(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131719
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ヘッド、ヘッドの駆動方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240920BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042150
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF51
2C057AG29
2C057AN01
2C057AR03
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】サンプリング周波数が不要に高くなることを抑制することができるヘッド等を提供する。
【解決手段】ヘッドは、流路を有する流路部材と、第1駆動波形を示す第1データ及び第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、第1駆動波形の一部である第1部分と第1駆動波形の一部である第2部分との間に、第2駆動波形の一部である第3部分があり、第3部分と第2駆動波形の一部である第4部分との間に第2部分があるように並べられ、第1データと第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化部と、多重化部にて生成された時分割多重信号から、第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する分離部とを備え、分離部は、流路における共振周波数未満のサンプリング周波数によって、第1駆動波形信号又は第2駆動波形信号を分離する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー付与素子によって、ノズルから吐出される液体が通流する流路を有する流路部材と、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化部と、
前記多重化部にて生成された前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する分離部と
を備え、
前記分離部は、前記流路における共振周波数未満のサンプリング周波数で前記時分割多重信号をサンプリングして、前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離し、
前記エネルギー付与素子は、前記分離部にて分離された前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号によって駆動される
ヘッド。
【請求項2】
前記流路部材は、前記エネルギー付与素子の駆動により前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与する圧力室を含み、
前記共振周波数は液体を前記圧力室に充填している場合における共振周波数である
請求項1に記載のヘッド。
【請求項3】
前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形それぞれは、立ち上がり部と、立ち下がり部とを含み、
前記共振周波数未満のサンプリング周波数で、前記立ち上がり部に対して、少なくとも第1時点、前記第1時点よりも後の第2時点、及び前記第2時点よりも後の第3時点にてサンプリングを行い、
前記共振周波数未満のサンプリング周波数で、前記立ち下がり部に対して、少なくとも第4時点、前記第4時点よりも後の第5時点、及び前記第5時点よりも後の第6時点にてサンプリングを行う
請求項1又は2に記載のヘッド。
【請求項4】
前記第1駆動波形の前記立ち上がり部及び前記立ち下がり部に適用される前記共振周波数未満のサンプリング周波数の値と、前記第2駆動波形の前記立ち上がり部及び前記立ち下がり部に適用される前記共振周波数未満のサンプリング周波数の値は同じである
請求項3に記載のヘッド。
【請求項5】
前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形それぞれは、電圧が一定になるように前記エネルギー付与素子に印加され、前記立ち上がり部及び前記立ち下がり部との間にある中間部を含み、
前記共振周波数未満のサンプリング周波数で、前記中間部に対して、少なくとも第7時点、前記第7時点よりも後の第8時点、及び前記第8時点よりも後の第9時点にてサンプリングを行う
請求項3に記載のヘッド。
【請求項6】
前記第1駆動波形の前記中間部に適用される前記共振周波数未満のサンプリング周波数の値と、前記第2駆動波形の前記中間部に適用される前記共振周波数未満のサンプリング周波数の値とは同じである
請求項5に記載のヘッド。
【請求項7】
前記エネルギー付与素子におけるリーク電流は所定電流以上であり、
前記エネルギー付与素子は、前記共振周波数未満のサンプリング周波数の逆数であるサンプリング周期を経過すると、前記リーク電流により変形量が変わり、
前記リーク電流により変形量が変わることによって、前記ノズルから吐出される前記液体の体積は変わる
請求項5に記載のヘッド。
【請求項8】
前記エネルギー付与素子におけるリーク電流は所定電流未満であり、
前記エネルギー付与素子は、前記共振周波数未満のサンプリング周波数の逆数であるサンプリング周期を経過した場合、前記リーク電流により変形量が変わり、前記リーク電流により変形量が変わっても、前記ノズルから吐出される前記液体の体積は変わらず、
前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形それぞれは、電圧が一定になるように前記エネルギー付与素子に印加され、前記立ち上がり部及び前記立ち下がり部との間にある中間部を含み、
前記共振周波数未満のサンプリング周波数による前記中間部に対するサンプリング時点が2つ以下である
請求項3に記載のヘッド。
【請求項9】
前記第1駆動波形の少なくとも一部に適用される前記共振周波数未満のサンプリング周波数は第1サンプリング周波数であり、
前記第1サンプリング周波数の逆数であるサンプリング周期は第1サンプリング周期であり、
前記第2駆動波形の少なくとも一部に適用される前記共振周波数未満のサンプリング周波数は第2サンプリング周波数であり、
前記第2サンプリング周波数の逆数であるサンプリング周期は第2サンプリング周期であり、
前記第1サンプリング周期と前記第2サンプリング周期とは異なる
請求項3に記載のヘッド。
【請求項10】
前記多重化部は、
制御回路と、
第1デジタルアナログコンバータと、
第2デジタルアナログコンバータと、
前記第1デジタルアナログコンバータにより変換された信号を通過させる状態と通過させない状態とを切り替える第1スイッチと、
前記第2デジタルアナログコンバータにより変換された信号を通過させる状態と通過させない状態とを切り替える第2スイッチとを備え、
前記第1スイッチの切替周波数は前記第1サンプリング周波数と同じ周波数であり、
前記第2スイッチの切替周波数は前記第2サンプリング周波数と同じ周波数であり、
前記分離部は、
前記第1サンプリング周波数で前記時分割多重信号から前記第1駆動波形信号を分離し、
前記第2サンプリング周波数で前記時分割多重信号から前記第2駆動波形信号を分離する
請求項9に記載のヘッド。
【請求項11】
前記多重化部は、
制御回路と、
デジタルアナログコンバータと、
前記デジタルアナログコンバータのアナログ信号をサンプリングして保持する第1サンプルホールド回路及び第2サンプルホールド回路と、
前記第1サンプルホールド回路により保持された信号を通過させる状態と通過させない状態とを切り替える第1スイッチと、
前記第2サンプルホールド回路により保持された信号を通過させる状態と通過させない状態とを切り替える第2スイッチとを備え、
前記第1スイッチの切替周波数は前記第1サンプリング周波数と同じ周波数であり、
前記第2スイッチの切替周波数は前記第2サンプリング周波数と同じ周波数であり、
前記時分割多重信号は前記第1スイッチからの出力信号と前記第2スイッチからの出力信号とを含み
前記分離部は、
前記第1サンプリング周波数で前記時分割多重信号から前記第1駆動波形信号を分離し、
前記第2サンプリング周波数で前記時分割多重信号から前記第2駆動波形信号を分離する
請求項9に記載のヘッド。
【請求項12】
前記分離部は、前記第1部分及び前記第2部分を第1パルス信号によって前記時分割多重信号から分離し、前記第3部分及び前記第4部分を第2パルス信号によって前記時分割多重信号から分離し、
前記第1パルス信号の幅と、前記第2パルス信号の幅とは異なり、
前記第1パルス信号の幅は前記第1部分及び前記第2部分の幅に対応し、
前記第2パルス信号の幅は前記第3部分及び前記第4部分の幅に対応する
請求項3に記載のヘッド。
【請求項13】
エネルギー付与素子によって、ノズルから吐出される液体が通流する流路を有する流路部材を備えるヘッドの駆動方法であって、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成し、
前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離し、
前記流路における共振周波数未満のサンプリング周波数によって、前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離し、
前記エネルギー付与素子を前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号によって駆動させる
ヘッドの駆動方法。
【請求項14】
エネルギー付与素子によって、ノズルから吐出される液体が通流する流路を有する流路部材を備えるヘッドを制御するコンピュータプログラムであって、
前記ヘッドの制御装置に、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成し、
前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離し、
前記流路における共振周波数未満のサンプリング周波数によって、前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離し、
前記エネルギー付与素子を前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号によって駆動させる
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ノズルから液体を吐出するヘッド、ヘッドの駆動方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
波形の異なる複数の駆動波形信号から時分割多重信号を生成し、時分割多重信号からいずれか一つの駆動波形信号を分離する印刷装置が提案されている(特許文献1参照)。各駆動波形信号は、例えば吐出する液滴の大きさに対応する。いずれかの駆動波形信号を各ノズルに適用することによって、所望の大きさの液滴がノズルから吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における印刷装置は時分割多重信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングし、駆動波形信号を分離する。サンプリング周波数が駆動波形信号の分離に必要な周波数よりも高い場合、消費電力の不要な増加を招く。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、サンプリング周波数が不要に高くなることを抑制することができるヘッド、ヘッドの駆動方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るヘッドは、エネルギー付与素子によって、ノズルから吐出される液体が通流する流路を有する流路部材と、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化部と、前記多重化部にて生成された前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する分離部とを備え、前記分離部は、前記流路における共振周波数未満のサンプリング周波数で前記時分割多重信号をサンプリングして、前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離し、前記エネルギー付与素子は、前記分離部にて分離された前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号によって駆動される。
【0007】
本開示の一実施形態に係るヘッドの駆動方法は、エネルギー付与素子によって、液体を吐出するノズルを有するノズルプレートを備えるヘッドの駆動方法であって、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成し、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離し、前記流路における共振周波数未満のサンプリング周波数によって、前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離し、前記エネルギー付与素子を、前記分離部にて分離された前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号によって駆動させる。
【0008】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、エネルギー付与素子によって、ノズルから吐出される液体が通流する流路を有する流路部材を備えるヘッドを制御するコンピュータプログラムであって、前記ヘッドの制御装置に、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成し、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離し、前記流路における共振周波数未満のサンプリング周波数によって、前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離し、前記エネルギー付与素子を前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号によって駆動させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係るヘッド、ヘッドの駆動方法及びコンピュータプログラムにあっては、流路における共振周波数未満のサンプリング周波数で時分割多重信号をサンプリングし、時分割多重信号から駆動波形信号を分離するので、サンプリング周波数が不要に高くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る印刷装置を略示する平面図である。
【
図2】インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
【
図5】時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
【
図6】時分割多重信号と、同期信号との関係を説明する説明図である。
【
図7】第nスイッチの開閉によってアクチュエータに入力される駆動波形の模式図である。
【
図8】実施の形態2に係る駆動波形と、同期信号との関係を説明する説明図である。
【
図9】実施の形態3に係る駆動波形と、同期信号との関係を説明する説明図である。
【
図10】実施の形態4に係る制御装置のブロック図である。
【
図11】アナログ信号及び時分割信号との関係を説明する説明図である。
【
図12】変更例に係る制御装置のブロック図である。
【
図13】実施の形態5に係る制御装置のブロック図である。
【
図14】実施の形態6に係る時分割多重信号と、同期信号とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は、印刷装置を略示する平面図である。以下の説明では、
図1に示す前後左右を使用する。前後方向は搬送方向に対応し、左右方向は走査方向に対応する。また
図1の表側が上側に対応し、裏側が下側に対応し、上下も使用する。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、搬送ローラ4、5等を備える。プラテン2の上面には、記録媒体である記録用紙200が載置される。インク吐出装置3は、プラテン2に載置された記録用紙200に対してインクを吐出して画像を記録する。インク吐出装置3は、キャリッジ6と、サブタンク7と、四つのインクジェットヘッド8と、循環ポンプ10等を備える。
【0013】
プラテン2の上側には、キャリッジ6を案内する左右に延びた2本のガイドレール11、12が設けられている。キャリッジ6には、左右に延びた無端ベルト13が連結されている。無端ベルト13は、キャリッジ駆動モータ14によって駆動される。無端ベルト13の駆動によって、キャリッジ6は、ガイドレール11、12に案内され、プラテン2に対向する領域において、走査方向に往復移動される。より具体的には、キャリッジ6は、四つのインクジェットヘッド8を支持した状態で、走査方向において、左方から右方へとある位置から他の位置へ前記ヘッドを移動させる第1移動と、走査方向において、右方から左方へと他の位置からある位置へ前記ヘッドを移動させる第2移動とを行う。
【0014】
ガイドレール11、12の間に、キャップ20及びフラッシング受け21が設けられている。キャップ20及びフラッシング受け21は、インク吐出装置3よりも下側に配置されている。キャップ20はガイドレール11、12の右端部に配置され、フラッシング受け21はガイドレール11、12の左端部に配置されている。なお、キャップ20及びフラッシング受け21は、左右逆に配置されてもよい。
【0015】
サブタンク7及び四つのインクジェットヘッド8はキャリッジ6に搭載され、キャリッジ6と共に走査方向に往復移動する。サブタンク7はカートリッジホルダ15とチューブ17を介して接続されている。カートリッジホルダ15には、一又は複数色(本実施例においては4色)のインクカートリッジ16が装着される。4色としては、例えばブラック、イエロー、シアン及びマゼンタが挙げられる。
【0016】
サブタンク7の内部には、四つのインク室(図示略)が形成されている。四つのインク室には、四つのインクカートリッジ16から供給された4色のインクがそれぞれ貯留される。
【0017】
四つのインクジェットヘッド8は、サブタンク7の下側において、走査方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8の下面には、後述するノズルプレート87がある。ノズルプレート87には複数のノズル80(
図2参照)が形成されている。一つのインクジェットヘッド8は、1色のインクに対応し、一つのインク室に接続されている。すなわち、四つのインクジェットヘッド8は、4色のインクにそれぞれ対応し、四つのインク室にそれぞれ接続されている。
【0018】
インクジェットヘッド8には、インク供給口と、インク排出口とが設けられている。インク供給口及びインク排出口は、チューブ等を介してインク室に接続されている。インク供給口及びインク室の間には、循環ポンプが介装されている。
【0019】
循環ポンプによってインク室から送出されたインクは、インク供給口を通ってインクジェットヘッド8に流入し、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出されないインクは、インク排出口を通って、インク室に戻る。インクは、インク室及びインクジェットヘッド8の間を循環する。四つのインクジェットヘッド8は、キャリッジ6と共に走査方向に移動しながら、サブタンク7から供給された4色のインクを記録用紙200に吐出する。
【0020】
図1に示すように、搬送ローラ4は、プラテン2よりも搬送方向上流側(後側)に配置されている。搬送ローラ5は、プラテン2よりも搬送方向下流側(前側)に配置されている。二つの搬送ローラ4、5は、モータ(図示略)によって、同期して駆動する。二つの搬送ローラ4、5は、プラテン2に載置された記録用紙200を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。印刷装置1は制御装置50を備える。制御装置50は、CPU又はロジック回路(例えばFPGA)、不揮発性メモリ、ハードディスク及びRAM等のメモリ55等を備える。制御装置50は、外部装置100から印刷ジョブ及び駆動波形データを受信して、メモリ55に記憶する。制御装置50は、印刷ジョブに基づいて、インク吐出装置3及び搬送ローラ4等の駆動を制御し、印刷処理を実行する。
【0021】
例えば不揮発性メモリ又はハードディスクは印刷装置1の制御プログラムを記憶する。CPUは制御プログラムをRAMに読み出して印刷処理を実行する。制御装置50はフラッシュメモリ又は光ディスク等の記録媒体65に記憶した制御プログラムを不揮発性メモリ又はハードディスクにインストールしてもよい。また制御装置50はサーバに記憶した制御プログラムを、ネットワークを介して不揮発性メモリ又はハードディスクにダウンロードしてもよい。また制御装置50は印刷装置本体に無線又は有線を介して接続され、印刷装置本体を遠隔制御してもよい。また単数の制御装置50が複数の印刷装置本体を制御してもよい。
【0022】
図2は、インクジェットヘッド8の略示部分拡大断面図である。インクジェットヘッド8は、流路部材81と、流路部材81に形成された複数の圧力室81aとを備える。流路部材81には圧力室81aを含む流路が形成される。複数の圧力室81aは、複数の圧力室列を構成する。圧力室81aの上側には振動板82が形成されている。振動板82の上側には、層状の圧電体83が形成されている。各圧力室81aの上側であって、圧電体83と振動板82との間に第1共通電極84が形成されている。
【0023】
圧電体83の内部に第2共通電極86が設けられている。第2共通電極86は各圧力室81aの上側且つ第1共通電極84よりも上側に配置されている。第2共通電極86は、第1共通電極84と対向しない位置に配置されている。各圧力室81aの上側であって、圧電体83の上面に個別電極85が形成されている。個別電極85と、第1共通電極84及び第2共通電極86とは圧電体83を挟んで上下に対向する。振動板82、圧電体83、第1共通電極84、個別電極85及び第2共通電極86はアクチュエータ88を構成する。
【0024】
各圧力室81aの下部にノズルプレート87が設けられている。つまり、流路部材81は、ノズルプレート87に隣接する。ノズルプレート87には、上下に貫通した複数のノズル80が形成されている。各ノズル80は、各圧力室81aの下側に配置されている。ノズル80と圧力室81aとは連通される。複数のノズル80は、圧力室列に沿って延びた複数のノズル列を構成する。
【0025】
第1共通電極84はCOM端子、本実施例ではグランドに接続され、第2共通電極86は、VCOM端子に接続される。VCOM電圧はCOM電圧よりも高い。個別電極85は、スイッチ群54(
図3参照)に接続される。個別電極85にHIgh又はLow電圧が印加され、圧電体83が変形し、振動板82が振動する。振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81aからインクが吐出される。
【0026】
図3は、制御装置50のブロック図である。制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53、スイッチ群54及びメモリ55を備える。メモリ55には、駆動波形データが記憶されている。駆動波形データは、個別電極85に印加される電圧波形、即ちアクチュエータ88を駆動させる駆動波形を示すデータであり、量子化されたデータである。本実施例においては、駆動波形データDa、Db、Dcがメモリ55に記憶されている。
【0027】
D/Aコンバータ52はデジタル信号をアナログ信号に変換する。アンプ53はアナログ信号を増幅させる。スイッチ群54は、複数の第nスイッチ54(n)(n=1、2、・・・)を備える。第nスイッチ54(n)は、例えばアナログスイッチICによって構成される。複数の第nスイッチ54(n)の一端は、共通バスを介して、アンプ53に接続される。各第nスイッチ54(n)の他端は、複数のノズル80に対応した各個別電極85に接続される。つまり、第nスイッチ54(n)は、1つのアクチュエータ88に対して、1つ設けられている。
【0028】
個別電極85、第1共通電極84、及び圧電体83によって第1コンデンサ89aが構成されている。個別電極85、第2共通電極86、及び圧電体83によって第2コンデンサ89bが構成されている。
【0029】
図4は、駆動波形A、B、Cの一例を説明する説明図である。駆動波形A、B、Cは、圧電体83を変形させ、振動板82が振動し、振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81aにあるインクを、ディセンダーを通過させてから吐出させるための波形である。例えば、駆動波形Aは、大玉を吐出するための波形であり、駆動波形Bは、中玉を吐出するための波形であり、駆動波形Cは、大玉を吐出するための波形であるが、駆動波形Aとは吐出タイミングが異なる。
図4において、右側は左側よりも過去の状態を示す。
図5~
図11も同様である。駆動波形データDaは、駆動波形Aの量子化データであり、駆動波形データDbは、駆動波形Bの量子化データであり、駆動波形データDcは、駆動波形Cの量子化データである。駆動波形データDaは量子化されたデータAk(k=0、1、2、・・・)を有し、駆動波形データDbは量子化されたデータBkを有し、駆動波形データDcは量子化されたデータCkを有する。
【0030】
図5は、時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
図5において、A、B、Cは、駆動波形A、B、Cにそれぞれ対応することを示す。アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDa、Db、Dcを取得し、時系列データを作成する。時系列データは、データAk、Bk、Ckを時間間隔Δtを設けて順に並べたものであり、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べたものである。時系列データはデジタル信号である。なお、時間間隔Δtは、所定のサンプリング周波数の逆数である。
【0031】
量子化されたデータAk、Bk、Ckは、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する時間ごとに、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べられる。言い換えると、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する長さ以下である。また、量子化されたデータA0と量子化されたデータB0とは連続し、量子化されたデータB0と量子化されたデータC0とは連続し、量子化されたデータC0と量子化されたデータA1とは連続する。つまり、量子化されたデータA0と量子化されたデータB0との間に、量子化されたデータC0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。また、量子化されたデータB0と量子化されたデータC0との間に、量子化されたデータA0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。また、量子化されたデータC0と量子化されたデータA1との間に、量子化されたデータB0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。なお、サンプリング周波数は、24MHzであり、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、約41nSである。
【0032】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。
図5に示すように、D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、アンプ53に出力する。アンプ53は、入力されたアナログ信号を増幅させて、スイッチ群54に出力する。
図5に示すように、アンプ53にて増幅されたアナログ信号は時分割多重信号を構成する。つまり、時分割多重信号は、データAkのみに対応するアナログ信号、データBkのみに対応するアナログ信号、データCkのみに対応するアナログ信号ではない。また、時分割多重信号は、少なくとも、1つのデータAk、1つのデータBk、1つのデータCkの合計3つのデータの組に対応するアナログ信号、1つのデータAk+1、1つのデータBk+1、1つのデータCk+1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号、が時系列で連続する信号である。
【0033】
例えば、時分割多重信号は、
図5において、1つである。
図5において、データC0に対応するアナログ信号が孤立しているように見えるが、データA0、データB0、データC0の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータA0及びデータB0が0の状態のアナログ信号が、データA1、データB1、データC1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータA1が0の状態のアナログ信号に時系列的に連続する結果である。また、データAk及びデータBkの組に対応するアナログ信号が孤立しているように見えるが、データAk―1、データBk―1、データCk―1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータCk―1が0の状態のアナログ信号が、データAk、データBk、データCkの合計3つのデータの組に対応するアナログ信号に時系列的に連続する結果である。また、データAk―1及びデータBk―1の組に対応するアナログ信号が孤立しているように見える理由も同様である。よって、
図5のアナログ信号を、1つの時分割多重信号として取り扱うことができる。
【0034】
時分割多重信号において、データAk-1に対応する部分を第1部分、データAkに対応する部分を第2部分、データBk-1に対応する部分を第3部分、データBkに対応する部分を第4部分とすると、第1部分と第2部分との間に第3部分があり、第3部分と第4部分との間に第2部分がある。言い換えると、第1部分と第3部分とは連続し、第3部分と第2部分とは連続し、第2部分と第4部分とは連続する。つまり、時分割多重信号において、第1部分と第3部分との間には、第2部分、第4部分及び他の波形はない。また、時分割多重信号において、第3部分と第2部分との間には、第1部分、第4部分及び他の波形はない。また、時分割多重信号において、第2部分と第4部分との間には、第1部分、第3部分及び他の波形はない。
【0035】
なお、データAk及びCkとの間でも同様な関係が成立し、データBk及びCkとの間でも同様な関係が成立する。制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53及びメモリ55は多重化部を構成する。1つの時分割多重信号は、1つの吐出駆動周期に収まる。例えば、吐出駆動周波数(噴射周波数)が100kHzであれば、1つの吐出駆動周期(噴射周期)は、10μSであり、1つの時分割多重信号は、10μS未満の長さである。データAk、データBk及びデータCkは、1つの時分割多重信号に各々3個以上あることが好ましい。理由を後述する。
【0036】
制御回路51は、複数の第nスイッチ54(n)の開閉を制御するスイッチ制御信号S1と、駆動波形Aに対応した同期信号S2aと、駆動波形Bに対応した同期信号S2bと、駆動波形Cに対応した同期信号S2cとをスイッチ群54に出力する。なお三つの同期信号S2a、S2b及びS2cを単に同期信号S2とも表す(
図3参照)。スイッチ制御信号S1は、複数の第nスイッチ54(n)のいずれかを選択することを示す第一選択情報と、三つの同期信号S2a、S2b、S2cのいずれかを選択することを示す第二選択情報とを含む。第一選択情報及び第二選択情報は紐づけられている。
【0037】
図6は、時分割多重信号と、同期信号S2a、S2b及びS2cとの関係を説明する説明図である。同期信号S2a、S2b及びS2cはパルス波である。同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。
【0038】
前述したように、時系列データを構成するデータAk、Bk、Ckは時間間隔Δtを設けて順に並べられている。そのため、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データAkに対応し、駆動波形Aを示す駆動波形信号Paを取得することができる。同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データBkに対応し、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pbを取得することができる。同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データCkに対応し、駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcを取得することができる。つまり、1つの第nスイッチ54(n)は、データAk-1に対応する第1部分及びデータAkに対応する第2部分を第1パルス信号によって時分割多重信号から分離し、データBk-1に対応する第3部分及びデータBkに対応する第4部分を第2パルス信号によって時分割多重信号から分離する。換言すれば、1つの第nスイッチ54(n)は、1種類の時分割多重信号を入力され、駆動波形Aを示す駆動波形信号Pa、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pb、駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcのいずれか1つを分離する。
【0039】
スイッチ群54は、選択された同期信号S2a~S2cが示す開閉タイミングで、選択された第nスイッチ54(n)を開閉させる。換言すれば、スイッチ群54は、所定のサンプリング周波数によって、第nスイッチ54(n)を開閉させる。
【0040】
駆動波形信号Paを分離する為に時分割多重信号をサンプリングする周波数を第1サンプリング周波数fsa、駆動波形信号Pbを分離する為に時分割多重信号をサンプリングする周波数を第2サンプリング周波数fsb、駆動波形信号Pcを分離する為に時分割多重信号をサンプリングする周波数を第3サンプリング周波数fscとする。第1サンプリング周波数fsaの逆数は第1サンプリング周期1/fsaであり、第2サンプリング周波数fsbの逆数は第2サンプリング周期1/fsbであり、第3サンプリング周波数fscの逆数は第3サンプリング周期1/fscである。
図6に示すように、同期信号S2aのパルス間の時間は第1サンプリング周期1/fsaであり、同期信号S2bのパルス間の時間は第2サンプリング周期1/fsbであり、同期信号S2cのパルス間の時間は第3サンプリング周期1/fscである。
【0041】
インクジェットヘッド8の共振周波数をfrとすると、第1サンプリング周波数fsaは共振周波数fr未満であり、第2サンプリング周波数fsbは共振周波数fr未満であり、第3サンプリング周波数fscは共振周波数fr未満である。共振周波数frは以下のように求めることができる。共振周波数frの逆数である1/frは共振周期である。共振周期の半分である1/2frは圧力室81aを含む流路のアコースティックレングスAL(Acoustic Length)である。ALは、個別電極85に矩形波の駆動パルスを印加した際に吐出されるインク滴の速度を測定し、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、インク滴の吐出速度が最大になるパルス幅として求められる。即ち、共振周波数frはアコースティックレングスALから求めることができる。
【0042】
図7は、第nスイッチ54(n)の開閉によってアクチュエータ88に入力される駆動波形の模式図である。同期信号S2aが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2aのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2aのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図7に示すように、駆動波形A1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、第1サンプリング周波数fsaで時分割多重信号をサンプリングすることによって、時分割多重信号から駆動波形信号Paが分離される。駆動波形信号Paによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Paの凹凸を表すために、データAkを3個以上必要とする。
【0043】
同期信号S2bが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2bのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2bのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図7に示すように、駆動波形B1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、換言すれば、第2サンプリング周波数fsbで時分割多重信号をサンプリングすることによって、時分割多重信号から駆動波形信号Pbが分離される。駆動波形信号Pbによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Pbの凹凸を表すために、データBkを3個以上必要とする。
【0044】
同期信号S2cが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2cのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2cのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図7に示すように、駆動波形C1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、換言すれば、第3サンプリング周波数fscで時分割多重信号をサンプリングすることによって、時分割多重信号から駆動波形信号Pcが分離される。駆動波形信号Pcによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Pcの凹凸を表すために、データCkを3個以上必要とする。
【0045】
前述したように、第1~第3サンプリング周波数fsa、fsb、fscは、インクジェットヘッド8の共振周波数fr未満である。インクジェットヘッド8の共振周波数frは、圧力室81aにインク(液体)を充填していない場合における共振周波数であるか、又は圧力室81aにインクを充填している場合における共振周波数である。例えば、圧力室81aにインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHzである場合、圧力室81aにインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHz未満となる。具体的には、圧力室81aにインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が90kHzとなる。つまり、圧力室81aにインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81aにインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数よりも大きい。
【0046】
実施の形態1に係る印刷装置1にあっては、流路における共振周波数fr未満の第1~第3サンプリング周波数fsa、fsb、fscで時分割多重信号をサンプリングし、時分割多重信号から駆動波形信号Pa、Pb、Pcを分離するので、サンプリング周波数が不要に高くなることを抑制することができる。サンプリング周波数が高くなるに従って、スイッチ群54の駆動時の消費電力が増加する。サンプリング周波数が不要に高くなることを抑制することによって、消費電量の不要な増加を抑制することができる。
【0047】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図8は、駆動波形Aと、同期信号S2aとの関係を説明する説明図である。駆動波形Aは立ち上がり部61と、立ち下がり部62と、中間部63とを備える。立ち上がり部61は、例えば最低電圧から最大電圧まで電圧が上昇する場合に、駆動波形Aにおける最低電圧から最大電圧に至るまでの部分である。立ち下がり部62は、例えば最高電圧から最低電圧まで電圧が下降する場合に、駆動波形Aにおける最高電圧から最低電圧に至るまでの駆動波形Aの部分である。中間部63は、駆動波形Aにおける立ち上がり部61と立ち下がり部62との間の部分である。中間部63の電圧が一定となる部分である。
【0048】
図8において、t1は立ち上がり部61における電圧上昇が開始する第1時点であり、t3は立ち上がり部61における電圧上昇が終了する第3時点であり、t2は第1時点t1と第3時点t3との間の第2時点である。即ち第2時点t2は第1時点t1よりも後の時点であり、第3時点t3は第2時点t2よりも後の時点である。
【0049】
t4は立ち下がり部62における電圧下降が開始する第4時点であり、t6は立ち下がり部62における電圧下降が終了する第6時点であり、t5は第4時点t4と第6時点t6との間の第5時点である。即ち第5時点t5は第4時点t4よりも後の時点であり、第6時点t6は第5時点t5よりも後の時点である。t8は中間部34における時点であって、第3時点t3と第4時点t4との間の第8時点である。
【0050】
同期信号S2aのパルスは第1時点t1~第3時点t3、第4時点t4~第6時点t6、第8時点t8それぞれの時点において立ち上がる。第1時点t1~第3時点t3、第4時点t4~第6時点t6、第8時点t8にて時分割多重信号はサンプリングされる。なお第3時点t3は第7時点t7に対応し、第6時点t3は第9時点t9に対応する。即ち、第8時点t8は第7時点t7よりも後の時点であり、第9時点t9は第8時点t8よりも後の時点である。第7時点t7は中間部63における時点であって、第8時点t8よりも前の時点である。第9時点t9は中間部63における時点であって、第8時点t8よりも後の時点である。
【0051】
制御回路51は共振周波数fr未満の第1サンプリング周波数fsaで時分割多重信号をサンプリングする。即ち、制御装置50は第1時点t1、第2時点t2及び第3時点t3にてサンプリングを行い、第4時点t4、第5時点t5及び第6時点t6にてサンプリングを行い、第7時点t7、第8時点t8及び第9時点t9にてサンプリングを行う。
【0052】
駆動波形Bも立ち上がり部と、立ち下がり部と、中間部とを備える。制御装置50は共振周波数fr未満の第2サンプリング周波数fsbで時分割多重信号をサンプリングする。即ち、制御装置50は第1時点、第2時点及び第3時点にてサンプリングを行い、第4時点、第5時点及び第6時点にてサンプリングを行い、第7時点、第8時点及び第9時点にてサンプリングを行う。第2サンプリング周波数fsbの値は第1サンプリング周波数fsaの値と同じである。換言すれば、駆動波形Aの立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される共振周波数未満の第1サンプリング周波数fsaの値と、駆動波形Bの立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される共振周波数未満の第2サンプリング周波数fsbの値は同じである。また駆動波形Aの中間部に適用される共振周波数未満の第1サンプリング周波数fsaの値と、駆動波形Bの中間部に適用される共振周波数未満の第2サンプリング周波数fsbの値は同じである。
【0053】
駆動波形Cも立ち上がり部と、立ち下がり部と、中間部とを備える。制御装置50は共振周波数fr未満の第3サンプリング周波数fscで時分割多重信号をサンプリングする。即ち、制御装置50は第1時点、第2時点及び第3時点にてサンプリングを行い、第4時点、第5時点及び第6時点にてサンプリングを行い、第7時点、第8時点及び第9時点にてサンプリングを行う。第3サンプリング周波数fscの値は第1サンプリング周波数fsa及び第2サンプリング周波数fsbの値と同じである。換言すれば、駆動波形A又はBの立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される共振周波数未満の第1又は第2サンプリング周波数fsa又はfsbの値と、駆動波形Cの立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される共振周波数未満の第3サンプリング周波数fscの値は同じである。また駆動波形A又はBの中間部に適用される共振周波数未満の第1又は第2サンプリング周波数fsa又はfsbの値と、駆動波形Cの中間部に適用される共振周波数未満の第3サンプリング周波数fscの値は同じである。なお第1~第3サンプリング周波数fsa、fsb、fscの値は同じであるが、サンプリング時点は互いに異なる。
【0054】
第1駆動波形の立ち上がり部61及び立ち下がり部62に適用される第1サンプリング周波数fsaの値と、第2駆動波形の立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される第2サンプリング周波数fsbの値と、第3駆動波形の立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される第3サンプリング周波数fscの値とは同じである。
【0055】
第1駆動波形の中間部63に適用される第1サンプリング周波数fsaの値と、第2駆動波形の中間部に適用される第2サンプリング周波数fsbの値と、第3駆動波形の中間部に適用される第3サンプリング周波数fscの値とは同じである。なお第1~第3サンプリング周波数fsa、fsb、fscの値は同じでなくてもよい。
【0056】
アクチュエータ88におけるリーク電流は所定電流以上であり、アクチュエータ88は、共振周波数未満の第1サンプリング周波数fsa、第2サンプリング周波数fsb又は第2サンプリング周波数fsbの逆数であるサンプリング周期を経過すると、リーク電流により変形量が変わり、ノズルから吐出されるインクの体積は、リーク電流により変形量が変わることにより変わる。所定電流は、例えば個別電極85に電圧を印加した後、サンプリング周期が経過した場合に、リーク電流により変形量が変わることによって、ノズルから吐出されるインクの体積が変わる最小電流である。アクチュエータ88のリーク電流が大きい場合でも、サンプリング周期を短くすることによって、アクチュエータ88の電圧を一定に保ちやすくなる。アクチュエータ88はエネルギー付与素子に対応する。
【0057】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成の内、実施の形態2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は、駆動波形Aと、同期信号S2aとの関係を説明する説明図である。
図9において、立ち上がり部61及び立ち下がり部62は実施の形態2と同様な構成なので、ここでは、中間部63についてのみ説明し、立ち上がり部61及び立ち下がり部62の説明を省略する。中間部63は、駆動波形Aにおける立ち上がり部61と立ち下がり部62との間の部分である。中間部63の電圧が一定となる部分である。実施の形態2と異なり、中間部63において第7時点はなく、中間部63の両端は第3時点t3と第4時点t4である。
【0058】
同期信号S2aのパルスは第1時点t1~第3時点t3、第4時点t4~第6時点tそれぞれの時点において立ち上がる。第1時点t1~第3時点t3、第4時点t4~第6時点t6にて時分割多重信号はサンプリングされる。
【0059】
制御回路51は共振周波数fr未満の第1サンプリング周波数fsaで時分割多重信号をサンプリングする。即ち、制御装置50は第1時点t1、第2時点t2及び第3時点t3にてサンプリングを行い、第4時点t4、第5時点t5及び第6時点t6にてサンプリングを行う。
【0060】
駆動波形Bも立ち上がり部と、立ち下がり部と、中間部とを備える。制御装置50は共振周波数fr未満の第2サンプリング周波数fsbで時分割多重信号をサンプリングする。即ち、制御装置50は第1時点、第2時点及び第3時点にてサンプリングを行い、第4時点、第5時点及び第6時点にてサンプリングを行う。
【0061】
駆動波形Cも立ち上がり部と、立ち下がり部と、中間部とを備える。制御装置50は共振周波数fr未満の第3サンプリング周波数fscで時分割多重信号をサンプリングする。即ち、制御装置50は第1時点、第2時点及び第3時点にてサンプリングを行い、第4時点、第5時点及び第6時点にてサンプリングを行う。第1~第3サンプリング周波数fsa、fsb、fscの値は同じであるが、サンプリング時点は互いに異なる。
【0062】
第1駆動波形の立ち上がり部61及び立ち下がり部62に適用される第1サンプリング周波数fsaの値と、第2駆動波形の立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される第2サンプリング周波数fsbの値と、第3駆動波形の立ち上がり部及び立ち下がり部に適用される第3サンプリング周波数fscの値とは同じである。
【0063】
第1駆動波形の中間部63に適用される第1サンプリング周波数fsaの値と、第2駆動波形の中間部に適用される第2サンプリング周波数fsbの値と、第3駆動波形の中間部に適用される第3サンプリング周波数fscの値とは同じである。なお第1~第3サンプリング周波数fsa、fsb、fscの値は同じでなくてもよい。
【0064】
アクチュエータ88におけるリーク電流は所定電流未満であり、アクチュエータ88は、共振周波数未満の第1サンプリング周波数fsa、第2サンプリング周波数fsb又は第3サンプリング周波数fscの逆数であるサンプリング周期を経過すると、リーク電流により変形量が変わり、リーク電流により変形量が変わることによって、ノズルから吐出されるインクの体積は変わらない。所定電流は、例えば個別電極85に電圧を印加した後、サンプリング周期が経過した場合に、リーク電流により変形量が変わることによって、ノズルから吐出されるインクの体積が変わる最小電流である。アクチュエータ88のリーク電流が小さい場合、サンプリング周期を長くしても、アクチュエータ88の電圧を一定に保つことができる。アクチュエータ88はエネルギー付与素子に対応する。
【0065】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。
図10は、制御装置50のブロック図、
図11は、アナログ信号60A~60C及び時分割信号S3a~S3cとの関係を説明する説明図である。制御装置50は、制御回路51、第1D/Aコンバータ52a、第2D/Aコンバータ52b、第3D/Aコンバータ52c、第2スイッチ制御部56、アンプ53、スイッチ群54及びメモリ55を備える。第2スイッチ制御部56は、第1スイッチ56a、第2スイッチ56b、第3スイッチ56cを備える。
【0066】
アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDaを取得し、第1D/Aコンバータ52aに出力する。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDbを取得し、第2D/Aコンバータ52bに出力する。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDcを取得し、第3D/Aコンバータ52cに出力する。
【0067】
図11に示すように、第1D/Aコンバータ52a、第2D/Aコンバータ52b及び第3D/Aコンバータ52cは、それぞれアナログ信号60A、60B、60Cを出力する。アナログ信号60Bは等電圧期間EPの間、継続して同じ電圧を示す。制御回路51はアナログ信号60Aに対応した時分割信号S3aと、アナログ信号60Bに対応した時分割信号S3bと、アナログ信号60Cに対応した時分割信号S3cとを第2スイッチ制御部56に出力する。に出力する。なお三つの時分割信号S3a、S3b及びS3cを単に時分割信号S3とも表す(
図10参照)。時分割信号S3は第1スイッチ56a、第2スイッチ56b及び第3スイッチ56cの開閉を切り替える切替信号である。
【0068】
時分割信号S3a、S3b及びS3cはパルス波である。時分割信号S3aのパルス間の時間は、第1サンプリング周期1/fsaと同じである。即ち第1スイッチ56aの切替周波数は第1サンプリング周波数fsaである。時分割信号S3cのパルス間の時間は、第3サンプリング周期1/fscと同じである。即ち第3スイッチ56cの切替周波数は第3サンプリング周波数fscである。
【0069】
時分割信号S3bのパルス間の時間は、等電圧期間EP以外の期間、第1サンプリング周期1/fsa及び第3サンプリング周期1/fscと同じである。以下、等電圧期間EP以外の期間における時分割信号S3bのパルス間の時間を短期サンプリング周期1/fssという。等電圧期間EPの間、時分割信号S3bのパルス間の時間は、第1サンプリング周期1/fsa及び第3サンプリング周期1/fscよりも長い。以下、等電圧期間EPにおける時分割信号S3bのパルス間の時間を長期サンプリング周期1/fslという。
【0070】
短期サンプリング周期1/fssは、サンプリング周波数fssの逆数であり、第1サンプリング周期及び第3サンプリング周期と同じ周期の第2サンプリング周期である。長期サンプリング周期1/fslは、サンプリング周波数fslの逆数であり、第1サンプリング周期及び第3サンプリング周期と異なる周期の第2サンプリング周期である。即ち、第2スイッチ56bの切替周波数は、サンプリング周波数fss及びサンプリング周波数fslである。サンプリング周波数fss及びサンプリング周波数fslは共振周波数未満である。
【0071】
なお時分割信号S3aのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S3aのパルスが立ち下がった直後における時分割信号S3bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また時分割信号S3bのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S3bのパルスが立ち下がった直後における時分割信号S3cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、時分割信号S3cのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S3aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。
【0072】
第1スイッチ56aは時分割信号S3aのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第2スイッチ56bは時分割信号S3bのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第3スイッチ56cは時分割信号S3cのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。つまり、第1スイッチ56aは第1D/Aコンバータ52aにより増幅されたアナログ信号60Aを通過させる状態と通過させない状態とを切り替え、第2スイッチ56bは第2D/Aコンバータ52bにより増幅されたアナログ信号60Bを通過させる状態と通過させない状態とを切り替え、第3スイッチ56cは第3D/Aコンバータ52cにより増幅されたアナログ信号60Cを通過させる状態と通過させない状態とを切り替える。なお、第1スイッチ56a、第2スイッチ56b及び第3スイッチ56cは、同時に開いていることがあるが、同時に閉じていることはない。第1スイッチ56a、第2スイッチ56b及び第3スイッチ56cは、同時に閉じると、アナログ信号60A、60B、60Cが混在することになるからである。なお、アナログ信号60A、60B、60Cが混在しないから、時分割多重信号において、アナログ信号60Aの一部とアナログ信号60Bの一部とは連続し、アナログ信号60Bの一部とアナログ信号60Cの一部とは連続し、アナログ信号60Cの一部とアナログ信号60Aの一部とは連続する。つまり、時分割多重信号において、アナログ信号60Aの一部とアナログ信号60Bの一部との間には、アナログ信号60C及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アナログ信号60Bの一部とアナログ信号60Cの一部との間には、アナログ信号60Aの一部及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アナログ信号60Cの一部とアナログ信号60Aの一部との間には、アナログ信号60Bの一部及び他の波形のアナログ信号はない。
【0073】
第2スイッチ制御部56から、アナログ信号60A~60Cを合成した合成信号が出力される。合成信号は
図5に示すアナログ信号から、等電圧期間EPの間において時分割信号S3bのパルスが立ち上がっていない部分の信号を抜いた信号となる。合成信号はアンプ53にて増幅され、アンプ53は時分割多重信号を出力する。この時分割多重信号は
図5に示す時分割多重信号から、等電圧期間EPの間において時分割信号S3bのパルスが立ち上がっていない部分の信号を抜いた信号となる。時分割多重信号はスイッチ群54に入力される。
【0074】
各同期信号S2a、S2b及びS2cは、各時分割信号S3a、S3b及びS3cに対応する。即ち、同期信号S2bのパルス間の時間は、等電圧期間EPの間、長期サンプリング周期1/fslと同じであり、等電圧期間EP以外の期間、短期サンプリング周期1/fssと同じである。同期信号S2a及びS2cは、実施の形態1の
図6と同様である。各同期信号S2a、S2b及びS2cによってスイッチ群54が駆動され、駆動波形A、B、Cが分離され、アクチュエータ88は駆動する。即ち、第1サンプリング周波数fsaで時分割多重信号から駆動波形信号Pa(第1駆動波形信号)が分離され、サンプリング周波数fss及びサンプリング周波数fsl(第2サンプリング周波数)で時分割多重信号からPb(第2駆動波形信号)が分離され、第3サンプリング周波数fscで時分割多重信号から駆動波形信号Pc(第3駆動波形信号)が分離される。
【0075】
アクチュエータ88におけるリーク電流は所定電流未満である。即ち、アクチュエータ88の電圧は長期間維持されやすい。また等電圧期間EPの間、駆動波形Bの電圧は一定である。即ち、等電圧期間EPの間、時分割多重信号から駆動波形信号Pbを分離する場合、アクチュエータ88に電圧を供給する回数は、時分割多重信号から駆動波形信号Pa、Pcを分離する場合、又は電圧期間EP以外の期間、時分割多重信号から駆動波形信号Pbを分離する場合に比べて少なくてよい。そのため、時分割多重信号から駆動波形信号Pbを分離する場合、等電圧期間EPの間、時分割信号S3bの周期を長期サンプリング周期1/fslにしても、駆動波形B1(
図7参照)の生成に与える影響は僅かである。即ち、駆動波形B1がアクチュエータ88に入力される。なお等電圧期間EPの長短は駆動波形における等電圧の期間に依存するので、全期間が等電圧期間EPであってもよい。
【0076】
実施の形態4に係る印刷装置1は以下の構成に変更してもよい。
図12は変更例に係る制御装置50のブロック図である。変更例においては、アンプ53に代えて三つのアンプ53a~53cを備える。また第1D/Aコンバータ52aのアナログ信号がアンプ53aに入力され、アンプ53aは第1スイッチ56aにアナログ信号を出力する。第2D/Aコンバータ52bのアナログ信号がアンプ53bに入力され、アンプ53bは第2スイッチ56bにアナログ信号を出力する。第3D/Aコンバータ52cのアナログ信号がアンプ53cに入力され、アンプ53cは第3スイッチ56cにアナログ信号を出力する。
【0077】
第1~第3時分割信号S3a~S3cに基づいて、第1~第3スイッチ56a~56cが開閉され、時分割多重信号が生成される。言い換えると、時分割多重信号において、アンプ53aから出力されたアナログ信号60Aの一部とアンプ53bから出力されたアナログ信号60Bの一部とは連続し、アンプ53bから出力されたアナログ信号60Bの一部とアンプ53cから出力されたアナログ信号60Cの一部とは連続し、アンプ53cから出力されたアナログ信号60Cの一部とアンプ53aから出力されたアナログ信号60Aの一部とは連続する。
【0078】
つまり、時分割多重信号において、アンプ53aから出力されたアナログ信号60Aの一部とアンプ53bから出力されたアナログ信号60Bの一部との間には、アンプ53cから出力されたアナログ信号60C及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アンプ53bから出力されたアナログ信号60Bの一部とアンプ53cから出力されたアナログ信号60Cの一部との間には、アンプ53aから出力されたアナログ信号60Aの一部及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アンプ53cから出力されたアナログ信号60Cの一部とアンプ53aから出力されたアナログ信号60Aの一部との間には、アンプ53bから出力されたアナログ信号60Bの一部及び他の波形のアナログ信号はない。三つのアンプを使用することによって、各アンプの帯域を狭くすることができ、時分割多重を実現しやすい。
【0079】
(実施の形態5)
以下本発明を実施の形態5に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態5に係る構成の内、実施の形態1~4と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13は制御装置50のブロック図である。
【0080】
制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、三つのアンプ53d~53f、スイッチ群54、メモリ55、第3スイッチ制御部57、サンプルホールドユニット58(S/Hユニット)等を備える。第3スイッチ制御部57は、第1スイッチ57a、第2スイッチ57b、第3スイッチ57cを備える。サンプルホールドユニット58は第1サンプルホールド回路58a(第1S/H回路)、第2サンプルホールド回路58b(第2S/H回路)、第3サンプルホールド回路58c(第3S/H回路)を備える。
【0081】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、サンプルホールドユニット58に出力する。D/Aコンバータ52が出力するアナログ信号は
図5に示すアナログ信号と同様である。
【0082】
制御回路51はサンプルホールドユニット58に、サンプリング周期を示すサンプリング信号S4a~S4cを出力する。サンプリング信号S4aは第1サンプルホールド回路58aに入力され、サンプリング信号S4bは第2サンプルホールド回路58bに入力され、サンプリング信号S4cは第3サンプルホールド回路58cに入力される。各サンプリング信号S4a~S4cのサンプリング周期は相互に異なり、時間間隔Δtずつずれている。なお三つのサンプリング信号S4a、S4b及びS4cを単にサンプリング信号S4とも表す(
図13参照)。
【0083】
第1サンプルホールド回路58aはサンプリング信号S4aのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53dに出力する。第2サンプルホールド回路58bはサンプリング信号S4bのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53eに出力する。第3サンプルホールド回路58cはサンプリング信号S4cのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53fに出力する。
【0084】
第1サンプルホールド回路58aが出力するアナログ信号は、
図11のアナログ信号60Aと同様である。第2サンプルホールド回路58bが出力するアナログ信号は、
図11のアナログ信号60Bと同様である。第3サンプルホールド回路58cが出力するアナログ信号は、
図11のアナログ信号60Cと同様である。
【0085】
アンプ53dはアナログ信号を増幅して第1スイッチ57aに出力する。アンプ53eはアナログ信号を増幅して第2スイッチ57bに出力する。アンプ53fはアナログ信号を増幅して第3スイッチ57cに出力する。
【0086】
制御回路51は、アンプ53dが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S5aと、アンプ53eが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S5bと、アンプ53fが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S5cとを第3スイッチ制御部57に出力する。なお三つの時分割信号S5a、S5b及びS5cを単に時分割信号S5とも表す(
図13参照)。
【0087】
時分割信号S5a、S5b及びS5cは、
図11に示す時分割信号S3a、S3b及びS3cと同様なパルス波である。時分割信号S5aのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S5aのパルスが立ち下がった直後における時分割信号S5bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また時分割信号S5bのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S5bのパルスが立ち下がった直後における時分割信号S5cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、時分割信号S5cのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S5aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。
【0088】
第1スイッチ57aは時分割信号S5aのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第2スイッチ57bは時分割信号S5bのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第3スイッチ57cは時分割信号S5cのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。なお、第1スイッチ57a、第2スイッチ57b及び第3スイッチ57cは、同時に開いていることがあるが、同時に閉じていることはない。第1スイッチ57a、第2スイッチ57b及び第3スイッチ57cは、同時に閉じると、アナログ信号60A、60B、60Cが混在することになるからである。
【0089】
なお、アナログ信号60A、60B、60Cが混在しないから、時分割多重信号において、アンプ53dから出力されたアナログ信号60Aの一部とアンプ53eから出力されたアナログ信号60Bの一部とは連続し、アンプ53eから出力されたアナログ信号60Bの一部とアンプ53fから出力されたアナログ信号60Cの一部とは連続し、アンプ53fから出力されたアナログ信号60Cの一部とアンプ53dから出力されたアナログ信号60Aの一部とは連続する。つまり、時分割多重信号において、アンプ53dから出力されたアナログ信号60Aの一部とアンプ53eから出力されたアナログ信号60Bの一部との間には、アンプ53fから出力されたアナログ信号60C及び他の波形のアナログ信号はない。
【0090】
また、時分割多重信号において、アンプ53eから出力されたアナログ信号60Bの一部とアンプ53fから出力されたアナログ信号60Cの一部との間には、アンプ53dから出力されたアナログ信号60Aの一部及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アンプ53fから出力されたアナログ信号60Cの一部とアンプ53dから出力されたアナログ信号60Aの一部との間には、アンプ53eから出力されたアナログ信号60Bの一部及び他の波形のアナログ信号はない。
【0091】
第3スイッチ制御部57から、アンプ53d~53fから出力されたアナログ信号であって、第1スイッチ57aを通過したアナログ信号と、第2スイッチ57bを通過したアナログ信号と、第3スイッチ57cを通過したアナログ信号とを合成した合成信号、即ち時分割多重信号が出力される。この時分割多重信号は
図5に示す時分割多重信号から、等電圧期間EPの間において時分割信号S5bのパルスが立ち上がっていない部分の信号を抜いた信号となる。時分割多重信号はスイッチ群54に入力される。
【0092】
各同期信号S2a、S2b及びS2cは、各時分割信号S5a、S5b及びS5cに対応する。即ち、同期信号S2bのパルス間の時間は、等電圧期間EPの間、長期サンプリング周期1/fslと同じであり、等電圧期間EP以外の期間、短期サンプリング周期1/fssと同じである。同期信号S2a及びS2cは、実施の形態1の
図6と同様である。各同期信号S2a、S2b及びS2cによってスイッチ群54が駆動され、駆動波形A、B、Cが分離され、アクチュエータ88は駆動する。即ち、第1サンプリング周波数fsaで時分割多重信号から駆動波形信号Pa(第1駆動波形信号)が分離され、サンプリング周波数fss及びサンプリング周波数fsl(第2サンプリング周波数)で時分割多重信号からPb(第2駆動波形信号)が分離され、第3サンプリング周波数fscで時分割多重信号から駆動波形信号Pc(第3駆動波形信号)が分離される。
【0093】
なおサンプリング信号S4aが示すサンプリング時点は、時分割信号S5aが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4bが示すサンプリング時点は、時分割信号S5bが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4cが示すサンプリング時点は、時分割信号S5cが示す閉時点よりも早い。
【0094】
実施の形態5に係る印刷装置1にあっては、各駆動波形データDa、Db、Dcのデータ値をメモリ55から読み出して、時系列に並べてD/Aコンバータ52に入力し、第1サンプリング信号S4aに基づいて、第1サンプルホールド回路58aを動作させ、第2サンプリング信号S4bに基づいて、第2サンプルホールド回路58bを動作させ、第3サンプリング信号S4cに基づいて、第3サンプルホールド回路58cを動作させる。時分割信号S5a~S5cに基づいて第1~第3スイッチ57a~57cを開閉させ、時分割多重信号を生成することができる。
【0095】
またサンプリング信号S4aが示すサンプリング時点は、時分割信号S5aが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4bが示すサンプリング時点は、時分割信号S5bが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4cが示すサンプリング時点は、時分割信号S5cが示す閉時点よりも早い。そのため、時分割信号S5a~S5cの遅延による時分割多重信号の生成への影響を抑制することができる。
【0096】
(実施の形態6)
以下本発明を実施の形態6に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態6の構成のうち、実施の形態1~5と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図14は、時分割多重信号と、同期信号S2a~S2cとを示すグラフである。連続する3つの駆動波形信号Pa、Pb及びPcの幅の合計は、基準クロックによって決定される時間以内に収める必要がある。換言すれば、前記合計が前記時間以内に収まる限り、各駆動波形信号Pa、Pb及びPcの幅を変更することができる。
【0097】
実施の形態6において、各駆動波形信号Pa、Pb及びPcの幅は互いに異なる。同期信号S2aの幅は駆動波形信号Paに対応し、同期信号S2bの幅は駆動波形信号Pbに対応し、同期信号S2cの幅は駆動波形信号Pcに対応する。つまり、同期信号S2a、S2b及びS2cの幅は互いに異なる。各同期信号S2a~S2cの幅の合計は3つの駆動波形信号Pa、Pb及びPcの幅の合計と略同じである。なお、第1パルス信号の幅は、データAk-1に対応する第1部分及びデータAkに対応する第2部分の幅に対応する。また、第2パルス信号は、データBk-1に対応する第3部分及びデータBkに対応する第4部分の幅に対応する。
【0098】
実施の形態6においては、電圧が短時間で急激に変化する駆動波形を時分割多重信号から分離する場合、駆動波形信号の幅(周期又は時間)を長くし、同期信号の幅も長くする。そのため、アクチュエータ88への電圧の印加時間が長くなり、アクチュエータ88の電圧を、駆動波形に対応した目標電圧まで確実に変化させることができる。一方、電圧の変化が少ない駆動波形を時分割多重信号から分離する場合、駆動波形信号の幅を短くし、同期信号も短くする。即ち、各同期信号S2a~S2cの幅を各駆動波形信号Pa、Pb及びPcの幅に応じて変更することができる。
【0099】
なおコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトに配置されるか、若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0100】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 印刷装置
50 制御装置
51 制御回路
52 D/Aコンバータ
53 アンプ
530 デジタルアンプ
54 スイッチ群
55 メモリ
56 第2スイッチ制御部
57 第3スイッチ制御部
58 サンプルホールドユニット
70 振幅情報生成回路
71 電圧決定回路
72 電圧可変電源