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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131666
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042079
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 祐太
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大俊
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 亮太
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH05
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC36
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG56
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】 耐湿性に優れた積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】 本開示の積層セラミック電子部品の製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程および第4工程を備える。第1工程では、複数のセラミックシートと複数の導電体が交互に積層された積層体を準備する。第2工程では、導電体を露出する側面を形成するように積層体を切断する。第3工程では、積層体の側面を、減圧条件下において、加速させたプラズマイオンを照射してエッチング処理を行う。第4工程では、エッチング処理後の積層体の側面に、セラミック誘電体を含むサイドマージン部を設ける。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックシートと複数の導電体が交互に積層された積層体を準備する第1工程と、
前記導電体を露出する側面を形成するように前記積層体を切断する第2工程と、
前記積層体の前記側面を、減圧条件下において、加速させたプラズマイオンを照射してエッチング処理を行う第3工程と、
前記エッチング処理後の前記積層体の前記側面に、セラミック誘電体を含むサイドマージン部を設ける第4工程と、
を備える、積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記プラズマイオンはArイオン、Heイオン、Krイオン、Xeイオン、N2イオンおよびO2イオンのいずれかを含む、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記減圧条件下とは0.4Pa以下の気圧条件である、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記減圧条件下とは0.2Pa以下の気圧条件である、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程において、200V以上4000V未満の電圧条件によって加速された前記プラズマイオンを照射する、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程において、3000V以上4000V未満の電圧条件によって加速された前記プラズマイオンを照射する、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程において、前記プラズマイオンの照射時間は30sec以上180sec以下である、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程において、前記プラズマイオンの照射方向は、前記側面に垂直な方向に対して傾斜する、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記照射方向は、前記側面に垂直な方向に対して20°~70°傾斜する、
請求項8に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサに対する小型化及び大容量化の要望が強くなっている。この要望に応えるためには、積層セラミックコンデンサの内部電極を拡大することが有効である。内部電極を拡大するためには、内部電極の周囲の絶縁性を確保するためのサイドマージン部を薄くする必要がある。
【0003】
一方で、一般的な積層セラミックコンデンサの製造方法では、例えば内部電極のパターニングおよび積層シートの切断などの各工程の精度により、均一な厚さのサイドマージン部を形成することが難しい。したがって、このような積層セラミックコンデンサの製造方法では、サイドマージン部を薄くするほど、内部電極の周囲の絶縁性を確保することが難しくなる。
【0004】
例えば、特許文献1では、複数のセラミックグリーンシートと複数の内部電極パターンとを含むマザーブロックを作製し、マザーブロックを切断し、切断側面に内部電極が露出した状態にあるグリーンチップを用意し、切断側面に側面用セラミックグリーンシートを貼り付けることが開示されている。特許文献1の方法によれば、均一な厚さの側面用セラミックグリーンシートを形成でき、サイドマージン部を薄くする場合にも、内部電極の周囲の絶縁性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、グリーンチップの切断側面に露出した内部電極は、切断に使用するカット刃の移動に伴い、内部電極が引き摺られ、短絡が発生する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、複数のセラミックシートと複数の導電体が交互に積層された積層体を準備する第1工程と、前記導電体を露出する側面を形成するように前記積層体を切断する第2工程と、前記積層体の前記側面を、減圧条件下において、加速させたプラズマイオンを照射してエッチング処理を行う第3工程と、前記エッチング処理後の前記積層体の前記側面に、セラミック誘電体を含むサイドマージン部を設ける第4工程と、を備える。
【0008】
(2)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記プラズマイオンはArイオン、Heイオン、Krイオン、Xeイオン、N2イオンおよびO2イオンのいずれかを含む。
【0009】
(3)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)または(2)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記減圧条件下とは0.4Pa以下の気圧条件である。
【0010】
(4)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)乃至(3)のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記減圧条件下とは0.2Pa以下の気圧条件である。
【0011】
(5)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)乃至(4)のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記第3工程において、200V以上4000V未満の電圧条件によって加速された前記プラズマイオンを照射する。
【0012】
(6)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)乃至(5)のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記第3工程において、3000V以上4000V未満の電圧条件によって加速された前記プラズマイオンを照射する。
【0013】
(7)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)乃至(6)のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記第3工程において、前記プラズマイオンの照射時間は30sec以上180sec以下である。
【0014】
(8)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(1)乃至(7)のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記第3工程において、前記プラズマイオンの照射方向は、前記側面に垂直な方向に対して傾斜する。
【0015】
(9)
本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、(8)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記照射方向は、前記側面に垂直な方向に対して20°~70°傾斜する。
【発明の効果】
【0016】
上記のような積層セラミック電子部品の製造方法によれば、内部電極の短絡の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る素体の模式図および素体が有する各構成を切り離して示した模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係るセラミックシートおよびこれらに配置された導電体を示す模式図である。
図5】本開示の一実施形態に係る母積層体の模式的な斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係る母積層体の模式的な斜視図である。
図7】本開示の一実施形態に係る積層体の模式的な斜視図である。
図8】第2工程における母積層体の断面の一部についての模式図である。
図9】第2工程により切断された積層体の断面の一部についての模式図である。
図10】第3工程を模式的に示した図である。
図11】第3工程の前後における積層体の側面の状態を模式的に示す図である。
図12】第4工程のプロセスを模式的に示した図である。
図13】本開示の一実施形態に係る素体前駆体の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品1および、積層セラミック電子部品1の製造方法について説明する。なお、以下では、積層セラミック電子部品1の一例として積層セラミックコンデンサについて説明するが、本開示の対象となる積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限られず、積層型圧電素子、積層サーミスタ素子、積層部コイル、および積層セラミック多層基板等の様々な積層セラミック電子部品に適用することができる。
【0019】
なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、本明細書に記載する各実施形態は例示的なものであり、異なる実施形態および変更例間において部分的に置換してもよい。また、異なる実施形態および変更例を部分的に組み合わせてもよい。
【0020】
[積層セラミック電子部品の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る積層セラミック電子部品1の模式図である。積層セラミック電子部品1は、素体2と、外部電極3とを有している。素体2の形状は適宜設定されるが、一例として、素体2は、略直方体状の形状である。外部電極3は、一例として、素体2の一対の端面に位置し、該端面に隣接するその他の面にまで回り込んで形成されていてもよい。一方の端面に位置する外部電極を外部電極3a、他方の端面に位置する外部電極を外部電極3bとする。
【0021】
図面には、便宜上、第1方向、第2方向、第3方向からなる直交座標系を付すことがある。本開示に係る積層セラミック電子部品1は、いずれの方向が第1方向、第2方向、第3方向とされてもよい。ただし、便宜上、後述する内部電極層212と誘電体層211の積層方向を第1方向と定義する。また、第1方向と交差する方向であって、略直方体状の形状である素体2の短辺側に略平行な方向を、第2方向と定義する。また第2方向に交差する方向であって、略直方体状の形状である素体2の長辺側に略平行な方向を第3方向と定義する。また、便宜上、第1方向を上下方向、第2方向を左右方向、第3方向を前後方向とすることがある。
【0022】
素体2は略直方体状の形状であり、6つの面を有している。第1方向において素体2の上下に位置する面を主面、第2方向において素体2の左右に位置する面を側面、第3方向において素体2の前後に位置する面を端面と定義する。主面、側面、端面の定義は、素体2を構成する後述の積層部21についても、それぞれ同様に定義する。また、主面、側面、端面の定義は、後述する焼成前の素体前駆体200についても、それぞれ同様に定義する。また、主面、側面、端面の定義は、後述する焼成前の積層体50についても、それぞれ同様に定義する。また、主面、側面、端面の定義は、後述する焼成前の母積層体500についても、それぞれ同様に定義する。
【0023】
外部電極3は、導体により形成され、積層セラミック電子部品1の端子として機能する。外部電極3を形成する導体として、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム
(Pd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、銀(Ag)および金(Au)などの金属またはこれらの合金などが挙げられる。
【0024】
外部電極3は単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。例えば複層構造の外部電極3は、例えば、下地膜と表面膜との2層構造や、下地膜と中間膜と表面膜との3層構造として構成されていてもよい。下地膜は、例えば、Ni、Cu、Pd、Pt、Ag、Auなどを主成分とする金属または合金の焼き付け膜とすることができる。中間膜は、例えば、Pt、Pd、Au、Cu、Niなどを主成分とする金属または合金のメッキ膜とすることができる。表面膜は、例えば、Cu、Sn、Pd、Au、Znなどを主成分とする金属および合金のメッキ膜とすることができる。
【0025】
図2は、素体2の模式図である。素体2は積層部21、サイドマージン部22およびカバー部23を有する。図2Aは積層部21、サイドマージン部22およびカバー部23を一体として示した模式図であり、図2Bは積層部21、サイドマージン部22およびカバー部23を切り離して示した模式図である。図2は、焼成前の素体2を示す図でもあり、焼成後の素体2を示す図でもある。焼成後の素体2は、焼成によって収縮しているが、焼成前の素体2と略同一構造を有する。
【0026】
積層部21は、複数の誘電体層211と、複数の内部電極層212が第1方向に積層している。複数の誘電体層211は、種々のセラミック誘電体を含んでいてもよい。一例として、誘電体層211の主成分は、チタン酸バリウム(BaTiO3)である。なお、本開示において主成分とは、80%以上の構成割合を有する成分を示す。
【0027】
複数の内部電極層212は外部電極3に接続される。内部電極層212は、Ni、Pd、Ag、Cuなどの種々の金属を含んでいてもよい。一例として、内部電極層212の主成分はNiである。複数の内部電極層212のうち、外部電極3aに接続するものを内部電極層212aとし、外部電極3bに接続するものを内部電極層212bとする。
【0028】
サイドマージン部22は、第2方向において、積層部21の両側面に位置する。サイドマージン部22は、種々のセラミック誘電体を含んでいてもよい。例えばサイドマージン部22の主成分は、積層部21の誘電体層211の主成分と同一であってもよい。この場合、製造効率が向上するとともに、素体21における内部応力が低減し信頼性が向上する。
【0029】
カバー部23は、第1方向において積層部21の両主面に位置する。カバー部23は種々のセラミック誘電体を含んでいてもよい。例えばカバー部23の主成分は、積層部21の誘電体層211の主成分と同一であってもよい。この場合、製造効率が向上するとともに、素体21における内部応力が低減し信頼性が向上する。
【0030】
上記の構成により、積層セラミック電子部品1では、外部電極3aと外部電極3bとの間に電圧が印加されると、内部電極層212aと内部電極層212bとの間の複数の誘電体層211に電圧が加わる。これにより、積層セラミック電子部品1では、外部電極3aと外部電極3bとの間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0031】
なお、積層セラミック電子部品1の構成は、特定の構成に限定されず、積層セラミック電子部品1に求められるサイズや性能などに応じて、公知の構成を適宜採用可能である。例えば、積層部21における内部電極層212の枚数は、適宜決定可能である。
【0032】
[積層セラミック電子部品の製造方法]
図3は、積層セラミック電子部品1の製造方法を示すフローチャートである。図4~図
12は、積層セラミック電子部品1の製造工程を示す図である。以下、積層セラミック電子部品1の製造方法について、図4図12を参照しながら説明する。
【0033】
(第1工程:積層体準備)
第1工程では、複数のセラミックシート400と複数の導電体410とが交互に積層された母積層体500を準備する。
【0034】
まずは、第1セラミックシート401、第2セラミックシート402、第3セラミックシート403、第1導電体411および第2導電体412を準備する。第1セラミックシート401及び第2セラミックシート402は焼成後の積層部21の誘電体層211を形成する。第3セラミックシート403は、焼成後のカバー部23を形成する。第1導電体411および第2導電体412は、焼成後の内部電極層212を形成する。なお第1セラミックシート401、第2セラミックシート402、第3セラミックシート403を合わせてセラミックシート400と呼ぶことがある。第1導電体411と第2導電体412は合わせて導電体410と呼ぶことがある。
【0035】
図4はセラミックシート400およびこれらに配置された導電体410を示す。図4Aは第1セラミックシート401と第1導電体411を示し、図4Bは第2セラミックシート402と第2導電体412を示し、図4Cは第3セラミックシート403を示す。
【0036】
セラミックシート400は、例えばキャリアフィルムに配置する。この配置は、例えばダイコーターを用いて行われるが、これに限定されない。例えば、ドクターブレードコーターまたはグラビアコーター等を用いて行ってもよい。セラミックシート400の厚みは適宜設定可能である。例えば、セラミックシート400の厚みは1~10μm程度であってもよい。セラミックシートの厚みを薄くするほど、積層セラミック電子部品1の静電容量を高くすることができる。
【0037】
セラミックシート400は、種々のセラミック誘電体材料によって作製されてもよい。一例として、セラミックシート400は、BaTiO3に添加剤を加えたセラミックの混合粉体をビーズミルで湿式粉砕混合し、この粉砕混合したスラリーに、ポリビニルブチラール系バインダ、可塑剤、および有機溶剤を混合することで作製する。
【0038】
次に、図4Aおよび図4Bに示すように、上記で作成した第1セラミックシート401に、焼成後に内部電極層212aとなる第1導電体411を、間隔Pをあけて配置する。また第2セラミックシート402に、焼成後に内部電極層212bとなる第2導電体412を、間隔Pをあけて配置する。図4A図4Bは、内部電極層212となる金属材料を含む導電体410を極性の異なる2種類の導体パターンで印刷したものである。
【0039】
導電体410の形成には、例えば、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。導電体410は、種々の金属によって作成されてもよい。具体的に、本開示の一実施形態においては、導電体410は、Niを主成分とする導電性ペーストによって作製する。
【0040】
なお、焼成後のカバー部23に対応する第3セラミックシート403には導電体410が形成されていなくてもよい。ただしこの例に限定されず、例えば第3セラミックシート403には、焼成後にダミーの内部電極層となる導電体410が配置されていてもよい。
【0041】
導電体410の厚みは、適宜設定可能である。コンデンサとしての特性が確保できる限りにおいて、導電体410の厚みが薄ければ薄いほど、内部応力による内部欠陥を防ぐことができる。例えば、高積層数のコンデンサであれば、導電体410の厚みは1.0μm
以下であってもよい。また間隔Pは、適宜設定可能である。間隔Pは必ずしも一定である必要はなく、例えば、第1導電体411の間隔Pと第2導電体412の間隔Pは異なっていてもよい。
【0042】
なお、第1導電体411が形成された第1セラミックシート401を第1シート、第2導電体412が形成された第2セラミックシート402を第2シート、第3セラミックシート403を第3シートと呼ぶことがある。
【0043】
次に準備した第1シート、第2シートおよび第3シートを積層することにより母積層体500を作製する。図5は、母積層体500の模式的な斜視図である。図5では、説明の便宜上、それぞれのセラミックシート400を分解して示している。しかし、実際の母積層体500は、図6に示すようにセラミックシート400が静水圧加圧や一軸加圧などにより圧着されて一体化される。これにより、高密度の母積層体500が得られる。
【0044】
母積層体500では、焼成後の積層部21に対応する第1シート及び第2シートが第1方向に交互に積層されている。また、母積層体500では、交互に積層された第1シートと第2シートの第1方向最上面及び最下面に、それぞれ焼成後のカバー部23に対応する第3シートが積層される。なお、図5に示す例では、第3シートがそれぞれ3枚ずつ積層されているが、第3シートの枚数は適宜変更可能である。
【0045】
(第2工程:切断)
第2工程では、導電体を露出する側面および端面を形成するように母積層体500を切断する。
【0046】
第1工程で得られた母積層体500を押し切りにより切断し、未焼成の積層体50を作成する。図6は、母積層体500の斜視図である。母積層体500は、保持部材としてのテープに貼り付けられた状態で、切断線CL1およびCL2に沿って切断される。これにより、母積層体500が個片化され、図7に示すような積層体50が得られる。
【0047】
図8は、第2工程のプロセスを示す母積層体500の断面の一部を模式的に示した図である。なお図8は第3方向から見た時の母積層体500の断面図である。第2工程の切断には、カット刃6を備える切断装置を用いる。図8に示すように、カット刃6を用いて母積層体500を切断した後、カット刃6を母積層体500から引き抜く。なお、図8は切断線CL1に沿って切断する場合におけるプロセスの一例を示している。
【0048】
切断線CL1に沿って切断されることにより形成される母積層体500の切断面は、積層体50の第2方向の側面となる。なお、積層体50の側面は二つ存在し、一方を側面S1とし、他方を側面S2と呼ぶことがある。図7において側面S1および側面S2を点線で示している。第2工程により形成された積層体50の側面S1および側面S2には導電体410が露出する。
【0049】
積層体切断線CL2に沿って切断されることにより形成される母積層体500の切断面は、積層体50の第3方向の端面となる。なお、積層体50の端面は二つ存在し、一方を端面T1とし、他方を端面T2と呼ぶことがある。図7において端面T1および端面T2を長鎖線で示している。第2工程により形成された積層体50の端面には導電体410が露出する。
【0050】
第2工程により、母積層体500が複数の積層体50に個片化される。このとき、テープは、切断されずに、各積層体50を接続していてもよい。この場合、以降の工程において複数の積層体50を一括して扱うことが可能となり、製造効率が向上する。
【0051】
図9は第2工程により切断された積層体50の断面の一部を模式的に示した図である。また図9は、第2方向から見た時の積層体50の断面図である。切断後の積層体50の側面は、図9Aおよび図9Bに例示される状態となる場合がある。なお図9Aおよび図9Bは一例であり、その他の状態にある場合もある。
【0052】
例えば図9Aに示す積層体50の側面には、第2工程においてカット刃6の移動に伴い、導電体410を引き摺られることにより、セラミックシート400上に導電体410の引延部Eが形成される。例えば第1導電体411の引延部Eが第2導電体412に到達すると、第1導電体411と第2導電体412同士が引延部Eを介して接続されることにより、短絡が発生してしまう。
【0053】
例えば図9Bに示す積層体50の側面には、セラミックシート400上に異物Fが付着している。異物Fとしては、第2工程において導電体410やカット刃6などから生じた導電性を有する物質等が想定される。このような異物Fが側面に多く付着することで、第1導電体411と第2導電体412同士が異物Fを介して接続されることにより、短絡が発生してしまう。
【0054】
このように、第2工程の切断後の積層体50では、引延部Eおよび異物F等の影響により側面に露出する第1導電体411と第2導電体412が短絡する場合がある。第1導電体411と第2導電体412が短絡していると、焼成後においても内部電極層212aと内部電極層212bとが短絡してしまい、積層セラミック電子部品1の性能が悪化してしまう。
【0055】
特に、内部電極層212aと内部電極層212bの間隔が狭い場合、換言すると第1導電体411と第2導電体412の間のセラミックシート400が薄い場合に、積層体50の側面における第1導電体411と第2導電体412間の短絡が発生しやすい。
【0056】
なお、第2工程における母積層体500の切断には、カット刃6による押し切りとは異なる技術を用いてもよく、例えば回転刃を用いてもよい。更に、母積層体500の切断には、刃を要しない技術を用いてもよく、例えばレーザ切断やウォータージェット切断を用いてもよい。このような場合であっても、第2工程では、積層体50の側面において第1導電体411と第2導電体412との短絡が発生する場合がある。
【0057】
(第3工程:第1エッチング処理)
第3工程では、二つ存在する積層体50の側面のうち一方の側面S1を、減圧条件下において、加速させたプラズマイオンを照射してエッチング処理をする。
【0058】
図10は第3工程を模式的に示した図である。図10に示すように第3工程のエッチング処理にはプラズマイオン照射装置7を使用する。第3工程ではプラズマイオン照射装置7により加速されたプラズマイオンを、積層体50の側面S1に照射することにより行う。なお、第3工程は減圧条件下で行う。なお減圧条件下とは、大気圧よりも気圧が低い条件を示し、例えば0.1MPaよりも小さい気圧条件である。
【0059】
図11は、第3工程を行う前後における積層体50の側面S1の状態を模式的に示す。引延部Eおよび異物Fなどは、第2工程後の側面S1の表層に含まれる。第3工程で側面S1の表層をエッチングすることにより、引延部Eおよび異物Fなどが除去される。これにより、積層体50の側面S1における第1導電体411と第2導電体412との短絡が発生する可能性を低減することができる。なお、エッチングにより除去する側面S1の第2方向の深さは、適宜設定可能である。
【0060】
第3工程において、照射するプラズマイオンは適宜設定可能である。例えば、照射するプラズマイオンは不活性ガスであるイオンを含んでいてもよい。一例として、照射するプラズマイオンはArイオンを含む。この場合、質量数の大きいArイオンを照射するため、効果的に積層体50の側面をエッチングすることができる。なお照射するプラズマイオンはArイオンに限定されない。例えば、照射するプラズマイオンに含まれるイオンの例として、Heイオン、Krイオン、Xeイオン、N2イオンおよびO2イオン等が挙げられる。
【0061】
第3工程において、減圧条件は適宜設定可能である。例えば0.4Pa以下の気圧条件であってもよい。この場合、照射されるプラズマイオンが大気分子と衝突する可能性を低減することができる。換言すると、加速されたプラズマイオンが積層体50の側面S1に到達するまでに減速してしまうことを低減することができる。結果としてプラズマイオンの速度が高い状態で積層体50の側面S1に到達するため、効果的に側面S1をエッチングすることができる。なお、減圧条件は、例えば0.2Pa以下の気圧条件であってもよい。この場合、さらに効果的に、積層体50の側面S1をエッチングすることができる。
【0062】
第3工程において、プラズマイオンを加速させる電圧条件は適宜設定可能である。例えば、電圧条件は200V以上であってもよい。200V以上の電圧でプラズマイオンを加速する場合、プラズマイオンの速度が高い状態で積層体50の側面S1に到達するため、効果的に側面S1をエッチングすることができる。なお、電圧条件は、例えば3000V以上であってもよい3000V以上の電圧でプラズマイオンを加速する場合、さらに効果的に、積層体50の側面S1をエッチングすることができる。
【0063】
電圧条件は、例えば4000V以下であってもよい。4000V以上の電圧条件でプラズマイオンを加速する場合には、エッチングにより除去した残渣が舞い上がりすぎてしまい、積層体50の側面S1に再付着してしまう可能性が高くなる。また4000V以上の電圧条件でプラズマイオンを加速する場合には、積層体50の側面側が高電圧にさらされるため帯電してしまい、エッチングにより除去した残渣を再付着させる可能性が高くなる。このように、電圧条件が4000V以上の場合には、エッチングした残渣が再付着する可能性が高まり、短絡の原因を作ってしまう恐れがある。したがって電圧条件は200V以上4000V未満であってもよく、より好ましくは3000V以上4000V未満であってもよい。この場合、残渣の再付着の可能性を低減しつつ、効果的にエッチング処理を行うことができる。
【0064】
第3工程において、プラズマイオンを照射する照射時間は適宜設定可能である。例えば、照射時間は30sec以上180sec以下であってもよい。照射時間を30sec以上180sec以下とする場合、より確実に積層体50の側面をエッチングすることができる。
【0065】
第3工程において、プラズマイオンの照射方向は適宜設定可能である。例えば、照射方向は、積層体50の側面に垂直な方向に対して傾斜していてもよい。この場合、エッチングにより除去した残渣の舞い上がりを低減し、側面に再付着することを低減することができる。また、照射方向が積層体50の側面に垂直な方向に対して傾斜する場合には、エッチングの残渣が、プラズマイオンの進行方向に舞い上がることを低減し、プラズマイオンの減速を低減することができる。したがって照射方向は、積層体50の側面に垂直な方向に対して傾斜する場合、短絡の可能性を低減しつつ効果的にエッチング処理を行うことができる。このような照射方向の角度として、例えば側面に垂直な方向に対して20°~70°の範囲であり、より好ましくは45°である。
【0066】
(第4工程:第1サイドマージン部形成)
第4工程では、第3工程によるエッチング処理を行った積層体50の側面S1に、セラミック誘電体を含むサイドマージンシート403を設ける。
【0067】
第4工程では、まずは焼成後にサイドマージン部22を形成するサイドマージンシート403を準備する。図12は、第4工程のプロセスを模式的に示した図である。まず、平板状の弾性体の上に、サイドマージンシート403が配置される。積層体50は、側面S1をサイドマージンシート403に対向させて配置される。
【0068】
サイドマージンシート403は、第1工程で準備されるセラミックシート400と同じく、種々のセラミック誘電体材料によって作製されてもよい。一例としてサイドマージンシート403はセラミックシート400と同一の材料である。サイドマージンシート403は、例えば、ロールコーターやドクターブレードを用いてシート状に成形される。
【0069】
次に、積層体50の側面S1をサイドマージンシート403に押し当てる。これにより、積層体50の側面S1によってサイドマージンシート403が打ち抜かれる。その後に、積層体50をサイドマージンシート403から引き上げると、サイドマージンシート403から打ち抜かれ、側面S1に貼り付いたサイドマージンシート403のみが、弾性体から離れて積層体50側に残る。これにより、側面S1に焼成後にサイドマージン部22となるサイドマージンシート403が設けられた積層体50が得られる。
【0070】
なお、積層体50の側面S1におけるサイドマージンシート403は、上記の打ち抜き以外の方法によって形成されてもよい。例えば、予め切断されたサイドマージンシート403を積層体50の側面S1に貼り付けてもよい。または、サイドマージンシート403を用いずに、誘電体セラミックを含むセラミックペーストを積層体50の側面S1に塗布することにより、焼成後のサイドマージン部22を形成してもよい。この場合におけるセラミックペーストの塗布方法としては、例えば、ディップ法などを用いることができる。
【0071】
(第5工程:第2エッチング処理)
第5工程では、積層体50の側面S2を、減圧条件下において、加速させたプラズマイオンを照射してエッチング処理をする。
【0072】
第5工程における側面S2の表層の除去は、第3工程における側面S1の表層の除去と同一もしくは類似のプロセスによって行うことができる。第5工程のエッチング処理には例えば第3工程と同一のプラズマイオン照射装置7を使用することができる。第5工程では、プラズマイオン照射装置7により加速されたプラズマイオンを、積層体50の側面S2に照射することにより行う。
【0073】
第5工程により、側面S2の表層に含まれる引延部Eおよび異物Fなどが除去されるため積層体50の側面S2における第1導電体411と第2導電体412との短絡が発生する可能性を低減することができる。
【0074】
(第6工程:第2サイドマージン部形成)
第6工程では、第5工程によるエッチング処理を行った積層体50の側面S2に、セラミック誘電体を含むサイドマージン部22を設ける。
【0075】
第6工程における側面S2へのサイドマージン部22の形成は、第4工程における側面S1へのサイドマージン部22の形成と同一もしくは類似のプロセスに行うことができる。例えば、第6工程では、積層体50の側面S2をサイドマージンシート403に押し当てることにより、積層体50の側面S2に焼成後にサイドマージン部22となるサイドマ
ージンシート403を形成してもよい。
【0076】
以上の工程により、図13に示すような素体前駆体200を得ることができる。素体前駆体200は、焼成後に素体2となる。素体前駆体200の形状および大きさは、焼成後の素体2の形状および特性に応じて適宜設定可能である。
【0077】
(第7工程:焼成)
第7工程では、得られた未焼成の素体前駆体200を焼成することにより、図2に示すような素体2を作製する。焼成は、例えば、還元雰囲気下又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0078】
(第8工程:外部電極形成)
第8工程では、第7工程で得られた素体2の端面に外部電極3を形成する。
【0079】
第8工程では、まず、素体2の第3方向の両端面を覆うように未焼成の電極材料を塗布する。素体2に塗布された未焼成の電極材料に、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において焼き付け処理を行って、素体2に下地膜を形成する。そして、素体2に焼き付けられた下地膜の上に、中間膜及び表面膜を電解メッキなどのメッキ処理で形成して、外部電極3が完成する。
【0080】
なお、第8工程における処理の一部を、第7工程の前に行ってもよい。例えば、第7工程の前に未焼成の素体前駆体200の第3方向の両端面に未焼成の電極材料を塗布し、第7工程において、素体前駆体200を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極3の下地層を形成してもよい。
【0081】
以上のように第1工程~第8工程を行うことにより、図1に示す積層セラミック電子部品1を得ることができる。
【0082】
[実施例]
以下の表1は、上記の工程により作成した積層セラミック電子部品1の特性評価をまとめたものである。表1には試料No1~No10までの十個のサンプルの結果を示している。試料No1およびNo2は比較例としての積層セラミック電子部品であり、試料No2~No10は実施例としての積層セラミック電子部品1である。
【0083】
表1では、それぞれのサンプルにおける第3工程において、気圧(Pa)、プラズマイオンの加速電圧(V)、プラズマイオンを照射する照射時間(sec)、プラズマイオンの照射方向を変化させている。なお、プラズマイオンの照射方向は、照射角(°)として示している。照射角(°)とは、プラズマイオンの照射方向が積層体50の側面に垂直な方向に対する傾斜角度を示している。
【0084】
また、上述のように、第2工程後の積層体50の側面におけるセラミックシート400上には、例えば導電粒子を含む引延部Eおよび異物Fなどが付着している。表1では、それぞれのサンプルにおける積層体50の側面のセラミックシート400上に位置する導電粒子の数の割合を示す。この割合を導電粒子脱離個数割合(%)と呼ぶ。
【0085】
導電粒子脱離個数割合の算出方法は以下である。まず試料No1についての積層体50の側面のセラミックシート400上に位置する導電粒子の数(以下、基準個数という。)を測定する。次にそれぞれのサンプルについての積層体50の側面のセラミックシート400上に位置する導電粒子の数を測定し、基準個数の割合を100%とした時の割合を算出する。例えば、導電粒子脱離個数割合(%)が小さいほど、基準個数に比べて積層体5
0の側面のセラミックシート400上に位置する導電粒子の数が少ないということであり、引延部Eおよび異物Fなどが少ないということが言える。
【0086】
また、表1ではそれぞれのサンプルにおける積層セラミック電子部品の短絡割合(%)を示している。短絡割合とは、積層セラミック電子部品を100個用意した時に何個短絡が起きるかを示している。なお、積層セラミック電子部品の短絡の原因は多岐にわたるが、表1に記載の短絡割合は、切断に起因して発生する短絡についての割合である。
【0087】
比較例としての試料No1は、第2工程による切断後の積層体50の側面に対して、プラズマイオンによるエッチング処理を行っていないサンプルである。換言すると、試料No1では第3工程および第5工程を行なっていない。
【0088】
比較例としての試料No2は、プラズマイオンによるエッチング処理を0.1MPaの気圧条件で行っている。換言すると、試料No2は、大気圧条件下においてプラズマイオンによるエッチング処理を行っており、減圧条件下におけるプラズマイオンによるエッチング処理は行っていない。
【0089】
実施例としての試料No3~No10では、第3工程および第5工程を行っており、それぞれ第3工程および第5工程のプラズマイオンによるエッチング処理の条件を変化させている。例えば気圧条件について、試料No3は0.4Paとし、試料No4~No10は0.2Paとしている。
【0090】
例えばプラズマイオンの加速電圧について、試料No2~No5およびNo9は200Vとし、試料No6~No7およびNo10は3000Vとし、試料No8は4000Vとしている。
【0091】
例えばプラズマイオンを照射する照射時間について、試料No2~No4、No6およびNo9~No10は30secとし、試料No5およびNo7~No8は180secとしている。
【0092】
例えばプラズマイオンの照射角について、試料No2~No8は90°とし、試料No9~No10は45°としている。換言すると、試料No2~No8におけるプラズマイオンの照射方向は、積層体50の側面に垂直な方向であり、試料No9~No10におけるプラズマイオンの照射方向は、積層体50の側面に垂直な方向に対して45°傾斜している。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すように、プラズマイオンによるエッチングを行わない試料No1および大気圧条件でプラズマイオンによるエッチングを行った試料No2の比較例に比べて、本開示の一実施例である試料No3~No10は、導電粒子脱離個数割合が低く、また短絡割合も低いことが分かった。したがって本開示の積層セラミック電子部品の一製造方法によれば、短絡の発生する可能性を低減することができる。
【0095】
また、0.2Pa以下の気圧条件でプラズマイオンによるエッチングを行っている試料
No4は、試料No3に比べて導電粒子脱離個数割合が低く、また短絡割合も低いことが分かった。気圧が低い場合、照射される加速されるプラズマイオンが大気分子と衝突する可能性を低減することができる。結果としてプラズマイオンの速度が高い状態で積層体50の側面に到達するため、効果的に側面をエッチングすることができる。
【0096】
また、プラズマイオンを加速させる電圧条件が3000Vである試料No6は、電圧条件が200Vである試料No4に比べて導電粒子脱離個数割合が低く、また短絡割合も低いことが分かった。プラズマイオンを加速させる電圧条件が高い場合、プラズマイオンの速度が高い状態で積層体50の側面に到達するため、効果的に側面をエッチングすることができる。
【0097】
ただし、プラズマイオンを加速させる電圧条件が4000VであるNo8の場合、エッチングにより除去した残渣が舞い上がりすぎてしまい、積層体50の側面に再付着してしまう可能性が高くなる。またNo8の場合には、積層体50の側面側が高電圧にさらされるため帯電してしまい、エッチングにより除去した残渣を再付着させる可能性が高くなる。このように、プラズマイオンを加速させる電圧条件が4000V以上の場合には、エッチングした残渣が再付着する可能性が高まり、短絡の原因を作ってしまう恐れがある。
【0098】
また、プラズマイオンを照射する照射時間が180secである試料No7は、照射時間が30secである試料No6に比べて導電粒子脱離個数割合が低く、また短絡割合も低いことが分かった。プラズマイオンを照射する照射時間が長い場合、より確実に積層体50の側面をエッチングすることができる。
【0099】
また、プラズマイオンの照射角が45°の試料No10は、照射角が90°の試料No6に比べて導電粒子脱離個数割合が低く、また短絡割合も低いことが分かった。プラズマイオンの照射方向が積層体50の側面に垂直な方向に対して傾斜する場合、エッチングにより除去した残渣の舞い上がりを低減し、側面に再付着することを低減することができる。また、プラズマイオンの照射角が45°の場合には、90°の場合に比べてエッチングの残渣がプラズマイオンの進行方向に舞い上がることを低減し、プラズマイオンの減速を低減することができる。したがって、より効果的に積層体50の側面をエッチングすることができる。
【0100】
なお、プラズマイオンの照射角が厳密に45°である必要はない。例えば、プラズマイオンの照射角は20°~70°の範囲であってもよい。この場合であっても、上述した残渣の舞い上がりによる側面への再付着およびプラズマイオンの速度低下を低減することができる。
【符号の説明】
【0101】
1:積層セラミック電子部品
2:素体
200:素体前駆体
21:積層部
211:誘電体層
212:内部電極層
22:サイドマージン部
23:カバー部
3、3a、3b:外部電極
400:セラミックシート
403:サイドマージンシート
410:導電体
50:積層体
500:母積層体
6:カット刃
7:プラズマイオン照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
サイドマージン部22は、第2方向において、積層部21の両側面に位置する。サイドマージン部22は、種々のセラミック誘電体を含んでいてもよい。例えばサイドマージン部22の主成分は、積層部21の誘電体層211の主成分と同一であってもよい。この場合、製造効率が向上するとともに、素体における内部応力が低減し信頼性が向上する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
カバー部23は、第1方向において積層部21の両主面に位置する。カバー部23は種々のセラミック誘電体を含んでいてもよい。例えばカバー部23の主成分は、積層部21の誘電体層211の主成分と同一であってもよい。この場合、製造効率が向上するとともに、素体における内部応力が低減し信頼性が向上する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
第3工程において、プラズマイオンを加速させる電圧条件は適宜設定可能である。例えば、電圧条件は200V以上であってもよい。200V以上の電圧でプラズマイオンを加速する場合、プラズマイオンの速度が高い状態で積層体50の側面S1に到達するため、効果的に側面S1をエッチングすることができる。なお、電圧条件は、例えば3000V以上であってもよい3000V以上の電圧でプラズマイオンを加速する場合、さらに効果的に、積層体50の側面S1をエッチングすることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
電圧条件は、例えば4000V未満であってもよい。4000V以上の電圧条件でプラズマイオンを加速する場合には、エッチングにより除去した残渣が舞い上がりすぎてしまい、積層体50の側面S1に再付着してしまう可能性が高くなる。また4000V以上の電圧条件でプラズマイオンを加速する場合には、積層体50の側面側が高電圧にさらされるため帯電してしまい、エッチングにより除去した残渣を再付着させる可能性が高くなる。このように、電圧条件が4000V以上の場合には、エッチングした残渣が再付着する可能性が高まり、短絡の原因を作ってしまう恐れがある。したがって電圧条件は200V以上4000V未満であってもよく、より好ましくは3000V以上4000V未満であってもよい。この場合、残渣の再付着の可能性を低減しつつ、効果的にエッチング処理を行うことができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
(第4工程:第1サイドマージン部形成)
第4工程では、第3工程によるエッチング処理を行った積層体50の側面S1に、セラミック誘電体を含むサイドマージンシート40を設ける。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
第4工程では、まずは焼成後にサイドマージン部22を形成するサイドマージンシート40を準備する。図12は、第4工程のプロセスを模式的に示した図である。まず、平板状の弾性体の上に、サイドマージンシート40が配置される。積層体50は、側面S1をサイドマージンシート40に対向させて配置される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
サイドマージンシート40は、第1工程で準備されるセラミックシート400と同じく、種々のセラミック誘電体材料によって作製されてもよい。一例としてサイドマージンシート40はセラミックシート400と同一の材料である。サイドマージンシート40は、例えば、ロールコーターやドクターブレードを用いてシート状に成形される。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
次に、積層体50の側面S1をサイドマージンシート40に押し当てる。これにより、積層体50の側面S1によってサイドマージンシート40が打ち抜かれる。その後に、積層体50をサイドマージンシート40から引き上げると、サイドマージンシート40から打ち抜かれ、側面S1に貼り付いたサイドマージンシート40のみが、弾性体から離れて積層体50側に残る。これにより、側面S1に焼成後にサイドマージン部22となるサイドマージンシート40が設けられた積層体50が得られる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
なお、積層体50の側面S1におけるサイドマージンシート40は、上記の打ち抜き以外の方法によって形成されてもよい。例えば、予め切断されたサイドマージンシート40を積層体50の側面S1に貼り付けてもよい。または、サイドマージンシート40を用いずに、誘電体セラミックを含むセラミックペーストを積層体50の側面S1に塗布することにより、焼成後のサイドマージン部22を形成してもよい。この場合におけるセラミックペーストの塗布方法としては、例えば、ディップ法などを用いることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
第6工程における側面S2へのサイドマージン部22の形成は、第4工程における側面S1へのサイドマージン部22の形成と同一もしくは類似のプロセスに行うことができる。例えば、第6工程では、積層体50の側面S2をサイドマージンシート40に押し当てることにより、積層体50の側面S2に焼成後にサイドマージン部22となるサイドマージンシート40を形成してもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
:積層セラミック電子部品
2:素体
200:素体前駆体
21:積層部
211:誘電体層
212:内部電極層
22:サイドマージン部
23:カバー部
3、3a、3b:外部電極
400:セラミックシート
40:サイドマージンシート
410:導電体
50:積層体
500:母積層体
6:カット刃
7:プラズマイオン照射装置
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正の内容】
図12
【手続補正13】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正の内容】
図13