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特開2024-131632制御装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131632
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20240920BHJP
   H02P 29/68 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P29/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042017
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 洋樹
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA08
5H501DD04
5H501EE08
5H501LL22
5H501LL39
5H501LL51
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】コストを抑えつつ、ファンモータの水没を正確に検知することができる制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】制御装置のプロセッサは、ファンモータへの供給電流値と、ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得し、供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、ファンモータの水没を検知する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン(24)を回転させるファンモータ(22)を制御する制御装置(34)であって、
少なくとも1つのプロセッサ(80)を備え、
前記プロセッサは、
前記ファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタ(78)による検出温度とを取得し、
前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知する、
制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記供給電流値が前記規定電流値を上回ってからの経過時間が予め定められた規定時間を上回った場合に、前記検出温度が前記規定温度を下回っているか否かを判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記ファンモータへの入力電力と前記ファンモータによる機械出力との差が予め定められた規定値を上回っている場合には、前記ファンモータに対する水没検知状態を継続し、
前記差が前記規定値以下である場合には、前記水没検知状態を解除する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記水没検知状態を解除した場合に、予め定められた一定時間、前記ファンモータを作動させる、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記水没検知状態を解除した場合に、前記ファンモータの回転数を予め定められた最大回転数に上昇させる、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記水没検知状態を継続する場合に、前記ファンモータへの出力電圧値を予め定められた制限電圧値に低下させる、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項7】
ファン(24)を回転させるファンモータ(22)への供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタ(78)による検出温度とを取得すること、及び、
前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知すること、
を備える制御方法。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセッサ(80)に、
ファン(24)を回転させるファンモータ(22)への供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタ(78)による検出温度とを取得させ、
前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知させる、
制御プログラム(88)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファンを回転させるファンモータを制御する制御装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンを回転させるファンモータが知られている。この種のファンモータの中には、水没する虞のある位置に配置されるファンモータがある。ファンモータが水没すると、ファンモータに不具合が生じる可能性がある。このため、ファンモータの水没を検知できる機能を有するファンモータの制御装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のモータ駆動回路は、サーミスタを備えており、ファンモータが拘束されてモータ駆動回路に過電流が流れることにより、サーミスタによる検出温度が規定温度を上回った場合には、ファンモータの拘束を検知するように構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のモータ駆動回路がファンモータに設けられた場合、ファンモータが水没し、ファンによって巻き上げられた水滴がファンモータに付着すると、サーミスタによる検出温度が低下し、ファンモータの水没を正確に検知することができなくなる虞がある。
【0005】
ここで、モータ駆動回路とは別の位置であって、ファンによって巻き上げられた水滴が飛来する位置に設置された基準用のサーミスタを用い、基準用のサーミスタによる検出温度と、モータ駆動回路に備えられた温度検出用のサーミスタによる検出温度との差に基づいて、モータ駆動回路に過電流、ひいては、ファンモータの水没を検知することが考えられる。しかしながら、この場合には、基準用のサーミスタを追加する分、コストアップになる。
【0006】
また、例えば水位センサのような、ファンモータの水没を検知する専用のセンサを用いることも考えられるが、この場合にも、専用のセンサを追加する分、コストアップになる。
【0007】
なお、特許文献2には、電動機の回転速度を設定値に保つように制御する制御装置において、PLL制御回路に基準パルスが正常に与えられているか否かを判定し、基準パルスが異常であると判定されたときに電動機の駆動を禁止する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、脱調時など水没ではない場合でも、水没が検知されてしまう虞があるので、ファンモータの水没を正確に検知できることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-151766号公報
【特許文献2】特開2001-197763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、コストを抑えつつ、ファンモータの水没を正確に検知することができる制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1態様は、ファンを回転させるファンモータを制御する制御装置であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記ファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得し、前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知する制御装置である。
【0011】
本開示の第2態様は、ファンを回転させるファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得すること、及び、前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知することを備える制御方法である。
【0012】
本開示の第3態様は、少なくとも1つのプロセッサに、ファンを回転させるファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得させ、前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知させる制御プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、コストを抑えつつ、ファンモータの水没を正確に検知することができる制御装置、制御方法、及び制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る冷却システムを示す模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係るファンモータを示す縦断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係るファンモータ及びファンモータに設けられた制御回路の構成を示すブロック図である。
図4】本開示の一実施形態に係る制御回路に設けられたコンピュータの構成を示すブロック図である。
図5】本開示の一実施形態に係るファンモータにおいてロータに付着した水滴がロータの遠心力で飛散する様子を説明する説明図である。
図6】本開示の一実施形態に係るモータ制御処理を示すフローチャートである。
図7】本開示の一実施形態に係る水没判定処理を示すフローチャートである。
図8】本開示の一実施形態に係るモータ状態更新処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに、本開示の一実施形態に係る冷却システム10の構成について説明する。
【0016】
一例として図1に示すように、本開示の一実施形態に係る冷却システム10は、例えば、乗用自動車等の車両のエンジン12を冷却するためのシステムであり、ラジエータ14と、ファン装置16とを備える。ラジエータ14は、エンジン12に対して配管18を介して接続されている。ラジエータ14の内部とエンジン12の内部とは、配管18を通じて冷却水が循環するようになっている。ラジエータ14は、本開示における「冷却対象物」の一例である。
【0017】
ファン装置16は、シュラウド20と、ファンモータ22と、ファン24とを備える。ファンモータ22は、シュラウド20を介してラジエータ14に対して固定されている。ファンモータ22には、ファン24が固定されており、ファン24は、ファンモータ22の作動に伴って回転する。ファン24は、回転するとラジエータ14に対して送風する。
【0018】
一例として図2に示すように、ファンモータ22は、アウタロータ型のブラシレスモータであり、ロータ26と、ステータ28と、シャフト30と、センターピース32と、制御回路34と、基板ケース36と、コネクタ部材38とを備える。
【0019】
ロータ26は、ロータハウジング40と、ロータマグネット42とを有する。ロータハウジング40は、有天円筒状に形成されており、ロータハウジング40の天壁部の中央部には、筒状の軸受収容部44(すなわち、内筒部)が形成されている。軸受収容部44には、一対の軸受46が収容されており、ロータ26は、一対の軸受46を介してシャフト30に回転可能に支持されている。ロータマグネット42は、ロータハウジング40の外筒部の内周面に例えば接着剤等により固定されている。
【0020】
ステータ28は、ロータハウジング40の内側に収容されており、ステータコア48と、インシュレータ50と、複数の巻線52とを有している。ステータコア48には、シャフト30を中心にして放射状に延びる複数のティース54が形成されており、各巻線52は、インシュレータ50を介して各ティース54に巻回されている。
【0021】
センターピース32は、板状部56を有する。板状部56は、ロータハウジング40の開口と対向している。板状部56には、ネジ等によりステータ28が固定されており、これにより、ステータ28は、板状部56に保持されている。板状部56の中央部には、ステータ28側に開口する凹部58が形成されており、凹部58には、シャフト30が固定されている。
【0022】
制御回路34は、板状部56に対するロータ26と反対側に板状部56と対向して配置されている。制御回路34は、ネジ等によって板状部56に固定されている。制御回路34は、本開示における「制御装置」の一例である。
【0023】
基板ケース36は、ロータ26と反対側から板状部56に固定されている。基板ケース36の内側には、制御回路34が収容されている。コネクタ部材38は、ネジ等により板状部56に固定されている。コネクタ部材38は、制御回路34と電気的に接続されたコネクタ端子60と、コネクタ端子60を収容するコネクタケース62とを有する。
【0024】
一例として図3に示すように、制御回路34は、コンピュータ70と、インバータ72と、電流検出回路74と、ホールセンサ76と、サーミスタ78とを備える。インバータ72、電流検出回路74、ホールセンサ76、及びサーミスタ78は、コンピュータ70と接続されている。
【0025】
インバータ72は、ステータ28を駆動するための複数のスイッチング素子や駆動リレー等(いずれも図示省略)を含む。複数のスイッチング素子は、駆動リレーを介して複数の巻線52と接続されている。ファンモータ22では、複数のスイッチング素子の切替動作により複数の巻線52に流れる電流が切り替えられ、ステータ28が回転磁界を形成する。ステータ28が回転磁界を形成すると、ステータ28とロータマグネット42との間に吸引力及び反発力が発生し、これにより、ロータ26が回転する。ロータ26には、ファン24(図1参照)が固定されており、ファン24は、ロータ26と一体に回転する。
【0026】
電流検出回路74は、複数のスイッチング素子からファンモータ22に供給される電流を検出し、検出した電流の値に応じた電流検出信号を出力する。ホールセンサ76は、ロータ26の回転位置を検出し、検出した回転位置に応じた回転位置検出信号を出力する。サーミスタ78は、インバータ72の温度(例えば、駆動リレーの温度)を検出し、検出した温度に応じた温度検出信号を出力する。
【0027】
一例として図4に示すように、コンピュータ70は、CPU(Central Processing Unit)80と、ROM(Read Only Memory)82と、RAM(Random Access Memory)84とを備える。CPU80、ROM82、及びRAM84は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。ROM82には、制御プログラム88が記憶されている。コンピュータ70は、車両に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit、図示省略)と接続されている。CPU80は、本開示における「プロセッサ」の一例であり、ROM82及びRAM84は、本開示における「メモリ」の一例である。
【0028】
CPU80は、ROM82から制御プログラム88を読み出し、読み出した制御プログラム88をRAM84上で実行する。CPU80は、RAM84上で実行する制御プログラム88に従って、モータ制御処理を実行する。モータ制御処理は、CPU80が、目標回転数導出部90、検出温度取得部92、パラメータ取得部94、入出力導出部96、水没判定部98、モータ状態更新部100、モータ状態判定部102、制限電圧値設定部104、目標回転数更新部106、出力電圧値設定部108、及び、出力電圧制御部110として動作することにより実現される。
【0029】
目標回転数導出部90は、ファンモータ22の目標回転数を導出する。具体的には、目標回転数設定部は、車両ECUからラジエータの温度に応じて出力され、CPU80に入力されたラジエータ温度信号に基づいて、ラジエータの温度に応じた目標回転数を導出する。
【0030】
検出温度取得部92は、サーミスタ78から出力され、CPU80に入力された温度検出信号に基づいて、サーミスタ78による検出温度を取得する。
【0031】
パラメータ取得部94は、ファンモータ22の制御に用いられるパラメータを取得する。パラメータには、ファンモータ22への供給電流値、ファンモータ22への出力電圧値、ファンモータ22の出力トルク、及び、ファンモータ22の実回転数が含まれる。
【0032】
ファンモータ22への供給電流値は、電流検出回路74から出力され、CPU80に入力された電流検出信号に基づいて導出される。ファンモータ22に出力される電圧は、コンピュータ70からインバータ72に出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号に基づいて制御される。ファンモータ22への出力電圧値は、PWM信号のデューティ比に基づいて導出される。ファンモータ22の出力トルクTは、以下の式(1)によって導出される。ただし、ktはトルク定数であり、Iはファンモータ22への供給電流値である。ファンモータ22の実回転数は、ホールセンサ76から出力され、CPU80に入力された回転位置検出信号に基づいて導出される。
T=kt×I・・・(1)
【0033】
入出力導出部96は、ファンモータ22への入力電力と、ファンモータ22による機械出力とを導出する。ファンモータ22への入力電力をW1とした場合に、W1は、以下の式(2)によって導出される。また、ファンモータ22による機械出力をW2とした場合に、W2は、以下の式(3)によって導出される。
W1=I×E・・・(2)
W2=T×N×2π/60・・・(3)
ただし、Iは、ファンモータ22への供給電流値であり、Eは、ファンモータ22への出力電圧値である。また、Tは、ファンモータ22の出力トルクであり、Nは、ファンモータ22の実回転数である。
【0034】
水没判定部98は、ファンモータ22の水没を判定するための水没判定処理を実行する。具体的には、先ず、水没判定部98は、パラメータ取得部94によって取得されたファンモータ22への供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っているか否かを判定する。規定電流値は、例えば、定格電流値よりも低く、かつ巻線に一定時間流れることで巻線の温度を上昇させても巻線を損傷させてしまうことのない電流値の最大許容値に設定される。
【0035】
ここで、水没判定部98は、供給電流値が規定電流値を上回っていると判定(すなわち、過負荷であると判定)した場合には、供給電流値が規定電流値を上回ってからの経過時間が予め定められた規定時間を上回っているか否かを判定する。規定時間は、任意に設定可能である。例えば、規定時間は、ファン24によって巻き上げられた水滴がファンモータ22に付着した場合に、サーミスタ78による検出温度が予め定められた規定温度を下回る時間に設定される。
【0036】
水没判定部98は、経過時間が規定時間を上回っていると判定した場合には、サーミスタ78による検出温度が予め定められた規定温度を下回っているか否かを判定する。規定温度は、例えば、ファンモータ22が過負荷でない場合(すなわち、正常な場合)の温度の上限値に設定される。そして、水没判定部98は、経過時間が規定時間を上回っており、かつ、検出温度が規定温度を下回っている場合には、ファンモータ22が水没したと判定する。すなわち、この場合、水没判定部98は、ファンモータ22の水没を検知する。
【0037】
一方、水没判定部98は、供給電流値が規定電流値以下であると判定した場合には、水没ではない旨(すなわち、正常である旨)の判定結果を生成する。また、水没判定部98は、経過時間が規定時間以下であると判定した場合、又は、経過時間が規定時間を上回ったときの検出温度が規定温度以上であると判定した場合にも、水没ではない旨の判定結果を生成する。
【0038】
また、水没判定部98は、ファンモータ22が水没したと判定した場合には、入出力導出部96によって導出されたファンモータ22への入力電力とファンモータ22による機械出力とを取得し、入力電力と機械出力との差が予め定められた規定値を上回っているか否かを判定する。規定値は、任意に設定可能である。例えば、規定値は、水没していないとき(すなわち、正常であるとき)の入力電力と機械出力との差の最大値に設定される。
【0039】
ここで、水没判定部98は、差が規定値を上回っていると判定した場合には、水没と判定し、水没である旨の判定結果を生成する。すなわち、水没判定部98は、ファンモータ22に対する水没検知状態を継続する。一方、水没判定部98は、差が規定値以下であると判定した場合には、水没ではない旨の判定結果を生成する。すなわち、水没判定部は、ファンモータ22に対する水没検知状態を解除する。
【0040】
モータ状態更新部100は、水没判定部98によって水没判定処理が実行される毎に、ファンモータ22の状態(以下、モータ状態と称する)を更新するためのモータ状態更新処理を実行する。具体的には、先ず、モータ状態更新部100は、水没判定部98によってファンモータ22が水没したと判定されているか否か(すなわち、水没検知状態が維持されているか否か)を判定する。
【0041】
ここで、モータ状態更新部100は、水没判定部98によってファンモータ22が水没したと判定されている場合(すなわち、ファンモータ22に対する水没検知状態が継続されている場合)には、現在のモータ状態を水没状態に設定する。一方、モータ状態更新部100は、水没判定部98によってファンモータ22が水没したと判定されていない場合(水没検知状態が解除されている場合を含む)には、前回のモータ状態更新処理における更新後のモータ状態(以下、前回のモータ状態と称する)が水没状態又は湿潤状態であるか否かを判定する。
【0042】
ここで、モータ状態更新部100は、前回のモータ状態が水没状態又は湿潤状態であると判定した場合には、現在のモータ状態を湿潤状態に設定する。一方、モータ状態更新部100は、前回のモータ状態が水没状態又は湿潤状態ではないと判定した場合には、現在のモータ状態を通常状態に設定する。なお、初回のモータ状態更新処理では、前回のモータ状態更新処理が存在しないので、モータ状態更新部100は、前回のモータ状態が水没状態又は湿潤状態ではないと判定し、現在のモータ状態を通常状態に設定する。
【0043】
続いて、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が水没状態であるか否かを判定する。ここで、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が水没状態であると判定した場合には、次回のモータ状態更新処理のために、現在のモータ状態である水没状態を前回のモータ状態に設定する。一方、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が水没状態ではないと判定した場合には、現在のモータ状態が湿潤状態であるか否かを判定する。
【0044】
ここで、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が湿潤状態ではないと判定した場合には、次回のモータ状態更新処理のために、現在のモータ状態である通常状態を前回のモータ状態に設定する。一方、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が湿潤状態であると判定した場合には、湿潤状態に設定されてからの経過時間が予め定められた一定時間未満であるか否かを判定する。
【0045】
ここで、モータ状態更新部100は、経過時間が一定時間未満であると判定した場合には、次回のモータ状態更新処理のために、現在のモータ状態である湿潤状態を前回のモータ状態に設定する。一方、モータ状態更新部100は、経過時間が一定時間未満ではない(すなわち、経過時間が一定時間以上である)と判定した場合には、現在のモータ状態を通常状態に設定する。そして、モータ状態更新部100は、次回のモータ状態更新処理のために、現在のモータ状態である通常状態を前回のモータ状態に設定する。
【0046】
このように、モータ状態更新部100は、水没判定部98によって水没検知状態が継続されている場合には、現在のモータ状態を水没状態に設定し、水没判定部98によって水没検知状態が解除された場合には、一定時間、現在のモータ状態を湿潤状態に設定し、一定時間経過してから現在のモータ状態を通常状態に設定する。これにより、後述するように、出力電圧制御部110によってファンモータ22が制御されるときには、少なくとも一定時間、ファンモータ22が作動する。
【0047】
一例として図5には、ファンモータ22が作動することにより、ロータ26に付着した水滴120がロータ26の遠心力で飛散する様子の一例が示されている。一定時間は、例えば、ファンモータ22のロータ26に付着した水滴120をロータ26の遠心力で飛散させるのに要する時間に設定される。
【0048】
モータ状態判定部102は、モータ状態更新部100によって更新されたモータ状態(すなわち、次回のモータ状態更新処理のために前回のモータ状態として設定された現在のモータ状態)が水没状態であるか否かを判定する。また、モータ状態判定部102は、更新されたモータ状態が水没状態ではないと判定した場合に、更新されたモータ状態が湿潤状態であるか否かを判定する。
【0049】
制限電圧値設定部104は、モータ状態判定部102によって、更新されたモータ状態が水没状態であると判定された場合に、ファンモータ22への出力電圧値に対して予め定められた制限電圧値を設定する。制限電圧値は、ファンモータ22への過電流を抑制するために、通常状態における電圧値よりも低い電圧値であって、例えば、巻線及びインシュレータを溶損させない電圧値に対してマージンを含んだ電圧値の上限値に設定される。
【0050】
出力電圧値設定部108は、制限電圧値設定部104によって制限電圧値が設定された場合には、ファンモータ22への出力電圧値を制限電圧値に設定する。このように、更新されたモータ状態が水没状態であり、水没検知状態が継続される場合には、ファンモータ22への出力電圧値が予め定められた制限電圧値に設定される。これにより、後述するように、出力電圧制御部110によって、ファンモータ22への出力電圧値が制御されることにより、ファンモータ22への出力電圧値が制限電圧値に低下する。
【0051】
目標回転数更新部106は、モータ状態判定部102によって、更新されたモータ状態が湿潤状態であると判定された場合に、ファンモータ22に設定された定格回転数の最大値(すなわち、予め定められた最大回転数)を目標回転数に設定することにより、目標回転数を更新する。このように、更新されたモータ状態が湿潤状態である場合には、ファンモータ22の回転数が予め定められた最大回転数に設定される。
【0052】
出力電圧値設定部108は、目標回転数更新部106によって目標回転数が更新された場合には、目標回転数更新部106によって更新された目標回転数と、パラメータ取得部94によって取得されたファンモータ22の実回転数に基づいて、出力電圧値を導出し、導出した出力電圧値をファンモータ22への出力電圧値として設定する。この場合のファンモータ22への出力電圧値は、目標回転数更新部106によって更新された目標回転数が実現される電圧値に設定される。これにより、後述するように、出力電圧制御部110によって、ファンモータ22への出力電圧値が制御されることにより、ファンモータ22の回転数が最大回転数に上昇する。
【0053】
なお、出力電圧値設定部108は、モータ状態判定部102によって、更新されたモータ状態が湿潤状態ではないと判定された場合(すなわち、通常状態であると判定された場合)には、通常状態に対応する出力電圧値を導出し、導出した出力電圧値をファンモータ22への出力電圧値として設定する。この場合のファンモータ22への出力電圧値は、目標回転数導出部90によって導出された目標回転数が実現される電圧値に設定される。
【0054】
出力電圧制御部110は、出力電圧値設定部108によって設定された出力電圧値がファンモータ22へ出力されるように、コンピュータ70からインバータ72に出力されるPWM信号のデューティ比を設定し、これにより、ファンモータ22への出力電圧値を制御する。
【0055】
次に、本開示の一実施形態に係る制御方法について説明する。
【0056】
はじめに、図6を参照しながら、モータ制御処理について説明する。モータ制御処理では、先ず、ステップST10で、目標回転数導出部90は、ファンモータ22の目標回転数を導出する。ステップST10の後、モータ制御処理は、ステップST12へ移行する。
【0057】
ステップST12で、検出温度取得部92は、サーミスタ78による検出温度を取得する。ステップST12の後、モータ制御処理は、ステップST14へ移行する。
【0058】
ステップST14で、パラメータ取得部94は、ファンモータ22の制御に用いられるパラメータとして、ファンモータ22への供給電流値、ファンモータ22への出力電圧値、ファンモータ22の出力トルク、及び、ファンモータ22の実回転数を取得する。ステップST14の後、モータ制御処理は、ステップST16へ移行する。
【0059】
ステップST16で、入出力導出部96は、ステップST14で取得されたパラメータに基づいて、ファンモータ22への入力電力と、ファンモータ22による機械出力とを導出する。ステップST16の後、モータ制御処理は、ステップST18へ移行する。
【0060】
ステップST18で、水没判定部98は、ステップST14で取得されたパラメータのうちのファンモータ22への供給電流値と、ステップST12で取得されたサーミスタ78による検出温度とに基づいて、ファンモータ22の水没を検知するための水没判定処理を実行する。これにより、ファンモータ22が水没している場合には、水没判定部98によって水没が検知される。ステップST18の後、モータ制御処理は、ステップST20へ移行する。
【0061】
ステップST20で、モータ状態更新部100は、ファンモータ22の状態であるモータ状態を更新するためのモータ状態更新処理を実行する。これにより、ファンモータ22の状態に応じて、モータ状態が、水没状態、湿潤状態、及び通常状態のいずれかに更新される。ステップST20の後、モータ制御処理は、ステップST22へ移行する。
【0062】
ステップST22で、モータ状態判定部102は、ステップST20で更新されたモータ状態(すなわち、次回のモータ状態更新処理のために前回のモータ状態として設定された現在のモータ状態)が水没状態であるか否かを判定する。ステップST22において、更新されたモータ状態が水没状態である場合には、判定が肯定されて、モータ制御処理は、ステップST26へ移行する。一方、ステップST22において、更新されたモータ状態が水没状態ではない場合には、判定が否定されて、モータ制御処理は、ステップST24へ移行する。
【0063】
ステップST24で、モータ状態判定部102は、ステップST20で更新されたモータ状態が湿潤状態であるか否かを判定する。ステップST24において、更新されたモータ状態が湿潤状態である場合には、判定が肯定されて、モータ制御処理は、ステップST28へ移行する。一方、ステップST24において、更新されたモータ状態が湿潤状態ではない場合には、判定が否定されて、モータ制御処理は、ステップST30へ移行する。
【0064】
ステップST26で、制限電圧値設定部104は、ファンモータ22への出力電圧値に対して予め定められた制限電圧値を設定する。ステップST26の後、モータ制御処理は、ステップST30へ移行する。
【0065】
ステップST28で、目標回転数更新部106は、ファンモータ22に設定された定格回転数の最大値(すなわち、予め定められた最大回転数)を目標回転数に設定することにより、目標回転数を更新する。ステップST28の後、モータ制御処理は、ステップST30へ移行する。
【0066】
ステップST30で、出力電圧値設定部108は、ステップST26で制限電圧値が設定された場合には、ファンモータ22への出力電圧値を制限電圧値に設定する。一方、出力電圧値設定部108は、ステップST28で目標回転数が更新された場合には、ファンモータ22への出力電圧値を、ステップST28で更新された目標回転数が実現される電圧値に設定する。また、出力電圧値設定部108は、ステップST24で、更新されたモータ状態が湿潤状態ではないと判定された場合(すなわち、通常状態であると判定された場合)には、ファンモータ22への出力電圧値を、ステップST10で導出された目標回転数が実現される電圧値に設定する。ステップST30の後、モータ制御処理は、ステップST32へ移行する。
【0067】
ステップST32で、出力電圧制御部110は、ステップST30で設定された出力電圧値がファンモータ22へ出力されるように、コンピュータ70からインバータ72に出力されるPWM信号のデューティ比を設定し、これにより、ファンモータ22への出力電圧値を制御する。ステップST32の後、モータ制御処理は、ステップST34へ移行する。
【0068】
ステップST34で、CPU80は、モータ制御処理を終了する条件(すなわち、終了条件)が成立しているか否かを判定する。終了条件の一例としては、ECUからモータ停止信号がCPU80に入力されるという条件等が挙げられる。ファンモータ22が作動している状態で、モータ停止信号がCPU80に入力された場合には、ファンモータ22の作動が停止される。ステップST34において、終了条件が成立していない場合には、判定が否定されて、モータ制御処理は、ステップST10へ移行する。一方、ステップST34において、終了条件が成立した場合には、判定が肯定されて、モータ制御処理は終了する。
【0069】
続いて、図7を参照しながら、水没判定処理について説明する。先ず、ステップST40で、水没判定部98は、ステップST14で取得されたファンモータ22への供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っているか否かを判定する。ステップST40において、供給電流値が規定電流値を上回っている場合には、判定が肯定されて、水没判定処理は、ステップST42へ移行する。一方、ステップST40において、供給電流値が規定電流値以下である場合には、判定が否定されて、水没判定処理は、ステップST48へ移行する。
【0070】
ステップST42で、水没判定部98は、供給電流値が規定電流値を上回っていると判定(すなわち、過負荷であると判定)した場合には、供給電流値が規定電流値を上回ってからの経過時間が予め定められた規定時間を上回っており、かつ、サーミスタ78による検出温度が予め定められた規定温度を下回っているか否かを判定する。ステップST42において、経過時間が規定時間を上回っており、かつ、検出温度が規定温度を下回っている場合には、判定が肯定されて、水没判定処理は、ステップST44へ移行する。一方、ステップST42において、経過時間が規定時間以下である場合、又は、経過時間が規定時間を上回ったときの検出温度が規定温度以上である場合には、判定が否定されて、水没判定処理は、ステップST48へ移行する。
【0071】
ステップST44で、水没判定部98は、ステップST16で導出されたファンモータ22への入力電力とファンモータ22による機械出力とを取得し、入力電力と機械出力との差が予め定められた規定値を上回っているか否かを判定する。ステップST44において、差が規定値を上回っている場合には、判定が肯定されて、水没判定処理は、ステップST46へ移行する。一方、ステップST44において、差が規定値以下である場合には、判定が否定されて、水没判定処理は、ステップST48へ移行する。
【0072】
ステップST46で、水没判定部98は、水没と判定し、水没である旨の判定結果を生成する。ステップST46の後、水没判定処理は終了する。
【0073】
ステップST48で、水没判定部98は、水没ではない旨の判定結果を生成する。ステップST48の後、水没判定処理は終了する。
【0074】
続いて、図8を参照しながら、モータ状態更新処理について説明する。先ず、ステップST50で、モータ状態更新部100は、ステップST18の水没判定処理において、ファンモータ22が水没したと判定されている否かを判定する。ステップST50において、ファンモータ22が水没したと判定されている場合には、判定が肯定されて、モータ状態更新処理は、ステップST54へ移行する。一方、ステップST50において、ファンモータ22が水没したと判定されていない場合には、判定が否定されて、モータ状態更新処理は、ステップST52へ移行する。
【0075】
ステップST52で、モータ状態更新部100は、前回のモータ状態更新処理における更新後のモータ状態(すなわち、前回のモータ状態)が水没状態又は湿潤状態であるか否かを判定する。ステップST52において、前回のモータ状態が水没状態又は湿潤状態である場合には、判定が肯定されて、モータ状態更新処理は、ステップST56へ移行する。一方、ステップST52において、前回のモータ状態が水没状態又は湿潤状態ではない場合(すなわち、通常状態である場合)には、判定が否定されて、モータ状態更新処理は、ステップST58へ移行する。
【0076】
ステップST54で、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態を水没状態に設定する。ステップST54の後、モータ状態更新処理は、ステップST60へ移行する。
【0077】
ステップST56で、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態を湿潤状態に設定する。ステップST56の後、モータ状態更新処理は、ステップST60へ移行する。
【0078】
ステップST58で、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態を通常状態に設定する。ステップST58の後、モータ状態更新処理は、ステップST60へ移行する。
【0079】
ステップST60で、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が水没状態であるか否かを判定する。ステップST60において、現在のモータ状態が水没状態である場合には、判定が肯定されて、モータ状態更新処理は、ステップST68へ移行する。一方、ステップST60において、現在のモータ状態が水没状態ではない場合(すなわち、湿潤状態又は通常状態である場合)には、判定が否定されて、モータ状態更新処理は、ステップST62へ移行する。
【0080】
ステップST62で、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態が湿潤状態であるか否かを判定する。ステップST62において、現在のモータ状態が湿潤状態である場合には、判定が肯定されて、モータ状態更新処理は、ステップST64へ移行する。一方、ステップST62において、現在のモータ状態が湿潤状態ではない場合(すなわち、通常状態である場合)には、判定が否定されて、モータ状態更新処理は、ステップST68へ移行する。
【0081】
ステップST64で、モータ状態更新部100は、湿潤状態に設定されてからの経過時間が予め定められた一定時間未満であるか否かを判定する。ステップST64において、経過時間が一定時間未満である場合には、判定が肯定されて、モータ状態更新処理は、ステップST68へ移行する。一方、ステップST64において、経過時間が一定時間以上である場合には、判定が否定されて、モータ状態更新処理は、ステップST66へ移行する。
【0082】
ステップST66で、モータ状態更新部100は、現在のモータ状態を通常状態に設定する。ステップST66の後、モータ状態更新処理は、ステップST68へ移行する。
【0083】
ステップST68で、モータ状態更新部100は、次回のモータ状態更新処理のために、現在のモータ状態を前回のモータ状態に設定する。ステップST68の後、モータ状態更新処理は終了する。
【0084】
次に、本開示の一実施形態の効果について説明する。
【0085】
以上詳述した通り、CPU80は、ファンモータ22への供給電流値と、ファンモータ22に設けられたサーミスタ78による検出温度とを取得し、供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、ファンモータ22の水没を検知する。ここで、ファンモータ22が水没した場合、供給電流値が規定電流値以上になり、かつサーミスタ78による検出温度も規定温度以上になるように上昇しようとするが、ファンモータ22が水没した場合には、ファン24によって巻き上げられた水滴がファンモータ22に付着することにより、サーミスタ78による検出温度が規定温度以下に低下する。したがって、ファンモータ22への供給電流値と、ファンモータ22に設けられたサーミスタ78による検出温度とに基づいて、ファンモータ22の水没を判定することにより、ファンモータ22への供給電流値及びサーミスタ78による検出温度のいずれか一方のみに基づいてファンモータ22の水没を判定する場合に比して、ファンモータ22の水没を正確に検知することができる。
【0086】
また、基準用のサーミスタや専用のセンサを用いなくて済むので、基準用のサーミスタや専用のセンサを用いる場合に比して、コストを抑えることができる。
【0087】
また、CPU80は、ファンモータ22への供給電流値に加えて、ファンモータ22の脱調とは関係のないサーミスタ78による検出温度を取得し、供給電流値と検出温度とに基づいて、ファンモータ22の水没を検知するので、ファンモータ22の脱調が水没と誤検知されることを回避することができる。
【0088】
また、CPU80は、供給電流値が規定電流値を上回ってからの経過時間が予め定められた規定時間を上回った場合に、検出温度が規定温度を下回っているか否かを判定する。したがって、ファンモータ22への水の付着によりサーミスタ78による検出温度が十分に下がってから、検出温度が規定温度を下回っているか否かが判定されるので、サーミスタ78による検出温度が下がっていない状態で判定が行われることを回避することができる。これにより、例えば、供給電流値が規定電流値以上であるか否かの判定と、検出温度が規定温度を下回っているか否かの判定が同時に行われる場合に比して、ファンモータ22の水没を正確に検知することができる。
【0089】
また、CPU80は、ファンモータ22への入力電力とファンモータ22による機械出力との差が予め定められた規定値を上回っている場合には、ファンモータ22に対する水没検知状態を継続し、差が規定値以下である場合には、水没検知状態を解除する。これにより、ファンモータ22の水没が解消されているにも関わらずに水没が検知されてしまうことを回避することができる。
【0090】
また、CPU80は、水没検知状態を解除した場合に、予め定められた一定時間、ファンモータ22を作動させる。これにより、ファンモータ22の内部に風が流れるので、ファンモータ22の内部に水滴が残存することを抑制することができる。
【0091】
また、CPU80は、水没検知状態を解除した場合に、ファンモータ22の回転数を予め定められた最大回転数に上昇させる。これにより、ファンモータ22の回転数が最大回転数未満である場合に比して、ファンモータ22の内部に流れる風の風量を増加させることができるので、ファンモータ22の内部に水滴が残存することをより一層効果的に抑制することができる。
【0092】
また、プロセッサは、水没検知状態を継続する場合に、ファンモータ22への出力電圧値を予め定められた制限電圧値に低下させる。これにより、ファンモータ22が水没している状態でファンが回転しようとすることによって、ファンやファンモータ22に負荷が掛かることを抑制することができる。
【0093】
次に、本開示の一実施形態の変形例について説明する。
【0094】
上記実施形態において、ファン24による冷却対象物は、一例として、ラジエータ14であるが、ラジエータ14以外でもよい。また、例えば、冷却対象物は、エアコンディショナのコンデンサ、HV(Hybrid Vehicle)のバッテリ、又はEV(Electric Vehicle)のバッテリ等でもよい。
【0095】
また、上記実施形態において、冷却システム10は、一例として、乗用自動車等の車両に適用されているが、水陸両用車等の特殊車両に適用されてもよい。
【0096】
また、上記実施形態において、制御回路34は、ファンモータ22に設けられているが、制御回路34のうちのサーミスタ78を除く構成は、ファンモータ22とは独立して設けられていてもよい。また、制御回路34のうちのCPU80、ROM82、及びRAM84は、車両ECUの一部又は全部でもよい。
【0097】
また、上記実施形態において、制御回路34は、ホールセンサ76を備えるが、ホールセンサ76は省かれてもよい。また、ホールセンサ76が省かれる場合、電流検出回路74から出力される電流検出信号に基づいてロータ26の回転位置が検出されてもよい。
【0098】
また、上記実施形態において、CPU80は、ファンモータ22への供給電流値が規定電流値を上回ってからの経過時間が規定時間を上回った場合に、サーミスタ78による検出温度が規定温度を下回っているか否かを判定するが、例えば、ファンモータ22への供給電流値とサーミスタ78による検出温度とを一定期間取得し、取得した供給電流値と検出温度とに基づいて、ファンモータ22の水没を判定してもよい。
【0099】
また、上記実施形態において、コンピュータ70は、CPU80の代わりに、又は、CPU80に加えて、少なくとも一つのプロセッサを備えていてもよい。
【0100】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0101】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0102】
本開示の特徴を以下の通り示す。
(特徴1)
ファンを回転させるファンモータを制御する制御装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記ファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得し、
前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知する、
制御装置。
(特徴2)
前記プロセッサは、前記供給電流値が前記規定電流値を上回ってからの経過時間が予め定められた規定時間を上回った場合に、前記検出温度が前記規定温度を下回っているか否かを判定する、
特徴1に記載の制御装置。
(特徴3)
前記プロセッサは、
前記ファンモータへの入力電力と前記ファンモータによる機械出力との差が予め定められた規定値を上回っている場合には、前記ファンモータに対する水没検知状態を継続し、
前記差が前記規定値以下である場合には、前記水没検知状態を解除する、
特徴1又は特徴2に記載の制御装置。
(特徴4)
前記プロセッサは、前記水没検知状態を解除した場合に、予め定められた一定時間、前記ファンモータを作動させる、
特徴3に記載の制御装置。
(特徴5)
前記プロセッサは、前記水没検知状態を解除した場合に、前記ファンモータの回転数を予め定められた最大回転数に上昇させる、
特徴3又は特徴4に記載の制御装置。
(特徴6)
前記プロセッサは、前記水没検知状態を継続する場合に、前記ファンモータへの出力電圧値を予め定められた制限電圧値に低下させる、
特徴3から特徴5のいずれか一つに記載の制御装置。
(特徴7)
ファンを回転させるファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得すること、及び、
前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知すること、
を備える制御方法。
(特徴8)
少なくとも1つのプロセッサに、
ファンを回転させるファンモータへの供給電流値と、前記ファンモータに設けられたサーミスタによる検出温度とを取得させ、
前記供給電流値が予め定められた規定電流値を上回っており、かつ前記検出温度が予め定められた規定温度を下回っている場合に、前記ファンモータの水没を検知させる、
制御プログラム。
【符号の説明】
【0103】
10…冷却システム、12…エンジン、14…ラジエータ、16…ファン装置、18…配管、20…シュラウド、22…ファンモータ、24…ファン、26…ロータ、28…ステータ、30…シャフト、32…センターピース、34…制御回路、36…基板ケース、38…コネクタ部材、40…ロータハウジング、42…ロータマグネット、44…軸受収容部、46…軸受、48…ステータコア、50…インシュレータ、52…巻線、54…ティース、56…板状部、58…凹部、60…コネクタ端子、62…コネクタケース、70…コンピュータ、72…インバータ、74…電流検出回路、76…ホールセンサ、78…サーミスタ、80…CPU、82…ROM、84…RAM、88…制御プログラム、90…目標回転数導出部、92…検出温度取得部、94…パラメータ取得部、96…入出力導出部、98…水没判定部、100…モータ状態更新部、102…モータ状態判定部、104…制限電圧値設定部、106…目標回転数更新部、108…出力電圧値設定部、110…出力電圧制御部、120…水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8