(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131733
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/04 20060101AFI20240920BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F04B39/04 D
F04C29/02 351B
F04C29/02 361A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042167
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】舘石 太一
(72)【発明者】
【氏名】金井 暉裕
(72)【発明者】
【氏名】高須 洋悟
(72)【発明者】
【氏名】谷口 征大
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶生
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB03
3H003AC03
3H003BH04
3H003CF06
3H129AA02
3H129AA14
3H129AB03
3H129BB03
3H129BB05
3H129BB35
3H129CC24
3H129CC27
3H129CC45
(57)【要約】
【課題】オイル循環率の上昇を抑制することができる圧縮機を提供する。
【解決手段】内部に冷媒が導かれるハウジング33と、ハウジング33に収容され、冷媒Rを圧縮する圧縮機構と、ハウジング33に収容され、軸線Xに沿って延びた駆動軸95を介して圧縮機構を回転駆動する電動モータ100と、を備え、電動モータ100は、複数のスロット111sが円周方向に設けられたステータコア111及び各スロット111sに設けられたコイル部112を有し、かつ、ステータコア111の各スロット111sから軸線Xの方向に突出したコイル部112の各コイルエンド112e間に隙間112gが形成された分布巻きとされ、隙間112gを介してコイルエンド112eの半径方向の外側の領域から内側の領域に向かう冷媒の流れを遮る遮断部131を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒が導かれるハウジングと、
前記ハウジングに収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記ハウジングに収容され、軸線に沿って延びた駆動軸を介して前記圧縮機構を回転駆動する電動モータと、
を備え、
前記電動モータは、
複数のスロットが円周方向に設けられたステータコア及び各前記スロットに設けられたコイル部を有し、かつ、
前記ステータコアの各前記スロットから前記軸線の方向に突出した前記コイル部の各コイルエンド間に隙間が形成された分布巻きとされ、
前記隙間を介して前記コイルエンドの半径方向の外側の領域から内側の領域に向かう冷媒の流れを遮る遮断部を備えている
圧縮機。
【請求項2】
前記遮断部は、前記コイルエンドの外周面に密着しつつその外周面を覆うことで前記隙間を塞ぐ物体とされている
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記遮断部は、前記隙間を埋める物体とされている
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記遮断部は、前記半径方向において前記ハウジングと前記コイルエンドとの間に設けられ、かつ、前記コイルエンドと接触していない邪魔板とされている
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記遮断部は、少なくとも、前記ハウジングに設けられ前記ハウジングの内部に冷媒を取り込む吸入口と対向した範囲に設けられている
請求項1から4のいずれかに記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ステータコアの上方及び下方にある前記コイルエンドのうち上方にある前記コイルエンドに対応する位置に設けられた前記遮断部は、前記軸線に沿った縦断面において下方に向かうにつれて前記軸線に近付くように傾斜している
請求項5に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動モータによって駆動される圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば密閉型圧縮機は、密閉空間を画定しているハウジングと、ハウジングに収容され冷媒を圧縮する圧縮機構と、ハウジングに収容され圧縮機構を駆動する電動モータと、を備えている。
このような密閉型圧縮機においては、例えば特許文献1に開示されているように、オイル循環率を低減することが望まれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機構を駆動する電動モータに分布巻きのステータを採用した場合、コイルエンドとコイルエンドとの間の円周方向に形成された隙間を介してミスト状のオイル(潤滑油)を含む冷媒がコイルエンドの内側の領域に流れ込むことがある。
【0005】
コイルエンドの内側にある領域にロータに取り付けられたカウンターウェイトが存在している場合、その領域に冷媒が入り込むと、オイルを含む冷媒がカウンターウェイトによって撹拌され、オイルが巻き上がり、圧縮機構に流れ込み、オイル循環率が上昇する可能性がある。
【0006】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであって、オイル循環率の上昇を抑制することができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の圧縮機は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る圧縮機は、内部に冷媒が導かれるハウジングと、前記ハウジングに収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記ハウジングに収容され、軸線に沿って延びた駆動軸を介して前記圧縮機構を回転駆動する電動モータと、を備え、前記電動モータは、複数のスロットが円周方向に設けられたステータコア及び各前記スロットに設けられたコイル部を有し、かつ、前記ステータコアの各前記スロットから前記軸線の方向に突出した前記コイル部の各コイルエンド間に隙間が形成された分布巻きとされ、前記隙間を介して前記コイルエンドの半径方向の外側の領域から内側の領域に向かう冷媒の流れを遮る遮断部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オイル循環率の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る圧縮機の軸線に沿った縦断面図である。
【
図2】
図1に示す切断線II-IIにおける横断面図である(実施例1)。
【
図3】本開示の一実施形態に係る圧縮機が備えている電動モータの正面図である(遮断部を装着した後)。
【
図4】本開示の一実施形態に係る圧縮機が備えている電動モータの正面図である(遮断部を装着している時)。
【
図5】
図1に示す切断線II-IIにおける横断面図である(実施例2)。
【
図6】
図1に示す圧縮機のコイルエンド近傍の部分拡大図である(実施例3)。
【
図7】
図1に示す切断線II-IIにおける横断面図である(変形例1)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態に係る圧縮機について、図面を用いて説明する。
【0011】
[圧縮機の構造について]
圧縮機11は、例えば密閉型のスクロール圧縮機である。
圧縮機11は、図示しない凝縮器、膨張弁、蒸発器、冷媒配管等と共に冷凍サイクルを構成する。
なお、圧縮機11は、スクロール圧縮機構を備えた圧縮機であればよく、例えばスクロール圧縮機構とロータリー圧縮機構とを組み合わせた圧縮機構を備えた圧縮機(スクロータリー圧縮機)であってもよい。
【0012】
図1に示すように、圧縮機11は、内部に密閉空間を有するハウジング33と、その密閉空間を分割するディスチャージカバー40と、冷媒Rを圧縮する圧縮機構60と、圧縮機構60の旋回スクロール80を公転旋回運動させる駆動軸95と、駆動軸95を駆動する電動モータ100と、遮断部130と、を備えている。
【0013】
ハウジング33は、上部ハウジング33A、中間ハウジング33B及び図示しない下部ハウジングによって、内部に密閉空間を形成している。
【0014】
上部ハウジング33Aと中間ハウジング33Bとは、ディスチャージカバー40の外周端部を挟んだ状態で接続されている。
すなわち、ディスチャージカバー40によってハウジング33の内部の密閉空間が軸線Xの方向に分割されている。分割された密閉空間のうち、上部ハウジング33A側に形成された密閉空間が吐出チャンバ53とされ、中間ハウジング33B側に形成された密閉空間が吸入室55とされている。
【0015】
上部ハウジング33Aの上壁には冷媒Rを吐出するための吐出管31が設けられ、吐出チャンバ53と上部ハウジング33A(ハウジング33)の外部とを連通させている。
吐出管31には冷媒配管が接続されており、吐出管31から吐出した冷媒Rが凝縮器に導かれるように構成されている。
【0016】
中間ハウジング33Bの側壁には吸入口33B1が形成され、その吸入口33B1には冷媒Rを吸入するための吸入管32が設けられ、吸入室55と中間ハウジング33B(ハウジング33)の外部とを連通させている。
吸入管32には冷媒配管が接続されており、蒸発器で蒸発した冷媒Rが吸入室55に導かれるように構成されている。
【0017】
吸入室55には、冷媒Rを圧縮するための圧縮機構60、駆動軸95、駆動軸95を軸支するサポート部材97及び電動モータ100が設けられている。
【0018】
圧縮機構60は、固定側端板71上に渦巻状の固定側壁体75が立設された固定スクロール70及び旋回側端板81上に渦巻状の旋回側壁体85が立設された旋回スクロール80を有している。
固定スクロール70及び旋回スクロール80においては、固定側壁体75と旋回側壁体85とが互いに噛み合って圧縮室61を形成している。固定側壁体75の歯先と旋回側端板81の歯底との間、及び、旋回側壁体85の歯先と固定側端板71の歯底との間には、各壁体の熱膨張を考慮したチップ隙間が設定されている。
【0019】
固定スクロール70は、固定側端板71の外周端部に形成された固定部74によってサポート部材97に対して固定されている。サポート部材97は中間ハウジング33Bに固定されているので、固定スクロール70はサポート部材97を介して中間ハウジング33Bに固定されていることになる。
なお、ここでいう「半径方向」や「円周方向」とは、固定スクロール70の軸線Xに対するものである。
【0020】
旋回スクロール80は、駆動軸95及び自転防止機構(例えば、オルダムリンク)によって固定スクロール70の軸線Xに対して公転旋回運動するように構成されている。
【0021】
固定スクロール70の上方(固定側端板71の背面側)にはディスチャージカバー40が配置されており、固定側端板71の背面とともに背圧室54を画定している。
【0022】
固定側端板71には、圧縮室61と背圧室54とを連通する吐出ポート72が形成されている。また、ディスチャージカバー40には、背圧室54と吐出チャンバ53とを連通する吐出ポート41(固定側端板71の吐出ポート72とは異なる)が形成されている。
つまり、圧縮室61と吐出チャンバ53とは、吐出ポート72、背圧室54及び吐出ポート41を介して連通している。
【0023】
吐出チャンバ53には、圧縮機構60で圧縮された高圧の冷媒Rが導かれる。一方、吸入室55には吸入管32を介して低圧の冷媒Rが導かれる。また、吸入室55に導かれた低圧の冷媒Rは、圧縮機構60に吸入される。
したがって、本実施形態の圧縮機11は、ディスチャージカバー40を高圧側(吐出チャンバ53)と低圧側(吸入室55)との仕切りとし、低圧側に駆動軸95、サポート部材97や電動モータ100が配置された低圧ハウジング構造となっている。なお、高圧側と低圧側とを仕切り要素は必ずしもディスチャージカバー40である必要はなく、例えば固定スクロール70によって仕切られていてもよい。
【0024】
背圧室54において、吐出ポート72の出口部分には、リード弁92及びリード弁92の可動範囲を規制するリテーナ93が設けられている。
【0025】
[電動モータ及び遮断部について]
図1から
図3に示すように、電動モータ100は、分布巻きとされ、中間ハウジング33Bに固定されたステータ110と、駆動軸95に固定され、ステータ110に対して軸線X回りに回転するロータ120と、を備えている。
【0026】
ステータ110は、ステータコア111及びコイル部112を有している。
ステータコア111は、薄い電磁鋼板の積層体(積層鋼板)であり、中間ハウジング33Bに固定されている。ステータコア111には、軸線Xの方向に沿って延びる複数のスロット111sが形成されている。複数のスロット111sは、円周方向において等角度間隔で設けられている。
コイル部112は、スロット111sに巻回された線状の導体(例えばエナメル線)によって形成されている。コイル部112は、ステータコア111の軸線Xの方向における両端面から軸線Xの方向に沿って突出したコイルエンド112eを形成している。説明のために、
図1ではコイルエンド112eをクロスハッチングで表示している。
【0027】
図2及び
図3に示すように、一のスロット111sから飛び出した直後のコイルエンド112eとそのスロット111sと円周方向に隣り合う他のスロット111sから飛び出した直後のコイルエンド112eとの間、かつ、軸線Xの方向においてステータコア111の端面と隣り合う位置には、隙間112gが形成されている。
隙間112gは、スロット111sと同様に円周方向において等角度間隔で形成され、また、スロット111sの数に対応した数だけ形成されている。
隙間112gは、分布巻きの電動モータ100(ステータ110)に特有の部分であり、一般的には集中巻きの電動モータ100(ステータ110)には存在しない。
【0028】
図1及び
図2に示すように、ロータ120は、駆動軸95の外周面に固定されている。
ロータ120の軸線Xの方向における両端面には、円周方向において半円弧状のカウンターウェイト121が取り付けられている。このカウンターウェイト121は、ロータ120と共に軸線Xの周りに回転する。
【0029】
以上のように構成された電動モータ100は、吸入室55において、一のコイルエンド112eと他のコイルエンド112eとの間に形成された隙間112gを介して、コイルエンド112eの外側の領域(以下、単に「外側領域」ともいう。)から内側の領域(以下、単に「内側領域」ともいう。)に流れ込むことがある。
特に、ステータ110のコイルエンド112e(
図1では上側のコイルエンド112e)が中間ハウジング33Bの側壁に設けられた吸入口33B1と対向するように配置されている場合、言い換えれば、上側のコイルエンド112eと吸入口33B1とが、軸線Xの方向(高さ方向)において重複した範囲にある場合、吸入口33B1から取り込まれた冷媒Rが隙間112gを介して直接的に外側領域から内側領域に流れ込みやすくなる。
【0030】
冷媒Rがコイルエンド112eの内側領域に流れ込むと好ましくない場合がある。
例えば、内側領域にカウンターウェイト121が存在している場合、内側領域に冷媒Rが入り込むと、ミスト状のオイルを含む冷媒Rがカウンターウェイト121によって撹拌され、オイルが巻き上がり、圧縮機構60に流れ込み、オイル循環率が上昇する可能性がある。
【0031】
本実施形態に係る圧縮機11には、各隙間112gを介して外側領域から内側領域に冷媒Rが流れ込まないように、冷媒Rの流れを遮る遮断部130が設けられている。遮断部130を設けることによって、内側領域に導かれる冷媒Rの量を低減することができ、カウンターウェイト121による巻き上がりによって圧縮機構60に流れ込むオイルの量を低減して、オイル循環率の上昇を抑制することができる。
以下、遮断部130について、実施例1から実施例3及び変形例1から変形例3を例に説明する。
【0032】
<実施例1>
図1から
図3に示すように、実施例1の遮断部130(遮断部131)は、コイルエンド112eの外周面に密着しつつその外周面を覆うことで隙間112gを塞ぐ物体とされている。
遮断部131は、例えば、絶縁性を有する軸線Xを中心とした環状の帯状体とされている。
【0033】
帯状体は、例えば樹脂製のフィルムとされる。
この樹脂製のフィルムは、例えば、加熱によって収縮する熱収縮フィルムとされる。
図4に示すように、遮断部131としての熱収縮フィルムは、例えば、コイルエンド112eの最大径部よりも大きな内径が設定された環状部材とされている。
熱収縮フィルムは、隙間112gと重複する高さ位置に配置された後(
図4において二点鎖線で表示)、加熱することで収縮してコイルエンド112eの外周面に密着する(
図3参照)。これによって、熱収縮フィルムが隙間112gを塞ぐことになる。
【0034】
また、帯状体は、樹脂製のフィルムに限らず、ゴムバンドや結束紐等の紐若しくはそれらをワニスで固めたものであってもよい。
【0035】
<実施例2>
図5に示すように、実施例2の遮断部130(遮断部132)は、全ての隙間112gを埋める物体とされている。
遮断部132は、絶縁性を有している。
【0036】
なお、各隙間112gに埋められた遮断部132は、個々に独立したものであってもよいし、一部又は全部が一体になったものでもよい。
また、隙間112gを遮断部132で埋めた上で、コイルエンド112eの外周面に遮断部131を設けてもよい。
【0037】
<実施例3>
図6に示すように、実施例3の遮断部130(遮断部133)は、半径方向において中間ハウジング33Bとコイルエンド112eの外周面との間に設けられ、かつ、コイルエンド112eと接触していない、軸線Xを中心とした環状の邪魔板とされている。
遮断部133は、絶縁性を有している。
【0038】
遮断部131としての邪魔板は、高さ方向において隙間112gと重複している。
邪魔板は、ステータコア111に取り付けられてもよいし、中間ハウジング33Bに取り付けられてもよい。また、邪魔板をそれら以外の部位に取り付けてもよい。
邪魔板は、コイルエンド112eと非接触とされているが、少なくとも電気的に絶縁可能な距離だけ離れていれば十分である(例えば、半径方向に1.6mm以上)。
【0039】
<変形例1>
実施例1及び実施例3においては遮断部131,133を環状とすることで、或いは、実施例2においては遮断部132で全ての隙間112gを埋めることで、全ての隙間112gにおける冷媒Rの流通を遮っていた。
しかしながら、遮断部130は、少なくとも、吸入口33B1と対向する範囲にある隙間112g、言い換えれば、円周方向において吸入口33B1と重複した範囲にある隙間112gにおける冷媒Rの流通を遮るように設けられていればよい。
【0040】
上記のような範囲に遮断部130を設けておけば、コイルエンド112eと吸入口33B1とが対向するように配置されている場合において、吸入口33B1から取り込まれた冷媒Rが遮断部130に衝突するようになる。そして、冷媒Rが遮断部130に衝突することで冷媒R中のオイルが分離される。
また、上記のような範囲に遮断部130を設けておけば、コイルエンド112eと吸入口33B1とが対向するように配置されている場合において、吸入口33B1から取り込まれた冷媒Rが遮断部130に沿って流れるようになる。そして、冷媒Rが遮断部130に沿って流れることで円周方向に速度成分を持ち、冷媒R中のオイルが遠心分離される。
【0041】
図7に示すように、遮断部130を設ける範囲は、例えば吸入口33B1の中心部と対向する位置から円周方向に±α度とされる。αは、例えば、60度以上、好ましくは90度以上とされる。
【0042】
なお、コイルエンド112eと吸入口33B1とが対向するように配置されている場合において、遮断部131,133を環状とする、或いは、遮断部132で全ての隙間112gを埋めても、衝突分離の効果及び/又は遠心分離の効果が得られることは言うまでもない。
また、コイルエンド112eの内側領域に流れ込む冷媒Rの量を低減するという意味においては、吸入口33B1と対向した範囲にある隙間112gに遮断部130を設けずとも、円周方向において吸入口33B1と対向していない範囲にある隙間112gに遮断部130を設けておけば、少なくともその効果を発揮する。
【0043】
<変形例2>
例えば
図1に示すように、遮断部130は、軸線Xに沿った縦断面において外周面が下方に向かうにつれて軸線Xに近付くように傾斜していることが好ましい。
これによって、オイルを含む冷媒Rが巻き上がりにくくなり、オイル循環率を低下させることができる。
【0044】
<変形例3>
以上の実施例(変形例を含む)では、上側のコイルエンド112eに遮断部130を設けていたが、その遮断部130に加えて/代えて、下側のコイルエンド112eに遮断部130を設けてもよい。
また、遮断部130をコイルエンド112eの内側領域に配置してもよい。
【0045】
<変形例4>
以上の実施例(変形例を含む)では、遮断部130は、吸入管32と接続された吸入口33B1を介して導かれた低圧の冷媒Rの流通を遮るように構成されていたが、それ以外の冷媒Rの流通を遮るように構成されてもよい。
例えば、中間圧のガス、インジェクションガスや容量制御機構からの戻りガスを遮るように遮断部130を構成してもよい。
ここで、「中間圧のガス」とは、複数回に分けて冷媒を圧縮する圧縮機構において、1回以上圧縮されたガス(冷媒)のことである。また、「インジェクションガス」とは、圧縮後のガス(冷媒)を一度放熱し、再加熱したガスのことである。また、「容量制御機構からの戻りガス」とは、圧縮機構に入ったガス(冷媒)のうち、圧縮される前又は圧縮開始直後に圧縮機構から中間ハウジング33Bに戻されたガスのことである。
圧縮機11が、スクロータリー圧縮機の場合、遮断部130は、中間圧のガスやインジェクションガスを対象とすることになる。
【0046】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
圧縮機11は、遮断部130(131,132,133)を備えているので、コイルエンド112eの内側領域に導かれる冷媒Rの量を低減することができる。
コイルエンド112eの外側領域に導かれた冷媒Rがコイルエンド112eの内側領域に流れ込むと好ましくない場合がある。例えば、コイルエンド112eの内側領域に、ロータ120に取り付けられたカウンターウェイト121が存在している場合、その領域に冷媒Rが入り込むと、ミスト状のオイル(潤滑油)を含む冷媒Rがカウンターウェイト121によって撹拌され、オイルが巻き上がり、圧縮機構60に流れ込み、オイル循環率が上昇する可能性がある。
そこで、遮断部130によってコイルエンド112eの内側領域に導かれる冷媒Rの量を低減することで、巻き上がりによって圧縮機構60に流れ込むオイルの量を低減して、オイル循環率が上昇する現象を抑制することができる。
【0047】
また、遮断部131は、コイルエンド112eの外周面に密着しつつその外周面を覆うことで隙間112gを塞ぐ物体とされているので、簡易な構造で確実に冷媒Rの流れを遮ることができる。
【0048】
また、遮断部132は、隙間112gを埋める物体とされているので、簡易な構造で確実に冷媒Rの流れを遮ることができる。
【0049】
また、遮断部133は、邪魔板とされているので、簡易な構造で冷媒の流れを遮ることができる。また、遮断部133を容易に取り付けることができる。
【0050】
また、遮断部130を、少なくとも、吸入口33B1と対向した範囲に設けることで、隙間112gを介してコイルエンド112eの外側領域から内側領域に向かう冷媒Rの流れを効率的に遮ることができる。
また、吸入口33B1から取り込まれた冷媒Rが遮断部130に衝突することで冷媒R中のオイルが分離され、オイル循環率を低下させることができる。
また、吸入口33B1から取り込まれた冷媒Rが遮断部130に沿って流れることで円周方向に速度成分を持ち、冷媒R中のオイルが遠心分離され、オイル循環率を低下させることができる。
【0051】
また、遮断部130が、軸線Xに沿った縦断面において下方に向かうにつれて軸線Xに近付くように傾斜している場合、オイルを含む冷媒Rが巻き上がりにくくなり、オイル循環率を低下させることができる。
【0052】
以上の通り説明した本開示の一実施形態に係る圧縮機は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る圧縮機(11)は、内部に冷媒(R)が導かれるハウジング(33)と、前記ハウジングに収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構(60)と、前記ハウジングに収容され、軸線(X)に沿って延びた駆動軸(95)を介して前記圧縮機構を回転駆動する電動モータ(100)と、を備え、前記電動モータは、複数のスロット(111s)が円周方向に設けられたステータコア(111)及び各前記スロットに設けられたコイル部(112)を有し、かつ、前記ステータコアの各前記スロットから前記軸線の方向に突出した前記コイル部の各コイルエンド(112e)間に隙間が形成された分布巻きとされ、前記隙間を介して前記コイルエンドの半径方向の外側の領域から内側の領域に向かう冷媒の流れを遮る遮断部(130)を備えている。
【0053】
本態様に係る圧縮機によれば、電動モータは、各コイルエンド間に隙間が形成された分布巻きとされ、圧縮機は、隙間を介してコイルエンドの半径方向の外側の領域から内側の領域に向かう冷媒の流れを遮る遮断部を備えているので、コイルエンドの内側にある領域に導かれる冷媒の量を低減することができる。
コイルエンドの外側にある領域に導かれた冷媒がコイルエンドの内側にある領域に流れ込むと好ましくない場合がある。例えば、コイルエンドの内側にある領域に、ロータに取り付けられたカウンターウェイトが存在している場合、その領域に冷媒が入り込むと、ミスト状のオイル(潤滑油)を含む冷媒がカウンターウェイトによって撹拌され、オイルが巻き上がり、圧縮機構に流れ込み、オイル循環率が上昇する可能性がある。
そこで、遮断部によってコイルエンドの内側にある領域に導かれる冷媒の量を低減することで、巻き上がりによって圧縮機構に流れ込むオイルの量を低減して、オイル循環率が上昇する現象を抑制することができる。
【0054】
本開示の第2態様に係る圧縮機は、第1態様において、前記遮断部(131)は、前記コイルエンドの外周面に密着しつつその外周面を覆うことで前記隙間を塞ぐ物体とされている。
【0055】
本態様に係る圧縮機によれば、遮断部は、コイルエンドの外周面に密着しつつその外周面を覆うことで隙間を塞ぐ物体とされているので、簡易な構造で確実に冷媒の流れを遮ることができる。
【0056】
本開示の第3態様に係る圧縮機は、第1態様において、前記遮断部(132)は、前記隙間を埋める物体とされている。
【0057】
本態様に係る圧縮機によれば、遮断部は、隙間を埋める物体とされているので、簡易な構造で確実に冷媒の流れを遮ることができる。
【0058】
本開示の第4態様に係る圧縮機は、第1態様において、前記遮断部(133)は、前記半径方向において前記ハウジングと前記コイルエンドとの間に設けられ、かつ、前記コイルエンドと接触していない邪魔板とされている。
【0059】
本態様に係る圧縮機によれば、遮断部は、半径方向においてハウジングとコイルエンドとの間に設けられ、かつ、コイルエンドと接触していない邪魔板とされているので、簡易な構造で冷媒の流れを遮ることができる。また、遮断部を容易に取り付けることができる。
【0060】
本開示の第5態様に係る圧縮機は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記遮断部は、少なくとも、前記ハウジングに設けられ前記ハウジングの内部に冷媒を取り込む吸入口(33B1)と対向した範囲に設けられている。
【0061】
本態様に係る圧縮機によれば、遮断部は、少なくとも、吸入口と対向した範囲に設けられているので、隙間を介してコイルエンドの外側の領域から内側の領域に向かう冷媒の流れを効率的に遮ることができる。
また、吸入口から取り込まれた冷媒が遮断部に衝突することで冷媒中のオイルが分離され、オイル循環率を低下させることができる。
また、吸入口から取り込まれた冷媒が遮断部に沿って流れることで円周方向に速度成分を持ち、冷媒中のオイルが遠心分離され、オイル循環率を低下させることができる。
【0062】
本開示の第6態様に係る圧縮機は、第5態様において、前記ステータコアの上方及び下方にある前記コイルエンドのうち上方にある前記コイルエンドに対応する位置に設けられた前記遮断部は、前記軸線に沿った縦断面において下方に向かうにつれて前記軸線に近付くように傾斜している。
【0063】
本態様に係る圧縮機によれば、遮断部は、軸線に沿った縦断面において下方に向かうにつれて軸線に近付くように傾斜しているので、オイルを含む冷媒が巻き上がりにくくなり、オイル循環率を低下させることができる。
【符号の説明】
【0064】
11 圧縮機
31 吐出管
32 吸入管
33 ハウジング
33A 上部ハウジング(ハウジング)
33B 中間ハウジング(ハウジング)
33B1 吸入口
40 ディスチャージカバー
41 吐出ポート
53 吐出チャンバ
54 背圧室
55 吸入室
60 圧縮機構
61 圧縮室
70 固定スクロール
71 固定側端板
72 吐出ポート
74 固定部
75 固定側壁体
80 旋回スクロール
81 旋回側端板
85 旋回側壁体
92 リード弁
93 リテーナ
95 駆動軸
97 サポート部材
100 電動モータ
110 ステータ
111 ステータコア
111s スロット
112 コイル部
112e コイルエンド
112g 隙間(円周方向の隙間)
120 ロータ
121 カウンターウェイト
130(131,132,133) 遮断部