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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013164
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】移動支援装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 21/00 20060101AFI20240124BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G09B21/00 D
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115150
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】池田 寛志
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA74
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555BE08
5E555CA42
5E555DA23
5E555DA24
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】白杖を用いるユーザが使用する移動支援装置について、ユーザの手と白杖との関係に基づいて適切に移動支援に係る通知を行えるものとすること。
【解決手段】移動支援装置10は、白杖Sを使用するユーザに使用され、撮像装置22を備えた端末20と、撮像装置22から取得した撮像画像に基づく処理を実行する処理部30と、処理部30による処理の結果に基づいてユーザの移動を支援する移動支援通知を行う通知部40と、を備えている。移動支援装置10は、処理部30が、処理の一部又は全部として、撮像画像に基づいて白杖S及びユーザの手Hの位置関係に係る情報を位置関係情報として取得する位置関係取得処理を行い、位置関係情報に基づく通知を、移動支援通知として実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白杖を使用するユーザに使用され、撮像装置を備えた端末と、
前記撮像装置から取得した撮像画像に基づく処理を実行する処理部と、
前記処理部による前記処理の結果に基づいて前記ユーザの移動を支援する移動支援通知を行う通知部と、
を備えており、
前記処理部が、前記処理の一部又は全部として、前記撮像画像に基づいて前記白杖及び前記ユーザの手の位置関係に係る情報を位置関係情報として取得する位置関係取得処理を行い、
前記位置関係情報に基づく通知を、前記移動支援通知として実行すること、を特徴とする移動支援装置。
【請求項2】
前記処理部が、前記位置関係取得処理により取得された前記白杖及び前記ユーザの手の距離を前記位置関係情報として導出可能なものであり、
前記距離の大きさに基づいて、前記通知部により前記移動支援通知を実行すること、を特徴とする請求項1に記載の移動支援装置。
【請求項3】
前記端末が、首又は肩に装着可能なウエアラブル端末、又は眼鏡型のウエアラブル端末であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の移動支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されている音声案内装置付白杖のような移動支援装置が提供されている。特許文献1の音声案内装置付白杖は、白杖の先端部が、点字ブロックの任意の部分に接することで、カメラが、点字ブロックのコード化された点状突起を撮影し、画像データが制御部に送られるものとされている。また、特許文献1の音声案内装置付白杖においては、制御部が画像データと対応する音声データに変換してスピーカーに伝送し、スピーカーで音声データが音声に変換され、例えば、警告情報としての階段です、という音声が伝達されるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3208458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている音声案内装置付白杖のような移動支援装置においては、点字ブロックのコード化された点状突起を備えた点字ブロックが存在していることを前提として利用可能なものである。そのため、特許文献1に記載されている音声案内装置付白杖は、コード化された点状突起を備えた点字ブロックが設けられていない場所においては用をなさないという問題がある。
【0005】
ここで、白杖は視覚障がい者が周囲の物体を触擦して障害物などを確認する歩行補助具であるところ、本発明者らは、白杖だけでは得られない障害物の識別を行うための補助的機能を担う移動支援装置の提供について検討を行った。本発明者らが鋭意検討した結果、音声などでユーザの移動を支援するための通知を行えるものとすれば、ユーザの移動に係る安全性の向上に貢献できるとの知見に至った。その反面、移動支援装置が白杖を用いるユーザが使用するといった前提条件のもとで効果を発揮するものである以上、ユーザの手元から白杖が離れた、前提条件に反した状態で移動支援装置が使用されてしまうと、移動支援装置による効果を十分に発揮できないばかりか、想定に反した予期し得ない事態になりかねない。
【0006】
そこで本発明は、白杖を用いるユーザが使用する移動支援装置について、ユーザの手と白杖との関係に基づいて適切に移動支援に係る通知を行える移動支援装置の実現を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の移動支援装置は、白杖を使用するユーザに使用され、撮像装置を備えた端末と、前記撮像装置から取得した撮像画像に基づく処理を実行する処理部と、前記処理部による前記処理の結果に基づいて前記ユーザの移動を支援する移動支援通知を行う通知部と、を備えており、前記処理部が、前記処理の一部又は全部として、前記撮像画像に基づいて前記白杖及び前記ユーザの手の位置関係に係る情報を位置関係情報として取得する位置関係取得処理を行い、前記位置関係情報に基づく通知を、前記移動支援通知として実行すること、を特徴とするものである。
【0008】
本発明の移動支援装置は、端末が備える撮像装置から取得した撮像画像に基づいて、処理部が位置関係取得処理を実行することにより、白杖及びユーザの手の位置関係を取得することができる。また、本発明の移動支援装置は、位置関係取得処理の結果に基づいて通知部が移動支援通知を行うことにより、ユーザの移動を支援することができる。従って、本発明の移動支援装置は、ユーザの手と白杖との関係に基づいて適切に移動支援に係る通知を行うことができる。
【0009】
(2)本発明の移動支援装置は、前記処理部が、前記位置関係取得処理により取得された前記白杖及び前記ユーザの手の距離を前記位置関係情報として導出可能なものであり、前記距離の大きさに基づいて、前記通知部により前記移動支援通知を実行すること、を特徴とするものであると良い。
【0010】
本発明の移動支援装置は、処理部における位置関係取得処理によって位置関係情報として導出された白杖及びユーザの手の距離の大きさに基づいて適切な移動支援通知を実行することができる。
【0011】
(3)本発明の移動支援装置は、前記距離の大きさが所定範囲を超えることを条件として、前記白杖の利用を促進するための通知を前記移動支援通知として前記通知部によって行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0012】
本発明の移動支援装置は、かかる構成とすることにより、白杖を用いるユーザが使用するといった前提条件に反して、ユーザの手元から白杖が離れた状態で使用されてしまうのを抑制することができる。
【0013】
(4)本発明の移動支援装置は、サーバと通信可能な通信部を有し、前記サーバにおいて前記処理部が構成されており、前記処理部と前記端末との間において、前記通信部を介して前記撮像画像、及び前記位置関係情報に係る情報通信を行えること、を特徴とするものであると良い。
【0014】
本発明の移動支援装置は、かかる構成とすることにより、処理部において行われる処理を端末ではなくサーバにおいて行わせることができる。これにより、本発明の移動支援装置は、負荷の高い撮像画像に基づく処理をサーバにおいて実行させ、端末側における情報処理の負荷を最小限に抑制できる。
【0015】
(5)本発明の移動支援装置は、前記端末が、首又は肩に装着可能なウエアラブル端末であること、を特徴とするものであると良い。
【0016】
本発明の移動支援装置は、かかる構成とすることにより、白杖を手に持つユーザが負担を感じることなく使用可能なものとすることができる。
【0017】
(6)本発明の移動支援装置は、前記端末が、眼鏡型のウエアラブル端末であること、を特徴とするものであると良い。
【0018】
本発明の移動支援装置は、かかる構成とすることにより、白杖を手に持つユーザが負担を感じることなく使用可能なものとすることができる。
【0019】
(7)本発明の移動支援装置は、前記撮像装置から取得した撮像画像に基づいて、前記ユーザの移動予測経路上の障害物の存在を検知して報知可能なものであること、を特徴とするものであると良い。
【0020】
本発明の移動支援装置は、かかる構成とすることにより、白杖だけでは得られない障害物の存在を検知してユーザに認識させることにより、ユーザの移動を適切に支援可能なものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記課題を解決した移動支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る移動支援装置の斜視図である。
図2図1の移動支援装置の装置構成を示すブロック図である。
図3】(a)は白杖が手に把持されている状態を示す概念図、(b)は白杖が手から離れている状態を示す概念図
図4図1の移動支援装置の使用開始時における動作を示すフローチャートである。
図5図1の移動支援装置の使用中における動作を示すフローチャートである。
図6】変形例に係る移動支援装置の装置構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る移動支援装置10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下左右等の位置関係については、特に断りのない限り、図示した姿勢を基準として説明する。
【0024】
図1に示した移動支援装置10は、白杖Sを使用するユーザの移動を支援するためのものである。移動支援装置10は、ユーザが白杖Sすることを前提条件として補助的に使用されるものである。図2に示すように、移動支援装置10は、大別して端末20、処理部30、通知部40を備えている。
【0025】
端末20は、白杖Sを使用するユーザが使用するものである。端末20は、撮像装置22やバッテリー24を具備している。撮像装置22やバッテリー24は、端末20をなす筐体の内部に収容されている。端末20は、ユーザが負担を感じることなく、安定的に装着可能なものであると良い。例えば、端末20は、首又は肩に装着可能なウエアラブル端末や、眼鏡型のウエアラブル端末等とすると良い。図1に示す例では、端末20は、首に装着可能なウエアラブル端末とされている。また、端末20は、使用状態においてユーザの前方側の領域を撮影可能なように撮像装置22を組み込んだものとされている。端末20は、バッテリー24を具備しており、バッテリー24から供給される電力によって撮像装置22や処理部30、通知部40等の移動支援装置10を構成する各部を作動させることができる。
【0026】
処理部30は、端末20が備える撮像装置22から取得した撮像画像に基づく処理を実行可能なものである。処理部30は、端末20をなす筐体の内部に収容されている。処理部30は、撮像画像に基づく処理の一部又は全部として、位置関係取得処理を行う。
【0027】
具体的には、処理部30は、22から取得した撮像画像データに基づき、撮像画像内に写っている白杖S及びユーザの手Hを特定し、撮影画像内における白杖S及び手Hとして認識されたものの位置座標に基づいて白杖S及び手Hの位置関係に係る情報(位置関係情報)を取得する処理を行う。本実施形態では、処理部30は、位置関係取得処理により、白杖S及び手Hの距離を位置関係情報として取得する処理を行う。具体的には、図3において例示するように、処理部30は、画像マッチング等の手法により白杖S及び手Hが存在する領域を認識する。処理部30は、白杖Sが存在する領域、及び手Hが存在する領域の距離を白杖S及び手Hの距離として認識する。また、処理部30は、白杖S及び手Hの距離の大きさが所定範囲を超えるか否かを判定条件として、白杖Sが手Hから離れた位置にあるのか否かを判定する処理(白杖把持判定処理)を行う。処理部30は、白杖S及び手Hの距離の大きさが所定範囲を超えることを条件として、白杖Sが手Hから離れた位置にあるとの判定を行う。処理部30は、白杖S及び手Hの距離の大きさが所定範囲以下であることを条件として、白杖Sが手Hに把持された状態であるとの判定を行う。
【0028】
処理部30は、撮像画像に基づく処理として、上述した位置関係取得処理に加えて、他の処理を行うものとすることができる。本実施形態では、処理部30は、撮像装置22から取得した撮像画像に基づいて、ユーザの移動予測経路上の障害物の存在を検出する処理(障害物検出処理)を行う等して、ユーザの移動(歩行)を支援するうえで必要な情報(移動支援情報)を撮影画像に基づいて導出する処理を行う。
【0029】
通知部40は、処理部30による処理の結果に基づいてユーザの移動を支援する移動支援通知を行う。通知部40は、報知情報生成部42、出力部44を有する。
【0030】
報知情報生成部42は、通知部40により行われる移動支援通知に係る情報を生成する処理を行うものである。報知情報生成部42は、障害物の存在を通知する障害物存在通知や、白杖Sの使用を促す白杖把持警告通知等の通知情報を生成できる。
【0031】
具体的には、報知情報生成部42は、処理部30による障害物検出処理により、ユーザの移動予測経路上における障害物の存在が検出された場合に、障害物の存在を報知するための通知情報を生成する。また、報知情報生成部42は、処理部30による位置関係取得処理により取得された白杖S及びユーザの手Hの位置関係に係る位置関係情報に基づいて、白杖Sの使用を促すための通知情報を生成する。さらに詳細には、報知情報生成部42は、処理部30による白杖把持判定処理の結果、白杖Sが把持されておらず、手Hから離れた位置にあるとの判定がなされることを条件として、白杖Sの使用(把持)を促すための通知情報を生成する。
【0032】
出力部44は、報知情報生成部42により生成された通知情報を出力するためのものである。出力部44は、例えばスピーカーによって音声により通知情報を出力するもの、バイブレータによって振動により通知情報を出力するもの等とすることができる。本実施形態では、出力部44は、スピーカーによって音声により通知情報を出力可能なものとされている。
【0033】
上述した移動支援装置10は、使用開始時に図4に示したフローに則って動作する。また、移動支援装置10は、使用中に図5に示したフローに則って動作する。以下、移動支援装置10の使用開始時、及び使用中における動作について、図4及び図5参照しつつ詳細に説明する。
【0034】
≪移動支援装置10の使用開始時における動作フロー≫
(ステップ1-1)
図4に示すように、移動支援装置10の使用開始時には、先ずステップ1-1において撮像装置22によりユーザの前方側の領域を撮影して撮像画像を取得する。その後、制御フローは、ステップ1-2に進められる。
【0035】
(ステップ1-2)
ステップ1-2において、処理部30は、撮像装置22によって取得された撮像画像に係るデータ(撮像画像データ)に基づき、撮像画像における白杖S及びユーザの手Hを特定するための画像処理を行う。その後、制御フローは、ステップ1-3に進められる。
【0036】
(ステップ1-3)
ステップ1-3において、処理部30は、撮像画像に手Hが存在しているか否かの判定を行う。ここで手Hの存在が確認された場合には、制御フローがステップ1-4に進められる。一方、手Hの存在が確認されない場合には、制御フローが後述するステップ1-8に進められる。
【0037】
(ステップ1-4)
ステップ1-4において、処理部30は、撮像画像に白杖Sが存在しているか否かの判定を行う。ここで白杖Sの存在が確認された場合には、制御フローがステップ1-5に進められる。一方、白杖Sの存在が確認されない場合には、制御フローが後述するステップ1-8に進められる。
【0038】
(ステップ1-5)
ステップ1-5において、処理部30は、ユーザの手Hに白杖Sが把持されているか否かを判定する処理(白杖把持判定処理)を行う。本実施形態では、処理部30は、手Hと白杖Sの位置関係に係る情報(位置関係情報)を導出する処理を行う。本実施形態では、処理部30は、ステップ1-3において撮像画像中に確認された手Hの位置座標、及びステップ1-4において撮像画像中に確認された白杖Sの位置座標に基づき、手Hと白杖Sの距離を位置関係情報として取得する処理を行う。処理部30は、手Hと白杖Sの距離が、予め規定されている所定範囲を超えるか否かを判定条件として、白杖把持判定処理を行う。処理部30は、白杖S及び手Hの距離の大きさが所定範囲以下であることを条件として、白杖Sが手Hに把持された状態であるとの判定を行う。この場合、制御フローは、ステップ1-6に進められる。一方、処理部30は、白杖S及び手Hの距離の大きさが所定範囲を超えることを条件として、白杖Sが手Hから離れた位置にあるとの判定を行う。この場合、制御フローは、後述するステップ1-8に進められる。
【0039】
(ステップ1-6)
制御フローがステップ1-6に進んだ場合は、ユーザの手Hによって白杖Sが把持されており、改めて白杖Sの使用(把持)を促す必要がないものと考えられる。そのため、この場合には、通知部40によって白杖Sの使用(把持)を促すための通知が行われることなく、制御フローがステップ1-7に進められる。
【0040】
(ステップ1-7)
制御フローがステップ1-7に進んだ場合には、移動支援装置10による移動支援を開始しても問題ないと想定される。そのため、制御フローがステップ1-7に移行した場合には、図5に係る制御フローによる移動支援を開始させる。
【0041】
(ステップ1-8)
一方、上述したステップ1-3において手Hの存在が確認されない場合や、ステップ1-4において白杖Sの存在が確認されない場合、あるいはステップ1-5において白杖Sを把持していない可能性が高いとの判定がなされた場合には、白杖Sを使用することなく移動支援装置10が単独で使用されてしまう可能性がある。そのため、通知部40は、報知情報生成部42において、白杖Sの使用を促すための通知情報を生成させ、出力部44からユーザに向けて出力させる。その後、制御フローは、ステップ1-9に進められる。
【0042】
(ステップ1-9)
制御フローがステップ1-9に進んだ場合には、手Hに白杖Sが把持されていない可能性が高い。そのため、この場合には、図5に係る制御フローによる移動支援が開始されず、制御フローがステップ1-1に戻される。
【0043】
≪移動支援装置10の使用開始後における動作フロー≫
(ステップ2-1)
図5に示すように、移動支援装置10の使用開始後には、先ずステップ2-1において、撮像装置22によりユーザの前方側の領域を撮影して撮像画像を取得する。その後、制御フローは、ステップ2-2に進められる。
【0044】
(ステップ2-2)
ステップ2-2において、処理部30は、撮像装置22によって取得された撮像画像に係るデータ(撮像画像データ)に基づき、撮像画像における白杖S及びユーザの手Hを特定するための画像処理を行う。その後、制御フローは、ステップ2-3に進められる。
【0045】
(ステップ2-3)
ステップ2-3において、撮像装置22によって取得された撮像画像に係るデータ(撮像画像データ)に基づき、ユーザの移動(歩行)を支援するための通知(移動支援通知)を行うための処理が行われる。
【0046】
本実施形態の移動支援装置10は、処理部30によりユーザの移動予測経路上の障害物の存在を検出する処理(障害物検出処理)を行う等して、ユーザの移動(歩行)を支援するうえで必要な情報(支援情報)を撮影画像に基づいて導出する処理を行う。また、移動支援装置10は、処理部30により導出された移動支援情報に基づき、通知部40からユーザに向けて移動支援情報を音声等によって出力する処理を行う。本実施形態では、処理部30により、ユーザの移動予測経路上における障害物の存在を検出するための障害物検出処理を行う。また、障害物検出処理により障害物が検出された場合には、障害物の存在を報知するための通知情報が生成され、通知部40からユーザに向けて移動支援情報として出力する処理が行われる。その後、制御フローはステップ2-4に進められる。
【0047】
(ステップ2-4)
制御フローがステップ2-4に進むと、ステップ2-1に係る制御フローが開始してからの経過時間tが所定時間t1に到達しているか否かの確認が行われる。経過時間tの計測は、移動支援装置10が備えるタイマ(図示せず)によって計測される。ここで、経過時間tが所定時間t1に到達していない場合には、制御フローがステップ2-1に戻される。一方、経過時間tが所定時間t1以上となっている場合には、制御フローがステップ2-5に進められる。
【0048】
(ステップ2-5)
制御フローがステップ2-5に進むと、処理部30は、撮像画像に手Hが存在しているか否かの判定を行う。ここで手Hの存在が確認された場合には、制御フローがステップ2-6に進められる。一方、手Hの存在が確認されない場合には、制御フローが後述するステップ2-10に進められる。
【0049】
(ステップ2-6)
制御フローがステップ2-6に進むと、処理部30は、撮像装置22により取得された撮像画像に白杖Sが存在しているか否かの判定を行う。ここで白杖Sの存在が確認された場合には、制御フローがステップ2-7に進められる。一方、白杖Sの存在が確認されない場合には、制御フローが後述するステップ2-10に進められる。
【0050】
(ステップ2-7)
制御フローがステップ2-7に進むと、処理部30は、白杖把持判定処理を実行する。ステップ2-5における白杖把持判定処理は、上述したステップ1-5と同様の手法により行われる。白杖把持判定処理により、白杖Sが手Hに把持された状態であるとの判定が行われた場合、制御フローは、ステップ2-8に進められる。一方、白杖Sが手Hから離れた位置にあるとの判定が行われた場合、制御フローは、後述するステップ2-10に進められる。
【0051】
(ステップ2-8)
制御フローがステップ2-8に進んだ場合は、引き続き、ユーザの手Hによって白杖Sが把持されている状態である。そのため、この場合には、通知部40によって白杖Sの使用(把持)を促すための通知が行われることなく、制御フローがステップ2-9に進められる。
【0052】
(ステップ2-9)
制御フローがステップ2-9に進んだ場合には、上述したタイマ(図示せず)により計測されている経過時間tをリセットする処理が行われる。その後、制御フローがステップ2-1に戻される。
【0053】
(ステップ2-10)
一方、上述したステップ2-5において手Hの存在が確認されない場合や、ステップ2-6において白杖Sの存在が確認されない場合、あるいはステップ2-7において白杖Sを把持していない可能性が高いとの判定がなされた場合には、白杖Sを使用することなく移動支援装置10が単独で使用されている状態である可能性がある。そのため、通知部40は、報知情報生成部42において、白杖Sの使用を促すための通知情報を生成させ、出力部44からユーザに向けて出力させる。その後、制御フローは、ステップ2-11に進められる。
【0054】
(ステップ2-11)
制御フローがステップ2-11に進んだ場合には、手Hに白杖Sが把持されていない可能性が高い。そのため、この場合には、移動支援装置10による移動支援を停止状態とし、図5に係る制御フローを終了させる。
【0055】
上述したように、図5に示した移動支援装置10の使用開始後における動作フローにおいては、ステップ2-1~ステップ2-3に係る制御フローに則って移動支援通知を常時行いつつ、所定時間t1が経過するごとにステップ2-5~ステップ2-11に係る制御フローに則ってユーザが白杖Sを手放すことなく使用している状態であるかを確認することとしている。移動支援装置10は、使用開始後にユーザが白杖Sを手放した状態になると、移動支援装置10による移動支援を中止することにより、白杖Sが使用されない状況において移動支援装置10が単独で使用されるのを抑制可能とされている。
【0056】
≪移動支援装置10による効果について≫
上述した移動支援装置10は、以下の(a)~(e)のような特徴的構成を備えている。そのため、移動支援装置10は、以下のような従来技術では達し得ない特有の効果を奏することができる。
【0057】
(a)本実施形態の移動支援装置10は、白杖Sを使用するユーザに使用され、撮像装置22を備えた端末20と、撮像装置22から取得した撮像画像に基づく処理を実行する処理部30と、処理部30による処理の結果に基づいてユーザの移動を支援する移動支援通知を行う通知部40と、を備えている。また、移動支援装置10は、処理部30が、処理の一部又は全部として、撮像画像に基づいて白杖S及びユーザの手Hの位置関係に係る情報を位置関係情報として取得する位置関係取得処理を行い、位置関係情報に基づく通知を、移動支援通知として実行するものとされている。
【0058】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(a)のように、端末20が備える撮像装置22から取得した撮像画像に基づいて、処理部30が位置関係取得処理を実行することにより、白杖S及びユーザの手Hの位置関係を取得することができる。また、移動支援装置10は、位置関係取得処理の結果に基づいて通知部40が移動支援通知を行うことにより、ユーザの移動を支援することができる。従って、移動支援装置10は、ユーザの手Hと白杖Sとの関係に基づいて適切に移動支援に係る通知を行うことができる。
【0059】
(b)本実施形態の移動支援装置10は、処理部30が、位置関係取得処理により取得された白杖S及びユーザの手Hの距離を位置関係情報として導出可能なものであり、距離の大きさに基づいて、通知部40により移動支援通知を実行するものとされている。
【0060】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(b)のような構成とされているため、処理部30における位置関係取得処理によって位置関係情報として導出された白杖S及びユーザの手Hの距離の大きさに基づいて適切な移動支援通知を実行することができる。
【0061】
(c)本実施形態の移動支援装置10は、距離の大きさが所定範囲を超えることを条件として、白杖Sの利用を促進するための通知を移動支援通知として通知部40によって行うこと、を特徴とするものである。
【0062】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(c)のような構成とされているため、白杖Sを用いるユーザが使用するといった前提条件に反して、ユーザの手元から白杖Sが離れた状態で使用されてしまうのを抑制することができる。
【0063】
(d)本実施形態の移動支援装置10は、端末20が、首又は肩に装着可能なウエアラブル端末とされている。
【0064】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(d)のような構成とされているため、白杖Sを手Hに持つユーザが負担を感じることなく使用できる。
【0065】
(e)本実施形態の移動支援装置10は、撮像装置22から取得した撮像画像に基づいて、ユーザの移動予測経路上の障害物の存在を検知して報知可能なものとされている。
【0066】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(e)のような構成とされているため、白杖Sだけでは得られない障害物の存在を検知してユーザに認識させることにより、ユーザの移動を適切に支援可能することができる。
【0067】
≪変形例≫
なお、上述した移動支援装置10は、本発明の一実施形態を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜構成を変更することが可能である。例えば、移動支援装置10は、上述した(a)~(e)に係る全ての構成を備えたものに限らず、これらの構成のいずれかを省略したり、他の構成に置換したりしたものとすることも可能である。
【0068】
具体的には、本実施形態の移動支援装置10は、上記(b)のように白杖S及び手Hの距離の大きさに基づいて、白杖Sが手Hから離れることなく使用されているか否かの判定基準として移動支援通知を実行するものとされているが、本発明はこれに限定されない。例えば、白杖Sが手Hから離れているか否かの判定基準として、白杖S及び手Hの距離の大きさに代えて、あるいはこれに加えて他の判定基準を設けても良い。具体的には、移動支援装置10は、従来公知のRFIDタグとRFIDリーダのいずれか一方を白杖Sに設け、他方をユーザが所持することにより、RFIDタグとRFIDリーダを用いた認証を行うことを判定基準の一部又は全部としたものとすることが可能である。また、移動支援装置10は、RFIDタグ及びRFIDリーダの組み合わせに代えて、あるいは加えて、BlueTooth(登録商標)等の通信方法によって通信可能なタグとリーダを用いた認証を行うことようにすることが可能である。
【0069】
また、本実施形態の移動支援装置10は、上記(c)のように白杖Sと手Hの距離の大きさが所定範囲を超えることを条件として、白杖Sの利用を促進するための通知を移動支援通知として行うものであるが、本発明はこれに限定されない。上述のようにRFIDタグとRFIDリーダを用いた認証を行う場合や、BlueTooth(登録商標)等の通信方法によって通信可能なタグとリーダを用いた認証を行う場合には、認証不能な状態になることを条件として白杖Sの利用を促進するための通知を移動支援通知として行うものとすることができる。
【0070】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(d)のように、端末20が首又は肩に装着可能なウエアラブル端末とされた例を示したが、本発明はこれに限定されない。具体的には、本実施形態の移動支援装置10は、例えば端末20が眼鏡型のウエアラブル端末によって構成されるものとすると良い。移動支援装置10は、かかる構成とすることによっても、白杖Sを手に持つユーザが負担を感じることなく使用可能なものとすることができる。
【0071】
本実施形態の移動支援装置10は、上記(e)のように、撮像装置22から取得した撮像画像に基づいて、ユーザの移動予測経路上の障害物の存在を検知して報知可能なものとした例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、移動支援装置10は、撮像装置22から取得した撮像画像に代えて、あるいはこれに加えて、例えば各種のセンサ類によって障害物の存在を検知して報知可能なものとしたもの等とすることも可能である。
【0072】
移動支援装置10は、上述した(a)~(e)に係る構成以外についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態において例示したものとは異なるものとすることが可能である。例えば、図5において例示した移動支援装置10の使用開始後における動作フローにおいては、タイマ(図示せず)によって時間を計測し、経過時間tが所定時間t1に到達する度に白杖Sを手放した状態になっていないか確認する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、移動支援装置10の使用開始後における動作フローにおいて、白杖Sを手放した状態になっていないかを常時確認するようにしたり、所定時間t1に到達した場合に加えてあるいは代えて、時間以外の特定の条件を満足する状態になった場合に白杖Sを手放した状態になっていないかを確認するようにしても良い。上述した実施形態において、移動支援装置10は、撮像画像中における白杖Sと手Hの距離等に基づいて白杖Sを把持した手Hを検出していると判定されたときに移動支援通知を継続的に行うものであるが、本発明はこれに限定されず、手Hに白杖Sが把持されているとの判定がなされた後、一定時間のみ移動支援通知を行うようにすることも可能でる。
【0073】
上述した移動支援装置10は、撮像装置22を備えた端末20に処理部30や通知部40を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、撮像装置22を備えた端末20とは別に、処理部30や通知部40を備えた第二の端末を設け、端末20と第二の端末との間でBlueTooth(登録商標)等の通信方法によって撮像装置22において取得した撮像画像データを処理部30に送信して処理するものとすることが可能である。また、移動支援装置10は、処理部30を端末20側ではなく、いわゆるクラウドサバーのようなサーバにおいて処理部30を構成したものとすることも可能である。具体的には図6及び以下の(f)に示すような構成とすることが可能である。
【0074】
(f)本実施形態の移動支援装置10は、サーバと通信可能な通信部50を有し、サーバにおいて処理部30が構成されており、処理部30と端末20との間において、通信部50を介して撮像画像、及び位置関係情報に係る情報通信を行えるものとしても良い。
【0075】
移動支援装置10は、上記(f)のような構成(図6参照)とすることにより、処理部30において行われる処理を端末20ではなくサーバにおいて行わせることができる。これにより、本実施形態の移動支援装置10は、負荷の高い撮像画像に基づく処理をサーバにおいて実行させ、端末20側における情報処理の負荷を最小限に抑制できる。
【0076】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、白杖とともに使用される移動支援装置全般において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 移動支援装置
20 端末
22 撮像装置
30 処理部
40 通知部
50 通信部
H 手
S 白杖
t 経過時間
t1 所定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6