の表面及び裏面に配置された一対の導電体としての導電性シート115,116とを有する。
【0017】
すなわち、図3に示すように、封止シート113において、個包装部112(112a,112b,112c,112d,112e,112f,112g,112h,112i,112j)に対応する領域には、基材シート114が導電性シート115(115a,115b,115c,115d,115e,115f,115g,115h,115i,115j)及び導電性シート116(116a,116b,116c,116d,116e,116f,1116g,116h,116i,116j)に挟まれることにより、複数のコンデンサ構造が形成されている。
【0018】
導電性シート115(115a,115b,115c,115d,115e,115f,115g,115h,115i,115j)の各々は、同じく導電性シートで形成された接続部117によって電気的に接続されている。また、導電性シート116(116a,116b,116c,116d,116e,116f,116g,116h,116i,116j)の各々も、同様に、接続部118によって電気的に接続されている。
【0019】
図2には、導電性シート115,116及び接続部117,118が二点鎖線で示されている。ループアンテナ120及び接続部117,118は、ICチップ130に接続されている。
【0020】
基材シート114及び導電性シート115,116によって形成されるコンデンサの静電容量Cは、誘電材料の厚さd(図3参照)、誘電材料の誘電率ε、真空誘電率ε、導電性シートの面積S(図3参照)とするとき、以下の式により表される。
【0021】
C=(ε×ε×S)/d
【0022】
本実施形態においては、上述した複数のコンデンサを有する検出部119が構成されている。
【0023】
本実施形態に係る検出部119は、リーダ/ライタ(本実施形態では、情報処理端末2)が近づけられた際に、リーダ/ライタから無線給電を受ける、すなわち、誘導起電力によってループアンテナ120に生じる電流を電流源として充電される複数のコンデンサを有している。
【0024】
薬剤パック100では、例えば、個包装部112a~112jのいずれかから薬剤が取り出されると、個包装部112が押し潰されて、当該個包装部112に対応するコンデンサ構造が破壊され、当該個包装部112に対応するコンデンサ構造が機能しなくなる。これにより、検出部119において、開封された個包装部112の数に対応する静電容量(電圧値)が減少する。したがって、個包装部112がいくつ開封されたかを検出することができる。
【0025】
図2に示すように、筐体基材111において、個包装部112が形成されていない領域の一部には、ループアンテナ120が形成されている。また、ループアンテナ120には、ICチップ130が接続されている。
【0026】
ICチップ130は、筐体基材111の表面に形成されるとともに、ループアンテナ120と電気的に接続されている。
【0027】
本実施形態においては、ループアンテナ120及びICチップ130は、非接触通信によって情報を送受するRFID(Radio Frequency Identification)技術に対応した無線通信用アンテナである。
【0028】
一例として、ループアンテナ120は、3MHzから30MHzのHF帯、特に、13.56MHzの特定周波数帯域を利用する通信距離10cm程度の近距離無線通信(Near Field Communication:NFC)に対応したものである。
【0029】
ループアンテナ120は、銅やアルミニウム等の金属膜、導電性インキ、又は金属線により形成することができる。ループアンテナ120は、異方導電性ペースト又は導電性フィルムを用いた焼付け接合によりICチップ130に電気的及び物理的に接続されている。
【0030】
次に、検出装置110におけるICチップ130の一例について説明する。
【0031】
図5は、薬剤パック100に形成される検出装置110におけるICチップ130を説明する構成図である。
【0032】
図5に示すように、ICチップ130は、NFCインタフェース(NFC I/F)131、充放電回路132、フィルタ回路133、セレクタ回路134、バッファ回路136、AD変換回路135、及び処理部137を備える。
【0033】
NFC I/F131は、情報処理端末2からの磁界によってループアンテナ120に生じた誘導起電力を入力する、又は情報処理端末2と通信するための信号変換等を行う。
【0034】
充放電回路132は、オンに設定されるとき、コンデンサを構成する検出部119に電圧を印加し、オフに設定されるとき、検出部119への電圧の印加を停止する。
【0035】
フィルタ回路133は、コンデンサを構成する検出部119が満充電になった後、電圧値を測定するまでの放電による電圧変化(電圧降下)を緩やかに検出するためのフィルタである。この回路は、例えば、1MΩの抵抗と470pfのコンデンサで構成されている。
【0036】
フィルタ回路133において、検出部119が満充電になった後、電圧を測定する測定タイミングまでの時間は、変更が可能である。具体的には、470pfのコンデンサを変更することより、電圧変化を緩やかにすることができる。
【0037】
薬剤パック内の残薬数が所定の数以下の場合、放電時間から所定時間経過前に電圧が急速に降下し、残薬数を正確に判定できなくなる場合がある。例えば、コンデンサ毎の容量の誤差が所定範囲を超えると、薬剤パック内の残薬数が1つの場合と2つの場合において、測定した電圧値が類似する値になってしまい、残薬数が判定できなくなることが考えられる。
【0038】
そこで、フィルタ回路133は、検出部119を満充電にした後、放電開始から所定時間後に電圧を測定できるように、フィルタ回路133によって、電圧降下のタイミングを調整する。これにより、残薬数が1つの場合と2つの場合において、異なる電圧値が測定できるため、正確な残薬数を判定することができる。
【0039】
セレクタ回路134は、主として、薬剤パック100が工場から出荷される前、或いは調剤薬局に納入された際に実行されるキャリブレーション処理(図9を用いて後述する)において使用される。
【0040】
セレクタ回路134は、検出部119を介してAD変換回路135に接続する検出モードと、検出部119を介さないでAD変換回路135に接続する補正モードとを選択する。本実施形態においては、検出モードでは、セレクタ回路134は、フィルタ回路133から検出部119を介してバッファ回路136を経由して、AD変換回路135に接続される。また、補正モードでは、フィルタ回路133から検出部119を介さないでバッファ回路136を経由してAD変換回路135に接続される。補正モードは、コンデンサの容量を最小にする、すなわち、個包装部112が全て開封された残薬数ゼロと同等の状態にするモードである。
【0041】
AD変換回路135は、検出部119において検出された電圧値に基づくアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0042】
バッファ回路136は、検出部119からの電圧値に基づくアナログ信号をAD変換回路135に入力する際に、ノイズを除去するとともに、信号を減衰させないための回路である。
【0043】
処理部137は、ICチップ130において実行される各種データを記憶するROM(Read Only Memory)や、後述するコントロールロジック(Control Logic)のワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory)を含む。
【0044】
本実施形態において、ROMは、書き換え可能なEEPROMである。RAM,ROMとして、SSD(Solid State Drive)等を用いることができる。
【0045】
本実施形態においては、処理部137におけるROMに、薬剤パック100を識別するための固有情報(以下、薬剤パックIDと記す)が記憶されている。
【0046】
また、処理部137におけるROM(EEPROM)には、薬剤パックIDのほか、薬剤パックIDに紐付けられて、個包装部112の開封状態に伴うコンデンサ容量、薬剤パック100に形成された個包装部112の数、薬剤パック100の残薬数等が記憶される。また、検出部119の電圧値を測定するタイミングに関する情報、後述するキャリブレーション処理により修正される情報や、薬剤パック100における開封検出結果(残薬数、測定された電圧値)等が記憶される。ROMに記憶されるこれらの情報についての詳細については、後述する。
【0047】
処理部137は、複数のコンデンサを有する検出部119の静電容量及び電圧値に基づくアナログ信号を検出し、これをデジタル信号に変換して、情報処理端末2に送信することができる。
【0048】
<検出部の充放電>
図6は、コンデンサの充放電を説明する模式図である。
【0049】
図6において、コンデンサの端子間電圧は、二点鎖線のV(t)で表される。また、コンデンサに充電される静電容量による静電エネルギーは、実線のU(t)で表される。また、コンデンサに流れる電流は、破線のI(t)で表される。
【0050】
情報処理端末2により発生された磁界によって、ループアンテナ120に誘導起電力が生じているとき、ICチップ130において、充放電回路132がオンに設定されると、検出部119に電圧が印加され、検出部119に備えられた複数のコンデンサの各々に対して充電が開始される。
【0051】
すなわち、図6に示すように、V(t)が上昇し、これに伴って静電エネルギーU(t)が上昇する。
【0052】
電圧の印加開始から、検出部119を構成する複数のコンデンサの全てが満充電になるまでの時間をtとすると、電圧の印加開始からの経過時間tにおいて、電流I(t)は流れなくなる。
【0053】
時間tの経過後、充放電回路132をオフにすることにより、放電に切り換える。
【0054】
これにより、検出部119を構成する複数のコンデンサから静電エネルギーU(t)が放出され、端子間電圧V(t)が減少する。また、電流I(t)の流量が増加する。
【0055】
コンデンサに蓄電された電荷が全て放出されると、電圧がゼロになる挙動を示す。
【0056】
本発明者らは、薬剤パックの個包装部にコンデンサを設け、個包装部が開封されたことによってコンデンサが機能しなくなることを利用して、個包装部の開封を検出する構造の実現に至った。
【0057】
しかしながら、個包装部の開封又は未開封を、コンデンサの静電容量を利用して検出しようとした場合には、静電容量の値に検出誤差が生じやすいという知見を得た。
【0058】
特に、図3及び図4に示すコンデンサ構造、すなわち、誘電材料から形成された基材シート114と、基材シート114の個包装部112のそれぞれに対応する領域の表面及び裏面に配置された一対の導電性シート115,116とからなるコンデンサ構造を形成した場合には、個包装部112に対応して形成される各コンデンサの静電容量を厳密に揃えることが難しかった。
【0059】
このため、例えば、満充電時の静電容量の差に基づいて、開封された個包装部の検出を試みても、開封された個包装部の数を厳密に検出することが困難であった。
【0060】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、図3及び図4に示すような簡素なコンデンサ構造を有する検出部を用いた場合であっても、図6に示すように、コンデンサの放電中において、満充電時tから所定時間tが経過したタイミングで測定した電圧値は、定量可能なレベルに安定していることを見出した。
【0061】
これにより、本実施形態においては、ICチップ130の構成により、検出部119を構成する複数のコンデンサのそれぞれを満充電にし、満充電時tから所定時間tが経過したタイミングで検出部119の電圧値を測定することにより、検出部119を構成しているコンデンサのうち、コンデンサとして機能している数、すなわち、未開封の個包装部112の数を検出することができるに至った。
【0062】
<情報処理端末>
続いて、本実施形態における情報処理端末2について説明する。図3は、本実施形態に係る情報処理端末2の一例を説明する構成図である。
【0063】
図7に示すように、情報処理端末2は、ネットワークインタフェース21(以下、NWインタフェース21と記す)と、近距離無線通信インタフェース22(以下、NFCインタフェース22と記す)とを有する。
【0064】
NWインタフェース21は、ネットワークNWを介して、情報処理端末2と情報処理装置3との間で情報の送受を行う。また、NFCインタフェース22は、近距離無線通信により薬剤パック100からの検出信号としてのデジタル信号を取得する取得部として機能する。
【0065】
情報処理端末2は、タッチパネル付きディスプレイ23を有する。タッチパネル付きディスプレイ23は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)であって、LCDを起動するLCDドライブによって、薬剤パック100の状態に関する判定結果や、薬剤パック100から検出信号を取得するための操作手順の表示や、薬剤パック100の状態の判定結果等の表示を行う。或いは、表示した操作手順に基づく使用者からの操作入力を受け付ける。
【0066】
情報処理端末2は、音声入出力部24を有する。音声入出力部24は、図示しないが、デジタルデータを音声に変換する回路、スピーカ、及びマイクを有する。
【0067】
情報処理端末2は、処理部25を有する。処理部25は、CPUによって構成されている。
【0068】
処理部25は、CPUの機能構成として、信号取得モジュール251と、状態検出モジュール252と、キャリブレーションモジュール253とを備える。
【0069】
信号取得モジュール251は、取得部としてのNFCインタフェース22による薬剤パック100の検出装置110から薬剤パックIDの取得及び検出信号としてのデジタル信号の取得を実行する。
【0070】
状態検出モジュール252は、検出装置110から送信された薬剤パックIDに基づいて、薬剤パックIDに紐付けられた薬剤パック100に関する情報を情報処理装置3から取得する。また、検出装置110から送信されたデジタル信号に基づいて、個包装部112の状態を検出する。
【0071】
状態検出モジュール252は、薬剤パック100の個包装部112に形成された複数のコンデンサ(検出部119)の放電中に、所定のタイミングで測定された検出部119の電圧値に関するデジタル信号を検出装置110から受信し、これらのデジタル信号に基づいて、個包装部112の状態(開封又は未開封)を検出する。
【0072】
キャリブレーションモジュール253は、検出部119を満充電し、満充電時tから所定時間tが経過したタイミングで検出部119の電圧値を測定する処理において、当該電圧値を測定するタイミングを修正するためのキャリブレーション処理を実行する。
【0073】
本実施形態において、これらモジュールは、CPUによって実現される機能構成であるが、各モジュールの機能を実行する物理的構成であってもよい。
【0074】
また、処理部25は、記憶部26に保存された各種制御プログラムに従って、NWインタフェース21、NFCインタフェース22、タッチパネル付きディスプレイ23、音声入出力部24の各部を制御する。
【0075】
情報処理端末2は、記憶部26を有する。記憶部26は、各種制御プログラムを記憶するROMや、後述するCPUのワークエリアとしてのRAMを含む。記憶部26としては、SSD等を用いることができる。
【0076】
記憶部26には、情報処理装置3から送信された、以下の各種情報が記憶される。すなわち、薬剤パックIDのほか、薬剤パックIDに紐付けられて、各個包装部112のコンデンサ容量、薬剤パック100に形成された個包装部112の数、薬剤パック100の残薬数、検出部119の電圧値を測定するタイミングに関する情報、測定によって得られた電圧値、残薬数に対応する電圧値、測定タイミングの理論値(計算で求められる理論上の測定タイミング)、検出部119が満充電されたことを確認するための判定基準となる情報(例えば、検出部119の満充電までに必要となる充電時間又は満充電時の電圧値)、薬剤パック100における開封検出結果(残薬数、測定された電圧値)等が記憶される。
【0077】
また、記憶部26には、処理部25がNWインタフェース21、NFCインタフェース22、タッチパネル付きディスプレイ23、音声入出力部24の各部を制御するための各種制御プログラムも保存されている。
【0078】
NWインタフェース21、NFCインタフェース22、タッチパネル付きディスプレイ23、音声入出力部24、処理部25及び記憶部26は、内部バス27によって互いに接続されている。
【0079】
以上の構成を有することにより、情報処理端末2は、薬剤パック100との間で近距離無線通信に準拠する非接触通信を行って、薬剤パック100からデジタル信号を取得することができる。また、情報処理端末2は、NWインタフェース21を介して、情報処理装置3から薬剤パック100に関する情報を取得し、検出装置110に送信することができる。
【0080】
<情報処理装置>
次に、本実施形態における情報処理装置3について説明する。図8は、本実施形態に係る情報処理装置3を説明する構成図である。
【0081】
図8に示すように、情報処理装置3は、ネットワークNWに無線接続するためのネットワークインタフェース31(以下、NWインタフェース31と記す)を有する。これにより、情報処理装置3は、ネットワークNWを介して情報処理端末2との間で無線通信を行う、いわゆるサーバとして機能する。
【0082】
情報処理装置3は、管理者からの入力を受け付ける入力部32と、表示部33と、処理部34とを有する。
【0083】
処理部34は、薬剤パック100の薬剤パックIDと、検出部119による検出信号としてのデジタル信号とを情報処理端末2から取得する。
【0084】
また、処理部34は、薬剤パック100において個包装部112の開封又は未開封を判定する判定アルゴリズムを情報処理端末2に送信する。
【0085】
また、処理部34は、NWインタフェース31、入力部32、表示部33の各部を制御する。
【0086】
情報処理装置3は、記憶部35を有する。記憶部35は、各種制御プログラムを記憶するROMやCPUのワークエリアとしてのRAMを含む。記憶部35としては、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD等を用いることができる。
【0087】
記憶部35には、薬剤パックIDのほか、薬剤パックIDに紐付けられて、各個包装部112のコンデンサ容量、薬剤パック100に形成された個包装部112の数、薬剤パック100の残薬数等が記憶される。
【0088】
また、記憶部35には、検出部119の電圧値を測定するタイミングに関する情報、測定によって得られた電圧値、残薬数に対応する電圧値、測定タイミングの理論値(計算で求められる理論上の測定タイミング)、検出部119が満充電されたことを確認するための判定基準となる情報(例えば、検出部119の満充電までに必要となる充電時間又は満充電時の電圧値)、薬剤パック100における開封検出結果(残薬数、測定された電圧値)等が記憶される。これらの情報についての詳細については後述する。
【0089】
NWインタフェース31、入力部32、表示部33、処理部34及び記憶部35は、内部バス36によって互いに接続されている。
【0090】
以上の構成を有することにより、情報処理装置3は、薬剤パック100において開封された個包装部の数(未開封の個包装部の数)を検出するために必要な情報を、ネットワークNWを介して、情報処理端末2に送信することができる。また、情報処理端末2から受信した、検出部119の満充電までに必要となる充電時間、薬剤パック100における開封検出結果(残薬数、測定された電圧値)等を保存することができる。
【0091】
[状態検出システムにおける作用効果]
本実施形態に係る状態検出システム1は、アンテナを有する情報処理端末2と、被検体としての薬剤パック100の開封状態を検出する検出装置110と、を備える。検出装置110は、誘電材料から形成された基材シート114と基材シート114を挟むようにして配置された一対の導電性シート115,116により構成される複数のコンデンサを有する検出部119が薬剤パック100に形成されている。
【0092】
このため、検出部119は、個包装部112を有する筐体基材111を封止する封止シート113の積層構造として実現することができる。したがって、個包装部に抵抗体、センサ及び導線等からなる破断を検出するための回路を構築する従来の検出部に比べて、容易に実現可能である。
【0093】
また、状態検出システム1では、情報処理端末2において、検出部119を構成する複数のコンデンサの放電中に、所定のタイミングで測定された検出部119の電圧値に関するデジタル信号に基づいて、薬剤パック100における個包装部112の状態を検出する。
【0094】
コンデンサの放電中において、満充電時tから所定時間tが経過したタイミングで測定した検出部119の電圧値は、コンデンサの静電容量よりも検出誤差が生じにくい。また、基材シート114と、基材シート114の個包装部112のそれぞれに対応する領域の表面及び裏面に配置された一対の導電性シート115,116とからなるコンデンサ構造のような簡素な構造を備えた検出部119においても、定量可能なレベルで安定している。
【0095】
したがって、検出部119を構成する複数のコンデンサのそれぞれを満充電にし、満充電時tから所定時間tが経過したタイミングで検出部119の電圧値を測定することにより、検出部119を構成しているコンデンサのうち、コンデンサとして機能している数、すなわち、未開封の個包装部112の数を検出することができる程度の精度が得られる。
【0096】
[キャリブレーション処理]
続いて、本実施形態に係る状態検出システム1において、薬剤パック100の個包装部112の開封又は未開封を検出する処理に先立って実行されるキャリブレーション処理について説明する。
【0097】
キャリブレーション処理は、本実施形態において、満充電時tの後、放電を開始してから、どのタイミングで電圧値を測定するか、或いは、どのタイミングで取得した電圧値を使用するかを設定するための処理である。すなわち、放電を開始してから電圧値を測定するまでの時間(図6に示す所定時間t)を決定するための処理である。
【0098】
状態検出システム1において、キャリブレーション処理は、薬剤パック100が工場から出荷される前、或いは調剤薬局に納入された際に実行される。
【0099】
キャリブレーション処理において使用される情報処理端末2は、工場や調剤薬局におけるキャリブレーション処理用端末であってもよい。
【0100】
図9及び図10は、状態検出システム1におけるキャリブレーション処理を説明するためのフローチャートである。図9に示すアルファベットA,B,Cは、図10に示すアルファベットA,B,Cに連続する。
【0101】
工場出荷時又は調剤薬局において、管理者は、情報処理端末2にインストールされている薬剤パック100を読み取るためのプログラムを立ち上げて、情報処理端末2を薬剤パック100にかざして、薬剤パックIDの読み取りを開始する。
【0102】
ステップS1において、情報処理端末2は、薬剤パック100に薬剤パックIDを要求する。
【0103】
ステップS2において、薬剤パック100は、情報処理端末2に薬剤パックIDを通知する。
【0104】
ステップS3において、情報処理端末2は、受信した薬剤パックIDを情報処理装置3に送信する。
【0105】
ステップS4において、情報処理装置3は、薬剤パックIDを受信し、受信した薬剤パックIDと記憶部35に保存された薬剤パックIDとを照合し、記憶部35に保存されている薬剤パックIDに紐づけられた薬剤パックに関する情報を送信する。
【0106】
薬剤パックに関する情報とは、薬剤パックIDに対応する薬剤パック100において、各個包装部112に対応するコンデンサ構造を有する検出部119のコンデンサ容量、薬剤パック100における1シート内の個包装部112の数、測定タイミングtの理論値(放電開始から電圧値を測定するまでの時間)、測定タイミングtに測定したときの電圧値、コンデンサが満充電されたことを確認するための判定基準となる情報として、コンデンサの満充電までに必要となる充電時間等がある。
【0107】
ステップS5において、情報処理端末2は、薬剤パック100に関する情報を情報処理装置3から受信し、薬剤パック100に送信する。
【0108】
ステップS6において、検出装置110の処理部137は、薬剤パック100に関する情報を受信し、EEPROMに書き込む。
【0109】
続いて、情報処理端末2は、キャリブレーション工程を開始する。
【0110】
本実施形態においては、キャリブレーション工程として、処理部137は、セレクタ回路134において、検出モードを選択し、検出部119を満充電にする。
【0111】
本実施形態においては、情報処理装置3から取得した薬剤パックIDに紐付けられた、満充電になるまで要する充電時間に基づいて満充電を判定する。
【0112】
処理部137は、取得した充電時間が経過した後、放電に切り換える。満充電tからの放電中に測定タイミングtで検出部119の電圧値を測定する(図6参照)。
【0113】
このときの測定タイミングtは、薬剤パック100を用いて予め測定されることにより決定された値(基準値)である。この基準値に対応する電圧値(理論値)よりも、測定された電圧値が大きい場合には、測定タイミングtを基準値よりも遅く設定する。
【0114】
また、測定された電圧値が理論値よりも小さい場合には、測定タイミングtを基準値よりも早く設定する。
【0115】
また、処理部137は、セレクタ回路134において、検出モードを選択し、検出部119を満充電にする。処理部137は、取得した充電時間が経過した後、放電に切り換える。満充電tからの放電中に測定タイミングtで検出部119の電圧値を測定する(図6参照)。
【0116】
測定された電圧値が基準値に対応する理論値よりも、大きい場合には、測定タイミングtを基準値よりも遅く設定する。また、測定された電圧値が理論値よりも小さい場合には、測定タイミングtを基準値よりも早く設定する。
【0117】
キャリブレーション工程の具体例を、ステップS7からステップS16に示す。
【0118】
ステップS7において、情報処理端末2は、検出装置110の処理部137に、セレクタ回路134をフィルタ回路133のコンデンサのみに給電する補正モードに設定して満充電しにし、すなわち、個包装部112が全て開封された残薬数ゼロと同等の状態で満充電にし、その後、満充電からの放電中に、基準値として設定された測定タイミング(図6におけるt)で検出部119の電圧値の測定を実行するよう指示する。
【0119】
ステップS8において、処理部137は、セレクタ回路134を、検出モードに設定し、満充電にする。その後、満充電からの放電中に、基準値として設定された測定タイミング(図6におけるt)で検出部119の電圧値の測定を実行する。
【0120】
本実施形態においては、検出部119が満充電になったことを判定する方法として、充電時間を用いる。処理部137は、情報処理装置3から取得した、薬剤パックIDに紐付けられた、満充電になるまで要する充電時間に基づいて、満充電を判定する。
【0121】
ステップS9において、処理部137は、電圧値の測定結果を情報処理端末2に送信する。
【0122】
ステップS10において、情報処理端末2は、検出装置110から測定結果を受信する。
【0123】
続いて、情報処理端末2は、ステップS11において、検出装置110の処理部137に、検出モードに設定し、満充電にし、その後、満充電からの放電中に、基準値として設定された測定タイミング(図6におけるt)で検出部119の電圧値の測定を実行するよう指示する。
【0124】
ステップS12において、処理部137は、セレクタ回路134を、検出モードに設定し、満充電にする。その後、満充電からの放電中に、基準値として設定された測定タイミング(図6におけるt)で検出部119の電圧値の測定を実行する。
【0125】
ステップS13において、処理部137は、電圧値の測定結果を情報処理端末2に送信する。
【0126】
図10のBに進み、ステップS14において、情報処理端末2は、検出装置110から測定結果を受信する。
【0127】
ステップS15において、理論値との比較を行う。ステップS15において、基準値である測定タイミングtに基づいて得られた電圧値が、理論値から乖離する場合であって、測定結果である電圧値が理論値よりも大きい場合には、測定タイミングが早いことが考えられるため、測定タイミングを所定時間遅くする。
【0128】
すなわち、ステップS16において、測定タイミングをt+Δt図6参照)に変更して、ステップS7以降の工程を繰り返す。
【0129】
依然として理論値から乖離する場合には、測定タイミングをt+Δt(Δt>Δt)に設定して、ステップS7以降の工程を繰り返す。このようにして、理論値に合致するまで、測定タイミングを所定量ずつ増加させて、ステップS7以降の工程を繰り返す。
【0130】
ステップS15において、理論値から乖離する場合であって、測定で得られた電圧が理論値よりも小さい場合には、測定タイミングが遅いことが考えられるため、測定タイミングを所定時間早くする。すなわち、t-Δt図6参照)に設定して、ステップS7以降の工程を繰り返す。
【0131】
依然として理論値から乖離する場合には、測定タイミングをt-Δt(Δt>Δt)に設定して、ステップS7以降の工程を繰り返す。
【0132】
このようにして、理論値に合致するまで、測定タイミングを所定量ずつ変化させて、ステップS7以降の工程を繰り返す。
【0133】
ステップS15において、理論値と一致した場合(ステップS15:一致)には、ステップS17において、変更後の測定タイミングを設定する指示を処理部137に送信する。
【0134】
ステップS18において、処理部137は、変更後の測定タイミングをROM(EEPROM)に書き込む。
【0135】
ステップS19において、情報処理端末2は、変更後の測定タイミングを情報処理装置3に送信する。
【0136】
ステップS20において、情報処理装置3は、変更後の測定タイミングを当該薬剤パック100の薬剤パックIDと紐付けて、記憶部26に保存する。
【0137】
[キャリブレーション処理における効果]
本実施形態に係る状態検出システム1では、図3及び図4に示すような簡素なコンデンサ構造を有する検出部119を用いた場合であっても、キャリブレーション処理により、個包装部112の開封数を検出するために所望とする精度が得られる電圧値を測定可能な測定タイミングを最適化することができる。
【0138】
また、薬剤パック100に形成される検出部119におけるコンデンサ構成に基づいて、計算によって導き出された測定タイミング(基準値)が、ICチップ130に備えられた処理部137及びAD変換回路135等を用いた処理が施された結果に基づいて変更されるため、ICチップ130内における処理部137とAD変換回路135との通信タイムラグや、AD変換回路135におけるAD変換処理によるタイムラグに起因する測定タイミングのずれを防止することができる。
【0139】
[開封検出処理]
続いて、本実施形態に係る状態検出システム1における薬剤パック100の開封を検出する処理について説明する。
【0140】
図11は、状態検出システム1における薬剤パック100の開封検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0141】
使用者は、情報処理端末2にインストールされている薬剤パック100を読み取るためのプログラムを立ち上げて、情報処理端末2を薬剤パック100にかざして、薬剤パックIDの読み取りを開始する。
【0142】
ステップS100において、情報処理端末2は、薬剤パック100に薬剤パックIDを要求する。
【0143】
ステップS101において、薬剤パック100は、EEPROMに記憶された薬剤パックIDと、残薬数と、設定された測定タイミングにおいて測定したときの各コンデンサの電圧値を情報処理端末2に送信する。
【0144】
ステップS102において、情報処理端末2は、受信した薬剤パックIDを情報処理装置3に送信する。
【0145】
ステップS103において、情報処理装置3は、薬剤パックIDを受信し、受信した薬剤パックIDと記憶部35に保存された薬剤パックIDとを照合し、記憶部35に保存されている薬剤パックIDに紐づけられた薬剤パックに関する情報を情報処理端末2に送信する。
【0146】
薬剤パックに関する情報とは、薬剤パックIDに対応する薬剤パック100において、各個包装部112に対応する複数のコンデンサを有する検出部119のコンデンサ容量、薬剤パック100における1シート内の個包装部112の数、キャリブレーションによって変更された測定タイミング、変更後の測定タイミングに測定したときの電圧値、残薬数に応じた電圧値、コンデンサが満充電されたことを確認するための判定基準となる情報として、コンデンサの満充電までに必要となる充電時間、前回測定時における残薬数等である。
【0147】
情報処理端末2は、ステップS104において、処理部137に対して、検出モード、且つキャリブレーション後の測定タイミングで測定を行う信号を送信する。
【0148】
ステップS105において、検出装置110は、検出モード、且つキャリブレーション後の測定タイミングで電圧値を測定する。
【0149】
本実施形態においては、検出部119が満充電になったことを判定する方法として、情報処理装置3から取得した薬剤パックIDに紐付けられた、満充電になるまで要する充電時間に基づいて、満充電を判定する。充電開始から所定の充電時間が経過した後、放電を開始し、キャリブレーション後の測定タイミングで電圧値を測定する。
【0150】
ステップS106において、処理部137は、情報処理端末2に測定結果を送信する。
【0151】
ステップS107において、情報処理端末2は、測定結果を受信する。
【0152】
ステップS108において、情報処理端末2は、検出モードにより、キャリブレーション後の測定タイミングでの電圧値の測定を所定回数繰り返す。
【0153】
所定回数の測定が終了すると(ステップS108:Yes)、ステップS109において、測定によって得られた電圧値を解析する。
【0154】
解析方法の一例として、測定によって得られたn個の電圧値の中央値から±X%に収まる電圧値を全て抽出し、これらの加算平均を測定された電圧値の代表値として決定する。或いは、n個の電圧値の中央値を代表値として決定する。
【0155】
ステップS110において、得られた代表値と、情報処理装置3から取得した残薬数に対応する電圧値とを比較し、最も近い電圧値に対応する残薬数に決定する。
【0156】
ステップS111において、情報処理端末2は、検出装置110の処理部137に、決定された残薬数と代表値とを、処理部137のEEPROMに記憶する信号を送信する。
【0157】
ステップS112において、処理部137は、決定された残薬数と代表値とをEEPROMに記憶する。
【0158】
ステップS113において、情報処理端末2は、決定された残薬数と代表値とを情報処理装置3に送信する。
【0159】
ステップS114において、情報処理装置3は、決定された残薬数と代表値とを薬剤パックIDと紐付けて、記憶部26に保存する。
【0160】
[開封検出処置による効果]
以上の処理によれば、状態検出システム1は、検出誤差が生じにくいコンデンサの放電中の電圧値を測定している。このように、検出部119を構成する複数のコンデンサのそれぞれを満充電にし、満充電時tから所定時間tが経過したタイミングで検出部119の電圧値を測定することにより、検出部119を構成しているコンデンサのうち、コンデンサとして機能している数、すなわち、未開封の個包装部112の数を検出することができる程度の精度が得られる。したがって、被検体である個包装部112の開封状態を正確に検出することができる。
【0161】
[その他の実施形態]
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0162】
本実施形態では、検出装置110が備えるアンテナは、ループアンテナ以外に、ダイポールアンテナであってもよい。また、UHF帯(300MHz~3GHz、特に860MHz~960MHz)に対応しアンテナであってもよい。
【0163】
本実施形態においては、NFC I/F131が情報処理端末2からの磁界によってループアンテナ120に生じた誘導起電力を入力する、又は情報処理端末2と通信するための信号変換等を行う。このほか、電界の作用、又は電波等により、ICチップ130を駆動するための電源を得る方式を適用することもできる。
【0164】
図12は、封止シートの変形例を説明する断面図である。図12は、変形例として示す薬剤パック200の断面の一部を示す図である。
【0165】
基材シート214において、筐体基材211に形成される個包装部212側に配置形成される導電性シート215は、個包装部212毎に分割されることなく、一面を覆う構造とされていてもよい。
【0166】
また、基材シート214において、筐体基材211とは反対側に形成される導電性シート216の面積は、導電性シート215の面積と等しくなくてもよい。
【0167】
また、封止シート113において、個包装部112側の面の反対面には、導電性シート116及び接続部118が露呈しないように、誘電材料から形成されたシートにより覆われていてもよい。
【0168】
薬剤パック100の薬剤パックIDは、ICチップ130のROM(EEPROM)に書き込まれているほか、例えば、二次元コード、バーコードとして薬剤パック100に貼り付けられていてもよい。この場合には、二次元コード、バーコード等に対応したリーダ、或いは情報処理端末2に搭載されたカメラ等を用いて読み取る。
【0169】
検出部119に備えられたコンデンサが満充電になったか否かを確認する方法として、本実施形態においては、ステップS8及びステップS105では、検出部119を構成するコンデンサが満充電になったことを確認するための判定基準となる情報として、予め用意されたコンデンサの満充電までに必要となる充電時間を使用した。
【0170】
判定基準となる情報としては、このほかに、満充電時の電圧値を使用することもできる。
【0171】
電圧値を使用する場合には、充電しながら所定間隔で電圧値を測定し、満充電に対応する電圧値になったところで、満充電であることを判定する。
【0172】
なお、判定基準となる情報として満充電時の電圧値を使用する場合には、検出部119の電圧を測定する動作頻度が増加するため、ICチップ130における電力消費が嵩む。このため、満充電までに必要となる充電時間を使用することが好ましい。
【0173】
また、本実施形態において、処理部25及び処理部34は、それぞれ複数のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0174】
記憶部26は、処理部25の動作プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、情報処理端末2に対して着脱可能に構成されていてもよい。記憶部35も同様に、情報処理装置3に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0175】
図9及び図10に示された処理において、情報処理端末2及び情報処理装置3において実行されるステップは、全て、情報処理端末2において実行されてもよい。また、情報処理装置3が薬剤パック100のリーダ/ライタを備える場合には、情報処理端末2及び情報処理装置3において実行されるステップは、全て、情報処理装置3において実行されてもよい。
【0176】
さらに、情報処理端末2は、少なくともリーダ/ライタの機能と画面表示機能を有しており、薬剤パック100との通信、及び、リーダ/ライタとしての処理以外の処理は、全て、情報処理装置3において実行されてもよい。
【0177】
また、図9及び図10に示されたステップのいくつかは、ネットワークNWに接続された図示しない別の端末或いは別の装置において実行されてもよい。図11においても同様である。
【0178】
本実施形態において、状態検出システム1における各処理を実行するための各種プログラムは、例えばCD-ROM、半導体メモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0179】
1 状態検出システム
2 情報処理端末
3 情報処理装置
21 ネットワークインタフェース(NWインタフェース
22 近距離無線通信インタフェース(NFCインタフェース)
23 タッチパネル付きディスプレイ
24 音声入出力部
25 処理部
26 記憶部
27 内部バス
31 ネットワークインタフェース(NWインタフェース)
32 入力部
33 表示部
34 処理部
35 記憶部
36 内部バス
100 薬剤パック
110 検出装置
111 筐体基材
112(112a,112b,112c,112d,112e,112f,112g,112h,112i,112j) 個包装部
113 封止シート
114 基材シート
115(115a,115b,115c,115d,115e,115f,115g,115h,115i,115j),116(116a,116b,116c,116d,116e,116f,1116g,116h,116i,116j) 導電性シート
117,118 接続部
119 検出部
120 ループアンテナ
130 ICチップ
131 NFCインタフェース(NFC I/F)
132 充放電回路
133 フィルタ回路
134 セレクタ回路
135 AD変換回路
136 バッファ回路
137 処理部
200 薬剤パック
211 筐体基材
212 個包装部
214 基材シート
215 導電性シート
216 導電性シート
251 信号取得モジュール
252 状態検出モジュール
253 キャリブレーションモジュール
NW ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12