(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131726
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】成型体の補修方法及び成型体構造
(51)【国際特許分類】
E01B 3/00 20060101AFI20240920BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E01B3/00
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042159
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 幹
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059GG02
2D059GG55
2D059GG63
(57)【要約】
【課題】簡便で作業性に優れた成型体の補修方法及び成型体構造を提供する。
【解決手段】成型体10には、貫通孔11が設けられ、貫通孔11には留め具20が挿入され、留め具20には、固定具30が嵌合され、成型体10の補修方法は、貫通孔11と留め具20との間の第1間隙12を第1の補修材40で封止する工程1を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型体の補修方法であって、
前記成型体には、貫通孔が設けられ、
前記貫通孔には留め具が挿入され、
前記留め具には、固定具が嵌合され、
前記成型体の補修方法は、前記貫通孔と前記留め具との間の第1間隙を第1の補修材で封止する工程1を有することを特徴とする、
成型体の補修方法。
【請求項2】
前記工程1の後、前記成型体と前記固定具との間の第2間隙に第2の補修材を充填する工程2をさらに有する、
請求項1に記載の成型体の補修方法。
【請求項3】
前記工程1において、前記第1の補修材が前記成型体と前記固定具との間の第2間隙に充填される、
請求項1に記載の成型体の補修方法。
【請求項4】
前記第1の補修材は、粘度が100000mPa・s以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の成型体の補修方法。
【請求項5】
前記第2の補修材が硬化性樹脂である
請求項2に記載の成型体の補修方法。
【請求項6】
前記第2の補修材がポリエステル樹脂である
請求項2に記載の成型体の補修方法。
【請求項7】
前記成型体が、橋梁のレールの下に配置される枕木である
請求項1~3のいずれか1項に記載の成型体の補修方法。
【請求項8】
貫通孔が設けられた成型体と、
前記貫通孔に挿入された留め具と、
前記留め具と嵌合する固定具と、
前記貫通孔と前記留め具との間の第1間隙を封止する第1の補修材と、
を有する成型体構造。
【請求項9】
前記成型体と前記固定具との間の第2間隙に充填される第2の補修材をさらに有する、
請求項8に記載の成型体構造。
【請求項10】
前記第2間隙が、前記成型体の表面に対して凹の形状を有することを特徴とする、
請求項8又は9に記載の成型体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型体の補修方法及び成型体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁上にて使用される橋枕木の構造として、枕木の下に高さ調整用のパッキンを配置し、枕木端部にあけた貫通孔に通したフックボルトにより枕木を軌道上に固定する橋枕木構造が用いられている。このフックボルトは枕木の移動や脱落を防止するために使用されているが、列車通過時の振動等により緩みが生じ、フックボルトとその固定用の座金等が振動することで枕木に摩耗が生じることがある。(例えば、下記特許文献1参照)
【0003】
フックボルト固定部の枕木が摩耗により欠損した場合、枕木自体の曲げ強度やふく進抵抗が損なわれる。そのため枕木の欠損部を補修する必要がある。
枕木の保守方法として、特許文献1及び特許文献2には、フックボルトを取り外し、枕木の欠損部を補修又は枕木を交換する技術が開示されている。
特許文献3には、枕木本体に固定された硬質部材のみを交換することで枕木を補修する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-230201号公報
【特許文献2】特開平6-330501号公報
【特許文献3】特開2021-179118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、座金を取り外す工程、枕木の下部からフックボルトを取りはずす工程を必要とする。フックボルトは重く、枕木を貫通しているため長尺(例えば、約30cm)であり、完全に取り外すには枕木の下に手を入れて長尺のフックボルトを下に抜き去らなければならない。
【0006】
また、橋枕木の保守は橋梁上での作業であり、フックボルトを取り外す際には枕木の下に潜り込んでの作業になることから、作業性の確保が困難なおそれがある。加えて、フックボルト取り外しの際、フックボルトを橋梁から落下させてしまうおそれがあった。
【0007】
枕木本体に固定された硬質部材のみを交換する特許文献3に記載の方法においては、固定部の形状に合わせて、現場で硬質部材の加工が必要であるため、作業性に劣る。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、簡便で作業性に優れた成型体の補修方法及び成型体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
<1>本開示の一態様に係る成型体の補修方法は、成型体には、貫通孔が設けられ、貫通孔には留め具が挿入され、留め具には、固定具が嵌合され、成型体の補修方法は、貫通孔と留め具との間の第1間隙を第1の補修材で封止する工程1を有する。
【0010】
この発明によれば、貫通孔と留め具との間の第1間隙が補修材で封止されている。これにより、成型体に設けられた貫通孔の下方への補修材の流出を抑制することができる。よって、例えば、成型体と固定具との間の第2間隙に補修材を充填するときに、その補修材の流出が抑制される。これにより、留め具を取り外さずに成型体を補修することができる。そのため、成型体の補修作業を容易に行うことができる。
【0011】
<2>上記<1>に係る成型体の補修方法は、工程1の後、成型体と固定具との間の第2間隙に第2の補修材を充填する工程2をさらに有していてもよい。
【0012】
この発明によれば、貫通孔と留め具との間の第1間隙が第1の補修材で封止される工程1、及び成型体と固定具との間の第2間隙に第2の補修材を充填する工程2を有している。これにより、工程1及び工程2のそれぞれの工程の目的に適した補修材を選択することができる。よって、成型体の補修作業をより効果的かつ効率的に行うことができる。
【0013】
<3>上記<1>に係る成型体の補修方法は、工程1において、第1の補修材が成型体と固定具との間の第2間隙に充填されていてもよい。
【0014】
この発明によれば、工程1において、第1の補修材が成型体と固定具との間の第2間隙に充填されている。これにより、工程1のみで成型体の補修を完了することができる。よって、成型体の補修作業を簡便に行うことができる。
【0015】
<4>上記<1>から<3>のいずれか1態様に係る成型体の補修方法は、第1の補修材は、粘度が100000mPa・s以上であってもよい。
【0016】
この発明によれば、第1の補修材は、粘度が100000mPa・s以上である。これにより、成型体に設けられた貫通孔の下方への補修材の移動を抑制し、貫通孔と留め具との間の第1間隙をより確実に封止することができる。よって、成型体の補修作業を効果的かつ効率的に行うことができる。
【0017】
<5>上記<3>に係る成型体の補修方法は、第2の補修材が硬化性樹脂であってもよい。
【0018】
この発明によれば、第2の補修材が硬化性樹脂である。これにより、成型体と固定具との間の第2間隙に、流動性のある硬化前の樹脂(第2の補修材)を容易に流し込むことができ、流し込んだのちに樹脂が硬化することにより成型体に必要な強度を確保することができる。よって、成型体の補修作業をより効果的かつ効率的に行うことができる。
【0019】
<6>上記<3>に係る成型体の補修方法は、第2の補修材がポリエステル樹脂であってもよい。
【0020】
この発明によれば、第2の補修材がポリエステル樹脂である。これにより、成型体と固定具との間の第2間隙に、流動性のある硬化前のポリエステル樹脂(第2の補修材)を容易に流し込むことができる。ポリエステル樹脂は硬化が早く、硬化後の強度が高い。そのため、第2の補修材がポリエステル樹脂であれば、作業時間を短縮し、且つ成型体に必要な強度を維持することができる。よって、成型体の補修作業をより効果的かつ効率的に行うことができる。
【0021】
<7>上記<1>から<6>のいずれか1態様に係る成型体の補修方法は、成型体が、橋梁のレールの下に配置される枕木であってもよい。
【0022】
この発明によれば、成型体が、橋梁のレールの下に配置される枕木である。作業現場が橋梁上のために特に危険が伴う枕木の補修作業において、留め具の取り外しを必要とせず、作業性に優れる。よって、枕木の補修作業の作業性を向上することができる。
【0023】
<8>上記<1>から<7>のいずれか1態様に係る成型体構造は、貫通孔が設けられた成型体と、貫通孔に挿入された留め具と、留め具と嵌合する固定具と、貫通孔と留め具との間の第1間隙を封止する第1の補修材と、を有する。
【0024】
<9>上記<8>に係る成型体構造は、成型体と固定具との間の第2間隙に充填される第2の補修材をさらに有していてもよい。
【0025】
<10>上記<8>又は<9>に係る成型体構造は、第2間隙が、成型体の表面に対して凹の形状を有していてもよい。
【0026】
この発明によれば、貫通孔と留め具との間の第1間隙が第1の補修材で封止されている。これにより、成型体に設けられた貫通孔の下方への第1の補修材の移動を抑制することができ、留め具を取り外すことなく、第1の補修材の上層に第2の補修材を充填し、成型体を補修することができる。よって、成型体の補修作業を簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、留め具を取り外す工程を必要とせず、簡便で作業性に優れた成型体の補修方法及び成型体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態の成型体構造を示す断面図である。
【
図2】成型体と固定具との接触部に、成型体の表面に対して凹の形状を有する成型体構造の断面図である。
【
図3】
図2に示す成型体構造の留め具とナットの螺合をゆるめ、留め具を上に持ち上げた状態の断面図である。
【
図4】成型体と留め具との間の第1間隙が、第1の補修材で封止された状態の成型体構造の断面図である。
【
図5】
図4に加え、成型体と固定具との間の第2間隙に第2の補修材を充填した成型体構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る成型体構造100を説明する。
図1に示すように、成型体構造100は、成型体10と、留め具20と、固定具30と、第1の補修材40と、第2の補修材50と、を有する。成型体構造100は、既設の成型体10が補修材で補修されてなる。
成型体10には、貫通孔11が形成されている。留め具20は、貫通孔11に挿入されている。固定具30は、ナット31及び座金32を含む。固定具30は、留め具20と嵌合している。
成型体10は、留め具20と、固定具30と、によって、基体60に設置される。
【0030】
成型体10は例えば枕木である。留め具20は例えばフックボルトである。基体60は例えば橋桁である。基体60は、第1方向に長い。基体60は、第2方向に間隔をあけて2つ配置されている。第1方向及び第2方向は、いずれも水平方向のうちの1方向である。第1方向及び第2方向は、互いに直交している。
なおこの成型体構造100は、基体60に複数設置されていてもよい。成型体構造100は、第1方向に複数配置されていてもよい。
【0031】
成型体10は、例えば第2方向に長い直方体形状に形成される。成型体10の第2方向(幅方向)の各端部には、留め具20を挿入するための貫通孔11が一対形成されている。貫通孔11は、成型体10を上下方向に貫通している。
【0032】
貫通孔11の形状は特に規定されないが、例えば丸穴又は角穴の形状で、穴径は20~30mm程度である
【0033】
本発明において成型体10の材質は、特に問わない。前記材質として、例えば、合成樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
留め具20は、成型体10を、留め具20と固定具30とを用いて基体60に固定する際に用いる。留め具20は、例えばフックボルトである。留め具20(フックボルト)は、基体60に係止めさせるための略J字状に形成されたフック部21と、直線状の胴部22と、胴部22から上方に直線状に伸びる螺条部23からなる。
【0035】
留め具20の上端の螺条部23には、留め具20を成型体10に固定するための固定具30が取り付けられる。固定具30は、成型体10を、留め具20及び固定具30を用いて基体60に固定する際に用いる。固定具30は、ナット31と、座金32と、を含む。
ナット31は、螺条部23にはめ込まれる。座金32は、ナット31と成型体10との間に配置される。ナット31を螺条部23に対して絞め込むと、留め具20が相対的に引き上げられて、フック部21が基体60に引っ掛かる。これにより、留め具20によって成型体10が基体60に固定される。
【0036】
貫通孔11の径断面の直径は留め具20の径断面の直径よりも大きく、貫通孔11と、貫通孔11に挿入された留め具20との間には第1間隙12が形成されている。第1間隙12は、貫通孔11の内周面と、留め具20の外周面と、の間の隙間である。第1間隙12は、例えば、貫通孔11の周方向の全周にわたって設けられている。第1間隙12には第1の補修材40が注入されている。第1の補修材40は、第1間隙12の少なくとも一部を封止するように注入されていればよく、例えば第2間隙13に近接する第1間隙12の一部を封止するように注入される。また、第1の補修材40は、後述する第2間隙13の一部に充填されていてもよく、第2間隙13を満たすように充填されていてもよい。第1の補修材40の詳細については後述する。
【0037】
成型体10と固定具30との間に第2間隙13が形成されている。第2間隙13は、前記成型体10の表面に対して凹の形状を有している。第2間隙13は、成型体10の表面(上面)に設けられた凹部である。第2間隙13には第2の補修材50が充填されている。第2の補修材50は、第2間隙13を満たすように充填されている。第2の補修材50の上面は、成型体10の表面(上面)と面一である。第2の補修材50上には、留め具20が配置されている。座金32は、ナット31によって第2の補修材50の上面に押し付けられている。第2の補修材50の詳細については後述する。
【0038】
ところで、前述したように、成型体構造100は、既設の成型体10が補修材で補修されてなる。既設の成型体10は、第2間隙13に相当する凹部がない直方体形状である。座金32は、凹部がない成型体10の上面に押し当てられることになる。
しかしながら、
図2に示すように、既設の成型体10を長期間にわたって使用すると、成型体10が経年劣化し、第2間隙13(凹部)が形成される。なお、この状態において、
図3に示すように、第2間隙13は、留め具20と固定具30との嵌合をゆるめ、留め具20を上方に持ち上げることで現れる間隙を指す。
【0039】
ここで、第2間隙13が形成されると、
図2に示すように、固定具30が第2間隙13内に進入することで下降し、フック部21も下降する。その結果、留め具20及び固定具30による成型体10の基体60への固定が解除される。
そこで、本実施形態では、以下に示すような成型体10の補修方法を実施して、
図1に示すような成型体構造100を形成する。
【0040】
以下、本発明の一実施形態に係る成型体10の補修方法を説明する。
成型体10の補修方法は、貫通孔11と留め具20との間の第1間隙12を第1の補修材40で封止する工程1を有する。成型体10の補修方法は、工程1の後、成型体10と固定具30との間の第2間隙13に第2の補修材50を充填する工程2をさらに有している。本実施形態において、成型体10は、橋梁のレールの下に配置される枕木である。
【0041】
このような成型体10の補修方法は、例えば以下の手順が考えられる。
(1)留め具20と留め具20に嵌合する固定具30を上方に持ち上げる(
図3)
(2)第1間隙12に第1の補修材40を注入する(工程1、
図4)
(3)更に第2間隙13に第2の補修材50を充填する(工程2、
図5)
(4)第2の補修材50の硬化後に、留め具20に嵌合する固定具30を締めこみ、留め具20によって成型体10を基体60に固定する(
図1)
【0042】
上記(1)の固定具30を持ち上げる方法としては、成型体10の補修に要する一定期間持ち上げることができればよく、人力でもよく、ジャッキや硬度の高いもの等を挟み込んでもよい。
上記(2)の第1の補修材40の注入方法は、パテ塗りでもよく、コーキングガンなどで注入してもよい。
上記(3)の第2の補修材50の充填方法は、第2間隙13に第2の補修材50を垂れ流して充填してもよい。第2の補修材50が硬化した後は、不要部分の第2の補修材50をサンディングで除去し、塗装を施してもよい。
【0043】
以上説明したように、第1実施形態の成型体10の補修方法によれば、貫通孔11と留め具20との間の第1間隙12が第1の補修材40で封止される工程1、及び成型体10と固定具30との間の第2間隙13に第2の補修材50を充填する工程2を有している。
【0044】
これらの工程を有することにより、工程1及び工程2のそれぞれの工程の目的に適した補修材を選択することができる。よって、成型体10の補修作業をより効果的かつ効率的に行うことができる。
【0045】
また、貫通孔11と留め具20との間の第1間隙12が補修材で封止されていることで、成型体10に設けられた貫通孔11の下方への補修材の流出を抑制することができる。よって、例えば、成型体10と固定具30との間の第2間隙13に補修材を充填するときに、その補修材の流出が抑制される。これにより、留め具20を取り外さずに成型体10を補修することができる。そのため、成型体10の補修作業を容易に行うことができる。
【0046】
第1の補修材40は、粘度が100000mPa・s以上であることが好ましい。第1の補修材40の粘度が100000mPa・s以上であれば、成型体10に設けられた貫通孔11の下方への補修材の移動を抑制し、貫通孔11と留め具20との間の第1間隙12をより確実に封止することができる。よって、成型体10の補修作業を効果的かつ効率的に行うことができる。
【0047】
第1の補修材40は、自重による貫通孔11の下方へ移動が抑制されればよく、粘度の上限は特に限定されないが、施工性の観点から10000000mPa・s以下であることが好ましい。
【0048】
第1の補修材40としては、成型体10に設けられた貫通孔11の下方への補修材の移動を抑制する観点から、流動性のある半固形であるペースト状、又は可塑性と粘性に富んだ粘土状の材料が好ましく、例えばウレタン接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などのパテ材、接着剤を用いることが好ましい。
【0049】
第1の補修材40は、機械的強度・耐候性を高める観点から、エポキシ樹脂系パテ状接着剤が好ましい。施工性の観点から、湿度の高い条件においても硬化し、硬化速度が速い材料を用いることがより好ましい。上記を満たす第1の補修材40として、例えばエスダインジョイナー(積水フーラー社製)等を用いてもよい。
【0050】
第2の補修材50は、施工性の観点から硬化時間が1時間以内の材料が好ましい。
【0051】
第2の補修材50は、補修後の成型体10の耐久性を確保する観点から、摩耗への耐久性が高い硬化性樹脂が好ましい。第2の補修材50が硬化性樹脂であれば、成型体10と固定具30との間の第2間隙13に、流動性のある硬化前の樹脂を容易に流し込むことができ、流し込んだのちに樹脂が硬化することにより、成型体10に必要な強度を確保することができる。よって、成型体10の補修作業をより効果的かつ効率的に行うことができる。
【0052】
硬化性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂や、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、施工性の観点から硬化速度が速く、硬化後の強度が高いポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。又は、さらに強度を高めることを目的として、これら硬化性樹脂と補強繊維を混合したものを用いてもよい。補強繊維としては有機合成繊維やガラス繊維、ガラスロービングなどが挙げられる。
【0053】
(変形例)
成型体10の補修方法としては、第1の補修材40が成型体10と固定具30との間の第2間隙13に充填されていてもよい。この場合、第2の補修材50の充填が省略される。
【0054】
工程1において、第1の補修材40が第2間隙13に充填されている場合の成型体10の補修方法は、例えば以下の手順が考えられる。
(1)留め具20と留め具20に嵌合する固定具30を上方に持ち上げる
(2)第1間隙12に第1の補修材40を注入し、続けて第2間隙13に第1の補修材40を充填する
(3)第1の補修材40の硬化後に留め具20に嵌合する固定具30を締めこみ、留め具20によって成型体10を基体60に固定する
【0055】
第1の補修材40の注入方法は、パテ塗りでもよく、コーキングガンなどで注入してもよい。
第1の補修材40が硬化した後は、不要部分の第1の補修材40をサンディングで除去し、塗装を施してもよい。
【0056】
以上説明したように、本変形例の成型体10の補修方法によれば、工程1において、第1の補修材40が成型体10と固定具30との間の第2間隙13に充填されている。これにより、工程1のみで成型体10の補修を完了することができる。よって、成型体10の補修作業を簡便に行うことができる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、貫通孔11は成型体10に1つ以上設けられていればよく、複数設けられていてもよい。
【0059】
また、固定具30は座金32を用いずにナット31のみを用いてもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 成型体構造
10 成型体
20 留め具
30 固定具
40 第1の補修材
50 第2の補修材
60 基体
11 貫通孔
12 第1間隙
13 第2間隙