(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131674
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】高周波磁場印加装置および磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/20 20060101AFI20240920BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01R33/20 101
G01N24/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042088
(22)【出願日】2023-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、文部科学省、委託事業「量子計測・センシング技術研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】西谷 大祐
(57)【要約】
【課題】窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子を備えた磁気センサにおいて、基板表面に設けた平面パターン状の導波路を用いて基板表面に沿った沿面方向の高周波磁場を磁気共鳴素子に印加しつつ、沿面方向と垂直な面直方向の外部磁場の検出感度をよりいっそう高めることを可能とする構成を提供すること。
【解決手段】高周波磁場印加装置(3)は、誘電体基板(300)とアンテナ素子部(301)とを備えている。アンテナ素子部は、給電によりマイクロ波の高周波磁場を発生するように誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、磁気共鳴素子に対向配置されている。アンテナ素子部は、誘電体基板の一面に沿った沿面方向について磁気共鳴素子に対応する位置にて、導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子(2)を備えた磁気センサ(1)に用いられる高周波磁場印加装置(3)であって、
誘電体基板(300)と、
高周波電流の給電によりマイクロ波の高周波磁場を発生するように前記誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、前記磁気共鳴素子に対向配置されるアンテナ素子部(301)と、
を備え、
前記アンテナ素子部は、前記一面に沿った沿面方向について前記磁気共鳴素子に対応する位置にて、前記導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する、
高周波磁場印加装置。
【請求項2】
前記アンテナ素子部は、伝送線路共振器としての構成を有し、
前記欠損部は、線路幅における中央であって、前記高周波電流における振動の腹の位置に設けられた、
請求項1に記載の高周波磁場印加装置。
【請求項3】
前記磁気共鳴素子にて発生した熱を吸収するように、前記磁気共鳴素子と前記アンテナ素子部との間に設けられた放熱基板(32)をさらに備えた、
請求項1に記載の高周波磁場印加装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子部は、コプレーナ導波路共振器としての構成を有する、
請求項1に記載の高周波磁場印加装置。
【請求項5】
磁気センサ(1)であって、
窒素-空孔中心を含有する、磁気共鳴素子(2)と、
前記磁気共鳴素子に対してマイクロ波の高周波磁場を印加するように、前記磁気共鳴素子に対向配置された高周波磁場印加装置(3)と、
前記磁気共鳴素子に励起光を照射するように設けられた照射装置(4)と、
前記磁気共鳴素子にて発生した蛍光を検出するように設けられた検出装置(5)と、
を備え、
前記高周波磁場印加装置は、
誘電体基板(300)と、
高周波電流の給電により前記高周波磁場を発生するように前記誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、前記磁気共鳴素子に対向配置されるアンテナ素子部(301)と、
を備え、
前記アンテナ素子部は、前記一面に沿った沿面方向について前記磁気共鳴素子に対応する位置にて、前記導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する、
磁気センサ。
【請求項6】
前記アンテナ素子部は、伝送線路共振器としての構成を有し、
前記欠損部は、線路幅における中央であって、前記高周波電流における振動の腹の位置に設けられた、
請求項5に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記磁気共鳴素子にて発生した熱を吸収するように、前記磁気共鳴素子と前記アンテナ素子部との間に設けられた放熱基板(32)をさらに備えた、
請求項5に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記アンテナ素子部は、コプレーナ導波路共振器としての構成を有する、
請求項5に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子を備えた磁気センサ、および、これに用いられる高周波磁場印加装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ODMRすなわち光検出磁気共鳴を利用して磁場を検出する手法が、従来種々提案されている。ODMRはOptically Detected Magnetic Resonanceの略である。ここで、窒素-空孔対を含む磁気共鳴素子であるダイヤモンド結晶を用いることで、常温大気中で高感度な磁場検出を行うことが可能となる。このような、窒素-空孔対を含むダイヤモンド素子のODMRを用いた磁気センサは、例えば、脳磁気検出や、ICが発生する磁場の検出や、車載磁気センサ等に、好適に適用される。ICはIntegrated Circuitの略である。この種の磁気センサは、ダイヤモンド素子の位置における外部磁場(すなわち検出対象である磁場)の強度を検出するというものであって、ダイヤモンド素子に印加される高周波磁場の方向と直交する方向にのみ外部磁場の感度を有する特徴を有する。
【0003】
この点、例えば、筒形状のループギャップ共振器にて磁場発生装置が構成される場合、コイルの軸方向をZ方向とし、Z方向と垂直な平面をXY面とすると、高周波磁場はZ軸方向に生成され、外部磁場の感度軸はそれに直交するXY面となる。ここで、微小な外部磁場を検出したい場合には、その発生源と磁気センサとの距離を近付ける必要がある。よって、円筒状のループギャップ共振器であれば、その筒内に検出対象を近付けることが必要になる。しかしながら、XY面には、ループコイルや共振器、さらにはそれらが備えられる基板が存在するため、距離を近付けるには限界がある。一方、筒形状の磁場発生装置の直上もしくは直下、つまり軸方向のいずれかに外部磁場の発生源を配置すると距離は近くなるが、軸方向には感度がないため、外部磁場を測定できない。軸方向に感度を出すためには、XY面内に高周波磁場を発生させることが必要である。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の磁場発生装置は、上層コイルと、下層コイルと、基板とを有している。上層コイルは、第1導電性材料で構成され、コイル部を有したループ回路を構成する。下層コイルは、第2導電性材料で構成され、上層コイルのコイル部に対して所定距離離れて対向配置されるコイル部を有したループ回路を構成する。基板は、上層コイルと下層コイルとを支持し、上層コイルと下層コイルとの間が誘電材料で構成されている。そして、上層コイルと下層コイルには、それぞれ逆位相の高周波電流が流され、上層コイルにおけるコイル部と下層コイルの1周当たりの長さが高周波電流の1波長に合わせられている。また、基板には、上層コイルおよび下層コイルの内部を通るように形成された貫通孔が形成されている。貫通孔は、基板の表裏面を貫通するように形成されている。貫通孔内には、窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子であるダイヤモンド素子が配置される。かかる構成によれば、基板のうち上層コイルが備えられている上層部分のうちの下層コイル側と、下層コイルが備えられている下層部分のうちの上層コイル側とで、磁界の向きが同方向となる。これにより、上層コイルと下層コイルとの間において、XY面を磁場方向とする高周波磁場を発生させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、この種の磁気センサにおける、さらなる高感度化を含む性能向上を企図して、鋭意検討している。具体的には、例えば、発明者は、コプレーナ導波路やマイクロストリップ線路のような、基板表面に設けた平面パターン状の導波路を用いて、窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子に高周波磁場を印加する方式を検討している。この種の導波路によっても、基板の沿面方向に高周波磁場を発生させることができ、これにより、沿面方向と垂直な面直方向の外部磁場を検出することが可能となる。但し、この種の導波路においては、その近傍の磁場が強く、面直方向について導波路から離れるほど磁場が弱くなる。このため、面直方向についての磁場の均一性を高めることで、面直方向磁場の検出感度を高くすることができる。
【0007】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子を備えた磁気センサにおいて、基板表面に設けた平面パターン状の導波路を用いて基板表面に沿った沿面方向の高周波磁場を磁気共鳴素子に印加しつつ、沿面方向と垂直な面直方向の外部磁場の検出感度をよりいっそう高めることを可能とする構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の高周波磁場印加装置(3)は、窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子(2)を備えた磁気センサ(1)に用いられるものであって、
誘電体基板(300)と、
高周波電流の給電によりマイクロ波の高周波磁場を発生するように前記誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、前記磁気共鳴素子に対向配置されるアンテナ素子部(301)と、
を備え、
前記アンテナ素子部は、前記一面に沿った沿面方向について前記磁気共鳴素子に対応する位置にて、前記導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する。
請求項5に記載の磁気センサ(1)は、
窒素-空孔中心を含有する、磁気共鳴素子(2)と、
前記磁気共鳴素子に対してマイクロ波の高周波磁場を印加するように、前記磁気共鳴素子に対向配置された高周波磁場印加装置(3)と、
前記磁気共鳴素子に励起光を照射するように設けられた照射装置(4)と、
前記磁気共鳴素子にて発生した蛍光を検出するように設けられた検出装置(5)と、
を備え、
前記高周波磁場印加装置は、
誘電体基板(300)と、
高周波電流の給電により前記高周波磁場を発生するように前記誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、前記磁気共鳴素子に対向配置されるアンテナ素子部(301)と、
を備え、
前記アンテナ素子部は、前記一面に沿った沿面方向について前記磁気共鳴素子に対応する位置にて、前記導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する。
【0009】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の単なる一例を示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気センサの概略構成図である。
【
図2】
図1に示された高周波磁場印加装置の第一実施形態に係る概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III断面の一部を拡大して示す側断面図である。
【
図4】
図3に示された磁気共鳴素子における励起光の入射状態の概要を示す側面図である。
【
図5】比較例における磁場分布の計算機シミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図5における磁気共鳴素子の内部の磁場強度分布を示す図である。
【
図7】
図2におけるIII-III断面での磁場分布の計算機シミュレーション結果を示す図である。
【
図8】
図7における磁気共鳴素子の内部の磁場強度分布を示す図である。
【
図9】欠損部の寸法を変化させた場合における磁気共鳴素子の内部の磁場強度分布の計算機シミュレーション結果を示す図である。
【
図10】
図9にて破線で示された中心線に沿った磁場強度の変化態様を示すグラフである。
【
図11】
図2に示された第一実施形態における貫通孔の位置を示す平面図である。
【
図12】一変形例に係る構成における貫通孔の位置を示す平面図である。
【
図13】他の一変形例に係る構成における貫通孔の位置を示す平面図である。
【
図14】第二実施形態に係るアンテナ素子部の概略構成を示す平面図である。
【
図15】第一実施形態と第二実施形態とで磁気共鳴素子の内部の磁場強度分布の計算機シミュレーション結果を比較しつつ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、一連の実施形態の説明の後に、まとめて記載する。また、後述するように、各図およびこれを用いた以下の説明は、専ら、本実施形態に係る概略的な構成および機能を説明するために簡略化されたものであって、実際に製造販売される具体的な装置構成とは必ずしも一致するとは限らない。さらに、図示および説明の便宜上、各図において、右手系XYZ座標を設定する。各図におけるXYZ座標は、互いに整合しているものとする。但し、Z軸正方向あるいはZ軸負方向は、必ずしも重力作用方向を意味するものではない。
【0012】
(全体構成)
磁気センサ1は、磁気共鳴素子2における光検出磁気共鳴を利用して、磁気共鳴素子2に近接あるいは接触する被測定物Mにおける磁気を検出あるいは計測するように構成されている。具体的には、
図1に示されているように、磁気センサ1は、磁気共鳴素子2と、高周波磁場印加装置3と、照射装置4と、検出装置5とを備えている。
【0013】
磁気共鳴素子2は、窒素-空孔中心を含有するダイヤモンド基板であって、薄板状に成形されている。すなわち、磁気センサ1は、いわゆるダイヤモンド磁気センサとしての構成を有している。高周波磁場印加装置3は、磁気共鳴素子2に対してマイクロ波の高周波磁場を印加するように設けられている。照射装置4は、磁気共鳴素子2に励起光R1を照射するように設けられている。検出装置5は、磁気共鳴素子2にて発生した蛍光R2を検出するように設けられている。具体的には、検出装置5は、少なくとも対物レンズ5aと受光素子5bとを備えている。なお、この種のダイヤモンド磁気センサの基本構成および動作原理については、本願の出願時点において、既に公知あるいは周知となっている。よって、図示および説明の簡略化の観点から、この種のダイヤモンド磁気センサにおける動作原理や、この種のダイヤモンド磁気センサに通常設けられる他の構成については、本明細書においては、図示および説明を省略する。この種のダイヤモンド磁気センサにおける動作原理や、この種のダイヤモンド磁気センサに通常設けられる他の構成については、上記の特許文献1の他、本発明の発明者による先行出願に係る特開2020-38086号公報や特開2022-128554号公報等を参照されたい。
【0014】
(高周波磁場印加装置)
図2および
図3は、第一実施形態に係る磁気センサ1に用いられる高周波磁場印加装置3の概略構成を示す。なお、
図3は、
図2におけるIII-III断面による高周波磁場印加装置3の断面構成の概略を示すものであるが、図示の都合上、寸法関係は、
図2とは必ずしも整合しているとは限らないものとする。以下、本実施形態に係る高周波磁場印加装置3の構成の詳細について説明する。
【0015】
磁気共鳴素子2は、図中Z軸方向に厚さ方向を有する薄板状に形成されている。磁気共鳴素子2と高周波磁場印加装置3とは、図中Z軸方向に配列されている。具体的には、磁気共鳴素子2は、高周波磁場印加装置3よりもZ軸正方向側にて、高周波磁場印加装置3に近接しつつ対向配置されている。
【0016】
高周波磁場印加装置3は、プリント基板30と、同軸コネクタ31と、放熱基板32とを備えている。図中、XYZ座標は、Z軸がプリント基板30の板厚方向と平行となり、XY平面がプリント基板30の板厚方向と直交するように設定されている。同軸コネクタ31は、プリント基板30の端部に固定されている。放熱基板32は、磁気共鳴素子2にて発生した熱を吸収するように、磁気共鳴素子2とプリント基板30との間に設けられている。放熱基板32は、電気絶縁性および放熱性に優れたセラミック材料(例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、アルミナジルコニア、等)により、図中Z軸方向に厚さ方向を有する薄板状に形成されている。
【0017】
プリント基板30は、一定の板厚を有する平板状の誘電体基板300の少なくとも一面に導体膜が形成された構成を備えている。具体的には、誘電体基板300は、一対の主面であるアンテナ形成面300aおよび裏面300bを有している。「主面」とは、板状部材における板厚方向と平行な法線方向を有する表面であって、「板面」とも称される。アンテナ形成面300aおよび裏面300bは、XY平面と平行に形成されている。アンテナ形成面300aまたは裏面300bに沿った方向(すなわち図中XY平面と平行な方向)を、以下「沿面方向」と称する。かかる沿面方向は、磁気共鳴素子2における被測定物Mと対向する表面に沿った方向であるとともに、磁気共鳴素子2の厚さ方向に対して垂直な方向である。沿面方向に対して垂直な方向(すなわち図中Z軸と平行な方向)を、以下「面直方向」と称する。本実施形態においては、誘電体基板300は、比誘電率が4.3~5.0程度であるFR-4、あるいは、これよりも比誘電率が高い材料(例えば比誘電率が9.6であるアルミナ基板)により、Z軸方向に板厚方向を有する薄板状に形成されている。FR-4はFlame Retardant Type 4の略である。誘電体基板300は、X軸方向に長手方向を有するとともにY軸方向に幅方向を有する長方形状に形成されている。
【0018】
磁気共鳴素子2に向かう外向き法線を有するアンテナ形成面300a上には、銅等の良導体からなる導体膜である、アンテナ素子部301および給電線路部302が形成されている。アンテナ素子部301は、給電線路部302により給電されることで、マイクロ波の高周波磁場を発生するように設けられている。アンテナ素子部301は、放熱基板32を挟んで磁気共鳴素子2に対向配置されるようになっている。すなわち、放熱基板32は、磁気共鳴素子2とアンテナ素子部301との間で挟まれるように設けられている。本実施形態においては、放熱基板32の一面は磁気共鳴素子2と接合され、他面はアンテナ素子部301と接合されている。そして、磁気共鳴素子2は、アンテナ素子部301と重なるようにプリント基板30に接合された放熱基板32上に固定的に支持されている。
【0019】
アンテナ素子部301は、マイクロ波の波長をλとした場合にnλ/2(nは自然数)の線路長を有する伝送線路共振器としての構成を有しており、X軸方向に延設されている。「線路長」は、マイクロ波電流の通流方向に沿ったアンテナ素子部301の長さであって、本実施形態においてはX軸方向寸法である。具体的には、本実施形態においては、アンテナ素子部301は、いわゆる半波長共振器(すなわちn=1)としての構成を有している。
【0020】
給電線路部302は、アンテナ素子部301に給電するための導体膜であって、X軸方向に延設されつつ、同軸コネクタ31とアンテナ素子部301との間に配置されている。給電線路部302は、その一端である基端(すなわちX軸負方向側の端)が同軸コネクタ31における非接地端子とハンダ付け等により電気的に接続されている。給電線路部302の他端である先端(すなわちX軸正方向側の端)は、非パターン部である給電ギャップ303を介して、アンテナ素子部301の線路長方向における一端(すなわちX軸負方向側の端)と容量結合するように形成されている。給電線路部302には、インピーダンス整合のための高インピーダンス線路部304が設けられている。高インピーダンス線路部304は、給電線路部302における他の部分よりも線路幅(すなわちY軸方向寸法)が小さくなるように形成されている。
【0021】
アンテナ形成面300a上における、アンテナ素子部301および給電線路部302の周囲には、銅等の良導体からなる導体膜である接地パターン部305が形成されている。接地パターン部305は、同軸コネクタ31における接地端子と電気的に接続されている。アンテナ素子部301および給電線路部302と接地パターン部305との間には、非パターン部である囲繞ギャップ306が設けられている。「非パターン部」とは、導体膜パターンが形成されておらず、誘電体基板300の絶縁性表面が露出する部分をいうものとする。このように、アンテナ素子部301は、いわゆるコプレーナ導波路共振器としての構成を有している。磁気共鳴素子2とは反対側に向かう外向き法線を有する裏面300bには、銅等の良導体からなる導体膜である裏面接地パターン部307が形成されている。裏面接地パターン部307は、沿面方向について、給電線路部302の先端部よりも同軸コネクタ31側に設けられている。すなわち、プリント基板30においては、裏面接地パターン部307が設けられたCPWG部分(
図2にて上下に延びる破線よりも左側の部分)と、裏面接地パターン部307が設けられていないCPW部分(
図2にて上下に延びる破線よりも右側の部分)とが形成されている。CPWはコプレーナ導波路を示す略語である。CPWGは接地型コプレーナ導波路を示す略語である。
【0022】
アンテナ素子部301は、導体膜が形成されていない欠損部308を有している。すなわち、欠損部308は、アンテナ形成面300aを被覆せずZ軸正方向に露出する孔として形成されている。欠損部308は、沿面方向について、磁気共鳴素子2に対応する位置に設けられている。すなわち、欠損部308は、誘電体基板300の板厚方向について、放熱基板32を挟んで磁気共鳴素子2と対向するように配設されている。本実施形態においては、欠損部308は、アンテナ素子部301に設けられた、磁気共鳴素子2よりも小さな内径を有する丸孔として形成されている。
【0023】
欠損部308は、アンテナ素子部301の線路幅における中央であって、高周波電流における振動の腹の位置に、すなわち、アンテナ素子部301における電流が最大の箇所に設けられている。具体的には、本実施形態においては、アンテナ素子部301が半波長共振器であることに対応して、欠損部308は、アンテナ素子部301の長手方向における中心位置に配置されている。
【0024】
図4は、磁気共鳴素子2に対する励起光R1の入射状態の概要を示す。本実施形態においては、照射装置4は、励起光R1をブリュースター角θ1で入射するように設けられている。ダイヤモンドの屈折率2.419より、ブリュースター角θ1は約67.5°となる。
図4において、tは、磁気共鳴素子2の厚さすなわちZ軸方向寸法を示す。θ2は、磁気共鳴素子2の内部を進行する励起光R1の厚さ方向に対する角度を示し、θ2=約22.5°となる。wは、磁気共鳴素子2内を励起光R1が通過する範囲の幅を示し、w=t・sinθ2である。そして、
図3および
図4に示されているように、検出装置5は、ブリュースター角θ1で磁気共鳴素子2に入射した励起光R1により発生した蛍光R2を検出するように設けられている。
【0025】
(効果)
以下、上記の通りの、本実施形態に係る磁気センサ1および高周波磁場印加装置3の構成により奏される効果について、比較例と対比しつつ説明する。比較例は、アンテナ素子部301が欠損部308を有しない構成である。
【0026】
上記構成によれば、高周波磁場印加装置3にマイクロ波帯域(例えば2.87GHz程度)の高周波電流を入力することで、高周波磁場印加装置3は、アンテナ素子部301の近傍にて、沿面方向にマイクロ波の高周波磁場を発生する。すると、アンテナ素子部301の近傍に配置された磁気共鳴素子2に、沿面方向の高周波磁場が印加される。これにより、高周波磁場の方向である沿面方向に対して垂直な面直方向の磁場を検出あるいは計測することが可能となる。以下、高周波磁場印加装置3における高周波磁場の発生態様について、
図5~
図8に示した計算機シミュレーション結果を参照しつつ説明する。
【0027】
図5は、比較例に係る、磁気共鳴素子2の中心を通りYZ平面と平行な断面(すなわち
図2におけるIII-III断面に相当する断面)における磁場分布の計算機シミュレーション結果を示す。シミュレーション条件は以下の通りである。印加する高周波電流の周波数が2.86GHzとした。ダイヤNV基板である磁気共鳴素子2の寸法は、1mm×1mm×0.4mmとした。誘電体基板300は、厚さ1.6mm、比誘電率4.1とした。アンテナ素子部301の幅を3mmとし、囲繞ギャップ306の幅を1mmとした。磁気共鳴素子2とアンテナ素子部301との間に0.3mmのギャップを設けた。但し、
図5は、磁気共鳴素子2およびアンテナ素子部301の周辺部分のみを拡大して示すものである。図中、三角印は、磁場の方向を示す。三角印の濃さは、磁場の強度を示し、色が薄いほど磁場の強度が大きいことを示す。
図6は、
図5のシミュレーション結果における、磁気共鳴素子2の内部の、沿面方向(すなわちY軸方向)の磁場強度分布を示す。これらは後掲する
図7および
図8についても同様である。
【0028】
本実施形態においては、プリント基板30の一面に設けたアンテナ素子部301と、磁気共鳴素子2とを、プリント基板30の板厚方向すなわち磁気共鳴素子2の厚さ方向に沿って配列しつつ、互いに近接配置している。すると、
図5および
図6に示されているように、磁気共鳴素子2およびその周囲の磁場は、沿面方向、すなわち、磁気共鳴素子2における被測定物Mと対向する表面に沿った沿面方向となる。これにより、プリント基板30の板厚方向すなわち磁気共鳴素子2の厚さ方向の磁場を検出あるいは計測することが可能となる。
【0029】
ここで、コプレーナ導波路構造を有するアンテナ素子部301においては、その近傍の磁場が強く、面直方向すなわちZ軸正方向について離れるほど磁場が弱くなる。
図6に示した白抜きの矩形は、磁気共鳴素子2内を励起光R1が通過する範囲を示し、かかる範囲を以下「励起光通過範囲」と称する。
図4より、w=t・sinθ2である。t=0.4mm、θ=22.5°とすると、w≒0.153である。よって、余裕を見て、φ0.2mmの円柱範囲を励起光通過範囲とする。
図6に示されているように、アンテナ素子部301が欠損部308を有しない比較例においては、励起光通過範囲内にて、沿面方向の高周波磁場強度に、Z軸正方向に向かうほど磁場が弱くなるような分布が生じている。このような磁場強度分布を可及的に小さくすることで、面直方向磁場の検出感度を高めることが可能となる。
【0030】
図7および
図8は、φ0.6mmの円形の欠損部308を設けた場合の計算機シミュレーション結果を示す。コプレーナ導波路構造を有するアンテナ素子部301の中心に孔である欠損部308を設けると、
図7に示されているように、高周波磁場が、ほぼゼロとなる。これは、アンテナ形成面300a側と裏面300b側とで高周波磁場の方向が逆であることから、両者の打ち消し合いが生じることによるものである。但し、かかる近傍領域から少しZ軸正方向に離れた領域では、打ち消し合いの効果が低減することで、沿面方向の高周波磁場が存在する。そして、
図8に示されているように、本実施形態の構成によれば、励起光通過範囲における沿面方向の高周波磁場強度の、Z軸正方向についての分布が、比較例よりも小さくなった。
【0031】
図9は、円形の欠損部308における孔径を変化させた場合の、磁気共鳴素子2の内部の、沿面方向(すなわちY軸方向)の磁場強度分布の変化を示す。
図9において、(a)は比較例すなわち孔径が0mmの場合を示し、(b)は孔径が0.4mm(すなわちφ0.4mm)の場合を示し、(c)は孔径が0.6mmの場合を示し、(d)は孔径が0.8mmの場合を示す。
図10は、
図9における破線に沿った磁場強度変化を示す。
図10において、横軸の「高さ」は、磁気共鳴素子2の下面(すなわちアンテナ素子部301に最も近接する面)の位置を基準値0とした場合のZ軸正方向における位置を示す。また、丸印のプロットは(a)の比較例に対応し、四角印のプロットは(b)の孔径0.4mmの場合に対応し、菱形のプロットは(c)の孔径0.6mmの場合に対応し、×印のプロットは(d)の孔径0.8mmの場合に対応する。
図9および
図10に示されているように、上記の具体例においては、欠損部308の孔径を0.6mmとすることで、励起光通過範囲における沿面方向の高周波磁場強度の、Z軸正方向についての分布を、最も均一化することができる。欠損部308の大きさは磁場強度とトレードオフの関係にあり、孔径を大きくした場合は、アンテナ素子部301からより離した位置に磁気共鳴素子2を配置する必要がある。
【0032】
このように、本実施形態は、誘電体基板300の表面に設けた平面パターン状の導波路であるアンテナ素子部301に孔部である欠損部308を形成し、かかる欠損部308に対向する位置にてダイヤNV基板である磁気共鳴素子2をアンテナ素子部301から所定間隔の位置に配置している。これにより、励起光通過範囲における沿面方向の高周波磁場強度の、Z軸正方向についての分布を、可及的に小さくすることができる。したがって、本実施形態によれば、沿面方向と垂直な面直方向の外部磁場の検出感度を、よりいっそう高めることが可能となる。
【0033】
本実施形態においては、放熱基板32が、磁気共鳴素子2とアンテナ素子部301との間に設けられる。具体的には、磁気共鳴素子2は、プリント基板30におけるアンテナ素子部301が形成された側の面に接合された放熱基板32上に、固定的に支持される。かかる構成によれば、放熱基板32の厚さを調整することで磁気共鳴素子2とアンテナ素子部301との間に必要なギャップを良好に設定および保持しつつ、磁気共鳴素子2にて発生した熱を良好に放熱することが可能となる。
【0034】
(第一実施形態に対する変形例)
欠損部308は、アンテナ素子部301における電流が最大の箇所、すなわち、高周波電流における振動の腹の位置に設けられる。具体的には、
図11に示されているように、上記実施形態においては、欠損部308は、半波長共振器であるアンテナ素子部301の長手方向における中心位置に配置されている。換言すれば、欠損部308の、アンテナ素子部301の長手方向における位置は、その一端からλ/4の位置となる。一方、アンテナ素子部301が一波長共振器である場合、
図12に示されているように、欠損部308の形成位置は、その一端からλ/4および/または3λ/4に対応する位置となる。また、アンテナ素子部301が3/2波長共振器である場合、
図13に示されているように、欠損部308の形成位置は、その一端から、λ/4と3λ/4と5λ/4とのうちの少なくともいずれか1つに対応する位置となる。このように、アンテナ素子部301は、マイクロ波の波長をλとした場合にnλ/2(nは自然数)の線路長を有する伝送線路共振器としての構成を有し、欠損部308は、線路長における一端からmλ/4(mは2n以下の自然数且つ奇数)に対応する位置であって且つ線路幅における中央に設けられる。
【0035】
(第二実施形態)
図14は、アンテナ素子部301および給電線路部302についての他の構成例を示す。本実施形態においては、アンテナ素子部301および給電線路部302は、マイクロストリップ線路として形成されている。また、アンテナ素子部301および給電線路部302は、半波長共振器を広帯域化した構成を有している。すなわち、アンテナ素子部301および給電線路部302は、いわゆる広帯域フィルタの技術に基づいて形成されている。
【0036】
具体的には、アンテナ素子部301は、互いに直交する主線路301aと副線路301bとを有する逆T字状に形成されている。主線路301aは、図中Y軸方向に延びる直線状且つ帯状に形成されている。副線路301bは、図中X軸方向に延びる直線状且つ帯状に形成されている。副線路301bの長手方向すなわちX軸方向における中心部は、主線路301aの一端(すなわち図中Y軸負方向側の端)と継ぎ目なく一体に接続されている。副線路301bの幅(すなわちY軸方向寸法)は、主線路301aの幅(すなわちX軸方向寸法)よりも広く設定されている。欠損部308は、主線路301aの、幅方向における中心位置であって長さ方向における所定位置に形成されている。「長さ方向における所定位置」とは、高周波電流における振動の腹の位置である。
【0037】
給電線路部302は、第一容量結合部302aと、第二容量結合部302bと、第一接続部302cと、第一端子部302dと、第二接続部302eと、第二端子部302fとを有している。第一容量結合部302aおよび第二容量結合部302bは、主線路301aに沿って図中Y軸方向に延びる直線状且つ帯状に形成されている。すなわち、第一容量結合部302aと、主線路301aと、第二容量結合部302bとは、この順にX軸正方向に配列されている。そして、第一容量結合部302aは、給電ギャップ303を介して、主線路301aと容量結合するように設けられている。同様に、第二容量結合部302bは、給電ギャップ303を介して、主線路301aと容量結合するように設けられている。第一容量結合部302aおよび第二容量結合部302bの幅(すなわちX軸方向寸法)は、主線路301aの幅よりも狭く設定されている。第一容量結合部302aおよび第二容量結合部302bの長さ(すなわちY軸方向寸法)は、主線路301aの長さよりも短く設定されている。
【0038】
第一容量結合部302aの長手方向における一端(すなわちY軸正方向側の端)は、第一接続部302cを介して、第一端子部302dと接続されている。第一接続部302cは、第一容量結合部302aの長手方向における一端から、X軸負方向側に延設されている。第一容量結合部302aと、第一接続部302cと、第一端子部302dとは、継ぎ目なく一体に接続されている。同様に、第二容量結合部302bの長手方向における一端(すなわちY軸正方向側の端)は、第二接続部302eを介して、第二端子部302fと接続されている。第二接続部302eは、第二容量結合部302bの長手方向における一端から、X軸正方向側に延設されている。第二容量結合部302bと、第二接続部302eと、第二端子部302fとは、継ぎ目なく一体に接続されている。
【0039】
以下、第二実施形態による効果について、第一実施形態と比較しつつ説明する。
図15は、第一実施形態および第二実施形態における、磁気共鳴素子2の内部の、沿面方向(すなわちY軸方向)の磁場強度分布を示す。
図15において、「E1」は第一実施形態を示し、「E2」は第二実施形態を示す。(a)~(e)は、それぞれ異なる高周波電流の周波数を示し、順に、2.79GHz、2.83GHz、2.87GHz、2.91GHz、2.95GHzである。
【0040】
第二実施形態においては、全体を小型化するため、誘電体基板300として比誘電率10のものを用いた。磁気共鳴素子2とアンテナ素子部301との間のギャップ距離0.3mmは第一実施形態と同様である。主線路301aは、幅2mm、長さ21.5mmとした。副線路301bは、幅2.5mm、長さ12.5mmとした。欠損部308は、主線路301aの先端(すなわち副線路301bから最も離隔した端)から15mmの位置を中心として、φ0.4mmの丸孔として形成した。
【0041】
図15に示されているように、第一実施形態においては、2.87GHzで磁場強度はピークとなるが、そこから離れた周波数において下がってしまう。これに対し、第二実施形態においては、周波数変化に対して概ね一定の磁場強度が得られる。高周波磁場強度は感度に影響するため、第二実施形態によれば、より測定レンジを広げることが可能になる。
【0042】
(他の変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一の符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0043】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、上記の通り、上記実施形態における説明は、本発明の技術的に必要且つ充分な限度の範囲内のものであり、その他の細部については省略してある。また、各図およびこれを用いた上記の説明は、専ら、本実施形態に係る概略的な構成および機能を説明するために簡略化されたものであって、実際に製造販売される具体的な装置構成とは必ずしも一致するとは限らない。
【0044】
上記実施形態においては、磁気共鳴素子2は、Z軸方向に厚さ方向を有する板状に形成されている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、磁気共鳴素子2は、幅と奥行きと高さとが略等しい正六面体状に形成され得る。あるいは、磁気共鳴素子2は、Z軸方向に高さ方向を有する柱状に形成され得る。よって、本発明における検出可能な外部磁場の方向は、磁気共鳴素子2の「高さ方向」と称することが可能である。磁気共鳴素子2や放熱基板32の沿面方向形状すなわちXY平面に沿った面内形状についても、特段の限定はなく、正方形状であってもよいし、円形や楕円形や多角形状であってもよい。欠損部308についても、沿面方向形状に特段の限定はなく、上記実施形態のような円形であってもよいし、楕円形であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0045】
プリント基板30の構成についても、特段の限定はない。例えば、アンテナ素子部301における平面形状(すなわち沿面方向における形状)については、適宜変容が可能である。また、
図2において、アンテナ形成面300a側の接地パターン部305は、省略され得る。また、裏面接地パターン部307の有無やその形成範囲についても、適宜設定され得る。
【0046】
「高周波電流における振動の腹の位置」は、「高周波電流が最大となる位置」あるいは「高周波磁場強度が最大となる位置」とも言い換えられ得る。
【0047】
上記の説明において、互いに継ぎ目無く一体に形成されていた複数の構成要素は、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されてもよい。同様に、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されていた複数の構成要素は、互いに継ぎ目無く一体に形成されてもよい。また、上記の説明において、互いに同一の材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに異なる材料によって形成されてもよい。同様に、互いに異なる材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに同一の材料によって形成されてもよい。
【0048】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0049】
(観点)
上記の通りの、実施形態および変形例における説明から明らかなように、本明細書による開示は、少なくとも、以下の観点を含む。
[観点1]
窒素-空孔中心を含有する磁気共鳴素子(2)を備えた磁気センサ(1)に用いられる高周波磁場印加装置(3)であって、
誘電体基板(300)と、
高周波電流の給電によりマイクロ波の高周波磁場を発生するように前記誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、前記磁気共鳴素子に対向配置されるアンテナ素子部(301)と、
を備え、
前記アンテナ素子部は、前記一面に沿った沿面方向について前記磁気共鳴素子に対応する位置にて、前記導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する、
高周波磁場印加装置。
[観点2]
前記アンテナ素子部は、伝送線路共振器としての構成を有し、
前記欠損部は、線路幅における中央であって、前記高周波電流における振動の腹の位置に設けられた、
観点1に記載の高周波磁場印加装置。
[観点3]
前記磁気共鳴素子にて発生した熱を吸収するように、前記磁気共鳴素子と前記アンテナ素子部との間に設けられた放熱基板(32)をさらに備えた、
観点1または2に記載の高周波磁場印加装置。
[観点4]
前記アンテナ素子部は、コプレーナ導波路共振器としての構成を有する、
観点1~3のいずれか1つに記載の高周波磁場印加装置。
[観点5]
磁気センサ(1)であって、
窒素-空孔中心を含有する、磁気共鳴素子(2)と、
前記磁気共鳴素子に対してマイクロ波の高周波磁場を印加するように、前記磁気共鳴素子に対向配置された高周波磁場印加装置(3)と、
前記磁気共鳴素子に励起光を照射するように設けられた照射装置(4)と、
前記磁気共鳴素子にて発生した蛍光を検出するように設けられた検出装置(5)と、
を備え、
前記高周波磁場印加装置は、
誘電体基板(300)と、
高周波電流の給電により前記高周波磁場を発生するように前記誘電体基板の一面(300a)上に形成された導体膜からなり、前記磁気共鳴素子に対向配置されるアンテナ素子部(301)と、
を備え、
前記アンテナ素子部は、前記一面に沿った沿面方向について前記磁気共鳴素子に対応する位置にて、前記導体膜が形成されていない欠損部(308)を有する、
磁気センサ。
[観点6]
前記アンテナ素子部は、伝送線路共振器としての構成を有し、
前記欠損部は、線路幅における中央であって、前記高周波電流における振動の腹の位置に設けられた、
観点5に記載の磁気センサ。
[観点7]
前記磁気共鳴素子にて発生した熱を吸収するように、前記磁気共鳴素子と前記アンテナ素子部との間に設けられた放熱基板(32)をさらに備えた、
観点5または6に記載の磁気センサ。
[観点8]
前記アンテナ素子部は、コプレーナ導波路共振器としての構成を有する、
観点5~7のいずれか1つに記載の磁気センサ。
【符号の説明】
【0050】
1 磁気センサ
2 磁気共鳴素子
3 高周波磁場印加装置
32 放熱基板
300 誘電体基板
300a アンテナ形成面(一面)
301 アンテナ素子部
308 欠損部
4 照射装置
5 検出装置