(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001317
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】割出装置
(51)【国際特許分類】
A61C 13/38 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A61C13/38
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187844
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2019200512の分割
【原出願日】2019-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】岸田 成史
(57)【要約】
【課題】外部への歯片の飛散を抑止することのできる割出装置を提供する。
【解決手段】割出装置1は、抜去歯を割るための割出装置である。割出装置1は、本体部分10と、第1の部分20と、第1の部分20と対向する第2の部分30と、第2の部分30に接するガイド部を備え、本体部分10と第1の部分20と第2の部分30で構成される開口空間を有し、第1の部分20は第1の刃21が設けられ、第2の部分30は第1の刃21と対向する第2の刃31が設けられ、ガイド部は第2の刃31を挟み、ガイド部の上面は、第2の刃31の先端よりも上方に位置し、第1の部分20は開口空間の内周面に沿った移動方向に移動し、抜去歯は開口空間で割られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜去歯を割るための割出装置であって、
本体部分と、
第1の部分と、
前記第1の部分と対向する第2の部分と、
前記第2の部分に接するガイド部を備え、
前記本体部分と前記第1の部分と前記第2の部分で構成される開口空間を有し、
前記第1の部分は第1の刃が設けられ、
前記第2の部分は前記第1の刃と対向する第2の刃が設けられ、
前記ガイド部は前記第2の刃を挟み、
前記ガイド部の上面は、前記第2の刃の先端よりも上方に位置し、
前記第1の部分は前記開口空間の内周面に沿った移動方向に移動し、
抜去歯は前記開口空間で割られる、
割出装置。
【請求項2】
前記第1の刃は前記第2の部分側から見た場合に直線状に延在し、
前記第2の刃は前記第1の部分側から見た場合に直線状に延在する、
請求項1に記載の割出装置。
【請求項3】
前記第1の刃の延在方向を法線とする断面で見た場合に、前記第1の刃の先端は鋭角を有し、
前記第2の刃の延在方向を法線とする断面で見た場合に、前記第2の刃の先端は鋭角を有する、
請求項1または2に記載の割出装置。
【請求項4】
前記第1の部分は、
前記本体部分における前記移動方向の端面と対向する面であるフランジ面を含むフランジ部分と、
前記フランジ部分から前記第2の部分側に突出し、前記開口の内周面と対向する外周面を含む突出部分とを含み、
前記第1の刃は前記突出部分における前記第2の部分と対向する面に設けられており、
前記本体部分における前記移動方向の端面から前記第2の刃の先端までの距離は、前記フランジ面から前記第1の刃の先端までの距離よりも大きい、
請求項1~3のいずれかに記載の割出装置。
【請求項5】
前記ガイド部の外周面と前記開口の内周面との係合により、前記ガイド部は前記本体部分に対して位置決めされ、
前記ガイド部と前記第2の部分との係合により、前記ガイド部は前記第2の部分に対して位置決めされる、
請求項1~4のいずれかに記載の割出装置。
【請求項6】
前記ガイド部は、
基部と、
前記基部に取り付けられ、前記第1の部分に向かって突出するブラシを含む、
請求項5に記載の割出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割出装置に関する。より特定的には、本発明は、抜去歯を割るための割出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、虫歯が深く歯髄に達している場合には、歯髄を除去する治療方法である抜随治療が行われる。また、根管内に細菌が感染した場合には、根管内の感染した歯質を除去する感染根管治療が行われる。抜随治療や感染根管治療により生じた歯の空隙は、従来、人工材料で封鎖されていた。このため、元通りに歯髄を回復させることはできなかった。
【0003】
近年、歯髄再生治療が提案されている。歯随再生治療は、抜随治療や感染根管治療により生じた歯の空隙に、幹細胞を含む成分を移植することにより、歯髄を回復させる治療法である。歯随再生治療においては、親知らずなどの不要な歯が抜去され、抜去歯の内部から歯髄が取り出される。幹細胞は、歯髄から採取されて培養された後で、患部の歯の空隙に移植される。抜去歯の内部から歯髄を取り出す際には、抜去歯は鉗子などの器具を用いて割られる。
【0004】
なお、たとえば下記特許文献1には、ピンセットおよびリーマーを用いて抜去歯から歯髄を取り出す技術が開示されている。下記非特許文献1には、マイセルおよびマレットを用いて抜去歯を歯軸方向に割断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】本間啓史他著、「化学的根管拡大後にスーパーボンド根充シーラーを用いた根管充填の封鎖性」2013年3月、北海道歯学雑誌 33(2)、p.72-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抜去歯はエナメル質や象牙質などよりなっており、高い硬度を有している。このため、抜去歯を割る作業の際には、作業者は抜去歯に対して、器具を通じて相当な力を加える必要がある。従来の方法では、抜去歯を割る作業の際に、抜去歯に加わった力により歯片が飛散するという問題があった。歯片は病原菌を含んでいる可能性があるため、抜去歯同士のコンタミネーションや汚染を引き起こす懸念があった。
【0008】
歯髄組織や取り出した幹細胞の汚染を防ぐため、抜去歯を割る作業を、内部が無菌状態とされたアイソレータの内部で行うことも考えられる。しかしこの場合には、抜去歯を割る度にアイソレータの内部から歯片を完全に除去し、アイソレータの内部を滅菌または無菌化する必要があった。その結果、作業効率が低下していた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、外部への歯片の飛散を抑止することのできる割出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に従う割出装置は、抜去歯を割るための割出装置であって、本体部分と、第1の部分と、第1の部分と対向する第2の部分と、第2の部分に接するガイド部を備え、本体部分と第1の部分と第2の部分で構成される開口空間を有し、第1の部分は第1の刃が設けられ、第2の部分は第1の刃と対向する第2の刃が設けられ、ガイド部は第2の刃を挟み、ガイド部の上面は、第2の刃の先端よりも上方に位置し、第1の部分は開口空間の内周面に沿った移動方向に移動し、抜去歯は開口空間で割られる。
【0011】
上記割出装置において好ましくは、第1の刃は第2の部分側から見た場合に直線状に延在し、第2の刃は第1の部分側から見た場合に直線状に延在する。
【0012】
上記割出装置において好ましくは、第1の刃の延在方向を法線とする断面で見た場合に、第1の刃の先端は鋭角を有し、第2の刃の延在方向を法線とする断面で見た場合に、第2の刃の先端は鋭角を有する。
【0013】
上記割出装置において好ましくは、第1の部分は、本体部分における移動方向の端面と対向する面であるフランジ面を含むフランジ部分と、フランジ部分から第2の部分側に突出し、開口の内周面と対向する外周面を含む突出部分とを含み、第1の刃は突出部分における第2の部分と対向する面に設けられており、本体部分における移動方向の端面から第2の刃の先端までの距離は、フランジ面から第1の刃の先端までの距離よりも大きい。
【0014】
上記割出装置において好ましくは、ガイド部の外周面と開口の内周面との係合により、ガイド部は本体部分に対して位置決めされ、ガイド部と第2の部分との係合により、ガイド部は第2の部分に対して位置決めされる。
【0015】
上記割出装置において好ましくは、ガイド部は、基部と、基部に取り付けられ、第1の部分に向かって突出するブラシを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部への歯片の飛散を抑止することのできる割出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態における割出装置1の構成を示す断面図である。
【
図3】上部分20および上刃21の構成を示す図である。
【
図4】下部分30および下刃31の構成を示す図である。
【
図5】2つのガイド部分40の構成を示す図である。
【
図7】2つのガイド部分40の変形例の構成を示す図である。
【
図8】本発明の一実施の形態における割出装置1の第1の変形例の構成を示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態における割出装置1の第2の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0019】
[割出装置の構成]
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態における割出装置1の構成を示す断面図である。
【0021】
図1を参照して、割出装置1(割出装置の一例)は、抜去歯を割るための装置である。割出装置1によって割られた抜去歯の切断面には、歯髄が露出する。露出した歯随の一部が取り出され、歯随から幹細胞が採取される。採取された幹細胞は培養された後で、患部の歯の空隙に移植される。割出装置1は、本体部分10(本体部分の一例)と、上部分20(第1の部分の一例)と、下部分30(第2の部分の一例)と、2つのガイド部分40(ガイド部分の一例)と、上刃21(第1の刃の一例)および下刃31(第2の刃の一例)とを備えている。本体部分10は、開口11(開口の一例)を含んでいる。上部分20には、上刃21が設けられている。上部分20は、開口11を覆っている。下部分30には、下刃31が設けられている。下刃31は、上刃21と対向している。上部分20は、矢印AR1で示すように、開口11の内周面11aに沿った移動方向に移動可能である。2つのガイド部分40は、下部分30の載置台32上に配置されている。
【0022】
図2は、本体部分10の構成を示す図である。
図2(a)は上面図である。
図2(b)は側面図である。
図2(b)では、開口11の形状が点線で示されている。
【0023】
図1および
図2を参照して、本体部分10は、筒状部分10Aと、板状部分10Bとを含んでいる。筒状部分10Aは、本体部分10の上側の部分を構成する部材である。筒状部分10Aは、板状部分10B上に設けられている。板状部分10Bは、本体部分10の下側の部分を構成する部材である。筒状部分10Aは、板状部分10Bに対して着脱可能である。筒状部分10Aを板状部分10Bに対して着脱可能とすることにより、開口11の内部の清掃および殺菌が容易になる。
【0024】
筒状部分10Aは、上端面13および下端面14と、貫通孔とを含んでいる。上端面13および下端面14の各々は、上部分20の移動方向(矢印AR1で示す方向)の端面である。上端面13および下端面14の各々は略平面である。
【0025】
開口11は、内周面11aと、底面12とを含んでいる。開口11は、筒状部分10Aの貫通孔と、板状部分10Bの上面とで構成されている。板状部分10Bの上面は、略平面であり、開口11の底面12となる。開口11は、上端面13に形成されており、底面12に達している。
【0026】
内周面11aは、上部分20の移動方向(矢印AR1で示す方向)に沿って延在している。内周面11aは、2つの弧状面111と、2つの突出面112とを含んでいる。2つの弧状面111の各々は、本体部分10の上部から見た場合(
図2(a))に、同一の円の一部となる弧の形状を有している。2つの突出面112の各々は、2つの弧状面111の各々の間に設けられている。2つの突出面112の各々は、本体部分10の上部から見た場合に、直線の形状を有している。2つの突出面112の各々は、本体部分10の上部から見た場合に、2つの弧状面111の弧が構成する円の軌跡よりも内側に突出している。
【0027】
なお、2つの弧状面111の各々と2つの突出面112の各々との境界部分113の角は、曲面加工(R加工)されていてもよい。板状部分10Bにおける筒状部分10Aが配置される箇所には、筒状部分10Aの位置決めのための溝(図示無し)が形成されていてもよい。
【0028】
図3は、上部分20および上刃21の構成を示す図である。
図3(a)は下面図である。
図3(b)は側面図である。
【0029】
図1および
図3を参照して、上部分20は、フランジ部分22と、突出部分23とを含んでいる。フランジ部分22は、フランジ面22aを含んでいる。フランジ面22aは、下方を向いた平面である。フランジ面22aは、本体部分10の上端面13と対向している。上刃21と下刃31との間に抜去歯が存在していない場合、フランジ面22aは、本体部分10の上端面13と接触している。
【0030】
突出部分23は、フランジ部分22の中央部から下方(下部分30側)に突出している。突出部分23は、外周面23aと、下面23bとを含んでいる。外周面23aは、開口11の内周面11aと対向している。上部分20が移動する場合、突出部分23の外周面23aは開口11の内周面11aに対して摺動することが好ましい。外周面23aは、開口11の内周面11aと対応する形状を有している。外周面23aと開口11の内周面11aとの係合により、上部分20は本体部分10に対して位置決めされる。
【0031】
外周面23aは、2つの弧状面231と、2つの突出面232とを含んでいる。2つの弧状面231の各々は、下方から見た場合(
図3(a))に、同一の円の一部となる弧の形状を有している。2つの突出面232の各々は、2つの弧状面231の各々の間に設けられている。2つの突出面232の各々は、下方から見た場合に、直線の形状を有している。2つの突出面232の各々は、下方から見た場合に、2つの弧状面231の弧が構成する円の軌跡よりも内側に突出している。
【0032】
なお、2つの弧状面231の各々と2つの突出面232の各々との境界部分233の角は、曲面加工(R加工)されていてもよい。
【0033】
下面23bは、下部分30と対向している。下面23bには上刃21が設けられている。上刃21は、下方から見た場合に、直線状に延在している。上刃21の延在方向を法線とする断面で見た場合(
図3(b))に、上刃21の先端21aは下方を向いており、角度θ1を有している。角度θ1は鋭角であることが好ましく、30度以上90度以下であることがより好ましい。この角度の範囲を採用することにより、上刃21の耐久性を向上しつつ抜去歯に対して効率よく力を加えることができる。
【0034】
図4は、下部分30および下刃31の構成を示す図である。
図4(a)は上面図である。
図4(b)は側面図である。
【0035】
図1および
図4を参照して、下部分30は、載置台32を含んでいる。載置台32は、本体部分10の底面12上に設けられている。載置台32は、外周面32aと、上面32bとを含んでいる。外周面32aは、開口11の内周面11aと対応する形状を有している。外周面32aと開口11の内周面11aとの係合により、下部分30は本体部分10に対して位置決めされる。
【0036】
外周面32aは、2つの弧状面321と、2つの突出面322とを含んでいる。2つの弧状面321の各々は、上方(上部分20側)から見た場合(
図4(a))に、同一の円の一部となる弧の形状を有している。2つの突出面322の各々は、2つの弧状面321の各々の間に設けられている。2つの突出面322の各々は、上方から見た場合に、直線の形状を有している。2つの突出面322の各々は、上方から見た場合に、2つの弧状面321の弧が構成する円の軌跡よりも内側に突出している。
【0037】
上面32bは、上部分20側の面である。上面32bには下刃31が設けられている。下刃31は、上方から見た場合に、直線状に延在している。下刃31の延在方向を法線とする断面で見た場合(
図4(b))に、下刃31の先端31aは上方を向いており、角度θ2を有している。角度θ2は鋭角であることが好ましく、30度以上90度以下であることがより好ましい。この角度の範囲を採用することにより、下刃31の耐久性を向上しつつ抜去歯に対して効率よく力を加えることができる。
【0038】
本体部分10における上端面13から下刃31の先端31aまでの距離を距離d1とする。フランジ面22aから上刃21の先端21aまでの距離を距離d2とする。距離d1は距離d2よりも大きいことが好ましい。これにより、上刃21と下刃31との間に抜去歯が存在していない場合に、上刃21と下刃31とが接触する事態を回避することができる。
【0039】
載置台32は、凹部33をさらに含んでいる。凹部33は、外周面32aと上面32bとの境界において、上面32bからある深さで形成されている。凹部33は突出面322に沿って形成されている。外周面32aは、凹部33において局所的に内側に凹んでいる。上面32bは、凹部33において局所的に下方に凹んでいる。
【0040】
図5は、2つのガイド部分40の構成を示す図である。
図5(a)は上面図である。
図5(b)は側面図である。
図5(b)では、下刃31が点線で示されている。
【0041】
図1および
図5を参照して、2つのガイド部分40は、上方(上部分20側)から見た場合(
図5(a))に、間隔をおいて下刃31を挟む位置に設けられている。2つのガイド部分40の各々は、外周面41と、上面42と、下面43とを含んでいる。外周面41は、2つの弧状面411と、突出面412と、刃側面413とを含んでいる。2つの弧状面411の各々は、上方(上部分20側)から見た場合(
図5(a))に、同一の円の一部となる弧の形状を有している。突出面412および刃側面413の各々は、2つの弧状面411の各々の間に設けられている。突出面412および刃側面413の各々は、上方から見た場合に、直線の形状を有している。突出面412は、上方から見た場合に、2つの弧状面331の弧が構成する円の軌跡よりも内側に突出している。2つのガイド部分40の刃側面413の各々は、下刃31を挟んで互いに対向している。なお、2つの弧状面411の各々と突出面412との境界部分414の角は、曲面加工(R加工)されていてもよい。
【0042】
上面42は、上部分20と対向している。上面42は、ガイド部分40における上部分20側の端部である。上面42は、下刃31の先端31aよりも上方に位置しており、下刃31の先端31aよりも上部分20に近い。これにより、下刃31上に抜去歯を安定して配置することができる。下面43は、載置台32の上面32bと接触している。
【0043】
2つのガイド部分40の各々は、凸部46をさらに含んでいる。凸部46は、下面43と突出面412との境界において、下面43から下方に突出している。凸部46は突出面412に沿って形成されている。下面43は、凸部46において局所的に下方に突出している。凸部46は、下部分30の凹部33に対応した形状を有している。
【0044】
2つのガイド部分40の各々の外周面41と、開口11の内周面11aとの係合により、2つのガイド部分40の各々は本体部分10に対して位置決めされる。また、2つのガイド部分40の各々の凸部46と、下部分30の凹部33との係合により、2つのガイド部分40の各々は、下部分30に対して位置決めされる。
【0045】
なお、2つのガイド部分40の複数の組が準備されてもよい。2つのガイド部分40の複数の組の各々は、その間隔sが互いに異なっている。これにより、抜去歯のサイズに応じて、適切な間隔sを有する2つのガイド部分を選択することができ、抜去歯を確実に支持することができる。
【0046】
また、2つのガイド部分40は、下部分30と一体化していてもよい。これにより、割出装置1の操作性が向上し、部品点数の削減を図ることができる。2つのガイド部分40と下部分30とが一体化している場合にも、2つのガイド部分40および下部分30が一体化した構造の複数の組が準備され、一体化した構造の複数の組の中から適切な間隔sを有するものが選択されてもよい。
【0047】
上刃21および下刃31の各々は、200以上のビッカース硬さ(HV)を有していることが好ましい。ビッカース硬さについては、JIS(Japanese Industrial Standards)に規定されるビッカース硬さ試験により評価される。歯のエナメル質の硬度は200程度のビッカース硬さを有している。このため、上刃21および下刃31の各々のビッカース硬さを200以上とすることにより、上刃21および下刃31を歯のエナメル質と同程度以上の硬さにすることができる。その結果、刃こぼれを抑止することができる。また、上刃21および下刃31の各々がステンレス鋼よりなる場合、そのビッカース硬さの最大値は約800である。このため、上刃21および下刃31の各々のビッカース硬さは800以下であることが好ましい。特に上刃21および下刃31の各々のビッカース硬さを400以下とすることにより、上刃21および下刃31の加工性を担保することができる。
【0048】
上刃21および下刃31は、たとえば、ステンレス鋼、ハステロイ、またはチタン合金などよりなっている。
【0049】
特に上刃21および下刃31は、たとえばJISに規定されるSUS201、SUS202、SUS301、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS316N、SUS316LN、SUSXM15J1、SUS329J1、SUS447J1、SUSXM27、SUS420J2、SUS420F、SUS431、SUS630、またはSUS631などよりなっていることが好ましい。また上刃21および下刃31は、たとえばハステロイ、α-βチタン合金(Ti-6Al-4V)、またはβチタン合金(Ti-15-3-3-3)などよりなっていることが好ましい。ステンレス鋼は費用や加工性などの観点で特に好ましい。上刃21および下刃31の各々は、同一の材料よりなっていてもよいし、互いに異なる材料よりなっていてもよい。
【0050】
上刃21および下刃31以外の割出装置1の部材は、たとえばステンレス鋼やプラスチックなどよりなっている。上刃21および下刃31と、上刃21および下刃31以外の割出装置1の部材とは、同一の材料よりなっていてもよいし、互いに異なる材料よりなっていてもよい。
【0051】
なお、割出装置1は、次のように規定することも可能である。割出装置1は、抜去歯を割るための割出装置であって、筐体91(筐体の一例)と、筐体91の内部で抜去歯を割るための割り部92(割り部の一例)とを備える。割り部92は、上刃21と、上刃21と対向する下刃31とを含んでいる。筐体91は、開口11を含む本体部分10と、上刃21が設けられ、開口11を覆う上部分20と、下刃31が設けられた下部分30とを含んでいる。上部分20は、開口11の内周面に沿った移動方向に移動可能である。
【0052】
[割出装置の使用方法]
【0053】
【0054】
図6(a)を参照して、割出装置1を用いて抜去歯は次の方法で割られる。始めに、無菌状態とされたアイソレータ(図示無し)内に割出装置1が配置される。次に、本体部分10の開口11から上部分20が除去される。これにより、開口11が露出する。
【0055】
続いて、開口11内の下刃31上に抜去歯THが配置される。たとえば抜去歯THの歯軸(歯根から歯冠に向かう方向)が下刃31の延在方向と一致するように、抜去歯THは配置される。抜去歯THは2つのガイド部分40と下刃31との3箇所で支持される。
【0056】
次に、本体部分10の開口11に上部分20が取り付けられる。上部分20は自重により下方に移動する。上部分20は、上刃21が抜去歯THの上面に接触する位置で停止する。
【0057】
次に、プレス機(図示無し)を用いて上部分20と本体部分10とをそれぞれ上方および下方から押圧する。これにより、割出装置1は上下方向に圧縮力Fが加えられる。圧縮力Fは上刃21および下刃31を通じて抜去歯THに加えられる。なお、プレス機を用いた押圧の代わりに、油圧ジャッキによる押圧が行われてもよいし、ハンマーを上部分20に叩きつけてもよい。
【0058】
図6(b)を参照して、抜去歯THは、圧縮力Fを受けて割れる。抜去歯THが割れる際に発生した歯片PLは、本体部分10、上部分20、およびガイド部分40で構成される空間(上部分20により覆われた開口11の内部空間)の内部のみに飛散する。歯片PLは、この空間の外部には飛散しない。
【0059】
次に、本体部分10の開口11から上部分20が除去される。これにより、開口11および割れた抜去歯THが露出する。続いて、割れた抜去歯THが開口11から取り出され、割れた抜去歯から歯髄が取り出される。その後、割出装置1が清掃され、滅菌される。滅菌の方法としては、オートクレーブや、過酸化水素ガスを用いた方法などが採用されてもよい。
【0060】
[変形例]
【0061】
図7は、2つのガイド部分40の変形例の構成を示す図である。
図7(a)は上面図である。
図7(b)は側面図である。
図7(b)では、下刃31が点線で示されている。
【0062】
図7を参照して、本変形例において、2つのガイド部分40の各々は、基部44と、ブラシ45とを含んでいる。基部44は、
図5に示すガイド部分40とほぼ同様の構成を有している。ブラシ45は、基部44の上面44a全体にわたって均一な密度で取り付けられている。ブラシ45は、上方に(上部分20に向かって)突出している。ブラシ45は、たとえば繊維や金属などよりなっている。ブラシ45によって、抜去歯に加わる衝撃を緩和することができる。基部44はたとえば樹脂よりなっている。ブラシ45はたとえばPBT(Polybutylene Terephthalate)よりなっている。
【0063】
ガイド部分40の各々の上端部(上部分20側の端部)45aに着目する。上端部45aから上部分20までの距離であって、上部分20の移動方向(矢印AR1で示す方向)に沿った距離d3は、上端部45aが下刃31の先端31aから離れるに従って減少していることが好ましい。これにより、抜去歯の大きさにかかわらず抜去歯を下刃31上で安定的に支持することができる。
【0064】
[実施の形態の効果]
【0065】
上述の実施の形態によれば、本体部分10と上部分20と下部分30とで構成される開口11の内部空間において、抜去歯が割られる。これにより、歯片が飛散する範囲を開口11の内部空間に制限することができる。その結果、割出装置1の外部への歯片の飛散を抑止することができる。また、抜去歯を割る際に、小さいスペースで容易に作業することができる。
【0066】
また、2つのガイド部分40を設けることにより、抜去歯を安定的に支持することができる。その結果、抜去歯を所望の切断線で容易に割ることができる。
【0067】
[その他]
【0068】
2つのガイド部分は、
図5に示す構成を有するものの他、下部分30上に配置されたガーゼやシリコーンパテなどであってもよい。また2つのガイド部分は、水平方向から抜去歯を挟み込むものであってもよい。
【0069】
本発明の割出装置は、抜去歯を割るための割出装置であって、筐体と、この筐体の内部で抜去歯を割るための割り部とを備えていればよい。割出装置は、上述の実施の形態の構成の他、次の第1および第2の変形例のような構成を有していてもよい。
【0070】
図8は、本発明の一実施の形態における割出装置1の第1の変形例の構成を示す断面図である。
【0071】
図8を参照して、本変形例の割出装置1は、筐体91(筐体の一例)と、割り部92(割り部の一例)とを含んでいる。割り部92は、筐体91の内部で抜去歯THを割るためのものである。
【0072】
筐体91は、筐体本体91aと、扉91bとを含んでいる。筐体本体91aはたとえば直方体の形状を有しており、穴91c、内部空間91d、開口91e、およびガイド91fを含んでいる。穴91cは、筐体本体91aの上部に設けられている。穴91cの内周面には、ねじ溝が形成されている。開口91eは、筐体本体91aの側面に設けられている。ガイド91fは、筐体本体91aの内部空間91dの上面から下刃92d上面付近まで延在している。ガイド91fは、上刃92cの
図8中左右の側面を覆っている。扉91bは、開口91eに設けられている。扉91bは開閉可能である。扉91bが閉じた状態では、開口91eは扉91bで覆われ、内部空間91dは外部から実質的に遮蔽される。扉91bが開いた状態では、内部空間91dは開口91eを通じて外部に露出される。なお、扉91bを閉じた際の内部空間91dの圧力増加を低減するために、筐体91は筐体本体91aの内部と外部とを接続する穴(図示無し)をさらに含んでいてもよい。
【0073】
割り部92は、ねじ部92aと、ハンドル92bと、上刃92cと、下刃92dと、ジョイント92eとを含んでいる。ねじ部92aの外周面には、ねじ溝が形成されている。ねじ部92aは穴91cにねじ作用ではめ込まれている。ねじ部92aは穴91cを貫通している。ハンドル92bは、筐体91の外部であって、ねじ部92aの上端部に取り付けられている。上刃92cは、ねじ部92aの下端部に設けられている。上刃92cは、ジョイント92eを介してねじ部92aに取り付けられている。ジョイント92eは、ねじ部92aが回転した場合に、上刃92cを回転させずにねじ部92aのみを回転させる。ハンドル92bが反時計回りに回転された場合には、上刃92cは下降して下刃92dに近づく。ハンドル92bが時計回りに回転された場合には、上刃92cは上昇して下刃92dから遠ざかる。下刃92dは、筐体本体91aにおける内部空間91dの底面に設けられている。下刃92dは、上刃92cと対向している。上刃92cおよび下刃92dの各々は、紙面に垂直な方向に直線状に延在している。
【0074】
本変形例の割出装置1を用いて抜去歯は次の方法で割られる。始めに、無菌状態とされたアイソレータ(図示無し)内に割出装置1が配置される。次に、扉91bが開かれ、開口91eを通じて下刃92d上に抜去歯THが配置される。このとき、たとえば抜去歯THの歯軸(歯根から歯冠に向かう方向)が下刃92dの延在方向と一致するように、抜去歯THは配置される。次に、扉91bが閉じられる。
【0075】
次に、ハンドル92bを反時計回りに回転させることにより、上刃92cを下降させる。万が一、上刃92cがねじ部92aからの回転力を受けて回転しようとした場合には、上刃92cはガイド91fに引っかかる。これにより、ねじ部92aの回転とともに上刃92cが回転することが確実に防止される。下刃92dに対して上刃92cが正確に位置決めされる。上刃92cが抜去歯THに接触した後も、ハンドル92bは反時計回りに回転される。これにより、圧縮力が上刃92cおよび下刃92dを通じて抜去歯THに加えられる。
【0076】
抜去歯THは、この圧縮力を受けて割れる。抜去歯THが割れる際に発生した歯片は、内部空間91dのみに飛散する。歯片は、筐体91の外部には飛散しない。
【0077】
次に、扉91bが開かれる。これにより、割れた抜去歯THが露出する。続いて、割れた抜去歯THが開口91eから取り出され、割れた抜去歯から歯髄が取り出される。その後、割出装置1が清掃され、滅菌される。
【0078】
図9は、本発明の一実施の形態における割出装置1の第2の変形例の構成を示す断面図である。
【0079】
図9を参照して、本変形例の割出装置1において、割り部92は、棒状部92fと、上刃92cと、下刃92dと、ラック92gと、ピニオン92hとを含んでいる。棒状部92fは、穴91cを貫通している。上刃92cは、棒状部92fの下端部に設けられている。棒状部92fにおける筐体91の外部に存在する部分の外周面には、ラック92gが形成されている。ピニオン92hはラック92gと噛み合っている。ピニオン92hは、モータ(図示無し)などにより回転駆動される。ピニオン92hが反時計回りに回転された場合には、上刃92cは下降して下刃92dに近づく。ピニオン92hが時計回りに回転された場合には、上刃92cは上昇して下刃92dから遠ざかる。下刃92dは、筐体本体91aにおける内部空間91dの底面に設けられている。下刃92dは、上刃92cと対向している。上刃92cおよび下刃92dの各々は、紙面に垂直な方向に直線状に延在している。
【0080】
本変形例の割出装置1を用いて抜去歯は次の方法で割られる。始めに、無菌状態とされたアイソレータ(図示無し)内に割出装置1が配置される。次に、扉91bが開かれ、開口91eを通じて下刃92d上に抜去歯THが配置される。このとき、たとえば抜去歯THの歯軸(歯根から歯冠に向かう方向)が下刃92dの延在方向と一致するように、抜去歯THは配置される。次に、扉91bが閉じられる。
【0081】
次に、ピニオン92hを反時計回りに回転させることにより、上刃92cを下降させる。上刃92cが抜去歯THに接触した後も、ピニオン92hは反時計回りに回転される。これにより、圧縮力が上刃92cおよび下刃92dを通じて抜去歯THに加えられる。
【0082】
抜去歯THは、この圧縮力を受けて割れる。抜去歯THが割れる際に発生した歯片は、内部空間91dのみに飛散する。歯片は、筐体91の外部には飛散しない。
【0083】
次に、扉91bが開かれる。これにより、割れた抜去歯THが露出する。続いて、割れた抜去歯THが開口91eから取り出され、割れた抜去歯から歯髄が取り出される。その後、割出装置1が清掃され、滅菌される。
【0084】
本変形例における上述以外の割出装置1の構成は、第1の変形例の場合と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0085】
第1および第2の変形例によれば、筐体91の内部で抜去歯THが割られるため、割出装置1の外部への歯片の飛散を抑止することができる。また、抜去歯THを割る際に、小さいスペースで容易に作業することができる。
【0086】
なお、他の変形例として、割出装置は、袋状の筐体と、筐体の内部で抜去歯を割るための割り部とを備えたものであってもよい。割り部は鉗子などよりなっていてもよい。
【0087】
上述の実施の形態および変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0088】
上述の実施の形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 割出装置(割出装置の一例)
10 本体部分(本体部分の一例)
10A 筒状部分
10B 板状部分
11 本体部分の開口(開口の一例)
11a 開口の内周面
12 開口の底面
13 本体部分の上端面
14 本体部分の下端面
20 上部分(第1の部分の一例)
21,92c 上刃(第1の刃の一例)
21a 上刃の先端
22 フランジ部分
22a フランジ面
23 突出部分
23a 突出部分の外周面
23b 突出部分の下面
30 下部分(第2の部分の一例)
31,92d 下刃(第2の刃の一例)
31a 下刃の先端
32 載置台
32a 載置台の外周面
32b 載置台の上面
33 載置台の凹部
40 ガイド部分(ガイド部分の一例)
41 ガイド部分の外周面
42 ガイド部分の上面
43 ガイド部分の下面
44 ガイド部分の基部
44a 基部の上面
45 ガイド部分のブラシ
45a ブラシの上端部
46 ガイド部分の凸部
91 筐体(筐体の一例)
91a 筐体本体
91b 扉
91c 穴
91d 筐体本体の内部空間
91e 筐体本体の開口
91f ガイド
92 割り部(割り部の一例)
92a ねじ部
92b ハンドル
92e ジョイント
92f 棒状部
92g ラック
92h ピニオン
111,231,321,411 弧状面
112,232,322,412 突出面
113,233,323,414 境界部分
413 刃側面
F 圧縮力
PL 歯片
TH 抜去歯