(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131643
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20240920BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
B60J5/04 M
B60J10/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042040
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 信之
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA37
3D201BA01
3D201CA19
3D201DA08
3D201DA31
(57)【要約】
【課題】車室内側および外側のいずれの側からもガラスガイドを兼用する加飾部材の取付けが可能となり、組付工程の自由度を高めることが可能な車両のドア構造を提供する。
【解決手段】フロントドア1は、窓ガラス3を保持するリヤサッシュ5と、リヤサッシュと窓ガラス3との間をシールするシール部材8と、リヤサッシュ5に係止され、その外側面を覆うガーニッシュ7とを備える。ガーニッシュ7は、シール保持部7iと、リヤサッシュ5の後端部5c(第1端部)に係合する第1係合部7bと、リヤサッシュ5の前フランジ部7b(第2端部)の切り起こし部5d(被係合部)と係合する係合片7c(第2係合部)とを有する。第1係合部7bおよび係合片7cは、リヤサッシュ5の後端部5cから前フランジ部7bへ向かうガーニッシュ7のスライド移動により、リヤサッシュ5の後端部5cおよび前フランジ部7bの切り起こし部5dにそれぞれ係合する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部材を備えた車両のサイドドアの構造であって、
前記サイドドアのドアシェルの外側部分を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルの車両前後方向の両端部のうちの一方の端部から上方に向かって延び前記窓部材を保持するサッシュと、
前記サッシュと前記窓部材との間をシールするシール部材と、
前記サッシュに係止され、その外側面を覆って加飾する加飾部材と
を備え、
前記サッシュは、車両の前後方向両側において上下方向に各々延びる第1端部および第2端部を有し、
前記第2端部は、前記第1端部よりも前記窓部材に近い位置に位置するとともに前記加飾部材が係合する被係合部を有し、
前記加飾部材は、
前記シール部材を保持するシール保持部と、
車両前後方向において前記サッシュの前記第1端部から前記第2端部へ向かう前記加飾部材のスライド移動により、前記サッシュの前記第1端部に係合する第1係合部と、
前記スライド移動により、前記サッシュの前記第2端部の前記被係合部と係合する第2係合部と、を有し、前記第1係合部が前記第1端部に係合するととも前記第2係合部が前記第2端部に係合することにより、前記サッシュに係止されている、
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両のドア構造において、
前記サッシュの前記第2端部の前記被係合部は、上下方向の互いに離間した位置で各々前記第2端部が部分的に車幅方向外側に切り起こされた複数の切り起こし部によって構成され、
前記加飾部材の前記第2係合部は、前記複数の切り起こし部にそれぞれ係合する複数の係合片によって構成されている、
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項3】
請求項2記載の車両のドア構造において、
前記係合片は、車幅方向の内側または外側に突出する爪部を有する、
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両のドア構造において、
前記加飾部材の前記第1係合部は、サッシュの第1端部の端縁を覆っている、
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両のドア構造において、
前記加飾部材は、前記サッシュの外表面を覆いながら当該サッシュの長手方向に沿って延びる形状に樹脂成形され、
前記シール支持部は、車幅方向内側から前記シール部材に当接する内側面部と、当該内側面部から車幅方向外側に離間し、車幅方向外側から前記シール部材に当接して前記内側面部と協働して前記シール部材を挟持する外側面部と、前記内側面部と前記外側面部とを連結する連結面部とを有し、
前記外側面部は、車幅方向内側に突出し、前記シール部材の抜けを抑制する返し部を有し、
前記内側面部は、前記加飾部材の長手方向において前記返し部と同じ位置に形成された切欠き部を有する、
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両のドア構造において、
前記加飾部材の前記第2係合部は、前記加飾部材の上端部、下端部、および上端部と下端部との間の中間部に配置され、
前記サッシュの前記第2端部の前記被係合部は、前記第2係合部と係合可能な位置に配置されている、
ことを特徴とする車両のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドアにおける窓ガラスの取付構造において、サッシュの車外側に配置された加飾部材(ガーニッシュ)が窓ガラスを支持するガラスガイドを兼用している構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている車両のドア構造は、フロントサイドドアのアウタパネルの後方側端部で上下方向に延びるとともに窓ガラスの後方側端部を保持するサッシュ(前センターサッシュ)と、サッシュと窓ガラスとの間をシールするシール部材(前センターインナーガイド)と、サッシュの車外側を加飾する加飾部材とを備える。
【0004】
加飾部材は、サッシュの車外に露出する外側面に当接された状態で、車内側からサッシュを貫通するねじによって当該サッシュの外側面に固定される。これにより、窓ガラスの後方側端部(具体的には、後方側端部のスライダ)は、サッシュおよび加飾部材によって車幅方向の内外から挟まれて保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の構造では、窓ガラスを保持させながら加飾部材を取り付けるためには、作業者は車室外側からねじを視認しながら加飾部材の組付け作業を行う必要があるため、車内側からの組付け作業ができない。このように作業の方向が限定されることで加飾部材の組付け工程の自由度が阻害される課題がある。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、車室内側および外側のいずれの側からもガラスガイドを兼用する加飾部材の取付けが可能となり、組付工程の自由度を高めることが可能な車両のドア構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の車両のドア構造は、窓部材を備えた車両のサイドドアの構造であって、前記サイドドアのドアシェルの外側部分を構成するアウタパネルと、前記アウタパネルの車両前後方向の両端部のうちの一方の端部から上方に向かって延び前記窓部材を保持するサッシュと、前記サッシュと前記窓部材との間をシールするシール部材と、前記サッシュに係止され、その外側面を覆って加飾する加飾部材とを備え、前記サッシュは、車両の前後方向両側において上下方向に各々延びる第1端部および第2端部を有し、前記第2端部は、前記第1端部よりも前記窓部材に近い位置に位置するとともに前記加飾部材が係合する被係合部を有し、前記加飾部材は、前記シール部材を保持するシール保持部と、車両前後方向において前記サッシュの前記第1端部から前記第2端部へ向かう前記加飾部材のスライド移動により、前記サッシュの前記第1端部に係合する第1係合部と、前記スライド移動により、前記サッシュの前記第2端部の前記被係合部と係合する第2係合部と、を有し、前記第1係合部が前記第1端部に係合するととも前記第2係合部が前記第2端部に係合することにより、前記サッシュに係止されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、窓部材を保持する上下方向に延びるサッシュを有するサイドドアにおいて、当該サッシュの外表面を覆う加飾部材は、シール保持部よってシール部材を保持することによりシール部材を介して窓部材を保持することができるので、ガラスガイドを兼用することができる。また、加飾部材を、車両前後方向においてサッシュの第1端部から第2端部へ向かってスライドさせ第1係合部および第2係合部をサッシュの第1端部および第2端部の被係合部の2か所にそれぞれ係合させることによりサッシュの外表面に加飾部材を固定することができる。この構成では、作業者は車室内側、外側のいずれの側に居ても加飾部材のスライド移動だけで加飾部材の取付作業を行うことが可能なので、加飾部材の組付工程の自由度を高めることが可能である。
【0010】
上記の車両のドア構造において、前記サッシュの前記第2端部の前記被係合部は、上下方向の互いに離間した位置で各々前記第2端部が部分的に車幅方向外側に切り起こされた複数の切り起こし部によって構成され、前記加飾部材の前記第2係合部は、前記複数の切り起こし部にそれぞれ係合する複数の係合片によって構成されているのが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、加飾部材の第2係合部を構成する複数の係合片をサッシュの第2端部の被係合部を構成する複数の切り起こし部に係合することにより、第2係合部およびそれが係合する被係合部が簡単な構成でありながら、加飾部材をサッシュの第2端部に確実に係合して安定した状態で固定することが可能である。
【0012】
上記の車両のドア構造において、前記係合片は、車幅方向の内側または外側に突出する爪部を有するのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、加飾部材の係合片(第2係合部)は、車幅方向の内側または外側に突出する爪部を有しているので、爪部は、車幅方向外側に突出する切り起こし部(被係合部)または切り起こし部を形成することによりサッシュの第2端部に形成された開口のいずれかに係合することにより、加飾部材の係合片が切り起こし部から抜けにくくなり、加飾部材をサッシュの第2端部に対してより確実に固定することが可能である。
【0014】
上記の車両のドア構造において、前記加飾部材の前記第1係合部は、サッシュの第1端部の端縁を覆っているのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、加飾部材の第1係合部がサッシュの第1端部の端縁を覆っているので、車両乗降時において乗員の手指がサッシュの第1端部の端縁に直接触れることがないので、サッシュの端縁による突起感などの不快な印象を乗員に与えない。したがって、サイドドアの商品価値を向上することが可能である。
【0016】
上記の車両のドア構造において、前記加飾部材は、前記サッシュの外表面を覆いながら当該サッシュの長手方向に沿って延びる形状に樹脂成形され、前記シール支持部は、車幅方向内側から前記シール部材に当接する内側面部と、当該内側面部から車幅方向外側に離間し、車幅方向外側から前記シール部材に当接して前記内側面部と協働して前記シール部材を挟持する外側面部と、前記内側面部と前記外側面部とを連結する連結面部とを有し、前記外側面部は、車幅方向内側に突出し、前記シール部材の抜けを抑制する返し部を有し、前記内側面部は、前記加飾部材の長手方向において前記返し部と同じ位置に形成された切欠き部を有するのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、加飾部材のシール支持部は、内側面部および外側面部を有し、内側面部および外側面部によってシール部材を挟持するとともに外側面部おける車幅方向内側に突出する返し部によってシール部材の抜けを防止する。これにより、シール部材が加飾部材のシール支持部から脱落することを防止することが可能である。
【0018】
しかも、内側面部は、加飾部材の長手方向において返し部と同じ位置において、切欠き部が形成されているので、加飾部材を樹脂成形する場合において樹脂成型後に成形型を抜く工程では、成形型を返し部から切欠き部の方へ引き抜くことが可能である。これにより、返し部を有する加飾部材の成形性を確保することが可能である。
【0019】
上記の車両のドア構造において、前記加飾部材の前記第2係合部は、前記加飾部材の上端部、下端部、および上端部と下端部との間の中間部に配置され、前記サッシュの前記第2端部の前記被係合部は、前記第2係合部と係合可能な位置に配置されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、加飾部材の第2係合部は、加飾部材の上端部、下端部、およびの中間部に配置されており、これらの第2係合部が察すの第2端部の被係合部にそれぞれ係合することにより、加飾部材の取付位置の精度を確保することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の車両のドア構造によれば、車室内側および外側のいずれの側からもガラスガイドを兼用する加飾部材の取付けが可能となり、組付工程の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の車両のドア構造の実施形態に係るのフロントサイドドアの全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図1のリヤサッシュおよび当該リヤサッシュの車外側を加飾するガーニッシュの拡大斜視図である。
【
図5】
図2のガーニッシュの係合片がリヤサッシュの切り起こし部に係合している部分の拡大斜視図である。
【
図6】
図3のリヤサッシュの切り起こし部の拡大斜視図である。
【
図8】
図4のガーニッシュの係合片およびその周辺の拡大斜視図である。
【
図9】
図8のIX-IX線断面におけるガーニッシュの係合片がリヤサッシュの切り起こし部に係合している状態を示す断面説明図である。
【
図10】
図8のX-X線断面におけるガーニッシュの係合片が爪部の位置でリヤサッシュの切り起こし部に係合している状態を示す断面説明図である。
【
図11】
図10のガーニッシュの係合片の爪部が下方にたわむ板バネによって構成され、リヤサッシュには切り起こし部を形成することによって開口が形成され、当該爪部がリヤサッシュの開口に係合している状態を示す断面説明図である。
【
図12】本発明の変形例であって、係合片の爪部がリヤサッシュの切り起こし部の切り起こし方向に膨らむ凸部によって構成され、当該爪部が切り起こし部の縁に係合している状態を示す断面説明図である。
【
図13】
図9の断面説明図にシール部材を加えて簡略化したガーニッシュならびに当該ガーニッシュ周辺のリヤサッシュおよびシール部材の断面説明図である。
【
図14】
図10の断面説明図にシール部材を加えて簡略化したガーニッシュならびに当該ガーニッシュ周辺のリヤサッシュおよびシール部材の断面説明図である。
【
図15】
図8のガーニッシュの外側面部の車内側の面に複数の返し部が形成され、これらの返し部が内側面部の切欠き部に対応する長手方向位置に配置されていることを示す説明図である。
【
図16】
図15のXVI-XVI線断面における返し部および切欠き部の配置を示すガーニッシュならびに当該ガーニッシュ周辺のリヤサッシュおよびシール部材の断面説明図である。
【
図17】
図15のXVII-XVII線断面における返し部および切欠き部が無く、係合片が配置されていることを示すガーニッシュならびに当該ガーニッシュ周辺のリヤサッシュおよびシール部材の断面説明図である。
【
図18】ガーニッシュにおける
図17の返し部は無いが爪部を有する係合片を有する部分を樹脂成形する工程を概略的に示す断面説明図である。
【
図19】ガーニッシュにおける
図16の返し部および切欠き部を有する部分を樹脂成形する工程を概略的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る車両のドア構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の車両のドア構造が適用された車両の側面前側に配置されたフロントサイドドア1(以下、フロントドア1と呼ぶ)の正面図が示されている。
【0025】
フロントドア1は、窓ガラス3を支持する以下の3か所のサッシュ5、6、9を有するサッシュドアの一種であり、当該フロントドア1の本体部分であるドアシェルの外側部分を構成するアウタパネル2と、上下方向Zにスライド自在の窓ガラス3(窓部材)と、アウタパネル2の上側において窓ガラス3を支持する窓枠4とを備えている。窓枠4は、窓ガラス3の車両後方側X2の端部を保持するリヤサッシュ5と、窓ガラス3の車両前方側X1の端部を保持するフロントサッシュ6と、リヤサッシュ5とフロントサッシュ6のそれぞれの上端部を連結する上サッシュ9とによって構成されている。窓ガラス3は、リヤサッシュ5とフロントサッシュ6によって車両前後方向両側の端部が保持され、上下方向Zに移動して開位置(アウタパネル2の車内側(ドアシェル内部)に収納された位置)と、閉位置(窓枠4の開口を閉じた位置)との間を図示しない駆動機構を用いて移動することが可能である。リヤサッシュ5の外表面は、後述のガーニッシュ7で覆われて加飾されている。本実施形態のリヤサッシュ5は、後述するように窓ガラス3の保持を行う。
【0026】
本実施形態のフロントドア1は、具体的な構成として、
図1~14に示されるように、上記のアウタパネル2と、アウタパネル2の車両前後方向Xの両端部のうちの車両後方側X2の端部から上方に向かって延び窓ガラス3を保持する上記のリヤサッシュ5(サッシュ)と、リヤサッシュ5と窓ガラス3との間をシールするシール部材8(
図13~14参照)と、リヤサッシュ5の外側面を覆って加飾するガーニッシュ7(加飾部材)とを備える。
【0027】
リヤサッシュ5は、
図3に示されるように、リヤサッシュ5の外表面を覆う上下方向Zに延びる本体部5aと、当該本体部5aの車両前後方向X両側において上下方向Zに延びる後端部5c(第1端部)および前フランジ部5b(第2端部)とを有する。
【0028】
前フランジ部5bは、後端部5cよりも窓ガラス3(
図13~14参照)に近い位置に位置している。前フランジ部5bは、本体部5aの外表面よりも車幅方向内側Y2に位置している。
【0029】
さらに、前フランジ部5bは、後述のガーニッシュ7の係合片7c(第2係合部)が係合する被係合部として複数(3か所)の切り起こし部5d(
図2~3、
図5~7、
図9~14参照)を有する。切り起こし部5dは、前フランジ部5bbの部分的な切り起こし(具体的には、後述のアウターサッシュ51の前フランジ部5bbを構成する部分の切り起こし)によって、前フランジ部5bの外表面から車幅方向外側Y1へ向かって突出するように形成されている。本実施形態の切り起こし部5dは、ガーニッシュ7の上端部、下端部およびそれら中間位置に形成された3つの係合片7cと係合可能な位置(言い換えれば、3つの係合片7cに対応する高さ位置)にそれぞれ配置されている。
【0030】
また、リヤサッシュ5の前フランジ部5b(具体的には、前フランジ部5bのうちアウターサッシュ51側の部分)には、切り起こし部5dを形成することによって、切り起こし部5dと車幅方向Yに重なる位置に開口5eが形成されている。
【0031】
本実施形態のリヤサッシュ5は、
図9~10、
図13~14に示されるように、中空形状の部材であり、金属薄板をプレス加工した2つの部材を組み合わせて構成され、具体的には、車幅方向外側Y1の部分を構成するアウターサッシュ51と、車幅方向内側Y2の部分を構成するインナーサッシュ52とを備える。これらアウターサッシュ51およびインナーサッシュ52を溶接などによって接合することによって、上記のリヤサッシュ5が製造される。本実施形態では、上記の切り起こし部5dおよび開口5eは、アウターサッシュ51のみに形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
ガーニッシュ7は、リヤサッシュ5の外表面を覆う加飾部材であり、当該リヤサッシュ5の長手方向に沿って延びる形状に樹脂成形されている。
【0033】
ガーニッシュ7は、主要な構成として、
図4~5、
図8~10、
図13~14に示されるように、リヤサッシュ5の本体部5a(
図3および
図9参照)の外表面を覆う本体部7aと、リヤサッシュ5の後端部5cに係合する第1係合部7bと、リヤサッシュ5の前フランジ部5bの切り起こし部5d(被係合部)と係合する係合片7c(第2係合部)と、シール部材8を保持するシール保持部7i(
図9~10、
図13~14参照)とを有する。ガーニッシュ7は、第1係合部7bがリヤサッシュ5の後端部5cに係合するととも係合片7cが切り起こし部5dに係合することにより、リヤサッシュ5に係止されている。
【0034】
第1係合部7bおよび係合片7cは、車両前後方向Xにおいてリヤサッシュ5の後端部5cから前フランジ部5bへ向かうガーニッシュ7のスライド移動により、リヤサッシュ5の後端部5cおよび前フランジ部5bの切り起こし部5dにそれぞれ係合するように構成されている。
【0035】
具体的には、第1係合部7bは、リヤサッシュ5の後端部5cの末端部(後端部5cの後縁)を取り囲むように、当該後端部5cから前フランジ部5bへ(すなわち車両前方側X1に)向かって折り返された断面U字状の折返し部7b1(
図9~10、
図13~14参照)を有する。すなわち、第1係合部7bは、折返し部7b1を有することにより、リヤサッシュ5の後端部5cの端縁を覆っている。なお、本実施形態では、第1係合部7bは、上下方向Zに延びる端縁の全長にわたって覆っているが、乗降時に乗員の手指が当たる可能性が高い部分のみ覆っていてもよい。
【0036】
本実施形態の第2係合部は、リヤサッシュ5の前フランジ部5bに設けられた複数(3か所)の切り起こし部5dに挿入される複数(3個)の係合片7cによって構成されている。係合片7cは、車両前方側X1へ向かって突出している。
【0037】
本実施形態の係合片7cは、
図8~11に示されるように、車両後方側X2かつ車幅方向内側Y2に突出する爪部7c1と、爪部7c1を支持するC字状のフレーム部7c2とを有する。爪部7c1およびC字状のフレーム部7c2は、係合片7c内部にC字状の凹部が形成されることにより一体形成されている。爪部7c1は、フレーム部7c2から車両後方側X2に突出している。
【0038】
爪部7c1は、切り起こし部5dで開く方向(車幅方向内側Y2)へ弾性変形するたわむ板バネによって構成されている。
【0039】
本実施形態の係合片7cは、ガーニッシュ7の他の部分とともに樹脂などで一体成形されている。なお、係合片7cの強度を向上させるために、係合片7cのみ金属製の薄板で形成し、インサート成形などによりガーニッシュ7の他の部分を樹脂で成形しながらガーニッシュ7として一体化してもよい。
【0040】
シール保持部7iは、
図9~10、
図13~17に示されるように、リヤサッシュ5とシール部材8との間で上下方向Zに延びるとともに車両前方側X1に開いた断面U字状を有し、シール部材8の側周面を取り囲んだ状態で当該シール部材8を保持するように構成されている。
【0041】
シール保持部7iは、具体的には、車幅方向内側Y2からシール部材8に当接する内側面部7dと、当該内側面部7dから車幅方向外側Y1に離間し、車幅方向外側Y1からシール部材8に当接して内側面部7dと協働してシール部材8を挟持する外側面部7eと、内側面部7dと外側面部7eとを連結する連結面部7hとを有する。
【0042】
内側面部7dは、本体部7aおよび外側面部7eよりも車幅方向内側Y2に配置され、連結面部7hの車幅方向内側Y2の端部から車両前方側X1に突出している。外側面部7eは、本体部7aと同一平面上に配置され、連結面部7hの車幅方向外側Y1の端部から車両前方側X1に突出している。
【0043】
さらに、外側面部7eは、
図15~16に示されるように、車幅方向内側Y2に突出し、シール部材8の抜け(シール保持部7iからの脱落)を抑制する複数の返し部7gを有している。
【0044】
一方、内側面部7dは、ガーニッシュ7の長手方向C(
図15参照)において返し部7gと同じ位置に形成された切欠き部7f(
図4~5、
図8~9、
図15~16参照)を有する。切欠き部7fは、内側面部7dの車両前方側X1の端部から車両後方側X2へ向けて延びるように形成されている。
【0045】
本実施形態では、係合片7c(第2係合部)は、U字状のシール保持部7iの内側面部7dの一部に含まれている。すなわち、係合片7cは、内側面部7dと同一平面上に位置するとともに内側面部7dとともに車両前方側X1に突出している。
【0046】
シール部材8は、リヤサッシュ5と窓ガラス3との間をシールすることが可能な構成であればよく、本発明ではとくにシール部材の構成については限定しない。例えば、
図13に示されるシール部材8は、窓ガラス3の車両後方側X2の端部に沿って延びるゴムなどの弾性部材であり、ガーニッシュ7のシール保持部7iに保持される断面U字状の本体部8aと、窓ガラス3の車両後方側X2の端部をシールするガラスシール部8bと、リヤサッシュ5の前フランジ部5bに接触してシールするサッシュシール部8cとを有する。ガラスシール部8bは、窓ガラス3の車両後方側X2の端部を車幅方向Yの内外両方から接触することにより窓ガラス3の端部をシールする。
【0047】
(本実施形態の特徴)
(1)
上記のように本実施形態の車両のドア構造を備えたフロントドア1は、フロントドア1のドアシェルの外側部分を構成するアウタパネル2と、アウタパネル2の車両前後方向Xの両端部のうちの一方の端部から上方に向かって延び窓ガラス3を保持するリヤサッシュ5と、リヤサッシュ5と窓ガラス3との間をシールするシール部材8と、リヤサッシュ5に係止され、その外側面を覆って加飾するガーニッシュ7とを備える。
【0048】
リヤサッシュ5は、車両の前後方向X両側において上下方向Zに延びる後端部5c(第1端部)および前フランジ部5b(第2端部)を有する。前フランジ部5bは、後端部5cよりも窓ガラス3に近い位置に位置している。さらに、前フランジ部5bは、ガーニッシュ7の複数の係合片7c(第2係合部)が係合する被係合部としての風数の切り起こし部5dを有する。
【0049】
ガーニッシュ7は、リヤサッシュ5とシール部材8との間で上下方向Zに延びるとともに断面U字状を有し、シール部材8の側周面を取り囲んだ状態で当該シール部材8を保持するシール保持部7iと、車両前後方向Xにおいてリヤサッシュ5の後端部5cから前フランジ部5bへ(すなわち車両前方側X1へ)向かうガーニッシュ7のスライド移動により、リヤサッシュ5の後端部5cに係合する第1係合部7bと、このスライド移動によりリヤサッシュ5の前フランジ部5bの切り起こし部5dと係合する係合片7c(第2係合部)とを有する。
【0050】
ガーニッシュ7は、第1係合部7bがリヤサッシュ5の後端部5cに係合するととも係合片7cが切り起こし部5dに係合することにより、リヤサッシュ5に係止されている。
【0051】
上記の構成では、窓ガラス3を保持する上下方向Zに延びるリヤサッシュ5を有するフロントドア1において、当該リヤサッシュ5の外表面を覆うガーニッシュ7は、シール保持部7iよってシール部材8を保持することにより、シール部材8を介して窓ガラス3を保持することができ、リヤサッシュ5を加飾する加飾部材としての本来の機能とともに窓ガラス3を保持するガラスガイドとしての機能を奏することが可能である。すなわち、ガーニッシュ7は、ガラスガイドを兼用することができる。
【0052】
このガーニッシュ7を組み付ける場合には、
図9~10に示されるように、車両前後方向Xにおいてリヤサッシュ5の後端部5cから前フランジ部5bへ向かって車両前方側X1にガーニッシュ7をスライドさせ、ガーニッシュ7の第1係合部7bおよび係合片7cをリヤサッシュ5の後端部5cおよび前フランジ部5bの切り起こし部5dの2か所にそれぞれ係合させることにより、ガーニッシュ7をリヤサッシュ5の外表面に固定することができる。この構成では、作業者は車室内側、外側のいずれの側に居てもガーニッシュ7のスライド移動だけでガーニッシュ7の取付作業を行うことが可能なので、ガーニッシュ7の組付工程の自由度を高めることが可能である。
【0053】
(2)
本実施形態の車両のドア構造では、リヤサッシュ5の前フランジ部5b(第2端部)の被係合部は、上下方向Zの互いに離間した位置で各々前フランジ部5bが部分的に車幅方向外側Y1に切り起こされた複数の切り起こし部5d(
図2~3、
図5~7、
図9~10参照)によって構成されている。
【0054】
ガーニッシュ7の第2係合部は、複数の切り起こし部5dにそれぞれ係合する複数の係合片7c(
図2、
図4~5、
図8~11参照)によって構成されている。
【0055】
かかる構成によれば、ガーニッシュ7の第2係合部を構成する複数の係合片7cが、リヤサッシュ5の前フランジ部5bの被係合部を構成する複数の切り起こし部5dに係合される。これにより、第2係合部およびそれが係合する被係合部が簡単な構成でありながら、ガーニッシュ7をリヤサッシュ5の前フランジ部5b(第2端部)に確実に係合して安定した状態で固定することが可能である。
【0056】
(3)
本実施形態の車両のドア構造では、係合片7cは、車幅方向内側Y2に突出する爪部7c1(
図8、
図10~11参照)を有する。爪部7c1は、切り起こし部5dで開く方向(車幅方向内側Y2)へ弾性変形するたわむ板バネによって構成されている。
【0057】
かかる構成によれば、ガーニッシュ7の係合片7c(第2係合部)は、車幅方向内側Y2に突出する爪部7c1を有しているので、爪部7c1は、切り起こし部5dを形成することによりリヤサッシュ5の前フランジ部5bに形成された開口5eに係合することにより、ガーニッシュ7の係合片7cが切り起こし部5dから抜けにくくなり、ガーニッシュ7をリヤサッシュ5の前フランジ部5b(第2端部)に対してより確実に固定することが可能である。
【0058】
なお、係合片7cは、上記の車幅方向内側Y2に突出する板バネからなる爪部7c1の代わりに、
図12に示されるように、車幅方向Yの外側Y1に突出する爪部7c3を有してもよい。
【0059】
図12に示される爪部7c3は、係合片7cの先端部において当該切り起こし部5dの出口の縁に引っかかるように、当該切り起こし部5dの切り起こし方向(車幅方向外側Y1)に膨らむ凸部によって構成されている。
【0060】
図12の例では、ガーニッシュ7の係合片(係合片7c)は、車幅方向外側Y1に突出する爪部7c3を有しているので、爪部7c3は、車幅方向外側Y1に突出する切り起こし部5d(第2係合部)に係合することにより、ガーニッシュ7の係合片7cが切り起こし部5dから抜けにくくなり、ガーニッシュ7をリヤサッシュ5の前フランジ部5b(第2端部)に対してより確実に固定することが可能である。
【0061】
(4)
本実施形態の車両のドア構造では、ガーニッシュ7の第1係合部7b(具体的には折返し部7b1(
図9~10、
図13~14、
図16~17参照))は、リヤサッシュ5の後端部5cの端縁を覆っている。
【0062】
かかる構成によれば、ガーニッシュ7の第1係合部7bがリヤサッシュ5の後端部5cの端縁を覆っているので、車両乗降時において乗員の手指がリヤサッシュ5の後端部5cの端縁に直接触れることがないので、リヤサッシュ5の端縁による突起感などの不快な印象を乗員に与えない。したがって、フロントドア1の商品価値を向上することが可能である。
【0063】
(5)
本実施形態の車両のドア構造では、ガーニッシュ7は、リヤサッシュ5の外表面を覆いながら当該リヤサッシュ5の長手方向に沿って延びる形状に樹脂成形されている。
【0064】
シール保持部7iは、
図9~10、
図13~17に示されるように、車幅方向内側Y2からシール部材8に当接する内側面部7dと、当該内側面部7dから車幅方向外側Y1に離間し、車幅方向外側Y1からシール部材8に当接して内側面部7dと協働してシール部材8を挟持する外側面部7eと、内側面部7dと外側面部7eとを連結する連結面部7hとを有する。
【0065】
外側面部7eは、車幅方向内側Y2に突出し、シール部材8の抜けを抑制する返し部7g(
図15~16参照)を有している。
【0066】
内側面部7dは、ガーニッシュ7の長手方向C(
図15参照)において返し部7gと同じ位置に形成された切欠き部7fを有する。
【0067】
かかる構成によれば、ガーニッシュ7のシール保持部7iは、内側面部7dおよび外側面部7eを有し、内側面部7dおよび外側面部7eによってシール部材8を挟持するとともに外側面部7eおける車幅方向内側Y2に突出する返し部7gによってシール部材8の抜けを防止する。これにより、シール部材8がガーニッシュ7のシール保持部7iから脱落することを防止することが可能である。
【0068】
しかも、内側面部7dは、ガーニッシュ7の長手方向において返し部7gと同じ位置において、切欠き部7fが形成されている。そのため、
図19に示されるように、ガーニッシュ7の樹脂成形の際には成形型(第2成形型62)を返し部7gの方から切欠き部7fの方へ引き抜くことができ、返し部7gを有するガーニッシュ7の成形性を確保することが可能である。
【0069】
すなわち、ガーニッシュ7を樹脂成形する場合、
図18に示されるガーニッシュ7における返し部7gは無いが爪部7c1を有する係合片7cを有する部分では、上側の第1成形型61および下側の第2成形型62を組み合わせて樹脂成型後に、第1成形型61を前方へスライドさせて抜くとともに第2成形型62を下方へ抜くことができる。一方、
図19に示されるガーニッシュ7における返し部7gおよび切欠き部7fを有する部分では、下側の第2成形型62のみで樹脂成型後において、第2成形型62の膨出部62bは切欠き部7fを通って下方へ移動可能であるので、第2成形型62を返し部7gの方から切欠き部7fの方へ(下方へ)引き抜くことができる。これにより、返し部7gを有するガーニッシュ7の成形性を確保することが可能である。
【0070】
なお、
図18に示される上側の第1成形型61は、下側凹部61aを有する。
図18~19に示される下側の第2成形型62は、第1成形型61の下側凹部61aと協働して爪部7c1を有する係合片7cを形成する凸部62aと、上方に延びて内側面部7dの切欠き部7f(
図4、
図8、
図16参照)を形成する膨出部62bと、連結面部7hを形成する溝部62cと、返し部7gを形成するために膨出部62bの上部に設けられた凹部62dとを有する。
【0071】
(6)
本実施形態の車両のドア構造では、ガーニッシュ7の係合片7cは、
図2~4に示されるように、ガーニッシュ7の上端部、下端部、および上端部と下端部との間の中間部に配置されている。一方、係合片7cに係合する被係合部である、リヤサッシュ5の前フランジ部5bの切り起こし部5dは、
図3に示されるように、これら3個の係合片7cと係合可能な位置にそれぞれ配置されている。
【0072】
かかる構成によれば、ガーニッシュ7の係合片7cは、ガーニッシュ7の上端部、下端部、およびの中間部に配置されており、これらの係合片7cが察すの前フランジ部5bの切り起こし部5dにそれぞれ係合することにより、ガーニッシュ7の取付位置の精度を確保することが可能である。
【0073】
(変形例)
(A)
なお、上記の実施形態では、フロントドア1におけるリヤサッシュ5の車外側にガーニッシュ7を取り付ける構造を例に説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のドア構造をリヤサイドドアに適用することも可能である。
【0074】
すなわち、本発明の変形例として、フロントドア1の車両後方側X2に位置するリヤサイドドアにおいて窓ガラス3よりも車両前方側X1のサッシュであるフロントサッシュの車外側にガーニッシュ7を取り付ける構造に採用してもよい。この変形例では、本発明のサッシュの「第1端部」は、リヤサイドドアのフロントサッシュにおける窓ガラスから遠い側、すなわち車両前方側X1の端部になり、「第2端部」は、窓ガラスに近い側の車両後方側X2の端部になる。また、フロントサッシュを加飾するガーニッシュ(加飾部材)は、フロントサッシュの車両前方側X1の端部(第1端部)に係合する第1係合部と、車両後方側X2の端部(第2端部)の被係合部に係合する第2係合部と、シール部材を保持するシール保持部とを備えていればよい。
【0075】
(B)
上記の実施形態では、ガーニッシュ7のシール保持部7iは、リヤサッシュ5とシール部材8との間で上下方向Zに延びるとともに断面U字状を有し、シール部材8の側周面を取り囲んだ状態で当該シール部材8を保持する構成を有しているが、本発明ではこれに限定されるものではなく、シール部材8を保持できる構成であれば他の態様でもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 フロントサイドドア(サイドドア)
2 ドアパネル
3 窓ガラス(窓部材)
4 窓枠
5 リヤサッシュ
5a 本体部
5b 前フランジ部(第2端部)
5c 後端部(第1端部)
5d 切り起こし部(被係合部)
5e 開口
7 ガーニッシュ(加飾部材)
7a 本体部
7b 第1係合部
7b1 折返し部
7c 係合片(第2係合部)
7c1、7c3 爪部
7d 内側面部
7e 外側面部
7f 切欠き部
7g 返し部
7h 連結面部
7i シール保持部
8 シール部材