(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131721
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】防護工、防護工を構築する方法及び防護工を解体する方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042153
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 流
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 裕介
(57)【要約】
【課題】従来の手法よりも早急に防護工を施工すること。
【解決手段】土石流の流れに対向するように構築される防護工(1)は、施工位置に載置される基礎部(10)と、基礎部に連結され、土石流中の物体を捕捉する捕捉部(40)と、自身の重量により、基礎部の位置を固定する錘体部(30)と、少なくとも一部が基礎部に載置され、錘体部が載置される支持部(20)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土石流の流れに対向するように構築される防護工であって、
施工位置に載置される基礎部と、
前記基礎部に連結され、土石流中の物体を捕捉する捕捉部と、
自身の重量により、前記基礎部の位置を固定する錘体部と、
少なくとも一部が前記基礎部に載置され、前記錘体部が載置される支持部と、
を備えることを特徴とする防護工。
【請求項2】
前記基礎部は、
前記捕捉部が連結される枠部を備え、
前記支持部は、前記枠部に囲まれた内側の領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防護工。
【請求項3】
前記枠部は、複数の枠材が連結されて矩形状に形成されており、
前記支持部は、対向する枠材間に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の防護工。
【請求項4】
前記支持部は、両端部が前記基礎部に載置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工。
【請求項5】
前記支持部は、前記基礎部に連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工。
【請求項6】
前記錘体部は、前記基礎部に連結された前記捕捉部に対して土石流の流れ方向上流側及び下流側に載置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工。
【請求項7】
前記錘体部は、コンクリートブロックであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工。
【請求項8】
前記基礎部、前記支持部、前記錘体部の少なくとも一部は地盤に埋められていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工。
【請求項9】
前記基礎部に対して土石流の流れ方向上流側と下流側の少なくとも一方には地盤の洗掘を抑制する護床工が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工を構築する方法であって、
前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部を埋設できる深さまで施工位置の地盤を掘削する工程と、
前記基礎部を掘削された領域に載置する工程と、
前記基礎部に前記支持部を載置する工程と、
前記支持部の上に前記錘体部を載置する工程と、
前記基礎部に前記捕捉部を連結する工程と、
前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部を埋める工程と、
を有することを特徴とする防護工を構築する方法。
【請求項11】
前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部は、掘削した土砂で埋めることを特徴とする請求項10に記載の防護工を構築する方法。
【請求項12】
前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部は、コンクリートで埋めることを特徴とする請求項10に記載の防護工を構築する方法。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工を構築する方法であって、
施工位置を整地する工程と、
前記基礎部を整地された領域に載置する工程と、
前記基礎部に前記支持部を載置する工程と、
前記支持部の上に前記錘体部を載置する工程と、
前記基礎部に前記捕捉部を連結する工程と、
を有することを特徴とする防護工を構築する方法。
【請求項14】
前記基礎部に対して土石流の流れ方向上流側と下流側の少なくとも一方に地盤の洗掘を抑制する護床工を設ける工程を有することを特徴とする請求項13に記載の防護工を構築する方法。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか一項に記載の防護工を解体する方法であって、
前記捕捉部を前記基礎部から取り除く工程と、
前記支持部の上に載置された前記錘体部を取り除く工程と、
前記基礎部及び前記支持部を取り除く工程と、
を有することを特徴とする防護工を解体する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護工、防護工を構築する方法及び防護工を解体する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動による異常気象が原因で全国各地において土砂災害が頻発しており、土砂災害の形態は、「広域化」、「激甚化」、「多発化」している。土砂災害に対して人的被害をなくすために、国や自治体は色々な対策を実施しているが、気候変動による集中豪雨や局所的豪雨、スーパー台風等が原因で、毎年全国各地で土砂災害が発生し、甚大な被害が発生している。
土砂災害発生後の2次災害を防止するため、緊急対策工として、コンクリート基礎を使用した土砂柵、コンクリートブロックによる堰堤、大型土嚢による堰堤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、土砂災害が発生した地域の復旧活動を行うにあたり、土砂災害発生後の土砂や流木の流出による2次災害を防止する対策を早急に講じる必要がある。
しかし、コンクリート基礎を使用した土砂柵は、地盤の掘削、型枠の設置、コンクリートの打設、コンクリートの養生、型枠の脱型の工程が必要であり、その後上部工の柵の設置(通常、コンクリート内部に支柱を埋め込む)となるため、施工に時間がかかる。また、土砂災害の状況によってはコンクリートの確保ができない恐れもある。
また、コンクリートブロックによる堰堤は、特殊な形状をしたコンクリートブロックを縦横に連続して設置していくため、形状をかみ合わせるのに技能が必要であり、施工に時間がかかる。
また、大型土嚢による対策は、緊急時に土砂を土嚢内部に入れる作業が必要であり、施工に時間がかかる。また、土石流・流木により土嚢が破損する恐れがある。
よって、上記の方法よりも早急に施工することができる緊急対策工が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来の手法よりも早急に施工することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様は、土石流の流れに対向するように構築される防護工であって、施工位置に載置される基礎部と、前記基礎部に連結され、土石流中の物体を捕捉する捕捉部と、自身の重量により、前記基礎部の位置を固定する錘体部と、少なくとも一部が前記基礎部に載置され、前記錘体部が載置される支持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記基礎部は、前記捕捉部が連結される枠部を備え、前記支持部は、前記枠部に囲まれた内側の領域に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、前記枠部は、複数の枠材が連結されて矩形状に形成されており、前記支持部は、対向する枠材間に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記支持部は、両端部が前記基礎部に載置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記支持部は、前記基礎部に連結されていることが好ましい。
【0011】
また、前記錘体部は、前記基礎部に連結された前記捕捉部に対して土石流の流れ方向上流側及び下流側に載置されていることが好ましい。
【0012】
また、前記錘体部は、コンクリートブロックであることが好ましい。
【0013】
また、前記基礎部、前記支持部、前記錘体部の少なくとも一部は地盤に埋められていることが好ましい。
【0014】
また、前記基礎部に対して土石流の流れ方向上流側と下流側の少なくとも一方には地盤の洗掘を抑制する護床工が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る一態様は、上記の防護工を構築する方法であって、前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部を埋設できる深さまで施工位置の地盤を掘削する工程と、前記基礎部を掘削された領域に載置する工程と、前記基礎部に前記支持部を載置する工程と、前記支持部の上に前記錘体部を載置する工程と、前記基礎部に前記捕捉部を連結する工程と、前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部を埋める工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部は、掘削した土砂で埋めることが好ましい。
【0017】
また、前記基礎部と、前記支持部と、前記錘体部の少なくとも一部は、コンクリートで埋めることが好ましい。
【0018】
本発明に係る一態様は、上記の防護工を構築する方法であって、 施工位置を整地する工程と、前記基礎部を整地された領域に載置する工程と、前記基礎部に前記支持部を載置する工程と、前記支持部の上に前記錘体部を載置する工程と、前記基礎部に前記捕捉部を連結する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、前記基礎部に対して土石流の流れ方向上流側と下流側の少なくとも一方に地盤の洗掘を抑制する護床工を設ける工程を有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る一態様は、上記の防護工を解体する方法であって、前記捕捉部を前記基礎部から取り除く工程と、前記支持部の上に載置された前記錘体部を取り除く工程と、前記基礎部及び前記支持部を取り除く工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る一態様によれば、従来の手法よりも早急に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】災害発生地に設置された防護工を示す概略図である。
【
図5】(a)は枠部を構成する長尺材の側面図であり、(b)は枠部を構成する長尺材の正面図であり、(c)は枠部を構成する長尺材の平面図である。
【
図6】(a)は枠部を構成する短尺材の側面図であり、(b)は枠部を構成する短尺材の正面図であり、(c)は枠部を構成する短尺材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施の形態をとりうる。
【0024】
<土石流・流木対策工の構成>
図1~
図7に示すように、防護工1は、例えば、土砂災害発生後の被災地において復旧活動を行うために緊急に構築された緊急対策工(土石流・流木対策工)である。防護工1が構築される場所等は限定されないが、例えば、防護工1は、狭隘な山間部の災害発生地に設置されている。つまり、防護工1は、一度土石流が発生し、再び土石流の発生が予想される場所に、予想される土石流の流れに対向するように構築されている。
なお、説明の便宜上、予想される土石流の流れ方向を「F」とし、上流側を「F1」、下流側を「F2」とする。また、土石流の流れ方向Fに交差する方向を防護工1の幅方向として「W」とする。
【0025】
図1においては、複数の防護工1が幅方向Wに並んで構築されている。防護工1は、土石流が発生した災害発生地Xに対して下流側F2に設置されている。防護工1は、予想される土石流の流れに対向するように構築されている。
図2~4に示すように、防護工1は、施工位置の地盤Gを掘削した後の掘削領域(掘削部)Rに載置され、掘削土砂S又はコンクリート、モルタル、ソイルセメント等により埋められている。防護工1は、基礎部10と、支持部20と、錘体部30と、捕捉部40と、を備えている。
【0026】
(基礎部)
基礎部10は、施工位置の地盤Gを掘削した後の掘削領域(掘削部)Rに載置される。
図4~6に示すように、基礎部10は、枠部11と、接続プレート13a,13bと、補強用プレート14を有している。
枠部11と、接続プレート13a,13bと、補強用プレート14は、それぞれトラック(好ましくは、4tトラック)の荷台に積載できる程度の大きさ(幅、奥行、高さ)に形成されており、使用時には比較的小さな重機で簡単に施工位置に設置することができると共に、災害発生前は備蓄倉庫に広大な場所を取らずに保管しておくことができる。
【0027】
枠部11は、平面視略矩形状(長方形状)に形成されている。本実施の形態においては、枠部11は、長短2組ずつのH形鋼から形成されている。具体的には、枠部11は、土石流の流れ方向Fに沿う方向に延在する長尺材11a(枠材)と、この流れ方向Fに直交する方向に延在する短尺材11b(枠材)とを接続することにより構成されている。このとき、長尺材11a同士が互いに平行に対向し、短尺材11b同士が互いに平行に対向する。
なお、長尺材11a及び短尺材11bは、それぞれ一つのH形鋼から形成したものでもよいし、複数のH形鋼を繋ぎ合わせたものでもよい。また、長尺材11a及び短尺材11bは、H形鋼に限らず、他の鋼材やコンクリート材等で形成されていてもよい。
【0028】
接続プレート13a,13bは、長尺材11aと短尺材11bとを接続する際に用いられる。接続プレート13aは、長尺材11aに取り付けられており、接続プレート13bは、短尺材11bに取り付けられている。
図5に示すように、接続プレート13aは、長尺材11aを形成するH形鋼の両端部において、対向するフランジの縁同士を連結する平面視矩形状の板材である。接続プレート13aは、その面方向が長尺材11aの長手方向(延在方向)に沿うように長尺材11aに溶接等によって接合されている。接続プレート13aには、接続用の貫通孔が形成されている。
図6に示すように、接続プレート13bは、短尺材11bを形成するH形鋼の両端部において、対向するフランジの長手方向の端縁同士を連結する平面視矩形状の板材である。接続プレート13bは、その面方向が短尺材11bの端面方向(横断面方向)に沿うように短尺材11bに溶接等によって接合されている。接続プレート13bには、接続用の貫通孔が形成されている。
長尺材11aと短尺材11bとを接続する際には、接続プレート13aの面と接続プレート13bの面とを当接させ、ボルト及びナットによって接続することにより、長尺材11aと短尺材11bを接続することができる。なお、ボルト及びナットに代えて、ピンで接続してもよい。
【0029】
補強用プレート14は、長尺材11aを形成するH形鋼の両端部以外の任意の位置において、対向するフランジ同士を連結する平面視矩形状の板材である。補強用プレート14は、その面方向が長尺材11aの端面方向(横断面方向)に沿うように長尺材11aに溶接等によって接合されている。なお、補強用プレート14は、長尺材11aに限らず、短尺材11bに設けてもよい。また、長尺材11a及び短尺材11bを形成するH形鋼の強度に問題がなければ、省略しても問題ない。
なお、接続プレート13a,13b及び補強用プレート14は事前に工場で枠部11溶接にて接合されている。
【0030】
(支持部)
支持部20は、少なくとも一部が基礎部10に載置され、上面に錘体部30が載置され、錘体部30を支持する。
図4、
図7に示すように、支持部20は、例えば、平鋼板から形成されており、各支持部20は、長尺材11aの延在方向(長手方向)に沿って所定の間隔をあけて、枠部11における対向する長尺材11a間に架け渡されている。より具体的には、支持部20は、延在方向両端部が主面に対して略直角に折り曲げられており、この折り曲げ部20aは、長尺材11aのウェブ11cに対向するように長尺材11aの下側のフランジ11dに載置されている。各支持部20は、短尺材11bの延在方向(長手方向)に沿って、それぞれ対向する長尺材11aの下側のフランジ11dに跨るように載置されている。このとき、各支持部20は、その延在方向における両端部が長尺材11aに載置されている。すなわち、支持部20は、枠部11に囲まれた内側の領域に設けられている。これらの支持部20の上面に錘体部30が載置されることで、錘体部30の荷重は支持部20を介して枠部11に作用し、枠部11をその荷重で施工位置に固定することができる。なお、支持部20は、枠部11の長尺材11a以外の部分(例えば、短尺材11b等)に載置されていてもよい。また、支持部20は、錘体部30を載置することができ、枠部11に載置できるものであれば、一枚の大きな平鋼板から形成されていてもよい。また、長尺材11aに載置された支持部20同士を連結してもよい。また、支持部20を長尺材11aの延在方向に所定間隔で載置する目安となる目印や突起を、長尺材11aの下側のフランジ11dの内側やウェブ11cに設けてもよい。突起を設けた場合、支持部20のずれ止めを兼ねることができる。
【0031】
(錘体部)
錘体部30は、複数の支持部20にわたって載置され、その自重により基礎部10の位置を固定する。錘体部30は、例えば、直方体状のコンクリートブロックから形成されている。錘体部30は、枠部11で囲まれた内側の領域に設けられている支持部20に載置されるため、枠部11内に収まる大きさ(一方の辺が長尺材11aよりも短く、他方の辺が短尺材11bよりも短い)であることが好ましい。また、錘体部30は、基礎部10に連結される捕捉部40の機能を阻害しないよう、支持部20に載置した際に、錘体部30の上面が捕捉部40の横部43よりも下方にあることが好ましい。錘体部30は、基礎部10に連結された捕捉部40に対して土石流の流れ方向上流側F1及び下流側F2に載置されている
錘体部30は支持部20に載置するのみであり、錘体部30の荷重が支持部20を介して基礎部10に作用することにより、基礎部10が施工位置に固定される。そのため、支持部20に錘体部30を固定する手段を設ける必要はなく、支持部20の任意の位置に錘体部30を載置することができる。さらには、基礎部10に支持部20を固定する手段を設ける必要もない。これにより、別途の固定具や連結具を用いた締結を行う必要はないことから、基礎部10や支持部20への孔開け加工も不要である。なお、本実施の形態においては、錘体部30として直方体状のコンクリートブロックを使用しているが、大型土嚢を使用してもよい。すなわち、基礎部10を施工位置に固定することができる重量があり、支持部20に載置できるものであればよい。
【0032】
(捕捉部)
捕捉部40は、基礎部10に立設するように連結されており、土石流中に含まれる岩や巨礫、流木等の物体を捕捉する。
捕捉部40は、基礎部10に対して立設方向に延びる縦部41,42と、縦部41における土石流の流れ方向上流側F1で縦部41間に架け渡された横部43と、各縦部41,42の下端部に枠部11と連結するためのベースプレート44と、を備える。
防護工1は、4本の縦部41,42と、6本の横部43と4枚のベースプレート44と、を備えているが、縦部41,42、横部43及びベースプレート44の数は、特定の数に限定されない。
【0033】
縦部41,42は、例えば、H形鋼により形成されている。4本の縦部41,42は、2本の上流側縦部41と、2本の下流側縦部42である。上流側縦部41は、それぞれ一端(下端)にベースプレート44が接続され、ベースプレート44を通じて枠部11に連結されており、基礎部10の上方に立設された状態となっている。下流側縦部42は、それぞれ一端(下端)にベースプレート44が接続され、ベースプレート44を通じて枠部11に連結されており、基礎部10の上方に立設された状態となっている。ベースプレート44は、縦部41,42に溶接により固定されるのが好ましいが、溶接による固定に限定されず、例えば、ボルト等を用いてもよい。
上流側縦部41は、基礎部10から上方に向かうにつれて下流側F2に向かって斜めに延びている。
下流側縦部42は、基礎部10から上方に向かうにつれて上流側F1に向かって斜めに延びている。上流側縦部41及び下流側縦部42はそれぞれ、上方に向かうにつれて互いに近づいていく。下流側縦部42は、その上端(他端)において上流側縦部41の上端近傍に連結されている。捕捉部40は、防護工1を側方から見た場合、上流側縦部41及び下流側縦部42が略λ形状に組まれている。
【0034】
横部43は、上流側縦部41において上流側F1に面するフランジ41aに保持具50によって取り付けられている。横部43は、断面視円形状の鋼管により形成されている。横部43は、上流側縦部41の延在方向に沿って、所定の間隔をあけて隣接する上流側縦部41間に架け渡されている。横部43は、それぞれ、延在方向が互いにほぼ平行になっている。横部43の延在方向における両端部は、上流側縦部41からそれぞれ延出している。なお、横部43は、例えば、断面視四角形状の角鋼管、断面視楕円形状の鋼管、H形鋼のように、断面視円形状の鋼管以外を用いてもよい。
【0035】
ベースプレート44は、枠部11の長尺材11aを構成するH形鋼のフランジに当接するように載置され、ボルト及びナットにより長尺材11aに連結されている。
保持具50は、上流側F1に面する上流側縦部41のフランジ41aにおいて上流側縦部41の延在方向に沿って所定の間隔をあけて締結具(例えば、ボルト及びナット)により着脱自在に取り付けられている。
保持具50は、例えば、鋼材により形成されている。なお、保持具50に対する横部43の固定は、溶接による固定に限定されず、例えば、ボルト等を用いてもよい。
【0036】
<防護工を構築する方法>
次に、防護工1を構築する方法について説明する。
防護工1を構築する際には、災害発生地の近くにある備蓄倉庫から基礎部10と、支持部20と、錘体部30と、捕捉部40を重機及びトラックにより搬出し、災害発生地まで運搬する。
この運搬作業に並行して、又は予め災害発生した災害発生地を重機により整する。防護工1を地中に固定する場合、基礎部10と、支持部20と、錘体部30の少なくとも一部と、捕捉部40の下部と、を埋設できる深さまで施工位置の地盤Gを掘削する(ステップS1)。
次に、長尺材11aと短尺材11bとを接続した枠部11を有する基礎部10を掘削された掘削領域Rに載置する(ステップS2)。
次に、基礎部10に支持部20を載置する(ステップS3)。具体的には、枠部11を構成する長尺材11a間に支持部20を架け渡し、支持部20の折り曲げ部20aを長尺材11aのウェブ11cに対向させるように支持部20の各端部をそれぞれの長尺材11aのフランジ11dに載置する。このとき、枠部11に支持部20を載置するのみでよいので、支持部20の細かな位置合わせは不要であり、枠部11への固定も不要である。
次に、支持部20の上面に錘体部30を載置する(ステップS4)。このとき、支持部20の上面に錘体部30を載置するのみでよいので、錘体部30の高精度な位置合わせは不要であり、基礎部10や支持部20への固定も不要である。
次に、基礎部10の上に捕捉部40を載置し、捕捉部40を基礎部10に連結する(ステップS5)。具体的には、基礎部10の枠部11を構成する長尺材11aのフランジと捕捉部40のベースプレート44をボルト及びナットで連結する。
次に、施工位置の掘削時に生じた土砂Sを用いて、基礎部10と、支持部20と、錘体部30の少なくとも一部と、捕捉部40の下部を埋設するよう、埋め戻す(ステップS6)。ステップS6において、防護工1を暫定的な設置とし、一定期間経過後、防護工1を解体した上で、基礎部10、支持部20、錘体部30、捕捉部40を備蓄倉庫に保管し、再利用に備える場合には、掘削時に生じた土砂Sを用いて埋め戻すことが好ましい。また、防護工1を設置箇所に恒久的に設置する場合には、コンクリートを用いて埋め戻すことが好ましい。
以上の手順により、防護工1が構築される。
【0037】
なお、上記の防護工1の構築方法では、捕捉部40は、予め工場で製作されていたが、基礎部10と同様に、防護工1を施工する現場に構成要素である、縦部41,42、横部43及びベースプレート44を備蓄倉庫から運搬し、これらの構成要素を現場で組み立ててもよい。
【0038】
以上のように構築された防護工1によれば、基礎部10、支持部20、錘体部30及び捕捉部40は、事前に工場等で製作して、土石流が発生しそうな場所の近くに備蓄可能なため、土砂災害の発生時には、緊急対策工として防護工1を早急に構築することができる。これにより、土砂災害発生後の土砂・流木流出による2次災害防止、周辺住宅、工事場所の安全確保の早期化を図ることができる。
また、防護工1の全ての構成要素を備蓄できるので、施工時の準備期間を大幅に短縮できる。
また、基礎部10を施工位置に載置し、基礎部10に支持部20を載置し、支持部20に錘体部30を載置するだけで基礎部10を施工位置に固定することができる。すなわち、基礎部10、支持部20、錘体部30を互いに連結したり、固定する必要がない。これにより、高い施工精度が求められることもなく、作業効率を大幅に改善することができる。
また、錘体部30は、基礎部10の枠部11に囲まれた内側の領域に自由に載置することができるので、作業効率を大幅に改善することができる。
また、コンクリートブロックを錘体部30として用いているので、施工現場でコンクリートを打設して養生する工程は不要となり、基礎部10、支持部20、錘体部30を載置した後に捕捉部40をすぐに取り付けることができる。
また、支持部20は、両端部のみが基礎部10に載置されているので、錘体部30の載置領域を大きく確保することができる。
また、錘体部30は、基礎部10に連結された捕捉部40に対して土石流の流れ方向上流側F1及び下流側F2に載置されているので、基礎部10を施工位置に安定した状態で固定することができる。
また、基礎部10、支持部20、錘体部30の少なくとも一部は地盤Gに埋められているので、防護工1を地表に載置する場合に比べて安定した状態で設置することができる。
【0039】
また、ユニット化されたものを対策すべき場所に設置するだけなので、整地に際しても重機による簡単な掘削程度でよく、施工精度をあまり厳しくすることなく、多少の地盤の不陸にも対応できる。
また、捕捉部40において土石流・流木を捕捉する捕捉部分は、鋼管から形成された横部43を保持する保持具50をH形鋼から形成された上流側縦部41にボルトで連結することにより構築される。ここで、捕捉部40は、土石流・流木のエネルギーを捕捉部の鋼管の凹みと撓みで吸収し、その反力を下流側縦部42で支える構造のため、防護工1全体は大きな変形を伴わないので、土石流・流木捕捉後に損傷のあった横部43のみを簡単に取り替えることができる。
また、土石流・流木を捕捉後、除石・除木をする場合、横部43の上部より捕捉部分の横部43を順次取り外していくことにより除石・除木作業をスムーズに行うことができる。なお、横部43の取り外しは、高さ方向においていずれの横部43から始めてもよい。
また、防護工1は、上流側縦部41に対して下流側縦部42を斜めに連結して略λ型に構成されており、現地で想定される土石流の荷重に応じて最適な形状とすることができる。つまり、防護工1を略λ型に構成することにより、土石流の水平荷重を上流側縦部41に対して平行な成分と、直角な成分とに分けることができる。
【0040】
<防護工を再利用のために解体する方法>
次に、防護工1を再利用のために解体する方法について説明する。
防護工1を再利用のために解体する際には、基礎部10と、支持部20と、錘体部30と、捕捉部40とが露出する深さまで施工位置の地盤Gを掘削する。(ステップS1)。
次に、基礎部10の枠部11と捕捉部40とを連結しているボルト及びナットを取り外し、重機により基礎部10の上から捕捉部40を取り除く(ステップS2)。
次に、重機により支持部20の上に載置されている錘体部30を取り除く(ステップS3)。
次に、重機により、基礎部10及び支持部20を取り除く(ステップS4)。
次に、掘削時に生じた土砂を用いて、地盤Gを埋め戻す(ステップS5)。
次に、基礎部10、支持部20、錘体部30と、捕捉部40を重機及びトラックにより搬出し、災害発生地の近くにある備蓄倉庫まで運搬する(ステップS6)。
以上のように解体された防護工1を分解して備蓄倉庫に保管し、必要に応じて再利用することが可能である。また、防護工1の解体の際には、基礎部10と支持部20と錘体部30は互いに連結されていないので、連結解除作業も少なくて済み、解体の作業効率もよい。
なお、捕捉部40及び錘体部30を取り除いた後、基礎部10、支持部20を地盤Gに残したまま埋め戻してもよい。
【0041】
<変形例1>
次に、防護工の変形例1について説明する。変形例1における防護工1Aが上記実施の形態における防護工1と異なる点は、基礎部10と支持部20の関係であるため、以下では相違点のみ説明し、上記実施の形態と同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7に示すように、上記実施の形態では、支持部20を構成する平鋼板が1枚ずつ、枠部11を構成する長尺材11aの下側のフランジ11d同士に跨るように載置されているのみであったが、変形例1では、
図8に示すように、支持部20を構成する平鋼板が1枚ずつ、長尺材11aの下側のフランジ11d同士に跨るように載置されているのみならず、長尺材11aと支持部20とがボルト12a及びナット12bにより締結されている。具体的には、長尺材11aのウェブ11cと支持部20の折り曲げ部20aとがボルト12a及びナット12bにより締結されている。
以上のように構築された防護工1Aによれば、防護工1Aを不陸地盤に載置する際、防護工1と比較して、より安定して施工位置に載置することが可能である。また、支持部20を基礎部10に連結することにより、防護工1Aの剛性を高めることができる。
【0043】
<変形例2>
次に、防護工の変形例2について説明する。変形例2における防護工1Bが上記実施の形態における防護工1と異なる点は、施工位置を掘削せずに防護工1Bを地表に載置した点であるため、以下では相違点のみ説明し、上記実施の形態と同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図9に示すように、防護工1Bは、地表に載置されており、防護工1Bのいずれの構成も地盤G内に埋設されていない。すなわち、防護工1Bのうち、最も下方に位置する基礎部10も地表面に露出した状態で載置されている。
また、防護工1Bを施工位置の地表面に載置する場合、洗掘対策として、基礎部10に対して土石流の流れ方向上流側F1と下流側F2の少なくとも一方に護床工70が設けられている。護床工70は、鉄筋等で形成された篭体内に砂利が詰め込まれたものであり、防護工1Bの上流側及び下流側の洗掘を抑制する。なお、護床工70は、洗掘される可能性が高い防護工1Bの下流側F2に設けることが好ましいが、
図9に示すように、下流側F2と上流側F1の双方に設けてもよいし、上流側F1のみに設けてもよい。
【0045】
<防護工を構築する方法>
次に、防護工1Bを構築する方法について説明する。
防護工1Bを構築する際には、災害発生地の近くにある備蓄倉庫から基礎部10と、支持部20と、錘体部30と、捕捉部40を重機及びトラックにより搬出し、災害発生地まで運搬する。
この運搬作業に並行して、又は予め災害発生した災害発生地を重機により整地する(ステップS1)。ただし、この整地は掘削を伴わず、地表を平坦にならすものである。
次に、長尺材11aと短尺材11bとを接続した枠部11を有する基礎部10を整地された領域に載置する(ステップS2)。
次に、基礎部10に支持部20を載置する(ステップS3)。具体的には、枠部11を構成する長尺材11a間に支持部20を架け渡し、支持部20の折り曲げ部20aを長尺材11aのウェブ11cに対向させるように支持部20の各端部をそれぞれの長尺材11aのフランジ11dに載置する。このとき、枠部11に支持部20を載置するのみでよいので、支持部20の細かな位置合わせは不要であり、枠部11への固定も不要である。
次に、支持部20の上面に錘体部30を載置する(ステップS4)。このとき、支持部20の上面に錘体部30を載置するのみでよいので、錘体部30の高精度な位置合わせは不要であり、基礎部10や支持部20への固定も不要である。
次に、基礎部10の上に捕捉部40を載置し、捕捉部40を基礎部10に連結する(ステップS5)。具体的には、基礎部10の枠部11を構成する長尺材11aのフランジと捕捉部40のベースプレート44をボルト及びナットで連結する。
次に、基礎部10に対して土石流の流れ方向上流側F1と下流側F2に地盤の洗掘を抑制する護床工70を設ける。ここで、護床工70は、予め製作されて備蓄倉庫に備蓄されていてもよいし、施工現場で製作してもよい。
以上の手順により、防護工1Bが構築される。
【0046】
以上のように構築された防護工1Bによれば、上記の防護工1の効果に加えて、施工位置の掘削作業、埋め戻し作業を省くことができる。
【0047】
<その他>
なお、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更してもよい。
例えば、防護工における捕捉部は、上記の構成に限らず、縦部と横部を格子状に組み立てた上流側ユニット及び下流側ユニットを連結部材で連結した捕捉部としてもよい。
また、基礎部における枠部の形状や大きさ、支持部の形状や大きさも自由に変更可能である。
また、支持部は、枠部に連結しないのであれば、両端部に折り曲げ部を有していない平鋼板であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B 防護工
10 基礎部
11 枠部
20 支持部
30 錘体部
40 捕捉部
70 護床工