(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131644
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20240920BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20240920BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240920BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20240920BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240920BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240920BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/61
F24F11/64
F24F11/80
F24F140:00
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042041
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】畑▲崎▼ 小波
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA41
3L260CA12
3L260CB62
3L260CB63
3L260CB67
3L260EA04
3L260EA07
3L260EA09
3L260FA03
3L260FB12
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費量を抑制することができる空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムを提供することである。
【解決手段】実施形態の空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の天井部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。制御部は、空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる下部温度を目標下部温度としたとき、下部温度および目標下部温度に基づいて第2室内機の運転を制御する。制御部は、空間の温度に関連する時間情報に基づいて、第2室内機の運転を制御する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の天井部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、
前記空間の床部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度および前記目標下部温度に基づいて前記第2室内機の運転を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記空間の温度に関連する時間情報に基づいて、前記第2室内機の運転を制御する、
空気調和システム。
【請求項2】
前記時間情報は、昼間に前記空間の温度が高くなる第1時刻の情報であり、
前記第1時刻から第1所定時間だけ前の時刻である第2時刻より前に、外部からの入力に基づいて算出した第1温度を前記目標下部温度に設定して、前記第2室内機の運転が開始された場合であって、
前記第2時刻において、前記下部温度が、前記第1温度から第1所定温度だけ低い温度である第2温度に到達している場合に、
前記制御部は、前記第2時刻から、前記第2温度を前記目標下部温度に設定して、前記第2室内機の運転を制御する、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記第1時刻以前の時刻であって、前記第2時刻から第2所定時間だけ後の時刻を第3時刻としたとき、
前記制御部は、前記第3時刻から、前記第1温度を前記目標下部温度に設定して、前記第2室内機の運転を制御する、
請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記時間情報は、前記空間に太陽光が入射する第1時間範囲の情報であり、
前記空間の天井部の温度を天井部温度としたとき、
前記制御部は、前記第1時間範囲において、前記天井部温度が閾値を上回る場合に、前記第2室内機の運転抑制処理を実施し、
前記運転抑制処理は、前記第2室内機の運転を停止する処理であるか、または前記目標下部温度を低下させる処理である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記第2時刻から第3所定時間だけ後の時刻を第4時刻としたとき、
前記制御部は、前記第4時刻から、温度補正処理を実施して、前記第2室内機の運転を制御し、
前記温度補正処理は、前記第1温度より第2所定温度だけ高い温度である第3温度を前記目標下部温度に設定する処理であるか、または前記下部温度を前記第2所定温度だけ低く取り扱う処理である、
請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第4時刻から、前記第2室内機の出力を低下させて前記第2室内機の運転を制御する、
請求項5に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記時間情報は、夜間に前記第1室内機および前記第2室内機の運転を停止する第5時刻の情報であり、
前記第5時刻から第4所定時間だけ前の時刻を第6時刻としたとき、
前記制御部は、前記第6時刻より前に前記下部温度が前記目標下部温度に到達した場合に、前記第6時刻において、前記第2室内機の運転を停止する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項8】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムの制御装置であって、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度および前記目標下部温度並びに前記空間の温度に関連する時間情報に基づいて、前記第2室内機の運転を制御する、
制御装置。
【請求項9】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムの制御方法であって、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度および前記目標下部温度並びに前記空間の温度に関連する時間情報に基づいて、前記第2室内機の運転を制御するステップを有する、
制御方法。
【請求項10】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムのコンピュータに、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度および前記目標下部温度並びに前記空間の温度に関連する時間情報に基づいて、前記第2室内機の運転を制御するステップを実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
第1室内機と、第2室内機と、を有する空気調和システムが提案されている。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。空気調和システムには、エネルギー消費量を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギー消費量を抑制することができる空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の天井部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。制御部は、空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる下部温度を目標下部温度としたとき、下部温度および目標下部温度に基づいて第2室内機の運転を制御する。制御部は、空間の温度に関連する時間情報に基づいて、第2室内機の運転を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の空気調和システムによる空気調和制御の概要を説明するための模式図。
【
図2】実施形態の空気調和システムの全体構成を示すブロック図。
【
図3】高負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図。
【
図4】低負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図。
【
図5】床吹出し式室内機の動作を示すフローチャート。
【
図6】天井吹出し式室内機の動作を示すフローチャート。
【
図7】時刻に対する下部目標温度の設定例を示す図。
【
図8】太陽光の入射による空間の温度分布例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の空気調和システム、制御装置、制御方法およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態における空気調和システム1による空気調和制御の概要を説明するための模式図である。
【0009】
図1には、空間Sを含む建築物の一部分の垂直断面図が示されている。建築物は、例えばオフィスビルであり、空間Sは、例えばオフィス空間等の人が活動する空間である。但し、建築物は、例えば住宅であってもよく、空間Sは、例えば住空間等の人が居住する空間であってもよい。実施形態の空気調和システム1は、空間S内の空気を調和するシステムである。空気調和システム1は、床吹出し式空気調和装置と天井吹出し式空気調和装置とが組み合わされたシステムである。
【0010】
空間Sの天井裏には、床吹出し式空気調和装置の室内機(以下、「床吹出し式室内機10」という。)が設置されている。空間S内の側壁には、リモートサーモセンサ15が設置されている。空間Sの天井には、2台の天井吹出し式空気調和装置の室内機(以下、「天井吹出し式室内機20-1」及び「天井吹出し式室内機20-2」という。)が設置されている。以下、天井吹出し式室内機20-1と天井吹出し式室内機20-2とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「天井吹出し式室内機20」という。
【0011】
空間Sの外部には、側壁に沿って垂直ダクト40が設置されている。空間Sの床は、二重床になっており、床下給気チャンバー45として機能する。なお、床下給気チャンバー45の代わりに、水平ダクトが用いられてもよい。空間Sの床面には、3つの吹出し口50が設けられている。床下給気チャンバー45内の空気は、吹出し口50を通って空間S内へ移動可能である。
【0012】
なお、吹出し口50の個数は3つに限られるものではなく、少なくとも1つ以上の任意の個数で構わない。なお、吹出し口50は、空間Sの特に下部の位置における温度が均一化されるように、適切な個数、位置及び間隔で設けられていることが望ましい。なお、空間Sの外部には、後述される
図2に示される、室外機30が設置されている。
【0013】
本実施形態における空気調和システム1は、1台の床吹出し式室内機10及び2台の天井吹出し式室内機20と、1台の室外機30とが、冷媒配管35(渡り配管)を介して接続された、マルチ型の空気調和システムである。なお、床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20の台数は、上記の台数に限られるものではなく、それぞれ少なくとも1台以上の任意の台数で構わない。天井吹出し式室内機20は、空間Sの特に上部の位置における温度が均一化されるように、適切な個数、位置及び間隔で設置されていることが望ましい。
【0014】
冷媒配管35は、床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20と、室外機30との間で、冷媒を行き来させるためのパイプである。冷媒配管35は、床吹出し式室内機10と、天井吹出し式室内機20-1と、天井吹出し式室内機20-2とを、並列に接続する。床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20と、室外機30とは、冷媒配管35によって接続されることによって冷媒を循環させる冷凍サイクルを形成している。
【0015】
このように、空気調和システム1は、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とが共に用いられる構成である。また、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とが同一の室外機30と接続されていることからも明らかなように、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とは、同一の空調方式の空気調和装置の室内機である。但し、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とが同一の室外機30と接続されていることに限定されるものではない。例えば床吹出し式室内機10に接続される室外機30と、天井吹出し式室内機20に接続される室外機30とが、別々に設置されている構成であってもよい。
【0016】
一般的に、天井吹出し式室内機20のみによって暖房が行われる場合には、空間Sの下部の温度は、上部の温度より相対的に低くなる。そのため、在室者が、足元周辺の温度が相対的に低すぎることによる寒さで不快と感じ、空気調和装置の設定温度をより高い温度に変更することがある。こうした環境での、より高い設定温度への変更は、過剰な暖房運転の状態を生じさせ、エネルギーを浪費させる要因となる。
【0017】
本実施形態における空気調和システム1は、天井吹出し式空気調和装置に加えて床吹出し式空気調和装置を併用することで、空間S内の上下温度差をより小さくすることができる。これにより、在室者の足元周辺の温度が相対的により高くなるため、空間S内の上部の温度がより低い温度であっても、在室者は快適であると感じられる。このように、空気調和システム1によれば、快適性を損なうことなく、空気調和システム1の設定温度をより低い温度にすることが可能になり、エネルギー消費量が削減される。
【0018】
図1に示されるように、床吹出し式室内機10から放出される空気は、まず垂直ダクト40へ放出される。垂直ダクト40へ放出された空気は、さらに、当該垂直ダクト40が接続された二重床の空間である床下給気チャンバー45へ放出される。床下給気チャンバー45へ放出された空気は、さらに、空間Sの床面に設けられた3つの吹出し口50から空間S内へ吹き出される。床吹出し式室内機10は、リモートサーモセンサ15によって計測された温度に基づいて、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を制御する。
【0019】
リモートサーモセンサ15は、空間Sの下部の位置の温度(以下、「下部温度」という。)を計測するセンサである。リモートサーモセンサ15は、空間S内の側壁の下部の位置に設置される。本実施形態では、リモートサーモセンサ15は、床上30cmの高さとなる位置に設置される。リモートサーモセンサ15は、床吹出し式室内機10へ信号を伝達可能に構成されている。リモートサーモセンサ15は、計測された下部温度を示す信号を床吹出し式室内機10へ送信する。これにより、床吹出し式室内機10は、空間Sの下部温度を認識し、当該下部温度に基づいて、吹出し口50から空間S内へ吹き出される空気の吹出温度を制御することができる。
【0020】
また、リモートサーモセンサ15は、空間S内に複数設置されていてもよい。この場合、床吹出し式室内機10は、例えば、複数のリモートサーモセンサ15によってそれぞれ計測された温度の平均値に基づいて、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を制御するようにしてもよい。
【0021】
複数の天井吹出し式室内機20の各々は、それぞれ後述される吸込温度センサ21を備える。吸込温度センサ21は、空間S内から天井吹出し式室内機20に吸い込まれる空気の温度(以下、「吸込温度」という。)を計測するセンサである。天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて、空間Sの上部の位置の温度(以下、「上部温度」という。)を推測する。本実施形態では、上部温度は、空間S内の床上120cmの高さの位置の温度である。天井吹出し式室内機20は、ユーザによって設定された設定温度に基づいて空間Sの上部温度を制御する。
【0022】
なお、天井吹出し式室内機20は、例えば、上部温度が吸込温度より所定の温度(例えば、2℃)だけ低くなることを予め認識している。天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21によって計測された吸込温度から上記の所定の温度の値を減算することによって、上部温度を推測する。
【0023】
なお、天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21に代えて、空間Sの上部温度を直に計測することが可能なセンサを備えていてもよい。この場合、上部温度を計測するセンサは、例えば、側壁の上部の位置(例えば、床上120cmの高さの位置)に設置されてもよい。すなわち、天井吹出し式室内機20に備えられる温度センサは、空間Sの上部温度を計測又は推測できるセンサであるならば、任意のセンサでよい。
【0024】
図2は、実施形態の空気調和システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、空気調和システム1は、床吹出し式室内機10と、リモートサーモセンサ15と、天井吹出し式室内機20-1と、天井吹出し式室内機20-2と、リモコン25と、室外機30と、冷媒配管35と、を有する。
【0025】
床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20の各々は、例えば不図示の、室内熱交換器と、室内膨張弁と、室内送風機と備える。
【0026】
室内送風機は、遠心式のファンを備える送風機である。なお、室内送風機が備えるファンは、例えば軸流式のファン等の、その他の構造のファンであってもよい。室内送風機が備えるファンは、室内熱交換器に対向するように配置される。室内送風機のファンの稼働によって、空間Sの天井裏の空間内の空気が床吹出し式室内機10に吸入され、空間S内の空気が天井吹出し式室内機20の各々に吸入される。床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20の各々に吸入された空気は、室内熱交換器によって冷媒と熱交換され、ファンの稼働によって再び空間S内へ放出される。
【0027】
図2に示されるように、床吹出し式室内機10は、吹出温度制御部11を含んで構成される。吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)送信される、空間Sの下部温度を示す情報を逐次取得する。吹出温度制御部11は、取得された情報に基づく下部温度に従って、吹出し口50から空間S内へ吹き出される空気の吹出温度を制御する。なお、吹出温度制御部11は、吹出し口50から空間S内へ吹き出される吹出温度を所望の温度に制御することができるように予め構成されている。
【0028】
例えば、吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10から放出された空気が吹出し口50から空間S内へ吹き出されるまでの間に低下する空気の温度を予め記憶している。吹出温度制御部11は、低下する温度の分だけ高い温度で床吹出し式室内機10から垂直ダクト40へ空気が放出されるように、室内熱交換器を制御する。
【0029】
なお、本実施形態では吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10に備えられているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、吹出温度制御部11は、室外機30に備えられていてもよいし、不図示の制御装置(外部装置)に備えられていてもよい。
【0030】
吹出温度制御部11は、例えば、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリ、及び補助記憶装置等を備える。吹出温度制御部11は、例えば補助記憶装置からプログラムを読み出して実行する。補助記憶装置は、例えば磁気ハードディスク装置又は半導体記憶装置等の記憶媒体を用いて構成される。例えば、補助記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性のメモリを用いて構成される。
【0031】
なお、吹出温度制御部11の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0032】
床吹出し式室内機10は、例えば、不図示の信号入力部を備える。信号入力部は、リモートサーモセンサ15から出力された信号の入力を受け付け、吹出温度制御部11へ出力する。例えば、信号入力部は、RS-232C(Recommended Standard - 232C)、RS-422A(Recommended Standard - 422A)、RS-485(Recommended Standard - 485)又はUSB(Universal Serial Bus)等の通信インタフェースを介して、リモートサーモセンサ15と通信可能に接続される。信号入力部は、この通信インタフェースを介して信号の入力を受け付ける。信号入力部は、不図示の内部バスに接続されており、当該内部バスを介して吹出温度制御部11へ信号を出力する。
【0033】
なお、信号入力部は、リモートサーモセンサ15から出力された信号の入力を受け付け、当該信号に基づく空間Sの下部温度のデータをセンサデータとして例えば補助記憶装置等の記憶媒体に記憶させるようにしてもよい。この場合、吹出温度制御部11は、当該記憶媒体に記憶されたセンサデータに基づいて、空間S内へ吹き出される空気の吹出温度を制御する。
【0034】
リモコン25は、空気調和システム1の設定に関するユーザによる操作入力を受け付ける入力インタフェースである。例えば、リモコン25は、空気調和システム1の電源状態のオンとオフとの切り替えを指示する操作入力を受け付ける。または例えば、リモコン25は、設定温度を指示する操作入力を受け付ける。ユーザは、空間S内を所望の温度にさせるため、リモコン25を操作して設定温度を指示する操作入力を行う。
【0035】
リモコン25は、入力された指示情報を天井吹出し式室内機20-1へ出力する。なお、リモコン25と天井吹出し式室内機20-1とは、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。天井吹出し式室内機20-1に入力された指示情報は、天井吹出し式室内機20-2、室外機30、及び床吹出し式室内機10へもさらに伝達される。これにより、空気調和システム1は、リモコン25から入力された指示情報に基づいて、空間S内の温度の制御、及び空気調和システム1の電源状態のオンとオフとの切り替え制御などを行うことができる。
【0036】
なお、空気調和システム1内における、リモコン25から入力された指示情報の伝達手段については、上記の構成に限られるものではない。例えば、リモコン25から入力された指示情報が、まず不図示の制御装置(外部装置)へ伝達され、当該制御装置から、床吹出し式室内機10、各々の天井吹出し式室内機20、及び室外機30へさらに伝達されるような構成であってもよい。
【0037】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、例えば空気調和システム1の高負荷時と低負荷時とで、互いに異なる運転モードで、吹出し口50から空間S内へ吹き出される空気の吹出温度の制御を行う。なお、運転モードの詳細については、後に詳しく説明する。
【0038】
本実施形態では、説明を簡単にするため、空気調和システム1の高負荷時とは、空気調和システム1のシステム起動時のことをいうものとする。なぜならば、一般的にシステム起動時は、ユーザによって設定された設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が大きい状態であることが多く、空気調和システム1にかかる負荷は相対的に高い状態になることが想定されるからである。
【0039】
また、本実施形態では、説明を簡単にするため、空気調和システム1の低負荷時とは、空気調和システム1のシステム起動時以外の時のことをいうものとする。なぜならば、一般的にシステム起動時以外の時は、設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が小さい状態であることが多く、空気調和システム1にかかる負荷は相対的に低く、動作が安定した状態になることが想定されるからである。
【0040】
但し、空気調和システム1の高負荷時及び低負荷時とは、上記の場合に限られるものではなく、例えば、高負荷時とは、設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が大きい状態である時全般のことであってもよく、低負荷時とは、設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が小さい状態である時全般のことであってもよい。
【0041】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15によって計測された下部温度が、リモコン25から入力された情報に基づく設定温度になるまで、後述される高負荷時モードで暖房運転を行う。下部温度の目標値である目標下部温度は、リモコン25から入力された設定温度である。吹出温度制御部11は、下部温度および目標下部温度に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度になった場合には暖房運転を停止させる。
【0042】
また、吹出温度制御部11は、暖房運転を停止させた後、計測された下部温度が所定の温度だけ下がった場合には後述される低負荷時モードで暖房運転を再開させる。本実施形態では、吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度から0.5℃下がった場合には暖房運転を再開させる。
【0043】
図2に示されるように、天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21を含んで構成される。前述の通り、吸込温度センサ21は、空間S内から天井吹出し式室内機20に吸い込まれる空気の吸込温度を計測する。天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21によって計測された吸込温度に基づいて、空間Sの上部温度を推測する。
【0044】
天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が、リモコン25から入力された情報に基づく設定温度より所定の温度だけ低い温度(目標上部温度)になるまで暖房運転を行う。天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が設定温度より所定の温度だけ低い温度になった場合には暖房運転を停止させる。また、天井吹出し式室内機20は、暖房運転を停止させた後、推測された上部温度が所定の温度だけ下がった場合には暖房運転を再開させる。
【0045】
本実施形態では、天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が、設定温度より2℃低い温度になった場合に暖房運転を停止させる。その後、天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が、設定温度より2℃低い温度から0.5℃下がった場合(すなわち、上部温度が設定温度より2.5℃低い温度になった場合)には暖房運転を再開させる。
【0046】
室外機30は、例えば不図示の、室外熱交換器と、四方弁と、圧縮機と、室外膨張弁と、室外送風機と、アキュムレータとを備える。冷媒配管35は、室外膨張弁と、室外熱交換器と、四方弁と、圧縮機と、アキュムレータとを接続する。
【0047】
室外熱交換器は、例えばフィンチューブ式の熱交換器である。四方弁は、冷媒配管35内で冷媒が流れる方向を切り替えるための弁である。四方弁は、暖房運転時の方向と、当該方向とは逆の方向である冷房運転時(あるいは除霜運転時)の方向とに、冷媒が流れる方向を切り替える。但し、本実施形態における空気調和システム1は、暖房専用の空気調和システムであってもよい。
【0048】
圧縮機は、公知のインバータ制御により運転周波数を変化させることができる。圧縮機は、吸込口から冷媒を吸い込み、内部で冷媒を圧縮する。圧縮機は、圧縮された冷媒を吐出口から外部へ吐出する。圧縮機の吸込口には、アキュムレータが取り付けられている。アキュムレータは、冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、液冷媒を蓄える。
【0049】
以下、それぞれの運転モード時における、床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11による吹出温度の制御について説明する。
【0050】
吹出温度制御部11は、運転モードに応じて異なる、予め設定された上限温度に基づいて吹出温度を制御する。吹出温度制御部11は、吹出温度が、上限温度を超えないようにしつつ、上限温度により近い温度になるように当該吹出温度を逐次制御する。以下、高負荷時(システム起動時)の運転モードを「高負荷時モード」といい、低負荷時(システム起動時以外の時)の運転モードを「低負荷時モード」という。
【0051】
図3は、高負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図である。
図3に示されるグラフにおいて、横軸はリモートサーモセンサ15によって計測される空間Sの下部温度を表し、縦軸は吹出温度制御部11によって制御される、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を表す。なお、
図3に示される下部温度及び吹出温度の単位は、ともに摂氏(℃)である。
【0052】
図3に示されるように高負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が20℃以下である場合には、吹出温度の上限温度は、下部温度に対して10℃加算された温度である。また、
図3に示されるように高負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が20℃以上である場合には、吹出温度の上限温度は、一定の温度であり、30℃である。
【0053】
一般的に、下部温度と吹出温度との関係に基づいて浮力効果が生じ、空間S内の下部にあった暖気が空間Sの上部へ上昇してしまうことがある。これにより、下部温度を高くすることで空間S内の上下温度差を小さくすることが妨げられてしまう。
図3に示される吹出温度の上限温度のラインは、このような浮力効果の影響による暖気の上昇を抑えるために適切に設定されたラインの一例である。
【0054】
すなわち、
図3に示される吹出温度の上限温度のラインは、下部温度が20℃以下である場合には、吹出温度が下部温度より10℃以上高くなると浮力効果の影響が大きくなるという一般的な調査結果に基づいて予め設定されている。また、当該上限温度のラインは、下部温度が20℃以上である場合には、吹出温度が30℃を超えると浮力効果の影響が大きくなるという一般的な調査結果に基づいて予め設定されている。
【0055】
吹出温度制御部11は、高負荷時モードでの運転時において、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)出力される、空間Sの下部温度を示す情報を取得する。吹出温度制御部11は、
図3に示される吹出温度の上限温度のラインに基づいて、測定された下部温度に対応する吹出温度の上限温度を特定する。
【0056】
なお、
図3に示される吹出温度の上限温度のラインを示す情報は、例えば前述の補助記憶装置等に予め記憶されている。吹出温度制御部11は、吹出温度が、特定された上限温度を超えないようにしつつ、特定された上限温度により近い温度になるように、当該吹出温度を逐次制御する。
【0057】
吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度になった場合には暖房運転を停止させる。その後、吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度から所定の温度(本実施形態では0.5℃)だけ下がった場合に、低負荷時モードで暖房運転を再開させる。
【0058】
図4は、低負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図である。
図3と同様に、
図4に示されるグラフにおいて、横軸はリモートサーモセンサ15によって計測される空間Sの下部温度を表し、縦軸は吹出温度制御部11によって制御される、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を表す。なお、
図4に示される下部温度及び吹出温度の単位は、ともに摂氏(℃)である。
【0059】
図4に示されるように低負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が19℃以下である場合には、前述の高負荷時モードと同様に、吹出温度の上限温度は、下部温度に対して10℃加算された温度である。一方、低負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が19℃以上である場合には、前述の高負荷時モードとは異なる上限温度で制御される。
【0060】
図4に示されるように、空間Sの下部温度が19℃以上である場合には、低負荷時モードにおける吹出温度の上限温度は、
図3に示される前述の高負荷時モードにおける吹出温度の上限温度より低い温度である。図示されるように、吹出温度の上限温度のラインは、下部温度19℃と吹出温度29℃との交点、及び下部温度26℃と吹出温度26℃との交点が含まれる、曲線状のラインである。この曲線状のラインは、上述した2つの交点をまっすぐ結んだ直線よりも、吹出温度が少し低くなるような緩い曲線を描くラインである。
【0061】
なお、この曲線状の吹出温度の上限温度のラインは、フィールド調査に基づいて導き出されたラインである。当該曲線状のラインは、吹出し口50から吹き上げられる温風によって顔が熱いと在室者に感じさせないようにするように、適切に設定されたラインの一例である。
【0062】
なお、下部温度19℃と吹出温度29℃との交点は、吹出温度の上限温度が下部温度に対して10℃加算された温度のラインと、下部温度19℃のラインとの交点に基づいて設定されたものである。なお、下部温度19℃は、フィールド調査において導き出された、在室者に寒いと感じさせないための下限の目安となる温度である。
【0063】
なお、下部温度26℃と吹出温度26℃との交点は、
図4において一点鎖線で示される、下部温度と吹出温度とが等温となるラインと、下部温度26℃のラインとの交点に基づいて設定されたものである。なお、下部温度26℃は、フィールド調査において導き出された、在室者に暑いと感じさせないための上限の目安となる温度である。
【0064】
吹出温度制御部11は、低負荷時モードでの運転時において、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)出力される、空間Sの下部温度を示す情報を取得する。吹出温度制御部11は、
図4に示される吹出温度の上限温度のラインに基づいて、測定された下部温度に対応する吹出温度の上限温度を特定する。
【0065】
なお、
図4に示される吹出温度の上限温度のラインを示す情報は、例えば前述の補助記憶装置等に予め記憶されている。吹出温度制御部11は、吹出温度が、特定された上限温度を超えないようにしつつ、特定された上限温度により近い温度になるように、当該吹出温度を逐次制御する。
【0066】
吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度になった場合には暖房運転を停止させる。その後、吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度から所定の温度(本実施形態では0.5℃)だけ下がった場合に、低負荷時モードで暖房運転を再開させる。
【0067】
以下、床吹出し式室内機10の動作の一例について説明する。
図5は、実施形態における床吹出し式室内機10の動作を示すフローチャートである。
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作は、例えば、空気調和システム1の電源がオンにされた際に開始される。
【0068】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、設定温度指示を示す情報の入力を待ち受ける(ステップS101)。設定温度指示とは、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空間S内の温度を所望の設定温度に制御させるための指示である。設定温度指示を示す情報は、例えば、リモコン25から出力され、天井吹出し式室内機20-1を介して床吹出し式室内機10へ入力される。
【0069】
吹出温度制御部11は、設定温度指示を示す情報の入力を受け付けた場合(ステップS101・YES)、例えば
図3に示される、高負荷時モードでの暖房運転時における空間Sの下部温度に対応する吹出温度の上限温度と、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度を示す情報とに基づいて吹出温度を逐次制御する、床吹出し制御を開始する(ステップS102)。
【0070】
次に、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が、設定温度指示を示す情報に基づく設定温度(目標下部温度)になるまで、高負荷時モードでの床吹出し制御を継続する(ステップS104)。
【0071】
その間、吹出温度制御部11は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS103・YES)、床吹出し制御を終了させる(ステップS111)。以上で、
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作が終了する。運転終了指示とは、例えば、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空気調和システム1の電源をオフにさせるための指示である。
【0072】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が設定温度(目標下部温度)になった場合(ステップS104・YES)、床吹出し制御を一時停止させる(ステップS105)。
【0073】
次に、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が、設定温度より0.5℃低くなるまで、床吹出し制御を一時停止させた状態を維持する(ステップS107)。
【0074】
その間、吹出温度制御部11は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS106・YES)、床吹出し制御を終了させる(ステップS111)。以上で、
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作が終了する。
【0075】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が設定温度より0.5℃低くなった場合(ステップS107・YES)、例えば
図4に示される、低負荷時モードでの暖房運転時における空間Sの下部温度に対応する吹出温度の上限温度と、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度を示す情報とに基づいて吹出温度を逐次制御する、床吹出し制御を開始する(ステップS108)。
【0076】
次に、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が、設定温度指示を示す情報に基づく設定温度(目標下部温度)になるまで、低負荷時モードでの床吹出し制御を継続する(ステップS110)。
【0077】
その間、吹出温度制御部11は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS109・YES)、床吹出し制御を終了させる(ステップS111)。以上で、
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作が終了する。
【0078】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が設定温度(目標下部温度)になった場合(ステップS110・YES)、床吹出し制御を一時停止させる(ステップS105)。吹出温度制御部11は、上記のステップS106以降の動作を繰り返す。
【0079】
次に、以下、天井吹出し式室内機20-1の動作の一例について説明する。
図6は、実施形態における天井吹出し式室内機20-1の動作を示すフローチャートである。
図6のフローチャートが示す天井吹出し式室内機20-1の動作は、例えば、空気調和システム1の電源がオンにされた際に開始される。なお、天井吹出し式室内機20-2の動作は、以下に説明する天井吹出し式室内機20-1の動作と基本的には同様であるため、説明を省略する。
【0080】
天井吹出し式室内機20-1は、設定温度指示を示す情報の入力を待ち受ける(ステップS201)。前述の通り、設定温度指示とは、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空間S内の温度を所望の設定温度に制御させるための指示である。設定温度指示を示す情報は、例えば、リモコン25から入力される。
【0081】
天井吹出し式室内機20-1は、設定温度指示を示す情報の入力を受け付けた場合(ステップS201・YES)、設定温度指示を示す情報を、床吹出し式室内機10、天井吹出し式室内機20-2、及び室外機30へ通知する(ステップS202)。
【0082】
次に、天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度と、ユーザによって設定された設定温度とに基づいて空間Sの上部温度を制御するための、天井吹出し制御を開始する(ステップS203)。
【0083】
次に、天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が、設定温度指示を示す情報に基づく設定温度より2℃低い温度(目標上部温度)になるまで、天井吹出し制御を継続する(ステップS205)。
【0084】
その間、天井吹出し式室内機20-1は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS204・YES)、天井吹出し制御を終了させる(ステップS209)。以上で、
図6のフローチャートが示す天井吹出し式室内機20-1の動作が終了する。前述の通り、運転終了指示とは、例えば、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空気調和システム1の電源をオフにさせるための指示である。
【0085】
天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が設定温度より2℃低い温度(目標上部温度)になった場合(ステップS205・YES)、天井吹出し制御を一時停止させる(ステップS206)。
【0086】
次に、天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が、設定温度より2℃低い温度からさらに0.5℃低い温度になるまで(すなわち、上部温度が設定温度より2.5℃低くなるまで)、天井吹出し制御を一時停止させた状態を維持する(ステップS208)。
【0087】
その間、天井吹出し式室内機20-1は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS207・YES)、天井吹出し制御を終了させる(ステップS209)。以上で、
図6のフローチャートが示す天井吹出し式室内機20-1の動作が終了する。
【0088】
天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が、設定温度より2℃低い温度からさらに0.5℃低い温度になった場合(ステップS208・YES)、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度と、ユーザによって設定された設定温度とに基づいて空間Sの上部温度を制御する、天井吹出し制御を再開する(ステップS203)。天井吹出し式室内機20-1は、上記のステップS204以降の動作を繰り返す。
【0089】
このように、本実施形態における空気調和システム1は、システムの起動時には、床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20を用いた、全機での暖房運転を実行する。これにより、空間S内の温度が、設定温度に近い温度にまで迅速に高められる。そして、空気調和システム1は、上部温度が設定温度より2℃低い温度にまで上昇した時点で天井吹出し式室内機20を停止させ、床吹出し式室内機10のみを用いた暖房運転に切り替わる。その後、床吹出し式室内機10によって制御可能な範囲であるならば、床吹出し式室内機10による暖房運転のみによって空間S内の温度が制御される。
【0090】
また、本実施形態における空気調和システム1は、低負荷時(例えば、システム起動時以外の時)には、高負荷時と比べて吹出温度をきめ細かく制御するため、快適性をより向上させることができる。
【0091】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、時間情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
空気調和システム1が停止している場合でも、様々な理由により時間に応じて、空間Sの温度が変化する。例えば、昼間には日射の影響により、空間Sの温度が高くなる。吹出温度制御部11は、空間Sの温度に関連する時間情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。以下の説明では、時間や温度などの具体例を括弧内に表示する場合がある。
【0092】
図7は、時刻に対する下部目標温度の設定例を示す図である。例えば、空気調和システム1の床吹出し式室内機10の運転が、朝の7時に開始される。空気調和システム1の運転は、リモコン25から入力された電源オンの指示情報により開始される。空気調和システム1の運転開始時に、リモコン25から設定温度の指示情報が入力される。例えば、設定温度は24℃である。吹出温度制御部11は、外部のリモコン25から入力された設定温度に基づいて算出した第1温度を、空間Sの下部温度の目標値である目標下部温度に設定する。例えば、第1温度は、設定温度と同じ24℃である。吹出温度制御部11は、空気調和システム1の運転開始時の目標下部温度を、第1温度(24℃)に設定する。
吹出温度制御部11は、高負荷時モードにより、床吹出し式室内機10の運転を開始する。床吹出し式室内機10の運転により、下部温度が上昇する。
【0093】
吹出温度制御部11は、第1時刻の情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
第1時刻は、昼間に空間Sの温度が高くなる時刻である。一般に、昼間の12時以降(15時頃まで)の時刻には、日射の影響により、空間S内の温度が高くなる。例えば、第1時刻は12時である。
【0094】
第1時刻(12時)より第1所定時間だけ前の時刻が第2時刻である。例えば、第1所定時間は2時間であり、第2時刻は10時である。
図7の例では、第2時刻(10時)より前の7時に、床吹出し式室内機10の運転が開始されている。
図1に示されるように、床吹出し式室内機10から送出された暖気は、床下給気チャンバー45を通り、床面の吹出し口50から空間S内へ吹き出される。空間Sの温度上昇に伴って、床下に熱量が蓄積される。
【0095】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から、空間Sの下部温度を示す情報を取得する。吹出温度制御部11は、
図7に示される第2時刻(10時)において、空間Sの下部温度が、第2温度に到達したか判断する。第2温度は、第1温度(24℃)から第1所定温度だけ低い温度である。例えば、第1所定温度は1℃であり、第2温度は23℃である。床吹出し式室内機10の運転開始(7時)から第2時刻(10時)までに十分な時間が経過していれば、第2時刻(10時)において下部温度が第2温度(23℃)に到達している。
【0096】
第2時刻(10時)において下部温度が第2温度(23℃)に到達している場合に、吹出温度制御部11は、第2温度(23℃)を目標下部温度に設定する。下部温度は第2温度(23℃)に到達しているので、下部温度が目標下部温度に到達したことになる。吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10の運転を一時停止させる。
【0097】
床吹出し式室内機10の運転開始(7時)から第2時刻(10時)までに十分な時間が経過していれば、床下に十分な熱量が蓄積されている。床吹出し式室内機10の運転が一時停止されても、床下蓄熱の効果により室内Sの下部温度は少しずつ上昇する。第2時刻(10時)と第1時刻(12時)との間隔である第1所定時間(2時間)は、床下蓄熱の効果により下部温度が上昇を続ける時間である。第1時刻(12時)を経過すれば、日射により下部温度が上昇する。下部温度は、第2時刻(10時)以後に、リモコン25から入力された設定温度と同じ第1温度(24℃)に到達する。第2時刻(10時)において床吹出し式室内機10の運転を一時停止しても、下部温度は第1温度(24℃)に到達する。床吹出し式室内機10の運転を一時停止することにより、床吹出し式室内機10のエネルギー消費量が抑制される。
【0098】
吹出温度制御部11は、第3時刻において、第1温度(24℃)を目標下部温度に設定する。
第3時刻は、第2時刻(10時)より第2所定時間だけ後の時刻である。例えば、第2所定時間は1時間であり、第3時刻は11時である。第3時刻(11時)は、第1時刻(12時)より前の時刻である。
【0099】
第3時刻(11時)において、空間Sの下部温度が目標下部温度-0.5℃より高ければ、吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10の運転停止を継続する。下部温度が目標下部温度-0.5℃より低ければ、吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10の運転を再開する。吹出温度制御部11は、低負荷時モードにより床吹出し式室内機10の運転を再開する。
【0100】
雨天等により日射が十分でない場合には、第2時刻(10時)以降に下部温度が順調に上昇しない可能性がある。この場合には、下部温度が第1温度(24℃)に到達しない可能性がある。第1温度(24℃)を目標下部温度に設定すれば、床吹出し式室内機10の運転により、下部温度が第1温度(24℃)に到達する。
【0101】
日射が十分であり、第2時刻(10時)以降に下部温度が順調に上昇する場合には、第3時刻(11時)において第1温度(24℃)を目標下部温度に設定しても、床吹出し式室内機10の運転停止が継続される。第2時刻(10時)と第3時刻(11時)との間隔である第2所定時間(1時間)は、下部温度が第2温度(23℃)から第1温度(24℃)の近くまで、順調に上昇する時間である。床吹出し式室内機10の運転停止が継続されることにより、床吹出し式室内機10のエネルギー消費量が抑制される。
【0102】
図8は、太陽光Rの入射による空間の温度分布例を示す図である。吹出温度制御部11は、第1時間範囲の情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転抑制処理を実施する。
第1時間範囲は、空間Sに太陽光Rが入射する時間範囲であり、例えば10-15時である。
【0103】
前述されたように、床吹出し式室内機10は、空間Sの天井裏に配置される。床吹出し式室内機10は、空間Sの天井に設置された吸込み口12から、空間Sの天井部の空気を吸い込む。床吹出し式室内機10は、吸込温度センサ13を有する。吸込温度センサ13は、床吹出し式室内機10に吸い込まれる空気の温度である吸込温度を示す情報を出力する。吸込温度は、空間Sの天井部の温度である天井部温度に相当する。
【0104】
吹出温度制御部11は、第1時間範囲(10-15時)において、天井部温度が閾値を上回る場合に、床吹出し式室内機10の運転抑制処理を実施する。例えば、閾値は26℃である。運転抑制処理は、床吹出し式室内機10の運転を一時停止する処理である。運転抑制処理は、目標下部温度を低下させる処理でもよい。目標下部温度を低下させることにより、空間Sの下部温度が目標下部温度を上回り、床吹出し式室内機10の運転が一時停止する。
【0105】
空間Sに太陽光Rが入射すると、最初に空間Sの天井部温度が上昇し、その後に上部温度(床上120cm付近の温度)および下部温度(床上30cmのリモートサーモセンサ15付近の温度)が上昇する。天井部温度が閾値(26℃)を上回った時点では、下部温度が第1温度(24℃)に到達していない可能性がある。床吹出し式室内機10の運転を一時停止しても、空間Sへの太陽光Rの入射が継続することにより、空間Sの各部の温度が上昇し、下部温度が第1温度(24℃)に到達する。床吹出し式室内機10の運転を一時停止することにより、床吹出し式室内機10のエネルギー消費量が抑制される。
【0106】
吹出温度制御部11は、第4時刻から、温度補正処理を実施する。
図7に示されるように、第4時刻は、第2時刻(10時)から第3所定時間だけ後の時刻である。例えば、第3所定時間は2時間であり、第4時刻は12時である。
温度補正処理は、第3温度を目標下部温度に設定する処理である。第3温度は、第1温度(24℃)より第2所定温度だけ高い温度である。例えば、第2所定温度は1℃であり、第3温度は25℃である。温度補正処理は、下部温度を第2所定温度(1℃)だけ低く取り扱う処理でもよい。
【0107】
前述されたように、床吹出し式室内機10の運転開始(7時)から第2時刻(10時)までに十分な時間が経過していれば、床下に十分な熱量が蓄積されている。第2時刻(10時)から第3所定時間(2時間)が経過すると、リモートサーモセンサ15にも熱量が蓄積される。リモートサーモセンサ15は、蓄熱の影響により、実際の下部温度よりも第2所定温度(1℃)だけ高い温度を示す情報を出力する。リモートサーモセンサ15の蓄熱の影響は、空気調和システム1の運転が停止されるまで継続する。
【0108】
吹出温度制御部11は、第4時刻(12時)から、温度補正処理として、第3温度(25℃)を目標下部温度に設定する。リモートサーモセンサ15が実際の下部温度より第2所定温度(1℃)だけ高い温度を示す情報を出力する場合でも、第1温度(24℃)より第2所定温度(1℃)だけ高い温度である第3温度(25℃)を目標下部温度に設定すれば、実際の下部温度が第1温度(24℃)に調整される。
【0109】
吹出温度制御部11は、第4時刻(12時)から、温度補正処理として、リモートサーモセンサ15が出力する下部温度を、第2所定温度(1℃)だけ低く取り扱ってもよい。リモートサーモセンサ15が実際の下部温度より第2所定温度(1℃)だけ高い温度を出力する場合でも、吹出温度制御部11は実際の下部温度を制御温度として取り扱うことができる。
【0110】
吹出温度制御部11は、第4時刻(12時)から、床吹出し式室内機10の出力を低下させて、床吹出し式室内機10を運転する。
【0111】
前述されたように、吹出温度制御部11は、低負荷時モードでの床吹出し式室内機10の運転時において、吹出し口50(
図8参照)からの吹出温度を、
図4に示される上限温度に近づける。前述されたように、吸込温度センサ13(
図8参照)は、床吹出し式室内機10に吸い込まれる空気の温度である吸込温度を示す情報を出力する。吹出温度制御部11は、吹出温度と吸込温度との差に基づいて、床吹出し式室内機10の出力を算出する。
【0112】
吹出温度制御部11は、第4時刻(12時)の前後で、床吹出し式室内機10の出力を同様に算出する。吹出温度制御部11は、算出した床吹出し式室内機10の出力に所定割合を乗算して、第4時刻(12時)以後の床吹出し式室内機10の出力を決定する。例えば、所定割合は0.6である。これにより、吹出温度は、吸込温度+2℃の程度に抑制される。
【0113】
第4時刻(12時)には、床下からリモートサーモセンサ15まで、空間Sの各部に多くの熱量が蓄積されている。吹出温度を抑制しても、蓄熱の効果により、空間Sの下部温度は上昇する。床吹出し式室内機10の出力を抑制することにより、床吹出し式室内機10のエネルギー消費量が抑制される。
【0114】
吹出温度制御部11は、第5時刻の情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を停止する。
【0115】
第5時刻は、夜間に空気調和システム1(天井吹出し式室内機20および床吹出し式室内機10)の運転を停止する時刻である。第5時刻は、リモコン25のタイマーに設定された時刻であり、例えば21時である。第5時刻(21時)から第4所定時間だけ前の時刻が第6時刻である。例えば、第4所定時間は1時間であり、第6時刻は20時である。
【0116】
吹出温度制御部11は、第6時刻(20時)より前に空間Sの下部温度が目標下部温度に到達した場合に、第6時刻(20時)において、床吹出し式室内機10の運転抑制処理を実施する。第6時刻(20時)より前に下部温度が目標下部温度に到達した場合には、第6時刻(20時)において、床吹出し式室内機10の運転が一時停止されているか、または床吹出し式室内機10が低負荷時モードで運転されている。
【0117】
第6時刻(20時)より前に下部温度が目標下部温度に到達していれば、第6時刻(20時)の下部温度は目標下部温度に近い。第6時刻(20時)には、床下に十分な熱量が蓄積されている。第6時刻(20時)に床吹出し式室内機10の運転を停止しても、床下蓄熱の効果により、下部温度は第5時刻(21時)まで目標下部温度の近くに維持される。第6時刻(20時)と第5時刻(21時)との間隔である第4所定時間(1時間)は、床下蓄熱の効果により下部温度が維持される時間である。第5時刻(21時)より前の第6時刻(20時)に床吹出し式室内機10の運転が停止されることにより、床吹出し式室内機10のエネルギー消費量が抑制される。
【0118】
以上に詳述されたように、実施形態の空気調和システム1は、天井吹出し式室内機20と、床吹出し式室内機10と、吹出温度制御部11と、を持つ。天井吹出し式室内機20は、空間Sの天井部から空間Sの内部に対して温度調整された風を吹き出す。床吹出し式室内機10は、空間Sの床部から空間Sの内部に対して温度調整された風を吹き出す。吹出温度制御部11は、空間Sの下部の温度を下部温度とし、目標となる下部温度を目標下部温度としたとき、下部温度および目標下部温度に基づいて床吹出し式室内機10の運転を制御する。吹出温度制御部11は、空間Sの温度に関連する時間情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0119】
空間Sの温度に関連する時間情報に基づいて床吹出し式室内機10の運転を制御すれば、床吹出し式室内機10の運転を抑制した場合でも、下部温度が目標下部温度に接近する。これにより、空気調和システム1のエネルギー消費量が抑制される。
【0120】
時間情報は、昼間に空間Sの温度が高くなる第1時刻(12時)の情報である。第1時刻(12時)から第1所定時間(2時間)だけ前の時刻である第2時刻(10時)より前に、リモコン25からの入力に基づいて算出した第1温度(24℃)を目標下部温度に設定して、床吹出し式室内機10の運転が開始される場合がある。第2時刻(10時)において、下部温度が、第1温度(24℃)から第1所定温度(1℃)だけ低い温度である第2温度(23℃)に到達している場合がある。これらの場合に、吹出温度制御部11は、第2時刻(10時)から、第2温度(23℃)を目標下部温度に設定して、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0121】
これらの場合には、第2時刻(10時)において、床下に十分な熱量が蓄積されている。第2時刻(10時)において、第2温度(23℃)を目標下部温度に設定すれば、床吹出し式室内機10の運転が一時停止する。第2時刻(10時)において床吹出し式室内機10の運転を一時停止しても、下部温度は第1温度(24℃)に到達する。床吹出し式室内機10の運転を一時停止することにより、空気調和システム1のエネルギー消費量が抑制される。
【0122】
第1時刻(12時)以前の時刻であって、第2時刻(10時)から第2所定時間(1時間)だけ後の時刻を第3時刻(11時)とする。吹出温度制御部11は、第3時刻(11時)から第1温度(24℃)を目標下部温度に設定して、床吹出し式室内機10の運転を制御する。
【0123】
第2時刻(10時)以降に下部温度が順調に上昇しない場合がある。第3時刻(11時)から第1温度(24℃)を目標下部温度に設定すれば、床吹出し式室内機10の運転により、下部温度が第1温度(24℃)に到達する。
第2時刻(10時)以降に下部温度が順調に上昇する場合には、第3時刻(11時)から第1温度(24℃)を目標下部温度に設定しても、床吹出し式室内機10の運転の一時停止が継続される。空気調和システム1のエネルギー消費量が抑制される。
【0124】
時間情報は、空間Sに太陽光Rが入射する第1時間範囲(10-15時)の情報である。空間Sの天井部の温度を天井部温度とする。吹出温度制御部11は、第1時間範囲(10-15時)において、天井部温度が閾値(26℃)を上回る場合に、床吹出し式室内機10の運転抑制処理を実施する。運転抑制処理は、床吹出し式室内機10の運転を一時停止する処理であるか、または目標下部温度を低下させる処理である。
【0125】
空間Sに太陽光Rが入射すると、最初に空間Sの天井部温度が上昇し、その後に下部温度が上昇する。床吹出し式室内機10の運転を一時停止しても、空間Sへの太陽光Rの入射が継続することにより、下部温度が第1温度(24℃)に到達する。床吹出し式室内機10の運転を一時停止することにより、空気調和システム1のエネルギー消費量が抑制される。
【0126】
第2時刻(10時)から第3所定時間(2時間)だけ後の時刻を第4時刻(12時)とする。吹出温度制御部11は、第4時刻(12時)から、温度補正処理を実施して、床吹出し式室内機10の運転を制御する。温度補正処理は、第1温度(24℃)より第2所定温度(1℃)だけ高い温度である第3温度(25℃)を目標下部温度に設定する処理であるか、または下部温度を第2所定温度(1℃)だけ低く取り扱う処理である。
【0127】
第2時刻(10時)から第3所定時間(2時間)が経過すると、リモートサーモセンサ15に熱量が蓄積し、リモートサーモセンサ15は実際の下部温度よりも第2所定温度(1℃)だけ高い温度を示す情報を出力する。温度補正処理により、実際の下部温度が第1温度(24℃)に調整される。
【0128】
吹出温度制御部11は、第4時刻(12時)から、床吹出し式室内機10の出力を低下させて床吹出し式室内機10の運転を制御する。
第4時刻(12時)には、床下からリモートサーモセンサ15まで、空間Sの各部に多くの熱量が蓄積されている。床吹出し式室内機10の出力を低下させても、蓄熱の効果により、下部温度は上昇する。床吹出し式室内機10の出力を低下させることにより、空気調和システム1のエネルギー消費量が抑制される。
【0129】
時間情報は、夜間に天井吹出し式室内機20および床吹出し式室内機10の運転を停止する第5時刻(21時)の情報である。第5時刻(21時)から第4所定時間(1時間)だけ前の時刻を第6時刻(20時)とする。吹出温度制御部11は、第6時刻(20時)より前に下部温度が目標下部温度に到達した場合に、第6時刻(20時)において、床吹出し式室内機10の運転を停止する。
【0130】
第6時刻(20時)より前に下部温度が目標下部温度に到達していれば、第6時刻(20時)には、床下に十分な熱量が蓄積されている。第6時刻(20時)に床吹出し式室内機10の運転を停止しても、床下蓄熱の効果により、下部温度は第5時刻(21時)まで目標下部温度の近くに維持される。第5時刻(21時)より前の第6時刻(20時)に床吹出し式室内機10の運転を停止することにより、空気調和システム1のエネルギー消費量が抑制される。
【0131】
上述した実施形態における空気調和システム1の一部を、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0132】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、空間Sの温度に関連する時間情報に基づいて、床吹出し式室内機10の運転を制御する、吹出温度制御部11を持つ。これにより、空気調和システム1のエネルギー消費量を抑制することができる。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0134】
R…太陽光、S…空間、1…空気調和システム、10…床吹出し式室内機(第2室内機)、11…吹出温度制御部(制御部)、20…天井吹出し式室内機(第1室内機)、25…リモコン(外部)。