(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131649
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】自走式ロボット、及び、自走式ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240920BHJP
【FI】
G05D1/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042049
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 匡士
(72)【発明者】
【氏名】室谷 和哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷島 範安
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇弘
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG07
5H301GG08
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】不整地を含む走行経路においても、走行動作の継続が可能な自走式ロボット、及び、自走式ロボットの制御方法を提供する。
【解決手段】走行経路を含む領域の構造物の情報を検出する環境認識センサと、環境認識センサで検出された情報に基づいて、路面形状を推定する路面形状推定部と、環境認識センサで検出された情報に基づいて、路面粗さを推定する路面粗さ推定部と、路面形状推定部及び路面粗さ推定部で推定された値に基づいて、走行装置の制御方法を変更する走行継続処理部とを備える
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行経路を走行する自走式ロボットであって
所定の走行経路に沿って走行するための走行装置と、
前記走行装置を制御する情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記走行経路を含む領域の構造物の情報を検出する環境認識センサと、
前記環境認識センサで検出された情報に基づいて、路面形状を推定する路面形状推定部と、
前記環境認識センサで検出された情報に基づいて、路面粗さを推定する路面粗さ推定部と、
前記路面形状推定部及び前記路面粗さ推定部で推定された値に基づいて、前記走行装置の制御方法を変更する走行継続処理部と、を備える
自走式ロボット。
【請求項2】
前記路面形状推定部は、前記走行経路の路面の高低差を算出し、前記高低差に基づいて路面形状を推定する
請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項3】
前記路面粗さ推定部は、前記走行経路の路面の高さ方向における分散値を算出し、前記分散値に基づいて路面粗さを推定する
請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項4】
前記走行継続処理部は、前記路面形状推定部及び前記路面粗さ推定部で推定された値に基づいて走行経路を変更する
請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項5】
前記走行継続処理部は、前記路面形状推定部及び前記路面粗さ推定部で推定された値に基づいて前記走行装置の速度を変更する
請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項6】
前記情報処理装置は、さらに、所定の点検ポイントにおいて周囲を撮影する点検装置を備え、
前記走行継続処理部は、前記路面形状推定部及び前記路面粗さ推定部で推定された値に基づいて、前記点検装置の制御方法を変更する
請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項7】
前記走行継続処理部は、走行経路が変更された場合であって、変更前の走行経路に点検ポイントが設定されていた場合には、変更後の走行経路に新たな点検ポイントを設定する
請求項6に記載の自走式ロボット。
【請求項8】
前記走行継続処理部は、前記路面形状推定部及び前記路面粗さ推定部で推定された値に基づいて、進行方向に対する前記点検装置の向きを変更する
請求項6に記載の自走式ロボット。
【請求項9】
前記点検装置は、高さを変更可能な昇降装置に装着されており、
前記走行継続処理部は、前記路面形状推定部及び前記路面粗さ推定部で推定された値に基づいて、前記昇降装置の高さを変更する
請求項6に記載の自走式ロボット。
【請求項10】
前記情報処理装置は、前記走行経路を含む領域であって、事前に収集された地図情報に基づいて取得された路面形状及び路面粗さを記憶する地形データベースを備え、
前記走行継続処理部は、前記地形データベースに記憶された情報に基づいて、前記走行装置の制御方法を制御する
請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項11】
所定の走行経路を走行するように制御された走行装置を備える自走式ロボットの制御方法であって、
前記走行経路を含む領域の構造物の情報を検出し、
前記検出された情報に基づいて、前記走行経路の路面形状を推定すると共に、路面粗さを推定し、
推定された路面形状及び路面粗さに基づいて、走行装置を制御する
自走式ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式ロボット、及び、自走式ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ設備等の老朽化が進む一方、少子高齢化に起因した労働力不足により、自走式ロボットの巡視による点検業務の需要が高まっている。自走式ロボットは、自己の位置を推定しながら所定の経路を自立走行し、設備の点検等の作業を行う。このような自走式ロボットによる巡視では、予め設定された目的地へ自立走行し、カメラ等により点検対象の画像を取得する。
【0003】
特許文献1では、所定の拠点内を移動して点検対象物を撮影するロボットの撮影処理を制御する情報処理装置において、移り込み状態が異なる複数の基準画像のそれぞれに対して対象物の撮影条件を関連付けて記憶させる構成が開示されている。特許文献1では、撮影条件を関連付けて基準画像を記憶させることにより、異なる撮影環境においても対象物の状態を確認できる効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自走式ロボットを走行させて点検や組立作業等を行う場所によっては、不整地を走行する必要もある。したがって、自走式ロボットが敷石等の不整地を走行した場合、走行中におけるスタックが起こる可能性がある。また、走行経路に障害物がある場合には、走行、及び、点検や組立等の作業が継続できなくなるという恐れもある。
【0006】
そこで、本発明は、不整地を含む走行経路においても、走行動作の継続が可能な自走式ロボット、及び、自走式ロボットの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の自走式ロボットは、所定の走行経路を走行する自走式ロボットであって、所定の走行経路に沿って走行するための走行装置と、走行装置を制御する情報処理装置と、を備える。情報処理装置は、走行経路を含む領域の構造物の情報を検出する環境認識センサを備える。また、環境認識センサで検出された情報に基づいて、路面形状を推定する路面形状推定部と、環境認識センサで検出された情報に基づいて、路面粗さを推定する路面粗さ推定部とを備える。さらに、路面形状推定部及び路面粗さ推定部で推定された値に基づいて、走行装置の制御方法を変更する走行継続処理部を備える。
【0008】
本発明の自走式ロボットの制御方法は、所定の走行経路を走行するように制御された走行装置を備える自走式ロボットの制御方法であって、走行経路を含む領域の構造物の情報を検出する。検出された情報に基づいて、走行経路の路面形状を推定すると共に、路面粗さを推定する。推定された路面形状及び路面粗さに基づいて、走行装置を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行経路に不整地を含む場合にも、走行動作の継続が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボットの概略構成図である。
図1Bは、変形例にかかる自走式ロボットの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボット1の制御構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボット1が、所定の点検経路を走行する場合の動作例を示した図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボット1の路面形状推定部51、及び路面粗さ推定部52で計測されるXY平面における計測範囲の一例を示した図である。
【
図5】
図5Aは、路面形状推定部51で算出される路面の高低差を視覚的に示した図である。
図5Bは、路面粗さ推定部52で算出される路面の高さ方向における分散値を視覚的に示した図である。
【
図6】路面形状推定部51における路面形状の推定方法に係るフローチャートである。
【
図7】路面粗さ推定部52における路面粗さの推定方法に係るフローチャートである。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボット1の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】点検経路R0上に障害物30が有る場合に設定される回避経路R1の一例を示した図である。
【
図10】撮影ポイントPh0が設定されていたノードP2上に、障害物30が配置された例を示した図である。
【
図11】
図11Aは、本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボット1が段差27を通過するときの概略構成図である。
図11Bは、変形例に係る自走式ロボット2が段差27を通過するときの概略構成図である。
【
図12】点検経路R0の舗装路の領域23と非舗装領域25との間に段差27が発生しており、その段差27が自走式ロボット1の走行方向に対して斜めである場合の例を示した図である。
【
図13】自走式ロボット1が凹凸の異なる非舗装路を通過する場合の走行装置11の制御例を示した図である。
【
図14】
図14Aは、舗装領域23において、点検経路R0に直角の曲がり角が有る場合の制御例を示した図であり、
図14Bは、非舗装路において点検経路R0に直角の曲がり角が有る場合の制御例を示した図である。
【
図15】第2の実施形態に係る自走式ロボット80の制御系の構成を示したブロック図である。
【
図16】第2の実施形態に係る自走式ロボット80の制御例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による自走式ロボットは、所定の経路を自立的に走行しながら、所定の作業を行うことができるロボットである。本発明における自立式ロボットは、例えば、発電所や変電所等の電力施設等に代表されるインフラ設備において、所定の走行経路を自律的に走行して設備の点検を行う。なお、以下の実施形態では、自走式ロボットの作業内容として、点検作業を行う例について説明するが、作業内容は点検に限定されず、組立や搬送等、別の作業内容に変更することも可能である。
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る自走式ロボット、及び、自走式ロボットの制御方法の一例を、図面を参照しながら説明する。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0013】
<1.第1の実施形態>
1-1 自走式ロボットの構成
まず、本発明の第1の実施形態に係る自走式ロボットについて、図面を参照して説明する。
図1Aは、本発明の第1の実施形態(以下、本実施形態とする)に係る自走式ロボット1の概略構成図である。
【0014】
自走式ロボット1は、本体10と、走行装置11と、点検装置13と、環境認識センサ12とを備える。本体10には、各部の制御装置及び駆動装置が内蔵された筐体である。走行装置11は、本体10を走行経路に沿って移動させる車輪等の移動機構であり、後述する情報処理装置50(
図2参照)からの制御指令に基づいて、走行駆動される。
【0015】
点検装置13は、例えば、カメラなどの周囲の構造物を撮影可能な撮像装置で構成されており、本体10上部に固定されている。点検装置13としては、例えば、撮影方向を制御可能なPTZ(Pan-Tilt-Zoom)カメラや、周囲360度を撮影可能な全天球カメラを適用することができる。点検装置13で撮影された点検画像は、後述する情報処理装置50に送信される。
【0016】
環境認識センサ12は、自走式ロボット1の走行経路を含む周囲の構造物の形状の情報を取得するための要素である。環境認識センサ12は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)や、ステレオカメラなどのセンサを利用することができる。その他、環境認識センサ12としては、単眼カメラを用い、深度推定することで、環境情報を取得する例としてもよい。本実施形態では、環境認識センサ12は、本体10の上部に固定された例を示すが、実装方法としては、環境情報を取得できればよく、
図1Aの例に限定されるものではない。環境認識センサ12で取得された環境情報は、情報処理装置50に送信される。
【0017】
なお、自走式ロボット1は、
図1Aの構成に限定されるものではない。以下に、変形例に係る自走式ロボットについて説明する。
【0018】
1-2 変形例
図1Bに、変形例に係る自走式ロボット2の概略構成を示す。
図1Bは、走行装置14の形態と、点検装置13の実装方法とが、
図1Aに示す自走式ロボット1と異なる。
図1Bにおいて、
図1Aに対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0019】
図1Bに示すように、変形例に係る自走式ロボット2では、走行装置14は、主クローラ20と、走行方向において、主クローラ20の前後に設けられた一対の補助クローラ21とで構成されている。補助クローラ21は、主クローラ20と同期して回転する。
【0020】
点検装置13は、本体10上部に設けられた昇降装置15に設置されている。昇降装置15は高さ方向に昇降移動可能な部材で構成されている。これにより、昇降装置15は、点検装置13の本体10からの高さを調整することができる。
【0021】
変形例に係る自走式ロボット2では、走行装置14がクローラで構成されることにより、不整地での走行する際のがたつきを低減することができ、本体10への影響を低減することができる。また、点検装置13の高さを調整することができる昇降装置15を設けることにより、不整地等を走行時に、高さ等に変動が有る場合にも、所定の高さによる撮影を可能とする他、状況に応じて点検装置13の重心位置を変えることができるため、点検装置13の安定性を確保することができる。このように、本発明に適用可能な自走式ロボットの構成は、種々の変更が可能である。
【0022】
1-3 自走式ロボットの制御系の構成
次に、本実施形態の自走式ロボット1の制御系の構成について説明する。
図2は、本実施形態の自走式ロボット1の制御構成を示したブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の自走式ロボット1は、上述した環境認識センサ12、走行装置11及び点検装置13の他、自己位置推定装置60と、点検データベース70と、情報処理装置50とを備える。
【0023】
自己位置推定装置60は、自走式ロボット1の位置を推定して求める要素である。自己位置推定装置60としては、屋外であれば、GPS等を用いることができ、屋内であれば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術、マップマッチング技術等を用いることができる。自走式ロボット1の位置としては、例えば、自走式ロボット1を上方から見た場合の本体10の中心(重心)の位置など、任意の代表点の位置が推定される。自己位置推定装置60で推定された自走式ロボット1の位置情報は、情報処理装置50に随時送信される。
【0024】
点検データベース70は、点検に必要な情報を蓄積したデータベースである。本実施形態では、点検データベース70は、点検経路(本発明の走行経路に相当)に関する情報が蓄積された点検経路情報部71、点検画像が蓄積された点検画像情報部72、撮影設定に関する情報が蓄積された撮影設定情報部73を有する。点検データベース70に蓄積された各種情報は、必要に応じて、情報処理装置50を構成する各部に読み出される。また、情報処理装置50で検出された点検画像は、点検データベース70の点検画像情報部72に蓄積される。
【0025】
情報処理装置50は、路面形状推定部51、路面粗さ推定部52、点検継続処理部53、経路追従部54、及び、点検装置制御部55を備える。路面形状推定部51は、環境認識センサ12で検出された環境情報に基づいて、走行時における自走式ロボット1の姿勢変化を伴う路面の高低差を算出し、路面形状を推定する。路面粗さ推定部52は、環境認識センサ12で検出された環境情報に基づいて、路面表層の小さな凹凸からなる路面粗さを推定する。路面形状推定部51における路面形状の推定方法、及び、路面粗さ推定部52における路面粗さの推定方法については、後で詳述する。
【0026】
点検継続処理部53(本発明の走行継続処理部に相当)は、路面形状推定部51で推定された路面形状、路面粗さ推定部52で推定された路面粗さ、及び、点検データベース70から読み出された点検位置の情報に基づいて、走行装置11及び点検装置13の制御設定を行う。走行装置11の設定としては、障害物を回避する回避経路の設定、走行速度の設定、撮影ポイントの設定等が挙げられる。また、点検装置13の設定としては、初期位置の設定、カメラ方向の調整等が挙げられる。
【0027】
経路追従部54は、点検データベース70から読み出された点検経路、及び、点検継続処理部53から送信されてきた回避経路や、走行速度に基づいて、走行装置11を駆動制御する。
【0028】
点検装置制御部55は、点検データベース70から読み出された撮影設定、及び、点検継続処理部53から送信されてきた初期位置や、カメラ方向の調整値に基づいて、点検装置13を駆動制御する。また、点検装置制御部55は、点検装置13で検出された点検画像を取得すると共に、点検データベース70にその点検画像を送信する。
【0029】
ところで、上述した、情報処理装置50の各部は、それぞれ、図示を省略する制御処理部の制御の下、制御される。制御処理部は、例えば、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性ストレージを備える。
【0030】
CPUは、各部において、本実施形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROMから読み出してRAMに展開して実行する。なお、制御処理部は、CPUの代わりに、MPU(Micro-Processing Unit)等の処理装置を備えてもよい。RAMには、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0031】
不揮発性ストレージとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。この不揮発性ストレージには、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、制御処理部を機能させるためのプログラム等が記録される。なお、プログラムは、ROMに格納されてもよい。
【0032】
プログラムは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。つまり、ROM又は不揮発性ストレージは、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0033】
1-4 自走式ロボットの動作例
ここで、本実施形態の自走式ロボット1の動作例について説明する。
図3は、本実施形態の自走式ロボット1が、所定の点検経路を走行する場合の動作例を示した図である。
図3に示すように、自走式ロボット1は、点検経路情報部71から読み出された点検経路と、自己位置推定装置60から送信されてくる自己位置に基づいて、走行する。点検経路の情報は、撮影地点となる位置や、旋回する点として記録された複数のノードP1、P2、P3~Pnと、ノード間を結ぶ点列で構成されたリンクR0とで構成されている。以下の説明では、リンクR0を、点検経路R0と記載する。また、
図3において、自走式ロボット1の点検経路R0は、路面が舗装された舗装領域23に設定された例を示している。また、
図3では、点検経路R0が設定された舗装領域23以外の領域(
図3の網掛けの領域)は、路面状態が未知の領域25である。
【0034】
本実施形態では、
図3に示すように点検経路R0の途中に障害物30が有る場合、自走式ロボット1では、路面形状推定部51、及び、路面粗さ推定部52で推定された値に基づいて、障害物30の有無が判断される。そして、点検継続処理部53において、障害物30が有ると判断された場合には、障害物30を回避するための回避経路R1が設定される。回避経路R1は、例えば、アルゴリズムA*を用いて設定することができる。
【0035】
また、本実施形態では、
図3に示すように、路面形状推定部51、及び、路面粗さ推定部52で推定された値に基づいて、点検継続処理部53において、走行装置11及び点検装置13の制御に係る設定値を変更する。このため、路面状態が未知の領域25に、回避経路R1が設定される場合においても、路面形状及び路面粗さに応じて走行装置11及び点検装置13を適宜制御することができる。
【0036】
以下に、路面形状推定部51における路面形状推定方法、路面粗さ推定部52における路面粗さ推定方法、及び、自走式ロボット1の制御方法の一例について説明する。
【0037】
1-5 路面形状、及び、路面粗さの推定方法
次に、路面形状の推定方法、及び、路面粗さの推定方法を順に説明する。
図4は、本実施形態の自走式ロボット1の路面形状推定部51、及び路面粗さ推定部52で計測されるXY平面における計測範囲の一例を示した図である。また、
図5Aは、路面形状推定部51で算出される路面の高低差を視覚的に示した図である。また、
図5Bは、路面粗さ推定部52で算出される路面の高さ方向における分散値を視覚的に示した図である。
【0038】
図4に示すように、本実施形態では、自走式ロボット1が走行する平面領域28を格子状に分割し、環境認識センサ12において、各格子G(i,j)の計測値を検出する。路面形状推定部51では、各格子G(i,j)の計測値を用いて路面の高低差を算出することで路面形状を推定する。一方、路面粗さ推定部52では、各格子G(i,j)の計測値を用いて路面高さの分散値を算出することで、路面粗さを推定する。
【0039】
[路面形状推定部における路面形状の推定方法]
まず、路面形状推定部51における路面形状の推定方法について説明する。
図6は、路面形状推定部51における路面形状の推定方法に係るフローチャートである。
【0040】
まず、路面形状推定部51は、環境認識センサ12から送信されてくる深度情報を取得する(ステップS1)。次に、路面形状推定部51は、深度情報を、現場の座標系の点情報に変換する(ステップS2)。次に、路面形状推定部51は、ステップS2で抽出された各点が
図4に示した格子地図で示される計測領域のどの位置(どの格子)に属するのかを計算する(ステップS3)。そして、路面形状推定部51は、取得した点情報から格子内の路面高さの最大値、最小値、高低差を算出し、格子地図における路面形状情報を更新する(ステップS4)。これにより、路面形状の推定が終了する。
【0041】
以下に、ステップS4において格子内の路面高さの最大値、最小値、高低差を算出する際の算出式について説明する。ここでは、
図4に示す格子地図において、基準の格子位置から、x方向にi番目、y方向にj番目の格子G(i,j)内における高さの最大値、最小値、及び高低差の算出するための式を、下記の[数1]に示す。
【0042】
【0043】
上記、[数1]の式(1)~(3)における各記号の定義は、以下の通りである。
n:格子内の点群の数
zn(i,j):n番目の点群pn(xn,yn,zn)のz方向の値(高さ)
hn,max(i,j):G(i,j)内における高さ値の最大値
hn,min(i,j):G(i,j)内における高さ値の最小値
Δhn+1(i,j):G(i,j)内の高低差
【0044】
[数1]の式(1)~(3)の各値は、格子G(i,j)内に位置する新しい点を環境認識センサ12で取得するたびに、更新される。そして、[数1]の式(1)~(3)によって、格子G(i,j)内の高低差が算出される。
【0045】
以上のようにして、路面形状推定部51では、環境認識センサ12から取得した深度情報を用いて、各格子内の路面高さの最大値と最小値とを算出し、高低差が算出される。
【0046】
[路面粗さ推定部における路面粗さの推定方法]
次に、路面粗さ推定部52における路面粗さの推定方法について説明する。
図7は、路面粗さ推定部52における路面粗さの推定方法に係るフローチャートである。
【0047】
まず、路面粗さ推定部52は、環境認識センサ12から送信されてくる深度情報を取得する(ステップS11)。次に、路面粗さ推定部52は、深度情報を、現場の座標系の点情報に変換する(ステップS12)。次に、路面粗さ推定部52は、ステップS12で抽出された各点が
図4に示した格子地図で示される計測領域のどの位置(どの格子)に属するのかを計算する(ステップS13)。そして、路面粗さ推定部52は、取得した点情報から格子内の高さ方向(z方向)の分散値を算出し、格子地図における路面粗さの情報を更新する(ステップS14)。これにより、路面粗さ推定部52における路面粗さの推定が終了する。
【0048】
以下に、ステップS14において格子内の路面の高さ方向の分散値を算出するための算出式について説明する。以下に、
図4に示す格子地図において、基準の格子位置から、x方向のi番目、y方向のj番目の格子G(i,j)内の高さ方向における分散値の算出式を、下記の[数2]に示す。
【0049】
【0050】
上記、[数2]の式(4)、(5)における各記号の定義は、以下の通りである。
n:格子内の点群の数
zn(i,j):n番目の点群pn(xn,yn,zn)z方向の値(高さ)
μn(i,j):G(i,j)内のn個の点群の平均高さ
σn(i,j):G(i,j)内のn個の点群の高さ方向の分散値(積算値)
【0051】
以上のようにして、路面粗さ推定部52では、環境認識センサ12から取得した深度情報を用いて、各格子内の地形の分散値が算出される。
【0052】
本実施形態の自走式ロボット1では、路面形状推定部51で算出された高低差と、路面粗さ推定部52で算出された分散値とを用いて、路面形状や路面粗さに応じた制御が行われる。以下に、路面形状及び路面粗さに応じた自走式ロボットの制御方法について説明する。
【0053】
1-6 自走式ロボットの制御方法
図8は、本実施形態の自走式ロボット1の制御方法の一例を示すフローチャートである。自走式ロボット1において予め設定されている点検経路に沿って走行が開始されることで、
図8のフローチャートが開始される。また、
図8のフローチャートは、
図2の点検継続処理部53で実施されるフローである。
【0054】
まず、点検継続処理部53は、路面形状推定部51から、次のノードまでの路面形状の情報を取得する(ステップS20)。ここでは、点検継続処理部53は、
図6のフローに基づいて推定された次のノードまでの路面形状の情報(高低差)を取得する。
【0055】
次に、点検継続処理部53は、ステップS20で取得された路面形状の情報(高低差)に基づいて、路面形状の判定を行う(ステップS21)。点検継続処理部53では、路面形状推定部51で算出された高低差が閾値以上であるか否かに応じて、不整地判定が実施される。その判定には、例えば、下記の[数3]に示す式(6)が用いられる。
【0056】
【0057】
上記[数3]の式(6)の各記号の定義は以下の通りである。
Δhn(i,j):G(i,j)内の高低差
Δhth(i,j):段差判定に用いる路面の高さ値の閾値
【0058】
なお、閾値Δhth(i,j)には、種々の数値が適用される。例えば、走行不能な障害物の有無の判定に用いる閾値を設定することで、その閾値よりも高低差が大きいか否かに応じて、走行不能であるか否かを判定することができる。また、速度調整等、走行装置11の制御が必要な段差の有無の判定に用いる閾値を設定することで、その閾値よりも高低差が大きいか否かに応じて、走行装置及び又は点検装置の制御の必要性を判定することができる。その他、路面形状に対する制御方法の違いに応じて、種々の閾値等を設定することができる。
【0059】
本実施形態では、ステップS21の判定により、段差が無い場合、走行不可能な障害物が有る場合、及び、走行可能な段差が有る場合の3つに分ける例を示している。
【0060】
まず、ステップS21において走行不可能と判定された場合について説明する。ステップS21において、走行不可能と判定された場合、点検継続処理部53は、障害物を回避する回避経路を算出する(ステップS22)。
【0061】
図9に、点検経路R0上に障害物30が有る場合に設定される回避経路R1の一例を示す。
図9では、ノードP1とノードP3との間のノードP2の位置に障害物30が有る場合を例示している。
【0062】
図9に示すように、環境認識センサ12により障害物30が検出された場合には、点検継続処理部53は、回避経路R1を算出する。この場合、
図9に示すように、ノードP1とノードP3を結び、障害物30を回避できるルートを、回避経路R1として設定する。このように、障害物30を回避でき、かつ、ノードP1からノードP3を結ぶ最短の経路が回避経路R1として設定される。
【0063】
次に、点検継続処理部53は、初めに設定されていたノードP1とノードP3との間の点検経路R0上に、撮影ポイントが設定されていたか否かを判定する(ステップS23)。
図10に、撮影ポイントPh0が設定されていたノードP2上に、障害物30が配置された例を示す。
図10に示すように、ステップS22の回避経路R1の設定において、撮影ポイントPh0から外れてしまう場合にはステップS23において、「YES」と判定される。一方、
図9に示したように、初めに設定されていたノードP1とノードP3との間の点検経路R0に撮影ポイントが設定されていなかった場合には、ステップS23において「NO」と判定される。
【0064】
ステップS23において「NO」と判定された場合、すなわち、
図9に示すように、障害物30が確認されたノードP1とノードP3との間の点検経路R0に撮影ポイントを含まない場合には、ステップS20に戻る。
【0065】
一方、ステップS23において「YES」と判定された場合、すなわち、
図10に示すように、障害物30が確認されたノードP1とノードP3との間の点検経路R0に撮影ポイントPh0が含まれている場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、ステップS22で設定された回避経路R1に撮影ポイントPhxを設定する。ここで設定される撮影ポイントPhxは、例えば、もともと設定されていた撮影ポイントPh0に最も近い位置に設定される。その後、ステップS20に戻る。この場合、ステップS20からは、ステップS22で設定された回避経路に対する路面形状の判定が実施される。
【0066】
次に、ステップS21において、走行可能であるが、段差有りと判定された場合について説明する。ステップS21において、段差有りと判定された場合には、点検継続処理部53は、走行装置11及び点検装置13の制御を、段差通過時の制御に変更する(ステップS25)。
【0067】
ここで、ステップS21において段差が有ると判定された場合の走行装置11及び点検装置13の制御例について説明する。
図11Aは、本実施形態の自走式ロボット1が段差27を通過するときの概略構成図である。また、
図11Bは、変形例に係る自走式ロボット2が段差27を通過するときの概略構成図である。
【0068】
図11Aに示すように、点検経路に段差27があると判定された場合には、点検継続処理部53は、段差通過時において、点検装置13の撮影方向が走行方向と直交する方向となるように点検装置13を、
図11Aの矢印r1に示すように90度回転させる。撮影方向を変えることで、カメラ等の点検装置13をピッチ方向に動かないようにすることができ、エンコーダなど点検装置13内部の方位計測装置への振動の影響を低減させることができる。このように、点検経路に自走式ロボット1の姿勢変化を伴う段差27が有る場合には、点検装置13の向きを変える制御を行うことで、段差27からの点検装置13への影響を低減させる。
【0069】
また、
図11Bに示すように、走行装置14が主クローラ20とで構成される変形例の自走式ロボット2の場合には、段差27の通過時に前方側の補助クローラ21の角度を変更する制御をする。これにより、段差27の通過を滑らかにすることができ、自走式ロボット2への振動を低減させることができる。さらに、点検装置13が昇降装置15に設置されている場合には、
図11Bの矢印h1で示すように昇降装置15を下げる制御を行うことで、点検装置13の重心を低くし、点検装置13への衝撃を低減させる。
【0070】
ところで、点検経路に段差が有る場合、その段差の面が走行方向に対して斜めに発生している場合がある。
図12に、点検経路R0の舗装路の領域23と非舗装領域25との間に段差27が発生しており、その段差27が自走式ロボット1の走行方向に対して斜めである場合の例を示す。
図12では、ノードP1とノードP2の間の点検経路R0に対して斜めの段差27が発生している。このように、点検経路R0に対して斜めの段差27が検出された場合には、点検継続処理部53は、段差27の面に対して斜めに走行するのを回避するための回避経路R1を新たに設定する。この場合、回避経路R1としては、自走式ロボット1が、段差27に対して正対して段差27を超えてから再び経路に沿うように新たな経路が設定される。これにより、自走式ロボット1が斜めに段差27を横断した際の転倒リスクを少なくすることができる。なお、
図12に示す例においても、段差27通過時においては、
図11A及び
図12Bで説明した走行装置11及び点検装置13の制御の変更も同時に実施する。
【0071】
このように、段差があると判定された場合には、点検継続処理部53は、走行装置11及び点検装置13の制御を段差に対応して制御に変更することで、自走式ロボット1への振動からの衝撃を低減させる。さらに、段差の発生方向によっては、点検経路を変更することで、自走式ロボット1の転倒リスクを低減する。
【0072】
ステップS25において、上述したように段差有りの場合の制御変更が為された後に、ステップS26に進む。また、ステップS21において、段差が無いと判定された場合にも、ステップS26に進む。次に、ステップS26からの処理について説明する。
【0073】
ステップS26では、点検継続処理部53は、路面粗さ推定部52から次のノードまでの路面粗さの情報を取得する。ここでは、点検継続処理部53は、
図7のフローに基づいて推定された次のノードまでの路面粗さの情報(分散値)を取得する(ステップS26)。
【0074】
次に、点検継続処理部53は、ステップS26で取得された路面粗さの情報(分散値)に基づいて、走行予定の路面が、舗装路であるか否か(不整地であるか否か)を判定する(ステップS27)。点検継続処理部53では、路面粗さ推定部52で算出された分散値が閾値以上であるか否かに応じて、不整地判定が実施される。その判定には、例えば、下記の[数4]に示す式(7)が用いられる。
【0075】
【0076】
上記[数4]の式(7)における記号の定義は、以下の通りである。
σn(i,j):G(i,j)内のn個の点群の高さ方向の分散値(積算値)
σth:不整地判定に用いる路面の高さの分散値に関する閾値
【0077】
なお、閾値σthには、粗さレベルに応じて、種々の数値を適用することができる。粗さレベルに応じて、種々の閾値σthを定めることにより、後述するステップS28において、粗さ状態に応じた走行装置11及び点検装置13の制御設定を行うことができる。ステップS27では、分散値σnが、所定の閾値σthより大きいか否かに応じて、舗装路であるか否かの判定がなされる。
【0078】
ステップS27において「YES」と判定された場合、すなわち、舗装路であると判定された場合には、判定しているノード間の処理を終了する。
【0079】
一方、ステップS27において「NO」と判定された場合、すなわち、舗装路ではないと判定された場合にはステップS28に進む。ステップS28では、点検継続処理部53は、走行装置11の制御を、非舗装路通過時の制御に変更する(ステップS28)。被舗装路通過時の走行装置11の制御例について説明する。
【0080】
図13は、自走式ロボット1が凹凸の異なる非舗装路を通過する場合の走行装置11の制御例を示した図である。
図13では、非舗装路Aと、非舗装路Aよりも凹凸の大きい非舗装路面Bを自走式ロボット1が通過する際の速度を模式的に示している。この場合、自走式ロボット1が、凹凸が少ない非舗装路面Aを通過する場合の速度Sp1よりも、凹凸が大きい非舗装路面Bを通過する場合の速度Sp2が遅くなるように、走行装置11の制御設定を変更する。このように、非舗装路面の凹凸の状態に応じて走行装置11の速度制御を行うことで、砂利等の凹凸に車輪が埋まるのを防ぐ。
【0081】
図14Aは、舗装領域23において、点検経路R0に直角の曲がり角が有る場合の制御例を示した図であり、
図14Bは、非舗装路において点検経路R0に直角の曲がり角が有る場合の制御例を示した図である。
図14Aに示すように、点検経路R0において、ノードP2の地点において直角の曲がり角が有り、かつ、ノードP2が舗装路にある場合には、点検経路R0の変更は為されない。この場合、自走式ロボット1は、ノードP2の地点で、
図14Aの矢印rで示すように90度旋回する場合にも、路面の影響を受けにくい。
【0082】
一方、
図14Bに示すように、ノードP2の地点に直角の曲がり角があり、かつノードP2が非舗装路(不整地)にある場合には、点検継続処理部53は、曲がり角を回避するための回避経路R1を設定する。回避経路R1は、自走式ロボット1が、ノードP2で旋回せずに、ノードP1からノードP3に架けて滑らかに旋回することができるように設定される。このように、非舗装路があり、かつ、非舗装路に直角な曲がり角がある(次のノードで方向転換がある)と判定された場合には、ステップS28において、走行速度の制御と共に、回避経路R1の設定も実施される。
【0083】
以上により、ノード間における自走式ロボット1の制御は終了する。
図8に示す制御フローは、ノード毎に繰り返し実施されるものである。
【0084】
本実施形態では、路面形状及び路面粗さに基づいて、走行装置及び点検装置の制御設定を変更することができる。これにより、所定の点検経路に障害物が有る場合にも、点検を継続することができる。また、非舗装路においても、路面形状や路面粗さに応じて走行装置及び点検装置が制御設定されるため、振動によるカメラの初期位置ずれや、閾値走行中における自走式ロボット1のスタックを防ぐことができる。
【0085】
なお、本実施形態の自走式ロボット1では、撮影ポイントで撮影された点検画像は、点検画像情報部72に送信された後、異常検知に用いられる。本実施形態では、予め設定されていた撮影ポイントを自走式ロボット1が通過できなくなった場合にも、もともとの撮影ポイントの近傍に新たな撮影ポイントを設定することができるため、施設内の点検精度を維持することができる。
【0086】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る自走式ロボットについて説明する。
図15は、第2の実施形態に係る自走式ロボット80の制御系の構成を示したブロック図である。第2の実施形態は、事前に取得された地図情報が得られる点で、第1の実施形態と異なる。
図15において、
図2に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0087】
第2の実施形態に係る自走式ロボット80における情報処理装置81は、地形データベース82を有する。地形データベース82は、管理サーバ100から送信されてくる地図情報が蓄積されている。
【0088】
管理サーバ100は、遠隔地に設置されているサーバであり、地図情報記憶部101と、路面形状推定部102と、路面粗さ推定部103と、地形データベース104とを備える。地図情報記憶部101は、予め取得された点検施設内の点群地図が記憶されている。地図情報記憶部101に記憶された点群地図は、点検経路に沿う領域を含む。また、地図情報記憶部101に記憶された点群地図は、点検経路に沿う領域を含み、より広範囲な領域の情報であることが好ましい。
【0089】
路面形状推定部102は、地図情報記憶部101に記憶された点群地図に基づいて、路面形状を推定する。路面形状推定部102における路面形状の推定方法は、
図6のフローに示した路面形状の推定方法と同様であるため、その説明は省略する。路面粗さ推定部103は、地図情報記憶部101に記憶された点群地図に基づいて、路面粗さを推定する。路面粗さ推定部103における路面粗さの推定方法は、
図7のフローに示した路面粗さの推定方法と同様であるため、その説明は省略する。
【0090】
地形データベース104は、路面形状推定部102で推定された路面形状、及び、路面粗さ推定部103で推定された路面粗さの情報が蓄積されたデータベースである。
【0091】
第2の実施形態では、自走式ロボット80の点検開始時に、管理サーバ100の地形データベース104から、自走式ロボット80の情報処理装置81にある地形データベース82に、路面形状及び路面粗さの情報をダウンロードする。
【0092】
第2の実施形態では、事前に路面粗さと路面形状とを計測し、管理サーバ100側の地形データベース104に記憶させておく。これにより、回避経路生成の際に、環境認識センサ12の計測範囲を超えた領域に回避経路を生成することができる。
図16を用いて、第2の実施形態における自走式ロボット80の制御例について説明する。
【0093】
図16は、第2の実施形態に係る自走式ロボット80の制御例を示した概略構成図である。自走式ロボット80の環境認識センサ12の計測領域は、
図16の領域A1に示すように、限られた範囲である。したがって、事前の地図情報が無い場合には、両脇に設けられた壁40等の情報は、環境認識センサ12で検出するまでは未知の情報である。事前の地図情報が無い状態で、
図16に示す障害物300を避けるために、点検継続処理部53において、例えば、回避経路Rxが設定される場合、障害物300と壁40との位置関係によって行き止まりが発生してしまう。そうすると、自走式ロボット80は移動できなくなり、また、通常の点検経路R0に復帰できなくなる。
【0094】
第2の実施形態では、管理サーバ100の路面形状推定部102及び路面粗さ推定部103によって、予め取得された点群地図に基づいて、環境認識センサ12で計測可能な計測領域よりも広い範囲の情報を取得しておく。そして、点検開始時に、管理サーバ100の地形データベース104から、自走式ロボット80の情報処理装置81に備えられた地形データベース82に、検査対象となる建物の地図情報をダウンロードした上で、
図8に示すフローにより自走式ロボット80を制御する。そして、
図8に示すフローを実施する場合には、路面形状推定部102及び路面粗さ推定部103からの情報と、管理サーバ100からダウンロードした路面形状及び路面粗さの情報とに基づいて、回避経路の設定や、走行装置11及び点検装置13の制御変更を行う。
【0095】
第2の実施形態では、壁40の情報は環境認識センサ12で検出されないが、地形データベース82から取得することができる。このため、点検継続処理部53は、障害物300と壁40とに衝突しない経路として、
図16に示す回避経路R1を設定することができる。
【0096】
このように、第2の実施形態では、事前の計測結果を用いて広範囲の領域から回避経路を生成することで、通常の点検経路への復帰確率を上げることができる。
【0097】
また、第2の実施形態では、事前に路面粗さと路面形状を計測しておくことで、事前計測結果と、環境認識センサ12の出力データから算出した地形情報とを比較して、現場の異常を検出することができる。走行する点検経路上に倒木や土砂崩れを検出した際に、遠隔の管理者に通知を行うなどして、異常時の点検可否を判断し、悪路走行による自走式ロボット80のスタックや故障を防ぐことが可能となる。
【0098】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、2、80…自走式ロボット、8…情報処理装置、10…本体、11…走行装置、12…環境認識センサ、13…点検装置、14…走行装置、15…昇降装置、20…主クローラ、21…補助クローラ、23…舗装領域、25…非舗装領域、27…段差、28…平面領域、30…障害物、40…壁、50…情報処理装置、51…路面形状推定部、52…路面粗さ推定部、53…点検継続処理部、54…経路追従部、55…点検装置制御部、60…自己位置推定装置、70…点検データベース、71…点検経路情報部、72…点検画像情報部、73…撮影設定情報部