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特開2024-131634電池パック搭載構造、電池パック及び電池パックの保護構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131634
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電池パック搭載構造、電池パック及び電池パックの保護構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20240920BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240920BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/271 B
H01M50/289 101
H01M50/244 A
H01M50/249
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042023
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】井上 重行
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 聡
(72)【発明者】
【氏名】関谷 泰博
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235BB07
3D235BB23
3D235CC15
3D235DD28
3D235HH26
5H040AA14
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040CC05
5H040CC12
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電池パックを搭載する構造全体の固有振動数を向上させる。
【解決手段】ロアケース1は、底板1a、側板1b及びフランジ部1cを有し、電池スタック2を収納する。スタック台座3は、電池スタック2の端部と側板1bとを連結する。EA材20は、側板1bのスタック台座3が連結された面とは反対側の面に対向して配置される。連結部材8は、底板8a、側板8b及び天板8cを有し、EA材20端部を覆うように設けられる。バルク材7は、連結部材8と前記側板との間に挿入される。連結部材9は、底板1aと底板8aとを連結する。連結部材10は、フランジ部1cと天板8cとを連結する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池スタックと、
第1の底板と、第1の側板と、前記第1の側板から延在するフランジ部と、を有し、前記電池スタックを収納するロアケースと、
前記電池スタックの端部と前記第1の側板とを連結するスタック台座と、
前記第1の側板の前記スタック台座が連結された第1の面とは反対側の第2の面に対向して配置されたエネルギー吸収材と、
第2の底板と、天板と、前記第2の底板及び前記天板の前記第2の面の側の端部同士を接続する第2の側板と、を有し、前記エネルギー吸収材の前記第2の面の側の端部を覆うように設けられる第1の連結部材と、
前記第1の連結部材と前記第2の面との間に挿入されたバルク材と、
前記第1の底板と前記第2の底板とを連結する第2の連結部材と、
前記フランジ部と前記天板とを連結する第3の連結部材と、を備える、
電池パック搭載構造。
【請求項2】
前記第1の底板と、前記電池スタックの端部の下端とは、前記第1の底板に直交する方向に延在して前記第1の底板及び前記電池スタックの端部に挿通された固定部材によって連結される、
請求項1に記載の電池パック搭載構造。
【請求項3】
前記第1の底板と前記電池スタックの端部との連結部、前記スタック台座と前記第1の面との連結部、前記バルク材、前記第2の側板及び前記エネルギー吸収材は、所定の方向に並んで配置される、
請求項1又は2に記載の電池パック搭載構造。
【請求項4】
電池スタックと、
第1の底板と、第1の側板と、前記第1の側板から延在するフランジ部と、を有し、前記電池スタックを収納するロアケースと、
前記電池スタックの端部と前記第1の側板とを連結するスタック台座と、を備え、
前記第1の側板の前記スタック台座が連結された第1の面とは反対側の第2の面に対向するようにエネルギー吸収材が配置され、
第2の底板と、天板と、前記第2の底板及び前記天板の前記第2の面の側の端部同士を接続する第2の側板と、を有し、前記エネルギー吸収材の前記第2の面の側の端部を覆うように第1の連結部材が配置され、
前記第1の連結部材と前記第2の面との間にバルク材が挿入され、
前記第1の底板と前記第2の底板とを連結するように第2の連結部材が配置され、
前記フランジ部と前記天板とを連結するように第3の連結部材が配置される、
電池パック。
【請求項5】
エネルギー吸収材と、
第2の底板と、天板と、前記第2の底板及び前記天板の端部同士を接続する第2の側板と、を有し、前記エネルギー吸収材の端部を覆うように設けられる第1の連結部材と、
一端が前記第2の側板を挟んで前記エネルギー吸収材と対向して配置されるバルク材と、
一端が前記第2の底板と連結される第2の連結部材と、
一端が前記天板と連結される第3の連結部材と、を備え、
電池スタックが、第1の底板と、第1の側板と、前記第1の側板から延在するフランジ部と、を有するロアケースに収納され、
スタック台座が、前記電池スタックの端部と前記第1の側板とを連結し、
前記バルク材の他端は、前記第1の側板の前記スタック台座が連結された第1の面とは反対側の第2の面に対向しており、
前記第2の連結部材の他端は、前記第1の底板と連結され、
前記第3の連結部材の他端は、前記フランジ部と連結される、
電池パックの保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パック搭載構造、電池パック及び電池パックの保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車には、モータに電力を供給するため、電池スタックが収納された電池パックが搭載される。自動車は走行することで生じる振動や、衝突などによる衝撃力が加わることがあるため、こうした場合でも電池スタックに他の部材が接触する事態を防止することが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1に、側方からの衝突を受けた場合であっても、機器台座を支持する支持部材が電池スタックに接触することを抑制可能な電池パックが提案されている。この電池パックでは、側方から衝撃を受けた場合に変形する変形部を設けたスタック台座によって電池スタックを支持する構造を有している。スタック台座の一端は電池パックのケースの底板と連結され、他端は電池パックのケースの側板と連結され、その間に屈曲部材として構成された変形部が設けられる。側方からの衝撃が電池パックのケースの側板に加わると、変形部を構成する屈曲部材が曲がるように変形することで、電池スタックが電池パックのケースの底板や側板と接触することを避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-137537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、電池パックの保護のために屈曲した部材を用いたり、多くの部材を用いて電池スタックを支持する構造では、電池パックを搭載する構造全体の固有振動数が低下してしまうという問題点が有る。
【0006】
本開示は、このような課題を鑑みてなされたものであり、電池パックを搭載する構造全体の固有振動数を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる電池パック搭載構造は、電池スタックと、第1の底板と、第1の側板と、前記第1の側板から延在するフランジ部と、を有し、前記電池スタックを収納するロアケースと、前記電池スタックの端部と前記第1の側板とを連結するスタック台座と、前記第1の側板の前記スタック台座が連結された第1の面とは反対側の第2の面に対向して配置されたエネルギー吸収材と、第2の底板と、天板と、前記第2の底板及び前記天板の前記第2の面の側の端部同士を接続する第2の側板と、を有し、前記エネルギー吸収材の前記第2の面の側の端部を覆うように設けられる第1の連結部材と、前記第1の連結部材と前記第2の面との間に挿入されたバルク材と、前記第1の底板と前記第2の底板とを連結する第2の連結部材と、前記フランジ部と前記天板とを連結する第3の連結部材と、を備える。
【0008】
本開示にかかる電池パックは、電池スタックと、第1の底板と、第1の側板と、前記第1の側板から延在するフランジ部と、を有し、前記電池スタックを収納するロアケースと、前記電池スタックの端部と前記第1の側板とを連結するスタック台座と、を備え、前記第1の側板の前記スタック台座が連結された第1の面とは反対側の第2の面に対向するようにエネルギー吸収材が配置され、第2の底板と、天板と、前記第2の底板及び前記天板の前記第2の面の側の端部同士を接続する第2の側板と、を有し、前記エネルギー吸収材の前記第2の面の側の端部を覆うように第1の連結部材が配置され、前記第1の連結部材と前記第2の面との間にバルク材が挿入され、前記第1の底板と前記第2の底板とを連結するように第2の連結部材が配置され、前記フランジ部と前記天板とを連結するように第3の連結部材が配置される。
【0009】
本開示にかかる電池パックの保護構造は、エネルギー吸収材と、第2の底板と、天板と、前記第2の底板及び前記天板の端部同士を接続する第2の側板と、を有し、前記エネルギー吸収材の端部を覆うように設けられる第1の連結部材と、一端が前記2の側板を挟んで前記エネルギー吸収材と対向して配置されるバルク材と、一端が前記第2の底板と連結される第2の連結部材と、一端が前記天板と連結される第3の連結部材と、を備え、電池スタックが、第1の底板と、第1の側板と、前記第1の側板から延在するフランジ部と、を有するロアケースに収納され、スタック台座が、前記電池スタックの端部と前記第1の側板とを連結し、前記バルク材の他端は、前記第1の側板の前記スタック台座が連結された第1の面とは反対側の第2の面に対向しており、前記第2の連結部材の他端は、前記第1の底板と連結され、前記第3の連結部材の他端は、前記フランジ部と連結される。
【0010】
以上の構成により、エネルギー吸収材から第1の側板及びスタック台座を経由して、電池スタックまでのロードパスを直線状に配置してロードパスの上下方向への屈曲を減らすことができる。これにより、電池パックの搭載構造の固有振動値を向上させることができる。
【0011】
これにより、電池パックを搭載する構造全体の固有振動数を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示にかかる電池パック搭載構造、電池パック及び電池パックの保護構造によれば、電池パックを搭載する構造全体の固有振動数を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一般的な電池パック搭載構造の断面図である。
図2】一般的な電池パック搭載構造の拡大断面図である。
図3】実施の形態1にかかる電池パックの上面図である。
図4図3のA-A断面における電池パック搭載構造の断面図である。
図5図3のA-A断面における電池パック搭載構造の拡大断面図である。
図6】実施の形態1にかかる電池パック搭載構造のA-A断面におけるロードパスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
[一般的な電池パック]
本実施の形態にかかる電池パック搭載構造の構成を理解するための前提として、まず、一般的な電池パック搭載構造の構成とその問題点について説明する。電池パックは、モータを駆動する電源を供給するために、車両等に搭載されるものとして構成される。図1は、一般的な電池パック搭載構造9000の断面図である。一般的な電池パック搭載構造9000は、電池パック900と、電池パック900を衝撃等の荷重から保護する電池パック保護構造910と、を含む。電池パック900は、ロアケース91、電池スタック92、スタック台座93、スタックブラケット94及びアッパケース95を有する。電池パック保護構造910は、エネルギーアブソープション材(以下、EA材)20を有する。
【0016】
図1においては、電池パック900が車両に搭載された状態では、紙面の左から右へ向かう水平方向であるX方向が車両の幅方向、紙面を下から上へ向かう鉛直方向であるZ方向が車両の高さ方向、紙面の手前から奥へ向かう法線方向であるY方向が車両の前後方向である。なお、以下では、X方向の矢印が向かう側を+X側、その反対側を-X側と称する。Y方向の矢印が向かう側を+Y側、その反対側を-Y側と称する。Z方向の矢印が向かう側を+Z側、その反対側を-Z側と称する。
【0017】
図示しないが、電池パック900では、X-Y平面に沿った底板を有する箱形のロアケース91内に、X方向に延在する複数の電池スタック92が、Y方向に並んで配列される。
【0018】
一般的な電池パック搭載構造9000は、左右対称の構成を有している。上述したように、電池パック900は、ロアケース91、電池スタック92、スタック台座93、スタックブラケット94及びアッパケース95を有する。電池パック900は、断面視において、左右対称の構成を有する。ロアケース91はX方向に延在する底板を有する箱形の部材であり、電池スタック92、スタック台座93及びスタックブラケット94がロアケース91の中に納められる。ロアケース91の+Z側は、アッパケース95で覆われる。
【0019】
以下、拡大断面図に基づいて、一般的な電池パック搭載構造9000の構成を説明する。図2は、一般的な電池パック搭載構造9000の-X側の拡大断面図である。
【0020】
ロアケース91は、-X方向に延在する板状部材である底板91aから+Z方向に延在する側板91bに連絡し、さらに-X方向に延在するフランジ部91cに連絡する部材である。
【0021】
電池スタック92は、底板91aの+Z側に配置される。電池スタック92は、複数の電池セル92a及び2枚のエンドプレート92bを有する。複数の電池セル92aは、X方向に積層されている。図示しないが、複数の電池セル92aは、接続手段を介して相互に電気的に接続されている。複数の電池セル92aのスタックの両端、すなわち+X側の端部及び-X側の端部には、エンドプレート92bが配置されている。換言すれば、X方向において、複数の電池セル92aのスタックは2枚のエンドプレート92bに挟まれるように配置される。
【0022】
スタック台座93は、ロアケース91がなす箱形の内側、すなわちロアケース91の内面と電池スタック92との間に配置される部材である。スタック台座93は、図2に示す断面において、-X方向に延在する平板形状の底板93aから+Z方向に延在する側板93bに連絡し、さらに-X方向に延在する連結部93cに連絡する部材である。底板93aは底板91aの上方すなわち+Z側に配置され、接合又は締結によって、底板93aと底板91aとが連結される。以下、複数の部材が接合される箇所は、太い破線にて表示する。
【0023】
スタックブラケット94は、スタック台座93と電池スタック92のエンドプレート92bとを連結し、ロアケース91の底板91aの上方に電池スタック92を支持している。スタックブラケット94は、+X方向に延在する連結部94aから+Z方向に延在する支持板94bに連絡する部材である。連結部94aは連結部93cに対して+Z側に配置され、接合又は締結によって、連結部94aと連結部93cとが連結される。支持板94bは、接合又は締結によって、エンドプレート92bと連結される。
【0024】
アッパケース95は、+X方向に延在する板状部材であるフランジ部95aから+Z方向に延在する側板95bに連絡し、さらに+X方向に延在する天板95cに連絡する部材である。フランジ部95aはフランジ部91cの+Z側に配置され、接合又は締結によって、フランジ部95aとフランジ部91cとが連結される。なお、フランジ部95aとフランジ部91cの連結部の+X側の間隙には、例えばスペーサ96が挿入され、フランジ部95aとフランジ部91cとを支持してもよい。
【0025】
ロアケース91の側板91b外側の面、すなわち-X側の面には、水平方向、すなわちX方向の衝撃などの荷重を吸収するEA材20が配置される。
【0026】
上述の通り、断面視における一般的な電池パック搭載構造9000は左右対称の構成を有しており、一般的な電池パック搭載構造9000の+X側は-X側と対称な構成となっている。よって、断面視における一般的な電池パック搭載構造9000の+X側の構成については、説明を省略する。
【0027】
以上より、本構成では、電池スタック92のX方向の両端部が、スタック台座93及びスタックブラケット94によって支持されている。また、ロアケース91のX方向両側にEA材20が配置されることで、X方向の衝撃などの荷重から電池スタック92が保護されている。
【0028】
次いで、車両の幅方向、すなわちX方向に沿った荷重が加わる経路であるロードパスについて検討する。荷重Fは、EA材20から、電池パック900の部材の連結部を経由して、電池スタック92へ伝達される。図2においては、荷重Fは、EA材20からロアケース91に伝わり、その後、ロアケース91からロアケース91とスタック台座93の連結部、側板93b、スタック台座93とスタックブラケット94との連結部、支持板94bを経由して、エンドプレート92bの上側に伝わる。その後、荷重Fは、エンドプレート92bから電池セル92aのスタックに伝わる。
【0029】
このように、EA材20及び電池パック900におけるX方向のロードパスは上下に蛇行する経路となり、そのため、EA材20及び電池パック900上下振動のロードパスが分断されてしまう。
【0030】
上下振動のロードパスが分断されると、電池パック搭載構造の固有振動値が低下してしまい、車両運行時の共振現象の発生に繋がってしまう。
【0031】
そこで、本実施の形態においては、ロードパスの蛇行を抑制し、電池パック搭載構造の固有振動値の改善が可能な電池パックについて説明する。
【0032】
実施の形態1
[実施の形態1にかかる電池パック]
図3は、実施の形態1にかかる電池パック搭載構造1000の上面図である。紙面の左から右へ向かう水平方向であるX方向が車両の幅方向、紙面を下から上へ向かう鉛直方向であるY方向が車両の前後方向、紙面の奥から手前へ向かう法線方向であるZ方向が車両の高さ方向である。
【0033】
電池パック搭載構造1000では、X-Y平面に沿った底板を有する箱形のロアケース1内に、X方向に延在する複数の電池スタック2が、Y方向に並んで配列される。図3では、Y方向に4つの電池スタック2が配列される例を示している。なお、図3は、ロアケース1と電池スタック2との関係が理解しやすいように簡略化したものであり、例えば、電池スタック2のそれぞれに接続される電気配線や、電池スタック2の固定部材、ロアケースを固定する部材など他の部材については、適宜省略している。また、電池スタック2の上側、すなわち+Z側はアッパケースで覆われているが、簡略化のため、図3では表示を省略している。
【0034】
図4は、図3のA-A断面における電池パック搭載構造1000の断面図である。A-A断面は、電池スタック2の中央を通るZ-X断面である。図3における方向は、図1及び2と同様である。
【0035】
電池パック搭載構造1000は、電池パック100と、電池パック100を衝撃等の荷重から保護する電池パック保護構造110と、を含む。電池パック100は、ロアケース1、電池スタック2、スタック台座3、締結部材4及びアッパケース5を有する。電池パック保護構造110は、バルク材7、連結部材8~10及びEA材20を有する。
【0036】
電池パック搭載構造1000は、A-A断面において、左右対称の構成を有する。図4では、ロアケース1はX方向に延在する底板を有する箱形の部材であり、電池スタック2、スタック台座3及び締結部材4がロアケース1の中に納められる。ロアケース1の+Z側は、アッパケース5で覆われる。
【0037】
以下、拡大断面図に基づいて、電池パック搭載構造1000の構成を説明する。図5は、図3のA-A断面における電池パック搭載構造1000の-X側の拡大断面図である。
【0038】
ロアケース1は、-X方向に延在する板状部材である底板1aから+Z方向に延在する側板1bに連絡し、さらに-X方向に延在するフランジ部1cに連絡する部材である。なお、底板1aを第1の底板、側板1bを第1の側板とも称する。
【0039】
電池スタック2は、底板1aの+Z側に配置される。電池スタック2は、複数の電池セル2a及び2枚のエンドプレート2bを有する。複数の電池セル2aは、X方向に積層されている。図示しないが、複数の電池セル2aは、接続手段を介して相互に電気的に接続されている。複数の電池セル2aのスタックの両端、すなわち+X側の端部及び-X側の端部には、エンドプレート2bが配置されている。換言すれば、X方向において、複数の電池セル2aのスタックは2枚のエンドプレート2bに挟まれるように配置される。
【0040】
スタック台座3は、ロアケース1がなす箱形の内側、すなわちロアケース1の内面と電池スタック2との間に配置される部材である。スタック台座3は、側板3aが側板1bの内面に沿うように-Z側に延在し、+X方向に延在する連結部3bに連絡する部材である。側板3aと側板1bとは、接合又は締結によって連結される。なお、側板3aが連結される側板1bの内面を、第1の面とも称する。
【0041】
エンドプレート2bは、スタック台座3の連結部3bの上方に配置され、エンドプレート2bと連結部3bとにZ方向に挿通される締結部材4によって、連結される。締結部材4は、ネジやナットとボルトの組み合わせなどの、各種の締結手段を用いることができる。
【0042】
アッパケース5は、+X方向に延在する板状部材であるフランジ部5aから+Z方向に延在する側板5bに連絡し、さらに+X方向に延在する天板5cに連絡する部材である。フランジ部5aはフランジ部1cの+Z側に配置され、接合又は締結によって、フランジ部5aとフランジ部1cとが連結される。なお、フランジ部5aとフランジ部1cの連結部の+X側の間隙には、例えばスペーサ6が挿入され、フランジ部5aとフランジ部1cとを支持してもよい。
【0043】
ロアケース1の側板1bの外側の面、すなわち-X側の面には、水平方向、すなわちX方向の衝撃などの荷重を伝達するバルク材7及び連結部材8を介して、EA材20が配置される。なお、ロアケース1の側板1bの外側の面は、第2の面とも称する。
【0044】
連結部材8は、+X方向に延在する底板8aから+Z方向に延在する側板8bに連絡し、さらに-X方向に延在する天板8cに連絡する部材であり、EA材20の+X側の端部にはめ込まれる。
【0045】
バルク材7は、側板1bと側板8bとの間に挿入され、EA材20からの荷重を側板1bに伝達する。なお、底板8aは第2の底板、側板8bは第2の側板とも称する。
【0046】
ロアケース1の底板1a及び連結部材8の底板8aの-Z側には、X方向に延在する板状部材である連結部材9が配置される。底板1aと連結部材9とは、締結又は接合によって連結される。底板8aと連結部材9とは、締結又は接合によって連結される。
【0047】
アッパケース5のフランジ部5a及び連結部材8の天板8cの+Z側には、連結部材10が配置される。連結部材10は、フランジ部5aに接しつつ-X方向に延在する板状部材である連結部10aから、-Z方向に延在する連絡部10bを介して、天板8cに接しつつ-X方向に延在する板状部材である連結部10cに連絡する部材である。フランジ部1c、フランジ部5a及び連結部10aは、締結又は接合によって連結される。連結部10c、天板8c及びEA材20は、締結又は接合によって連結される。
【0048】
上述の通り、A-A断面における電池パック搭載構造1000は左右対称の構成を有しており、電池パック搭載構造1000の+X側は-X側と対称な構成となっている。よって、A-A断面における電池パック搭載構造1000の+X側の構成については、説明を省略する。
【0049】
本構成においても、ロアケース1のX方向両側にEA材20が配置されることで、電池スタック2は、X方向の衝撃などの荷重から保護されている。
【0050】
次いで、車両の幅方向、すなわちX方向に沿った荷重が加わる経路であるロードパスについて検討する。
【0051】
図6は、電池パック搭載構造1000のA-A断面におけるロードパスを示す図である。A-A断面において、荷重Fは、EA材20から、バルク材7を介して、ロアケース1の側板1bに伝わり、その後、側板1bから、側板1bとスタック台座3との連結部、スタック台座3、締結部材4によるスタック台座3とエンドプレート2bとの締結構造を経由して、電池セル2aのスタックに伝わる。
【0052】
この場合、荷重Fの経路、すなわちロードパスは、EA材20からスタック台座3とエンドプレートの連結部まで+X方向へ向かい、その後+Z方向へ向かってから、再びX方向に向かって電池セル2aのスタックに入る経路となる。
【0053】
よって、図2に示す一般的な電池パック搭載構造9000のA-A断面におけるロードパスと比較して、ロードパスの上下方向への屈曲を大幅に削減することができる。
【0054】
以上、本構成によれば、EA材20から、ロアケース1の側板1b及びスタック台座3を経由して、電池スタック2までのロードパスを直線状に配置することで、ロードパスの上下方向への屈曲を減らすことができる。その結果、電池パックや電池保護構造の内部の部材の上下方向の変位や、電池パックと電池保護構造との間の相対的な変位を防止することができる。これにより、電池パック100及びEA材20からなる電池パック搭載構造の全体の固有振動値を向上させることが可能となる。
【0055】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態にかかる電池パック100では、4つの電池スタック2がY方向に配列されるものとして説明したが、これは例示に過ぎない。電池パックにおいて、2つ以上の任意の数の電池スタック2がY方向に配列されていてもよい。
【0056】
電池パック搭載構造1000を構成する各部材の形状は、上述の実施の形態で説明した形状に限られるものではなく、同様の機能を発揮できる限り、他の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1、91 ロアケース
1a、91a 底板
1b、91b 側板
1c、91c フランジ部
2、92 電池スタック
2a、92a 電池セル
2b、92b エンドプレート
3、93 スタック台座
3a、93a 側板
3b、93b 連結部
4 締結部材
5、95 アッパケース
5a、95a フランジ部
5b、95b 側板
5c、95c 天板
6、96 スペーサ
7 バルク材
8~10 連結部材
8a 底板
8b 側板
8c 天板
10a、10c、93c、4a 連結部
10b 連絡部
20 EA材
94 スタックブラケット
94b 支持板
100、900 電池パック
110、910 電池パック保護構造
1000、9000 電池パック搭載構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6