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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131642
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240920BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 451
B41J29/393 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042039
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳明
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB27
2C056EB36
2C056EB40
2C056EB52
2C056EC69
2C056EC74
2C056FA10
2C061AQ05
2C061KK18
2C061KK26
(57)【要約】
【課題】吐出不良の検出精度の向上に資するテストパターンが求められている。
【解決手段】印刷装置は、第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が第1方向と交差する第2方向に沿って配列された印刷ヘッドに媒体へ液体を吐出させてテストパターンを印刷する制御部を備え、テストパターンは、第2方向に沿うキャリッジの移動と共に印刷ヘッドが液体を吐出する主走査と、副走査とにより印刷され、制御部は、第1ノズル列により形成される第1線群、第2ノズル列により形成される第2線群、第3ノズル列により形成される第3線群、および第4ノズル列により形成される第4線群を含み、第1線群および第3線群と、第2線群および第4線群と、が第1方向においてノズル間隔よりも短い第1距離だけずれており、第2方向から見て、第1線群と第3線群とが重なり、第2線群と第4線群とが重なるように、テストパターンを印刷する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルが所定のノズル間隔で第1方向に並ぶノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配列された印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを搭載し、前記第2方向に沿って往復移動可能なキャリッジと、
前記第1方向における媒体と前記印刷ヘッドとの相対移動を行う移動部と、
前記印刷ヘッドに前記ノズルから前記媒体へ液体を吐出させてテストパターンを印刷する制御部と、を備え、
前記テストパターンは、前記第2方向に沿う前記キャリッジの移動と共に前記印刷ヘッドが前記ノズルから液体を吐出する主走査と、前記第1方向における前記相対移動である副走査とにより印刷され、
前記制御部は、
前記ノズル列の各ノズルからの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、前記第1ノズル列により形成される第1線群、前記第2ノズル列により形成される第2線群、前記第3ノズル列により形成される第3線群、および前記第4ノズル列により形成される第4線群、を含み、
前記第1線群および前記第3線群と、前記第2線群および前記第4線群とが、前記第1方向において前記ノズル間隔よりも短い第1距離だけずれており、
前記第2方向から見て、前記第1線群と前記第3線群とが重なり、前記第2線群と前記第4線群とが重なるように、前記テストパターンを印刷する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1距離を前記ノズル間隔の半分の距離として前記テストパターンを印刷する、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドには、前記第1ノズル列、前記第2ノズル列、前記第3ノズル列および前記第4ノズル列を含むn列の前記ノズル列が、前記第2方向に沿って配列されており、
前記制御部は、
前記n列の前記ノズル列のそれぞれに前記線群を形成させてn個の前記線群を有する前記テストパターンを印刷する場合に、
前記nが偶数であれば、前記n個の前記線群のうち、n/2個の前記線群と、残りの前記線群とが、前記第1方向において前記第1距離だけずれるように前記テストパターンを印刷し、
前記nが奇数であれば、前記n個の前記線群のうち、n/2±1個の前記線群と、残りの前記線群とが、前記第1方向において前記第1距離だけずれるように前記テストパターンを印刷する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
2回の前記主走査と、2回の前記主走査の間に実行する1回の前記副走査とにより前記テストパターンを印刷する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印刷ヘッドを制御して、前記ノズル列内で前記第1方向において隣り合う前記ノズルが形成する前記線同士を前記第2方向にずらして形成させる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
液体を吐出する複数のノズルが所定のノズル間隔で第1方向に並ぶノズル列を有する印刷ヘッドに前記ノズルから媒体へ液体を吐出させてテストパターンを印刷する印刷方法であって、
前記印刷ヘッドには、前記ノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配列されており、
前記第2方向に沿って移動する前記印刷ヘッドが前記ノズルから液体を吐出する主走査と、前記第1方向における前記媒体と前記印刷ヘッドとの相対移動である副走査とにより前記テストパターンを印刷する印刷工程を有し、
前記印刷工程では、
前記ノズル列の各ノズルからの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、前記第1ノズル列により形成される第1線群、前記第2ノズル列により形成される第2線群、前記第3ノズル列により形成される第3線群、および前記第4ノズル列により形成される第4線群、を含み、
前記第1線群および前記第3線群と、前記第2線群および前記第4線群とが、前記第1方向において前記ノズル間隔よりも短い第1距離だけずれており、
前記第2方向から見て、前記第1線群と前記第3線群とが重なり、前記第2線群と前記第4線群とが重なるように、前記テストパターンを印刷する、ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストパターンを印刷可能な印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出可能な複数のノズルが並ぶノズル列を有する印刷ヘッドを用いて印刷を行うインクジェットプリンターでは、ノズル毎に吐出不良が発生し得る。吐出不良には、ノズルの詰まりによりノズルから液体のドットが吐出されないドット抜けの他、ドットの着弾位置が理想的でない着弾位置ずれや、吐出されるドットが大き過ぎたり小さ過ぎたりするドット太りやドット細り等がある。
【0003】
また、吐出不良が生じている吐出口を特定するためのテストパターンを記録ヘッドが記録し、テストパターンを読取装置により読み取って得られた画像データを解析することで、吐出不良が生じている吐出口を特定する技術が開示されている(特許文献1参照)。前記文献1のテストパターンによれば、ノズル列の複数のノズルそれぞれにより記録される各直線画像が、記録媒体の搬送方向におけるノズル間隔で並んで記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016‐221835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テストパターンが記録された原稿の読取装置による読取時に、原稿の搬送速度のばらつき等の搬送誤差が生じて、得られる画像データにおける線画像の太さや間隔に読取誤差が表れることがある。そのため、画像データの解析に際しては、このような読取誤差を除去するための補正を画像データに施した上で解析を実行しなければ、吐出不良を正確に検出することができない。
【0006】
しかしながら、従来のテストパターンでは、ノズルとノズルとの間には何もパターンが記録されない。そのため、テストパターンを読み取った画像データを得ても、このようなノズルとノズルとの間に対応して何も記録されていない領域に関しては読取誤差の有無が不明であり、画像データに対して上述の補正を適切に行うことが難しい。
また、従来のテストパターンでは、テストパターンが記録された原稿が傾いた状態で読み取られた場合には、線画像の太さを他の線画像と比較して評価することが難しくなることが多く、そのためドットの太り、細りを正確に検出することが難しかった。
このような課題に鑑みて、吐出不良の検出精度の向上に資するテストパターンを印刷することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
印刷装置は、液体を吐出する複数のノズルが所定のノズル間隔で第1方向に並ぶノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配列された印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを搭載し、前記第2方向に沿って往復移動可能なキャリッジと、前記第1方向における媒体と前記印刷ヘッドとの相対移動を行う移動部と、前記印刷ヘッドに前記ノズルから前記媒体へ液体を吐出させてテストパターンを印刷する制御部と、を備え、前記テストパターンは、前記第2方向に沿う前記キャリッジの移動と共に前記印刷ヘッドが前記ノズルから液体を吐出する主走査と、前記第1方向における前記相対移動である副走査とにより印刷され、前記制御部は、前記ノズル列の各ノズルからの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、前記第1ノズル列により形成される第1線群、前記第2ノズル列により形成される第2線群、前記第3ノズル列により形成される第3線群、および前記第4ノズル列により形成される第4線群、を含み、前記第1線群および前記第3線群と、前記第2線群および前記第4線群と、が前記第1方向において前記ノズル間隔よりも短い第1距離だけずれており、前記第2方向から見て、前記第1線群と前記第3線群とが重なり、前記第2線群と前記第4線群とが重なるように、前記テストパターンを印刷する。
【0008】
液体を吐出する複数のノズルが所定のノズル間隔で第1方向に並ぶノズル列を有する印刷ヘッドに前記ノズルから媒体へ液体を吐出させてテストパターンを印刷する印刷方法であって、前記印刷ヘッドには、前記ノズル列である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が、前記第1方向と交差する第2方向に沿って配列されており、前記第2方向に沿って移動する前記印刷ヘッドが前記ノズルから液体を吐出する主走査と、前記第1方向における前記媒体と前記印刷ヘッドとの相対移動である副走査とにより前記テストパターンを印刷する印刷工程を有し、前記印刷工程では、前記ノズル列の各ノズルからの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、前記第1ノズル列により形成される第1線群、前記第2ノズル列により形成される第2線群、前記第3ノズル列により形成される第3線群、および前記第4ノズル列により形成される第4線群、を含み、前記第1線群および前記第3線群と、前記第2線群および前記第4線群とが、前記第1方向において前記ノズル間隔よりも短い第1距離だけずれており、前記第2方向から見て、前記第1線群と前記第3線群とが重なり、前記第2線群と前記第4線群とが重なるように、前記テストパターンを印刷する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置構成を簡易的に示す図。
図2】媒体と印刷ヘッドとの関係性を上方からの視点により示す図。
図3】テストパターンの印刷工程を示すフローチャート。
図4】本実施形態のテストパターンの例を示す図。
図5図5Aは本実施形態のテストパターンのスキャンデータを例示する図、図5Bは本実施形態のテストパターンの傾いたスキャンデータを例示する図。
図6図6Aは従来のテストパターンのスキャンデータを例示する図、図6Bは従来のテストパターンの傾いたスキャンデータを例示する図。
図7】本実施形態のテストパターンであって図4とは異なる例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、記憶部16、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19等を備える。IFは、インターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0012】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷装置10を制御する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0013】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。
【0014】
表示部13や操作受付部14は、印刷装置10の構成の一部であってもよいが、印刷装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部装置と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。外部装置とは、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末といった各種通信装置である。
【0015】
記憶部16は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブといった記憶装置により構成される。記憶部16は、制御部11が有するメモリーの一部であってもよい。また、記憶部16を制御部11の一部と解してもよい。記憶部16には、印刷装置10の制御に必要な各種情報が記憶される。
【0016】
搬送部17は、所定の「搬送方向」へ媒体を搬送するための手段であり、回転するローラーや、ローラー等を回転させるモーターを含む。搬送の上流、下流を、以下では単に、上流、下流と言う。媒体は、代表的には用紙であるが、用紙の他、生地やフィルム等、液体による印刷の対象となり得る様々な素材を媒体として採用可能である。また、搬送方向を「副走査方向」とも呼ぶ。搬送部17は、媒体をベルトやパレットに載せて搬送する機構であってもよい。副走査方向は「第1方向」に該当し、搬送部17は、第1方向における媒体と印刷ヘッド19との相対移動を行う「移動部」の具体例に該当する。この相対移動を「副走査」とも言う。
【0017】
キャリッジ18は、不図示のキャリッジモーターによる動力を受けて所定の「主走査方向」に沿って往復移動可能な機構である。主走査方向と副走査方向とは交差している。主走査方向と副走査方向との交差は、直交あるいはほぼ直交と解してよい。主走査方向は「第2方向」に該当する。キャリッジ18は印刷ヘッド19を搭載している。従って、印刷ヘッド19はキャリッジ18とともに、主走査方向に沿って往復移動する。印刷ヘッド19の移動とキャリッジ18の移動とは同義である。
【0018】
印刷ヘッド19は、液体のドットを吐出するための複数のノズル20を有する。ドットとは液滴である。以下では、液体はインクであるとして説明を続けるが、印刷ヘッド19は、インク以外の液体も吐出可能である。印刷ヘッド19は、画像を印刷するための印刷データに基づいてインク吐出を行う。知られているように、制御部11は、各ノズル20が備える不図示の駆動素子への駆動信号の印加を、印刷データに従って制御することで、各ノズル20からドットを吐出させたり吐出させなかったりして媒体へ画像を印刷する。印刷ヘッド19は、例えば、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インク等の各色インクを吐出可能である。むろん、印刷ヘッド19が吐出するインクはCMYKに限定されない。
【0019】
図2は、媒体30と印刷ヘッド19との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。キャリッジ18に搭載された印刷ヘッド19は、キャリッジ18とともに主走査方向D2の一端から他端への移動である往路移動や、他端から一端への移動である復路移動をする。図2では、ノズル面23におけるノズル20の配列の一例を示している。ノズル面23は、印刷ヘッド19の下面であり、媒体30と相対する面である。ノズル面23内の個々の小さな丸が個々のノズル20を表している。
【0020】
印刷ヘッド19は、インクカートリッジやインクタンク等と呼ばれる不図示の液体保持手段から各色のインクの供給を受けてノズル20から吐出する構成において、インク色別のノズル列26を備える。図2は、CMYKインクを吐出する印刷ヘッド19の例を示している。Cインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Cである。同様に、Mインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26M、Yインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Y、Kインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Kである。
【0021】
図2の例では、ノズル列26C,26M,26Y,26Kは、主走査方向D2に沿って配列されている。また、これら色別の複数のノズル列26は副走査方向D1において同じ位置に配設されている。1つのノズル列26は、副走査方向D1におけるノズル20同士の間隔である「ノズル間隔」が一定或いはほぼ一定とされた複数のノズル20により構成される。
【0022】
ノズル列26を構成する複数のノズル20が並ぶ方向を「ノズル並び方向」とも呼ぶ。図2の例では、ノズル並び方向は副走査方向D1と平行である。従って、ノズル列26を構成する複数のノズル20は、副走査方向D1に並んでいると言える。このような構成では、ノズル並び方向は主走査方向D2と直交する。ただし、ノズル並び方向は副走査方向D1に対して平行でなく斜めであってもよい。ノズル並び方向が副走査方向D1と平行であってもなくても、ノズル並び方向は主走査方向D2と交差していると言えるし、ノズル列26を構成する複数のノズル20は副走査方向D1において所定のノズル間隔で並んでいると言える。従って、本実施形態では、ノズル並び方向が副走査方向D1に対して斜めであっても、ノズル列26を構成する複数のノズル20は副走査方向D1にも並んでいると解釈する。
【0023】
主走査方向D2に沿ったキャリッジ18の移動と共に印刷ヘッド19がインクを吐出する動作を「主走査」あるいは「パス」と呼ぶ。また、パスとパスとの間に搬送部17が媒体30を決められた距離だけ下流へ搬送する動作を「紙送り」と呼ぶ。紙送りは、副走査の一種である。制御部11は、このように印刷ヘッド19、キャリッジ18、搬送部17を制御することで、パスと紙送りとを実行して、媒体30に2次元の画像を印刷する。本実施形態では、制御部11は、印刷ヘッド19にノズル20から媒体30へ液体を吐出させてテストパターンを印刷する。テストパターンは、このように印刷される画像の一種である。
【0024】
印刷ヘッド19は少なくとも4列のノズル列26を有する。印刷ヘッド19が有する、ある4列のノズル列26を識別するために、それぞれを、第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列、第4ノズル列とも呼ぶ。例えば、ノズル列26Cを第1ノズル列、ノズル列26Mを第2ノズル列、ノズル列26Yを第3ノズル列、ノズル列26Kを第4ノズル列と名付けてもよい。第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列、第4ノズル列は、主走査方向D2において、この順序で並んでいなくてもよい。そのため、例えば、ノズル列26Mを第1ノズル列、ノズル列26Yを第2ノズル列、ノズル列26Cを第3ノズル列、ノズル列26Kを第4ノズル列と名付けてもよい。つまり、第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列、第4ノズル列と、ノズル列26C,26M,26Y,26Kとの対応関係としては、どのような対応関係を採用してもよい。
【0025】
副走査は、搬送部17による媒体30の搬送ではなく、代わりに印刷ヘッド19が副走査方向D1と平行に上流へ移動することで実行してもよい。つまり、印刷装置10は、印刷ヘッド19を搭載したキャリッジ18を、主走査方向D2だけでなく副走査方向D1においても往復移動可能に支持する機構を有し、静止する媒体30上を印刷ヘッド19が2次元的に移動することで媒体30に対する印刷を実行するとしてもよい。この場合、キャリッジ18を副走査方向D1に沿って移動させる機構が、第1方向における媒体30と印刷ヘッド19との相対移動を行う移動部に該当する。
【0026】
図1に示す印刷装置10の構成は、一台のプリンターによって実現されてもよいし、互いに通信可能に接続した複数の装置により実現されてもよい。つまり、印刷装置10は、実態として印刷システム10であってもよい。印刷システム10は、例えば、制御部11や記憶部16として機能する印刷制御装置と、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19等を有するプリンターと、を含む。このような印刷装置10または印刷システム10により、本実施形態の印刷方法が実現される。
【0027】
2.テストパターン印刷:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行するテストパターンの印刷工程をフローチャートにより示している。フローチャートには示していないが、制御部11は、テストパターンの印刷工程に先立ち、テストパターンを印刷するための印刷データを取得する。テストパターンを表現する画像データであるテストパターン画像データは、例えば、記憶部16に予め保存されている。むろん、制御部11は、外部装置から通信IF15を通じてテストパターン画像データを取得してもよい。
【0028】
制御部11は、テストパターン画像データに対して、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理といった各種画像処理を適宜施して印刷データを生成する。ここでは、印刷データは、画素毎かつCMYKのインク色毎にドットの吐出または非吐出を規定したデータであるとする。ドットの吐出をドットオン、ドットの非吐出をドットオフとも言う。
【0029】
そして、制御部11は、テストパターンの印刷工程では、テストパターンを印刷するための印刷データに基づきテストパターンを媒体30へ印刷する。制御部11は概略、テストパターンを、ノズル列26の各ノズル20からの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、第1ノズル列により形成される第1線群、第2ノズル列により形成される第2線群、第3ノズル列により形成される第3線群、および第4ノズル列により形成される第4線群、を含み、第1線群および第3線群と、第2線群および第4線群とが、副走査方向D1においてノズル間隔よりも短い第1距離だけずれており、主走査方向D2から見て、第1線群と第3線群とが重なり、第2線群と第4線群とが重なるように、印刷する。
【0030】
ステップS100では、制御部11は、キャリッジ18および印刷ヘッド19を制御して、第1パスを実行する。本実施形態では、テストパターンを印刷するための2回のパスのうち先に実行するパスを第1パスと呼び、後に実行するパスを第2パスと呼ぶ。制御部11は、第1パスでは、第1ノズル列および第3ノズル列からインクを吐出させて、媒体30へ、第1線群および第3線群を形成させる。
【0031】
ステップS110では、制御部11は移動部、ここでは搬送部17を制御して、ノズル間隔より短い「第1距離」分の副走査、つまり媒体30の紙送りを実行させる。
そして、ステップS120では、制御部11は、キャリッジ18および印刷ヘッド19を制御して、第2パスを実行する。例えば、第1パスが往路移動に伴うインク吐出であれば、第2パスは、第1パスとは逆方向の復路移動に伴うインク吐出である。あるいは、キャリッジ18の往路移動による印刷と復路移動による印刷とのずれがテストパターンに表れないようにするために、第1パスおよび第2パスを、往路移動、復路移動のどちらか一方に統一してもよい。
【0032】
制御部11は、第2パスでは、第2ノズル列および第4ノズル列からインクを吐出させて、媒体30へ、第2線群および第4線群を形成させる。このように、テストパターンの印刷工程では、2回の主走査と、2回の主走査の間に実行する1回の副走査とによりテストパターンを印刷する。
【0033】
図4は、ステップS100~S120の結果として媒体30に印刷されたテストパターン40の例を示している。図4では、印刷ヘッド19と媒体30との位置関係が副走査方向D1において変化する様子も併せて示している。符号NPは、副走査方向D1において隣り合うノズル20同士のノズル間隔NPを示し、符号Lは、ノズル間隔NPよりも短い所定の第1距離Lを示している。一例として、制御部11は、第1距離Lをノズル間隔NPの半分の距離としてステップS110を実行する。
【0034】
符号19の隣に括弧書きで示す“P1”は、ステップS100の第1パスP1を意味し、“P2”は、ステップS120の第2パスP2を意味する。つまり図4では、第1パスP1実行時における印刷ヘッド19と媒体30との位置関係と、第2パスP2実行時における印刷ヘッド19と媒体30との位置関係とが、ステップS110の副走査により第1距離Lだけ変化したことを示している。
【0035】
図4では、一例として、ノズル列26Cが第1ノズル列、ノズル列26Mが第2ノズル列、ノズル列26Yが第3ノズル列、ノズル列26Kが第4ノズル列であるとする。第1パスP1では、ノズル列26Cが各ノズル20からCインクを吐出することで第1線群41が媒体30に形成されるとともに、ノズル列26Yが各ノズル20からYインクを吐出することで第3線群43が媒体30に形成される。第1線群41は、ノズル列26Cの各ノズル20がそれぞれ吐出するCインクにより形成される複数の線41aの集合である。第3線群43は、ノズル列26Yの各ノズル20がそれぞれ吐出するYインクにより形成される複数の線43aの集合である。
【0036】
線41a,43aや、後述の線42a,44aは、それぞれが1つのノズル20により形成される、主走査方向D2に長さ成分を有する線画像である。このような線は実線であることが好適であるが、例えば破線であってもよい。線を罫線と呼んでもよい。同じ線群内の各線は、当該線群を形成したノズル列26の各ノズル20と同じように、ノズル間隔NPに相当する間隔で副走査方向D1において配置されている。第1線群41と第3線群43とは、主走査方向D2において離間しており、副走査方向D1においては同じ位置に形成される。つまり、主走査方向D2から見て、第1線群41と第3線群43とは重なっている。ここで言う、重なるとは、完全に重なるだけでなく一部同士が重なる状態を含んでもよい。
【0037】
同様に、第2パスP2では、ノズル列26Mが各ノズル20からMインクを吐出することで第2線群42が媒体30に形成されるとともに、ノズル列26Kが各ノズル20からKインクを吐出することで第4線群44が媒体30に形成される。第2線群42は、ノズル列26Mの各ノズル20がそれぞれ吐出するMインクにより形成される複数の線42aの集合である。第4線群44は、ノズル列26Kの各ノズル20がそれぞれ吐出するKインクにより形成される複数の線44aの集合である。第2線群42と第4線群44とは、主走査方向D2において離間しており、副走査方向D1においては同じ位置に形成される。つまり、主走査方向D2から見て、第2線群42と第4線群44とは重なっている。
【0038】
このように、テストパターン40は、第1線群41、第3線群43、第2線群42、第4線群44を含んでいる。図4から明らかなように、第1線群41および第3線群43と、第2線群42および第4線群44とは、ステップS110の副走査に起因して、副走査方向D1において第1距離Lだけずれた位置に形成される。従って、本実施形態では、テストパターン40全体で見ると、副走査方向D1において、ノズル20の密度の2倍の密度で線画像が印刷される。
【0039】
第1線群41、第3線群43、第2線群42、第4線群44は主走査方向D2に沿って並んでいる。図4の例では、主走査方向D2の一端側から他端側に向けて第1線群41、第2線群42、第3線群43、第4線群44の順序で配置されているが、複数の線群の主走査方向D2における配置の順序は図示する通りである必要は無い。
【0040】
また、図4から解るように、同じ線群の中で副走査方向D1において隣り合う線は、主走査方向D2にずれて形成されている。つまり、制御部11は、ステップS100やステップS120では、印刷ヘッド19を制御して、ノズル列26内で副走査方向D1において隣り合うノズル20が形成する線同士を、主走査方向D2においてずらして形成させる。これにより、1つ1つの線が把握し易くなる。
図4では表現していないが、テストパターン40を印刷したときの各ノズル20のコンディション次第では、媒体30における個々の線41a,42a,43a,44aの幾つかには、上述したような吐出不良が表れる。
【0041】
3.テストパターン印刷後の説明および効果:
図5Aは、テストパターン40が印刷された媒体30のスキャンデータ50を例示している。ユーザーは、印刷装置10によりテストパターン40が印刷された媒体30を不図示のスキャナーに原稿としてセットし、当該媒体30の読取を実行させる。その結果、スキャナーは、テストパターン40の読取結果としての画像データを生成する。このような読取結果としての画像データがスキャンデータ50である。
【0042】
スキャンデータ50を取得し、スキャンデータ50を処理したり解析したりする装置を、便宜上、画像処理装置と呼ぶ。画像処理装置の実体は、スキャナーであってもよいし、印刷装置10であってもよいし、上述の外部装置であってもよい。画像処理装置は、スキャンデータ50を解析することで各ノズル20の吐出不良を検出することが可能である。スキャンデータ50に対する解析、評価は、ユーザーが目視により行うことも可能である。
【0043】
図5Aにおいても、テストパターン40に関しては図4と同じ符号を用いる。方向D3は、スキャナーが原稿を読み取る際に原稿を搬送する方向D3である。ここでは、スキャナーは、原稿を搬送しながらイメージセンサーにより原稿を読み取る、いわゆるシードフィードタイプの製品と想定する。ただし、スキャナーは、原稿台上で静止する原稿を読み取る、いわゆるフラットベッドタイプの製品であってもよい。この場合には、原稿を読み取るために原稿に対して移動するセンサー等の読取手段の移動方向を方向D3と見なせばよい。また以下において、スキャナーによる原稿の搬送誤差を、このような読取手段の移動誤差と読み替えてもよい。図4,5Aから解るように、方向D3は、副走査方向D1に対応している。スキャナーにおける搬送誤差や移動誤差を、まとめて読取誤差とも言う。
【0044】
図5Aによれば、スキャンデータ50を方向D3に沿って見ていったとき、いずれの位置においても複数の線が存在する。具体例として、スキャンデータ50内に鎖線で示した、方向D3においてそれぞれ異なる位置の画像領域51,52,53はいずれも、印刷時の副走査方向D1における位置が共通する複数の線を含んでいる。画像領域51は、第1線群41の、ある1つの線41aと、第3線群43の、ある1つの線43aとを含んでいる。同様に、画像領域52は、第2線群42の1つの線42aと、第4線群44の1つの線44aとを含んでいる。画像領域53は、第1線群41の1つの線41aと、第3線群43の1つの線43aとを含んでいる。
【0045】
画像領域51に含まれている線41a,線43aを比較すると、いずれも太さが同じように太いことが分かる。線の太さとは、線の長手方向に交差する方向の幅である。テストパターン40を構成する各線の太さは設計上既知であるため、スキャンデータ50においても、テストパターン40を構成する各線の太さの標準値は予め分かっている。画像領域51に含まれている線41a,線43aはいずれも標準値よりも太いため、画像処理装置は、画像領域51には、スキャナーによる読取時の搬送誤差が表れていると判断し、画像領域51に対しては補正を行う。画像領域51に対する補正は、線41a,線43aの太さが標準値となるように方向D3において縮小する処理である。これにより、画像領域51に含まれている線41a,線43aについて、ドット太りと誤検出することを避けることができる。
【0046】
画像領域53に含まれている線41a,線43aを比較すると、いずれも太さが同じように細いことが分かる。画像領域53に含まれている線41a,線43aはいずれも標準値よりも細いため、画像処理装置は、画像領域53には、スキャナーによる読取時の搬送誤差が表れていると判断し、画像領域53に対しては補正を行う。画像領域53に対する補正は、線41a,線43aの太さが標準値となるように方向D3において拡大する処理である。これにより、画像領域53に含まれている線41a,線43aについて、ドット細りと誤検出することを避けることができる。
【0047】
画像領域52に含まれている線42a,44aを比較すると、線42aは標準的な太さであるが、線44aは細い。このように、方向D3における位置がほぼ同じである各線を比較したときに一部の線だけが標準値より細かったり逆に太かったりする場合は、ノズル20の吐出不良が認められる。つまり、画像処理装置は、画像領域52に含まれている線44aが細い原因は、読取時の搬送誤差ではなく当該線44aの形成に用いたノズル20の不良と判断できるため、画像領域52に対しては補正を行わない。
画像処理装置は、このようにスキャンデータ50に対して読取誤差を除去するために必要な補正をした上で、スキャンデータ50の解析や評価をすることで、ノズル20の吐出不良を正確に検出することが可能となる。
【0048】
図6Aは、従来のテストパターン5が印刷された媒体のスキャンデータ6を例示している。図6Aの見方は、図5Aと同じである。従来は、図2に示すような印刷ヘッド19の1回のパスにより各ノズル列26の各ノズル20からインクを吐出して、テストパターン5を媒体へ印刷していた。テストパターン5は、スキャンデータ6からも分かるように、複数のノズル列26それぞれに対応する複数の線群1,2,3,4が主走査方向D2に対応して並んでおり、複数の線群1,2,3,4は互いが副走査方向D1にはずれていない。線群1,2,3,4のそれぞれは、複数の線1a,2a,3a,4aにより構成されている。線群1を構成する複数の線1a、線群2を構成する複数の線2a、線群3を構成する複数の線3a、線群4を構成する複数の線4aはそれぞれに、副走査方向D1においてノズル間隔NPに相当する間隔で配置されている。そのため、テストパターン5では、副走査方向D1において、何も印刷されない領域が生じてしまう。
【0049】
スキャンデータ6における領域7が、副走査方向D1において何も印刷されない領域に相当する読取結果の1つである。この領域7の方向D3における幅は、スキャンデータ6の他の線間の領域の方向D3における幅と比較して太い。しかしながら、領域7にはパターンが何も形成されていないため評価不能である。つまり、スキャナーによるテストパターン5の読取時における搬送誤差に起因して領域7の幅が太くなったのか、ドットの着弾位置ずれやドット細りといったノズル20の吐出不良に起因して領域7の幅が太くなったのかを判別できない。そのため、領域7を含めたスキャンデータ6に対して正しい補正をすることができず、スキャンデータ6からノズル20の吐出不良を検出する精度も向上させることが難しい。
【0050】
このような課題に対し、本実施形態によれば図4図5Aに示したように、テストパターン40内には副走査方向D1において何も印刷されない領域が生じないか、従来と比べて殆ど生じない。そのため、上述のように異なる線群に属する線同士の比較に基づいてスキャンデータ50の補正の必要性を判断し、スキャンデータ50を適切に補正することが可能となる。
【0051】
図6Bは、従来のテストパターン5が印刷された媒体のスキャンデータ6を例示している。ただし図6Bでは、スキャナーによる読取時に原稿が傾いた状態で搬送された場合に得られたスキャンデータ6の例を示している。テストパターン5は、副走査方向D1における線の形成頻度が低いため、読取時の搬送の際に原稿が傾くと、スキャンデータ6では、方向D3の位置が共通する線同士を比較できない状態が発生し易い。例えば、スキャンデータ6内の領域8には、線群4を構成する1つの線4aが含まれているだけである。そのため、領域8内の線4aについては比較対象が無く、当該線4aを見ても、ドット太り等の吐出不良が生じているのか、領域8に搬送誤差の影響が表れているのか判別できない。
【0052】
一方、図5Bは、テストパターン40が印刷された媒体30のスキャンデータ50であって、スキャナーによる読取時に原稿が傾いた状態で搬送された場合に得られたスキャンデータ50の例を示している。本実施形態のテストパターン40は、副走査方向D1における線の形成頻度が従来よりも高いため、読取時の搬送の際に原稿が傾いても、スキャンデータ50では、方向D3の位置が共通する線同士を比較できない状態が発生し難い。例えば、方向D3におけるある位置の画像領域54には、第1線群41を構成する1つの線41aと、第4線群44を構成する1つの線44aとがほぼ含まれている。そのため、これら2つの線41a,44aを比較することで、いずれか一方の線にドット太り、ドット細りといった吐出不良が生じているのか、領域54に搬送誤差の影響が表れているのかといったことを判別できる。このようにテストパターン40は、読取時の搬送に際して原稿が傾いた場合であっても、従来と比べてノズル20の吐出不良の検出精度を向上させると言える。
【0053】
4.まとめ:
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、液体を吐出する複数のノズル20が所定のノズル間隔NPで第1方向に並ぶノズル列26である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が、第1方向と交差する第2方向に沿って配列された印刷ヘッド19と、印刷ヘッド19を搭載し、第2方向に沿って往復移動可能なキャリッジ18と、第1方向における媒体30と印刷ヘッド19との相対移動を行う移動部と、印刷ヘッド19にノズル20から媒体30へ液体を吐出させてテストパターン40を印刷する制御部11と、を備える。テストパターン40は、第2方向に沿うキャリッジ18の移動と共に印刷ヘッド19がノズル20から液体を吐出する主走査と、第1方向における前記相対移動である副走査とにより印刷される。制御部11は、ノズル列26の各ノズル20からの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、第1ノズル列により形成される第1線群、第2ノズル列により形成される第2線群、第3ノズル列により形成される第3線群、および第4ノズル列により形成される第4線群を含み、第1線群および第3線群と、第2線群および第4線群とが、第1方向においてノズル間隔NPよりも短い第1距離Lだけずれており、第2方向から見て、第1線群と第3線群とが重なり、第2線群と第4線群とが重なるように、テストパターン40を印刷する。
【0054】
前記構成によれば、テストパターン40は、第1線群および第3線群と、第2線群および第4線群とが、第1方向において第1距離Lだけずれており、第2方向から見て、第1線群と第3線群とが重なり、第2線群と第4線群とが重なるように印刷される。そのため、従来のテストパターンと比較して、テストパターン40を構成する線の第1方向における形成頻度が増え、第1方向における各位置で線同士を比較することができる。この結果、印刷後のテストパターン40が読み取られ、スキャンデータに基づいてノズル20の吐出不良を検出することを想定したとき、テストパターン40は、スキャンデータの補正の適正化や、吐出不良の検出精度の向上に寄与する。
【0055】
また、本実施形態によれば、制御部11は、第1距離Lをノズル間隔NPの半分の距離としてテストパターン40を印刷する、としてもよい。
前記構成によれば、第1方向における、線が印刷されていない領域を、最も効率的に最小化することができる。
ただし、本実施形態の開示範囲は、NP>Lであればよく、開示範囲をNP/2=Lに狭めなくてよい。
【0056】
また、本実施形態によれば、印刷装置10は、2回の主走査と、2回の主走査の間に実行する1回の副走査とによりテストパターン40を印刷する。
テストパターン40を、例えば線群の数に合わせて4回のパスで印刷することも可能であるが、前記構成によれば、テストパターン40を最小のパス数で印刷する。これにより、パス毎の印刷位置の誤差や媒体30の搬送誤差といった印刷時の誤差による印刷結果への影響を、最小化することができる。また、テストパターン40をできるだけ短時間で印刷することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、制御部11は、印刷ヘッド19を制御して、ノズル列26内で第1方向において隣り合うノズル20が形成する線同士を第2方向にずらして形成させる、としてもよい。
前記構成によれば、テストパターン40を構成する各線は第1方向、第2方向のそれぞれにずれて形成されるため、線1つ1つの認識が容易となる。
ただし、本実施形態の開示としては、共通のノズル列26に属して第1方向において隣り合うノズル20が形成する線同士が、第2方向において同じ位置に形成される態様も含む。
【0058】
なお、特許請求の範囲においては、請求項同士の組み合わせの一部のみを記載しているが、本実施形態は、独立請求項と従属請求項との一対一の組み合わせだけでなく、当然に、複数の従属請求項の各種組み合わせを開示範囲に含める。
本実施形態は、印刷装置10以外にも、印刷方法や、当該方法をプロセッサーと協働して実現するためのプログラム12を開示する。
つまり、液体を吐出する複数のノズル20が所定のノズル間隔NPで第1方向に並ぶノズル列26を有する印刷ヘッド19にノズル20から媒体30へ液体を吐出させてテストパターン40を印刷する印刷方法であって、印刷ヘッド19には、ノズル列26である第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列が、第1方向と交差する第2方向に沿って配列されており、第2方向に沿って移動する印刷ヘッド19がノズル20から液体を吐出する主走査と、第1方向における媒体30と印刷ヘッド19との相対移動である副走査とによりテストパターン40を印刷する印刷工程を有し、印刷工程では、ノズル列26の各ノズルからの液体吐出により形成される複数の線を有する線群である、第1ノズル列により形成される第1線群、第2ノズル列により形成される第2線群、第3ノズル列により形成される第3線群、および第4ノズル列により形成される第4線群を含み、第1線群および第3線群と、第2線群および第4線群とが、第1方向においてノズル間隔NPよりも短い第1距離Lだけずれており、第2方向から見て、第1線群と第3線群とが重なり、第2線群と第4線群とが重なるように、テストパターン40を印刷する。
【0059】
5.追加説明:
印刷ヘッド19には、第1ノズル列、第2ノズル列、第3ノズル列および第4ノズル列を含むn列のノズル列26が、第2方向に沿って配列されている。つまり、nは4であってもよいし4より大きい整数であってもよい。例えば、印刷ヘッド19が、CMYKに加え、ライトシアンおよびライトマゼンタの各インクを吐出するヘッドであれば、印刷ヘッド19は6色に対応する計6列のノズル列26を有する。その他にも、印刷ヘッド19は、例えば、マットブラック、グレー、オレンジ、グリーン、バイオレット等、様々な種類のインクを吐出するための各ノズル列26を有し得る。むろん、印刷ヘッド19は、1色のインクにつき2列以上のノズル列26を有する構成であってもよい。ノズル列26の数が4より多い構成は、印刷ヘッド19内において図2,4に示すようなノズル列26が主走査方向D2に沿って増設されるだけなので、図示は省略する。
【0060】
制御部11は、テストパターンの印刷工程では、n列のノズル列26のそれぞれに線群を形成させてn個の線群を有するテストパターン40を印刷する場合に、nが偶数であれば、n個の線群のうち、n/2個の線群と、残りの線群とが、第1方向において第1距離Lだけずれるようにテストパターン40を印刷し、一方、nが奇数であれば、n個の線群のうち、n/2±1個の線群と、残りの線群とが、第1方向において第1距離Lだけずれるようにテストパターン40を印刷する。
【0061】
図7は、ステップS100~S120の結果として媒体30に印刷されたテストパターン40であって図4とは異なる例を示している。図7に関しては、n=6であり、印刷ヘッド19は複数のノズル列26として、第1~第4ノズル列に加えて第5ノズル列および第6ノズル列を有すると仮定する。第1~第4線群41,42,43,44については既に説明した通りであり。ただし図7では、線群毎の色の違いは表現していない。
【0062】
制御部11は、ステップS100の第1パスでは、第1ノズル列、第3ノズル列および第5ノズル列のそれぞれに、各ノズル20からインクを吐出させることで、媒体30へ第1線群41、第3線群43および第5線群45を形成する。第5線群45は、第5ノズル列の各ノズル20がインクを吐出して形成する複数の線45aの集合である。制御部11は、ステップS110を経たステップS120の第2パスでは、第2ノズル列、第4ノズル列および第6ノズル列のそれぞれに、各ノズル20からインクを吐出させることで、媒体30へ第2線群42、第4線群44および第6線群46を形成する。第6線群46は、第6ノズル列の各ノズル20がインクを吐出して形成する複数の線46aの集合である。主走査方向D2から見て、第1線群と第3線群と第5線群とが重なり、第2線群と第4線群と第6線群とが重なるように、テストパターン40が印刷される。
【0063】
また、n=5であり、印刷ヘッド19は複数のノズル列26として第1~第4ノズル列に加えて第5ノズル列を有すると仮定する。この場合、制御部11は、例えばステップS100の第1パスは、n=6の場合と同じ処理を実行し、ステップS120の第2パスでは、第2ノズル列、第4ノズル列のそれぞれに、各ノズル20からインクを吐出させることで、媒体30へ第2線群42、第4線群44を形成すればよい。n=5であるときのテストパターン40は、図7のテストパターン40から第6線群46を無くしただけの内容であるため図示は省略する。むろん、n=5である場合に、制御部11は、ステップS100の第1パスで2つのノズル列26により2つの線群を形成させ、ステップS120の第2パスで3つのノズル列26により3つの線群を形成させるとしてもよい。
【0064】
このように、制御部11は、第1線群41および第3線群43を含む複数の線群と、これらと副走査方向D1において第1距離Lだけずれて形成される第2線群42および第4線群44を含む複数の線群とで、線群の数を可能な限り近付ける。これにより、印刷後のテストパターン40では、副走査方向D1におけるいずれの位置でも、同程度の数の線を比較することが可能となり、ノズル20の吐出不良の検出精度を上げることができる。
【0065】
ただし、本実施形態の開示としては、第1線群41および第3線群43を含む複数の線群と、これらと副走査方向D1において第1距離Lだけずれて形成される第2線群42および第4線群44を含む複数の線群とで、線群の数を一方に偏らせる構成も含む。例えば、n=6であるとき、第1パスでは4つのノズル列26により4つの線群を形成し、第2パスでは残り2つのノズル列26により2つの線群を形成するとしてもよい。
【0066】
図5B図6Bにおいて説明したテストパターンの傾きは、スキャナーが原稿の読取を行う際の搬送により生じる傾きではなく、印刷装置10がテストパターンを印刷する際の搬送部17による搬送で生じる傾きと解してもよい。つまり、印刷装置10が副走査方向D1に対して傾いた媒体30へテストパターンを印刷し、このようにテストパターンが印刷された媒体30を、スキャナーが原稿として搬送しながら読み取ったときに、傾いていない矩形の原稿の枠内で傾いた状態のテストパターンが表現されたスキャンデータが得られることがある。
【符号の説明】
【0067】
10…印刷装置、11…制御部、12…プログラム、13…表示部、14…操作受付部、15…通信IF、16…記憶部、17…搬送部、18…キャリッジ、19…印刷ヘッド、20…ノズル、26,26C,26M,26Y,26K…ノズル列、30…媒体、40…テストパターン、41…第1線群、42…第2線群、43…第3線群、44…第4線群、45…第5線群、46…第6線群、41a,42a,43a,44a,45a,46a…線、50…スキャンデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7