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特開2024-131672線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法
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  • 特開-線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131672
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20240920BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042086
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】武藤 庄治
(72)【発明者】
【氏名】栗原 竜一
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA08
4F205AA36
4F205AD16
4F205AG14
4F205AH77
4F205AP04
4F205AR04
4F205AR08
4F205HA05
4F205HA13
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB02
4F205HB11
4F205HC02
4F205HK05
4F205HK19
4F205HK23
(57)【要約】
【課題】ライン速度を安定化することが可能な、線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る第一引取機と、前記第一引取機による引き取り後、前記線状物を引き取る第二引取機と、前記第一引取機による引き取り後の前記線状物の張力を測定する第一張力測定機構と、を少なくとも有し、前記第一引取機における前記線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取機における引取速度を制御し、且つ、前記第一張力測定機構により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、線状物引取速度制御装置などを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る第一引取機と、
前記第一引取機による引き取り後、前記線状物を引き取る第二引取機と、
前記第一引取機による引き取り後の前記線状物の張力を測定する第一張力測定機構と、
を少なくとも有し、
前記第一引取機における前記線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取機における引取速度を制御し、且つ、
前記第一張力測定機構により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、線状物引取速度制御装置。
【請求項2】
前記第二引取機による引き取り後、前記線状物を引き取る第三引取機と、
前記第二引取機による引取後、前記線状物の張力を測定する第二張力測定機構と、
を更に有し、
前記第一引取機における前記線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第三引取機における引取速度を制御し、且つ、
前記第二張力測定機構により得られた測定結果に基づいて、前記第三引取機における引取速度を補正する、請求項1に記載の線状物引取速度制御装置。
【請求項3】
前記第一張力測定機構におけるアーム角度位置が、抵抗値で0Ω超以上1kΩ以下となるように制御する、請求項1又は2に記載の線状物引取速度制御装置。
【請求項4】
強化繊維束を熱硬化性樹脂に含浸後、絞り成形して線状物を得る工程Aと、
工程Aの後、前記線状物に対して、熱可塑性樹脂を被覆する工程Bと、
工程Bの後、未硬化の熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を硬化する工程Cと、
工程Cの後、硬化した熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る工程Dと、
を少なくとも行い、
前記工程Dにおいて、
前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第一引取機により引き取る第一引取工程と、
前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第二引取機により引き取る第二引取工程と、
前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の張力を測定する張力測定工程と、
を少なくとも行い、
前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取工程における引取速度を制御し、且つ、
前記張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第一引取機により引き取る第一引取工程と、
前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第二引取機により引き取る第二引取工程と、
前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の張力を測定する張力測定工程と、
を少なくとも行い、
前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取工程における引取速度を制御し、且つ、
前記張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、線状物引取速度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法に関する。より詳しくは、ライン速度を安定化することが可能な、線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線状物の製造では、押出成形工程、硬化工程、乾燥工程、引取工程等の工程が行われる。例えば、特許文献1には、ドロップ光ケーブル用テンションメンバーなどとして用いられる熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法として、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物素線の外径よりも径大の透孔とテーパー角が90~150度の切削刃とを備えた予熱ダイスを通過させて熱可塑性樹脂被覆層の外周を加熱軟化させ、次いで該予熱ダイスよりも低温に保たれ素線の外径よりも径小の透孔を備えた第1の整径ダイス及び第2の整径ダイスを順次通過させて、熱可塑性樹脂被覆層の外径を整径することを特徴とする熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法が開示されている。特許文献1に記載された製造方法によれば、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の外径を長尺に亘って精度よく整径して製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-179010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、線状物の製造では、第一引取機、第二引取機等の複数の引取機を使用することがある。立ち上げ、立ち下げ、又は品種切り替えでは、人的作業により第一引取機に数周巻いてピンチローラーで挟んで速度調整し、第二引取機等でも同様に順次速度調整を行って対応していた。
【0005】
一方で、特にライン速度を増速すると、速度調整を行うことは人的作業では難しく、また、各引取機での同期管理ができないこともあり、線状物が切れたり弛んだりしてしまうため、ライン速度の安定化ができないといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、このような実情に鑑み、ライン速度を安定化することが可能な、線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、まず、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る第一引取機と、前記第一引取機による引き取り後、前記線状物を引き取る第二引取機と、前記第一引取機による引き取り後の前記線状物の張力を測定する第一張力測定機構と、を少なくとも有し、前記第一引取機における前記線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取機における引取速度を制御し、且つ、前記第一張力測定機構により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、線状物引取速度制御装置を提供する。
本発明に係る線状物引取速度制御装置において、前記第二引取機による引き取り後、前記線状物を引き取る第三引取機と、前記第二引取機による引取後、前記線状物の張力を測定する第二張力測定機構と、を更に有し、前記第一引取機における前記線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第三引取機における引取速度を制御し、且つ、前記第二張力測定機構により得られた測定結果に基づいて、前記第三引取機における引取速度を補正してもよい。
本発明に係る線状物引取速度制御装置において、前記第一張力測定機構におけるアーム角度位置が、抵抗値で0Ω超以上1kΩ以下となるように制御してもよい。
【0008】
本発明では、また、強化繊維束を熱硬化性樹脂に含浸後、絞り成形して線状物を得る工程Aと、工程Aの後、前記線状物に対して、熱可塑性樹脂を被覆する工程Bと、工程Bの後、未硬化の熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を硬化する工程Cと、工程Cの後、硬化した熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る工程Dと、を少なくとも行い、前記工程Dにおいて、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第一引取機により引き取る第一引取工程と、前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第二引取機により引き取る第二引取工程と、前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の張力を測定する張力測定工程と、を少なくとも行い、前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取工程における引取速度を制御し、且つ、前記張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法も提供する。
【0009】
本発明では、更に、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第一引取機により引き取る第一引取工程と、前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第二引取機により引き取る第二引取工程と、前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の張力を測定する張力測定工程と、を少なくとも行い、前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度とし、前記基準速度に基づいて、前記第二引取工程における引取速度を制御し、且つ、前記張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度を補正する、線状物引取速度制御方法も提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ライン速度を安定化することが可能な、線状物引取速度制御装置、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法、及び線状物引取速度制御方法を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る線状物引取速度制御装置1の一実施形態を示す模式概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
1.線状物引取速度制御装置1
図1は、本発明に係る線状物引取速度制御装置1(以下、「本発明に係る装置1」とも称する。)の一実施形態を示す模式概念図である。本発明に係る装置1は、第一引取機11と、第二引取機12と、第一張力測定機構14と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、第三引取機13、第二張力測定機構16、巻取機17等を設けることも可能である。
以下、各部について詳細に説明する。
【0014】
(1)第一引取機11、及び第二引取機12
第一引取機11では、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る。次いで、第二引取機12では、前記第一引取機11による引き取り後、前記線状物を引き取る。本発明では、この際、第一引取機11における前記線状物の引取速度を基準速度Vとし、前記基準速度Vに基づいて、前記第二引取機における引取速度Vを制御する。
【0015】
なお、本発明では、基準速度V、引取速度V,Vの測定箇所としては、例えば、各引取機のローラー表面とすることができる。また、本明細書において、「ライン速度」とは、第一引取機11、第二引取機12、又は第三引取機13のローラー表面における速度であり、特には、第一引取機11におけるローラー表面における速度、すなわち、設定速度(=基準速度V)をいう。
【0016】
本発明では、基準速度Vに基づいて、第二引取機12における引取速度Vを制御する前に、第一引取機11の基準速度Vに基づいて、押出機10のスクリュー回転数(好ましくは、10rpm以上55rpm以下)となるように、連動制御盤15にて設備固有の特性を補正する演算したデジタル値を、D/A変換したアナログ信号にて制御してもよい。スクリュー回転数、回転速度等を調整することで、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の被覆厚みや、押出機10の機台差によって、押出吐出量や押出の機構が異なることがあるため、前記線状物の吐出量を基準速度Vに対して安定化させることができる。
【0017】
基準速度Vに基づいて、引取速度Vを制御する方法としては、第一引取機11のローラー表面が所望の設定速度(=基準速度V)となるように、連動制御盤15よりD/A変換したアナログ信号にて制御する。
【0018】
具体的には、第一引取機11における基準速度Vと第二引取機12における引取速度Vとが速度同期するように、連動制御盤15にて設備固有の特定を補正する演算を考慮した上で、加減速演算したデジタル値をD/A変換したアナログ信号、すなわち、速度指令信号として処理される。なお、本発明において、「速度同期」とは、0.1m/min以下の速度誤差範囲で制御できる状態をいう。
【0019】
基準速度Vは、当業者により適宜設定されてよく、基準速度Vの下限値は、30m/min以上が好ましく、40m/min以上がより好ましい。30m/min未満とすると、低速のためにトルクが上がり過ぎて過負担となり、装置が停止してしまう恐れがあるからである。また、30m/min以上とすることで、安定した引取が可能である。
【0020】
また、基準速度Vの上限値は、150m/min以下が好ましく、140m/min以下がより好ましく、130m/min以下が更に好ましい。本発明に係る装置1では、基準速度Vを低速から増速したとしても、安定した引取が可能であり、不良な前記線状物が製造される確率を減らすことができるが、基準速度Vを150m/min以下とすることで、更に安定した引取が可能となる。
【0021】
本発明において、D/A変換したアナログ信号は、例えば、DCが0V超以上10V以下の範囲にて制御してもよい。これは、以下に記載するD/A変換したアナログ信号においても同様とすることができる。
【0022】
(2)第一張力測定機構14
第一張力測定機構14では、前記第一引取機11による引き取り後の前記線状物の張力を測定する。
【0023】
上述した方法では、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物のラインにおける通過状態を管理できないため、前記線状物が切れたり弛んだりしてしまう。これにより、一度は同期されたライン速度でも、バラつきが生じてしまうという問題があった。また、ライン速度のバラつきにより、低速から増速し、高速で装置を稼働したい場合であっても、低速でしか装置を稼働できないといった問題も生じていた。
【0024】
これらの問題に対し、本願発明者らは、更なる鋭意研究を行い、上述した速度同期に加え、第一張力測定機構14を用いて速度補正を行うことで、前記線状物がラインにおける通過時に切れたり弛んだりすることを防ぎ、ライン速度を安定化させることに成功した。すなわち、本発明は、上述した基準速度Vに基づいて、引取速度Vを制御するという特徴に加え、第一張力測定機構14により得られた測定結果に基づいて、第二引取機12における引取速度Vを補正する。
【0025】
第一張力測定機構14としては、デジタルテンションメーター、メカニカルテンションメーター等の市販のものや、従来公知の機構を利用したものを用いることができる。本発明では、例えば、アーム角度位置を抵抗値に変換することで、張力制御を行うダンサー機構を用いた張力測定機構を用いることができる。なお、自動で速度補正するためには、連動制御盤15と有線又は無線で接続されていることが必要である。
【0026】
第一張力測定機構14を用いた速度補正の方法としては、第一引取機11による引取後であって、第二引取機12による引取前の任意の位置で第一張力測定機構14による張力測定を実施する。この際、アーム角度位置が、抵抗値で0Ω超以上1kΩ以下となるように制御することが好ましく、0.2kΩ以上0.8kΩ以下となるように制御することがより好ましく、0.4kΩ以上0.6kΩ以下となるように制御することが更に好ましく、0.45kΩ以上0.55kΩ以下となるように制御することが特に好ましい。アーム角度位置をこの範囲に制御することで、張力のムラを無くし、速度補正をより正確に行うことができる。
【0027】
次いで、第一張力測定機構14により得られたアーム角度位置の抵抗値を、連動制御盤15にてA/D変換し、加減速演算したデジタル値をD/A変換したアナログ信号、すなわち、速度補正信号として処理される。該処理は、後述する実施例に示すように、基準速度Vと引取速度Vとが速度同期するように、連動制御盤15にて設備固有の特性を補正する演算を考慮した上で、加減速演算したデジタル値をD/A変換したアナログ信号にて制御するのと同時に行われてよい。なお、本発明において、「速度補正」とは、±0.5m/minの制御範囲がなされている状態をいう。
【0028】
本発明によれば、このように、各引取機における引取速度の自動同期及び張力測定機構による自動速度補正が可能であり、これにより、従来は、人手をかけて行っていた作業を自動化でき、生産効率の向上、コスト削減、不良品の削減等の効果が得られる。
【0029】
(3)第三引取機13、及び第二張力測定機構16
本発明に係る装置1は、更に、第三引取機13、及び第二張力測定機構16を有していてもよい。第三引取機13では、前記第二引取機12による引き取り後、前記線状物を引き取る。また、第二張力測定機構16では、前記第二引取機12による引取後、前記線状物の張力を測定する。本発明では、この際、前記第一引取機11における前記線状物の引取速度を基準速度Vとし、前記基準速度Vに基づいて、前記第三引取機13における引取速度Vを制御し、且つ、前記第二張力測定機構16により得られた測定結果に基づいて、前記第三引取機13における引取速度Vを補正する。
【0030】
基準速度Vに基づいて、引取速度Vを制御する方法としては、基準速度Vに基づいて、引取速度Vを制御する方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。また、第二張力測定機構16を用いた速度補正の方法としても、第一張力測定機構14における方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0031】
(4)その他
本発明に係る装置1は、上記以外にも、ユーザインターフェース(不図示)、整径機構(不図示)、外径検査機構(不図示)等を有していてもよい。
【0032】
(4-1)ユーザインターフェース
ユーザインターフェースとしては、例えば、ボタン、タッチパネル、携帯情報端末、モニター等が挙げられる。該ユーザインターフェースは、本発明に係る装置1の各部と有線又は無線で接続されており、該ユーザインターフェースを介して、本発明に係る装置1の各部にアクセス可能である、例えば、各部のスイッチのオン/オフ、加速/減速の指令、設定速度の切り替え等が可能である。更には、該ユーザインターフェースには、各部の稼働状況等が表示されていてもよく、例えば、ライン速度、第一引取機11~第三引取機13における各引取速度、各張力測定の結果、外径検査の結果等が表示され得る。
【0033】
(4-2)整径機構
整径機構としては、特に限定されないが、例えば、第一引取機11から第二引取機12までの間のラインに備えることができる。具体的な整径機構としては、特に限定されないが、例えば、整径したい熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の外径よりも径大の透孔と所定のテーパー角(例えば、90度以上150度以下)の切削刃とを備えた予熱ダイスを通過させ、熱可塑性樹脂被覆層の外周を加熱軟化させ、次いで、該予熱ダイスよりも低温に保たれ、前記線状物の外径よりも径小の透孔を備えた第一整径ダイス及び第二整径ダイスを順次通過させて熱可塑性樹脂被覆層の外径を整径する。この方法を用いることで、前記線状物の外径よりも径大の異常部により発生していた異常な張力の発生とそれに伴う被覆破れが激減し、表面平滑な定長の長尺熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を安定して製造できる。
【0034】
(4-3)外径検査機構
外径検査機構としては、特に限定されないが、例えば、第二引取機12から第三引取機13までの間のラインに備えることができる。具体的な外径検査機構としては、特に限定されないが、例えば、測定手段としてLED光源又はレーザー光源を有し、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物が光源を遮った長さから外径を測定するレーザー外径測定器等が挙げられる。ライン上に外径検査機構を配置することで、製造効率を向上させることができる。
【0035】
(4-4)巻取機17
巻取機17は、ラインの最後に備えられ、第三引取機13を介して熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を巻き取る。巻取機17としては、従来公知のものを用いることができる。
【0036】
(5)熱可塑性樹脂被覆FRP線状物
熱可塑性樹脂被覆FRP線状物とは、強化繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させたもの(FRP)の外周を熱可塑性樹脂で被覆した線状物である。熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の形状としては、例えば、略円筒状又は略多角筒状とすることができる。「略円筒状」とは、具体的には、その断面が円形、又は楕円形などの扁平形状となる形状をいう。「略多角筒状」とは、具体的には、その断面が三角形、四角形などの多角形となる形状をいう。
【0037】
熱可塑性樹脂被覆FRP線状物に用いられるマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(例えば、テレフタル酸系、イソフタル酸系等)、ビニルエステル樹脂(例えば、エポキシアクリレート樹脂等)、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂被覆FRP線状物に用いられる強化繊維束としては、例えば、連続長繊維束、繊維編組物(例えば、織物、編物、組物など)の形態を有する基材であることが好ましい。これらを用いることで、連続含浸性や連続形成性が確保でき、生産性に優れるからである。なお、熱可塑性樹脂被覆FRP線状物全体に占める強化繊維の体積含有率は、例えば、20%以上80%以下、又は30%以上70%以下とすることができる。
【0039】
具体的な強化繊維の種類としては、例えば、オレフィン系繊維、パラ系アラミド繊維等のアラミド繊維、液晶ポリエステル(LCP)繊維等の有機繊維;ガラス繊維;炭素繊維等の無機繊維;チラノ繊維等のセラミック繊維;ボロン繊維、銅、ステンレス等の金属繊維;アモルファス繊維等を用いることができる。また、本発明では、これらの混織物等を用いることもできる。
【0040】
ガラス繊維としては、例えば、ガラス繊維モノフィラメント、ガラス繊維ストランド、ガラス繊維ロービング、ガラス繊維ヤーン等の長繊維を用いることができる。本発明では、これらの中でも特に、ガラス繊維として、ガラス繊維ロービング、ガラス繊維ヤーンが好ましい。また、ガラス繊維織物、ガラス繊維組物、ガラス繊維編物等のガラス繊維編組物を用いることもできる。なお、ガラス繊維として、エポキシシランカプリング剤、アクリルシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理を施したものを用いてもよい。また、ガラス繊維のガラス組成としては、例えば、Eガラス、Sガラス、Cガラス等が挙げられる。また、ガラス繊維モノフィラメントの断面としては、略円形状であってもよく、略楕円形状等の扁平形状でもよい。
【0041】
炭素繊維としては、コールタールピッチや石油ピッチを原料にした「ピッチ系」、ポリアクリロニトリルを原料とする「PAN系」、及びセルロース繊維を原料とする「レーヨン系」の3種類があり、本発明では、どの炭素繊維も用いてもよい。
【0042】
強化繊維束は、必要に応じて、周知の方法により所望の尺長に織り上げるか、組み上げるか、又は編み上げるか等の方法により調製しておくことができ、また、長尺のものをロールに巻き取って使用してもよい。また、強化繊維への樹脂の含浸性を高める目的や、強化繊維束中の水分を除去させる目的で、必要に応じて、強化繊維束を加熱してもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂被覆FRP線状物に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイソブチレン(PB)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂;ウレタン樹脂等が挙げられる。また、その他にも、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられる。ポリエチレンには、例えば、エチレン単独重合体、及びエチレン/α-オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
2.熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法
本発明に係る熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法は、工程A~工程Dを少なくとも行う。また、必要に応じて、その他の工程を行ってもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0045】
(1)工程A
工程Aでは、強化繊維束を熱硬化性樹脂に含浸後、絞り成形して線状物を得る。具体的には、まず、所要本数の強化繊維束を所定のガイド孔に挿通し、製造ラインを通して、強化繊維束を引取り可能に準備する。なお、該準備は、工程Aにおいて必須ではない。次いで、樹脂含浸槽に熱硬化性樹脂及び熱硬化剤等を含む液状の硬化性樹脂組成物を注入する。次いで、準備した強化繊維束を樹脂含浸槽にガイドを介して導くことで、強化繊維束を熱硬化性樹脂に含浸後、内径を段階的に小さくした絞りノズルに導いて絞り成形を行い、線状物を得る。
【0046】
(2)工程B
工程Bでは、工程Aの後、前記線状物に対して、熱可塑性樹脂を被覆する。具体的には、工程Aで得られた線状物を、溶融押出機における所定の温度のクロスヘッドダイに通して、熱可塑性樹脂により、所定の厚み(好ましくは、0.2mm以上0.4mm以下、より好ましくは、0.2mm以上0.3mm以下)で環状に被覆し、直ちに冷却槽に導いて、表面の熱可塑性樹脂を冷却固化する。
【0047】
(3)工程C
工程Cでは、工程Bの後、未硬化の熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を硬化する。具体的には、工程Bで得られた未硬化の熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を入口及び出口に加圧シール部を設けた蒸気圧硬化槽に所定の速度で導いて、蒸気圧で未硬化の熱硬化性樹脂を硬化し、冷却槽を経ることで熱可塑性樹脂を冷却固化し、各層が一体化した熱可塑性樹脂被覆FRP線条物を得る。
【0048】
(4)工程D
工程Dでは、工程Cの後、硬化した熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を引き取る。本工程では、第一引取工程、第二引取工程、及び張力測定工程を少なくとも行う。また、必要に応じて、第三引取工程、第二張力測定工程、整径工程、外径検査工程、巻取工程等を行ってもよい。
【0049】
(4-1)第一引取工程、第二引取工程、及び張力測定工程
第一引取工程では、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第一引取機11により引き取り、第二引取工程では、前記第一引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第二引取機12により引き取る。この際、前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度Vとし、前記基準速度Vに基づいて、前記第二引取工程における引取速度Vを制御する。基準速度Vに基づいて、引取速度Vを制御する方法としては、「1.線状物引取速度制御装置1」の「(1)第一引取機11、及び第二引取機12」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。
【0050】
張力測定工程では、前記第一引取工程後、第二引取工程前に前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の張力を測定する。この際、前記張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機12における引取速度Vを補正する。張力測定工程における速度補正の方法としては、「1.線状物引取速度制御装置1」の「(2)第一張力測定機構14」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。
【0051】
(4-2)第三引取工程、及び第二張力測定工程
工程Dでは、第三引取工程、及び第二張力測定工程を更に行ってもよい。第三引取工程では、前記第二引取工程後、前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を第三引取機13により引き取る。また、第二張力測定工程では、前記第二引取工程後、第三引取工程前に前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の張力を測定する。この際、前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度Vとし、前記基準速度Vに基づいて、前記第三引取工程における引取速度Vを制御し、且つ、前記第二張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第三引取機13における引取速度Vを補正する。
【0052】
基準速度Vに基づいて、引取速度Vを制御する方法としては、「1.線状物引取速度制御装置1」の「(1)第一引取機11、及び第二引取機12」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。また、第二張力測定工程における速度補正の方法としても、「1.線状物引取速度制御装置1」の「(2)第一張力測定機構14」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。
【0053】
(4-3)整径工程
工程Dでは、整径工程を更に行ってもよい。整径工程は、例えば、第一引取工程と第二引取工程との間に行われ得る。具体的な整径方法としては、「1.線状物引取速度制御装置1」の「(4-2)整径機構」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。
【0054】
(4-4)外径検査工程
工程Dでは、外径検査工程を更に行ってもよい。外径検査工程は、例えば、第二引取工程と第三引取工程との間に行われ得る。具体的な外径検査方法としては、「1.線状物引取速度制御装置1」の「(4-3)外径検査機構」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。
【0055】
(4-5)巻取工程
工程Dでは、巻取工程を更に行ってもよい。巻取工程では、第三引取工程を経た前記線状物を最後に巻き取る。
【0056】
3.線状物引取速度制御方法
本発明に係る線状物引取速度制御方法では、第一引取工程と、第二引取工程と、張力測定工程と、を少なくとも行い、前記第一引取工程における前記熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引取速度を基準速度Vとし、前記基準速度Vに基づいて、前記第二引取工程における引取速度Vを制御し、且つ、前記張力測定工程により得られた測定結果に基づいて、前記第二引取機における引取速度Vを補正する。また、必要に応じて、第三引取工程、第二張力測定工程等を行ってもよい。
【0057】
本発明に係る線状物引取速度制御方法は、上述した「2.熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造方法」の「(4)工程D」にて記載した方法と同様であるため、ここでは、説明を割愛する。
【実施例0058】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0059】
<熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の製造>
ビニルエステル樹脂(三井化学社製:H8100)100質量部に、熱硬化性触媒(化薬アクゾー社製、カドックスBCH50)を4質量部、カヤブチルBを1質量部添加した樹脂含浸槽中に、強化繊維束としてパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン製:ケブラー29、単糸径12μm、1110dtex)のマルチフィラメント1本を、ガイドを介して導き、引き続いて、内径を段階的に小さくした絞りノズルに導き、未硬化状樹脂を絞り成形し、外径が0.4mmの細径線状物を得た。
【0060】
得られた線状物を溶融押出機のクロスヘッドダイ(200℃)に通して、MI=2.4、密度0.921g/cm、30μmのキャストフィルムによる1%モジュラスが170MPaであるLLDPE樹脂(日本ユニカー社製:TUF2060)により、被覆厚み0.3mmで環状に被覆し、直ちに冷却槽に導いて、表面の被覆部(熱可塑性樹脂部分)を冷却固化した。引き続いて、この未硬化の熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を入口及び出口に加圧シール部を設けた長さ18mの加圧蒸気硬化槽に40m/minのライン速度で導いて蒸気圧32.5Pa(145℃)で硬化し、冷却槽を経て、被覆外径が約0.9mmの熱可塑性樹脂被覆FRP線状物を得た。
【0061】
<生産性の評価>
上述した方法で製造した熱可塑性樹脂被覆FRP線状物について、以下の実施例1及び2、並びに比較例1及び2の条件で生産性を比較し、評価した。
【0062】
[実施例1]
第一引取機のローラー表面が、設定速度(=基準速度)を40.0m/minから129.9m/minとなるように、連動制御盤よりD/A変換したアナログ信号にて制御した。次いで、第一引取機の設定速度に対応した押出機スクリュー回転数を12.0rpmから44.9rpmとなるよう連動制御盤にて設備固有の特性を補正する演算したデジタル値をD/A変換したアナログ信号をDC0.98VからDC3.65Vにて制御した。次いで、第一引取機の基準速度と第二引取機の引取速度とが、同期するように連動制御盤にて設備固有の特性を補正する演算に加え、第一引取機以降のライン上で測定した第一張力測定機構より得られたアーム角度位置を抵抗値で0.48kΩに変換し、連動制御盤にてA/D変換し、加減速演算したデジタル値をD/A変換したアナログ信号DC2.69VからDC8.75Vにて制御した。
【0063】
実施例1では、低速40m/minから129.9m/minに増速して熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引出しを行え、原料ロスが少なく立上げが可能であり、また、押出機スクリュー回転数が安定しているため、被覆厚みも安定していた。また、ライン全体を通して、前記線状物の通過速度が安定していた。更には、精度良く各引取機での速度連動が行われていることが確認された。
【0064】
また、実施例1に加え、第一引取機から第二引取機までの間のラインで整径工程を行ったところ、ライン全体を通して、前記線状物の通過速度及び張力が安定したことから、整径工程時における表面状態が良好であり、且つ、引抜抵抗値も安定していた。また、整径工程等の速度外乱要因に追従して、精度良く増速も可能となった。
【0065】
[実施例2]
第一引取機の基準速度と同期した第二引取機と、第三引取機が同期するよう連動制御盤にて設備固有の特性を補正する演算に加え、第二張力測定機構より得られるアーム角度位置を抵抗値0.46kΩに変換し、連動制御盤にてA/D変換し加減速演算したデジタル値をD/A変換したアナログ信号をDC2.69VからDC8.73Vにて制御した。
【0066】
実施例2では、低速40m/minから129.9m/minに増速して熱可塑性樹脂被覆FRP線状物の引出しを行え、原料ロスが少なく立上げが可能であり、実施例1と同様に、ライン全体を通して、前記線状物の通過速度が安定していた。更には、精度良く各引取機での速度連動が行われていることが確認された。
【0067】
また、実施例2に加え、第二引取機から第三引取機までの間のラインで外径検査工程を行ったところ、外径検査工程においてパスライン通線が行え、ライン全体を通して、前記線状物の通過速度及び張力が安定したことから、外径測定及び凹凸検出を安定して行うことができた。
【0068】
[比較例1]
第一張力測定機構を用いて速度補正を行わなかった以外は、実施例1と同様に行った。
【0069】
第一引取機と第二引取機の速度同期において、特に加減速時の張力変動による補正演算を行っていないため、定張力の速度同期が不可能であった。更には、速度外乱要因に追従することができないため、前記線状物の張力低下による緩みが発生し、パスライン脱落や、張力上昇による破断等が発生した。
【0070】
[比較例2]
第一引取機の基準速度と第二引取機の引取速度とが、同期するように連動制御盤にて制御しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
【0071】
系列全駆動の速度が同期できず、各駆動を同時に同じ加速勾配で増速できないため、増速時の前記線状物は製品とならず廃棄することとなった。また、押出機においては被覆厚みが安定せずトラブルが発生し、第一引取機及び第二引取機においても張力が安定しないことに起因するトラブルが発生した。
【符号の説明】
【0072】
1:線状物引取速度制御装置
10:押出機
11:第一引取機
12:第二引取機
13:第三引取機
14:第一張力測定機構
15:連動制御盤
16:第二張力測定機構
17:巻取機
S:熱可塑性樹脂被覆FRP線状物
図1