(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131684
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】二輪自動車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/024 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60C15/024 B
B60C15/024 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042099
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃木 祐紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA51
3D131BB06
3D131BC11
3D131BC13
3D131DA01
3D131HA01
3D131HA14
3D131HA24
3D131HA45
(57)【要約】
【課題】接地感を確保しながら、高い剛性感を有することができる、二輪自動車用タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤのビード部はコアとカーカスプライとを含む。ビード部の外面はシート面とフランジ面とヒール面とを備える。タイヤの子午線断面において、タイヤをリムに組まない状態でのカーカスからシート面までの厚さが、内側ビード基準線に沿った厚さhcと、外側ビード基準線に沿った厚さhaとで表され、タイヤをリムに組んだ状態でのカーカスからリムのシートまでの厚さが、内側ビード基準線に沿った厚さkcと、外側ビード基準線に沿った厚さkaとで表される。厚さhc、厚さha、厚さkc及び厚さkaが、下記式(1)を満たす。
式(1): 0.15≦(ha-ka)/ha-(hc-kc)/hc≦0.45
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムに嵌め合わされるビード部を備える、二輪自動車用タイヤであって、
前記ビード部が、周方向にのびるコアと、並列した多数のカーカスコードを含むカーカスプライとを含み、
前記カーカスプライが前記コアで折り返され、
前記ビード部の外面が、シート面と、フランジ面と、ヒール面とを備え、
前記シート面が、前記タイヤのトゥを含み、前記リムのシートに接触し、
前記フランジ面が、前記リムのフランジに接触し、
前記ヒール面が、前記シート面と前記フランジ面との間に位置し、
前記リムが正規リムであり、
前記タイヤの子午線断面において、径方向にのび、軸方向内側から前記コアに接する内側ビード基準線、そして、径方向にのび、軸方向外側から前記コアに接する外側ビード基準線を定義することで、
前記タイヤを前記リムに組まない状態での前記カーカスから前記シート面までの厚さが、前記内側ビード基準線に沿った厚さhcと、前記外側ビード基準線に沿った厚さhaとで表され、
前記タイヤを前記リムに組んだ状態での前記カーカスから前記シートまでの厚さが、前記内側ビード基準線に沿った厚さkcと、前記外側ビード基準線に沿った厚さkaとで表され、
前記厚さhc、前記厚さha、前記厚さkc及び前記厚さkaが、下記式(1)を満たす、
二輪自動車用タイヤ。
式(1): 0.15≦(ha-ka)/ha-(hc-kc)/hc≦0.45
【請求項2】
前記厚さha及び前記厚さkaが、下記式(2)を満たす、
請求項1に記載の二輪自動車用タイヤ。
式(2): 0.40≦(ha-ka)/ha≦0.85
【請求項3】
前記タイヤの子午線断面において、前記ヒール面の輪郭が円弧で表され、
前記円弧の半径が2.5mm以上7.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の二輪自動車用タイヤ。
【請求項4】
前記外側ビード基準線から前記内側ビード基準線までの軸方向距離W2の、前記フランジ面の径方向内端から径方向内向きにのびるフランジ基準線から前記タイヤのトゥまでの軸方向距離W1に対する比(W2/W1)が、0.4以上0.7以下である、
請求項1又は2に記載の二輪自動車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪自動車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
公的規格にて定められたリムのヒール径Dに対するコアの内径dwの比dw/Dと、リムのヒール径Dに対するビード部のヒール径dtの比dt/Dと、を調整して、耐リム外れ性を良好に保ちながら、リム組み作業性を改善した空気入りタイヤが提案されている(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
特許文献1が開示するタイヤのように、耐リム外れ性やリム組み作業性を重視すると、ビードの締め付け力の低下を招く恐れがある。ビードの締め付け力はタイヤの剛性感や接地感に影響する。接地感及び剛性感の両方を高めることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、接地感を確保しながら、高い剛性感を有することができる、二輪自動車用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る二輪自動車用タイヤは、リムに嵌め合わされるビード部を備える。前記ビード部は、周方向にのびるコアと、並列した多数のカーカスコードを含むカーカスプライとを含む。前記カーカスプライは前記コアで折り返される。前記ビード部の外面は、シート面と、フランジ面と、ヒール面とを備える。前記シート面は、前記タイヤのトゥを含み、前記リムのシートに接触する。前記フランジ面は、前記リムのフランジに接触する。前記ヒール面は、前記シート面と前記フランジ面との間に位置する。前記リムは正規リムである。前記タイヤの子午線断面において、径方向にのび、軸方向内側から前記コアに接する内側ビード基準線、そして、径方向にのび、軸方向外側から前記コアに接する外側ビード基準線を定義することで、前記タイヤを前記リムに組まない状態での前記カーカスから前記シート面までの厚さが、前記内側ビード基準線に沿った厚さhcと、前記外側ビード基準線に沿った厚さhaとで表され、前記タイヤを前記リムに組んだ状態での前記カーカスから前記シートまでの厚さが、前記内側ビード基準線に沿った厚さkcと、前記外側ビード基準線に沿った厚さkaとで表される。前記厚さhc、前記厚さha、前記厚さkc及び前記厚さkaが、下記式(1)を満たす。
式(1): 0.15≦(ha-ka)/ha-(hc-kc)/hc≦0.45
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接地感を確保しながら、高い剛性感を有することができる、二輪自動車用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図4】リムに組まれたタイヤの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規状態とは、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態を意味する。
【0010】
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0011】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0012】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0013】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0014】
[本発明の基礎となった知見]
タイヤのカーカスはカーカスプライを備える。カーカスプライはビードのコアで折り返される。カーカスプライは並列した多数のカーカスコードを含む。
タイヤは、リムに組まれ、内部に、例えば空気を充填して使用される。空気の充填によりタイヤは膨張する。これにより、一対のビード間を架け渡す、カーカスプライのプライ本体の張力が高まる。
リムに組んだタイヤのビード部は、リムのシートに載せられる。シートは、そのトゥ側がヒール側よりも径方向内側に位置するように軸方向に対して傾斜する。
タイヤのトレッドが路面に接地しタイヤに荷重が加わると、タイヤ各部に力が作用する。ビードのコアには、シートの傾斜の向きに沿って、軸方向内向きの力が作用する。これにより、プライ本体の張力がさらに高まる。
トレッドの特定の一部に着目すると、トレッドは、接地面への進入と、接地面からの退出とを繰り返す。トレッドが接地面に進入すると、コアに作用する力は高まる。この力は、最大値を示した後、低まる。トレッドは接地面から退出する。トレッドが接地面に進入してから退出するまでの間に、プライ本体の張力は変動する。プライ本体の張力が高まるとそれに伴いタイヤの剛性が高まる。タイヤの剛性はプライ本体の張力と連動する。タイヤの剛性は接地感と剛性感とに影響する。
本発明者は、タイヤの接地感と剛性感とを向上させるために、前述の、プライ本体の張力変動に着目し、タイヤの剛性をコントロールすることについて鋭意検討を行い、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0015】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤは、リムに嵌め合わされるビード部を備える、二輪自動車用タイヤであって、前記ビード部が、周方向にのびるコアと、並列した多数のカーカスコードを含むカーカスプライとを含み、前記カーカスプライが前記コアで折り返され、前記ビード部の外面が、シート面と、フランジ面と、ヒール面とを備え、前記シート面が、前記タイヤのトゥを含み、前記リムのシートに接触し、前記フランジ面が、前記リムのフランジに接触し、前記ヒール面が、前記シート面と前記フランジ面との間に位置し、前記リムが正規リムであり、前記タイヤの子午線断面において、径方向にのび、軸方向内側から前記コアに接する内側ビード基準線、そして、径方向にのび、軸方向外側から前記コアに接する外側ビード基準線を定義することで、前記タイヤを前記リムに組まない状態での前記カーカスから前記シート面までの厚さが、前記内側ビード基準線に沿った厚さhcと、前記外側ビード基準線に沿った厚さhaとで表され、前記タイヤを前記リムに組んだ状態での前記カーカスから前記シートまでの厚さが、前記内側ビード基準線に沿った厚さkcと、前記外側ビード基準線に沿った厚さkaとで表され、前記厚さhc、前記厚さha、前記厚さkc及び前記厚さkaが、下記式(1)を満たす。
式(1): 0.15≦(ha-ka)/ha-(hc-kc)/hc≦0.45
【0016】
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、接地感を確保しながら、高い剛性感を有することができる。
【0017】
[構成2]
接地感を確保しながら、高い剛性感を有することができる観点から、好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記厚さha及び前記厚さkaが、下記式(2)を満たす。
式(2): 0.40≦(ha-ka)/ha≦0.85
【0018】
[構成3]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤの子午線断面において、前記ヒール面の輪郭が円弧で表され、前記円弧の半径が2.5mm以上7.5mm以下である。
【0019】
[構成4]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記外側ビード基準線から前記内側ビード基準線までの軸方向距離W2の、前記フランジ面の径方向内端から径方向内向きにのびるフランジ基準線から前記タイヤのトゥまでの軸方向距離W1に対する比(W2/W1)が0.4以上0.7以下である。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、二輪自動車用タイヤである。このタイヤ2は二輪自動車の後輪に装着されるリアタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0022】
タイヤ2は、構成要素として、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、インナーライナー12、補強層14及びチェーファー16を備える。
トレッド4は路面と接地するトレッド面18を備える。トレッド面18は、タイヤ2の外面Gの一部をなす。それぞれのサイドウォール6はトレッド4に連なる。それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。カーカス10は一対のビード8の間を架け渡す。インナーライナー12はカーカス10の内側に位置する。インナーライナー12はタイヤ2の内面Nを構成する。補強層14は、トレッド4の径方向内側においてカーカス10と積層される。それぞれのチェーファー16はビード8の径方向内側に位置する。
【0023】
ビード8はコア20とエイペックス22とを備える。コア20は周方向にのびる。図示されないが、コア20は金属製のワイヤを含む。このタイヤ2では、コア20の断面形状は矩形状である。断面形状が円形状であってもよく、六角形状であってもよい。エイペックス22はコア20の径方向外側に位置する。エイペックス22は硬質な架橋ゴムからなる。エイペックス22は径方向外向きに先細りである。
【0024】
カーカス10はカーカスプライ24を備える。カーカスプライ24はそれぞれのコア20で折り返される。
カーカスプライ24は、プライ本体24aと、一対の折り返し部24bとを含む。プライ本体24aは、一対のビード8である第一ビード8と第二ビード8との間を架け渡す。それぞれの折り返し部24bは、プライ本体24aに連なりそれぞれのコア20で軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0025】
図示されないが、カーカスプライ24は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。
有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0026】
補強層14はらせん状に巻かれたバンドコードを含む。この補強層14はバンドとも称される。この補強層14が、並列した多数のベルトコードを含むベルトであってもよい。
【0027】
チェーファー16は、内側部26と、外側部28と、内側部26及び外側部28の間に位置する底部30とを備える。内側部26はタイヤ2の内面Nの一部を構成する。外側部28はタイヤ2の外面Gの一部を構成する。外側部28の外端28eは、サイドウォール6とカーカス10との間に位置し、内側部26の外端26eの径方向外側に位置する。底部30はタイヤ2の外面Gの一部を構成する。底部30は内側部26と外側部28との間を架け渡す。
【0028】
このタイヤ2では外側部28は、後述する、リムRのフランジFと接触する。底部30は、リムRのシートSに接触する。チェーファー16は、後述する、シート面32、フランジ面34及びヒール面36を構成する。
【0029】
チェーファー16はキャンバスからなる。言い換えれば、チェーファー16は布を含む。具体的には、チェーファー16は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。布の材質としては、ナイロンが挙げられる。チェーファー16が架橋ゴムからなるシートで構成されてもよい。
【0030】
図1において符号PTで示される位置はタイヤ2のトゥである。トゥPTは、タイヤ2の外面Gと内面Nとの境界である。
詳述しないが、タイヤ2は、モールドとブラダー(又は剛性中子)との間に形成されるキャビティ内において未架橋状態のタイヤ2を加圧及び加熱することで得られる。
タイヤ2の外面Gはモールド(図示されず)によって形づけられる。タイヤ2の内面は、ブラダーによって形づけられる。
【0031】
タイヤ2は、部位として、トレッド部TT、一対のビード部TB及び一対のサイドウォール部TSを備える。トレッド部TTは、路面と接地する、タイヤ2の部位であり、例えばトレッド4、補強層14及びインナーライナー12を含む。ビード部TBは、後述するリムRに嵌め合わされる、タイヤ2の部位であり、例えばビード8、カーカス10、チェーファー16及びインナーライナー12を含む。サイドウォール部TSは、トレッド部TTとビード部TBとの間を架け渡す、タイヤ2の部位であり、例えばサイドウォール6、カーカス10及びインナーライナー12を含む。本発明においてサイド部とは、サイドウォール部TS及びビード部TBからなる部分である。
【0032】
図2はリムRの一部を示す。前述したようにリムRに、ビード部TBが嵌め合わされる。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部に、例えば空気が充填される。これにより、タイヤ2の内圧が調整される。
タイヤ2はリムRに組まれる。リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム組立体とも称される。タイヤ-リム組立体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2と、を備える。
【0033】
リムRはシートSとフランジFとを備える。シートSはビード部TBを径方向内側から支持する。フランジFはビード部TBを軸方向外側から支持する。シートSとフランジFとの境界部分は、ヒールHとも称される。
図2において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。ビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0034】
図3は、
図1に示されたタイヤ2の一部を示す。
図3はビード部TBの断面を示す。
図4は、リムRとともにビード部TBの断面を示す。
図4は、
図1に示されたタイヤ2がリムRに組まれている状態を示す。
以下に説明されるビード部TBに関する構成は、二輪自動車の前輪に装着されるフロントタイヤ(図示されず)のビード部の外面にも適用される。
【0035】
図3には、タイヤ2をリムRに組んだ場合のリムRの位置を把握できるように、
図4におけるリムRの輪郭が二点鎖線LRで表されている。
図3におけるリムRの輪郭線LRの位置から明らかなように、タイヤ2をリムRに組むと、タイヤ2のリムRと接触している部分が圧縮される。
【0036】
ビード部TBはコア20とカーカスプライ24とを含む。タイヤ2においてコア20はリングを構成する。前述したように、カーカスプライ24はコア20で折り返される。
【0037】
ビード部TBの外面は、タイヤ2の外面Gの一部をなす。ビード部TBの外面は、シート面32と、フランジ面34と、ヒール面36とを備える。
【0038】
シート面32はリムRのシートSに接触する。シート面32の軸方向内端32nはタイヤ2のトゥPTである。シート面32は、タイヤ2のトゥPTを含む。シート面32の軸方向外端32gはヒール面36との境界である。
【0039】
フランジ面34はリムRのフランジFに接触する。フランジ面34の径方向内端34nはヒール面36との境界である。
図3において符号BFで示される実線は、フランジ面34の径方向内端34nから径方向内向きにのびるフランジ基準線である。フランジ基準線BFは、径方向内端34nにおいて、フランジ面34の輪郭線と接する。フランジ基準線BFに接するフランジ面34の輪郭線は、直線又は円弧である。
【0040】
ヒール面36はシート面32とフランジ面34との間に位置する。ヒール面36の輪郭線は、シート面32の軸方向外端32gにおいて、シート面32(詳細には、後述の第一シート面38)の輪郭線と接する。ヒール面36の輪郭線は、フランジ面34の径方向内端34nにおいて、フランジ面34の輪郭線と接する。
ヒール面36の輪郭は円弧で表される。言い換えれば、ヒール面36の輪郭線は円弧である。
図3において符号Rhで示される矢印は、ヒール面36の輪郭を表す円弧の半径である。
【0041】
図3において符号PSで示される位置は、シート面32上の位置である。このタイヤ2では、シート面32上の位置PSはシート基準点とも呼ばれる。
シート基準点PSはコア20の径方向内側に位置する。前述のトゥPTはシート基準点PSの径方向内側に位置する。
両矢印SFで示される長さはフランジ基準線BFからシート基準点PSまでの軸方向距離である。本発明において、軸方向距離SHは7mmである。フランジ基準線BFからの軸方向距離SHが7mmである、シート面32上の位置が、シート基準点PSである。
【0042】
このタイヤ2のシート面32は、第一シート面38及び第二シート面40からなる2つの面を備える。
図3において第一シート面38及び第二シート面40の輪郭は直線で表される。
第一シート面38はシート面32の軸方向外端32gとシート基準点PSとの間を架け渡す。第二シート面40はシート基準点PSとトゥPTとの間を架け渡す。シート基準点PSは第一シート面38と第二シート面との境界である。
【0043】
図3において、符号LCuで示される実線は内側ビード基準線である。内側ビード基準線LCuは径方向にのびる。内側ビード基準線LCuは、軸方向内側からコア20に接する。内側ビード基準線LCuは、コア20の軸方向内端を通り、径方向にのびる直線である。
【0044】
図3において、符号LCsで示される実線は外側ビード基準線である。外側ビード基準線LCsは径方向にのびる。外側ビード基準線LCsは、軸方向外側からコア20に接する。外側ビード基準線LCsは、コア20の軸方向外端を通り、径方向にのびる直線である。
【0045】
図3において両矢印hcで示される長さは、内側ビード基準線LCuに沿った、カーカス10からシート面32までの厚さである。両矢印haで示される長さは、外側ビード基準線LCsに沿った、カーカス10からシート面32までの厚さである。
図3に示されたタイヤ2は、リムRに組まれていない。厚さhc及び厚さhaは、タイヤ2をリムRに組まない状態でのカーカス10からシート面32までの厚さである。
このタイヤ2では、その子午線断面において、内側ビード基準線LCu及び外側ビード基準線LCsを定義することで、タイヤ2をリムRに組まない状態でのカーカス10からシート面32までの厚さが、内側ビード基準線LCuに沿った厚さhcと、外側ビード基準線LCsに沿った厚さhaとで表される。
【0046】
前述したように、カーカス10を構成するカーカスプライ24はカーカスコードを含み、カーカスコードはトッピングゴムで覆われる。
本発明においては、厚さhc及び厚さhaは、径方向において最も内側に位置する、カーカスコードとトッピングゴムとの境界からシート面32までの厚さで表される。厚さhc及び厚さhaには、トッピングゴムの厚さが含まれる。
前述したように、チェーファー16は、シート面32、フランジ面34及びヒール面36を構成する。厚さhc及び厚さhaには、チェーファー16の厚さも含まれる。
【0047】
図4において両矢印kcで示される長さは、内側ビード基準線LCuに沿った、カーカス10からシートSまでの厚さである。両矢印kaで示される長さは、外側ビード基準線LCsに沿った、カーカス10からシートSまでの厚さである。
図4に示されたタイヤ2はリムRに組まれている。厚さkc及び厚さkaは、タイヤ2をリムRに組んだ状態でのカーカス10からシートSまでの厚さである。
このタイヤ2では、その子午線断面において、内側ビード基準線LCu及び外側ビード基準線LCsを定義することで、タイヤ2をリムRに組んだ状態でのカーカス10からシートSまでの厚さが、内側ビード基準線LCuに沿った厚さkcと、外側ビード基準線LCsに沿った厚さkaとで表される。
厚さkc及び厚さkaは、径方向において最も内側に位置する、カーカスコードとトッピングゴムとの境界からシートSまでの厚さで表される。厚さkc及び厚さkaにも、カーカスプライ24のトッピングゴムの厚さとチェーファー16の厚さとが含まれる。
シートSにシート面32が接触するので、厚さkc及び厚さkaは、タイヤ2をリムRに組んだ状態でのカーカス10からシート面32までの厚さでもある。
【0048】
前述したように、
図3の二点鎖線LRは
図4におけるリムRの輪郭を表す。
図3において二点鎖線LRは、タイヤ2をリムRに組んだ状態でのリムRの輪郭を仮想的に表す。二点鎖線LRは、ビード部TBが載せられるリムRのシートSの仮想輪郭線である。
【0049】
図3において、両矢印dcで示される長さは、内側ビード基準線LCuに沿った、カーカス10から仮想輪郭線LRまでの厚さである。両矢印daで示される長さは、外側ビード基準線LCsに沿った、カーカス10から仮想輪郭線LRまでの厚さである。
前述したように、タイヤ2をリムRに組むと、タイヤ2のリムRと接触している部分が圧縮される。厚さdc及び厚さdaは、タイヤ2をリムRに組んだときに、圧縮される、カーカスとシート面32との間に位置するゴム成分の厚さに対応する。
前述の厚さhcと厚さkcとの差(hc-kc)が厚さdcであり、厚さhaと厚さkaとの差(ha-ka)が厚さdaである。
【0050】
このタイヤ2では、厚さhc、厚さha、厚さkc及び厚さkaは、下記式(1)を満たす。
式(1): 0.15≦(ha-ka)/ha-(hc-kc)/hc≦0.45
【0051】
差(hc-kc)すなわち厚さdcの、厚さhcに対する比(dc/hc)は、トー側でのゴム成分の圧縮率に相当する。そして差(ha-ka)すなわち厚さdaの、厚さhaに対する比(da/ha)は、ヒール側でのゴム成分の圧縮率に相当する。
【0052】
前述したように、タイヤ2のトレッド4が路面に接地しタイヤ2に荷重が加わると、ビード8のコア20には、シートSの傾斜の向きに沿って、軸方向内向きの力(以下、軸方向斜め内向きの力)が作用する。
厚さhc、厚さha、厚さkc及び厚さkaが式(1)を満たすことにより、ビード部TBの、シートSとの接触圧に関し、タイヤ2は、トー側の接触圧をヒール側のそれよりも効果的に低くすることができる。
タイヤ2に荷重が加わることでコア20に作用する力が、コア20に対して軸方向斜め内向きへの移動を促す。カーカス10(詳細には、カーカスプライ24のプライ本体24aに生じる張力が高まる。
タイヤ2のトレッド4では接地面への進入と接地面からの退出とが繰り返される。コア20に作用する力は、トレッド4が接地面に進入すると高まり、やがて最大値を示す。言い換えれば、トレッド4が接地面に進入した時点ではコア20に作用する力は小さく、この力は次第に大きくなる。
コア20に作用する力はカーカス10の張力に連動し、このカーカス10の張力はタイヤ2の剛性に連動する。
トレッド4が接地面に進入した時点では、コア20に作用する力が小さいため、カーカス10の張力によるタイヤ2の剛性の高まりが抑制される。タイヤ2は、一定の撓み量を有するので、接地感を確保できる。その後、コア20に作用する力が高まるので、カーカス10の張力が高まる。タイヤ2の剛性が高まるので、タイヤ2は高い剛性感を有することができる。
【0053】
前述の式(1)において、(ha-ka)/haが(hc-kc)/hcよりも小さい場合、タイヤ2に荷重が付加された際のコア20の動きが抑制されるので、カーカス10の張力を高めることができない。カーカス10の張力変動を利用した、タイヤ2の剛性コントロールができない。このタイヤ2は、高い剛性感を有することができない。
【0054】
前述の式(1)において、(ha-ka)/haと(hc-kc)/hcとの差が0.15未満であると、カーカス10の張力の変動幅が小さく、カーカス10の張力を十分に高めることができない。この場合も、このタイヤ2は、高い剛性感を有することができない。タイヤ2の嵌合圧が高まり、タイヤ2のリム組み性が低下することが懸念される。
このタイヤ2は、(ha-ka)/haと(hc-kc)/hcとの差が0.15以上であるので、高い剛性感を有することができる。タイヤ2の嵌合圧が高まることが抑制されるので、タイヤ2は良好なリム組み性を維持できる。この観点から、(ha-ka)/haと(hc-kc)/hcとの差は0.30以上であるのが好ましい。
【0055】
前述の式(1)において、(ha-ka)/haと(hc-kc)/hcとの差が0.45を超えると、タイヤ2に荷重が付加された際にコア20が動きやすい。カーカス10の張力が急激に高まるので、タイヤ2は接地感を確保することができない。
このタイヤ2は、(ha-ka)/haと(hc-kc)/hcとの差が0.45以下であるので、接地感を確保することができる。
【0056】
このタイヤ2は、厚さhc、厚さha、厚さkc及び厚さkaが、前述の式(1)を満たすので、接地感を確保しながら、高い剛性感を有することができる。
【0057】
このタイヤ2では、厚さha及び厚さkaが下記式(2)を満たすのが好ましい。
式(2): 0.40≦(ha-ka)/ha≦0.85
これにより、タイヤ2は、ヒール側の接触圧を効果的に高めつつ、ヒール側の接触圧とトー側の接触圧との差を拡げることができる。このタイヤ2は、カーカス10の張力の変動幅を大きくすることができ、カーカス10の張力を十分に高めることができる。このタイヤ2は、接地感及び剛性感の両方を効果的に向上できる。
比(ha-ka)/haが0.40未満であると、タイヤ2の嵌合圧は低下する一方で、タイヤ2に荷重が付加された際のコア20の動きが抑制される。カーカス10の張力を十分に高めることができない。このタイヤ2は、剛性感の向上を図るのが難しい。
このタイヤ2は、比(ha-ka)/haを0.40以上に設定することにより、カーカス10の張力を十分に高めることができ、剛性感の向上を図ることができる。この観点から、比(ha-ka)/haは0.45以上であるのがより好ましい。
比(ha-ka)/haが0.85を超えると、タイヤ2に荷重が付加された際にコア20が動きやすい。カーカス10の張力が急激に高まるので、タイヤ2は接地感の向上を図るのが難しい。リム組み性が低下する恐れもある。
このタイヤ2は、比(ha-ka)/haを0.85以下に設定することにより、カーカス10の張力が急激に高まることが抑制され、タイヤ2は接地感の向上を図ることができる。この観点から、比(ha-ka)/haは0.60以下であるのがより好ましい。
【0058】
前述したように、タイヤ2の子午線断面において、ヒール面36の輪郭は円弧で表される。この円弧の半径Rhは2.5mm以上7.5mm以下であるのが好ましい。
半径Rhが2.5mm以上に設定されることにより、ヒール側の接触圧が局所的に高まることが抑制される。ヒール側の接触圧とトー側の接触圧との差が適切に維持される。カーカスの張力が急激に高まることが抑制される。このタイヤ2は接地感の向上を図ることができる。このタイヤ2は、嵌合圧の高まりも抑制できる。このタイヤ2は良好なリム組み性も維持できる。
半径Rhが7.5mm以下に設定されることにより、ヒール側の接触圧が適切に維持される。このタイヤ2は剛性感を効果的に高めることができる。この観点から、この半径Rhは6.5mm以下であることがより好ましい。
【0059】
図3において両矢印W1で示される長さは、フランジ基準線BFからトゥPTまでの軸方向距離である。両矢印W2で示される長さは、外側ビード基準線LCsから内側ビード基準線LCuまでの軸方向距離である。
【0060】
このタイヤ2では、軸方向距離W2の、軸方向距離W1に対する比(W2/W1)は0.4以上0.7以下であるのが好ましい。
比(W2/W1)が0.4以上に設定されることにより、ヒール側の接触圧が局所的に高まることが抑制される。ヒール側の接触圧とトー側の接触圧との差が適切に維持される。カーカスの張力が急激に高まることが抑制される。このタイヤ2は接地感の向上を図ることができる。この観点から、比(W2/W1)は0.5以上であるのがより好ましい。
比(W2/W1)が0.7以下に設定されることにより、接触圧の分散が抑制される。この場合においても、ヒール側の接触圧とトー側の接触圧との差が適切に維持される。タイヤ2に荷重が付加された際のコア20の動きが促されるので、カーカス10の張力を効果的に高めることができる。このタイヤ2は、カーカス10の張力変動を利用し、剛性を効果的にコントロールできる。このタイヤ2は剛性感の向上を図ることができる。この観点から、比(W2/W1)は0.6以下であるのがより好ましい。
【0061】
このタイヤ2では、フランジ基準線BFからトゥPTまでの軸方向距離Hは10.0mm以上13.5mm以下であることが好ましい。
軸方向距離Hが10.0mm以上に設定されることにより、リムRとの密着性が向上する。このタイヤ2では、剛性感がさらに向上する。この観点から、軸方向距離Hは10.5mm以上であることがより好ましい。
軸方向距離Hが13.5mm以下に設定されることにより、嵌合圧の上昇が効果的に抑えられ、良好なリム組み性が得られる。この観点から、軸方向距離Hは12.0mm以下であることがより好ましい。
【0062】
以上説明したように、本発明によれば、接地感の低下を抑えながら、剛性感を高めることができる、二輪自動車用タイヤが得られる。
【実施例0063】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
図1に示された基本構成を備えた二輪自動車用リアタイヤ(タイヤの呼び=200/60R17)が下記の表1-2に示された仕様に基づき試作された。比較例1の仕様が従来タイヤの仕様に対応する。
フロントタイヤに市販のタイヤ(タイヤの呼び=120/70R17)を用い、各試作タイヤについて接地感及び剛性感に関する性能評価が行われた。
【0065】
[性能評価]
試作タイヤを正規リムに組み込み、空気を充填してタイヤの内圧を290kPaに調整した。このタイヤを排気量が1000ccである4サイクルのエンジンを搭載した二輪自動車の後輪に装着した。フロントタイヤの内圧は250kPaに調整された。
この二輪自動車を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させて、ライダーによる、接地感及び剛性感に関する官能評価を行った。その結果が、下記表1-2に比較例1を10とした指数で示されている。数値が大きいほど好ましい。この評価では、指数が7以上であれば、接地感又は剛性感の低下は小さく抑制されているとして許容される。
【0066】
[総合評価]
各評価で得た指数の合計を算出した。その結果が下記表1-2の「総合点」の欄に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0067】
【0068】
【0069】
表1-2に示されているように、実施例では、接地感及び剛性感が向上することが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。