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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131713
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両のカウル構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B62J17/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042141
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】萩元 雅史
(72)【発明者】
【氏名】横山 晋
(72)【発明者】
【氏名】房野 知己
(57)【要約】
【課題】ヘッドライトの上方にバイザーを備える鞍乗り型車両のカウル構造において、ヘッドライト周辺の外観性を向上させるとともに構造部分の耐候性を向上させる。
【解決手段】車体前部にヘッドライト21を有する自動二輪車1に適用され、前記ヘッドライト21を覆うセンターカバー31と、前記センターカバー31の上部を上方から覆う上部カバー41と、前記上部カバー41の上方に配置されるバイザー51と、前記バイザー51を前記センターカバー31の上部に支持するバイザーステー55と、を有し、前記上部カバー41で覆われる位置に、前記バイザーステー55を前記センターカバー31に締結する締結部(ステー下部締結部56a、カバー側締結部32fおよび下部ボルト)が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部にヘッドライト(21)を有する鞍乗り型車両(1)のカウル構造において、
前記ヘッドライト(21)を覆うセンターカバー(31)と、
前記センターカバー(31)の上部を上方から覆う上部カバー(41)と、
前記上部カバー(41)の上方に配置されるバイザー(51)と、
前記バイザー(51)を前記センターカバー(31)の上部に支持するバイザーステー(55)と、を有し、
前記バイザーステー(55)を前記センターカバー(31)に締結する締結部(56a,32f,B3)を覆うように、前記上部カバー(41)が配置されていることを特徴とする鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項2】
前記上部カバー(41)は、複数の取り付け部(39)によって前記センターカバー(31)に取り付けられ、
前記複数の取り付け部(39)の少なくとも一つは、係止構造とされていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項3】
前記上部カバー(41)は、左右一対の分割カバー(42)に分割され、
前記バイザーステー(55)は、前記左右一対の分割カバー(42)の間の隙間から上方に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項4】
前記上部カバー(41)は、左右一対の分割カバー(42)に分割され、
前記係止構造は、前記分割カバー(42)が、前記センターカバー(31)に対して、前方かつ車幅方向外側から後方かつ車幅方向内側に向けて移動することで係止状態となることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項5】
前記左右一対の分割カバー(42)の車幅方向内側の内側縁部(42a)の間から、前記センターカバー(31)の一部が車両前方に露出し、
車両前面視で、前記バイザー(51)の車幅方向外側の外側部は、前記左右一対の分割カバー(42)の内側部と重なっていることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項6】
前記締結部(56a,32f,B3)は、少なくとも前後一対に設けられ、
車両側面視で、前後一対の前記締結部(56a,32f,B3)の間に、前記ヘッドライト(21)を車体に締結する第二締結部(24,27,B1)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項7】
車両前面視で、前後一対の前記締結部(56a,32f,B3)の少なくとも一方は、前記第二締結部(24,27,B1)と重なっていることを特徴とする請求項6に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【請求項8】
前記センターカバー(31)の上部には、開口部(32g)が形成され、
前記上部カバー(41)は、前記開口部(32g)を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両のカウル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両のカウル構造において、ヘッドライトの上方にメータバイザーを配置した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-190506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バイザーは透明又は半透明であることが多く、バイザーを支持するステー等を含む支持構造が外観されやすい。また、バイザーに覆われる部位とバイザーとの間に走行風が導入される構成では、支持構造に雨滴等の外乱の影響を受けやすい。
【0005】
そこで本発明は、ヘッドライトの上方にバイザーを備える鞍乗り型車両のカウル構造において、ヘッドライト周辺の外観性を向上させるとともに構造部分の耐候性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、車体前部にヘッドライト(21)を有する鞍乗り型車両(1)のカウル構造において、前記ヘッドライト(21)を覆うセンターカバー(31)と、前記センターカバー(31)の上部を上方から覆う上部カバー(41)と、前記上部カバー(41)の上方に配置されるバイザー(51)と、前記バイザー(51)を前記センターカバー(31)の上部に支持するバイザーステー(55)と、を有し、前記バイザーステー(55)を前記センターカバー(31)に締結する締結部(56a,32f,B3)を覆うように、前記上部カバー(41)が配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、ヘッドライトの灯体を覆うセンターカバーの上部に上部カバーを重ねるカウル構造において、バイザーを支持するバイザーステーをセンターカバーに締結する締結部が、上部カバーで覆われる部位に配置されることで、バイザーが透明又は半透明であっても、バイザーステーのセンターカバーへの締結部は上部カバーに隠されて見えなくなる。このため、ヘッドライト周辺のカウル構造のデザインに一体感が生まれて外観性を向上させるとともに、締結部への水掛かり等の外乱を抑えて締結部の耐候性を向上させることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記上部カバー(41)は、複数の取り付け部(39)によって前記センターカバー(31)に取り付けられ、前記複数の取り付け部(39)の少なくとも一つは、係止構造とされていることを特徴とする。
この構成によれば、上部カバーを取り付けるための複数の取り付け部が、ネジを用いない係止構造を含むことで、上部カバーの着脱が容易になり、ひいてはバイザーおよびバイザーステーの着脱を容易にすることができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様において、前記上部カバー(41)は、左右一対の分割カバー(42)に分割され、前記バイザーステー(55)は、前記左右一対の分割カバー(42)の間の隙間から上方に突出していることを特徴とする。
この構成によれば、上部カバーが左右一対の分割カバーに分割され、これら左右分割カバーの間からバイザーステーが上方に突出することで、バイザーステーおよびバイザーを取り付けたままでも、左右分割カバーを容易に着脱することができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第二の態様において、前記上部カバー(41)は、左右一対の分割カバー(42)に分割され、前記係止構造は、前記分割カバー(42)が、前記センターカバー(31)に対して、前方かつ車幅方向外側から後方かつ車幅方向内側に向けて移動することで係止状態となることを特徴とする。
この構成によれば、上部カバーがセンターカバーに対して、前方かつ車幅方向外側から後方かつ車幅方向内側に向けて移動することに伴い、上部カバーの係止構造が係止状態となることで、車両前方からの走行風や左右バンク時等における車幅方向外側からの風に対して、風の向きに逆らうことなく上部カバーの係止構造を係止状態に維持することができ、簡易な構成で確実な係止構造とすることができる
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第三又は第四の態様において、前記左右一対の分割カバー(42)の車幅方向内側の内側縁部(42a)の間から、前記センターカバー(31)の一部が車両前方に露出し、車両前面視で、前記バイザー(51)の車幅方向外側の外側部は、前記左右一対の分割カバー(42)の内側部と重なっていることを特徴とする。
この構成によれば、上部カバーの上方に配置されるバイザーの車幅方向外側部が、車両前面視で左右一対の分割カバーの内側部と重なることで、左右一対の分割カバーの間におけるセンターカバーの露出部の全体を、バイザーで覆うことが可能となる。このため、左右一対の分割カバーの間に車両前方から走行風が入り込み難くなり、左右一対の分割カバー間を走行風が流れることによる空力影響を抑えることができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第一から第五の態様の何れか一つにおいて、前記締結部(56a,32f,B3)は、少なくとも前後一対に設けられ、車両側面視で、前後一対の前記締結部(56a,32f,B3)の間に、前記ヘッドライト(21)を車体に締結する第二締結部(24,27,B1)が配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、バイザーステーをセンターカバーに締結する前後一対の締結部の間に、ヘッドライトを車体に締結する第二締結部が配置されることで、ヘッドライトの締結点とバイザーステーの締結点とを互いに近接させることができ、締結作業性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第七の態様は、上記第六の態様において、車両前面視で、前後一対の前記締結部(56a,32f,B3)の少なくとも一方は、前記第二締結部(24,27,B1)と重なっていることを特徴とする。
この構成によれば、バイザーステーをセンターカバーに締結する締結部と、ヘッドライトを車体に締結する第二締結部とが、車両前面視で互いに重なることで、ヘッドライトの締結点とバイザーステーの締結点とを互いに近接させることができ、締結作業性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第八の態様は、上記第一から第七の態様の何れか一つにおいて、前記センターカバー(31)の上部には、開口部(32g)が形成され、前記上部カバー(41)は、前記開口部(32g)を覆うように配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、センターカバーの上部に灯体の凸部を避ける等のための開口部を形成し、この開口部を上部カバーで覆うことで、通常時は開口部を上部カバーで隠して外観性を保ちつつ、作業時には上部カバーを外して開口部を露出させて種々作業を可能にする等、利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘッドライトの上方にバイザーを備える鞍乗り型車両のカウル構造において、ヘッドライト周辺の外観性を向上させるとともに構造部分の耐候性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の車体前部の右側面図である。
図2】上記自動二輪車のヘッドライト周辺の前面図である。
図3】上記自動二輪車のヘッドライト周辺の右側面図である。
図4図2に対して上部カバーを取り外した状態の前面図である。
図5図3に対して上部カバーを取り外した状態の右側面図である。
図6図3に対してヘッドライトカバーを取り外した状態の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中央を示す線CLが示されている。
【0017】
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪(操向輪)2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に操向可能に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ4b上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。
【0018】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6の上部から下後方へ延びる左右一対のメインフレーム7と、ヘッドパイプ6の下部と左右メインフレーム7の前部との間に渡る左右一対のガセットパイプ7aと、左右ガセットパイプ7aから下後方へ延びる左右一対のダウンフレーム7bと、を備えている。
【0019】
左右メインフレーム7の下方には、自動二輪車1の原動機を含むパワーユニットPUが支持されている。パワーユニットPUは、その前側に位置するエンジン(内燃機関、原動機)13と、後側に位置する変速機(不図示)と、を一体に有している。例えば、エンジン13は、クランクシャフトの回転軸を左右方向(車幅方向)に沿わせた空冷単気筒エンジンである。左右メインフレーム7の上方には、エンジン13の燃料を貯留する燃料タンク18が支持されている。
【0020】
図示しないが、車体フレーム5は、左右メインフレーム7の後端部の下方に連なるピボットフレームと、左右メインフレーム7およびピボットフレームの後方に連なるシートフレームと、を備えている。ピボットフレームには、スイングアームの前端部が上下揺動可能に支持されている。スイングアームの後端部には、自動二輪車1の後輪(駆動輪)が支持されている。後輪は、例えばチェーン式伝動機構を介して、パワーユニットPUの出力部(変速機の出力部)と連結されている。
【0021】
<ヘッドライト>
図2図3を併せて参照し、ステアリングステム4には、自動二輪車1のヘッドライトユニット(以下、単にヘッドライトという。)21が支持されている。ヘッドライト21は、左右一対のレンズ面22aを形成する一体の灯体22を備えている。灯体22の周囲は、左右レンズ面22aを除いてヘッドライトカバー30で覆われている。灯体22内には、LED等の光源およびリフレクタを含む発光部が収容されている。例えば、発光部は、横長の左右レンズ面22aの内側(後方側)に左右に並んで複数配置されている。ヘッドライト21は、左右レンズ面22aの各々を形成する左右別体の灯体を備える構成でもよい。
【0022】
各レンズ面22aは、車両前面視では、車幅方向外側ほど上方に位置するように傾斜した概略四角形状をなしている。各レンズ面22aは、車両側面視では、車両後方側ほど上方に位置するように傾斜した概略四角形状をなしている。各レンズ面22aは、全体的に車幅方向外側ほど上方かつ後方に位置するように傾斜し、さらに前方かつ車幅方向外側に凸の湾曲した形状をなしている。
【0023】
灯体22は、例えばステアリングステム4のトップブリッジ4bおよびボトムブリッジ4cの間に支持されたヘッドライトステー(不図示)に支持されている。
図4図6を参照し、灯体22の上部の左右一対の締結部(灯体側上部締結部24)は、ヘッドライトステーの上部の左右一対の締結部(ステー側上部締結部27)に、前方から挿脱される上部ボルトB1によって締結される。灯体22の下部の左右一対の締結部(灯体側下部締結部25)は、ヘッドライトステーの下部の左右一対の締結部(ステー側下部締結部28)に、下方から挿脱される下部ボルトB2によって締結される。ヘッドライト21およびヘッドライトカバー30は、ハンドル4aおよび前輪2とともに一体的に回動可能である。
【0024】
<ヘッドライトカバー>
図2図3を参照し、ヘッドライトカバー30は、車両前後方向(進行方向)の前方側に向けて走行(前進)する自動二輪車1の車体前部に備えられ、車両前方からの走行風を整流して運転者の上半身に走行風が当たり難くする。ヘッドライトカバー30の構成は、特に記載がなければ、車体左右中央CLに関して左右対称である。
【0025】
ヘッドライトカバー30は、センターカバー31と、上部カバー41と、下部カバー45と、を備えている。
センターカバー31は、合成樹脂製の成型品であり、灯体22に最も接近して灯体22の周囲を覆うカバー本体もしくはインナーカバーとして機能する。センターカバー31は、灯体22の前上部を前上方から覆う前上面部32と、左右レンズ面22aを車両前方に露出させる前面部35と、灯体22の左右側部を車幅方向外側から覆う左右側面部37と、灯体22の下部を下方から覆う下面部38と、を備えている。
【0026】
前上面部32は、車両側面視で前下がりに傾斜するともに、車幅方向外側ほど下方に位置するように傾斜した左右一対の傾斜上面部33を形成している。左右傾斜上面部33は、車幅方向で互いに離隔している。前上面部32は、左右傾斜上面部33の間に、車体左右中央CLに沿う稜線を形成するように上方に隆起した中央隆起部34を形成している。左右傾斜上面部33の車幅方向内側の内側縁部33aは、後方側ほど左右外側に位置するように傾斜している。中央隆起部34は、左右傾斜上面部33の内側縁部33aの間隔が広がることに伴い、後方側ほど左右幅を広げるように形成されている。
【0027】
前面部35は、左右レンズ面22aを車両前方に露出させる左右一対のレンズ開口36を形成している。各レンズ開口36は、左右レンズ面22aの対応するものの外形状に整合する開口形状を有している。センターカバー31の前面部35で左右レンズ開口36の間には、前上面部32および下面部38の前端の間に渡って上下に延び、左右レンズ面22aの間を仕切る架設部35aが形成されている。
【0028】
図4図5を参照し、前上面部32は、全体的に車両側面視で後上がりに傾斜した外周縁部32aを形成している。外周縁部32aは、車両前面視で左右レンズ開口36の上縁に沿うように延びる左右前端縁部32bと、左右前端縁部32bの後端から後方への傾斜を強めて延びる左右側縁部32cと、を含んでいる。左右前端縁部32bは、前面部35における車両前面視V字状の上縁部を形成している。左右側縁部32cは、それぞれ左右側面部37の上縁部を形成している。左右側縁部32cの後端の間の後端縁部は、左右傾斜上面部33の後端縁部(第一後端縁部32d)と、中央隆起部34の後端縁部(第二後端縁部32e)と、を含んでいる。第二後端縁部32eは、左右の第一後端縁部32dよりも上方に隆起して形成されている。この第二後端縁部32eの上方には、トップブリッジ4bの前方に支持されたメータ装置4dのメータケース4eの前壁部4e1が連なっている。
【0029】
図2図3を参照し、上部カバー41は、合成樹脂製の成型品であり、センターカバー31の左右傾斜上面部33を前上方から覆っている。上部カバー41は、左右一対の分割カバー42に分割されている。各分割カバー42は、左右傾斜上面部33の対応するものの外面に沿うように形成されている。各分割カバー42は、左右傾斜上面部33の対応するものと概ね重なる外形状を有している。左右分割カバー42は、車幅方向で互いに離隔している。左右分割カバー42の車幅方向内側の内側縁部42aの間には、センターカバー31の中央隆起部34が前上方に露出している。中央隆起部34は、車両側面視で左右分割カバー42よりも前上方に突出している。左右分割カバー42の間から前上方に露出する中央隆起部34は、ヘッドライトカバー30とは別体のメータバイザー(以下、単にバイザーという。)51によって前上方から覆われている。
【0030】
左右分割カバー42は、それぞれネジを用いない引っ掛けや差し込み等の係止構造によって、センターカバー31の前上面部32(左右同側の傾斜上面部33)に取り付けられている。各傾斜上面部33は、車両側面視で前下がりに傾斜するともに、車幅方向外側ほど下方に位置するように傾斜している。各分割カバー42は、対応する傾斜上面部33に対して、傾斜方向の下側から上側へ面沿いに移動させるようにして取り付けられる。例えば、前記係止構造は、分割カバー42又はセンターカバー31の一方に備える爪等の突起を、他方に備える凹部や開口等に引っ掛けたり差し込んだりする構造が挙げられる。突起が挿入される側にゴム製のグロメットや緩衝材等を備えてもよい。分割カバー42の取り付けに、ネジを用いない係止構造を含むことで、分割カバー42の着脱が容易になる。
【0031】
図4図5を併せて参照し、各傾斜上面部33には、対応する分割カバー42を上記面沿いに移動させることで、分割カバー42の下面側(裏面側)に備えられる係止部(不図示)を嵌め込ませて係止するセンター側係止部39が備えられている。センター側係止部39は、例えば傾斜上面部33の前端近傍の第一係止部39a、傾斜上面部33の後部の第二係止部39b、傾斜上面部33の内側縁部33a近傍の第三係止部39c、を備えている。これら複数の係止部の一部に、ネジを用いた係止構造を含んでもよい。この場合、ネジを用いた係止構造は、ネジを用いない係止構造の離脱方向への移動を抑えるのみでよい。ネジを用いた係止構造を含むことで、分割カバー42の取り付けがより確実なものとなる。
【0032】
下部カバー45は、合成樹脂製の成型品であり、センターカバー31の下面部38を下方から覆っている。下部カバー45は、下面部38を下方から覆う下面カバー部45aと、下面カバー部45aの左右側縁から上方へ屈曲して延び、左右側面部37を車幅方向外側から覆う左右一対の側面カバー部45bと、を備えている。
【0033】
バイザー51は、例えば透明又は半透明の合成樹脂製の成型品であり、中央隆起部34を前上方から覆う板状に形成されている。バイザー51は、後方側ほど左右幅を広げるように形成され、かつ車体左右中央CLに沿う稜線を形成するように湾曲した形状をなしている。バイザー51は、左右一対のバイザーステー55を介して、センターカバー31の前上面部32に取り付けられている。バイザー51は、例えば中央近傍に、走行風の一部をバイザー後方へ導く導風口を備えてもよい。
【0034】
各バイザーステー55は、例えば鋼板に曲げ加工等を施して形成されている。各バイザーステー55は、センターカバー31の前上面部32に沿う下壁部56と、下壁部56の車幅方向内側の内側縁から前上方に屈曲して延びる立壁部57と、立壁部57の上端縁からバイザー51の下面部38(裏面部)に沿って車幅方向外側に延びる上壁部58と、を備えている。
【0035】
下壁部56は、前後一対のステー下部締結部56aを備えている。センターカバー31の前上面部32は、前後のステー下部締結部56aに対応する前後一対のカバー側締結部32fを備えている。前後のステー下部締結部56aと前後のカバー側締結部32fとは、それぞれ前上面部32の法線方向から挿脱される下部ボルトB3によって締結される。
【0036】
前後のステー下部締結部56aと前後のカバー側締結部32fとは、それぞれ締結方向から見てバイザー51の左右側縁部よりも車幅方向外側又は後方に位置しており、バイザーステー55にバイザー51を取り付けた状態でも容易にボルトB3を着脱可能である。
【0037】
上壁部58は、前後一対のステー上部締結部58aを備えている。バイザー51の左右側部は、前後のステー上部締結部58aに対応する前後一対のバイザー側締結部52を備えている。前後のステー上部締結部58aと前後のバイザー側締結部52とは、それぞれバイザー51の左右側部の法線方向から着脱される上部ボルトB4によって締結される。
【0038】
前後のステー下部締結部56a、カバー側締結部32fおよび下部ボルトB3は、前上面部32の左右傾斜上面部33にそれぞれ左右分割カバー42を取り付けることによって、外部(前上方)から見ても外観されずに隠される。これにより、バイザーステー55のヘッドライトカバー30への締結部といった雑多な部位の露出を抑え、ヘッドライトカバー30を簡潔な外観にするとともに、走行中に雨水や異物が当たり難くして締結部の劣化を抑える。例えばバイザー51がオプション部品である場合、バイザー51およびバイザーステー55がない状態でも、センターカバー31のカバー側締結部32fは分割カバー42に隠されるため、使用しないカバー側締結部32fが外観に露出することはない。
【0039】
各バイザーステー55は、板状の立壁部57における前後幅方向を、左右同側の分割カバー42の内側縁部42aに沿わせるように配置されている。左右傾斜上面部33にそれぞれ左右分割カバー42を取り付けた状態で、左右バイザーステー55は、左右同側の分割カバー42の内側縁部42aの車幅方向内側に近接する位置(センターカバー31と分割カバー42との間の隙間)から立壁部57を突出させる。センターカバー31と分割カバー42との間の隙間は、板状の立壁部57を挿通可能なスリット状の隙間でよく、バイザー51およびバイザーステー55を備えない場合にも目立たずに済む。
【0040】
立壁部57の車幅方向外側に位置する前後のステー下部締結部56a、カバー側締結部32fおよび下部ボルトB3は、左右傾斜上面部33と左右分割カバー42との間に挟まれるように配置される。左右分割カバー42は、左右バイザーステー55よりも車幅方向外側に配置されるので、左右バイザーステー55およびバイザー51を取り付けたままの状態でも、左右分割カバー42を容易に着脱可能である。
【0041】
図4図5を参照し、前後のステー下部締結部56a(ここではカバー側締結部32fおよびボルトB3を含む)の間には、灯体22の上部を車体に締結する上部締結部(上部締結部24,27ならびにボルトB1)の少なくとも一部が配置されている。詳細には、車両側面視において、前後のステー下部締結部56aを直線的に結んで形成される領域には、灯体22の上部を車体に締結する上部締結部の上端部が配置されている。車両前面視において、前側のステー下部締結部56aの根本部分と灯体22の上部を車体に締結する上部締結部とは、互いに重なるように配置されている。
【0042】
前上面部32には、分割カバー42を係止するセンター側係止部39の凹部又は開口部の他、例えば灯体22の種々の凸形状を避ける等のための開口部32gが形成されている。開口部32gを含む種々の凹部又は開口部は、分割カバー42を取り付けた際には隠され、機能性を持たせながらも外観性への影響が抑えられる。
【0043】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1のカウル構造は、車体前部にヘッドライト21を有する自動二輪車1に適用され、前記ヘッドライト21を覆うセンターカバー31と、前記センターカバー31の上部を上方から覆う上部カバー41と、前記センターカバー31の下部を下方から覆う下部カバー45と、前記上部カバー41の上方に配置されるバイザー51と、前記バイザー51を前記センターカバー31の上部に支持するバイザーステー55と、を有し、前記上部カバー41で覆われる位置に、前記バイザーステー55を前記センターカバー31に締結する締結部(ステー下部締結部56a、カバー側締結部32fおよび下部ボルトB3)が配置されている。
この構成によれば、ヘッドライト21の灯体22を覆うセンターカバー31の上部に上部カバー41を重ねるカウル構造において、バイザー51を支持するバイザーステー55をセンターカバー31に締結する締結部が、上部カバー41で覆われる部位に配置されることで、バイザー51が透明又は半透明であっても、バイザーステー55のセンターカバー31への締結部は上部カバー41に隠されて見えなくなる。このため、ヘッドライト21周辺のカウル構造のデザインに一体感が生まれて外観性を向上させるとともに、締結部への水掛かり等の外乱を抑えて締結部の耐候性を向上させることができる。
【0044】
上記自動二輪車1のカウル構造において、前記上部カバー41は、複数の取り付け部(センター側係止部39)によって前記センターカバー31に取り付けられ、前記複数の取り付け部の少なくとも一つは、ネジを用いない係止構造とされている。
この構成によれば、上部カバー41を取り付けるための複数の取り付け部(センター側係止部39)が、ネジを用いない係止構造を含むことで、上部カバー41の着脱が容易になり、ひいてはバイザー51およびバイザーステー55の着脱を容易にすることができる。
【0045】
上記自動二輪車1のカウル構造において、前記上部カバー41は、左右一対の分割カバー42に分割され、前記バイザーステー55は、前記左右一対の分割カバー42の間の隙間から上方に突出している。
この構成によれば、上部カバー41が左右一対の分割カバー42に分割され、これら左右分割カバー42の間からバイザーステー55が上方に突出することで、バイザーステー55およびバイザー51を取り付けたままでも、左右分割カバー42を容易に着脱することができる。
【0046】
上記自動二輪車1のカウル構造において、前記係止構造は、前記分割カバー42が、前記センターカバー31に対して、前方かつ車幅方向外側から後方かつ車幅方向内側に向けて移動することで係止状態となる。
この構成によれば、上部カバー41がセンターカバー31に対して、前方かつ車幅方向外側から後方かつ車幅方向内側に向けて移動することに伴い、上部カバー41の係止構造が係止状態となることで、車両前方からの走行風や左右バンク時等における車幅方向外側からの風に対して、風の向きに逆らうことなく上部カバー41の係止構造を係止状態に維持することができ、簡易な構成で確実な係止構造とすることができる。
【0047】
上記自動二輪車1のカウル構造において、前記左右一対の分割カバー42の車幅方向内側の内側縁部42aの間から、前記センターカバー31の一部が車両前方に露出し、車両前面視で、前記バイザー51の車幅方向外側の外側部は、前記左右一対の分割カバー42の内側部と重なっている。
この構成によれば、上部カバー41の上方に配置されるバイザー51の車幅方向外側部が、車両前面視で左右一対の分割カバー42の内側部と重なることで、左右一対の分割カバー42の間におけるセンターカバー31の露出部の全体を、バイザー51で覆うことが可能となる。このため、左右一対の分割カバー42の間に車両前方から走行風が入り込み難くなり、左右一対の分割カバー42の間を走行風が流れることによる空力影響を抑えることができる。
【0048】
上記自動二輪車1のカウル構造において、前記締結部(ステー下部締結部56a、カバー側締結部32fおよび下部ボルトB3)は、少なくとも前後一対に設けられ、車両側面視で、前後一対の前記締結部の間に、前記ヘッドライト21を車体に締結する第二締結部(上部締結部24,27ならびにボルトB1)が配置されている。
この構成によれば、バイザーステー55をセンターカバー31に締結する前後一対の締結部の間に、ヘッドライト21を車体に締結する第二締結部が配置されることで、ヘッドライト21の締結点とバイザーステー55の締結点とを互いに近接させることができ、締結作業性を向上させることができる。
【0049】
上記自動二輪車1のカウル構造において、車両前面視で、前後一対の前記締結部の少なくとも一方(前側の締結部)は、前記第二締結部と重なっている。
この構成によれば、バイザーステー55をセンターカバー31に締結する締結部と、ヘッドライト21を車体に締結する第二締結部とが、車両前面視で互いに重なることで、ヘッドライト21の締結点とバイザーステー55の締結点とを互いに近接させることができ、締結作業性を向上させることができる。
【0050】
上記自動二輪車1のカウル構造において、前記センターカバー31の上部には、開口部32gが形成され、前記上部カバー41は、前記開口部32gを覆うように配置されている。
この構成によれば、センターカバー31の上部に灯体22の凸部を避ける等のための開口部32gを形成し、この開口部32gを上部カバー41で覆うことで、通常時は開口部32gを上部カバー41で隠して外観性を保ちつつ、作業時には上部カバー41を外して開口部32gを露出させて種々作業を可能にする等、利便性を向上させることができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態のカウル構造は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)にも適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
21 ヘッドライト
22 灯体
24 灯体側上部締結部(第二締結部)
27 ステー側上部締結部(第二締結部)
30 ヘッドライトカバー
31 センターカバー
32f カバー側締結部(締結部)
32g 開口部
39 センター側係止部(取り付け部、係止構造)
39a,39b,39c 第一~第三係止部
41 上部カバー
42 分割カバー
42a 内側縁部
51 バイザー
55 バイザーステー
56a 締結部(締結部)
B1 ボルト(第二締結部)
B3 ボルト(締結部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6