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特開2024-131645ポリエーテルイミド溶液およびポリエーテルイミド多孔体の製造方法
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  • 特開-ポリエーテルイミド溶液およびポリエーテルイミド多孔体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131645
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ポリエーテルイミド溶液およびポリエーテルイミド多孔体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20240920BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L79/08
C08J9/28 101
C08J9/28 CFG
C08L71/02
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/403 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042043
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伏井 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA74
4F074AH03
4F074CB47
4F074DA02
4F074DA32
4F074DA49
4F074DA59
4J002CH01X
4J002CH05X
4J002CM04W
4J002FD010
4J002FD140
4J002FD200
4J002FD310
4J002GQ00
4J002HA05
5H021BB12
5H021BB13
5H021CC04
5H021EE02
(57)【要約】
【課題】凝固液や抽出液を使用しない、いわゆる乾式法によりポリエーテルイミド(PEI)多孔体の作製が可能なPEI溶液を提供する。
【解決手段】ポリエーテルイミドと、PEIの良溶媒と、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒と、を含有するPEI溶液。この溶液を基材に塗布した後に、乾燥することにより、凝固液や抽出液等の多孔化のための何らかの溶媒に浸漬する必要のない、いわゆる乾式法によって、PEI多孔体を製造することができるので、工業的に有利である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルイミド(PEI)と、PEIの良溶媒と、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒と、を含有するPEI溶液。
【請求項2】
請求項1記載のPEI溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する工程および、前記塗膜の乾燥工程を含む、PEI多孔体の製造方法。
【請求項3】
塗膜を凝固液または抽出液へ浸漬する工程を含まない、請求項2記載のPEI多孔体の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の製造方法により得られるPEI多孔体
【請求項5】
請求項4記載のPEI多孔体の、リチウム二次電池用セパレータへの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルイミド溶液およびこのポリエーテルイミド溶液を用いたポリエーテルイミド多孔体の製造方法に関するものである(以下、ポリエーテルイミドを「PEI」と略記することがある)。
【背景技術】
【0002】
PEIは、その優れた耐熱性や寸法安定性を利用して、電子材料や光学材料、光通信用光ファイバー周辺部材、航空宇宙関連部材、自動車内部材、医療材料の素材等の分野で利用されている。特に、PEIの多孔体は、フィルタや分離膜の分野で利用されている。PEI多孔体の製法としては、例えば特許文献1に、PEIを良溶媒に溶解させてPEI溶液とし、貧溶媒に浸漬させて良溶媒を抽出除去することで、PEI多孔体を得ることが開示されている。また、特許文献2には相分離化剤を配合して凝固液に浸漬し、抽出除去することでPEI多孔体を得ることが開示されている。特許文献1、2に開示されているような、いわゆる湿式法においては、PEI多孔体製造の際、凝固液や抽出液の使用により、水、アミド系溶媒、アルコール系溶媒等を含む大量の廃液が発生し、環境適合性の観点から問題があった。また、浸漬工程が必須であることから、量産時には専用設備が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-126638号公報
【特許文献2】特開2014-118489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、凝固液や抽出液を使用せずにPEIを多孔体化できる手法は実現していなかった。
【0005】
そこで本発明は、前記課題を解決するものであって、凝固液や抽出液を使用しない、いわゆる乾式法によりPEI多孔体の作製が可能なPEI溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、PEI溶液を特定の組成、特に特定の溶媒種を選択することにより前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明は以下を趣旨とするものである。
PEIと、PEIの良溶媒と、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒と、を含有するPEI溶液。
【発明の効果】
【0008】
本発明のPEI溶液から、簡単なプロセスで容易にPEI多孔体を得ることができる。このプロセスは、樹脂溶液を基材に塗布した後に、凝固液や抽出液等の多孔化のための何らかの溶媒に浸漬する必要のない、いわゆる乾式法であるため、湿式法で必要であった廃液処理の必要がない、従来の一般的な熱風乾燥設備が使用可能である、連続生産時の作製スピードが湿式法工程と比べて大幅に向上するなど、工業的に有利である。得られたPEI多孔体は、耐熱性に優れ、気孔率が高く、透過性に優れ、かつ気孔の優れた均一性に基づく良好な力学的特性を有するので、電子材料や光学材料、リチウム二次電池用セパレータ、フィルタ、分離膜、電線被覆等の産業用材料、医療材料の素材、断熱材、絶縁材等の分野で使用することができ、特にリチウム二次電池用セパレータには好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られたPEI多孔質フィルム断面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のPEI溶液は、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒が溶液中に含まれていることが必要である。ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒が含まれていなければ、製膜したときに多孔化せず、多孔膜を得ることができない。
【0011】
本発明のPEI溶液は、PEIと、PEIの良溶媒と、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒とを含有する。
本発明に使用されるPEIは、主鎖にイミド結合とエーテル結合を有する耐熱性高分子であり、例えば、下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有するものである。
【0012】
【化1】

上記式において、n(重合度)は通常10~1000であり、好ましくは10~500である。
【0013】
R1としては、例えば、下記構造が挙げられる。
【化2】

【0014】
R2としては、例えば、下記構造が挙げられる。
【化3】

【0015】
PEIは市販の材料を用いることもできる。例えば、SABIC Innovative Plastics社製「ウルテム」シリーズ、「エクステム」シリーズを用いることができる。
【0016】
PEIの耐熱性の指標として、他樹脂の多孔材料との差別化の観点からガラス転移温度(Tg)は200℃以上であることが好ましく、200~250℃のものがより好ましい。
【0017】
PEI溶液の溶媒は、PEIの良溶媒と、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒とを使用する。ここで、PEIの良溶媒とは、25℃においてPEIを1質量%以上の濃度で溶解できる溶媒のことを言う。
良溶媒(A)とポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒(B)の混合比率A/B(質量比)は10/90~90/10の範囲とすることが好ましく、50/50~80/20の範囲とすることがより好ましい。溶媒組成を前記のようにすることによって、PEI溶液から得られる塗膜を乾燥して固化させる際に、塗膜中に残存する溶媒(B)の作用により、効率よく相分離が起こる。
【0018】
良溶媒(A)としては、PEIを前記濃度で溶解できる溶媒であれば特に限定されないが、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラメチル尿素、ジメチルエチレン尿素、アニソール、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒(B)としては、ポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む限りにおいては特に限定されない。
溶媒(B)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、ポリオキシエチレンジアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアリルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジアリルエーテルなどが挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは、分子量が300~1200程度のものが好ましい。その中でも、高気孔率な多孔体形成が可能であることから、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、ポリオキシエチレンジアリルエーテルが好ましい。
【0020】
PEI溶液の調製方法は、特に限定されず、PEIを、予め調製した溶媒(A)と溶媒(B)との混合溶媒に溶解してもよいし、PEIを良溶媒(A)に溶解して良溶媒溶液とした後、溶媒(B)を添加してもよい。
【0021】
PEI溶液中におけるPEI固形分濃度は、1~50質量%が好ましく、2~35質量%がより好ましく、5~30質量%がさらに好ましい。
【0022】
PEI溶液には、フィラを配合することができる。フィラを配合することにより、PEI多孔体の剛性を向上させることができる。また、気体や液体の透過性を向上させることができる。
【0023】
フィラの種類に制限は無く、有機フィラ、無機フィラおよびその混合物等を用いることができる。有機フィラの具体例の具体例としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独または2種類以上の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂等の重合体からなる粉体を挙げることができる。有機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。無機フィラの具体例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉体を挙げることができる。具体例としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる粉体を挙げることができる。無機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
フィラの形状に制限はなく、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状等の粒子を用いることができ、略球状粒子が好ましい。
【0025】
フィラは、その表面が、界面活性剤やシランカップリング剤のような表面処理剤で処理されていてもよい。
【0026】
フィラ混合量に制限はないが、通常、PEI固形分に対し、10~1000質量%であり、50~600質量%とすることが好ましい。
【0027】
PEI溶液には、フィラ以外にも、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、架橋剤等の公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0028】
界面活性剤としては、特に限定されないが、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが使用できる。ノニオン界面活性剤としては、例えばエステル型、エーテル型、エステル・エーテル型の界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えばカルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えばアミン塩型、第4級アンモニウム塩型などが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばカルボン酸塩型、アミノ酸型、ベタイン型が挙げられる。
【0029】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、アルキル系、ウレイド系、メタクリル系、ビニル系、スチリル系、およびカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0030】
架橋剤としては、特に限定されないが、カルボジイミド化合物や、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基等のような熱架橋性基を分子内に2つ以上有する化合物などが挙げられる。
【0031】
PEI溶液には、必要に応じて、PEI以外のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。そのようなポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、及びポリイミドが挙げられる。
【0032】
前記のようにして得られたPEI溶液を、基材の表面に塗布後、塗膜を乾燥することにより、この塗膜から多孔体が形成される。前記乾燥時には、(A)、(B)それぞれの溶媒に対するPEIの溶解度差によって、熱がかかる際に塗膜中で相分離が誘発される。その相分離した状態で乾燥を進めると、溶媒成分が揮発し、多孔構造となる。すなわち、樹脂溶液を基材に塗布した後に、多孔化のため何らかの溶媒に浸漬することなしに、多孔体を得ることができる。
その後、基材からPEI多孔体を剥離してPEI多孔体単体とすることができる。また、基材上に形成されたPEI多孔体は、基材から剥離することなく、基材と積層一体化して使用することもできる。
【0033】
前記乾燥工程において、乾燥温度の上限値に制限は無いが、200℃以下とすることが好ましく、180℃以下とすることがより好ましい。乾燥温度の下限値にも制限は無いが、60℃以上とすることが好ましい。なお、乾燥の際、加湿雰囲気で乾燥を行うこともできる。また、PEI多孔体は、耐熱性に優れるので、乾燥後、ガラス転移温度以下の温度でさらなる熱処理を行ってもよい。また、乾燥後の製膜品にはポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒もしくはその分解物が残留することがあるため、製膜品を水やメタノールなどに1時間以上浸漬し、再び180℃程度で1時間以上乾燥することで、残留物を除くことができる。
【0034】
前記基材の具体例としては、金属箔、金属線、ガラス板、熱可塑性樹脂フィルム(ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート等)、ポリイミド等の熱硬化性樹脂フィルム、各種織物、各種不織布(ポリエステル、セルロース等)等を挙げることができる。前記金属としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム等を挙げることができる。基材は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。これら基材への塗液の塗布方法としては、ディップコータ、バーコータ、スピンコータ、ダイコータ、スプレーコータ等を用い、連続式またはバッチ式で塗布することができる。
【0035】
PEI多孔体の厚みに制限はないが、通常、1~1000μm程度であり、10~500μm程度が好ましい。
【0036】
(気孔率)
PEI多孔体の気孔率は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましい。ここで、フィルム状のPEI多孔体(PEI多孔質フィルム)の気孔率は、以下の式を用いて算出された値を用いることができる。
気孔率(体積%)= 100-100×(W/D)/(S×T)
式中のSはPEI多孔質フィルムの面積、Tはその厚み、Wはその質量、Dは対応する非多孔質PEIフィルムの密度を示す。
【0037】
(気孔径)
PEI多孔体の気孔径は、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上、5μm以下であることがより好ましい。気孔径は、PEI多孔体断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を倍率5000~20000倍で取得し、得られた画像に2値化処理をして、気孔の個数データと面積データを取得することにより算出することができる。なお、PEI多孔体の気孔は、連続気孔であっても、独立気孔であってもよい。
【0038】
PEI多孔体の気孔率や気孔径は、溶媒の混合比率やPEI濃度を選ぶことにより、適宜制御することができる。
【実施例0039】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
実施例にて使用する原料は、以下の通りである。
【0040】
(PEI樹脂)
PEI-1:ウルテム1000(SABIC Innovative Plastics社製、ガラス転移温度217℃、4,4′-(4,4′-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物とメタフェニレンジアミンの重合体)
PEI-2:ウルテム1010(SABIC Innovative Plastics社製、ガラス転移温度212℃、4,4′-(4,4 ′-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物とパラフェニレンジアミンの重合体)
(溶媒A)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
CP:シクロペンタノン
(溶媒B)
PEAM:ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(平均分子量350)
PEAA:ポリオキシエチレンジアリルエーテル(平均分子量700)
PEMM:ポリオキシエチレンジメチルエーテル(平均分子量400)
PEPPMM:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテル(平均分子量700)
(その他の溶媒)
Xy:混合キシレン
TOL:トルエン
【0041】
<実施例1>
NMP(溶媒A)とポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(溶媒B)とからなる、溶媒A/溶媒B=60/40の質量比率で混合した混合溶媒に、PEIを固形分濃度が対PEI溶液比で15質量%となるように60℃で溶解した後、室温まで冷却し、均一なPEI溶液(No.1)を得た。
【0042】
この溶液を、表面がコロナ放電処理されたPETフィルム(ユニチカ社製:厚み100μm)上に塗布し、160℃で30分乾燥後、PETフィルムから塗膜を剥離することにより、厚みが50μmのPEI多孔質フィルムを得た。このPEI多孔質フィルムの気孔率の測定結果を表1に示す。また、このPEI多孔質フィルム断面のSEM像を図1に示す。断面全般にわたって、孔径2~3μm程度の均一な気孔が形成され、表面にも気孔が形成されていることが判る。
【0043】
<実施例2~11>
表1に示すようにPEI濃度、使用溶媒、溶媒比率を変更した以外は、実施例1と同様にして、PEI溶液(No.2~No.11)を作製した。これらの溶液から、実施例1と同様の条件でPEI多孔質フィルムを得た。これらのPEI多孔質フィルムの気孔率測定結果を表1に示す。
【0044】
<比較例1>
PEI-1をNMPに、固形分濃度が15質量%となるように60℃で溶解して均一なPEI溶液(No.12)を得た。
【0045】
この溶液を用いて、実施例1と同様にして、厚みが50μmのPEIフィルムを得た。このPEIフィルムは、PEI溶液に貧溶媒となる溶媒が含まれていないため多孔化しなかった。
【0046】
<比較例2>
実施例1において、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテルに代えて、キシレンを用いた以外は、同様の操作をおこなって、均一なPEI溶液(No.13)を得た。
【0047】
この溶液を用いて、実施例1と同様にして、厚みが50μmのPEIフィルムを得た。このPEIフィルムは、PEI溶液にポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒が含まれていないため多孔化しなかった。
【0048】
<比較例3>
実施例1において、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテルに代えて、トルエンを用いた以外は、同様の操作をおこなって、均一なPEI溶液(No.14)を得た。
【0049】
この溶液を用いて、実施例1と同様にして、厚みが50μmのPEIフィルムを得た。このPEIフィルムは、PEI溶液にポリオキシアルキレン骨格を構造中に含む溶媒が含まれていないため多孔化しなかった。
【0050】
実施例、比較例で得られた結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例で示した様に、本発明のPEI溶液からいわゆる乾式プロセスによりPEI多孔体が得られ、二次電池セパレータやフィルタ等多孔材料が使用されている部材への使用可能性があることが判る。これに対し、比較例で示したPEI溶液からはPEI多孔体が得られず、多孔材料が使用されている部材への適用は難しいことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のPEI溶液は、PEI多孔体の製造において、いわゆる乾式プロセスを適用することができる。
本発明のPEI溶液を用いて得られたPEI多孔体は、耐熱性に優れ、気孔率が高く、透過性に優れ、かつ気孔の優れた均一性に基づく良好な力学的特性を有するので、電子材料や光学材料、リチウム二次電池用セパレータ、フィルタ、分離膜、電線被覆等の産業用材料、医療材料の素材、断熱材、絶縁材等の分野で使用することができ、特にリチウム二次電池用セパレータには好適に使用することができる。
図1