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特開2024-131676磁気記憶装置、及び磁気記憶装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131676
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】磁気記憶装置、及び磁気記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20240920BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20240920BHJP
   H10N 50/01 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
H10N50/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042091
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】島野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直紀
(72)【発明者】
【氏名】趙 亨峻
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA19
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD06
4M119DD09
4M119DD15
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD37
4M119DD42
4M119EE22
4M119EE27
4M119JJ13
4M119JJ15
5F092AA11
5F092AB07
5F092AC12
5F092AD23
5F092AD25
5F092BB10
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB42
5F092BB43
5F092BC07
5F092BC12
5F092BC18
5F092BE06
5F092BE23
5F092BE27
5F092CA09
5F092CA20
(57)【要約】
【課題】磁気抵抗効果素子の特性を向上させる。
【解決手段】実施形態の磁気記憶装置は、スイッチング素子と、磁気抵抗効果素子と、上記スイッチング素子と上記磁気抵抗効果素子との間に設けられる電極と、を備え、上記電極は、上記スイッチング素子に接する第1サブ電極と、上記磁気抵抗効果素子に接する第2サブ電極と、上記第1サブ電極及び上記第2サブ電極の間に設けられる第3サブ電極と、を含み、上記第1サブ電極及び上記第2サブ電極は、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含み、上記第3サブ電極は、高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、
磁気抵抗効果素子と、
前記スイッチング素子と前記磁気抵抗効果素子との間に設けられる電極と、
を備え、
前記電極は、
前記スイッチング素子に接する第1サブ電極と、
前記磁気抵抗効果素子に接する第2サブ電極と、
前記第1サブ電極及び前記第2サブ電極の間に設けられる第3サブ電極と、
を含み、
前記第1サブ電極及び前記第2サブ電極は、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含み、
前記第3サブ電極は、高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含む、
磁気記憶装置。
【請求項2】
前記高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物は、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、及び窒化タングステン(WN)である、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記第1サブ電極及び前記第2サブ電極は、アモルファス構造を有する、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記第1サブ電極の下面から上面までの高さは、前記電極の下面から上面までの高さの半分以上の高さである、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記第1サブ電極の上面から下面までの高さは、2ナノメートル(nm)以上、20ナノメートル(nm)以下である、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記第2サブ電極の上面から下面までの高さは、0.1ナノメートル(nm)以上、3ナノメートル(nm)以下である、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記第3サブ電極の上面から下面までの高さは、0.1ナノメートル(nm)以上、3ナノメートル(nm)以下である、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記磁気抵抗効果素子は、前記スイッチング素子に対して基板と反対側に設けられる、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記磁気抵抗効果素子は、
第1強磁性層と、
第2強磁性層と、
前記第2強磁性層に対して前記第1強磁性層と反対側に設けられた第3強磁性層と、
前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2強磁性層と前記第3強磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
を含み、
前記第1非磁性層は、マグネシウム(Mg)の酸化物を含む、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記第2非磁性層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、バナジウム(V)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも1つの元素を含む、
請求項9記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
前記第3強磁性層は、基板と前記第2強磁性層との間に設けられる、
請求項9記載の磁気記憶装置。
【請求項12】
前記第2強磁性層と、前記第3強磁性層とは、反強磁性的に結合される、
請求項9記載の磁気記憶装置。
【請求項13】
前記スイッチング素子は、2端子型のスイッチング素子である、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項14】
セレクタ層の上面上に、第1サブ電極層、第2サブ電極層、及び第3サブ電極層を上方に向かってこの順に含む電極層を形成することと、
前記電極層の上面上に磁気抵抗効果素子層を形成することと、
を備え、
前記電極層を形成することは、
前記セレクタ層の上面上に、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が堆積されることで、導電体層を形成することと、
イオンビームエッチングを用いて、前記導電体層の上端部分を除去しつつ、前記導電体層内に高融点金属、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を打ち込むことにより、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含む前記第1サブ電極層及び前記第3サブ電極層と、高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含む前記第2サブ電極層とを形成することと、
を含む、
磁気記憶装置の製造方法。
【請求項15】
セレクタ層の上面上に、第1サブ電極層、第2サブ電極層、及び第3サブ電極層を上方に向かってこの順に含む電極層を形成することと、
前記電極層の上面上に磁気抵抗効果素子層を形成することと、
を備え、
前記電極層を形成することは、
前記セレクタ層の上面上に、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が堆積されることで、第1サブ電極層を形成することと、
前記第1サブ電極層の上面上に、高融点金属、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が堆積されることで、第2サブ電極層を形成することと、
前記第2サブ電極層の上面上に、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が堆積されることで、第3サブ電極層を形成することと、
を含む、
磁気記憶装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1サブ電極層を形成することは、
セレクタ層の上面上に炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が堆積されることで、導電体層を形成することと、
CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて、前記導電体層の上端部分を除去することと、
を含む、
請求項15記載の磁気記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気記憶装置、及び磁気記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子を記憶素子として用いた磁気記憶装置(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)が知られている。磁気抵抗効果素子は、スイッチング素子と直列接続されてメモリセルとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0194667号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気抵抗効果素子の特性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気記憶装置は、スイッチング素子と、磁気抵抗効果素子と、上記スイッチング素子と上記磁気抵抗効果素子との間に設けられる電極と、を備え、上記電極は、上記スイッチング素子に接する第1サブ電極と、上記磁気抵抗効果素子に接する第2サブ電極と、上記第1サブ電極及び上記第2サブ電極の間に設けられる第3サブ電極と、を含み、上記第1サブ電極及び上記第2サブ電極は、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含み、上記第3サブ電極は、高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る磁気記憶装置の構成を説明するためのブロック図。
図2】実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための回路図。
図3】実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための平面図。
図4】実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの断面構造の一例を示す、図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5】実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成を説明するための断面図。
図6】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するためのフローチャート。
図7】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するための断面図。
図8】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するための断面図。
図9】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するための断面図。
図10】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するための断面図。
図11】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するための断面図。
図12】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第2製造方法を説明するためのフローチャート。
図13】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第2製造方法を説明するための断面図。
図14】実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第2製造方法を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。ここで、添え字は、下付き文字や上付き文字に限らず、例えば、参照符号の末尾に添加される小文字のアルファベット、及び配列を意味するインデックス等を含む。また、本明細書において、“A/B積層膜”は、元素Aを含む膜と元素Bを含む膜の積層構造であることを示す。
【0008】
1.実施形態
実施形態に係る磁気記憶装置について説明する。実施形態に係る磁気記憶装置は、例えば、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)によって磁気抵抗効果(Magnetoresistance Effect)を有する素子を抵抗変化素子として用いた、垂直磁化方式による磁気記憶装置を含む。なお、以下の説明において、当該抵抗変化素子を、MTJ素子(Magnetoresistance Effect Element)とも呼ぶ。
【0009】
1.1 構成
まず、実施形態に係る磁気記憶装置の構成について説明する。
【0010】
1.1.1 磁気記憶装置の構成
図1は、実施形態に係る磁気記憶装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、磁気記憶装置1は、メモリセルアレイ10、ロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、入出力回路17、及び制御回路18を備える。
【0011】
メモリセルアレイ10は、各々が行(row)、及び列(column)の組に対応付けられた複数のメモリセルMCを備える。同一行にあるメモリセルMCは、同一のワード線WLに接続される。同一列にあるメモリセルMCは、同一のビット線BLに接続される。
【0012】
ロウ選択回路11は、ワード線WLを介してメモリセルアレイ10と接続される。ロウ選択回路11には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(ロウアドレス)が供給される。ロウ選択回路11は、アドレスADDのデコード結果に基づいた行に対応するワード線WLを選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたワード線WLを、選択ワード線WLと呼ぶ。また、選択ワード線WL以外のワード線WLを、非選択ワード線WLと呼ぶ。
【0013】
カラム選択回路12は、ビット線BLを介してメモリセルアレイ10と接続される。カラム選択回路12には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(カラムアドレス)が供給される。カラム選択回路12は、アドレスADDのデコード結果に基づいた列に対応するビット線BLを選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたビット線BLを、選択ビット線BLと呼ぶ。また、選択ビット線BL以外のビット線BLを、非選択ビット線BLと呼ぶ。
【0014】
デコード回路13は、入出力回路17からのアドレスADDをデコードする。デコード回路13は、アドレスADDのデコード結果を、ロウ選択回路11、及びカラム選択回路12に供給する。アドレスADDは、選択されるカラムアドレス、及びロウアドレスを含む。
【0015】
書込み回路14は、メモリセルMCへのデータの書込みを行う。書込み回路14は、例えば、図示しない書込みドライバを含む。
【0016】
読出し回路15は、メモリセルMCからのデータの読出しを行う。読出し回路15は、例えば、図示しないセンスアンプを含む。
【0017】
電圧生成回路16は、図示しない磁気記憶装置1の外部の機器から提供された電源電圧を用いて、メモリセルアレイ10の各種の動作のための電圧を生成する。例えば、電圧生成回路16は、書込み動作の際に必要な種々の電圧を生成し、書込み回路14に出力する。また、例えば、電圧生成回路16は、読出し動作の際に必要な種々の電圧を生成し、読出し回路15に出力する。
【0018】
入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部との通信を司る。入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部からのアドレスADDを、デコード回路13に転送する。入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部からのコマンドCMDを、制御回路18に転送する。入出力回路17は、種々の制御信号CNTを、磁気記憶装置1の外部と、制御回路18と、の間で送受信する。入出力回路17は、磁気記憶装置1の外部からのデータDATを書込み回路14に転送し、読出し回路15から転送されたデータDATを磁気記憶装置1の外部に出力する。
【0019】
制御回路18は、制御信号CNT及びコマンドCMDに基づいて、磁気記憶装置1内のロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、及び入出力回路17の動作を制御する。
【0020】
1.1.2 メモリセルアレイの構成
次に、実施形態に係る磁気記憶装置1のメモリセルアレイの構成について図2を用いて説明する。図2は、実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を示す回路図である。図2では、ワード線WLがインデックス“<>”を含む添え字によって分類されて示される。
【0021】
図2に示すように、メモリセルMCは、メモリセルアレイ10内でマトリクス状に配置され、複数のビット線BL(BL<0>、BL<1>、…、BL<N>)のうちの1本と、複数のワード線WL(WL<0>、WL<1>、…、WL<M>)のうちの1本と、の組に対応付けられる(M及びNは自然数)。すなわち、メモリセルMC<i、j>(0≦i≦M、0≦j≦N)は、ワード線WL<i>とビット線BL<j>との間に接続される。
【0022】
メモリセルMC<i、j>は、直列に接続されたスイッチング素子SEL<i、j>及び磁気抵抗効果素子MTJ<i、j>を含む。
【0023】
スイッチング素子SELは、2端子型のスイッチング素子である。2端子型スイッチング素子は、3個目の端子を含まない点において、トランジスタ等の3端子型のスイッチング素子と異なる。2端子間に印加する電圧が閾値電圧Vth未満の場合(2端子間に印加する電圧<閾値電圧Vth)、スイッチング素子SELは、高抵抗状態である。高抵抗状態は、例えば電気的に非導通状態となる“オフ”状態である。2端子間に印加する電圧が閾値電圧Vth以上(2端子間に印加する電圧≧閾値電圧Vth)の場合、スイッチング素子SELは、低抵抗状態に変わる。低抵抗状態は、例えば電気的に導通状態となる“オン”状態である。より具体的には、例えば、スイッチング素子SELは、対応するメモリセルMCに印加される電圧が閾値電圧Vth未満の場合(対応するメモリセルMCに印加される電圧<閾値電圧Vth)、抵抗値の大きい絶縁体として電流を遮断する。すなわち、オフ状態となる。スイッチング素子SELは、対応するメモリセルMCに印加される電圧が閾値電圧Vth以上の場合(対応するメモリセルMCに印加される電圧≧閾値電圧Vth)、抵抗値の小さい導電体として電流を流す。すなわち、オン状態となる。スイッチング素子SELは、2端子間に印加される電圧がどちらの極性でも(流れる電流の方向に依らず)、対応するメモリセルMCに印加される電圧の大きさに応じて、電流を流すか遮断するかを切替える。
【0024】
磁気抵抗効果素子MTJは、スイッチング素子SELによって制御された電流により、抵抗状態を低抵抗状態と高抵抗状態とに切替わることができる。磁気抵抗効果素子MTJは、その抵抗状態の変化によってデータを書込み可能であり、書込まれたデータを不揮発に保持し、読出し可能である記憶素子として機能する。
【0025】
次に、メモリセルアレイ10におけるメモリセルMCの形状、及びビット線BL及びワード線WLに対するメモリセルMCの配置について、図3を用いて説明する。図3は、実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための平面図の一例を示す。図3では、メモリセルアレイ10のうち3本のワード線WL<m-1>、WL<m>、及びWL<m+1>と、3本のビット線BL<n-1>、BL<n>、及びBL<n+1>との間に設けられる複数のメモリセルMCが示される(1≦m≦M-1、1≦n≦N-1)。なお、説明の便宜上、図3では層間絶縁膜が省略して示される。
【0026】
図3に示すように、メモリセルアレイ10は、半導体基板20の上方に設けられる。以下の説明では、半導体基板20の表面と平行な面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向とする。XY平面内において、互いに直交する2つの方向の組の1つをX方向及びY方向とする。
【0027】
複数のメモリセルMCは、ワード線WLとビット線BLとの間に設けられる。図3の例では、メモリセルMCの下方にワード線WLが設けられ、メモリセルMCの上方にビット線BLが設けられる場合が示されるが、これに限られず、ワード線WLとビット線BLとの上下関係は、逆であってもよい。
【0028】
複数のメモリセルMCの各々は、例えばXY断面に沿って円形状を有する。
【0029】
複数のワード線WLは、Y方向に沿って並ぶ。複数のワード線WLの各々は、X方向に沿って延びる。複数のビット線BLは、X方向に沿って並ぶ。複数のビット線BLの各々は、Y方向に沿って延びる。2本のワード線WLの間の距離と、2本のビット線BLの間の距離とは、例えば、実質的に等しく設定され得る。1本のビット線BLと1本のワード線WLとが交わる部分には、1つのメモリセルMCが設けられる。
【0030】
次に、メモリセルアレイ10の断面構造について図4を用いて説明する。図4は、実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの断面構造の一例を示す、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【0031】
メモリセルアレイ10は、半導体基板20の上方に設けられる。
【0032】
メモリセルアレイ10は、複数の導電体21、複数の電極22、複数の素子23、複数の電極24、複数の素子25、複数の電極26、及び複数の導電体27を含む。
【0033】
半導体基板20の上面上には、例えば、複数の導電体21が設けられる。複数の導電体21は、Y方向に沿って並ぶ。複数の導電体21の各々は、図示しない領域において、X方向に沿って延びる。複数の導電体21の各々は、導電性を有し、ワード線WLとして機能する。隣り合う2つの導電体21の間の部分には、絶縁体41が設けられる。これにより、複数の導電体21の各々は、互いに絶縁される。なお、図4では、複数の導電体21が半導体基板20上に設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の導電体21は、半導体基板20に接することなく、半導体基板20から離れて設けられてもよい。
【0034】
複数の導電体21の各々の上面上には、複数の電極22が設けられる。同一の導電体21の上面上に設けられる複数の電極22は、図示しない領域において、X方向に並ぶ。なお、図4では、複数の電極22のうち、2個の導電体21上にそれぞれ設けられる2個の電極22が示される。複数の電極22の各々は、下部電極BEとして使用される。
【0035】
複数の電極22の各々の上面上には、複数の素子23のうち、対応する1個の素子23が設けられる。複数の素子23の各々は、スイッチング素子SELとして使用される。
【0036】
複数の素子23の各々の上面上には、複数の電極24のうち、対応する1個の電極24が設けられる。複数の電極24の各々は、中間電極MEとして機能する。電極24の構成の詳細については、後述する。
【0037】
複数の電極24の各々の上面上には、複数の素子25のうち、対応する1個の素子25が設けられる。複数の素子25の各々は、磁気抵抗効果素子MTJとして機能する。素子25の構成の詳細については、後述する。
【0038】
複数の素子25の各々の上面上には、複数の電極26のうち、対応する1個の電極26が設けられる。複数の電極26の各々は、上部電極TEとして使用される。
【0039】
Y方向に並ぶ複数の電極26の各々の上面に接するように、Y方向に延びる1個の導電体27が設けられる。複数の導電体27は、図示しない領域において、X方向に並ぶ。複数の導電体27の各々は、Y方向に沿って延びる。複数の導電体27の各々は、導電性を有し、ビット線BLとして機能する。
【0040】
1.1.3 中間電極
次に、実施形態に係る磁気記憶装置1の中間電極MEの構成について、引き続き、図4を用いて説明する。
【0041】
複数の電極24の各々は、導電体24A、24B、及び24Cを含む。
【0042】
導電体24Aは、複数の素子23の各々の上面上に設けられる。導電体24Aは、例えば炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。導電体24Aは、アモルファス構造を有することが好ましい。導電体24Aの下面から上面までの高さHAは、例えば2ナノメートル(nm)以上20ナノメートル(nm)以下である。高さHAがこのような範囲内の高さであれば、導電体24Aが素子23の上面から剥がれてしまうことが抑制される。
【0043】
なお、本明細書において、各要素から「構成される」部分は、当該要素とは異なる意図せぬ不純物を含んでもよい。意図せぬ不純物は、例えば磁気記憶装置1の製造工程において使用されるガスに含まれる元素、及び上記部分の周囲から上記部分に混入した元素を含む。
【0044】
導電体24Bは、導電体24Aの上面上に設けられる。導電体24Bは、例えば高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。本実施形態において、高融点金属は、例えば鉄(Fe)及びコバルト(Co)より融点が高い材料である。高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物は、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、及び窒化タングステン(WN)である。導電体24Bは、例えば結晶構造を有する。導電体24Bの下面から上面までの高さHBは、例えば0.1ナノメートル(nm)以上3ナノメートル(nm)以下であることが好ましい。
【0045】
導電体24Cは、導電体24Bの上面上に設けられる。導電体24Cは、導電体24Aと同様に、例えば炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。導電体24Cは、アモルファス構造を有することが好ましい。導電体24Cの下面から上面までの高さHCは、例えば0.1ナノメートル(nm)以上3ナノメートル(nm)以下であることが好ましい。また、導電体24C上面の表面粗さ(ラフネス、平坦性)は、例えばパラメータRaが0.6nm以下である。
【0046】
以上のような電極24の構成において、導電体24Bの下面は、例えば電極24のZ方向における中心の位置以上の高さに位置する。これにより、導電体24Aの高さHAは、例えば電極24の下面から電極24の上面までの高さ(HA+HB+HC)の半分の高さ以上の高さである(HA≧(HA+HB+HC)/2)。
【0047】
1.1.4 磁気抵抗効果素子
次に、実施形態に係る磁気記憶装置1の磁気抵抗効果素子MTJの構成について図5を用いて説明する。図5は、実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
【0048】
磁気抵抗効果素子MTJとして使用される素子25は、強磁性体31、非磁性体32、強磁性体33、非磁性体34、強磁性体35、及び非磁性体36を含む。
【0049】
強磁性体31は、強磁性を有する導電膜である。強磁性体31は、膜面に垂直な方向(Z方向)に磁化容易軸方向を有する。強磁性体31は、鉄(Fe)を含む。強磁性体31は、更にコバルト(Co)、及びニッケル(Ni)のうちの少なくとも1つの元素を含み得る。また、強磁性体31は、ボロン(B)を更に含み得る。より具体的には、例えば、強磁性体31は、コバルト鉄ボロン(CoFeB)、ホウ化鉄(FeB)、又はホウ化コバルト(CoB)を含む。強磁性体31は、記憶層SLとして使用される。
【0050】
強磁性体31の下面上には、非磁性体32が設けられる。非磁性体32は、非磁性を有する絶縁膜である。非磁性体32は、トンネルバリア層TBとして使用される。非磁性体32は、強磁性体31と強磁性体33との間に設けられて、強磁性体31及び強磁性体33と共に磁気トンネル接合を形成する。また、強磁性体31及び強磁性体33の界面層にコバルト鉄ボロン(CoFeB)等の初期アモルファス層が用いられる場合、非磁性体32は、強磁性体31の結晶化処理において、強磁性体31との界面から結晶質の膜を成長させるための核となるシード材として機能する。同様に、強磁性体33の界面層としてコバルト鉄ボロン(CoFeB)が用いられる場合には、非磁性体32は、強磁性体33に対してもシード材として機能する。ここで、初期アモルファス層とは、成膜直後にアモルファス状態であり、アニール処理後に結晶化する層である。非磁性体32は、膜面が(001)面に配向した正方晶系又は立方晶系の構造を有する。非磁性体32に用いられる酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)が挙げられる。酸化マグネシウム(MgO)は、NaCl構造を有する。非磁性体32に酸化マグネシウム(MgO)が用いられる場合、酸化マグネシウム(MgO)の(001)界面とコバルト鉄ボロン(CoFeB)の(001)界面とは整合する。このため、コバルト鉄ボロン(CoFeB)は、アニール処理により結晶成長して、(001)配向した体心立方構造となる。
【0051】
非磁性体32の下面上には、強磁性体33が設けられる。強磁性体33は、強磁性を有する導電膜である。強磁性体33は、参照層RLとして使用される。強磁性体33は、膜面に垂直な方向(Z方向)に磁化容易軸方向を有する。強磁性体33の磁化方向は、固定されている。図5の例では、強磁性体33の磁化方向は、強磁性体33から強磁性体31へ向かう方向である。なお、「磁化方向が固定されている」とは、強磁性体31の磁化方向を反転させ得る大きさのトルクによって、磁化方向が変化しないことを意味する。通常、強磁性体33には界面層が用いられる。強磁性体33の界面層としては、コバルト鉄ボロン(CoFeB)等の初期アモルファス層が用いられる。更に、当該コバルト鉄ボロン(CoFeB)層のうち、酸化マグネシウム(MgO)層に接する面とは反対側の面と接するように、補助的な強磁性層が設けられる。当該補助的な強磁性層は、例えば、コバルト白金(CoPt)、コバルトニッケル(CoNi)、及びコバルトパラジウム(CoPd)から選択される少なくとも1つの合金膜を含む。当該補助的な強磁性層は、Co/Ptを含む積層膜、Co/Pdを含む積層膜等の積層膜となる。初期アモルファス層となっているコバルト鉄ボロン(CoFeB)層は、上記のCoPt、CoPd、Co/Ptを含む積層膜、Co/Pdを含む積層膜等と積層して用いられる。この場合、強磁性体33のうちの界面層、例えば上記したCoFeB層は、他の層よりも(001)配向したMgOが非磁性体32側に形成される。
【0052】
強磁性体33の下面上には、非磁性体34が設けられる。非磁性体34は、非磁性を有する導電膜である。非磁性体34は、スペーサ層SPとして使用される。非磁性体34は、例えば、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、バナジウム(V)、及びクロム(Cr)から選択される元素又はこれらの合金からなる。例えば、非磁性体34の膜厚は、2ナノメートル(nm)以下である。
【0053】
非磁性体34の下面上には、強磁性体35が設けられる。強磁性体35は、強磁性を有する導電膜である。強磁性体35は、シフトキャンセル層SCLとして使用される。強磁性体35は、膜面に垂直な方向(Z方向)に磁化容易軸方向を有する。強磁性体35の磁化方向は、固定されている。図5の例では、強磁性体35の磁化方向は、強磁性体33から強磁性体35へ向かう方向である。強磁性体35は、例えば、コバルト白金(CoPt)、コバルトニッケル(CoNi)、及びコバルトパラジウム(CoPd)から選択される少なくとも1つの合金層を含む。また、強磁性体35は、Co/Ptを含む積層膜、及びCo/Pdを含む積層膜等の積層膜でもよい。
【0054】
強磁性体33及び強磁性体35は、非磁性体34によって反強磁性的に結合される。すなわち、強磁性体33及び強磁性体35は、互いに反平行な磁化方向を有するように結合される。このような強磁性体33、非磁性体34、及び強磁性体35の結合構造を、SAF(Synthetic Anti - Ferromagnetic)構造という。SAF構造により、強磁性体35は、強磁性体33の漏洩磁界が強磁性体31の磁化方向の変化に与える影響を相殺することができる。これにより、強磁性体35は、実質的な強磁性体33の漏洩磁界を低減することができる。
【0055】
強磁性体35の下面上には、非磁性体36が設けられる。非磁性体36は、非磁性を有する導電膜である。非磁性体36は、下地層UL(Under layer)として使用される。非磁性体38は、例えばジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ルテニウム(Ru)、及び白金(Pt)から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0056】
磁気抵抗効果素子MTJは、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係が平行か反平行かによって、低抵抗状態及び高抵抗状態のいずれかを取ることが出来る。実施形態では、このような磁気抵抗効果素子MTJに書込み電流を流すことにより、参照層RLの磁化方向に対する記憶層SLの磁化方向を制御する。具体的には、磁気抵抗効果素子MTJに電流を流すことによって発生させたスピントランスファトルク(Spin Transfer Torque)を利用した書込み方式が採用される。
【0057】
磁気抵抗効果素子MTJに、記憶層SLから参照層RLに向かう方向、即ち図5における矢印A1の方向に、或る大きさの書込み電流Ic0を流すと、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係は、平行になる。この平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も低くなり、磁気抵抗効果素子MTJは低抵抗状態に設定される。この低抵抗状態は、「P(Parallel)状態」と呼ばれ、例えば、データ“0”の状態と規定される。
【0058】
また、磁気抵抗効果素子MTJに、参照層RLから記憶層SLに向かう方向、即ち図5における矢印A2の方向に、書込み電流Ic0より大きい書込み電流Ic1を流すと、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係は、反平行になる。この反平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も高くなり、磁気抵抗効果素子MTJは高抵抗状態に設定される。この高抵抗状態は、「AP(Anti - Parallel)状態」と呼ばれ、例えば、データ“1”の状態と規定される。
【0059】
なお、データ“1”及びデータ“0”の規定の仕方は、上述した例に限られない。例えば、P状態をデータ“1”と規定し、AP状態をデータ“0”と規定してもよい。
【0060】
1.2 メモリセルアレイの製造方法
次に、実施形態に係る磁気記憶装置1のメモリセルアレイ10の製造方法について説明する。以下では、実施形態に係る磁気記憶装置1のメモリセルアレイ10の製造方法について、第1製造方法、及び第2製造方法が説明される。
【0061】
1.2.1 第1製造方法
実施形態に係る磁気記憶装置1におけるメモリセルアレイ10の第1製造方法について説明する。
【0062】
図6は、実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するためのフローチャートである。図7図11は、実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第1製造方法を説明するための断面図である。図7図11は、図4に対応する断面である。
【0063】
図6のS0において、図7に示すように、ウェハWFとしての半導体基板20の上面上に、複数のワード線WLとして、複数の導電体21が設けられる。具体的には、まず半導体基板20の上面上に導電体層が設けられた後、フォトリソグラフィなどによって、ワード線WLに対応する領域を除く部分が開口したマスクが形成される。そして、形成されたマスクを用いた異方性エッチングによって導電体層が分断されて複数の導電体21が形成されると共に、半導体基板20に達するホールが形成される。本工程における異方性エッチングは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)である。その後、形成されたホール内に絶縁体41が設けられる。
【0064】
次に、図6のS1において、図8に示すように、複数の導電体21及び絶縁体41の上面上に、電極層122、セレクタ層123、及び導電体層224がこの順に形成される。導電体層224は、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が、セレクタ層123の上面上に堆積することにより形成される。なお、図6では、電極層122、セレクタ層123、及び導電体層224がそれぞれ、BE層、SEL層、及びME層と記載される。導電体層224のZ方向に沿った高さHは、製造される磁気抵抗効果素子MTJの複数の電極24の高さ(HA+HB+HC)よりも厚い(H>HA+HB+HC)。
【0065】
そして、図6のS2において、図9に示すように、電極層124A、124B、及び124Cが形成される。電極層124A、124B、及び124Cは、それぞれ図4において説明した導電体24A、24B、及び24Cに対応する。電極層124A及び124Cは、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。電極層124Bは、高融点金属、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。なお、図6において、電極層124A、124B、及び124Cがそれぞれ、MEA層、MEB層、及びMEC層と記載される。
【0066】
具体的には、イオンビームエッチングによって、S1において形成された導電体層224がエッチングされる。また、当該イオンビームエッチングの際、例えば図示しないイオンビーム発生装置内において、導電体層224のエッチングとともに、高融点金属、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が、導電体層224内に打ち込まれる。これにより、エッチングされた導電体層224内に、高融点金属、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物により構成される電極層124Bが形成される。また、エッチングされた導電体層224のうち、電極層124Bよりも下層の部分、及び電極層124Bよりも上層の部分がそれぞれ、電極層124A及び124Cとして、形成される。なお、導電体層224に打ち込まれる高融点金属、及び高融点金属元素の化合物は、例えばイオンビームエッチングの際、図示しないイオンビーム発生装置内において発生し得る。
【0067】
それから、図6のS3において、図10に示すように、電極層124Cの上面上に、磁気抵抗効果素子層125、電極層126、及び複数のマスクMが、この順に形成される。なお、図6において、磁気抵抗効果素子層125、及び電極層126はそれぞれ、MTJ層、及びTE層と記載される。磁気抵抗効果素子層125は、図5において説明した磁気抵抗効果素子MTJに含まれる各層がこの積層順に平板状に成膜された、積層体である。また、複数のマスクMは、フォトリソグラフィなどによって、電極層122、セレクタ層123、電極層124A~124C、及び磁気抵抗効果素子層125のうち、製造される下部電極BE、スイッチング素子SEL、中間電極ME、磁気抵抗効果素子MTJ、及び上部電極TEに対応する領域を除く部分が開口したものである。複数のマスクMは、例えば、窒化チタン(TiN)を含み、後述するイオンビームエッチングにおいてスイッチング素子SEL、中間電極ME、及び磁気抵抗効果素子MTJとして機能する部分を保護する。複数のマスクMは、例えば、磁気抵抗効果素子層125の上面上において、マトリクス状に並ぶ複数の円柱形状の構造体として設けられ、当該複数の円柱形状の構造体の各々が1つのメモリセルMCに対応する領域を保護する。
【0068】
次に、図6のS4において、イオンビームエッチングによって電極層122、124A~124C、及び126、セレクタ層123、及び磁気抵抗効果素子層125がエッチングされる。これにより、電極層122、124A~124C、及び126、セレクタ層123、及び磁気抵抗効果素子層125のうち、複数のマスクMによって保護されない部分が除去され、当該部分の下方に位置する導電体21及び絶縁体41が露出する。このようなイオンビームエッチングによって、電極層122、124A~124C、及び126、セレクタ層123、及び磁気抵抗効果素子層125から、各々が電極22、24、及び26、並びに素子23及び25を含む、複数の積層構造が形成される。
【0069】
そして、図6のS5において、複数のマスクMが除去された後、電極層122、124A~124C、及び126、セレクタ層123、及び磁気抵抗効果素子層125がイオンビームによってエッチングされた空間が絶縁体42によって埋め込まれる。
【0070】
それから、図6のS6において、図11に示すように、素子25及び絶縁体42の上面上に、Y方向に沿って並ぶ複数の導電体27が設けられる。具体的には、まず素子25及び絶縁体42の上面上に導電体層が設けられた後、フォトリソグラフィなどによって、ビット線BLに対応する領域を除く部分が開口したマスクが形成される。そして、形成されたマスクを用いた異方性エッチングによって導電体層が分断されて複数の導電体27が形成されると共に、絶縁体42に達するホールが形成される。本工程における異方性エッチングは、例えば、RIEである。その後、形成されたホール内に図示しない絶縁体が設けられる。
【0071】
以上により、第1製造方法によって、メモリセルアレイ10に相当する構成がウェハWF上に形成される。そして、ウェハWFは、チップ単位にダイシングされ、磁気記憶装置1が形成される。
【0072】
1.2.2 第2製造方法
次に、実施形態に係る磁気記憶装置1におけるメモリセルアレイ10の第2製造方法について、第1製造方法と異なる点について主に説明する。
【0073】
図12は、実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第2製造方法を説明するためのフローチャートである。図13及び図14は、実施形態に係る磁気記憶装置におけるメモリセルアレイの第2製造方法を説明するための断面図である。図13及び図14は、図4に対応する断面である。
【0074】
図12のS10は、第1製造方法のS0と同等の工程である。
【0075】
次に、図12のS11において、図13に示すように、導電体21及び絶縁体41の上面上に、電極層122、セレクタ層123、及び電極層124Aがこの順に形成される。
【0076】
電極層124Aの形成について、具体的に、例えばセレクタ層123の上面上に、図4の導電体24Aよりも厚い導電体層が形成される。当該導電体層は、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が、セレクタ層123の上面上に堆積することにより形成される。そして、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって、上記導電体層の上端部分が除去される。これにより、電極層124Aが形成される。電極層124Aの上面から下面までの高さ、導電体24Aの高さHAと同等である。
【0077】
なお、電極層124Aを形成する処理において、CMPは実行されなくてもよい。この場合、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が、CMPを行わずに、高さHAだけ、セレクタ層123の上面上に堆積される。これにより、電極層124Aが形成される。
【0078】
そして、図12のS12において、図14に示すように、電極層124B、及び124Cがこの順番で形成される。
【0079】
具体的に、電極層124Aの上面上に、高融点金属、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が堆積される。これにより、電極層124Bが形成される。なお、第2製造方法において、電極層124Bは、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)、SIP(Self-ionized Sputtering)、ALD(Atomic Layer Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)等を用いて形成される。そして、電極層124Bの上面上に、電極層124Cが形成される。電極層124Cは、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物が、電極層124Bの上面上に堆積することにより形成される。
【0080】
電極層124Bの上面から下面までの高さ、及び電極層124Cの上面から下面までの高さはそれぞれ、導電体24Bの高さHB、及び導電体24Cの高さHCと同等である。
【0081】
それから、図12のS13~S16が実行される。S13~S16は、第1製造方法のS3~S6と同等とすることができる。
【0082】
以上により、第2製造方法によって、メモリセルアレイ10に相当する構成がウェハWF上に形成される。また第1製造方法と同等に、ウェハWFは、チップ単位にダイシングされ、磁気記憶装置1が形成される。
【0083】
1.3 本実施形態に係る効果
実施形態によれば、磁気抵抗効果素子MTJの特性を向上させることできる。実施形態の効果について、以下に説明する。
【0084】
実施形態に係る磁気記憶装置1のメモリセルMCにおいて、中間電極MEとして機能する電極24は、スイッチング素子SELとして機能する素子23、及び磁気抵抗効果素子MTJとして機能する素子25の間に設けられる。電極24は、導電体24A、24B、及び24Cを含む。導電体24Aは、素子23に接する。導電体24Cは、素子25に接する。導電体24Bは、導電体24A及び24Cの間に設けられる。導電体24A及び24Cは、炭素(C)及び窒化炭素(CN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。導電体24Bは、高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される。このような導電体24Bが、導電体24A及び24Cの間に設けられることで、電極24の影響により、素子25の特性が劣化してしまうことが抑制される。これにより、磁気抵抗効果素子MTJの特性を向上させることできる。
【0085】
補足すると、中間電極が高融点金属元素、及び高融点金属元素の化合物から選択される少なくとも1つの元素又は化合物から構成される導電体層を含まない場合、磁気抵抗効果素子に接する中間電極の上面の表面粗さは、例えば中間電極が堆積されるスイッチング素子の上面の影響により、悪化し得る。すなわち、スイッチング素子の上面が粗い場合に、当該スイッチング素子の上面の影響により、中間電極の上面の表面粗さが悪化してしまうことがある。このような場合に、例えば中間電極に含まれる炭素や窒化炭素が、磁気抵抗効果素子に混入し易くなることがある。これにより、磁気抵抗効果素子の特性が劣化する可能性がある。
【0086】
実施形態によれば、導電体24A及び24Cの間に設けられる導電体24Bは、高融点金属元素、又は高融点金属元素から構成される。また、導電体24Bは、例えば結晶構造を有する。これにより、素子23の上面が粗い場合であっても、電極24内に上述のような構成を有する導電体24Bが含まれることにより、電極24の上面の表面粗さの悪化を抑制することができる。
【0087】
また、実施形態によれば、磁気抵抗効果素子MTJと導電体24Bとの間に、アモルファス構造を有する導電体24Cが含まれる。これにより、導電体24Bの結晶構造が、磁気抵抗効果素子MTJの構造に影響を与えることが抑制される。特に、磁気抵抗効果素子MTJにおいて下地層ULとして機能する非磁性体36の構造に影響を与えることが抑制される。このことによっても、磁気抵抗効果素子MTJの特性を向上させることできる。
【0088】
また、第2製造方法のS12において、CMPを用いて電極層124Aを形成すれば、電極層124Aの上面の表面粗さが悪化することも抑制することができる。これにより、電極24の上面の表面粗さの悪化をさらに効果的に抑制することができる。
【0089】
2 その他
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…磁気記憶装置、10…メモリセルアレイ、11…ロウ選択回路、12…カラム選択回路、13…デコード回路、14…書込み回路、15…読出し回路、16…電圧生成回路、17…入出力回路、18…制御回路、20…半導体基板、21…導電体、22、24、26…電極、23、25…素子、32、34、36…非磁性体、31、33、35…強磁性体、41、42…絶縁体、122、124A、124B、124C、126…電極層、123…セレクタ層、125…磁気抵抗効果素子層、M…マスク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14