(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131660
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】シートヒータ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240920BHJP
A47C 7/50 20060101ALI20240920BHJP
B60N 3/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/50
B60N3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042069
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 陽一
(72)【発明者】
【氏名】林 芳和
(72)【発明者】
【氏名】岸田 利久
(72)【発明者】
【氏名】早川 智久
(72)【発明者】
【氏名】草野 清澄
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B088JA02
(57)【要約】
【課題】オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を抑制しやすくすること。
【解決手段】シートヒータ100は、基材1と、ヒータ線2と、を備える。基材1は、移動体の座席に着座したユーザの脚の一部を支持するオットマンに配置されている。ヒータ線2は、基材1の一面に配置されている。ヒータ線2は、オットマンが使用位置にある場合に平面視で長さ方向が移動体の長さ方向である第1方向D1に沿った複数の主部21と、複数の主部21の各々の端部にて折り返す複数の折り返し部22と、を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の座席に着座したユーザの脚の一部を支持するオットマンに配置されている基材と、
前記基材の一面に配置されているヒータ線と、を備え、
前記ヒータ線は、
前記オットマンが使用位置にある場合に平面視で長さ方向が前記移動体の長さ方向である第1方向に沿った複数の主部と、
前記複数の主部の各々の端部にて折り返す複数の折り返し部と、を有している、
シートヒータ。
【請求項2】
前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部は、平面視で頂角が鋭角となるように折り返されている、
請求項1に記載のシートヒータ。
【請求項3】
前記1以上の第1折り返し部のうち前記移動体の幅方向である第2方向において前記移動体の側面側に位置する第1折り返し部では、前記頂角をなす一対の線状部位のうちの前記移動体の側面側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が前記第1方向に沿った直線状であり、
前記1以上の第1折り返し部のうち前記第2方向において前記移動体の中央側に位置する第1折り返し部では、前記頂角をなす一対の線状部位のうちの前記移動体の中央側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が前記第1方向に沿った直線状である、
請求項2に記載のシートヒータ。
【請求項4】
前記1以上の第1折り返し部の各々では、前記頂角をなす一対の線状部位のうちの前記移動体の中央側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が前記第1方向に沿った直線状である、
請求項2に記載のシートヒータ。
【請求項5】
前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部は、平面視で半円形状となるように折り返されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【請求項6】
前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部は、平面視で頂角が鋭角となるように折り返されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【請求項7】
前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部の曲率は、前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部の曲率以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【請求項8】
前記複数の主部の各々は、平面視で頂角が鈍角となるように屈曲する1以上の屈曲部を有している、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【請求項9】
前記ヒータ線は、前記ヒータ線に電力を供給するヒータ制御回路に接続される接続部を有しており、
前記接続部は、前記基材における前記第1方向の上側に配置されており、平面視で長さ方向が前記移動体の幅方向である第2方向に沿っている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両等に装備されている座席等を温めるシートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、オットマン用ヒータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ヒータに電源供給するワイヤハーネスの配策構造について開示されている。しかしながら、特許文献1に開示のオットマン用ヒータでは、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を抑制する構成については何ら開示されていない。
【0005】
そこで、本開示は、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を抑制しやすいシートヒータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るシートヒータは、基材と、ヒータ線と、を備える。前記基材は、移動体の座席に着座したユーザの脚の一部を支持するオットマンに配置されている。前記ヒータ線は、前記基材の一面に配置されている。前記ヒータ線は、前記オットマンが使用位置にある場合に平面視で長さ方向が前記移動体の長さ方向である第1方向に沿った複数の主部と、前記複数の主部の各々の端部にて折り返す複数の折り返し部と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示のシートヒータでは、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態におけるシートヒータを含むヒータ装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態におけるシートヒータを装備した座席の概要を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態におけるシートヒータの第1実施例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態におけるシートヒータの第2実施例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態におけるシートヒータの第3実施例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態におけるシートヒータの第4実施例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態におけるシートヒータの第5実施例でのヒータ線の配置例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態におけるシートヒータの第5実施例でのヒータ線の他の配置例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態におけるシートヒータの第5実施例でのヒータ線の更に他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様に係るシートヒータは、基材と、ヒータ線と、を備える。前記基材は、移動体の座席に着座したユーザの脚の一部を支持するオットマンに配置されている。前記ヒータ線は、前記基材の一面に配置されている。前記ヒータ線は、前記オットマンが使用位置にある場合に平面視で長さ方向が前記移動体の長さ方向である第1方向に沿った複数の主部と、前記複数の主部の各々の端部にて折り返す複数の折り返し部と、を有している。
【0010】
これによれば、オットマンに第1方向に沿った比較的強い荷重が掛かっても、ヒータ線に対しては、ヒータ線の長さ方向に沿った向きで上記荷重が掛かることになり、ヒータ線が屈曲する向きで上記荷重が掛かりにくくなる。したがって、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。
【0011】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部は、平面視で頂角が鋭角となるように折り返されている。
【0012】
これによれば、1以上の第1折り返し部においては、ヒータ線は、第2方向に沿った成分よりも第1方向に沿った成分の方が大きくなる。したがって、1以上の第1折り返し部においてもヒータ線の屈曲を抑制しやすくなり、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0013】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記1以上の第1折り返し部のうち前記移動体の幅方向である第2方向において前記移動体の側面側に位置する第1折り返し部では、前記頂角をなす一対の線状部位のうちの前記移動体の側面側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が前記第1方向に沿った直線状である。前記1以上の第1折り返し部のうち前記第2方向において前記移動体の中央側に位置する第1折り返し部では、前記頂角をなす一対の線状部位のうちの前記移動体の中央側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が前記第1方向に沿った直線状である。
【0014】
これによれば、移動体の側面側及び移動体の中央側においてヒータ線の密度が大きくなるようにヒータ線が配置されるため、放熱されやすい移動体の側面側及び移動体の中央側がヒータ線により加熱されやすくなり、シートヒータが温度上昇しやすくなる、という利点がある。
【0015】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記1以上の第1折り返し部の各々では、前記頂角をなす一対の線状部位のうちの前記移動体の中央側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が前記第1方向に沿った直線状である。
【0016】
これによれば、移動体の中央側においてヒータ線の第2方向に沿った成分を極力減らすことができるので、ユーザが使用位置にあるオットマンの一面(天面)で脚の一部を滑らせながら降車する場合であっても、ヒータ線の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。
【0017】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部は、平面視で半円形状となるように折り返されている。
【0018】
これによれば、1以上の第2折り返し部においては、ヒータ線が比較的緩やかな角度で折り返されるため、ヒータ線を基材に固定しやすくなる、という利点がある。
【0019】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部は、平面視で頂角が鋭角となるように折り返されている。
【0020】
これによれば、1以上の第2折り返し部においては、ヒータ線は、第2方向に沿った成分よりも第1方向に沿った成分の方が大きくなる。したがって、1以上の第2折り返し部においてもヒータ線の屈曲を抑制しやすくなり、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0021】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部の曲率は、前記複数の折り返し部のうちの前記第1方向の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部の曲率以上である。
【0022】
これによれば、1以上の第1折り返し部においては、ヒータ線は、第2方向に沿った成分よりも第1方向に沿った成分の方が大きくなる。したがって、1以上の第1折り返し部においてもヒータ線の屈曲を抑制しやすくなり、オットマンにおいて荷重が掛かることによるヒータ線の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0023】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記複数の主部の各々は、平面視で頂角が鈍角となるように屈曲する1以上の屈曲部を有している。
【0024】
これによれば、各主部においては、ヒータ線が平面視で直線状である場合と比較してヒータ線が長くなるので、第2方向に沿ってヒータ線が引っ張られた場合でも、ヒータ線が屈曲しにくい、という利点がある。
【0025】
本開示の他の態様に係るシートヒータでは、前記ヒータ線は、前記ヒータ線に電力を供給するヒータ制御回路に接続される接続部を有している。前記接続部は、前記基材における前記第1方向の上側に配置されており、平面視で長さ方向が前記移動体の幅方向である第2方向に沿っている。
【0026】
これによれば、接続部を第1方向に沿った部位を含むように配置する場合と比較して、ヒータ線を基材に固定しやすくなる、という利点がある。
【0027】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0029】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態において、直交又は平行等の表現を用いている。例えば、直交は、完全に直交であることを意味するだけでなく、実質的に直交である、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。また、直交は、本開示による効果を奏し得る範囲において直交という意味である。
【0030】
(実施の形態)
<構成>
図1は、実施の形態におけるシートヒータ100を含むヒータ装置300の概要を示すブロック図である。ヒータ装置300は、移動体の座席3(
図2参照)に装備され、ユーザが座席3に着座した際に、シートヒータ100の発熱によりユーザの身体の少なくとも一部を温めるための装置である。移動体は、例えば自動車であるが、例えば飛行機又は船舶等の他の移動体であってもよい。座席3は、一例として自動車の助手席又は後部座席である。なお、座席3は、オットマン34(
図2参照)を備えていても運転に支障をきたさない場合であれば、移動体の運転席であってもよい。
【0031】
ヒータ装置300は、シートヒータ100と、ヒータ制御回路200と、を備える。ヒータ制御回路200は、例えば車載バッテリ等の電源400からシートヒータ100への電力の供給及び停止を制御する。シートヒータ100は、ヒータ制御回路200を介して電源400に電気的に接続されるヒータ線2(
図3参照)を有している。ヒータ線2は、電源400からの電力の供給を受けることにより発熱する。
【0032】
実施の形態では、シートヒータ100は、オットマンヒータである。オットマンヒータは、オットマン34に設置されるヒータであって、オットマン34を介して座席3に着座したユーザの両脚のふくらはぎを主として温める。具体的には、オットマンヒータは、オットマン34の天面341側の部位において、クッション材に相当するパッドと、当該パッドを覆うカバーとの間に設置されている。
【0033】
<座席>
図2は、実施の形態におけるシートヒータ100を装備した座席3の概要を示す図である。座席3は、例えば
図2に示すように、シートクッション31と、シートバック32と、ヘッドレスト33と、オットマン34と、を備えている。シートクッション31は、座席3に着座するユーザの臀部及び大腿部を支持する座席3の座部である。シートバック32は、座席3に着座するユーザの背部を支持する背もたれ部である。ヘッドレスト33は、座席3に着座するユーザの頭部を支持する枕状の部位である。
【0034】
オットマン34は、座席3に着座するユーザの脚の一部(ふくらはぎ)を支持する部位である。実施の形態では、オットマン34は、ユーザの両脚のふくらはぎを支持する。オットマン34は、使用位置と未使用位置との間で回転可能に構成されている。使用位置は、座席3に着座したユーザの脚の一部(ふくらはぎ)をオットマン34が支持可能な位置である。未使用位置は、使用位置以外の位置である。具体的には、未使用位置は、オットマン34が収納される位置、又はオットマン34が完全には収納されていないが、ユーザの脚の一部を支持できない位置である。
【0035】
より具体的には、オットマン34の使用位置は、
図2に示すように、オットマン34の天面341がシートクッション31の座面に対して所定の角度(例えば、45度)となるまで回動した位置であって、ユーザの脚の一部(ふくらはぎ)を支持可能な位置である。一方、オットマン34の未使用位置は、オットマン34の天面341がシートクッション31の座面と略垂直になるまで回動した収納位置であって、ユーザが脚の一部を載せ置くことができない位置である。
【0036】
<シートヒータ>
シートヒータ100は、基材1(
図3参照)と、ヒータ線2(
図3参照)と、を備えている。
【0037】
基材1は、オットマン34に配置されている。基材1は、弾性、柔軟性、及び延性を有する材質によってシート状に形成されている。実施の形態では、基材1は、不織布によって形成されている。なお、基材1は、例えばポリエステルのメッシュによって形成されていてもよいし、ウレタン等の発泡性樹脂によって形成されていてもよい。
【0038】
ヒータ線2は、例えば銀及び銅等を含む合金により形成される撚り線である。ヒータ線2は、例えばポリエステル繊維の糸を縫製糸として用いて、基材1の表面(紙面手前側の面)に縫い付けられている。つまり、ヒータ線2は、基材1の一面に配置されている。縫製糸は、ヒータ線2を基材1に固定するために、ヒータ線2の延在方向に沿ってヒータ線2を基材1に縫い付ける糸である。
【0039】
ヒータ線2は、例えば電源400からヒータ制御回路200を介して、基材1の各部分を通って電源400に戻るように一繋ぎで基材1の表面に縫い付けられている。そして、ヒータ線2の両端は、ヒータ制御回路200の有する一対の電極に電気的に接続されている。したがって、ヒータ線2は、電源400からヒータ制御回路200を介して直流電力を供給されることにより、発熱する。
【0040】
以下、実施の形態におけるシートヒータ100の実施例を列挙する。以下に示す第1実施例~第5実施例は、いずれもヒータ線2の配置に関する実施例である。
【0041】
<第1実施例>
図3は、実施の形態におけるシートヒータ100の第1実施例を示す図である。第1実施例は、実施の形態におけるシートヒータ100の基本的な構成を示す例である。第1実施例では、
図3に示すように、ヒータ線2は、複数(ここでは、20個)の主部21と、複数(ここでは、19個)の折り返し部22と、接続部23と、を有している。
【0042】
主部21は、オットマン34が使用位置にある場合に、平面視で長さ方向が移動体の長さ方向である第1方向D1に沿っている部位である。ここで、「平面視」とは、移動体の上下方向から見ることをいう。移動体の上下方向における上側は、移動体の天井側に相当し、移動体の上下方向における下側は、移動体の床側に相当する。また、「移動体の長さ方向」とは、移動体の進行方向に相当する。また、「第1方向D1」は、言い換えれば、ユーザが座席3に着座した際にオットマン34に載せ置かれるユーザの脚の長さ方向である。第1実施例では、各主部21は、第1方向D1に沿って直線状となっている。
【0043】
複数の折り返し部22は、複数の主部21の各々の端部にて折り返す部位である。第1実施例では、複数の折り返し部22は、1以上(ここでは、10個)の第1折り返し部221と、1以上(ここでは、9個)の第2折り返し部222とに分けられる。
【0044】
第1折り返し部221は、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の下側(
図3における下側)にて折り返す部位である。第1実施例では、各第1折り返し部221は、平面視で頂角θ1が鋭角となるように折り返されている。具体的には、各第1折り返し部221においては、ヒータ線2の一部を構成する一対の線状部位221A,221Bが頂角θ1をなしている。なお、
図3に示すように、一対の線状部位221A,221Bが繋がっている部位は、平面視で丸みを帯びた形状であってもよい。鋭角は、一例として60度以下であるが、ヒータ線2を屈曲して基材1に固定可能な範囲であれば、その角度は特に限定されない。
【0045】
第2折り返し部222は、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の上側(
図3における上側)にて折り返す部位である。第1実施例では、各第2折り返し部222は、平面視で半円形状となるように折り返されている。具体的には、各第2折り返し部222においては、ヒータ線2の一部を構成する線状部位222A,222Bの各端部が、平面視で半円形状の弧を描く部位により繋がっている。
【0046】
接続部23は、ヒータ線2に電力を供給するヒータ制御回路200に接続される部位である。具体的には、接続部23は、ヒータ線2の一部を構成する一対の線状部位23A,23Bを有している。線状部位23A,23Bは、それぞれヒータ制御回路200に電気的に接続される一対の端子2A,2Bに電気的に接続されている。第1実施例では、接続部23は、平面視で長さ方向が移動体の幅方向である第2方向D2に沿っている。具体的には、線状部位23A,23Bは、いずれも長さ方向が第2方向D2に沿って直線状となっている。
【0047】
基材1において、
図3に示す領域A1は、ユーザが座席3に着座した際にユーザの膝裏と対向する領域である。領域A1は、ユーザのふくらはぎを含む脚全体が接触しにくい領域である。第1実施例では、1以上の第2折り返し部222及び接続部23は、領域A1に配置されている。
【0048】
以下、シートヒータ100の第1実施例の利点について説明する。ユーザが座席3に着座する、又はユーザが座席3から離れる際には、オットマン34の天面341においてユーザの踵及びふくらはぎが第1方向D1に沿って移動することで、オットマン34に第1方向D1に沿った比較的強い荷重が掛かることになる。ここで、オットマン34の天面341において、長さ方向が第2方向D2に沿うようにヒータ線2が配置されていた場合、ヒータ線2に対してヒータ線2が屈曲する向きで上記荷重が掛かりやすくなる。そして、上記荷重が掛かることにより、ヒータ線2の一部が縫製糸の間から飛び出し、飛び出したヒータ線2が屈曲しやすくなる、という問題がある。上記荷重がヒータ線2に繰り返し掛かることで、飛び出したヒータ線2の屈曲が繰り返されると、ヒータ線2の劣化を招く可能性がある、という問題もある。
【0049】
そこで、第1実施例では、ヒータ線2の複数の主部21の各々が、オットマン34が使用位置にある場合に平面視で長さ方向が第1方向に沿うように配置されている。このため、第1実施例では、オットマン34に第1方向D1に沿った比較的強い荷重が掛かっても、ヒータ線2に対しては、ヒータ線2の長さ方向に沿った向きで上記荷重が掛かることになり、ヒータ線2が屈曲する向きで上記荷重が掛かりにくくなる。したがって、第1実施例では、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。具体的には、上記荷重が掛かってもヒータ線2の一部が縫製糸の間から飛び出しにくくなり、飛び出したヒータ線2が屈曲しやすくなるという可能性も低減される。さらに、上記荷重がヒータ線2に繰り返し掛かっても、ヒータ線2の屈曲が繰り返される可能性が低減され、ヒータ線2の劣化を招きにくい。
【0050】
ここで、ヒータ線2のうちの各折り返し部22においては、ヒータ線2が折り返されるために、第2方向D2に沿う部位が生じる。そして、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部221は、ユーザが座席3に着座する、又は座席3から離れる際に、ユーザの踵が接触しやすい部位であり、第1方向D1に沿って比較的強い荷重が掛かりやすい部位でもある。
【0051】
そこで、第1実施例では、1以上の第1折り返し部221は、いずれも平面視で頂角θ1が鋭角となるように折り返されている。言い換えれば、第1実施例では、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部221の曲率は、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部222の曲率よりも大きくなっている。
【0052】
このため、1以上の第1折り返し部221においては、ヒータ線2は、第2方向D2に沿った成分よりも第1方向D1に沿った成分の方が大きくなる。したがって、第1実施例では、1以上の第1折り返し部221においてもヒータ線2の屈曲を抑制しやすくなり、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0053】
ところで、オットマン34において第1方向D1の上側に位置する領域A1は、既に述べたように、ユーザが座席3に着座した際にユーザの膝裏と対向する領域であって、ユーザのふくらはぎを含む脚全体が接触しにくい領域である。このため、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の上側、つまり領域A1にて折り返す1以上の第2折り返し部222は、ユーザが座席3に着座する、又は座席3から離れる際に、第1方向D1に沿った荷重が掛かりにくい。
【0054】
そこで、第1実施例では、1以上の第2折り返し部222は、平面視で半円形状となるように折り返されている。このため、1以上の第2折り返し部222においては、ヒータ線2が比較的緩やかな角度で折り返されるため、縫製糸によりヒータ線2を基材1に縫い付ける縫製ピッチを比較的長くすることができ、ヒータ線2を基材1に固定しやすくなる、という利点がある。ここで、縫製ピッチとは、ヒータ線2を挟んだ両側のうちの一方の側の縫い目と、当該縫い目と隣接して縫製糸で直接的に接続される他方の側の縫い目との間の距離であって、ヒータ線2の長さ方向に投影した距離である。なお、各第2折り返し部222を平面視で半円形状となるように折り返した場合、第2方向D2に沿った成分が大きくなるが、上述のように各第2折り返し部222が位置する領域A1は、第1方向D1に沿った荷重が掛かりにくいため、ヒータ線2は屈曲しにくい。
【0055】
また、第1実施例では、接続部23は、領域A1(言い換えれば、基材1における第1方向D1の上側)に配置されており、平面視で長さ方向が第2方向D2に沿っている。既に述べたように、接続部23が位置する領域A1は、第1方向D1に沿った荷重が掛かりにくいため、ヒータ線2は屈曲しにくい。このため、接続部23は、第1方向D1に沿った荷重を考慮せずに配置することができる。そして、接続部23は、平面視で長さ方向が第2方向D2に沿っているので、第1方向D1に沿った部位を含むように配置する場合と比較して、縫製糸によりヒータ線2を基材1に縫い付ける縫製ピッチを比較的長くすることができ、ヒータ線2を基材1に固定しやすくなる、という利点がある。
【0056】
<第2実施例>
図4は、実施の形態におけるシートヒータ100の第2実施例を示す図である。第2実施例は、1以上の第1折り返し部221でのヒータ線2の折り返し方が第1実施例と相違する。以下、第1実施例と共通する構成については説明を省略する。また、以下では、
図4において、第2方向D2における左側が移動体の側面側であって、右側が移動体の中央側であることとして説明する。
【0057】
第2実施例では、
図4に示すように、1以上の第1折り返し部221のうち第2方向D2において移動体の側面側(
図4における左側)に位置する第1折り返し部221では、頂角θ1をなす一対の線状部位221A,221Bのうちの移動体の側面側に位置する線状部位221Aは、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状である。また、1以上の第1折り返し部221のうち第2方向D2において移動体の中央側(
図4における右側)に位置する第1折り返し部221では、頂角θ1をなす一対の線状部位221A,221Bのうちの移動体の中央側に位置する線状部位221Bは、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状である。
【0058】
図4に示す例では、10個の第1折り返し部221のうち、第2方向D2において移動体の側面側(
図4における左側)に位置する3個の第1折り返し部221において、移動体の側面側に位置する線状部位221Aが、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状となっている。また、第2方向D2において移動体の中央側(
図4における右側)に位置する3個の第1折り返し部221において、移動体の中央側に位置する線状部位221Bが、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状となっている。
【0059】
なお、残りの4個の第1折り返し部221は、第1実施例と同様の構成となっているが、4個のうち
図4における左側の2個の第1折り返し部221では、移動体の側面側に位置する線状部位221Aが、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状となっていてもよい。また、4個のうち
図4における右側の2個の第1折り返し部221では、移動体の中央側に位置する線状部位221Bが、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状となっていてもよい。
【0060】
以下、シートヒータ100の第2実施例の利点について説明する。例えば、移動体が自動車である場合、「移動体の側面側」は自動車のドア側に相当し、「移動体の中央側」は自動車のセンターコンソール側に相当する。そして、シートヒータ100の加熱の初期においては、自動車の内部が冷えている場合、自動車のドア側及びセンターコンソール側で放熱されやすいため、シートヒータ100の温度上昇が遅くなりがちである。
【0061】
そこで、第2実施例では、自動車のドア側(移動体の側面側)及び自動車のセンターコンソール側(移動体の中央側)においてヒータ線2の密度が大きくなるようにヒータ線2を配置している。このため、第2実施例では、放熱されやすい自動車のドア側及びセンターコンソール側がヒータ線2により加熱されやすくなり、シートヒータ100が温度上昇しやすくなる、という利点がある。
【0062】
<第3実施例>
図5は、実施の形態におけるシートヒータ100の第3実施例を示す図である。第3実施例は、1以上の第1折り返し部221でのヒータ線2の折り返し方が第1実施例及び第2実施例と相違する。以下、第1実施例と共通する構成については説明を省略する。また、以下では、
図5において、第2方向D2における左側が移動体の側面側であって、右側が移動体の中央側であることとして説明する。
【0063】
第3実施例では、
図5に示すように、1以上の第1折り返し部221の各々では、頂角θ1をなす一対の線状部位221A,221Bのうちの移動体の中央側(
図5における右側)に位置する線状部位221Bは、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状である。
図5に示す例では、10個の第1折り返し部221の各々において、移動体の中央側(
図5における右側)に位置する線状部位221Bが、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状となっている。
【0064】
以下、シートヒータ100の第3実施例の利点について説明する。例えば、移動体が自動車である場合、「移動体の側面側」は自動車のドア側に相当し、「移動体の中央側」は自動車のセンターコンソール側に相当する。そして、手動でドアを開けることで速やかに降車可能な自動車であれば、ユーザは、使用位置にあるオットマン34の天面341で脚の一部(ふくらはぎ)を滑らせながら降車する場合がある。このような場合、オットマン34の天面341において、センターコンソール側がユーザの脚の一部により引っ張られやすくなる。
【0065】
そこで、第3実施例では、自動車のセンターコンソール側(移動体の中央側)において、ヒータ線2を長さ方向が第1方向D1に沿った直線状とすることで、第2方向D2に沿った成分を極力減らすことができる。このため、ユーザが使用位置にあるオットマン34の天面341で脚の一部(ふくらはぎ)を滑らせながら降車する場合であっても、ヒータ線2の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。
【0066】
<第4実施例>
図6は、実施の形態におけるシートヒータ100の第4実施例を示す図である。第4実施例は、1以上の第2折り返し部222でのヒータ線2の折り返し方が第1実施例と相違する。また、第4実施例は、複数の主部21の数、1以上の第1折り返し部221の数、及び1以上の第2折り返し部222の数が第1実施例と相違する。以下、第1実施例と共通する構成については説明を省略する。
【0067】
第4実施例では、
図6に示すように、1以上の第2折り返し部222の各々は、平面視で頂角θ2が鋭角となるように折り返されている。具体的には、各第2折り返し部222においては、ヒータ線2の一部を構成する一対の線状部位222A,222Bが頂角θ2をなしている。なお、
図6に示すように、一対の線状部位222A,222Bが繋がっている部位は、平面視で丸みを帯びた形状であってもよい。鋭角は、一例として60度以下であるが、ヒータ線2を屈曲して基材1に固定可能な範囲であれば、その角度は特に限定されない。
【0068】
なお、
図6では、頂角θ2は頂角θ1と等しい例を示したが、これに限定されず、頂角θ2が頂角θ1以上となるように、すなわち、第1折り返し部221の曲率が第2折り返し部222の曲率以上となるようにしてもよい。
【0069】
以下、シートヒータ100の第4実施例の利点について説明する。既に述べたように、各第2折り返し部222が位置する領域A1は、ユーザのふくらはぎを含む脚全体が接触しにくい領域であるが、例えばユーザが子供である場合、ユーザが成人である場合と比較してユーザの脚が接触しやすくなる。このような場合、領域A1においても第1方向D1に沿った荷重が掛かりやすくなる可能性がある。
【0070】
そこで、第4実施例では、1以上の第2折り返し部222は、いずれも平面視で頂角θ2が鋭角となるように折り返されている。このため、1以上の第2折り返し部222においては、ヒータ線2は、第2方向D2に沿った成分よりも第1方向D1に沿った成分の方が大きくなる。したがって、第4実施例では、1以上の第2折り返し部222においてもヒータ線2の屈曲を抑制しやすくなり、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0071】
なお、第4実施例では、第2実施例での各第1折り返し部221の配置、又は第3実施例での各第1折り返し部221の配置を採用してもよい。
【0072】
<第5実施例>
図7は、実施の形態におけるシートヒータ100の第5実施例でのヒータ線2の配置例を示す図である。第5実施例は、複数の主部21でのヒータ線2の配置、及び接続部23でのヒータ線2の配置が第4実施例と相違する。以下、第4実施例と共通する構成については説明を省略する。
【0073】
第5実施例では、
図7に示すように、複数の主部21の各々は、平面視で頂角θ3が鈍角となるように屈曲する1以上(ここでは、3個)の屈曲部211を有している。具体的には、各屈曲部211においては、ヒータ線2の一部を構成する一対の線状部位211A,211Bが頂角θ3をなしている。なお、
図7に示すように、一対の線状部位211A,211Bが繋がっている部位は、平面視で丸みを帯びた形状であってもよい。鈍角は、一例として120度~140度であるが、ヒータ線2を屈曲して基材1に固定可能な範囲であれば、その角度は特に限定されない。
【0074】
また、第5実施例では、
図7に示すように、接続部23の線状部位23A,23Bは、それぞれ平面視で頂角θ3が鈍角となるように屈曲する1以上(ここでは、2個)の屈曲部231を有している。
【0075】
以下、シートヒータ100の第5実施例の利点について説明する。ユーザが座席3に着座する、又はユーザが座席3から離れる際には、オットマン34に第1方向D1に沿った比較的強い荷重が掛かるだけでなく、ユーザのふくらはぎがオットマン34の天面341で第2方向D2に沿って移動することによって、第2方向D2に沿ってヒータ線2が引っ張られる場合がある。
【0076】
そこで、第5実施例では、複数の主部21の各々は、1以上の屈曲部211を有している。このため、各主部21においては、ヒータ線2が平面視で直線状である場合と比較してヒータ線2が長くなるので、第2方向D2に沿ってヒータ線2が引っ張られた場合でも、ヒータ線2が屈曲しにくい、という利点がある。
【0077】
また、第5実施例では、接続部23の線状部位23A,23Bは、それぞれ平面視で頂角θ3が鈍角となるように屈曲する1以上の屈曲部231を有している。このため、各線状部位23A,23Bにおいては、ヒータ線2が平面視で直線状である場合と比較してヒータ線2が長くなるので、第1方向D1に沿ってヒータ線2が引っ張られた場合でも、ヒータ線2が屈曲しにくい、という利点がある。
【0078】
図8は、実施の形態におけるシートヒータ100の第5実施例でのヒータ線2の他の配置例を示す図である。
図9は、実施の形態におけるシートヒータ100の第5実施例でのヒータ線2の更に他の配置例を示す図である。
図8に示す例では、各主部21は、
図7に示す例よりも多くの屈曲部211を有している。また、
図9に示す例では、各主部21は、
図8に示す例よりも多くの屈曲部211を有している。このように、各主部21において屈曲部211の数を増やすことで、第1方向D1に沿ったヒータ線2の引っ張りに対する強度を向上しやすくなる。
【0079】
なお、第5実施例では、第2実施例での各第1折り返し部221の配置、又は第3実施例での各第1折り返し部221の配置を採用してもよい。
【0080】
また、第5実施例では、接続部23の線状部位23A,23Bは、第1実施例と同様に、いずれも長さ方向が第2方向D2に沿って直線状となっていてもよい。
【0081】
(変形例)
以下、実施の形態におけるシートヒータ100の変形例について列挙する。
【0082】
実施の形態におけるシートヒータ100の第1実施例では、1以上の第1折り返し部221は、平面視で頂角θ1が鋭角となるように折り返されているが、これに限られない。例えば、第1実施例において、1以上の第1折り返し部221は、平面視で半円形状となるように折り返されていてもよい。
【0083】
実施の形態では、シートヒータ100は、オットマンヒータのみを備えているが、これに限られない。例えば、シートヒータ100は、オットマンヒータ以外の他のヒータを備えていてもよい。例えば、シートヒータ100は、クッションヒータ又はバックヒータ等を更に備えていてもよい。クッションヒータは、シートクッション31に設置されるヒータであって、シートクッション31を介して座席3に着座したユーザの臀部及び大腿部を主として温める。バックヒータは、シートバック32に設置されるヒータであって、シートバック32を介して座席3に着座したユーザの背部を主として温める。なお、オットマンヒータ以外の他のヒータにおいては、第1実施例~第5実施例で挙げたヒータ線2の配置を採用しなくてもよい。
【0084】
実施の形態では、ヒータ線2は、縫製糸を用いて基材1の表面に縫い付けられることにより基材1に固定されているが、これに限られない。例えば、ヒータ線2は、接着等の縫製糸以外の手段により基材1に固定されていてもよい。
【0085】
なお、上記の実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0086】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係るシートヒータ100は、基材1と、ヒータ線2と、を備える。基材1は、移動体の座席3に着座したユーザの脚の一部を支持するオットマン34に配置されている。ヒータ線2は、基材1の一面に配置されている。ヒータ線2は、オットマン34が使用位置にある場合に平面視で長さ方向が移動体の長さ方向である第1方向D1に沿った複数の主部21と、複数の主部21の各々の端部にて折り返す複数の折り返し部22と、を有している。
【0087】
これによれば、オットマン34に第1方向D1に沿った比較的強い荷重が掛かっても、ヒータ線2に対しては、ヒータ線2の長さ方向に沿った向きで上記荷重が掛かることになり、ヒータ線2が屈曲する向きで上記荷重が掛かりにくくなる。したがって、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。
【0088】
第2の態様に係るシートヒータ100では、第1の態様において、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部221は、平面視で頂角θ1が鋭角となるように折り返されている。
【0089】
これによれば、1以上の第1折り返し部221においては、ヒータ線2は、第2方向D2に沿った成分よりも第1方向D1に沿った成分の方が大きくなる。したがって、1以上の第1折り返し部221においてもヒータ線2の屈曲を抑制しやすくなり、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0090】
第3の態様に係るシートヒータ100では、第2の態様において、1以上の第1折り返し部221のうち移動体の幅方向である第2方向D2において移動体の側面側に位置する第1折り返し部221では、頂角θ1をなす一対の線状部位221A,221Bのうちの移動体の側面側に位置する線状部位221Aは、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状である。1以上の第1折り返し部221のうち第2方向D2において移動体の中央側に位置する第1折り返し部221では、頂角θ1をなす一対の線状部位221A,221Bのうちの移動体の中央側に位置する線状部位221Bは、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状である。
【0091】
これによれば、移動体の側面側及び移動体の中央側においてヒータ線2の密度が大きくなるようにヒータ線2が配置されるため、放熱されやすい移動体の側面側及び移動体の中央側がヒータ線2により加熱されやすくなり、シートヒータ100が温度上昇しやすくなる、という利点がある。
【0092】
第4の態様に係るシートヒータ100では、第2の態様において、1以上の第1折り返し部221の各々では、頂角θ1をなす一対の線状部位221A,221Bのうちの移動体の中央側に位置する線状部位は、平面視で長さ方向が第1方向D1に沿った直線状である。
【0093】
これによれば、移動体の中央側においてヒータ線2の第2方向D2に沿った成分を極力減らすことができるので、ユーザが使用位置にあるオットマン34の天面341で脚の一部を滑らせながら降車する場合であっても、ヒータ線2の屈曲を抑制しやすい、という利点がある。
【0094】
第5の態様に係るシートヒータ100では、第1~第4のいずれか1つの態様において、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部222は、平面視で半円形状となるように折り返されている。
【0095】
これによれば、1以上の第2折り返し部222においては、ヒータ線2が比較的緩やかな角度で折り返されるため、縫製糸によりヒータ線2を基材1に縫い付ける縫製ピッチを比較的長くすることができ、ヒータ線2を基材1に固定しやすくなる、という利点がある。
【0096】
第6の態様に係るシートヒータ100では、第1~第4のいずれか1つの態様において、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部222は、平面視で頂角θ2が鋭角となるように折り返されている。
【0097】
これによれば、1以上の第2折り返し部222においては、ヒータ線2は、第2方向D2に沿った成分よりも第1方向D1に沿った成分の方が大きくなる。したがって、1以上の第2折り返し部222においてもヒータ線2の屈曲を抑制しやすくなり、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0098】
第7の態様に係るシートヒータ100では、第1~第6のいずれか1つの態様において、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の下側にて折り返す1以上の第1折り返し部221の曲率は、複数の折り返し部22のうちの第1方向D1の上側にて折り返す1以上の第2折り返し部222の曲率以上である。
【0099】
これによれば、1以上の第1折り返し部221においては、ヒータ線2は、第2方向D2に沿った成分よりも第1方向D1に沿った成分の方が大きくなる。したがって、1以上の第1折り返し部221においてもヒータ線2の屈曲を抑制しやすくなり、オットマン34において荷重が掛かることによるヒータ線2の屈曲を更に抑制しやすい、という利点がある。
【0100】
第8の態様に係るシートヒータ100では、第1~第7のいずれか1つの態様において、複数の主部21の各々は、平面視で頂角θ3が鈍角となるように屈曲する1以上の屈曲部211を有している。
【0101】
これによれば、各主部21においては、ヒータ線2が平面視で直線状である場合と比較してヒータ線2が長くなるので、第2方向D2に沿ってヒータ線2が引っ張られた場合でも、ヒータ線2が屈曲しにくい、という利点がある。
【0102】
第9の態様に係るシートヒータ100では、第1~第8のいずれか1つの態様において、ヒータ線2は、ヒータ線2に電力を供給するヒータ制御回路200に接続される接続部23を有している。接続部23は、基材1における第1方向D1の上側に配置されており、平面視で長さ方向が移動体の幅方向である第2方向D2に沿っている。
【0103】
これによれば、接続部23を第1方向D1に沿った部位を含むように配置する場合と比較して、ヒータ線2を基材1に固定しやすくなる、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、例えば車両等に装備されている座席等を温めるシートヒータに利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
100 シートヒータ
200 ヒータ制御回路
300 ヒータ装置
400 電源
1 基材
2 ヒータ線
2A、2B 端子
21 主部
211 屈曲部
211A、211B 線状部位
22 折り返し部
221 第1折り返し部
221A、221B 線状部位
222 第2折り返し部
222A、222B 線状部位
23 接続部
23A、23B 線状部位
231 屈曲部
3 座席
31 シートクッション
32 シートバック
33 ヘッドレスト
34 オットマン
341 天面
D1 第1方向
D2 第2方向
θ1、θ2、θ3 頂角