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  • 特開-カボチャの保管方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131699
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】カボチャの保管方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/00 20060101AFI20240920BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240920BHJP
   A23B 7/144 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A23B7/00 101
B65D85/50 120
B65D77/00 B
B65D65/02 E
A23B7/144
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042121
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】和知 浩子
(72)【発明者】
【氏名】葉 永安
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
3E086
4B169
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA08
3E035BC02
3E035BD02
3E067AB08
3E067BA12A
3E067BB25A
3E067CA05
3E067CA08
3E067FC01
3E067GD01
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA02
3E086CA15
4B169AA03
4B169AB03
4B169CA02
4B169HA01
4B169KA07
4B169KC02
4B169KC05
4B169KD06
4B169KD07
(57)【要約】
【課題】カボチャを長期間保存した後も、外観及び味の低下が抑制されたカボチャの保管方法を提供する。
【解決手段】カボチャを準備する工程と、包装部材を準備する工程と、カボチャを、前記包装部材で包装し包装体を得る工程と、前記包装体を11℃~16℃の温度条件下、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均酸素濃度が10体積%~20体積%であり、且つ、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均二酸化炭素濃度が0体積%を超え5体積%以下である条件で保管する保管工程と、を含む、カボチャの保管方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カボチャを準備する工程と、
包装部材を準備する工程と、
カボチャを、前記包装部材で包装し包装体を得る工程と、
前記包装体を11℃~16℃の温度条件下、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均酸素濃度が10体積%~20体積%であり、且つ、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均二酸化炭素濃度が0体積%を超え5体積%以下である条件で保管する保管工程と、
を含む、カボチャの保管方法。
【請求項2】
前記保管工程において、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部のエチレン濃度の最大値が50体積ppb以下であり、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部のアセトアルデヒド濃度の最大値が50体積ppb以下である、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項3】
前記包装部材の23℃0%RHにおける酸素透過度が30,000cm/m・day・atm~500,000cm/m・day・atmであり、且つ、23℃0%RHにおける二酸化炭素透過度が100,000ml/m・day・atm~1,500,000ml/m・day・atmである、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項4】
前記包装部材は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を含む重合体を含む、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項5】
前記包装部材は、シート状部材であり、且つ、前記包装部材1mあたりに存在する最大径50μm以上の孔が1個以下である、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項6】
前記保管工程において、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均湿度が、80%RH~99%RHである、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項7】
前記包装部材の透湿度が50g/m・24hr~400g/m・24hrである、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項8】
前記包装体の保管開始後30日経過時点において、前記カボチャの果皮のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が-5以下、b値が15以下であり、前記カボチャの内部果肉のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が35以上、b値が-30以下である、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項9】
前記包装体の保管開始後30日経過時点における前記カボチャは、下記測定条件に基づくグルコース/スクロース比が0.1~0.5であり、下記測定条件に基づくフルクトース/スクロース比が0.1~0.5である、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
(測定条件)
前記包装体内部のカボチャを加熱して得たカボチャペースト1gを水で10倍希釈し、得られた希釈液を被検体として、高速液体クロマトグラフィーを用いて、グルコース量、フルクトース量、及びスクロース量を測定し、得られた各量に基づき、グルコース/スクロース比、及び、フルクトース/スクロース比を、それぞれ求める。
【請求項10】
前記包装体の保管開始後30日経過時点における前記カボチャは、下記測定条件に基づくエタノール/ヘキサナール比が200以下であり、下記測定条件に基づくアセトアルデヒド/ヘキサナール比が40以下である、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
(測定条件)
前記包装体内部のカボチャを加熱して得られたカボチャペースト1gを10mlのバイアル瓶に封入した後、ヘッドスペース法によるガスクロマトグラフィーのピーク面積から、エタノール量、ヘキサナール量、及びアセトアルデヒド量を測定し、得られた各量に基づき、エタノール/ヘキサナール比、及び、アセトアルデヒド/ヘキサナール比を、それぞれ求める。
【請求項11】
前記包装体は、面積が0.05m~0.2mである前記包装部材を用いて包装体を形成する、請求項1に記載のカボチャの保管方法。
【請求項12】
前記包装体は、前記カボチャ1個を切らない状態で、前記包装部材で包装した包装体である、請求項11に記載のカボチャの保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カボチャの保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物としてのカボチャは、保存性が良好であると考えられているが、長期間に亘り、品質維持して保管するのが困難である。上記品質の低下としては、例えば、カボチャが変色することによる外観の変化、軸部における微生物の増殖(例えば、カビの発生)、香りの減少、味の劣化等が挙げられる。
カボチャの長期保存過程における品質低下には、温度、湿度、ガス条件等の様々な要因が関わっている。従って、品質の低下を伴わない状態を維持しながらカボチャを長期に亘り保存できる保管方法について、様々な試みが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、青果物の輸送において、内部湿度が100%RHに到達した環境で24 時間経過させた際の質量増加率が8%以下である青果物用段ボールケースに梱包する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、青果物の包装用の包装袋であり、該包装袋はエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂フィルムを含み、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂フィルムのエチレンコンテントが25~49mol%であり、前記エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルムは界面活性剤を含み、前記界面活性剤の量が前記エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルムの0.3~3.5重量%であることを特徴とする青果物用包装袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-43377号公報
【特許文献2】特開2013-193759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の品質低下に関わる要因の中でも、カボチャの外観及び味を維持することは重要である。例えば、カビ等の発生のみを抑制できたとしても、色などの外観、及び、味が低下した場合、カボチャの商品価値が低下することとなり、改善が強く求められている。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、青果物の輸送における包装材料の強度、微生物の増殖抑制等について考慮はされているが、カボチャの長期保存後の外観、味等を含めた品質低下の抑制に係る着目はない。
【0008】
本開示の実施形態が解決しようとする課題は、カボチャを長期間保存した後も、外観及び味の低下が抑制されたカボチャの保管方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> カボチャを準備する工程と、包装部材を準備する工程と、カボチャを、前記包装部材で包装し包装体を得る工程と、前記包装体を11℃~16℃の温度条件下、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均酸素濃度が10体積%~20体積%であり、且つ、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均二酸化炭素濃度が0体積%を超え5体積%以下である条件で保管する保管工程と、を含む、カボチャの保管方法。
【0010】
<2> 前記保管工程において、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部のエチレン濃度の最大値が50体積ppb以下であり、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部のアセトアルデヒド濃度の最大値が50体積ppb以下である、<1>に記載のカボチャの保管方法。
<3> 前記包装部材の23℃0%RHにおける酸素透過度が30,000cm/m・day・atm~500,000cm/m・day・atmであり、且つ、23℃0%RHにおける二酸化炭素透過度が100,000ml/m・day・atm~1,500,000ml/m・day・atmである、<1>又は<2>に記載のカボチャの保管方法。
<4> 前記包装部材は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を含む重合体を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
<5> 前記包装部材は、シート状部材であり、且つ、前記包装部材1mあたりに存在する最大径50μm以上の孔が1個以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
【0011】
<6> 前記保管工程において、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均湿度が、80%RH~99%RHである、<1>~<5>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
<7>前記包装部材の透湿度が50g/m・24hr~400g/m・24hrである、<1>~<6>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
【0012】
<8> 前記包装体の保管開始後30日経過時点において、前記カボチャの果皮のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が-5以下、b値が15以下であり、前記カボチャの内部果肉のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が35以上、b値が-30以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
<9> 前記包装体の保管開始後30日経過時点における前記カボチャは、下記測定条件に基づくグルコース/スクロース比が0.1~0.5であり、下記測定条件に基づくフルクトース/スクロース比が0.1~0.5である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
(測定条件)
前記包装体内部のカボチャを加熱して得られたカボチャペースト1gを水で10倍希釈し、得られた希釈液を被検体として、高速液体クロマトグラフィーを用いて、グルコース量、フルクトース量、及びスクロース量を測定し、得られた各量に基づき、グルコース/スクロース比、及び、フルクトース/スクロース比を、それぞれ求める。
【0013】
<10> 前記包装体の保管開始後30日経過時点における前記カボチャは、下記測定条件に基づくエタノール/ヘキサナール比が200以下であり、下記測定条件に基づくアセトアルデヒド/ヘキサナール比が40以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
(測定条件)
前記包装体内部のカボチャを加熱して得られたカボチャペースト1gを10mlのバイアル瓶に封入した後、ヘッドスペース法によるガスクロマトグラフィー(GCとも称する)のピーク面積から、エタノール量、ヘキサナール量、及びアセトアルデヒド量を測定し、得られた各量に基づき、エタノール/ヘキサナール比、及び、アセトアルデヒド/ヘキサナール比を、それぞれ求める。
【0014】
<11>前記包装体は、面積が0.05m~0.2mである前記包装部材を用いて包装体を形成する、<1>~<10>のいずれか1つに記載のカボチャの保管方法。
<12>前記包装体は、前記カボチャ1個を切らない状態で、前記包装部材で包装した包装体である、<11>に記載のカボチャの保管方法。
【発明の効果】
【0015】
本開示の実施形態によれば、カボチャを長期間保存した後も、外観及び味の低下が抑制されたカボチャの保管方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は、カボチャ1個を包装部材上に配置した状態の一例を示す斜視図であり、(B)は、包装部材でカボチャ1個を切らない状態で包装した包装体の一例を示す斜視図である。
図2】カボチャ1個を包装部材であるラップで包装し、カボチャの底部近傍で包装部材をテープで封止した状態の一例を示す斜視図である。
図3】カボチャの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示のカボチャの保管方法について、詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」、「ラップ」と呼ばれているものをも包含する概念である。即ち、主として樹脂からなる厚みの薄い可撓性のフィルムとは、通常200μm以下のフィルムを指すことが多いが、本開示における「フィルム」は、これに限定されない。可撓性を有すれば、厚みが200μmを超えるより厚いシート状のもの、食品用ラップの如く、厚みが8μm~30μm程度のラップ状のものも、本開示における「フィルム」の概念に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0019】
≪カボチャの保管方法≫
本開示のカボチャの保管方法(以下、単に「本開示の保管方法」と称することがある)は、カボチャを準備する工程と、包装部材を準備する工程と、カボチャを、前記包装部材で包装し包装体を得る工程と、前記包装体を11℃~16℃の温度条件下、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均酸素濃度が10体積%~20体積%であり、且つ、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均二酸化炭素濃度が0体積%を超え5体積%以下である条件で保管する保管工程と、を含む。
【0020】
<カボチャを準備する工程>
本開示の保管方法では、まず、保管されるカボチャを準備する。
カボチャとしては、鮮度が良好であり、外皮にキズがないものを選択することが好ましい。
【0021】
<包装部材を準備する工程>
本開示の保管方法は、包装部材を準備する工程を含む。
なお、カボチャを準備する工程と、包装部材を準備する工程は、いずれが先であってもよい。
【0022】
(包装部材)
包装部材としては、カボチャの保存に耐える強度を有すれば特に制限はないが、作業性の観点からは、シート状、ラップ状を含むフィルム状の包装部材が好ましい。
なかでも、保管中の酸素透過率及び二酸化炭素透過率を本開示が目的とする適切な範囲に維持しやすいとの観点からフィルム状、特にラップ状の包装部材が好ましい。
包装部材は、後述の保管工程において、好ましいとされる諸条件を満たす物性を有するシート状の部材が好ましい。
【0023】
包装部材は、23℃0%RHにおける酸素透過度が30,000cm/m・day・atm~500,000cm/m・day・atmであり、且つ、23℃0%RHにおける二酸化炭素透過度が100,000ml/m・day・atm~1,500,000ml/m・day・atmであることが好ましい。
【0024】
上記物性を満たしやすく、強度が良好であるという観点からは、包装部材は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を含む重合体を含むことが好ましい。
前記重合体としては、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位のみを含む重合体であってもよく、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、他のモノマー由来の構成単位とを含む共重合体であってもよい。
4-メチル-1-ペンテンは嵩高い骨格を有するため、包装部材が4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位を含む重合体を含むことにより、高いガス透過性と、透明性を付与することができる。
【0025】
以下、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を含む重合体について詳細に説明する。なお、以下、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を含む重合体を、4-メチル-1-ペンテン系重合体と称することがある。
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を有していれば、特に制限はない。つまり、4-メチル-1-ペンテン系重合体とは、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体であってもよく、4-メチル-1-ペンテンと、4-メチル-1-ペンテン以外の、4-メチル-1-ペンテンと共重合可能なモノマーと、の共重合体であってもよい。従って、本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体及び4-メチル-1-ペンテン系と、その他のモノマーとの共重合体を包含する。
【0026】
上記4-メチル-1-ペンテンと共重合可能なモノマーとしては、具体的には、4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンが挙げられる。
即ち、本開示における包装部材は、4-メチル-1-ペンテンとα―オレフィンとの共重合体であることも好ましい態様の一つである。
上記教重合体はα-オレフィン由来の構造体を1種の未含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
以下、本開示の包装部材に好適な4-メチル-1-ペンテン系重合体を構成する共重合成分であるα-オレフィンについて説明する。
【0027】
上記4-メチル-1-ペンテン系重合体が教重合体である場合に含まれうるα-オレフィンとしては、例えば、直鎖状又は分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物等が挙げられる。
【0028】
直鎖状又は分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2以上20以下(好ましくは2以上10以下)の直鎖状のα-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等の、好ましくは炭素数5~20(より好ましくは5~10)の分岐状のα-オレフィンなどが挙げられる。
【0029】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキサン等の炭素数4~20(好ましくは5~15)の化合物が挙げられる。
【0030】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノ又はポリアルキルスチレンなどが挙げられる。
【0031】
共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン等の炭素数4~20(好ましくは4~10)の化合物が挙げられる。
【0032】
非共役ポリエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の炭素数5~20(好ましくは5~10)の化合物が挙げられる。
【0033】
官能化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン;ハロゲン化オレフィン;アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸等の不飽和カルボン酸類;アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミン等の不飽和アミン類;(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、上記不飽和カルボン酸類の酸無水物等の不飽和酸無水物類;上記不飽和カルボン酸類のハロゲン化物;4-エポキシ-1-ブテン、5-エポキシ-1-ペンテン、6-エポキシ-1-ヘキセン、7-エポキシ-1-ヘプテン、8-エポキシ-1-オクテン、9-エポキシ-1-ノネン、10-エポキシ-1-デセン、11-エポキシ-1-ウンデセン等の不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0034】
水酸基含有オレフィンは、水酸基を有するオレフィン系化合物であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは末端水酸化オレフィン化合物である。
末端水酸化オレフィン化合物としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化-1-ブテン、水酸化-1-ペンテン、水酸化-1-ヘキセン、水酸化-1-オクテン、水酸化-1-デセン、水酸化-1-ドデセン、水酸化-1-テトラデセン、水酸化-1-ヘキサデセン、水酸化-1-オクタデセン、水酸化-1-エイコセン等の炭素数4~20(好ましくは2~10)の直鎖状の水酸化α-オレフィン;水酸化-3-メチル-1-ブテン、水酸化-4-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-エチル-1-ペンテン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ヘキセン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、水酸化-4-エチル-1-ヘキセン、水酸化-3-エチル-1-ヘキセン等の好ましくは炭素数5~20(より好ましくは5~10)の分岐状の水酸化α-オレフィンなどが挙げられる。
【0035】
ハロゲン化オレフィンとしては、例えば、ハロゲン化-1-ブテン、ハロゲン化-1-ペンテン、ハロゲン化-1-ヘキセン、ハロゲン化-1-オクテン、ハロゲン化-1-デセン、ハロゲン化-1-ドデセン、ハロゲン化-1-テトラデセン、ハロゲン化-1-ヘキサデセン、ハロゲン化-1-オクタデセン、ハロゲン化-1-エイコセン等の炭素数4~20(好ましくは4~10)の直鎖状のハロゲン化α-オレフィン;ハロゲン化-3-メチル-1-ブテン、ハロゲン化-4-メチル-1-ペンテン、ハロゲン化-3-メチル-1-ペンテン、ハロゲン化-3-エチル-1-ペンテン、ハロゲン化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、ハロゲン化-4-メチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-4-エチル-1-ヘキセン、ハロゲン化-3-エチル-1-ヘキセン等の炭素数5~20(より好ましくは5~10)の分岐状のハロゲン化α-オレフィンなどが挙げられる。
【0036】
得られる4-メチル-1-ペンテン系重合体である包装部材の耐熱性、カット性、柔軟性、自己密着性等がより良好となるという観点から、上記α-オレフィンの炭素原子数は2~20が好ましく、3~15がより好ましく、4~15がさらに好ましい。
【0037】
4-メチル-1-ペンテン系重合体における、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の割合、即ち、4-メチル-1-ペンテン系重合体の全質量に対する4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量は、50質量%~99質量%であることが好ましい。
上記含有量が50質量%以上であることで、包装部材の密度を小さくすることができ、酸素透過性及び二酸化炭素透過性をより向上させることができる。
また、上記含有量が99質量%以下であることで、包装部材の柔軟性がより向上し、包装部材に自己密着性を付与することができる
上記同様の観点から、4-メチル-1-ペンテン系重合体の全質量に対する4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量は、60質量%~95質量%であることがより好ましく、70質量%~93質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
本開示の包装体の強度を向上させる観点、即ち、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むフィルムを本開示における包装部材として用いる場合に、上記フィルムを破れにくくする観点からは、4-メチル-1-ペンテン系重合体は結晶性の高い重合体であることが好ましい。結晶性の重合体としては、アイソタクチック構造を有する重合体、シンジオタクチック構造を有する重合体のいずれであってもよいが、特にアイソタクチック構造を有する重合体であることが好ましく、また入手も容易である。さらに、4-メチル-1-ペンテン系重合体は、フィルム状に成形でき包装用フィルムとして使用に耐える強度を有していれば、立体規則性も特に制限されない。
【0039】
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体の密度は、825kg/m~840kg/mが好ましい。
上記密度が825kg/m以上であることで、包装部材の機械的な強度を良好に保持することができる。一方、上記密度が840kg/m以下であることで、ガス透過性を良好に保つことができる。
上記同様の観点から、本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体の密度としては、830kg/m~835kg/mがより好ましい。
なお、本開示において、重合体の密度は、ASTM DM1505に準拠して測定される。
【0040】
4-メチル-1-ペンテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、0.5g/10min~50g/10minが好ましく、1g/10min~30g/10minがより好ましい。MFRが上記範囲であれば、例えば、押出成形によってフィルムを製造する場合に、比較的均一な膜厚のフィルムを得ることができる。
なお、本開示において、重合体のMFRは、ASTM D1238に準拠して260℃、2.16kg荷重にて測定される値である。
【0041】
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、オレフィン類を重合して直接製造してもよく、高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を、熱分解して製造してもよい。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体は、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法で精製されていてもよい。
【0042】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を重合反応により直接製造する場合には、例えば、4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィンの仕込み量、重合触媒の種類、重合温度、重合の際の水素添加量などを調整することにより、融点、立体規則性及び分子量等を制御してもよい。4-メチル-1-ペンテン系重合体の重合反応により製造する方法は、公知の方法であってよい。例えば、チーグラナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いた方法により製造され、好ましくはメタロセン系触媒を用いて製造され得る。
一方、4-メチル-1-ペンテン系重合体を、より高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を熱分解して製造する場合には、熱分解の温度や時間を制御することで、所望の分子量に制御することができる。4-メチル-1-ペンテン系重合体は、既述の方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。4-メチル-1-ペンテン系重合体の市販品としては、例えば、三井化学(株)製、TPX(登録商標)シート等が挙げられる。
【0043】
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体を包装部材とする場合、無延伸の重合体を包装部材として用いてもよく、1軸又は2軸延伸された重合体を包装部材としてもよい。また、本開示の包装部材は、単層であっても、複数層(多層)であってもよい。
なかでも、本開示の包装部材は、4-メチル-1-ペンテン系重合体が、2軸延伸されてなるシート状、フィルム状、又は、ラップ状の部材であることが好ましい。4-メチル-1-ペンテン系重合体を2軸延伸することにより、フィルムの実用強度及び透明性をより向上させることができる。
包装部材が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位を含むことは、例えば、13C-NMR分析により確認することができる。
【0044】
また、包装部材は、シート状部材であり、且つ、前記包装部材1mあたりに存在する最大径50μm以上の孔が1個以下であることが好ましい。
包装部材における最大径50μm以上の孔の数が上記範囲にあることで、より均一な透湿度を得ることができ、包装体内部の湿度を一定に保ちやすい。また、カボチャ特有の香り成分の揮発を防止することができる。さらに、包装部材を介して、外部からの包装体への異物の侵入を抑制でき、衛生性の観点からも好ましい。
包装部材1mあたりに最大径50μm以上の孔は1個以下であることが好ましく、孔を有しない、即ち最大径50μm以上の孔が0であることがより好ましい。
なお、包装部材における前記孔の最大径及び数は、目視及び必要に応じて公知の走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡などを使用して確認することができる。
【0045】
さらに、包装部材は、保存時の包装体内の湿度を適切な範囲に維持しやすいという観点から、透湿度が50g/m・24hr~400g/m・24hrであるシート状部材であることが好ましい。
【0046】
<包装体を得る工程>
次に、前工程で準備したカボチャを、前記包装部材で包装し、包装体を得る。
包装体の形状としては特に限定されず、例えば、包装部材上にカボチャを配置し、そのまま包んで端部の開口部を塞いで包装体とする方法、2枚の包装部材を重ね合わせ、端部をシールして袋状として、袋の内部にカボチャを収納する方法等が挙げられる。
包装体の開口部を塞ぐ手段としては、特に限定されないが、例えば、包装部材自体の自己接着性又は粘着性により固定して封止する方法、接着剤、テープ(例えば、粘着テープ、両面粘着テープ)を使う方法、開閉が可能なジッパーによる方法、開口部を折り畳んでテープ(例えば、粘着テープ、両面粘着テープ)、接着剤等で固定する方法、開口部を束ねてゴム(例えば、輪ゴム)、紐、粘着テープ、針金、結束材、クリップ等で留める方法、端部をヒートシールする方法等が挙げられる。
なお、包装体の開口部を塞ぐことで、包装体内が密封されることが好ましいが、必ずしも密封されていなくてもよい。
【0047】
カボチャの保存性向上の観点からは、面積が0.05m~0.2mである前記包装部材を用いて包装体を形成する方法が好ましい。なかでも、保存性をより向上させるという観点からは、カボチャ1個を切らない状態で、包装部材で包装した包装体とすることが好ましい。
【0048】
包装部材の厚みには、特に制限はないが、保管中の酸素透過率及び二酸化炭素透過率を良好な範囲に維持しやすく、作業性が良好であるという観点から、厚みは、8μm~30μmであることが好ましく、10μm~25μmがより好ましく、10μm~20μmがさらに好ましい。
【0049】
包装体は、複数のカボチャを包装部材で包装したものであってもよいが、カボチャの表面を1枚の包装部材で被覆し、保護できること、及び、複数のカボチャを包装した包装体に比較して、カボチャ同士の接触による傷付きの懸念がないことから、1個のカボチャを丸ごと切らずに包装部材で包装した包装体が好ましい。
これは、カボチャを切断すると表面積が増加することに伴い呼吸量が増加すること、切断面が乾燥し易くなること、切断面が腐敗し易くなること等により、長期保存における品質の維持が困難になるためである。
【0050】
一つのカボチャを包装する包装部材の面積は、0.05m~0.2mとすることができ、0.08m~0.15mであることが好ましい。
図1は、本開示の保管方法における包装体の一例を示す斜視図である。
図1(A)は、面積が0.05m~0.2mのシート状包装部材12の面上にカボチャ14が配置された状態の一例を示す斜視図であり、図1(B)は、前記包装部材12の四隅を重ね合わせ、端部をクリップである結束材16Aで塞いで包装体10とした状態を示す斜視図である。
【0051】
図2は、本開示の保管方法における包装体の他の一例を示す斜視図である。図2では、カボチャ14の軸のある頂部側から、ラップ状の包装部材12をカボチャ14に被せ、包装部材12をカボチャ14の底部近傍で互いに重なるように折りたたみ、包装部材12同士の重なり部分をテープである結束材16Bで止めて、包装体18を形成している。
図2では、テープ止め部分をカボチャ14の底部近傍の側面としているが、包装部材の重なり部分をカボチャ14の底面に形成し、底面にて重なり部分をテープ止めして、包装体を形成してもよい。
【0052】
上記のように、包装体内部のカボチャを包装部材によって、ある程度密封することができれば、カボチャを包装部材で包装して包装体を形成する方法には特に制限はない。
【0053】
包装体を得る工程では、前記好ましい厚みの包装部材を単層で用いてもよく、2層~3層の包装部材を重ね合わせてカボチャを包装し、包装体を形成してもよい。
包装部材を2層以上用いることにより、包装体の内部の酸素濃度又は二酸化炭素濃度環境をより正確に制御することができるとの付加的効果を有する。
【0054】
<包装体を保管する工程>
包装体を保管する工程は、前工程で得られた包装体を、11℃~16℃の温度条件下、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均酸素濃度が10体積%~20体積%であり、且つ、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均二酸化炭素濃度が0体積%を超え5体積%以下である条件で保管する保管工程である。
【0055】
包装体を保管する温度条件は、11℃~16℃であり、12℃~15℃であることが好ましい。
上記温度条件に包装体を保持する方法は、公知の方法を適用することができる。公知の方法としては、例えば、包装体を温度制御可能な恒温室内に保存する方法、冷蔵室内に保存する方法等が挙げられる。
【0056】
さらに、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均酸素濃度を10体積%~20体積%に維持した条件下で保管する。保管中における包装体内部の平均酸素濃度は、11体積%~20体積%であることが好ましく、13体積%~18体積%であることがより好ましい。
包装体内部の平均酸素濃度が10体積%以上であることにより、保管中のカボチャの呼吸に必要な酸素を確保でき、嫌気呼吸状態による品質の低下が抑制される。
上記酸素濃度が20体積%以下であることで、カボチャの呼吸活動がある程度抑制され、休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、特に、味などの品質低下を抑制することができる。
なお、包装材料内の酸素濃度は、ChecPoint3(MOCON Europe社製)を用いて測定できる。
【0057】
また、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均二酸化炭素濃度を、0体積%を超え5体積%以下に維持した条件下で保管する。保管中における包装体内部の平均二酸化炭素濃度は、0.5体積%~4.5体積%であることが好ましく、1体積%~4体積%であることがより好ましい。
包装体内部の平均二酸化炭素濃度が0%を超えることで、カボチャの呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
また、二酸化炭素濃度が5体積%以下であることで、カボチャの軸などの枯れの進行を良好に抑制することができる。
なお、包装体内部の二酸化炭素濃度は、ChecPoint3(MOCON Europe社製)を用いて測定できる。
【0058】
保管中の包装体内部の平均酸素濃度及び平均二酸化炭素濃度を上記範囲に維持し易いという観点から、既述の包装部材の物性、即ち、23℃0%RHにおける酸素透過度が30,000cm/m・day・atm~500,000cm/m・day・atmであり、且つ、23℃0%RHにおける二酸化炭素透過度が100,000ml/m・day・atm~1,500,000ml/m・day・atmが好ましく選択される。
【0059】
本開示において、包装部材の酸素透過度(単位:cm/(m・day・atm))、二酸化炭素透過度(単位:cm/(m・day・atm))、及び透湿度は、下記の方法により測定される。
【0060】
本開示における酸素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(例えば、GTR-30XA、GTRテック(株))を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(O)100%、試験面積15.2cmとして測定される値を採用している。
二酸化炭素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(例えば、GTR-30XA、GTRテック(株))を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(CO)100%、試験面積15.2cmとして測定される値を採用している。
【0061】
上記保管工程において、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均湿度が、80%RH~99%RHであることが好ましい。
また、この条件を達成し易いという観点から、包装部材の透湿度は50g/m・24hr~400g/m・24hrであることが好ましい。
【0062】
本開示において、包装部材の透湿度(単位:cm/(m・day・atm))は、JIS Z 0208の「防湿包装材料の透過湿度試験方法」に基づき、40℃・90RH%の条件下、透湿カップを用いて試験を行う。測定は、直径70mm以上の透湿カップに吸湿剤である塩化カルシウム(無水)を入れ、試験フィルムにより密封後、一定間隔(24時毎)の秤量操作を繰り返し、カップの質量増加から水蒸気透過度を算出することで行うことができる。
【0063】
上記の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度は、例えば、包装部材のシートの原料である樹脂材料、シートの厚み、シートの使用枚数等を選択することで、制御することができる。
【0064】
保管中の包装体内部においてエチレンガス濃度及びアセトアルデヒド濃度が、それぞれ増加することにより、カボチャの保存性に影響を与える懸念がある。
このため、保管工程においては、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部のエチレン濃度の最大値が50体積ppb以下であり、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部のアセトアルデヒド濃度の最大値が50体積ppb以下であることが好ましい。
保管工程における包装体内部のエチレンの最大濃度は、45体積ppb以下であることが好ましく、40体積ppb以下であることがより好ましい。
保管工程における包装体内部のアセトアルデヒドの最大濃度は、45体積ppb以下であることが好ましく、40体積ppb以下であることがより好ましい。
エチレン及びアセトアルデヒドの最大濃度を上記範囲に維持するため、例えば、包装体に対し、酸素透過度及び二酸化炭素透過度を上記好ましい範囲とする手段を取ることができる。
【0065】
包装体内部エチレン、及びアセトアルデヒドの濃度は、包装体内のガス5mlをサンプリングし、Sensor Gas Chromatograph 型式:SGEA-P3C(NISSHAエフアイエス(株)製)で測定することができる。
【0066】
カボチャの鮮度保持の観点からは、保管工程において、保管開始後1日経過時点から30日経過時点までの前記包装体内部の平均湿度が、80%RH~99%RHであることが好ましい。
保管工程における湿度が高すぎると、カボチャの乾燥による外観の変化を抑制することができ、保存性がより良好となる。
上記包装部材により、カボチャを包装して包装体を形成し、温度を11℃~16℃に維持することで、包装体内部の環境が安定し、包装体内部の湿度を80%RH~99%RHの条件に維持しやすくなる。
包装体内部の湿度が80%RH以上であることで、カボチャの水分減少による重量の減少が良好に抑制され、カボチャの果肉をみずみずしく維持することができる。
上記湿度が99%RH未満であることにより、微生物の増殖が抑制され、カビの発生を効果的に抑制しうるため好ましい。
本開示における湿度は、相対湿度を指し、ハイグログロン(温湿度ロガー、KNラボラトリーズ製)を包装材料の内部に設置して測定される値である。
【0067】
<保存後のカボチャの好ましい品質>
上記保管方法をとることにより、カボチャを例えば、30日間保存した後においても、カボチャの鮮度が保持され、外観、味の劣化を抑制できる。保管工程を経た後のカボチャの好ましい品質の例を挙げる。
【0068】
本開示の保管方法により保管されたカボチャは、30日間保存した後においても、包装体の内部にカビの発生が見られないことが好ましい。
また、30日間保存した後においても、カボチャの果肉に異味がないことが好ましい。カボチャの品質が低下すると、果肉に異味が生じる、アルデヒドなどに起因する異臭が発生する等の現象が生じることがあるが、本開示の保管方法により保管したカボチャは、30日間保存した後においても、異味、異臭が生じないことが好ましい。
【0069】
(カボチャの外観)
前記包装体の保管開始後30日経過時点において、前記カボチャの果皮のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が-5以下、b値が15以下であり、前記カボチャの内部果肉のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が35以上、b値が-30以下であることが好ましい。
図3は、カボチャの一例を示す平面図である。カボチャ、例えば、みやこカボチャ、エビスカボチャ等は、濃い緑色の外観を有し、果皮の濃い緑色の領域20の内部に、薄い緑色の縞模様22が放射状に形成されている。中央には軸24を有する。
カボチャが劣化すると、果皮の濃い緑色の領域20が変色し、外観が低下する。
上記カボチャの果皮の色相は、果皮の濃い緑色の領域20を測定対象としている。
【0070】
本開示の保管方法により保管開始後、30日経過時点においても、果皮のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が-5以下、b値が15以下であることが好ましい。色相のうち、a値が-5以下、b値が15以下であることにより、カボチャの外観が維持されていると評価することができる。
果皮のCIE1976(L)色空間は、分光測色計(コニカミノルタ製CM-5)を用い、光源として白色LEDプリックライトを用いて、100mm×100mmサイズのカボチャの果皮片の黄色度(YI)、及び、CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*及びb*を測定することができる。
【0071】
また、前記カボチャの内部果肉のCIE1976(L)色空間における色相のうち、a値が35以上、b値が-30以下であることで、果肉の外観の劣化が抑制されていると評価することができる。
果肉についても、カボチャを切断して得た100mm×100mmサイズのカボチャの果肉片を、果皮片と同様にして、分光測色計(コニカミノルタ製CM-5)を用い、光源として白色LEDプリックライトを用いて、100mm×100mmサイズのカボチャの果皮片の黄色度(YI)、及び、CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*及びb*を測定することができる。
【0072】
(カボチャの味-1:糖成分)
前記包装体の保管開始後30日経過時点における前記カボチャは、下記測定条件に基づくグルコース/スクロース比が0.1~0.5であり、下記測定条件に基づくフルクトース/スクロース比が0.1~0.5であることが好ましい。
カボチャの果肉について、果肉に含まれるグルコースに対するスクロースの含有量が多いこと、及び、フルクトースに対するスクロースの含有量が多いことで、甘みのある味が維持されていると評価することができる。
【0073】
(測定条件)
前記包装体内部のカボチャを加熱して得られたカボチャペースト1gを、水で10倍希釈し、得られた希釈液を被検体として、高速液体クロマトグラフィーを用いて、グルコース量、フルクトース量、及びスクロース量を測定し、得られた各量に基づき、グルコース/スクロース比、及び、フルクトース/スクロース比を、それぞれ求める。
【0074】
カボチャペーストは、保管後のカボチャの実の赤道付近の果肉片を切り取り、100gを電子レンジにて500W、1分間加熱して、柔らかくなった果肉に同量の純水を加え、乳鉢と乳棒とを用いてペースト状になるまでホモジナイズすることで作製する。
高速液体クロマトグラフィーに供する被検体は、上記で得られたカボチャペースト1gを茶こしでろ過し、固形分を均一化したろ過物を、遠心機にかけて固形分を沈殿させ、その後、遠心分離後の上澄みをろ紙でろ過し、ろ液に対し、純水で10倍に希釈して撹拌し、得られた希釈液を用いる。
【0075】
糖成分の測定は、詳細には、以下のようにして行うことができる。
上記で得た希釈液を被検体とする。
希釈液をメンブレンフィルターでろ過し、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)に供する。
-HPLC条件-
・高速GPC装置 HLC-8420(東ソー)
・移動相:HSO (5mM)
・波長:210nm
・オーブン温度:40℃
・分析時間:20分/1サンプル
・流速:0.6ml/min
【0076】
(カボチャの味-2:香味)
前記包装体の保管開始後30日経過時点における前記カボチャは、下記測定条件に基づくエタノール/ヘキサナール比が200以下であり、下記測定条件に基づくアセトアルデヒド/ヘキサナール比が40以下であることが好ましい。
カボチャの果肉において、エタノール/ヘキサナール比が200以下であり、アセトアルデヒド/ヘキサナール比が40以下であることで、カボチャの味に影響を与えるカボチャの香りが良好であると評価できる。
【0077】
(測定条件)
前記包装体内部のカボチャを加熱して得られたカボチャペースト1gを10mlのバイアル瓶に封入した後、ヘッドスペース法によるガスクロマトグラフィー(GC)のピーク面積から、エタノール量、ヘキサナール量、及びアセトアルデヒド量を測定し、得られた各量に基づき、エタノール/ヘキサナール比、及び、アセトアルデヒド/ヘキサナール比を、それぞれ求める。
カボチャの果肉から作製されるカボチャペーストは、前記スクロース等の糖の含有量の評価と同様にして作製することができる。
【0078】
糖成分の測定と同様にして得たカボチャペーストの試料をバイアル瓶に1g秤量し、すぐに封をして分析に供する。
・ガスクロマトグラフ装置:HERACLESII (アルファ・モス社製)
ヘッドスペース法
・検出器:FID(水素炎イオン化型検出器)
・カラム:MXT-5 MXT-WAX
-分析条件-
試料:搾汁により試料10mlを専用バイアルに採取後に、セプタム付き栓で密封
注入量:ヘッドスペースガス 5ml
カラム:MXT-5及びMXT-WAX
(両方とも10m×0.18mm id 0.4μm film)
キャリアガス:水素
昇圧速度 1.6kPa
オーブン温度:40℃(恒温時間5秒)~250℃
(昇温速度1.5℃/秒、恒温時間60秒)
注入口温度:210℃
トラップ温度:40℃
検出器温度:270℃
スプリット比:10対01
【0079】
本開示における包装部材は、本開示の目的を損なわない範囲内において、シートを構成する樹脂以外の樹脂、添加剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0080】
添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤、防曇剤等が挙げられる。
【実施例0081】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
なお、本実施例において、包装フィルム(ガス透過フィルム及び水蒸気透過フィルム)の透湿度、酸素透過度、及び二酸化炭素透過度は、上述の測定方法と同様の方法により測定した。
【0082】
<実施例1~実施例5、及び、比較例1~比較例6>
(包装体の製造)
表1に記載の包装部材を用いて、カボチャ1個を包装し、包装体を作製した。
表中に略称で示す包装部材の詳細を以下に示す。
(包装部材)
・TPX(TPX(登録商標)シート、三井化学株式会社製:2軸延伸された4-メチル-1-ペンテンとα―オレフィンとの共重合体であり、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量は90質量%である)
・サランラップ(登録商標)業務用、旭化成プロダクツ株式会社製:ポリ塩化ビニリデン)
・PE(ポリエチレンシート)
【0083】
実施例1~実施例5、比較例1、比較例4及び比較例5では、包装部材でカボチャを包み、開口部を結束材で密封した。比較例2のポリエチレンシートは、カボチャを包み、端部をヒートシールにて密封した。
比較例3は、カボチャを包装せず、そのままの状態で保存した。
各包装体の保存期間は、30日間とした。
なお、 各包装部材の物性(二酸化炭素透過度、酸素透過度及び透湿度、並びに、包装材料全体としての二酸化炭素透過度、酸素透過度及び透湿度)は、既述の方法で測定し、結果を表1に記載した。
【0084】
(評価)
保存を開始して30日間経過した際の、包装体内部の平均湿度、カボチャの品質を評価した。
評価の項目を以下に示す。評価方法は記述の方法で行った。
また、評価結果を表1に示す。
[果皮のCIE1976(L):カボチャの外観]
[果肉のCIE1976(L):カボチャの外観]
[果肉に含まれるグルコース/スクロース比:カボチャの味変化-1:糖成分]
[果肉に含まれるフルクトース/スクロース比:カボチャの味変化-1:糖成分]
[果肉に含まれるエタノール/ヘキサナール比:カボチャの味変化-2:香味]
[果肉に含まれるアセトアルデヒド/ヘキサナール比:カボチャの味変化-2:香味]
【0085】
上記の他、モニター10名により、目視による外観の評価、果肉の味に対する官能評価を行った。モニター10名中、9名以上が問題ないと評価したものを「A」、2名以上が問題ある評価したものを「B」とした。
[外観変化]
外観を観察し、果皮の黄変の有無、ピッティング(腐敗に起因して果皮表面に微細な穴が生じる現象)の有無を、それぞれ確認した。
[味変化]
果肉を100g電子レンジにて500W、1分間加熱したものを食して、味の変化の有無を官能評価した。なお、比較例2では、カビが発生したため、味変化の評価は行わなかった。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示す通り、実施例1~実施例5の包装体を用いたカボチャの保管方法によれば、カボチャの保存性が良好であり、保存後の外観、果肉の味についても変化が抑制できていることがわかる。また、官能評価による味の変化も認められなかった。
一方、包装部材としてポリ塩化ビニリデンシートを用いた比較例1では、果肉の味が低下し、包装部材としてポリエチレンシートを用いた比較例2では、カビの発生を抑制できなかった。
包装部材を用いない比較例3では、低温で保存しても、カボチャの外観の低下、果肉の味の低下が抑制できなかった。
同じ包装部材であるTPXシートを用いても、保管温度条件が高すぎる比較例4及び保管温度条件が低すぎる比較例5では、保管工程中の平均酸素濃度及び平均二酸化炭素濃度の少なくともいずれかが、本開示に規定する数値範囲の範囲外となり、結果として、カボチャの外観の変化、味の変化のいずれも抑制できなかった。このことから、包装部材の材料のみならず、保管工程における雰囲気温度条件、平均酸素濃度、及び平均二酸化炭素濃度の各条件を維持することが重要であることがわかる。
【符号の説明】
【0088】
10、18 包装体
12 包装部材
14 カボチャ
16A 結束材(クリップ)
16B 結束材(テープ)
20 カボチャの果皮の濃い緑色の領域
22 カボチャの果皮の薄い緑色の領域
24 カボチャの軸
図1
図2
図3