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特開2024-131708発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物、及び軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131708
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物、及び軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240920BHJP
   C08F 214/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEV
C08F214/06
C08L71/02
C08L27/06
C08K5/29
C08K5/10
C08K3/26
C08K5/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042136
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】桑畑 光良
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F074AA12
4F074AA35
4F074AA36
4F074AA76
4F074AA98
4F074AD11
4F074AG02
4F074AG03
4F074BA00
4F074BB10
4F074CA21
4F074CA29
4F074CC06X
4F074CC06Y
4F074DA02
4F074DA04
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA17
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA37
4J002AE053
4J002BD051
4J002BD091
4J002CD003
4J002CH002
4J002DE217
4J002DE227
4J002DF037
4J002EB026
4J002EH096
4J002EH146
4J002EQ017
4J002EQ027
4J002ER008
4J002EU187
4J002EW046
4J002FD023
4J002FD026
4J002FD148
4J002FD327
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J100AC03P
4J100AL09Q
4J100CA04
4J100FA21
4J100JA67
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セル緻密性が高く、柔軟性及び表面平滑性が良好な軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体、並びに該発泡体を提供する樹脂組成物。
【解決手段】樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、環状分子に水酸基を少なくとも1個有するポリロタキサンB、水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有する架橋剤C、可塑剤及び発泡剤を含み、塩化ビニル樹脂は水酸基含有モノマー単位を含む塩化ビニル樹脂Aを含み、樹脂組成物において、下式で示される水酸基係数が15~500である。
水酸基係数=[Wi×(Wj×Nj/Hj)×Wk]/10000
Wi=塩化ビニル樹脂中の水酸基含有モノマー単位の含有量(重量%)
Wj=塩化ビニル樹脂100重量部に対するポリロタキサンBの配合量(重量部)
Nj=ポリロタキサンBの重量平均分子量
Hj=ポリロタキサンBの水酸基価(mgKOH/g)
Wk=塩化ビニル樹脂100重量部に対する可塑剤の配合量(重量部)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂、可塑剤、発泡剤、及び架橋剤を含む発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、
前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物は、さらにポリロタキサンを含み、
前記塩化ビニル樹脂は、水酸基含有モノマー単位を含む塩化ビニル樹脂Aを含み、
前記ポリロタキサンは、環状分子に水酸基を少なくとも1個有するポリロタキサンBを含み、
前記架橋剤は、水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有する架橋剤Cを含み、
前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物において、下記数式1で示される水酸基係数が15~500である、発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[数式1]
水酸基係数=[Wi×(Wj×Nj/Hj)×Wk]/10000
Wi=塩化ビニル樹脂中の水酸基含有モノマー単位の含有量(重量%)
Wj=塩化ビニル樹脂100重量部に対するポリロタキサンBの配合量(重量部)
Nj=ポリロタキサンBの重量平均分子量
Hj=ポリロタキサンBの水酸基価(mgKOH/g)
Wk=塩化ビニル樹脂100重量部に対する可塑剤の配合量(重量部)
【請求項2】
ポリロタキサンBは、重量平均分子量が15~75万である、請求項1に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、ポリロタキサンBを1~11重量部含む、請求項1に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、前記可塑剤を30~60重量部含む、請求項1に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項5】
架橋剤Cは、イソシアネート系化合物を含む、請求項1に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項6】
前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、架橋剤Cを1~10重量部含む、請求項5に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項7】
前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、前記発泡剤を5~20重量部含む、請求項1に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項8】
前記塩化ビニル樹脂は、水酸基含有モノマー単位を0.5~10重量%含む、請求項1に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物で形成された軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、架橋剤及び発泡剤を含む発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物、及び軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル発泡成形体は古くから知られているが、ウェルダー加工が可能で再生利用が可能であることや、着火しにくくクッション性を有することで知られ、緩衝材、家具や自動車内装材等に用いられている。このような塩化ビニル発泡成形体は、一般的に、塩化ビニル樹脂、可塑剤、架橋剤及び発泡剤を含む樹脂組成物で形成される。例えば、特許文献1には、分子内に水酸基を含有する塩化ビニル共重合体、可塑剤、架橋剤、化学発泡剤、及び熱安定剤を含む高発泡性ポリ塩化ビニル系組成物を用いたポリ塩化ビニル発泡成形体が記載されている。特許文献2には、分子内に水酸基を含有する塩化ビニル共重合体、可塑剤、化学発泡剤、ブロック化ポリイソシアネート系架橋剤、及び安定剤を含有する発泡性組成物を用いたポリ塩化ビニル系架橋発泡成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭50-123163号公報
【特許文献2】特開平6-256554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のポリ塩化ビニル発泡成形体は、セル緻密性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題を解決するため、セル緻密性が高く、柔軟性及び表面平滑性が良好である軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体を得ることができる発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物、及び軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1以上の実施形態は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、発泡剤、及び架橋剤を含む発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物は、さらにポリロタキサンを含み、前記塩化ビニル樹脂は、水酸基含有モノマー単位を含む塩化ビニル樹脂Aを含み、前記ポリロタキサンは、環状分子に水酸基を少なくとも1個有するポリロタキサンBを含み、前記架橋剤は、水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有する架橋剤Cを含み、前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物において、下記数式1で示される水酸基係数が15~500である発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物に関する。
[数式1]
水酸基係数=[Wi×(Wj×Nj/Hj)×Wk]/10000
Wi=塩化ビニル樹脂中の水酸基含有モノマー単位の含有量(重量%)
Wj=塩化ビニル樹脂100重量部に対するポリロタキサンBの配合量(重量部)
Nj=ポリロタキサンBの重量平均分子量
Hj=ポリロタキサンBの水酸基価(mgKOH/g)
Wk=塩化ビニル樹脂100重量部に対する可塑剤の配合量(重量部)
【0007】
本発明の1以上の実施形態は、前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物で形成された軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セル緻密性が高く、柔軟性及び表面平滑性が良好である軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体を得ることができる発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、セル緻密性が高く、柔軟性及び表面平滑性が良好である軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者らは、上述した問題を解決するために検討を重ねた。その結果、発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物において、水酸基含有モノマー単位を含む塩化ビニル樹脂A、環状分子に水酸基を少なくとも1個有するポリロタキサンB、水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有する架橋剤Cを用いるとともに、塩化ビニル樹脂の水酸基含有モノマー単位の含有量、塩化ビニル樹脂に対する可塑剤及びポリロタキサンBの配合量、並びにポリロタキサンBの重量平均分子量及び水酸基価にて決定される、具体的には下記数式1にて算出される水酸基係数(以下において、単に「水酸基係数」とも記す。)を所定の範囲にすることで、該発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物で形成した軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体は、セル緻密性が高く、柔軟性及び表面平滑性が良好になることを見出した。
【0010】
[数式1]
水酸基係数=[Wi×(Wj×Nj/Hj)×Wk]/10000
Wi=塩化ビニル樹脂の水酸基含有モノマー単位の含有量(重量%)
Wj=塩化ビニル樹脂100重量部に対するポリロタキサンBの配合量(重量部)
Nj=ポリロタキサンBの重量平均分子量
Hj=ポリロタキサンBの水酸基価(mgKOH/g)
Wk=塩化ビニル樹脂100重量部に対する可塑剤の配合量(重量部)
【0011】
本明細書において、数式1にて算出される水酸基係数は、セル緻密性に関連する係数であり、水酸基係数が所定範囲を外れる場合、具体的には、低い場合及び高い場合のいずれの場合でも、軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体のセル緻密性が劣る。
【0012】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「X~Y」という数値範囲は、X及びYという両端値を含む範囲であり、「X以上Y以下」と同じ範囲である。また、その範囲内にある任意の数やその範囲内に含まれる任意の範囲が、具体的に開示される。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0013】
(発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の1以上の実施形態の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物(以下において、単に樹脂組成物とも記す。)は、塩化ビニル樹脂、ポリロタキサン、架橋剤、発泡剤、及び可塑剤を含み、塩化ビニル樹脂は水酸基含有モノマー単位を含む塩化ビニル樹脂Aを含み、ポリロタキサンは環状分子に水酸基を少なくとも1個有するポリロタキサンBを含み、架橋剤は水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有する架橋剤Cを含む。本発明の1以上の実施形態の樹脂組成物の水酸基係数は、15~500である必要がある。前記水酸基係数は、セル緻密性に関連する係数であり、水酸基係数が15未満及び500を超えるいずれの場合でも、軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体のセル緻密性が劣る。セル緻密性、柔軟性及び表面平滑性の観点から、前記水酸基係数は、18~450であることが好ましく、20~350であることがより好ましく、30~300であることがさらに好ましく、40~250であることが特に好ましい。
【0014】
塩化ビニル樹脂Aは、水酸基含有モノマー単位を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、塩化ビニルと水酸基含有モノマーの共重合体を好適に用いることができる。前記水酸基含有モノマーは、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、及び(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル等が挙げらる。前記水酸基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。本明細書において、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸及びアクリル酸からなる群から選ばれる一種以上を含む。
【0015】
塩化ビニル樹脂Aは、架橋性、並びに架橋発泡成形体のセル構造及び表面平滑性の観点から、水酸基含有モノマー単位を0.5~10重量%含むことが好ましく、0.8~8重量%含むことがより好ましく、1.0~7.5重量%含むことがさらに好ましく、1.5~6.5重量%含むことが特に好ましい。本明細書において、塩化ビニル系樹脂Aの水酸基含有モノマー単位の含有量は、フーリエ変換赤外分光法(FT/IR)にて測定することができ、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0016】
塩化ビニル樹脂Aは、塩化ビニルと水酸基含有モノマーに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のモノマーを含んでもよい。他のモノマーとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及びステアリン酸ビニル等のビニルエステル系モノマーエチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキル基を有するビニルエーテル化合物;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物;ジアリルフタレート等の架橋性モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩化ビニル樹脂Aは、水酸基含有モノマー以外の他のモノマー単位を0~20重量%、又は0~15重量%含んでもよい。
【0017】
前記樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル樹脂Aに加えて、分子内に水酸基含有モノマー単位を含まない塩化ビニル樹脂Fを含んでもよい。塩化ビニル樹脂Fは、塩化ビニルの単独重合体でもよく、塩化ビニルと上述した水酸基含有モノマー以外の他のモノマーとの共重合体でもよい。
【0018】
前記塩化ビニル樹脂のK値は、特に制限はないが、例えば、58~77でもよく、66~75でもよい。本明細書において、塩化ビニル樹脂のK値は、JIS K 7367-2:1999に準じて測定することができる。
【0019】
前記塩化ビニル樹脂は、公知の重合方法、例えば、懸濁重合、微細懸濁重合、乳化重合、塊状重合等のいずれの重合方法で製造することができる。前記塩化ビニル樹脂は、製造の容易さ及びコストの観点から、懸濁重合で製造することが好ましい。懸濁重合の場合、例えば、水系媒体中に、塩化ビニル及び他のモノマー(以下、塩化ビニル系モノマーとも総称する。)を分散し、重合を行う。重合の際、分散剤及び油溶性重合開始剤等が用いられる。分散剤は、例えば、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。前記油溶性開始剤としては、例えば、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤等が挙げられる。有機過酸化物系開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t-オクチルパーオキシネオデカノエート(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネートとも称される。)等のパーオキシエステル類等が挙げられる。
【0020】
前記樹脂組成物が、塩化ビニル樹脂として、二種以上の塩化ビニル樹脂を含む場合は、前記数式1において、塩化ビニル樹脂中の水酸基モノマー単位の含有量とは、全塩化ビニル樹脂中の水酸基モノマー単位の含有量となる。
【0021】
ポリロタキサンBは、環状分子に水酸基を少なくとも1個有するものであればよく、特に制限はない。ポリロタキサンBは、直鎖状分子、複数の環状分子及び封鎖基(ブロック基とも称される。)からなり、複数の環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通した構造を有し、かつ、直鎖状分子の両末端には、環状分子が直鎖状分子から脱離しないように嵩高いブロック基を有する。
【0022】
前記直鎖状分子は、環状分子の開口部に貫通し、封鎖基と反応し得る官能基を有する分子であればよく、特に制限はない。前記直鎖状分子としては、例えば、ポリアルキレングリコール類、ポリオレフィン類、末端水酸基ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテル、末端アミノ基鎖状ポリマー類、末端官能性ポリシロキサン類等が挙げられる。前記ポリアルキレングリコール類としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。前記ポリオレフィン類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等があげられる。前記末端水酸基ポリオレフィンとしては、例えば、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリイソブチレンジオール、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)ジオール、水素化ポリブタジエンジオール、ポリエチレンジオール、ポリプロピレンジオール等が挙げられる。前記ポリエステル類としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。末端官能性ポリシロキサン類としては、例えば、末端シラノール型ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。末端アミノ基鎖状ポリマー類としては、例えば、末端アミノ基ポリエチレングリコール、末端アミノ基ポリプロピレングリコール、末端アミノ基ポリブタジエン等が挙げられる。中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ乳酸、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテル等からなる群から選ばれる一つ以上が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましく、ポリエチレングリコールとともに他の直鎖状分子が含有されていてもよい。
【0023】
前記直鎖状分子の数平均分子量は、特に制限はないが、例えば、2000以上であることが好ましく、3000~100000であることがより好ましく、10000~50000であることがさらに好ましい。本明細書において、直鎖状分子の数平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒とし、Shodex HFIP-806M(2本)+HFIP-LGをカラムとして用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、ポリメチルメタクリレート換算の値を意味する。
【0024】
前記封鎖基は、前記の直鎖状分子の末端官能基と結合し、環状分子が直鎖状分子から脱離するのをブロックするものであればよく、特に制限がない。前記封鎖基としては、例えば、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイニル基、ピレニル基、アントラセニル基、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類等が挙げられる。中でも、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイニル基、及びピレニル基からなる群から選ばれる一つ以上が好ましく、より好ましくはアダマンタン基又はトリチル基である。
【0025】
前記環状分子は、開口部に直鎖状分子が貫通し得るものであればよく、特に制限はない。前記環状分子としては、例えば、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、シクロファン類、カリックスアレーン類、クリプタンド類、大環状アミン類等が挙げられる。中でも、シクロデキストリン類が好ましく、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンからなる群から選択される一つ以上がより好ましい。
【0026】
ポリロタキサンBは、前記環状分子が水酸基を末端に有するグラフト鎖により修飾されることにより、分子内に水酸基を有する。前記グラフト鎖は、ポリエステルにより構成されることが好ましく、脂肪族ポリエステルがより好ましい。脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3-ヒドロキシブチレート、ポリ4-ヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)等が挙げられる。前記水酸基を末端に有するグラフト鎖により環状分子が修飾されたポリロタキサンは、例えば、シクロデキストリン類にポリ(ε-カプロラクトン)をグラフトさせることで得ることができる。
【0027】
ポリロタキサンBの水酸基価は、上述した水酸基係数を満たすことができればよく、特に制限はないが、架橋後の発泡体のセル緻密性と柔軟性を獲得する観点から、20~150mgKOH/gであることが好ましく、30~120mgKOH/gであることがより好ましく、50~100mgKOH/gであることがさらに好ましく、60~90mgKOH/gであることが特に好ましい。本明細書において、ポリロタキサンの水酸基価は、JIS K1557-1:2007年版(ISO14900:2001年版)にて測定するものであり、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0028】
ポリロタキサンBの重量平均分子量は、上述した水酸基係数を満たすことができればよく、特に制限はないが、成形体の発泡倍率を獲得する観点から、10万~100万であることが好ましく、12万~90万であることがより好ましく、14万~80万であることがさらに好ましく、15万~75万であることが特に好ましい。本明細書において、ポリロタキサンBの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量であり、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0029】
ポリロタキサンBは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリロタキサンBの配合量は、上述した水酸基係数の満たす範囲であれば、特に制限はないが、成形体の発泡倍率の獲得と表面平滑性の観点から、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、1~11重量部であることが好ましく、1.5~8重量部であることがより好ましく、2~6重量部であることがさらに好ましい。
【0030】
前記樹脂組成物が、二種以上のポリロタキサンBを含む場合、数式1において、「Wj×Nj/Hj」は、それぞれのポリロタキサンBの「Wj×Nj/Hj」の総和となる。
【0031】
前記可塑剤としては、特に限定されず、塩化ビニル系樹脂用可塑剤を適宜用いることができる。具体的には、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジノルマルオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル系可塑剤;トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレートベンゾエート等の安息香酸エステル系可塑剤;アセチルトリブチルシトレート等のクエン酸エステル系可塑剤;グリコール酸エステル系可塑剤;塩素化パラフィン系可塑剤;塩素化脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ系可塑剤;テキサノールイソブチレート等が挙げられる。中でも、フタル酸エステル系可塑剤が好ましく、ジ-2-エチルヘキシルフタレート及びジイソノニルフタレートからなる群から選ばれる一つ以上がより好ましい。
【0032】
前記可塑剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記塩化ビニル樹脂の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して30~60重量部であることが好ましく、35~55重量部であることがより好ましい。可塑剤の配合量が30重量部以上であることで、セルが合一せず目的の発泡倍率が得られやすく、可塑剤の配合量が60重量部以下であることで、架橋発泡成形体の強度が良好になる。
【0033】
架橋剤Cは、水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有するものであればよく、特に制限はない。水酸基と反応し得る官能基としては、例えば、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、アルコキシシリル基、シラノール基、ヒドロシリル基、N-メチロール基等が挙げられる。中でも、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基又はアルコキシシリル基が好ましく、イソシアネート基がより好ましい。
【0034】
架橋剤Cは、イソシアネート基を1分子中に少なくとも2個有するイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4'-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4'-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等のジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物とポリオール類との反応物(ウレタンプレポリマー及びアダクト体)、これらのジイソシアネート化合物の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。ジイソシアネート化合物と反応するポリオール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多官能アルコールが挙げられる。
【0035】
架橋剤Cは、末端にイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート系架橋剤)の末端イソシアネート基の全部又は一部がブロック剤でブロックされたブロックイソシアネート系架橋剤であることがより好ましい。前記ブロック剤としては、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物;メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール類等が挙げられる。
【0036】
架橋剤Cは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤Cの配合量は特に限定されないが、例えば、架橋効率及び架橋発泡成形体の熱安定性の観点から、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、0.5~10重量部であることが好ましく、1~8重量部であることがより好ましく、1.5~6重量部であることがさらに好ましい。なお、前記樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、架橋剤Cに加えて他の架橋剤を、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して3重量部以下配合してもよい。他の架橋剤を含む場合は、架橋剤Cと他の架橋剤の合計配合量が前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して0.5~10重量部であることが好ましい。
【0037】
前記発泡剤としては、特に限定されず、例えば、有機系発泡剤や無機系発泡剤等の化学発泡剤を用いることができる。有機系発泡剤としては、例えば、アゾ系、ヒドラジド系、ニトロソ系等が挙げられる。アゾ系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられる。ヒドラジド系発泡剤としては、例えば、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられる。ニトロソ系発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸塩、亜硝酸塩等が挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。
【0038】
前記発泡剤としては、熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を用いてもよい。熱膨張型マイクロカプセル発泡剤とは、熱可塑性樹脂カプセル中に気化性物質を内包した微小球のことをいい、従来公知のものを使用できる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類等のモノマーを単独重合又は共重合してなるポリマーカプセル中に、加熱発泡時に気化する内包物質を閉じ込めた微粒子状物質を使用できる。前記加熱発泡時に気化する内包物質としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素類等を使用できる。これらの内包物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
前記発泡剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記発泡剤の配合量は特に限定されず、目的の発泡倍率に基づいて適宜設定することができる。例えば、発泡性及びセル均一性の観点から、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、5~40重量部であることが好ましく、8~35重量部であることがより好ましく、10~30重量部であることがさらに好ましい。
【0040】
前記樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて、ゴム成分を含んでもよい。前記ゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムを特に限定なく用いることができる。合成ゴムとしては、例えば、ブチルアクリレートゴム、エチルアクリレートゴム、オクチルアクリレートゴム等のアクリルゴム、ブタジエン-アクリロニトリル系共重合体等のニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、水添エチレン-ブタジエン共重合体(EPDM)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、ポリウレタン、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム(ミラブル型、室温加硫型等)、ブチルゴム、フッ素ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。前記ゴム成分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、ゴム成分の配合量は0~20重量部であってもよく、1~10重量部であってもよい。
【0041】
前記樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて、安定剤を含んでもよい。前記安定剤としては、例えばジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫マレート、ジブチル錫ラウレート等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系(Ba―Zn系)安定剤等の亜鉛系安定剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン等のエポキシ系安定剤;りん酸エステル等が挙げられる。前記安定剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、安定剤の配合量は0~20重量部であってもよく、1~10重量部であってもよい。
【0042】
前記樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて、加工助剤を含んでもよい。前記加工助剤は、例えばアクリル系加工助剤等が挙げられる。前記アクリル系加工助剤としては、例えば、(メタ)アクリレート系重合体及びスチレン・アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリレート系重合体としては、例えば(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等からなる群から選ばれる一つ以上の共重合成分との共重合体を用いることができる。また、(メタ)アクリレート系重合体としては、市販のもの、例えば、カネカ製の「カネエースPA20」、「カネエースPA40」、「カネエースPA60」等を用いることができる。前記加工助剤の配合量は、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、0~10重量部であってもよい。
【0043】
前記樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、補強剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、表面処理剤、チキソトロープ剤、防カビ剤、洗浄剤等の他の添加剤を含んでもよい。前記他の添加剤の配合量は、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、0~10重量部であってもよい。
【0044】
前記樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、架橋剤、発泡剤、ポリロタキサン、及び必要に応じて他の添加剤を、公知の方法で撹拌混合(コンパウンド化)することで得ることができる。前記撹拌混合には、ヘンミェルミキサー等の混合機やロールコンパクションマシン、ギヤペレタイザ、バンバリーミキサー、各種押出機等の混練機を用いることができる。前記撹拌混合する際、発泡剤が発泡しない条件で行う必要がある。例えば、ADCA等の熱分解型発泡剤の場合は、熱分解温度より低い温度で撹拌混合する必要があり、例えば、80~130℃で撹拌混合することが望ましい。
【0045】
(軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体)
本発明の1以上の軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体(以下、単に発泡成形体とも記す。)は、前記樹脂組成物で形成される。前記発泡成形体の製造方法は特に限定されず、前記樹脂組成物を用いる以外は、一般的な発泡成形体の製造方法と同様の方法で製造することができる。例えば、前記樹脂組成物を、押出機を用いた押出法、カレンダーを用いたカレンダー法、ロールを用いたプレス法等により、発泡剤の分解温度未満の温度、例えば、120~160℃でシート状等の所定の形状の未発泡成形体(未発泡シートを含む。)に成形し、得られた未発泡成形体を発泡剤の分解温度以上の温度、例えば、200~250℃で加熱して発泡することで、発泡成形体を得ることができる。また、成形と発泡を同時に行うことで発泡成形体を製造してもよい。また、前記樹脂組成物をプレス機又は射出成形機内で、例えば、0.5~3.0MPaの加圧下で、200~250℃で加熱成形後除圧することで発泡成形体を製造してもよい。
【0046】
前記発泡成形体の発泡倍率は特に限定されないが、例えばクッション性及び軽量性等の観点から、10倍以上であることが好ましく、13倍以上であることがより好ましく、16倍以上であることがさらに好ましい。また、セル緻密性の観点から、発泡倍率が60倍以下であることが好ましく、50倍以下であることがより好ましく、40倍以下であることがさらに好ましい。具体的には、前記発泡成形体の発泡倍率は10~60倍であることが好ましく、13~50倍であることがより好ましく、16~40倍であることがさらに好ましい。本明細書において、発泡倍率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0047】
前記発泡成形体の独立気泡率は特に限定されないが、例えば、厚さ方向の柔軟性や反発性の観点から、75%以上であることが好ましく、78%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。前記発泡成形体の独立気泡率の上限は特に限定されず、高い程好ましく、100%であることが特に好ましい。本明細書において、独立気泡率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0048】
前記発泡成形体の平均セル径は特に限定されないが、例えば、軽量性、強度及び反発性等の観点から、500μm未満であることが好ましく、150~350μmであることがより好ましく、200~330μmであることがさらに好ましく、250~320μmであることが特に好ましい。本明細書において、平均セル径は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0049】
前記発泡成形体の架橋度を示すゲル分率は特に限定されないが、例えば、弾性、強度及び耐熱性等の観点から、75%以上であることが好ましく、78~98%であることがより好ましく、80~97%であることがさらに好ましく、85~95%であることが特に好ましい。本明細書において、ゲル分率は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0050】
前記発泡成形体の圧縮応力は特に限定されないが、柔軟性及び反発性等の観点から、25%圧縮時の圧縮応力は、20~75MPaであることが好ましく、25~65MPaであることがより好ましく、30~60MPaであることがさらに好ましく、35~55MPaであることが特に好ましい。本明細書において、圧縮応力は、ISO 3386-1に従って測定することができる。
【0051】
前記発泡成形体の引張強度は特に限定されないが、二次成形性等の観点から、0.1MPa以上であることが好ましく、0.2~5.0MPaであることがより好ましく、0.3~3.5MPaであることがさらに好ましく、0.5~2.0MPaであることが特に好ましい。本明細書において、引張強度は、JIS K 6251に従って測定することができる。
【0052】
前記発泡成形体の伸び率は特に限定されないが、二次成形性等の観点から、30%以上であることが好ましく、40~350%であることがより好ましく、50~300%であることがさらに好ましく、60~250%であることが特に好ましい。本明細書において、伸び率は、JIS K 6251に従って測定することができる。
【0053】
前記発泡成形体は、セル緻密性が高く、柔軟性及び表面平滑性が良好であることから、自動車内装材として好適に用いることができる。また、家具、壁紙、フロアシート、帆布、バッグ、服飾等に用いてもよい。
【実施例0054】
以下、実施例にて本発明の1以上の実施形態を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法は下記のとおりである。
【0056】
(水酸基含有モノマー単位の含有量の測定法)
対象の塩化ビニル樹脂を0.1g程度、30mLフラスコに採取し、テトラヒドロフラン10mLを添加し溶解し、試料液を得た。フーリエ変換赤外線分光光度計(日本分光社製、FT/IR-4700)を用い、KBr板上に試料液を滴下・乾燥し塗膜を形成させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した。1430cm-1付近と1740cm-1付近の最大強度のピーク強度比から、別途測定した検量線を用いて、水酸基含有モノマー単位の含有量を算出した。
【0057】
(発泡倍率)
精秤した未発泡シート又は発泡シートを、メタノール50mLを充填したメスシリンダーに沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積(cm3)を求め、下記の数式にてシート密度及び発泡倍率を算出した。
シート密度(g/cm3)=シート重量(g)/シリンダーでの液面上昇体積(cm3
発泡倍率(倍)=未発泡シートのシート密度(g/cm3)/発泡シートのシート密度(g/cm3
【0058】
(発泡シートのゲル分率)
発泡シートの切片1gを精秤し(W0)、100mLのフラスコに入れ、テトラヒドロフランを50mL加え、常温(20~35℃)で1分間攪拌した後20時間常温で静置して溶解した。その後、予め精秤しておいた定性濾紙(ADVANTEC社製「No.2定性濾紙」)を用いて、フラスコ内の不溶分を濾別・分離した。濾別された不溶分は十分に乾燥させた後、精秤して定性濾紙重量を差し引くことでテトラヒドロフラン不溶分重量(W1)を算出した。溶解前の発泡シートの切片の重量(W0)及びテトラヒドロフラン不溶分重量(W1)に基づいて、下記数式にて発泡シートのゲル分率(重量%)として算出した。
ゲル分率(重量%)=W1/W0×100
【0059】
(独立気泡率)
ASTM D2856に記載の方法に準拠し、エアピクノメータ(東京サイエンス株式会社製、空気比較式比重計モデル1000)を用いて、発泡シートの試験片の体積Vc(cm3)測定した。次に、測定後の同じ試験片をエタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積Va(cm3)を求め、下記の式に従って独立気泡率(%)を算出した。
独立気泡率(%)=(Vc/Va)×100
【0060】
(平均セル径)
発泡シートからカミソリで断面厚み3mm×幅10mm×奥行0.5mmの試験片を切削し、実体顕微鏡(KEYENCE社製、VHX-500)を用い、倍率25倍で撮影した。断面の1mm×1mm四方の範囲内に存在するセル50個の直径を測定し、その平均値を平均セル直とした。
【0061】
(セルの緻密性)
発泡シートからカミソリで断面厚み3mm×幅10mm×奥行0.5mmの試験片を切削し、切断面の発泡セルの状態を目視し、セル特性を下記の基準で評価した。
A:緻密で微細なセル
B:均一で微細なセル
C: 不均一・不揃いのセル
D:合一した大きなセル(フクレ)
【0062】
(柔軟性)
発泡シートを厚み方向に親指で圧縮し、柔軟性を下記の基準で評価した。
A:フワフワとした触感(底突きしない)
B:フワフワした触感だが底突きする
C:若干硬めでクッション性が少ない
D: クッション性がない
【0063】
(表面平滑性)
発泡シートの表面平滑性を、下記の基準で評価した。
A:表面が平滑
B:表面に細かい凹凸がある
C:部分的に大きな盛上り(フクレ)やシワ・ヨレがある
【0064】
(圧縮強度)
圧縮試験機(島津製作所製AGS-1000A)を用いて、ISO 3386-1に従い、発泡シートの切片を重ねて厚さ10mm以上として積層した発泡シートの高さを測定し、直径20mmの円形治具を用いて、圧縮速度25mm/minにて積層した発泡シートの高さが圧縮する前の高さの25%となるまで圧縮したところの強度を測定した。
【0065】
(引張試験)
得られた発泡シートから、JIS K-6251での1号ダンベルを打ち抜き、引張試験用試験片を得た。作製した試験片について、引張試験機(島津製作所社製、AGS-1000A)を用いて、引張速度500mm/分、標線間距離40mm(チャック間距離70mm)の条件で、23℃での引張試験を行い、引張強度及び伸び率を測定した。
【0066】
(製造例1)
(水酸基含有塩化ビニル樹脂の製造)
重合機に、イオン交換水200重量部、分散剤として部分鹸化ポリ酢酸ビニル(クラレ株式会社製)0.089重量部、重合開始剤としてジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート0.0087重量部と1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート0.0169量部を仕込み、重合機内を脱酸素した。次いで、塩化ビニル単量体98重量部及びアクリル酸2-ヒドロキシプロピル(以下において、「HPA」とも記す。)2重量部を仕込み、その後、昇温を開始し、15分掛けて25℃から51℃(重合温度)までに昇温させて重合を行った。重合温度到達から570分後に未重合単量体を回収して重合を終了し、得られたスラリーを脱水し、熱風乾燥機内にて55℃で18時間乾燥して、水酸基含有塩化ビニル樹脂を得た。得られた水酸基含有塩化ビニル樹脂中の水酸基含有モノマーの量を上述したとおりに測定したところ、1.8重量%であった。また、得られた水酸基含有塩化ビニル樹脂のK値は72であった。
【0067】
(実施例1~5、比較例1~7)
<樹脂組成物の作製>
製造例1の水酸基含有塩化ビニル樹脂(以下において、PVC1とも記す。)又は塩化ビニル単独重合体(カネカ社製、「カネビニールS1003」、K値72、以下において、PVC2とも記す。)、可塑剤(ジェイ・プラス社製、「DINP」)、ニトリルゴム(日本ゼオン社製、「Nipol1312」、変性アクリルニトリルーブタジエン共重合体)、安定剤(アデカ社製、「アデカスタブAC-255」、Ba-Zn系液状安定剤)、架橋剤(旭化成社製、「デュラネートE404-B80B」、ブロックヘキサメチレンジイソシアネート)、加工助剤(カネカ社製、「PA-60」、アクリル系加工助剤)、ポリロタキサン(ASM社製、「SH1300P」、重量平均分子量18万、水酸基価85mgKOH/g、以下において、ポリロタキサン1とも記す。)又はポリロタキサン(ASM社製、「SH3400P」、重量平均分子量70万、水酸基価67mgKOH/g、以下において、ポリロタキサン2とも記す。)を用い、これらの各成分を、下記表1又は表2に示す配合比率(重量部)でヘンシェルミキサーに投入して攪拌しながら昇温した。配合物の温度が110℃に達した時点で冷却し、配合物の温度が50℃に達した時点で排出し、軟質塩化ビニル樹脂組成物を得た。なお、ポリロタキサン1及びポリロタキサン2のいずれにおいても、環状分子は、末端に水酸基を有するポリ(ε-カプロラクトン)がグラフト重合したシクロデキストリン類(α-シクロデキストリン)であり、封鎖基はアダマンタン基(アダマンタンアミン)であり、直鎖状分子は、ポリエチレングリコールである。ポリロタキサン1において、直鎖状分子の数平均分子量は11000であり、ポリロタキサン2において、直鎖状分子の数平均分子量は35000である。
<未発泡シートの作製>
得られた軟質塩化ビニル樹脂組成物を、6インチロールシート成形機(ロール表面温度 160℃、ロール回転数 20rpm、ロール投入量110g)にて10min間混練し、厚さ0.7mmのロールシート(未発泡シート)を作製した。
<発泡シートの作製>
熱風循環式加熱炉(ESPEC社製、パーフェクトオーブンPHH-100)を用いて、ロールシート切片(5cm×5cm)を230℃で3分間加熱して、発泡シートを得た。
【0068】
実施例及び比較例の発泡シートの発泡倍率、ゲル分率、独立気泡率、平均セル径、圧縮強度、引張強度及び伸び率を上述したとおりに測定した。また、実施例及び比較例の発泡シートのセル緻密性、柔軟性及び表面平滑性を上述したとおりに評価した。その結果を下記表1及び2に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
前記表1から分かるように、実施例の樹脂組成物で形成した発泡シートは、セル緻密性が良好であり、柔軟性に優れていた。また、表面平滑性も良好であった。
【0072】
一方、前記表2から分かるように、水酸基含有塩化ビニル樹脂及びポリロタキサンを含まない比較例1では、セル緻密性及び表面平滑性が劣る。水酸基含有塩化ビニル樹脂を含まない比較例2では、セル緻密性、柔軟性及び表面平滑性が劣る。ポリロタキサンを含まない比較例3及び4では、セル緻密性が劣る。水酸基係数が低い比較例5では、セル緻密性及び柔軟性が劣る。水酸基係数が高い比較例6では、緻密性及び表面平滑性が劣る。水酸基係数が高い比較例7では、緻密性、柔軟性及び表面平滑性が劣る。
【0073】
本発明は、例えば、下記の実施形態を含んでもよい。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
[1]塩化ビニル樹脂、可塑剤、発泡剤、及び架橋剤を含む発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、
前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物は、さらにポリロタキサンを含み、
前記塩化ビニル樹脂は、水酸基含有モノマー単位を含む塩化ビニル樹脂Aを含み、
前記ポリロタキサンは、環状分子に水酸基を少なくとも1個有するポリロタキサンBを含み、
前記架橋剤は、水酸基と反応しうる官能基を1分子中に少なくとも2個有する架橋剤Cを含み、
前記発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物において、下記数式1で示される水酸基係数が15~500である、発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[数式1]
水酸基係数=[Wi×(Wj×Nj/Hj)×Wk]/10000
Wi=塩化ビニル樹脂中の水酸基含有モノマー単位の含有量(重量%)
Wj=塩化ビニル樹脂100重量部に対するポリロタキサンBの配合量(重量部)
Nj=ポリロタキサンBの重量平均分子量
Hj=ポリロタキサンBの水酸基価(mgKOH/g)
Wk=塩化ビニル樹脂100重量部に対する可塑剤の配合量(重量部)
[2]ポリロタキサンBは、重量平均分子量が15~75万である、[1]に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[3]前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、ポリロタキサンBを1~11重量部含む、[1]又は[2]に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[4]前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、前記可塑剤を30~60重量部含む、[1]~[3]のいずれかに記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[5]架橋剤Cは、イソシアネート系化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[6]前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、架橋剤Cを1~10重量部含む、[5]に記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[7]前記塩化ビニル樹脂100重量部に対し、前記発泡剤を5~20重量部含む、[1]~[6]のいずれかに記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[8]前記塩化ビニル樹脂は、水酸基含有モノマー単位を0.5~10重量%含む、[1]~[7]のいずれかに記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の発泡性軟質塩化ビニル樹脂組成物で形成された軟質塩化ビニル樹脂架橋発泡成形体。