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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131710
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 40/10 20200101AFI20240920BHJP
   B62J 41/00 20200101ALI20240920BHJP
   B62J 35/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62J40/10
B62J41/00
B62J35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042138
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】萩元 雅史
(72)【発明者】
【氏名】横山 晋
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 博幸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智之
(57)【要約】
【課題】ヘッドパイプ後方の導風部材に走行風を取り入れる導風口を備える鞍乗り型車両において、導風口からの水の浸入を抑える。
【解決手段】ヘッドパイプ6と、前記ヘッドパイプ6の後方に配置される導風部材(ラジエータインナーシュラウド45)と、を備え、前記ラジエータインナーシュラウド45は、車両前方に向けて開口する導風口51を備え、前記導風口51は、前下方に向けて傾斜するルーバー52(羽板53)を備えている。前記ラジエータインナーシュラウド45の後方に、内燃機関のエアクリーナの吸気口22aが配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(6)と、
前記ヘッドパイプ(6)の後方に配置される導風部材(45)と、を備える鞍乗り型車両(1)において、
前記導風部材(45)に、車両前方に向けて開口する導風口(51)を備え、
前記導風口(51)は、前下方に向けて傾斜するルーバー(52)を備えていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
内燃機関(13)と、
前記内燃機関(13)の吸気側に接続されるエアクリーナ(21)と、を備え、
前記導風部材(45)の後方に、前記エアクリーナ(21)の吸気口(22a)が配置され、
前記吸気口(22a)は、車幅方向で前記導風口(51)と少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ヘッドパイプ(6)に転舵可能に支持される左右一対のフロントフォーク(3)を備え、
前記導風口(51)は、前記左右一対のフロントフォーク(3)よりも後方かつ車幅方向内側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記導風部材(45)は、上面視で車両後方側に凹んだ凹形状部(49)を有し、
前記導風口(51)は、上面視で前記凹形状部(49)の後端位置(49a)から車幅方向内側に渡って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記内燃機関(13)の前方に配置され、前記内燃機関(13)の冷却に用いられるラジエータ(23)と、
前記ラジエータ(23)に取り付けられるラジエータシュラウド(40)と、を備え、
前記ラジエータシュラウド(40)は、車幅方向外側のアウターシュラウド(41)と車幅方向内側のインナーシュラウド(45)とを備え、
前記導風口(51)は、前記インナーシュラウド(45)に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記内燃機関(13)の上方に配置され、前記内燃機関(13)の燃料を貯留する燃料タンク(18)と、
前記燃料タンク(18)に取り付けられるタンクシュラウド(30)と、を備え、
前記導風口(51)は、車両側面視で、前記タンクシュラウド(30)と少なくとも一部がラップしていることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記導風口(51)は、車体フレーム(5)のフレーム部材(6,7,7a)に囲まれた領域(5c)と少なくとも一部がラップしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両において、運転者のニーグリップ位置に配置される燃料タンクの側面から、タンクシュラウド(シュラウド(shroud):車両部品を覆って気流を特定方向に導く導風部材)を車両前方へ延ばし、このシュラウドのインナー部材が車体フレームのヘッドパイプの後方に配置され、このインナー部材に燃料タンク下方への導風口を備えた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-075585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シュラウドの導風口は、燃料タンク下方の領域に走行風を多く取り入れる一方、雨滴等の水の浸入を抑制する構成が望まれている。例えば、燃料タンク下方のエアクリーナへの吸気を目的としたものでは、導風口から浸入した水を避けるために、エアクリーナの吸気口の位置を導風経路から離したり吸気口の手前に水の浸入を防ぐ壁などを設けたりする等の必要があった。
【0005】
そこで本発明は、ヘッドパイプ後方の導風部材に走行風を取り入れる導風口を備える鞍乗り型車両において、導風口からの水の浸入を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、ヘッドパイプ(6)と、前記ヘッドパイプ(6)の後方に配置される導風部材(45)と、を備える鞍乗り型車両(1)において、前記導風部材(45)に、車両前方に向けて開口する導風口(51)を備え、前記導風口(51)は、前下方に向けて傾斜するルーバー(52)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、ヘッドパイプ後方の導風部材に車両前方に開口する導風口を備えることで、導風口に至る走行風は、先にヘッドパイプおよびヘッドパイプに支持される転舵部品に当たって風速を落とした状態となり、導風口のルーバーによって空気の流れを整流しやすくなる。そして、導風口に下向き傾斜のルーバーを備えることで、導風部材後方への走行風の流れを阻害することなく、走行風に含まれる水の浸入を抑えることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、内燃機関(13)と、前記内燃機関(13)の吸気側に接続されるエアクリーナ(21)と、を備え、前記導風部材(45)の後方に、前記エアクリーナ(21)の吸気口(22a)が配置され、前記吸気口(22a)は、車幅方向で前記導風口(51)と少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、内燃機関の吸気口と導風部材の導風口とが車幅方向で重なるように配置されることで、導風口から吸気口へ走行風を導入しやすくなり、吸気効率を向上させることができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様において、前記ヘッドパイプ(6)に転舵可能に支持される左右一対のフロントフォーク(3)を備え、前記導風口(51)は、前記左右一対のフロントフォーク(3)よりも後方かつ車幅方向内側に配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、導風口が左右フロントフォークよりも後方かつ車幅方向内側に配置されることで、導風口に至る走行風は、先に左右フロントフォークに当たって風速を落とした状態となるので、ルーバーで整流しやすく、かつ水の浸入を防ぎやすくなる。すなわち、導風口の整流効果および防水効果の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第一から第三の態様の何れか一つにおいて、前記導風部材(45)は、上面視で車両後方側に凹んだ凹形状部(49)を有し、前記導風口(51)は、上面視で前記凹形状部(49)の後端位置(49a)から車幅方向内側に渡って形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、導風部材における上面視で車両後方側に凹む凹形状部の後端位置から車幅方向内側の範囲(凹形状の車幅方向内側の範囲)に、導風口が形成されることで、凹形状部の車幅方向外側の範囲を導風ガイドとして利用し、より多くの走行風を導風口に案内することができる。凹形状部の車幅方向外側で案内した走行風は、流れの向きを変えて風速を落とした状態となるので、ルーバーで整流しやすくなり、かつ水の浸入を防ぎやすくなる。すなわち、導風口の整流効果および防水効果の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第二の態様において、前記内燃機関(13)の前方に配置され、前記内燃機関(13)の冷却に用いられるラジエータ(23)と、前記ラジエータ(23)に取り付けられるラジエータシュラウド(40)と、を備え、前記ラジエータシュラウド(40)は、車幅方向外側のアウターシュラウド(41)と車幅方向内側のインナーシュラウド(45)とを備え、前記導風口(51)は、前記インナーシュラウド(45)に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、ラジエータを覆うラジエータシュラウドのインナーシュラウドに導風口が形成されることで、ラジエータシュラウドの後方に走行風を導入しやすくなる。このため、ラジエータシュラウドの後方に配置したエアクリーナ等の車両部品に対し、走行風を効率よく導くことができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第二の態様において、前記内燃機関(13)の上方に配置され、前記内燃機関(13)の燃料を貯留する燃料タンク(18)と、前記燃料タンク(18)に取り付けられるタンクシュラウド(30)と、を備え、前記導風口(51)は、車両側面視で、前記タンクシュラウド(30)と少なくとも一部がラップしていることを特徴とする。
この構成によれば、燃料タンクを覆うタンクシュラウドと導風口とが車両側面視でラップすることで、車両側面視で導風口を目立たなくし、外観性への影響を抑えることができる。また、タンクシュラウドを利用して、より多くの走行風を導風口に案内することができる。
【0012】
本発明の第七の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、前記導風口(51)は、車体フレーム(5)のフレーム部材(6,7,7a)に囲まれた領域(5c)と少なくとも一部がラップしていることを特徴とする。
この構成によれば、導風口と車体フレームのフレーム部材に囲まれた領域とが互いに対向することで、導風部材の後方で車体フレームに囲まれた領域に対し、走行風を効率よく導くことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヘッドパイプ後方の導風部材に走行風を取り入れる導風口を備える鞍乗り型車両において、導風口からの水の浸入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の車体前上部の右側面図である。
図2図1に対してタンクシュラウドを取り外した状態の右側面図である。
図3】上記自動二輪車の車体前上部の前面図である。
図4図3に対して転舵部品を取り外した状態の前面図である。
図5】導風口および吸気口の平面視の配置を示す上面図である。
図6図4のVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中央を示す線CLが示されている。
【0016】
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪(操向輪)2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に操向可能に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ4b上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。図中符号4cはステアリングステム4のボトムブリッジ、符号4d,4eはステアリングステム4に支持されたメータ装置およびヘッドライト装置をそれぞれ示す。
【0017】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6の上部から下後方へ延びる左右一対のメインフレーム7と、ヘッドパイプ6の下部と左右メインフレーム7の前部との間に渡る左右一対のガセットパイプ7aと、左右ガセットパイプ7aから下後方へ延びる左右一対のダウンフレーム7bと、を備えている。ヘッドパイプ6およびその近傍の左右フレーム部材(左右メインフレーム7および左右ダウンフレーム7bの前上部、ならびに左右ガセットパイプ7a)を含む構成をフレーム前端部5aと称する。
【0018】
左右メインフレーム7の下方には、自動二輪車1の原動機を含むパワーユニットPUが支持されている。パワーユニットPUは、その前側に位置するエンジン(内燃機関、原動機)13と、後側に位置する変速機(不図示)と、を一体に有している。例えば、エンジン13は、クランクシャフトの回転軸を左右方向(車幅方向)に沿わせた空冷単気筒エンジンである。左右メインフレーム7の上方には、エンジン13の燃料を貯留する燃料タンク18が支持されている。
【0019】
図示しないが、車体フレーム5は、左右メインフレーム7の後端部の下方に連なるピボットフレームと、左右メインフレーム7およびピボットフレームの後方に連なるシートフレームと、を備えている。ピボットフレームには、スイングアームの前端部が上下揺動可能に支持されている。スイングアームの後端部には、自動二輪車1の後輪(駆動輪)が支持されている。後輪は、例えばチェーン式伝動機構を介して、パワーユニットPUの出力部(変速機の出力部)と連結されている。
【0020】
燃料タンク18は、中空のタンク本体19を備えている。タンク本体19は、例えば鋼板製であり、後部の左右両側には、運転者の膝部に沿うように凹状のニーグリップ部19aが形成されている。
図5を併せて参照し、タンク本体19の前部の車幅方向内側は、下方に開放する凹形状に形成され、この凹形状内にエンジン13の吸気をろ過するエアクリーナ21が配置されている。エアクリーナ21のケースからは、左右一対の吸気ダクト22が車両前方側へ延び、これら左右の吸気ダクト22の前端開口がエアクリーナ21の吸気口22aとされている。吸気口22aは、左右フレーム部材間の領域(左右フレーム間領域5b)に配置されている。左右フレーム間領域5bには、後に詳述する導風口51から走行風を導入可能であり、エンジン13やラジエータ23の熱を受けない外気をエンジン13に供給可能である。
【0021】
図1図4に示すように、タンク本体19の前部の左右両側には、当該部位を左右外側から覆うようにタンクシュラウド(シュラウド:shroud)30が取り付けられている。
図1図2を参照し、タンクシュラウド30は、ニーグリップ部19aの前方で左右外側に張り出すように形成されている。タンクシュラウド30の前部30aは、タンク本体19の前端部19bが前側ほど左右幅を狭めるように丸みを帯びて形成されるのに対し、前側ほどタンク本体19に比べて左右幅を広げるように形成されている。タンクシュラウド30の前部30aは、車両側面視で、車両前方に凸の三角形状をなし、タンク本体19の前端部19bを越えて前方へ延びるとともに、前部30aの下辺部30c側がメインフレーム7の前部と重なっている。図中符号30dはタンクシュラウド30の前部30aの上辺部を示す。タンクシュラウド30の前端部30bは、車両側面視でヘッドパイプ6と重なる位置まで延びている。タンクシュラウド30は、車両前方からの走行風を多く受け止めて特定方向に導く導風部材として機能し、運転者の膝部に当たる走行風を軽減させる。
【0022】
図4を併せて参照し、タンクシュラウド30は、車幅方向外側に配置された左右一対のタンクアウターシュラウド31と、車幅方向内側に配置されたタンクインナーシュラウド35と、を備えている。左右タンクアウターシュラウド31は、タンクシュラウド30の側面視形状を形成している。タンクインナーシュラウド35は、左右タンクアウターシュラウド31の前部の上辺部(タンクシュラウド30の前部30aの上辺部30dに相当)の間に渡って一体に設けられ、タンク本体19の前端部19bを前方から覆っている。タンクインナーシュラウド35は、車両前面視で、メインフレーム7の前部の上方を跨ぐように、上方に凸の湾曲形状をなしている。
【0023】
タンクインナーシュラウド35の左右側部には、上面視で車両後方側に円弧状に凹んだ上部凹形状部36が形成されている。上部凹形状部36は、後に詳述するラジエータインナーシュラウド45の下部凹形状部49と連続するように設けられている。上下凹形状部36,49は、前輪2転舵時における左右フロントフォーク3の回動領域を避けるように凹状に形成されている(図5参照)。上下凹形状部36,49は、車両側面視で、左右フロントフォーク3(およびヘッドパイプ6)の傾斜に沿うように、下側ほど前方に位置するように傾斜している。
【0024】
図1図3を参照し、エンジン13の前方かつダウンフレーム7bの前方には、エンジン13冷却用のラジエータ23が配置されている。ラジエータ23は、車両前面視で矩形の厚板状をなしている。ラジエータ23は、車両前面視で、上下辺部23a,23bを左右方向に沿わせて配置され、かつ車両側面視で、下側ほど後方に位置するように傾斜して配置されている。ラジエータ23は、左右タンクアウターシュラウド31の前端部(タンクシュラウド30の前端部30bに相当)間の距離を超える左右幅を有し、左右タンクアウターシュラウド31の前端部30bの下方に上辺部23bの左右端部を配置している。
【0025】
ラジエータ23の左右側辺部23cには、当該部位を車幅方向外側から覆うようにラジエータシュラウド40が取り付けられている。ラジエータシュラウド40は、左右側辺部23cの下端部近傍を除いた上部の車幅方向外側に張り出すように形成されている。ラジエータシュラウド40は、左右タンクアウターシュラウド31の前端部30bよりも車幅方向外側に張り出している。ラジエータシュラウド40は、ラジエータ23の上辺部23aよりも上方まで延びている。ラジエータシュラウド40の車幅方向外側のラジエータアウターシュラウド41は、ラジエータ23よりも上方に位置する部位(アウター上部41)において後方に延出し、この延出部分の上部がタンクシュラウド30の前部30aの下辺部30cに車幅方向外側から重なっている。
【0026】
ラジエータシュラウド40は、タンクシュラウド30と同様、前側が車両前方に開放するように形成されている。ラジエータシュラウド40は、車両前方からの走行風を多く受け止めてラジエータ23に導くとともに、走行風の一部を左右フレーム間領域5bへ導く導風部材として機能する。
【0027】
図1図4を参照し、ラジエータシュラウド40は、車幅方向外側に配置された左右一対のラジエータアウターシュラウド41と、車幅方向内側に配置された左右一対のラジエータインナーシュラウド45と、を備えている。左右ラジエータアウターシュラウド41は、ラジエータインナーシュラウド45の後述する上方延出部47を除き、ラジエータシュラウド40の側面視形状を形成している。左右ラジエータインナーシュラウド45は、左右ラジエータアウターシュラウド41の前部の間に設けられ、フレーム前端部5aを挟んで左右方向で離隔している。
【0028】
ラジエータ23は、フレーム前端部5aの前下方に位置している。左右ラジエータインナーシュラウド45は、タンクインナーシュラウド35の下方かつラジエータ23の上方の領域に設けられ、フレーム前端部5aの左右両側の空間部を閉塞している。左右ラジエータインナーシュラウド45の車幅方向外側には、ラジエータ23の左右側辺部23cに沿って下方に延びる下方延出部48が形成され、左右ラジエータアウターシュラウド41とラジエータ23の左右側辺部23cとの間の空間部を閉塞している。
【0029】
左右ラジエータインナーシュラウド45は、フレーム前端部5aの下部構成(左右ダウンフレーム7bの前上部および左右ガセットパイプ7a)の車幅方向外側に配置されるインナー本体部46と、インナー本体部46の上方かつ車幅方向内側に延出し、ヘッドパイプ6の上部の車幅方向外側に配置される上方延出部47と、を備えている。上方延出部47は、左右ラジエータアウターシュラウド41の上縁部41bよりも上方まで延びている。上方延出部47は、タンクアウターシュラウド31の前端部30bよりも上方まで延びている。
【0030】
上方延出部47は、タンクアウターシュラウド31の前部30aの上辺部30dよりも上方に上端部を突出させるが、上方延出部47の大部分がタンクアウターシュラウド31の前部30aの車幅方向内側に配置される。このため、上方延出部47は、車両側面視で外観され難くされている。
【0031】
インナー本体部46の上縁部から上方延出部47の外側縁部および上縁部に渡る範囲は、タンクインナーシュラウド35の下縁部から内側縁部に渡る範囲に結合されている。インナー本体部46の内側縁部から上方延出部47の下縁部に渡る範囲は、フレーム前端部5aの下部構成を避けるために適宜切り欠かれている。実施形態では、右側のインナー本体部46および上方延出部47は、フレーム前端部5aの下部構成の他、クラッチケーブルやブレーキホース等の索状部材を避けるためにさらに切り欠かれている。このため、インナー本体部46および上方延出部47の切り欠き形状は左右非対称とされている。
【0032】
図1図4を参照し、上方延出部47には、左右フレーム間領域5bに走行風を導入するための導風口51が形成されている。導風口51は、フレーム前端部5aの左右両側のフレーム開口部5c(図1参照)に対向するように配置されている。フレーム開口部5cは、フレーム前端部5aの左右両側の各々において、ヘッドパイプ6、メインフレーム7およびガセットパイプ7aに囲まれた三角形状の領域である。導風口51に至った走行風は、導風口51およびフレーム開口部5cを経て、左右フレーム間領域5bに導入される。
【0033】
導風口51は、タンクアウターシュラウド31の前部30aの車幅方向内側に配置され、上方延出部47と同様、車両側面視で外観され難くい。したがって、上方延出部47および導風口51を設けたことによる外観性への影響が抑えられる。一方、車体の前部に配置される導風口51は、車体の前後中間部や後部に配置される場合と比べて、運転者に吸気音を聞こえやすくする。これにより、自動二輪車1の商品性の向上が図られる。
【0034】
走行風を多く受け止めるラジエータシュラウド40において、車両前方に開口する導風口51は、左右フレーム間領域5bに走行風を多く導入可能とする一方、雨滴等の水の浸入を抑制する構成を有している。
図6を併せて参照し、導風口51は、下向き傾斜のルーバー52を備えている。ルーバー52は、前側ほど下方に位置するように傾斜した複数の羽板53を有している。ルーバー52の羽板53間のスリット状の開口54を走行風が通過することで、走行風に含まれる雨水等が下向き傾斜の羽板53に当たって捕獲され、導風口51の下方に滴下される。これにより、左右フレーム間領域5bに雨水等が浸入することを抑えつつ、走行風が左右フレーム間領域5bに良好に導かれる。
【0035】
したがって、左右フレーム間領域5bにエアクリーナ21の吸気口22aが臨むような構成でも、吸気効率を阻害することなく水の浸入を抑えることができる。また、エアクリーナ21等の車両部品の吸気ダクト22側に止水構造を設ける等の対応を不要とし、車両部品の設計自由度を高めることができる。
【0036】
図4を参照し、導風口51は、車両前面視では吸気口22aに対して上方にずれており、吸気口22aと重ならない(吸気口22aを避けた)配置となっている。よって導風口51から左右フレーム間領域5bに導入された走行風がダイレクトに吸気口22aに導入されることがなく、雨水等の浸入がより一層抑えられる。
【0037】
図4図5を参照し、導風口51は、車両上面視では吸気口22aと車幅方向位置をラップさせており、導風口51から左右フレーム間領域5bに導入された走行風は、導風口51および吸気口22aの上下方向のオフセットによって勢いを落とした後、速やかに吸気口22aへ導入される。
【0038】
ラジエータインナーシュラウド45の上方延出部47には、上面視で車両後方側に円弧状に凹んだ下部凹形状部49が形成されている。下部凹形状部49は、タンクインナーシュラウド35の上部凹形状部36(図4参照)と連続するように設けられ、上部凹形状部36とともに左右フロントフォーク3の回動領域を避けている。
【0039】
下部凹形状部49の後端位置49aは、フロントフォーク3の後方に位置し、フロントフォーク3と車幅方向位置をラップさせている。導風口51は、下部凹形状部49における後端位置49a近傍から車幅方向内側の範囲に形成されている。下部凹形状部49に至る走行風は、その前方のフロントフォーク3等の部品に当たりながら後方へ流れることで、適宜風速が落とされる。その後、下部凹形状部49の車幅方向内側に至った走行風は、導風口51より左右フレーム間領域5bに導入される。下部凹形状部49の車幅方向外側に至った走行風は、下部凹形状部49の湾曲形状に沿って車幅方向内側へ向きを変えつつ導風口51に至る。これにより、導風口51を通過する走行風の風速がさらに抑えられ、ルーバー52で整流しやすくなるとともに水の浸入が抑えやすくなる。
【0040】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1は、車体フレーム5のヘッドパイプ6と、前記ヘッドパイプ6の後方に配置される導風部材(ラジエータインナーシュラウド45)と、を備える鞍乗り型車両であって、前記ラジエータインナーシュラウド45は、車両前方に向けて開口する導風口51を備え、前記導風口51は、前下方に向けて傾斜するルーバー52(羽板53)を備えている。
この構成によれば、ヘッドパイプ6後方のラジエータインナーシュラウド45に車両前方に開口する導風口51を備えることで、導風口51に至る走行風は、先にヘッドパイプ6およびヘッドパイプ6に支持される転舵部品に当たって風速を落とした状態となり、導風口51のルーバー52によって空気の流れを整流しやすくなる。そして、導風口51に下向き傾斜のルーバー52を備えることで、ラジエータインナーシュラウド45後方への走行風の流れを阻害することなく、走行風に含まれる水の浸入を抑えることができる。
【0041】
上記自動二輪車1において、エンジン13と、前記エンジン13の吸気側に接続されるエアクリーナ21と、を備え、前記ラジエータインナーシュラウド45の後方に、前記エアクリーナ21に繋がる吸気ダクト22の吸気口22aが配置され、前記吸気口22aは、ラジエータインナーシュラウド45の後方で車両前方に向けて開口し、車幅方向で前記導風口51と少なくとも一部が重なるように配置されている。
この構成によれば、エンジン13の吸気口22aとラジエータインナーシュラウド45の導風口51とが車幅方向で重なるように配置されることで、導風口51から吸気口22aへ走行風を導入しやすくなり、吸気効率を向上させることができる。
【0042】
上記自動二輪車1において、前記ヘッドパイプ6に転舵可能に支持される左右一対のフロントフォーク3を備え、前記導風口51は、前記左右一対のフロントフォーク3よりも後方かつ車幅方向内側に配置されている。
この構成によれば、導風口51が左右フロントフォーク3よりも後方かつ車幅方向内側に配置されることで、導風口51に至る走行風は、先に左右フロントフォーク3に当たって風速を落とした状態となるので、ルーバー52で整流しやすく、かつ水の浸入を防ぎやすくなる。すなわち、導風口51の整流効果および防水効果の向上を図ることができる。
【0043】
上記自動二輪車1において、前記ラジエータインナーシュラウド45は、上面視で車両後方側に凹んだ下部凹形状部49を有し、前記導風口51は、上面視で前記下部凹形状部49の後端位置49aから車幅方向内側に渡って形成されている。
この構成によれば、ラジエータインナーシュラウド45における上面視で車両後方側に凹む下部凹形状部49の後端位置49aから車幅方向内側の範囲(凹形状の車幅方向内側の範囲)に、導風口51が形成されることで、下部凹形状部49の車幅方向外側の範囲を導風ガイドとして利用し、より多くの走行風を導風口51に案内することができる。下部凹形状部49の車幅方向外側で案内した走行風は、流れの向きを変えて風速を落とした状態となるので、ルーバー52で整流しやすくなり、かつ水の浸入を防ぎやすくなる。すなわち、導風口51の整流効果および防水効果の向上を図ることができる。
【0044】
上記自動二輪車1において、前記エンジン13の前方に配置され、前記エンジン13の冷却に用いられるラジエータ23を備え、前記ラジエータインナーシュラウド45は、前記ラジエータ23に取り付けられるラジエータシュラウド40の車幅方向内側のインナーシュラウドである。
この構成によれば、ラジエータ23を覆うラジエータシュラウド40のインナーシュラウドに導風口51が形成されることで、ラジエータシュラウド40の後方に走行風を導入しやすくなる。このため、ラジエータシュラウド40の後方に配置したエアクリーナ21等の車両部品に対し、走行風を効率よく導くことができる。
【0045】
上記自動二輪車1において、前記エンジン13の上方に配置され、前記エンジン13の燃料を貯留する燃料タンク18と、前記燃料タンク18に取り付けられるタンクシュラウド30と、を備え、前記導風口51は、車両側面視で、前記タンクシュラウド30と少なくとも一部がラップしている。
この構成によれば、燃料タンク18を覆うタンクシュラウド30と導風口51とが車両側面視でラップすることで、車両側面視で導風口51を目立たなくし、外観性への影響を抑えることができる。また、タンクシュラウド30を利用して、より多くの走行風を導風口51に案内することができる。
【0046】
上記自動二輪車1において、前記導風口51は、前記車体フレーム5のフレーム部材(ヘッドパイプ6、メインフレーム7およびガセットパイプ7a)に囲まれたフレーム開口部5cと少なくとも一部がラップしている。
この構成によれば、導風口51と車体フレーム5のフレーム部材に囲まれたフレーム開口部5cとが互いに対向することで、ラジエータインナーシュラウド45の後方で車体フレーム5に囲まれた左右フレーム間領域5bに対し、走行風を効率よく導くことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ラジエータインナーシュラウドが導風口を備える構成に限らず、ラジエータアウターシュラウドやタンクシュラウドが導風口を備える構成でもよい。本実施形態の導風構造は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)にも適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
3 フロントフォーク
5 車体フレーム
5c フレーム開口部(領域)
6 ヘッドパイプ(フレーム部材)
7 メインフレーム(フレーム部材)
7a ガセットパイプ(フレーム部材)
13 エンジン(内燃機関)
18 燃料タンク
21 エアクリーナ
22a 吸気口
23 ラジエータ
30 タンクシュラウド
40 ラジエータシュラウド
41 ラジエータアウターシュラウド(アウターシュラウド)
45 ラジエータインナーシュラウド(導風部材、インナーシュラウド)
49 凹形状部
49a 後端位置
51 導風口
52 ルーバー
53 羽板
図1
図2
図3
図4
図5
図6