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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131715
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16J15/34 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042146
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 宏起
(72)【発明者】
【氏名】冨田 優記
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041AA02
3J041DA02
3J041DA05
(57)【要約】
【課題】回転密封環と静止密封環との摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況を正確に把握することができるメカニカルシールを提供する。
【解決手段】メカニカルシール1は、回転密封環18を有する回転側ユニット2と、静止密封環33を有する静止側ユニット3と、を備え、回転密封環18と静止密封環33との摺動部分18a,33aがフラッシング流体により冷却される。メカニカルシール1は、静止側ユニット3に設けられ、摺動部分18a,33aを冷却する前のフラッシング流体の第1温度を検出する第1温度検出部71と、静止側ユニット3において第1温度検出部71とは別体に設けられ、摺動部分18a,33aを冷却した後のフラッシング流体の第2温度を検出する第2温度検出部72と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機器の回転軸に一体回転可能に設けられ、回転密封環を有する回転側ユニットと、
前記回転軸を包囲している、前記回転機器のケーシングに設けられ、前記回転密封環が摺動する静止密封環を有する静止側ユニットと、を備え、
前記回転密封環と前記静止密封環との摺動部分がフラッシング流体により冷却されるメカニカルシールであって、
前記静止側ユニットに設けられ、前記摺動部分を冷却する前の前記フラッシング流体の第1温度を検出する第1温度検出部と、
前記静止側ユニットにおいて前記第1温度検出部とは別体に設けられ、前記摺動部分を冷却した後の前記フラッシング流体の第2温度を検出する第2温度検出部と、を備えるメカニカルシール。
【請求項2】
前記静止側ユニットは、
前記回転機器の機内領域と機外領域とを区画するための筒状のシールケースと、
前記シールケースの周方向の所定箇所に形成され、前記摺動部分を冷却する前の前記フラッシング流体を前記機内領域に供給する第1流路と、
前記機内領域において前記シールケースに設けられ、前記第1流路からの前記フラッシング流体を前記摺動部分の周方向の複数箇所に向けて供給する第2流路を形成するアダプタリングと、をさらに有し、
前記アダプタリングは、当該アダプタリングの径方向外側から径方向内側に向かって前記第2温度検出部が挿入される取付孔を有し、
前記取付孔の前記径方向外側の開口端部には、前記径方向内側から前記径方向外側へ向かうにしたがって前記取付孔の孔径が徐々に大きくなるテーパ内周面が形成されている、請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記アダプタリングは、
前記取付孔よりも前記径方向外側に配置され、前記取付孔と連通する流入路と、
前記流入路の前記径方向外側から前記流入路内に流入する前記フラッシング流体に圧力損失を生じさせる圧損部と、をさらに有する、請求項2に記載のメカニカルシール。
【請求項4】
前記第2温度検出部が前記取付孔に挿入された状態で、前記第2温度検出部の測温点は、前記摺動部分よりも前記機内領域側に位置する、請求項2又は請求項3に記載のメカニカルシール。
【請求項5】
前記シールケースには、前記第1流路として使用可能な孔が、周方向に複数形成されており、
複数の前記孔のうちの1つは、前記第1流路とされ、
複数の前記孔のうちの他の少なくとも1つは、前記第2温度検出部が挿入される挿入孔とされている、請求項2又は請求項3に記載のメカニカルシール。
【請求項6】
前記静止側ユニットは、
前記回転機器の機内領域と機外領域とを区画するための筒状のシールケースと、
前記シールケースの周方向の所定箇所に形成され、前記摺動部分を冷却する前の前記フラッシング流体を前記機内領域に供給する第1流路と、
前記機内領域において前記シールケースに設けられ、前記第1流路からの前記フラッシング流体を前記摺動部分の周方向の複数箇所に向けて供給する第2流路を形成するアダプタリングと、をさらに有し、
前記第2流路は、前記アダプタリングの径方向外側に形成されるとともに、前記摺動部分に供給する前の前記フラッシング流体を周方向に流す環状流路を有し、
前記第1温度検出部の測温点は、前記環状流路内に位置する、請求項1又は請求項2に記載のメカニカルシール。
【請求項7】
前記シールケースには、前記第1流路として使用可能な孔が、周方向に複数形成されており、
複数の前記孔のうちの1つは、前記第1流路とされ、
複数の前記孔のうちの他の少なくとも1つは、前記第1温度検出部が挿入される挿入孔とされている、請求項6に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機器の内部の被密封流体をシールするものとして、例えば特許文献1に示すメカニカルシールが知られている。特許文献1のメカニカルシールは、回転機器の回転軸に設けられて静止密封環に対して摺動する回転密封環(回転環)と、回転機器のハウジングに設けられた静止密封環(固定環)と、を備えている。回転密封環と静止密封環との摺動部分は、フラッシング流体により冷却及び潤滑されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-060079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のメカニカルシールにおいて、回転密封環と静止密封環との摺動部分がフラッシング流体により適切に冷却されているか否かを把握するためには、メカニカルシールを分解し、前記摺動部分を目視によって直接観察する必要がある。このため、メカニカルシールの運転中に、前記摺動部分の冷却状況を把握するのが困難である。
【0005】
そこで、本出願人は、前記摺動部分を冷却する前のフラッシング流体の温度と、前記摺動部分を冷却した後のフラッシング流体の温度との温度差を検出する温度差検出部を備えたメカニカルシールを提案している(国際出願PCT/JP2022/042538。以下、先願発明という)。この先願発明によって、温度差検出部が検出した前記温度差に基づいて前記摺動部分の冷却状況を把握することができるが、前記摺動部分の冷却状況をより正確に把握したいという要望がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転密封環と静止密封環との摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況を正確に把握することができるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、回転機器の回転軸に一体回転可能に設けられ、回転密封環を有する回転側ユニットと、前記回転軸を包囲している、前記回転機器のケーシングに設けられ、前記回転密封環が摺動する静止密封環を有する静止側ユニットと、を備え、前記回転密封環と前記静止密封環との摺動部分がフラッシング流体により冷却されるメカニカルシールであって、前記静止側ユニットに設けられ、前記摺動部分を冷却する前の前記フラッシング流体の第1温度を検出する第1温度検出部と、前記静止側ユニットにおいて前記第1温度検出部とは別体に設けられ、前記摺動部分を冷却した後の前記フラッシング流体の第2温度を検出する第2温度検出部と、を備えるメカニカルシールである。
【0008】
本開示のメカニカルシールによれば、第1温度検出部と第2温度検出部が別体であるため、冷却前のフラッシング流体の第1温度を正確に検出できる位置に第1温度検出部を設けることができ、且つ冷却後のフラッシング流体の第2温度を正確に検出できる位置に第2温度検出部を設けることができる。これにより、第1温度と第2温度との正確な温度差を算出できるので、回転密封環と静止密封環との摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況を正確に把握することができる。
【0009】
(2)前記(1)のメカニカルシールにおいて、前記静止側ユニットは、前記回転機器の機内領域と機外領域とを区画するための筒状のシールケースと、前記シールケースの周方向の所定箇所に形成され、前記摺動部分を冷却する前の前記フラッシング流体を前記機内領域に供給する第1流路と、前記機内領域において前記シールケースに設けられ、前記第1流路からの前記フラッシング流体を前記摺動部分の周方向の複数箇所に向けて供給する第2流路を形成するアダプタリングと、をさらに有し、前記アダプタリングは、当該アダプタリングの径方向外側から径方向内側に向かって前記第2温度検出部が挿入される取付孔を有し、前記取付孔の前記径方向外側の開口端部には、前記径方向内側から前記径方向外側へ向かうにしたがって前記取付孔の孔径が徐々に大きくなるテーパ内周面が形成されているのが好ましい。
この場合、第2温度検出部は、アダプタリングの径方向外側から取付孔に挿入されるときに、取付孔の開口端部に形成されたテーパ内周面により取付孔の前記径方向内側へ案内される。これにより、アダプタリングに対して第2温度検出部を適切な位置に取り付けることができるので、第2温度検出部は第2温度をさらに正確に検出することができる。その結果、前記摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況をさらに正確に把握することができる。
【0010】
(3)前記(2)のメカニカルシールにおいて、前記アダプタリングは、前記取付孔よりも前記径方向外側に配置され、前記取付孔と連通する流入路と、前記流入路の前記径方向外側から前記流入路内に流入する前記フラッシング流体に圧力損失を生じさせる圧損部と、をさらに有するのが好ましい。
この場合、圧損部が、流入路内に流入するフラッシング流体に圧力損失を生じさせることで、フラッシング流体が流入路に流入しにくくなる。これにより、冷却前のフラッシング流体が、流入路から、取付孔と第2温度検出部との間を通過し、機内領域内の冷却後のフラッシング流体と混入するのを抑制することができる。その結果、第2温度検出部は、第2温度をさらに正確に検出することができる。また、冷却前のフラッシング流体が取付孔と第2温度検出部との間を通過するのを抑制するシール部材(ゴム栓等)が不要になる。これにより、取付孔にシール部材を介して第2温度検出部を取り付ける面倒な作業が不要になるので、取付孔への第2温度検出部の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【0011】
(4)前記(2)又は(3)のメカニカルシールにおいて、前記第2温度検出部が前記取付孔に挿入された状態で、前記第2温度検出部の測温点は、前記摺動部分よりも前記機内領域側に位置するのが好ましい。
この場合、前記摺動部分よりも機内領域側は、冷却後のフラッシング流体が占める割合が高いので、第2温度検出部は、第2温度をさらに正確に検出することができる。これにより、前記摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況をさらに正確に把握することができる。
【0012】
(5)前記(2)から(4)のいずれか一のメカニカルシールにおいて、前記シールケースには、前記第1流路として使用可能な孔が、周方向に複数形成されており、複数の前記孔のうちの1つは、前記第1流路とされ、複数の前記孔のうちの他の少なくとも1つは、前記第2温度検出部が挿入される挿入孔とされているのが好ましい。
この場合、シールケースにおいて、第1流路として使用可能な複数の孔のうち、第1流路として使用しない孔を、第2温度検出部が挿入される挿入孔として使用することができる。これにより、シールケースに専用の挿入孔を形成する必要がないので、取付孔への第2温度検出部の取り付け作業をさらに簡単に行うことができる。
【0013】
(6)前記(1)から(5)のいずれか一のメカニカルシールにおいて、前記静止側ユニットは、前記回転機器の機内領域と機外領域とを区画するための筒状のシールケースと、前記シールケースの周方向の所定箇所に形成され、前記摺動部分を冷却する前の前記フラッシング流体を前記機内領域に供給する第1流路と、前記機内領域において前記シールケースに設けられ、前記第1流路からの前記フラッシング流体を前記摺動部分の周方向の複数箇所に向けて供給する第2流路を形成するアダプタリングと、をさらに有し、前記第2流路は、前記アダプタリングの径方向外側に形成されるとともに、前記摺動部分に供給する前の前記フラッシング流体を周方向に流す環状流路を有し、前記第1温度検出部の測温点は、前記環状流路内に位置するのが好ましい。
この場合、第1温度検出部は、その測温点がシールケースの第1流路内に位置する場合と比較して、シールケースからの伝熱の影響を受けにくいフラッシング流体を測温することができる。その結果、第1温度検出部は第1温度をさらに正確に検出できるので、前記摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況をさらに正確に把握することができる。
【0014】
(7)前記(6)のメカニカルシールにおいて、前記シールケースには、前記第1流路として使用可能な孔が、周方向に複数形成されており、複数の前記孔のうちの1つは、前記第1流路とされ、複数の前記孔のうちの他の少なくとも1つは、前記第1温度検出部が挿入される挿入孔とされているのが好ましい。
この場合、シールケースにおいて、第1流路として使用可能な複数の孔のうち、第1流路として使用しない孔を、第1温度検出部が挿入される挿入孔として使用することができる。これにより、シールケースやケーシングに専用の挿入孔を形成する必要がないので、挿入孔への第1温度検出部の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示のメカニカルシールによれば、回転密封環と静止密封環との摺動部分におけるフラッシング流体の冷却状況を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の第1実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
図2図1の下側におけるアダプタリングとその周辺を示す拡大断面図である。
図3図1のI-I矢視断面図である。
図4図1の上側におけるアダプタリングとその周辺を示す拡大断面図である。
図5】本開示の第2実施形態に係るメカニカルシールにおけるアダプタリングの取付孔とその周辺を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本開示の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本開示の第1実施形態に係るメカニカルシール1の断面図である。図1において、メカニカルシール1は、ポンプ等の回転機器90に用いられ、回転機器90の内部において被密封流体を密封するものである。回転機器90は、回転軸91と、回転軸91を包囲しているケーシング92と、を備えている。メカニカルシール1は、回転軸91とケーシング92との間において、回転軸91の軸方向に沿って配置されている。
【0018】
以下、本明細書において、「軸方向」とは、回転軸91の中心線Cに沿った方向(この中心線Cに平行な方向も含む)である。また、本開示において「径方向」とは、回転軸91の中心線Cに対して直交する方向であり、「周方向」とは、回転軸91の中心線C回りの方向である。また、本明細書では、便宜上、図1の右側を軸方向一方側といい、図1の左側を軸方向他方側という(図2図4及び図5についても同様)。
【0019】
本実施形態のメカニカルシール1は、回転軸91に一体回転可能に設けられた回転側ユニット2と、ケーシング92に設けられた静止側ユニット3と、を備えている。
【0020】
<回転側ユニット>
回転側ユニット2は、スリーブ11、ストッパリング12、第1リテーナ13、ドライブピン14、ドライブカラー15、スプリング16、第2リテーナ17、及び回転密封環18を備えている。
【0021】
スリーブ11は、円筒状に形成され、回転軸91の外周に嵌合されている。スリーブ11の軸方向他方側の外周には、ストッパリング12が嵌合されている。ストッパリング12には、その周方向において複数のセットスクリュー19が径方向に締め込まれている。これにより、スリーブ11は、回転軸91に固定されている。スリーブ11の軸方向一方側の内周面と、回転軸91の外周面との間は、Oリング20によりシール(二次シール)されている。
【0022】
第1リテーナ13は、スプリングリテーナである。第1リテーナ13は、環状に形成され、スリーブ11の軸方向一方側の外周に嵌合されている。第1リテーナ13には、その周方向において複数(図1では1つのみ図示)のセットスクリュー21が径方向に締め込まれている。これにより、第1リテーナ13は、スリーブ11に固定されている。第1リテーナ13には、周方向に間隔をあけて複数(図1では1つのみ図示)のドライブピン14が軸方向に貫通している。ドライブピン14は、第1リテーナ13に対して軸方向に移動可能に保持されている。
【0023】
ドライブカラー15は、第1リテーナ13の軸方向他方側に間隔をあけて配置されている。ドライブカラー15は、環状に形成され、スリーブ11の外周面に対して軸方向に移動可能に嵌合されている。ドライブカラー15には、ドライブピン14の軸方向他方側の端部が固定(ねじ止め)されている。これにより、ドライブカラー15は、ドライブピン14を介して第1リテーナ13に対して軸方向に移動可能に保持され、かつ第1リテーナ13に対する相対回転が規制されている。
【0024】
ドライブカラー15と第1リテーナ13との間には、スプリング16が周方向に間隔をあけて複数(図1では1つのみ図示)設けられている。スプリング16は、第1リテーナ13に対してドライブカラー15を軸方向他方側へ付勢している。
【0025】
第2リテーナ17は、ドライブカラー15の軸方向他方側に隣接して配置されている。第2リテーナ17は、環状に形成され、スリーブ11の外周面に対して軸方向に移動可能に嵌合されている。第2リテーナ17の軸方向一方側の端部は、ドライブカラー15に固定されている。これにより、第2リテーナ17は、ドライブカラー15と共にスリーブ11に対して軸方向に移動可能に保持されながら、ドライブカラー15に対する相対回転が規制されている。第2リテーナ17の内周面とスリーブ11の外周面との間は、Oリング22によりシール(二次シール)されている。
【0026】
回転密封環18は、環状に形成され、第2リテーナ17の軸方向他端部に固定(焼き嵌め)されている。回転密封環18の軸方向他方側の端面には、シール面18aが形成されている(図2も参照)。回転密封環18は、スプリング16により、ドライブカラー15及び第2リテーナ17を介して軸方向他方側へ付勢されている。
【0027】
<静止側ユニット>
静止側ユニット3は、シールケース31、ブッシュ32、静止密封環33、及びアダプタリング50を備えている。シールケース31は、円筒状に形成されている。シールケース31は、回転機器90の機内領域Aと機外領域Bとを区画するために、回転軸91を包囲してケーシング92に固定されている。
【0028】
本実施形態では、シールケース31の径方向外側部は、ケーシング92の軸方向他方側の側面に当接した状態で、ボルト34によりケーシング92に固定されている。シールケース31の軸方向一方側の側面とケーシング92の軸方向他方側の側面との間は、Oリング35によりシール(二次シール)されている。
【0029】
シールケース31の軸方向他方側の内周には、ブッシュ32が取り付けられている。ブッシュ32は、環状に形成され、スリーブ11の外周面との間にクリアランスシールを形成している。シールケース31の軸方向他方側の端面には、環状の規制部材36が固定されている。
【0030】
規制部材36には、ブッシュ32の軸方向他方側の端面が当接している。これにより、シールケース31に対してブッシュ32が軸方向他方側に抜け出るのを規制している。規制部材36は、ブッシュ32に係合される係合ピン36aを有している。これにより、規制部材36は、スリーブ11と共にブッシュ32が回転するのを規制している。
【0031】
静止密封環33は、環状に形成され、シールケース31の内周面に嵌合して固定されている。静止密封環33の外周面とシールケース31の内周面との間は、Oリング37によりシール(二次シール)されている。静止密封環33の軸方向一方側の端面にはシール面33aが形成されている(図2も参照)。
【0032】
静止密封環33のシール面33aには、回転密封環18のシール面18aが摺動するようになっている。静止密封環33は、シールケース31の内周に固定された規制ピン38により、回転密封環18に対する相対回転が規制されている。
【0033】
アダプタリング50は、機内領域Aにおいて、回転密封環18と静止密封環33との摺動部分(シール面18a,33a)の径方向外方に配置されている。以下、回転密封環18と静止密封環33との摺動部分は、摺動部分18a,33aともいう。本実施形態のアダプタリング50は、円筒状に形成されたリング本体51によって構成されている。リング本体51は、シールケース31に着脱可能に設けられている。
【0034】
図2は、図1の下側におけるアダプタリング50とその周辺を示す拡大断面図である。図1及び図2において、リング本体51の外周面51aの軸方向一方側は、シールケース31の内周面に嵌合されている。リング本体51の軸方向他方側の端面51bは、シールケース31の内周において径方向に延びる段差面31eに当接している。
【0035】
リング本体51の軸方向一方側の端面51cは、シールケース31に取り付けられたスナップリング39に当接している。これにより、リング本体51は、段差面31eとスナップリング39との間に保持されることで、シールケース31から外れないように保持されている。
【0036】
スナップリング39は、シールケース31の内周に形成された環状の凹溝31fに着脱可能に嵌め込まれている。スナップリング39を凹溝31fから取り外すことで、リング本体51をシールケース31から取り外すことができる。
【0037】
<フラッシング流体の流路>
静止側ユニット3には、機外領域Bから機内領域Aにフラッシング流体を供給する流路が形成されている。フラッシング流体は、回転密封環18と静止密封環33との摺動部分18a,33aを冷却及び潤滑するものである。本実施形態では、フラッシング流体として被密封流体が用いられる。以下、摺動部分18a,33aを冷却する前のフラッシング流体を「冷却前のフラッシング流体」ともいう。また、摺動部分18a,33aを冷却した後のフラッシング流体を「冷却後のフラッシング流体」ともいう。
【0038】
図3は、図1のI-I矢視断面図である。なお、図3では、シールケース31とアダプタリング50のみを図示している。図1及び図3において、シールケース31の軸方向一方側には、その周方向に間隔をあけて複数(図3では4個)の孔31aが形成されている。各孔31aは、シールケース31を径方向に貫通して形成されている。各孔31aは、冷却前のフラッシング流体を機外領域Bから機内領域Aに供給する第1流路31bとして使用可能である。
【0039】
第1流路31bとして使用可能な孔31aをシールケース31の周方向に複数形成しているのは、フラッシング流体が流れる配管をシールケース31に接続する周方向の位置が、回転機器90の種類等によって異なるからである。本実施形態では、図3の右側に示された孔31aが、第1流路31bとして使用される。したがって、シールケース31の周方向の所定箇所には、冷却前のフラッシング流体を機外領域Bから機内領域Aに供給する第1流路31bが形成されている。
【0040】
第1流路31bとして使用されない他の孔31aは、以下、予備孔31cともいう。予備孔31cの径方向外側の開口は、閉塞部材40によって閉塞されている。閉塞部材40は、例えば、予備孔31cに締め込まれる第1ねじ部41と、第1ねじ部41の頭部に締め込まれる第2ねじ部42と、を有している。閉塞部材40は、環状流路61(後述)から予備孔31c内に流入したフラッシング流体が外部に漏洩するのを抑制している。
【0041】
シールケース31及びアダプタリング50は、シールケース31の複数の孔31a(第1流路31b及び予備孔31c)と連通する第2流路60を形成している。第2流路60は、第1流路31bからのフラッシング流体を摺動部分18a,33aの周方向の複数箇所に向けて供給する流路である。第2流路60は、環状流路61と、複数の供給流路62と、を有している。
【0042】
環状流路61は、シールケース31の内周に形成された第1環状溝61aと、アダプタリング50の外周に形成された第2環状溝61bと、によって構成されている。第1環状溝61aは、シールケース31の各孔31aと連通している。第2環状溝61bは、リング本体51の外周において、第1環状溝61aの対向する位置に形成されている。第2環状溝61bの溝幅は、第1環状溝61aの溝幅と同一である。第1流路31bからの冷却前のフラッシング流体は、摺動部分18a,33aに供給される直前に、環状流路61内において周方向に流れて循環する。
【0043】
図1及び図2において、複数の供給流路62は、環状流路61から機内領域Aに冷却前のフラッシング流体を供給する流路である。供給流路62は、第2環状溝61bの底面における周方向の複数箇所からリング本体51(アダプタリング50)を径方向に貫通して形成されている。これにより、複数の供給流路62から機内領域Aに冷却前のフラッシング流体が供給されるので、摺動部分18a,33aを周方向全体にわたって万遍なく冷却及び潤滑することができる。
【0044】
各供給流路62は、その径方向内側の開口62aが摺動部分18a,33aよりも軸方向他方側(機外領域B側)に位置するように形成されている。これにより、機内領域Aでは、冷却前のフラッシング流体と冷却後のフラッシング流体は、概ね、摺動部分18a,33aの延長仮想線Xを境界として軸方向両側に分かれる。具体的には、機内領域Aにおいて、延長仮想線Xよりも軸方向他方側の領域を冷却前のフラッシング流体が占め、延長仮想線Xよりも軸方向一方側の領域を冷却後のフラッシング流体が占める。なお、各供給流路62の開口62aは、摺動部分18a,33aよりも軸方向一方側(機外領域A側)に位置してもよいし、摺動部分18a,33aを軸方向に跨いで位置してよい。
【0045】
<第1温度検出部>
メカニカルシール1は、静止側ユニット3に設けられた第1温度検出部71をさらに備えている。第1温度検出部71は、冷却前のフラッシング流体の第1温度を検出する。第1温度検出部71は、例えばシース熱電対からなる。
【0046】
第1温度検出部71は、シース71aと、熱電対素線71bと、を有している。シース71aは、例えば金属製の細長い管部材からなり、熱電対素線71bを被覆している。シース71aは、シールケース31に形成された挿入孔に挿入されている。本実施形態では、シールケース31における図1の下側の予備孔31cが、シース71aが挿入される挿入孔として使用されている。挿入孔(予備孔)31cに挿入されたシース71aの基端部(図1の下端部)は、閉塞部材40に取り付けられている。
【0047】
熱電対素線71bは、その先端(図2の上端)に測温点71cを有している。測温点71cは、第2流路60の環状流路61内に位置している。本実施形態の測温点71cは、例えば第2環状溝61b内に位置している。第1温度検出部71は、環状流路61内を循環する冷却前のフラッシング流体を、測温点71cにより測温することで、当該フラッシング流体の第1温度を検出する。
【0048】
<第2温度検出部>
図4は、図1の上側におけるアダプタリング50とその周辺を示す拡大断面図である。図1及び図4において、メカニカルシール1は、静止側ユニット3において第1温度検出部71とは別体に設けられた第2温度検出部72をさらに備えている。第2温度検出部72は、冷却後のフラッシング流体の第2温度を検出する。第2温度検出部72は、例えば、第1温度検出部71と同じシース熱電対からなる。
【0049】
第2温度検出部72は、シース72aと、熱電対素線72bと、を有している。シース72aは、例えば金属製の細長い管部材からなり、熱電対素線72bを被覆している。シース72aは、シールケース31に形成された挿入孔に挿入されている。本実施形態では、シールケース31における図1の上側の予備孔31cが、シース72aが挿入される挿入孔として使用されている。
【0050】
挿入孔(予備孔)31cに挿入されたシース72aの先端部(図1の下端部)は、リング本体51に形成された取付孔54に挿入されて取り付けられている。取付孔54は、挿入孔31cに対応する位置において、第2環状溝61bの底面からリング本体51を径方向に貫通して形成されている(図3も参照)。
【0051】
取付孔54の内周には、テーパ内周面54aと、嵌合内周面54bと、が形成されている。テーパ内周面54aは、取付孔54の径方向外側(図4の上側)の開口端部に形成されている。嵌合内周面54bは、取付孔54における前記開口端部を除く部分に形成されている。嵌合内周面54bは、径方向(図4の上下方向)の全長にわたって一定の内径を有している。嵌合内周面54bの内径は、シース72aの外径と略同一である。
【0052】
テーパ内周面54aの内径(取付孔54の前記開口端部の孔径)は、リング本体51の径方向内側から径方向外側へ向かうにしたがって徐々に大きくなっている。テーパ内周面54aの最大外径は、シース72aの外径よりも大きい。テーパ内周面54aの最小内径は、嵌合内周面54bの内径と同一である。シース72aの先端部は、リング本体51の径方向外側から径方向内側に向かって取付孔54を貫通するように挿入される。その際、シース72aの先端部は、テーパ内周面54aによって嵌合内周面54bへ案内され、嵌合内周面54bに嵌合される。
【0053】
熱電対素線72bは、その先端(図4の下端)に測温点72cを有している。第2温度検出部72が取付孔54の嵌合内周面54bに嵌合された状態で、測温点72cは、リング本体51よりも径方向内方に位置し、且つ摺動部分18a,33aよりも軸方向一方側(機内領域A側)に位置している。第2温度検出部72は、機内領域Aにおいて摺動部分18a,33aよりも軸方向一方側にある冷却後のフラッシング流体を、測温点72cにより測温することで、当該フラッシング流体の第2温度を検出する。
【0054】
メカニカルシール1の保守点検を行う事業者等は、第1温度検出部71及び第2温度検出部72がそれぞれ検出した第1温度と第2温度との温度差を算出することで、その温度差によって摺動部分18a,33aの冷却状況を把握することができる。具体的には、事業者等は、前記温度差が相対的に大きければ、摺動部分18a,33aでは摩擦熱等に起因して発熱が増大しており、摺動部分18a,33aへのフラッシング流体の供給量が不足している状況であると把握することができる。また、事業者等は、前記温度差が相対的に小さければ、摺動部分18a,33aの発熱が低く抑えられており、フラッシング流体により摺動部分18a,33aの冷却及び潤滑が適切に行われている状況であると把握することができる。
【0055】
<作用効果>
本実施形態のメカニカルシール1によれば、第1温度検出部71と第2温度検出部72が別体である。これにより、冷却前のフラッシング流体の第1温度を正確に検出できる位置に第1温度検出部71を設けることができ、且つ冷却後のフラッシング流体の第2温度を正確に検出できる位置に第2温度検出部72を設けることができる。その結果、第1温度と第2温度との正確な温度差を算出できるので、回転密封環18と静止密封環33との摺動部分18a,33aにおけるフラッシング流体の冷却状況を正確に把握することができる。具体的には、前記温度差に基づいて、摺動部分18a,33aの冷却状況と密接に関係する動摩擦係数を算出することができる。動摩擦係数の算出式には、フラッシング流体の特性やメカニカルシール1の運転条件が含まれる。このため、算出された動摩擦係数は、フラッシング流体や運転状況の違いを考慮した数値となるので、算出された動摩擦係数を用いれば、摺動部分18a,33aの冷却状況を正確に把握することができる。
【0056】
第2温度検出部72は、アダプタリング50の径方向外側から取付孔54に挿入されるときに、取付孔54の開口端部に形成されたテーパ内周面54aにより取付孔54の嵌合内周面54bへ案内される。これにより、アダプタリング50に対して第2温度検出部72を適切な位置に取り付けることができるので、第2温度検出部72は第2温度をさらに正確に検出することができる。その結果、摺動部分18a,33aにおけるフラッシング流体の冷却状況をさらに正確に把握することができる。
【0057】
第2温度検出部72が取付孔54に挿入された状態で、第2温度検出部72の測温点72cは、摺動部分18a,33aよりも機内領域A側(軸方向一方側)に位置する。摺動部分18a,33aよりも機内領域A側は、冷却後のフラッシング流体が占める割合が高いので、第2温度検出部72は、第2温度をさらに正確に検出することができる。これにより、摺動部分18a,33aにおけるフラッシング流体の冷却状況をさらに正確に把握することができる。
【0058】
シールケース31において、フラッシング流体の第1流路31bとして使用可能な複数の孔31aのうち、第1流路31bとして使用されない孔31a(予備孔31c)が、第2温度検出部72を挿入する挿入孔として使用される。これにより、シールケース31に専用の挿入孔を形成する必要がないので、取付孔54への第2温度検出部72の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【0059】
第1温度検出部71の測温点71cが、シールケース31の予備孔31c内に位置する場合、予備孔31c内のフラッシング流体は、循環しにくく、予備孔31c内に溜まりやすいので、シールケース31からの伝熱の影響を受けやすい。これに対して、本実施形態の第1温度検出部71の測温点71cは、アダプタリング50により形成される環状流路61内に位置している。これにより、第1温度検出部71は、摺動部分18a,33aを冷却する直前において環状流路61を循環しているフラッシング流体、つまりシールケース31からの伝熱の影響を受けにくい冷却前のフラッシング流体を測温することができる。その結果、第1温度検出部71は第1温度をさらに正確に検出できるので、摺動部分18a,33aにおけるフラッシング流体の冷却状況をさらに正確に把握することができる。
【0060】
シールケース31において、フラッシング流体の第1流路31bとして使用可能な複数の孔31aのうち、第1流路31bとして使用されない孔31a(予備孔31c)が、第1温度検出部71を挿入する挿入孔として使用される。これにより、シールケース31に専用の挿入孔を形成する必要がないので、挿入孔(予備孔31c)への第1温度検出部71の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【0061】
[第2実施形態]
図5は、本開示の第2実施形態に係るメカニカルシール1におけるアダプタリング50の取付孔54とその周辺を示す拡大断面図である。図5において、本実施形態のメカニカルシール1におけるアダプタリング50は、取付孔54と周辺の構成が第1実施形態と異なる。本実施形態のアダプタリング50は、リング本体51と、取付体52と、を有している。リング本体51において、第2温度検出部72が挿入される挿入孔31cに対応する位置には、第2環状溝61bの底面からリング本体51を径方向に貫通するねじ孔51dが形成されている。
【0062】
取付体52は、円筒状に形成されている。取付体52の基部(図5の下部)の外周には、雄ねじ52aが形成されている。取付体52の雄ねじ52aは、リング本体51のねじ孔51dに締め込まれている。取付体52の先部(図5の上部)は、リング本体51の径方向外方、すなわち環状流路61内に突出している。
【0063】
取付体52内には、リング本体51の径方向内側から径方向外側に向かって順に、取付孔54及び流入孔(流入路)55が形成されている。取付孔54は、第1実施形態の取付孔54と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。流入孔55は、取付孔54よりも径方向外側において取付孔54と同心状に形成され、取付孔54と連通している。流入孔55の孔径は、取付孔54のテーパ内周面54aの最大内径と同一である。したがって、流入孔55の孔径は、第2温度検出部72のシース72aの外径よりも大きい。
【0064】
第2温度検出部72のシース72aの先端部(図5の下端部)は、アダプタリング50の径方向外側から径方向内側に向かって、取付体52の流入孔55及び取付孔54を貫通するように挿入される。その際、シース72aの先端部は、取付孔54のテーパ内周面54aによって嵌合内周面54bへ案内され、嵌合内周面54bに嵌合される。
【0065】
シース72aの先端部が取付孔54の嵌合内周面54bに嵌合された状態で、流入孔55の内周面とシース72aの外周面との間に形成される環状の隙間Sには、環状流路61からフラッシング流体が流入する。本実施形態では、隙間Sにフラッシング流体が流入するのを抑制するために、取付体52の先端部の外周に、圧損部56が形成されている。
【0066】
圧損部56は、環状流路61(流入孔55の径方向外側)から流入孔55内に流入するフラッシング流体に圧力損失を生じさせるように形成されている。本実施形態の圧損部56は、取付体52の径方向内側から径方向外側へ向かうにしたがって、取付体52の先端部の外径が徐々に小さくなるように形成されたテーパ外周面56aからなる。本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
本実施形態のメカニカルシール1においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。また、アダプタリング50の圧損部56が、流入孔55内に流入するフラッシング流体に圧力損失を生じさせるので、フラッシング流体が流入孔55に流入しにくくなる。これにより、冷却前のフラッシング流体が、流入孔55と第2温度検出部72との隙間Sから、取付孔54と第2温度検出部72との間を通過し、機内領域A内の冷却後のフラッシング流体と混入するのを抑制することができる。その結果、第2温度検出部72は、第2温度をさらに正確に検出することができる。また、冷却前のフラッシング流体が取付孔54と第2温度検出部72との間を通過するのを抑制するシール部材(ゴム栓等)が不要になる。これにより、取付孔54にシール部材を介して第2温度検出部72を取り付ける面倒な作業が不要になるので、取付孔54への第2温度検出部72の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【0068】
[その他]
上記各実施形態では、第1温度検出部71の測温点71cは、環状流路61の第2環状溝61b内に位置しているが、環状流路61の第1環状溝61a内に位置していてもよい。また、測温点71cは、環状流路61以外(例えば予備孔31c内)に位置していてもよい。
【0069】
上記各実施形態では、第2温度検出部72の測温点72cは、摺動部分18a,33aよりも機内領域A側に位置しているが、第2温度を検出できれば、任意の位置にあればよい。例えば、測温点72cは、摺動部分18a,33aよりも機外領域B側に位置していてもよい。第1温度検出部71及び第2温度検出部72のそれぞれの個数は、本実施形態に限定されるものではなく、2個以上であってもよい。
【0070】
上記各実施形態では、第1温度検出部71及び第2温度検出部72が挿入される挿入孔は、シールケース31の予備孔31cとされているが、シールケース31に形成された専用の挿入孔であってもよい。第1温度検出部71及び第2温度検出部72は、シース熱電対に限定されるものではなく、例えば温度センサであってもよい。
【0071】
上記各実施形態では、アダプタリング50は、シールケース31と別体に設けられているが、シールケース31と一体に設けられていてもよい。また、第2実施形態では、アダプタリング50の取付体52は、リング本体51と別体に設けられているが、リング本体51と一体に設けられていてもよい。また、第2実施形態では、アダプタリング50の圧損部56は、流入孔55内に流入するフラッシング流体に圧力損失を生じさせることができれば、テーパ外周面56a以外の形状であってもよい。
【0072】
上記各実施形態では、第2流路60の環状流路61は、シールケース31の第1環状溝61aと、アダプタリング50の第2環状溝61bとによって構成されているが、第1環状溝61a及び第2環状溝61bのいずれか一方のみで構成されていてもよい。
【0073】
上記各実施形態のメカニカルシール1は、回転型のメカニカルシールであるが、これに限定されるものではない。例えば、メカニカルシール1は、静止型、デュアルシール(タンデムシール,ダブルシール)、ワンコイルタイプ、又はベローズタイプのメカニカルシールであってもよい。また、メカニカルシール1は、加圧タンクを用いるダブルシールのように、積極的にフラッシング流体を循環させずにサーモサイフォンが生じるメカニカルシールであってもよい。
【0074】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 メカニカルシール
2 回転側ユニット
3 静止側ユニット
18 回転密封環
18a,33a 摺動部分
31 シールケース
31a 孔
31b 第1流路
31c 予備孔(挿入孔)
33 静止密封環
50 アダプタリング
54 取付孔
54a テーパ内周面
55 流入孔(流入路)
56 圧損部
60 第2流路
61 環状流路
71 第1温度検出部
71c 測温点
72 第2温度検出部
72c 測温点
90 回転機器
91 回転軸
92 ケーシング
A 機内領域
B 機外領域
図1
図2
図3
図4
図5