(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131737
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】炭化水素化合物製造触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/46 20060101AFI20240920BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20240920BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20240920BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20240920BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240920BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B01J29/46 M
C07C9/14
C07C9/02
C07C1/04
B01J37/04 102
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042175
(22)【出願日】2023-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発 CO2排出削減・有効利用実用化技術開発 液体燃料へのCO2利用技術開発/次世代FT反応と液体合成燃料一貫製造プロセスに関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】クトゥビ モハマド シャハジャハン
(72)【発明者】
【氏名】窪田 好浩
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 怜史
(72)【発明者】
【氏名】志村 泰充
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA08A
4G169BA08B
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4G169BC67B
4G169CC23
4G169DA06
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4G169EC27
4G169FA01
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4G169FB30
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4G169FB57
4G169FB64
4G169FB77
4G169FC08
4G169ZA11B
4G169ZA46A
4G169ZA46B
4G169ZF08B
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA09
4H006BA20
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA81
4H006BE20
4H006BE40
4H006DA12
4H039CA19
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物を高い選択率で製造することができる触媒を提供する。
【解決手段】一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための触媒であって、コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有し、且つ、前記コバルト表面の一部又は全部の上に、炭素が存在している、触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための触媒であって、
コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有し、且つ、
前記コバルト表面の一部又は全部の上に、炭素が存在している、触媒。
【請求項2】
前記ゼオライトの表面に、前記コバルト及びアルミナが担持している、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記コバルト及び前記アルミナの総量を100質量%として、前記コバルトの含有量が15~45質量%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒の総量を100質量%として、前記ゼオライトの含有量が40~90質量%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記炭化水素化合物が、炭素数5~19の炭化水素化合物である、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒の製造方法であって、
(1)コバルト含有有機化合物及び前記アルミナを混合する工程
(2)前記工程(1)で得られた混合物を加熱する工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた熱処理物と前記ゼオライトとを混合する工程
を備える、製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)が、前記コバルト含有有機化合物の溶液と前記アルミナとを混合して懸濁液を製造する工程である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)の前に、前記工程(1)で得られた懸濁液を乾固させる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程(2)で得られた熱処理物及び前記ゼオライトが粉体である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための炭化水素化合物製造システムであって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒を含む触媒層を備える、炭化水素化合物製造システム。
【請求項11】
ガス入口及びガス出口を有する反応容器を備えており、前記反応容器内に前記触媒層が形成されている、請求項10に記載の炭化水素化合物製造システム。
【請求項12】
一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造する方法であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒の存在下で、前記一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と前記水素とを接触させて、前記炭化水素化合物を生成する工程
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素化合物製造触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を削減及び有効利用するための技術として、例えば、回収した二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応)、及び一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)が注目されており、その触媒としては、アルミナ上に、硝酸コバルト等の無機コバルト化合物に由来するコバルト触媒を担持させた例が知られている(例えば、非特許文献1~3参照)。
【0003】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,363-364(2012)335-342,Fischer-Tropsch synthesis over cobalt catalysts supported on nanostructured alumina with various morphologies
【非特許文献2】Fuel 82(2003)581-586,Support effect of Co/Al2O3 catalysts for Fischer-Tropsch synthesis
【非特許文献3】Journal of Catalysis 359 (2018)92-100,Effect of different alumina supports on performance of cobaltFischer-Tropsch catalysts
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭化水素化合物は、炭素鎖の長さによって化学的特性が変化し、炭素鎖が長くなるにつれてその様態がガス、液体、固体へと変化する。このため、一定範囲の長さに炭素鎖の長さを制御し、目的とする長さの炭素鎖をもつ炭化水素化合物を選択的に生成できることが好ましい。しかしながら、特に、上記のFT反応は連鎖成長反応であるため、目的とする長さの炭素鎖をもつ炭化水素化合物を選択的に製造することは容易ではなかった。このため、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物を高い選択率で製造することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物を高い選択率で製造することができる触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有しつつ、コバルト表面の一部又は全部を、炭素原子が被覆している触媒を使用することにより、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物を高い選択率で製造することができることを見出した。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づき、更に十分な検討を重ねて完成されたものであり、以下の構成を包含する。
【0009】
項1.一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための触媒であって、
コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有し、且つ、
前記コバルト表面の一部又は全部の上に、炭素が存在している、触媒。
【0010】
項2.前記ゼオライトの表面に、前記コバルト及びアルミナが担持している、項1に記載の触媒。
【0011】
項3.前記コバルト及び前記アルミナの総量を100質量%として、前記コバルトの含有量が15~45質量%である、項1又は2に記載の触媒。
【0012】
項4.前記触媒の総量を100質量%として、前記ゼオライトの含有量が40~90質量%である、項1~3のいずれか1項に記載の触媒。
【0013】
項5.前記炭化水素化合物が、炭素数5~19の炭化水素化合物である、項1~4のいずれか1項に記載の触媒。
【0014】
項6.項1~5のいずれか1項に記載の触媒の製造方法であって、
(1)コバルト含有有機化合物及び前記アルミナを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた混合物を加熱する工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた熱処理物と前記ゼオライトとを混合する工程
を備える、製造方法。
【0015】
項7.前記工程(1)が、前記コバルト含有有機化合物の溶液と前記アルミナとを混合して懸濁液を製造する工程である、項6に記載の製造方法。
【0016】
項8.前記工程(2)の前に、前記工程(1)で得られた懸濁液を乾固させる、項7に記載の製造方法。
【0017】
項9.前記工程(2)で得られた熱処理物及び前記ゼオライトが粉体である、項6~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【0018】
項10.一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための炭化水素化合物製造システムであって、
項1~5のいずれか1項に記載の触媒を含む触媒層を備える、炭化水素化合物製造システム。
【0019】
項11.ガス入口及びガス出口を有する反応容器を備えており、前記反応容器内に前記触媒層が形成されている、項10に記載の炭化水素化合物製造システム。
【0020】
項12.一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造する方法であって、
項1~5のいずれか1項に記載の触媒の存在下で、前記一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と前記水素とを接触させて、前記炭化水素化合物を生成する工程
を備える、製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有しつつ、コバルト表面の一部又は全部の上に炭素が存在している触媒を使用することにより、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物を高い選択率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1~3及び比較例1~2で得られた触媒を用いた試験例1の結果を示すグラフである。「b/oC5-C19」と「nC5-C19」の合計量が、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【
図2】実施例3及び比較例3で得られた触媒を用いた試験例2の結果を示すグラフである。「b/oC5-C19」と「nC5-C19」の合計量が、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【
図3】実施例3~4で得られた触媒を用いた試験例2の結果を示すグラフである。「b/oC5-C19」と「nC5-C19」の合計量が、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【
図4】実施例3で得られた触媒を用いた試験例3の結果を示すSTM-EDX像である。
【
図5】実施例3で得られた触媒を用いた試験例4の結果を示すSTEM-EDX-EELS像である。
【
図6】実施例3で得られた触媒を用いた、新品及びリサイクル品の試験例5の結果を示すグラフである。「b/oC5-C19」と「nC5-C19」の合計量が、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「含有する(comprise)」は、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」も包含する概念である。
【0024】
本明細書において、範囲を「A~B」で表す場合、特に限定されない限り、A以上B以下を意味する。
【0025】
1.触媒
本発明の触媒は、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための触媒であって、
コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有し、且つ、
前記コバルト表面の一部又は全部の上に炭素が存在している。
【0026】
(1-1)コバルト
コバルトとしては、特に制限はなく、種々様々な形状のものを使用することができ、例えば、球状、円柱状、角柱状、不定形等のいずれも採用できる。
【0027】
コバルトの大きさについても特に制限はない。ただし、平滑な金属表面が多く生成して炭化水素化合物の連鎖成長が過剰に進行しにくいために、酸触媒の効果をもってしても炭素鎖を切断することが難しく、目的物の選択性の低下を引き起こす可能性のある、極めて沸点の高い固体状の炭化水素化合物の生成を抑制しやすい観点からは、コバルトの大きさは一定以下であることが好ましく、具体的には、コバルトの平均粒子径は1~50nmが好ましく、5~25nmがより好ましい。なお、コバルトの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察により算出する。
【0028】
本発明の触媒において、コバルトは、表面の一部又は全部の上に炭素が存在している。このような構成を採用するため、FT反応における転化率を向上させることができるとともに、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させることができる。一方、コバルトの表面に炭素が存在しない場合は、FT反応における転化率が低下するとともに、FT反応が過度に進行して炭素数20以上の炭化水素化合物が得られやすく、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率が低下する。
【0029】
なお、本発明の触媒において、コバルトは、全表面の上に炭素が存在していてもよい(全表面が炭素及び/又は有機化合物で被覆されていてもよい)し、表面の一部のみの上に炭素が存在していてもよい(表面の一部のみが炭素及び/又は有機化合物で被覆されていてもよい)。コバルト表面の一部のみの上に炭素が存在している(コバルト表面の一部のみが炭素及び/又は炭素を主体とする化合物で被覆されている)場合、コバルト全表面を100%として、例えば、10~99%、20~98%、30~97%、40~96%、50~95%等の上に炭素が存在することができる(10~99%、20~98%、30~97%、40~96%、50~95%等が炭素及び/又は有機化合物で被覆されることができる)。
【0030】
本発明において、コバルト表面の一部又は全部の上に存在する炭素(コバルト表面の一部又は全部を被覆している炭素及び/又は有機化合物)の厚みは特に制限されないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点から、0.1~10nmが好ましく、1~5nmがより好ましい。なお、厚みは、透過型電子顕微鏡によるコバルトの表面付近の観察により測定する。
【0031】
本発明の触媒において、コバルトの含有量は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、コバルト及び前記アルミナの総量を100質量%として、15~45質量%が好ましく、25~35質量%がより好ましい。
【0032】
本発明の触媒において、コバルトの含有量は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、触媒の総量を100質量%として、5~30質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0033】
(1-2)アルミナ
アルミナとしては、特に制限はなく、種々様々な形状のものを使用することができ、例えば、球状、円柱状、角柱状、不定形等のいずれも採用できる。
【0034】
アルミナの大きさについても特に制限はない。ただし、後述の本発明の製造方法によれば、工程(3)において、粉体同士を混合したほうが、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させやすい。また、粉体同士を混合した場合には、時間が経過しても、固体酸触媒であるゼオライトの性能低下及び劣化を抑制しやすく、炭素数20以上の炭化水素化合物の生成を抑制しやすい。このような観点から、アルミナの大きさは小さいことが好ましいが、上記したコバルトの担体として機能できる大きさが好ましい。具体的には、アルミナの平均粒子径は10~100nmが好ましく、30~50nmがより好ましい。なお、アルミナの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察によって算出する。
【0035】
本発明の触媒において、アルミナの含有量は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、コバルト及び前記アルミナの総量を100質量%として、55~85質量%が好ましく、65~75質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の触媒において、アルミナの含有量は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、触媒の総量を100質量%として、10~50質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましい。
【0037】
(1-3)ゼオライト
ゼオライトとしては、特に制限はなく、種々様々な形状のものを使用することができ、例えば、球状、円柱状、角柱状、不定形等のいずれも採用できる。
【0038】
本発明において使用できるゼオライトのSi/Al比は特に制限されない。ただし、固体酸としてゼオライトではなくシリカを使用した場合は、FT反応が進行しにくく、炭素数の小さい炭化水素化合物が得られやすいため、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させることができない。このため、ゼオライトのSi/Al比は大きいことが好ましい。具体的には、ゼオライトのSi/Al比は5~500が好ましく、20~200がより好ましい。
【0039】
ゼオライトの大きさについても特に制限はない。ただし、後述の本発明の製造方法によれば、工程(3)において、粉体同士を混合したほうが、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させやすい。また、粉体同士を混合した場合には、時間が経過しても、固体酸触媒であるゼオライトの性能低下及び劣化を抑制しやすく、炭素数20以上の炭化水素化合物の生成を抑制しやすい。このような観点から、ゼオライトの大きさは上記したコバルト及びアルミナの担体として機能できる大きさが好ましい。具体的には、ゼオライトの平均粒子径は100~1000nmが好ましく、300~500nmがより好ましい。なお、ゼオライトの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察により算出する。
【0040】
本発明の触媒において、ゼオライトの含有量は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、触媒の総量を100質量%として、40~90質量%が好ましく、55~75質量%がより好ましい。
【0041】
(1-4)触媒
本発明の触媒は、コバルト、アルミナ及びゼオライトを含有し、且つ、前記コバルト表面の一部又は全部の上に炭素が存在していれば特に制限されるものではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、コバルトはアルミナに担持されていることが好ましく、コバルト及びアルミナはゼオライトに担持されていることが好ましい。
【0042】
本発明の触媒は、上記したコバルト、アルミナ及びゼオライトを含有し、コバルト表面の一部又は全部の上に炭素が存在しているものであるが、これら以外にも、後述の本発明の製造方法を採用する場合の原料であるコバルト含有有機化合物や、溶媒の残渣等の他の成分が含まれていても差し支えない。
【0043】
本発明の触媒に、上記のような他の成分が含まれている場合、他の成分の含有量は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、触媒の総量を100質量%として、0~10質量%が好ましく、0~5質量%がさらに好ましい。
【0044】
上記した本発明の触媒は、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含有する原料ガスから炭化水素化合物を製造するための触媒である。具体的には、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応):
CO2+H2 → CO+H2O
や、一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応):
(2n+1)H2+nCO → CnH2n+2+nH2O
を起こすための触媒として機能することができる。
【0045】
なかでも、本発明の触媒を使用した場合、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率が高い触媒であるため、一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)によって炭化水素化合物を製造するための触媒として使用することが好ましく、特に、一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)によって炭素数5~19の炭化水素化合物を製造するための触媒として使用することがより好ましい。
【0046】
本発明の触媒を、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応)又は一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)に使用する場合、反応は、固定床反応器、スラリー床反応器及び固定流動床反応器のいずれで行うこともできる。
【0047】
本発明の触媒を二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応)に使用する場合、原料ガスの流量比は特に制限されないが、上記の反応式から、CO2ガス及びH2ガスとの流量は当量程度とすることが好ましい。このため、ガス総流量を100体積%として、CO2ガスの流量は30~70体積%、特に40~60体積%とし、H2ガスの流量は30~70体積%、特に40~60体積%とすることが好ましい。
【0048】
本発明の触媒を一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)に使用する場合、原料ガスの流量比は特に制限されないが、上記の反応式から、H2ガスの流量をCOガス流量の2倍前後とすることが好ましい。このため、ガス総流量を100体積%として、H2ガスの流量は55~80体積%、特に60~75体積%とし、CO2ガスの流量は20~45体積%、特に25~40体積%とすることが好ましい。
【0049】
更に、本発明の触媒を用いて、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応)、及び一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)を一段で実施しようとする場合、原料ガスの流量比は特に制限されないが、上記の反応式から、H2ガスの流量をCO2ガス流量の3倍前後とすることが好ましい。このため、ガス総流量を100体積%として、H2ガスの流量は60~90体積%、特に70~80体積%とし、CO2ガスの流量は10~40体積%、特に20~30体積%とすることが好ましい。
【0050】
本発明の触媒を、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応)又は一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)に使用する場合、その反応温度は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、180~300℃が好ましく、210~250℃がより好ましい。
【0051】
本発明の触媒を、二酸化炭素と水素とを反応させて一酸化炭素を製造する反応(逆シフト反応)又は一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)に使用する場合、反応時間は、例えば気相流通式を採用する場合には、原料ガスの触媒(本発明の触媒)に対する接触時間(W/F)[W:本発明の触媒(コバルト量)の重量(g)、F:原料ガス(一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素との総量)の流量(mol/h)]は、特に制限されるわけではないが、FT反応の転化率、ガソリン、軽油、ジェット燃料等に相当する炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率等の観点からは、10~40g-cat・時間/molが好ましく、20~30g-cat・時間/molがより好ましい。なお、上記接触時間とは、原料ガスと本発明の触媒が接触する時間を意味する。
【0052】
上記の反応時間は、特に気相連続流通式で反応を進行する場合の条件を示しているが、バッチ式で反応を進行する場合も適宜調整することができる。
【0053】
なお、本発明の触媒は、上記した逆シフト反応及びFT反応に1回だけ使用するのではなく、繰り返し使用することもできる。具体的には、上記逆シフト反応及びFT反応に使用した後の本発明の触媒を回収した後に、水素ガス等の還元性ガスの存在下で還元させた後に、再度、逆シフト反応及びFT反応に使用することができる。なお、還元処理の際の温度は、特に制限されるわけではないが、例えば、300~600℃とすることができる。このように、本発明の触媒を再利用した場合も、上記したFT反応により精製される炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を高く維持することができる。
【0054】
なお、本発明の触媒が、上記した逆シフト反応及びFT反応に使用する際の原料ガスは、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素との比率を上記範囲に調整した混合ガスの他、大気や、石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、製造所のボイラー、セメント工場のキルン、コークスで酸化鉄を還元する製鐵高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鉄転炉、石炭ガス化複合発電設備、タンカー等からの排ガス、採掘時天然ガス、改質ガス、二酸化炭素-水の共電解で製造される混合ガス、等も使用できる。なお、これらの原料ガスには、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素以外に、N2、水蒸気、CH4等のガスが含まれていてもよい。
【0055】
2.触媒の製造方法
上記した本発明の触媒の製造方法は、特に制限されるわけではないが、例えば、
(1)コバルト含有有機化合物及び前記アルミナを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた混合物を加熱する工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた熱処理物と前記ゼオライトとを混合する工程
を備える製造方法により得ることができる。
【0056】
(2-1)工程(1)
工程(1)において使用できるコバルト含有有機化合物としては、特に制限されるわけではないが、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、酢酸コバルト(II)、サルコミン、ステアリン酸コバルト(II)、フタロシアニンコバルト(II)、コバルトセン等が挙げられる。これらのコバルト含有有機化合物を原料として使用した場合には、工程(2)の加熱によりコバルト含有有機化合物が有する有機基が除去されるとともにコバルト表面の一部又は全部を炭素及び/又は有機化合物が被覆し、この結果、一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)における炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させることができる。なお、硝酸コバルトのように、コバルト含有無機化合物を使用した場合は、コバルト表面の上には原理的に炭素は存在しておらず、その結果、一酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素化合物の燃料を製造するフィッシャートロプシュ反応(FT反応)の転化率は十分とは言えないうえに、FT反応における炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させることはできない。
【0057】
コバルト含有有機化合物及びアルミナの混合比率は特に制限されず、コバルト及びアルミナの比率が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0058】
なお、コバルト含有有機化合物及びアルミナを混合する方法は特に制限されない。例えば、コバルト含有有機化合物が固体である場合は、手混ぜ(乳鉢等)、メカノケミカル処理等の各種乾式混合を採用することができる。
【0059】
一方、コバルト含有有機化合物の溶解度が高い場合は、コバルト含有有機化合物の溶液とアルミナとを混合して懸濁液を製造することもできる。
【0060】
この際、コバルト含有有機化合物の溶液に使用される溶媒としては、特に制限されるわけではないが、コバルト含有有機化合物の溶解度、所望の懸濁液の得られやすさ等を考慮し、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0061】
(2-2)工程(2)
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物を加熱する。
【0062】
なお、工程(1)において、コバルト含有有機化合物の溶液とアルミナとを混合して懸濁液を製造している場合は、工程(2)の前に、工程(1)で得られた混合物を乾固させ、溶媒を除去することが好ましい。この場合、工程(1)で得られた混合物を乾固させる条件は特に制限されないが、0.1~1気圧(特に0.2~0.4気圧)の減圧下において、20~60℃(特に30~40℃)で減圧乾固させることが好ましい。
【0063】
このようにして懸濁液を乾固させた後は、完全に乾燥させるため、20~100℃(特に60~90℃)で乾燥させることが好ましい。
【0064】
この後、工程(2)において、混合物を加熱することができるが、工程(3)において、粉体同士を混合させる場合は、完全に乾燥させた後、手混ぜ(乳鉢等)、メカノケミカル処理等の各種乾式混合により粉砕することが好ましい。
【0065】
工程(2)における加熱雰囲気は特に制限されるわけではないが、不要な副反応を抑制しやすいため、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0066】
工程(2)における加熱温度は特に制限されるわけではないが、コバルト含有有機化合物が有する有機基が除去されるとともにコバルト表面の一部又は全部を炭素原子が被覆しやすい観点から、200~600℃が好ましく、400~500℃がより好ましい。
【0067】
(2-3)工程(3)
工程(3)では、工程(2)で得られた熱処理物とゼオライトとを混合する。
【0068】
工程(2)で得られた熱処理物及びゼオライトの混合比率は特に制限されず、コバルト、アルミナ及びゼオライトの比率が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0069】
なお、工程(2)で得られた熱処理物及びゼオライトを混合する方法は特に制限されない。例えば、コバルト含有有機化合物が固体である場合は、手混ぜ(乳鉢等)、メカノケミカル処理等の各種乾式混合を採用することができる。
【0070】
この際、工程(2)で得られた熱処理物及びゼオライトをいずれも粉体とする、つまり小粒径とする(工程(2)で得られた熱処理物の平均粒径を30~50nm及びゼオライトの平均粒子径を100~1000nmとする)場合には、FT反応における炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を向上させやすい。また、粉体同士を混合した場合には、時間が経過しても、固体酸触媒であるゼオライトの性能低下及び劣化を抑制しやすく、炭素数20以上の炭化水素化合物の生成を抑制しやすい。なお、工程(2)で得られた熱処理物及びゼオライトの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察より算出する。
【0071】
3.炭化水素化合物製造システム及び炭化水素化合物の製造方法
本発明の炭化水素化合物製造システムは、触媒として本発明の触媒を用いる他は、従来の炭化水素化合物製造システムと同様とすることができる。具体的には、本発明の触媒を含む触媒層を備えることができる。
【0072】
具体的には、本発明の炭化水素化合物製造システムは、例えば円筒状の反応管である反応容器と、反応容器内に固定された触媒層とを備える気相連続流通式反応装置とすることができる。反応容器は一方の端部に設けられたガス入口と、他方の端部に設けられたガス出口とを有することができる。ガス入口からは、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含む原料ガスが導入され得る。原料ガスが反応容器内をガス入口からガス出口に向けて流通する間に、本発明の触媒の存在下で、前記一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と前記水素とを接触させて、例えば液状の炭化水素化合物を含む生成物が生成し得る。生成物は、通常、ガス出口から排出され得る。
【0073】
触媒層は、例えば、本発明の触媒を反応容器内に充填することによって形成され得る。
【0074】
上記のとおり、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを導入して逆シフト反応又はFT反応が施された後の触媒層中の本発明の触媒は、例えば、水素ガス等の還元性ガスを反応管内に流通させることにより、還元処理され得る。還元処理の間、触媒層を加熱してもよい。還元処理のための加熱温度は、例えば400~600℃とすることができる。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。但し、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0076】
比較例1:30質量%Co(Co(acac)
2
由来)/Al
2
O
3
;30Co(a)AlO
アルミナ担持コバルト触媒(Co/Al2O3触媒)は、以下のように調製した。
【0077】
コバルト(II)アセチルアセトナート二水和物(東京化成工業(株))を7.38g量り取り、これを容量500mLのガラス製ナス型フラスコに投入した。ここに、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬(株))300mLを加え、攪拌してコバルト(II)アセチルアセトナート二水和物のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0078】
一方、高純度アルミナ(住友化学(株),AKP-G15)10gを磁製の焼成皿に量り取り、箱型電気炉を用いて、大気雰囲気下、700℃で5時間焼成した。
【0079】
焼成後のアルミナから3gを量り取り、ガラス製ナス型フラスコ内のコバルト(II)アセチルアセトナート二水和物のテトラヒドロフラン溶液に加え、懸濁液を作製した。得られた懸濁液をマグネティックスターラーで、回転速度220-240rpmで攪拌しながら、約18時間放置した。
【0080】
その後、上記のガラス製ナス型フラスコをロータリーエバポレーターに接続し、40℃及び0.4気圧の条件で、3-4時間かけて減圧乾固を行った後、テトラヒドロフラン溶媒を除去し、コバルト前駆体及びアルミナの混合物を得た。
【0081】
得られた混合物を、ガラス製ナス型フラスコごと、80℃に設定した強制対流式の乾燥機内で一晩静置することで完全に乾燥させた後、ガラス製ナス型フラスコから得られた混合物を取り出して磁製の乳鉢及び乳棒を用いて手混ぜ混合により粉砕した。
【0082】
得られた粉体を80mL/分のアルゴン流通下で、管状電気炉を用いて、500℃で5時間加熱することにより、コバルト前駆体中のアセチルアセトナート配位子を除去した。
【0083】
以上の操作により、粉末状の30質量%Co/Al2O3(30Co(a)AlO)触媒を得た。
【0084】
得られた粉末状の触媒を磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、触媒粉末をディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級してペレット状の触媒を作製した。なお、ペレットの大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0085】
比較例2:30質量%Co(Co(acac)
2
由来)/Al
2
O
3
-シリカ;30Co(a)AlO/SiO2
シリカは、市販品であるシーホスターKES-150((株)日本触媒)を用い、予備焼成は行わずに使用した。
【0086】
比較例1で得られた20質量%Co/Al2O3(30Co(a)AlO)を1.8g、シリカを3.6g秤量し、磁製の乳鉢及び乳棒を用いて10分間磨砕及び混合を行った。
【0087】
以上の操作により、粉末状の30質量%Co/Al2O3-シリカ(30Co(a)AlO/シリカ)触媒を得た。この結果、触媒総量を100質量%として、コバルトは10質量%、Al2O3は40質量%、SiO2は50質量%であった。
【0088】
得られた粉末状の触媒を磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、触媒粉末をディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級してペレット状の触媒を作製した。なお、ペレットの大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0089】
実施例1:20質量%Co(Co(acac)
2
由来)/Al
2
O
3
-ゼオライト(1);20Co(a)AlO/ZSM5(1)
ゼオライトは、市販品であるZSM-5(ゼオリスト,CBV28014,Si/Al=140)を用い、予備焼成は行わずに使用した。
【0090】
比較例1で得られた20質量%Co/Al2O3(20CoAlO)を1.8g、ゼオライトを1.8g秤量し、磁製の乳鉢及び乳棒を用いて10分間磨砕及び混合を行った。
【0091】
以上の操作により、20質量%Co/Al2O3-ゼオライト(1)(20Co(a)AlO/ZSM5(1))触媒を得た。この結果、触媒総量を100質量%として、コバルトは10質量%、Al2O3は40質量%、ゼオライトは50質量%であった。
【0092】
得られた粉末状の触媒を磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、触媒粉末をディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級してペレット状の触媒を作製した。なお、ペレットの大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0093】
実施例2:20質量%Co(Co(acac)
2
由来)/Al
2
O
3
-ゼオライト(2);20Co(a)AlO/ZSM5(2)
コバルト(II)アセチルアセトナート(東京化成工業(株))の使用量を4.08gとする他は比較例1と同様に、20質量%Co/Al2O3(20CoAlO)触媒を得た。
【0094】
ゼオライトは、市販品であるZSM-5(ゼオリスト,CBV28014,Si/Al=140)を用い、予備焼成は行わずに使用した。
【0095】
上記で得られた30質量%Co/Al2O3(20CoAlO)を1.8g、ゼオライトを3.6g秤量し、磁製の乳鉢及び乳棒を用いて10分間磨砕及び混合を行った。
【0096】
以上の操作により、30質量%Co/Al2O3-ゼオライト(1)(30CoAlO/ZSM5(1))触媒を得た。この結果、触媒総量を100質量%として、コバルトは6.8質量%、Al2O3は27.2質量%、ゼオライトは66質量%であった。
【0097】
得られた粉末状の触媒を磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、触媒粉末をディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級してペレット状の触媒を作製した。なお、ペレットの大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0098】
実施例3:30質量%Co(Co(acac)
2
由来)/Al
2
O
3
-ゼオライト(2);30Co(a)AlO/ZSM5(2)
コバルト(II)アセチルアセトナート(東京化成工業(株))の使用量を7.38gとする他は比較例1と同様に、30質量%Co/Al2O3(30CoAlO)触媒を得た。
【0099】
ゼオライトは、市販品であるZSM-5(ゼオリスト,CBV28014,Si/Al=140)を用いた。
【0100】
上記で得られた30質量%Co/Al2O3(30CoAlO)を1.8g、ゼオライトを3.6g秤量し、磁製の乳鉢及び乳棒を用いて5分間磨砕及び混合を行った。
【0101】
以上の操作により、30質量%Co/Al2O3-ゼオライト(2)(30CoAlO/ZSM5(2))触媒を得た。この結果、触媒総量を100質量%として、コバルトは10.2質量%、Al2O3は23.8質量%、ゼオライトは66質量%であった。
【0102】
得られた粉末状の触媒を磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、触媒粉末をディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級してペレット状の触媒を作製した。なお、ペレットの大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0103】
比較例3:30質量%Co(Co(NO
3
)
2
由来)/Al
2
O
3
-ゼオライト(2);30Co(n)AlO/ZSM5(2)
アルミナ担持コバルト触媒(Co/Al2O3触媒)は、以下のように調製した。
【0104】
硝酸コバルト(II)6水和物(富士フイルム和光純薬)を7.33g量り取り、これを容量500mLのガラス製ナス型フラスコに投入した。ここに、水300mLを加え、攪拌して硝酸コバルト(II)水溶液を得た。
【0105】
一方、高純度アルミナ(住友化学(株),AKP-G15)10gを磁製の焼成皿に量り取り、箱型電気炉を用いて、大気雰囲気下、700℃で5時間焼成した。
【0106】
焼成後のアルミナから3gを量り取り、ガラス製ナス型フラスコ内の硝酸コバルト(II)水溶液に加え、分散させた。得られた分散液をマグネティックスターラーで、回転速度220-240rpmで攪拌しながら、約18時間放置した。
【0107】
その後、上記のガラス製ナス型フラスコをロータリーエバポレーターに接続し、70℃及び0.3気圧の条件で、4時間かけて減圧乾固を行った後、水を除去し、コバルト前駆体及びアルミナの混合物を得た。
【0108】
得られた混合物を、ガラス製ナス型フラスコごと、80℃に設定した強制対流式の乾燥機内で一晩静置することで完全に乾燥させた後、ガラス製ナス型フラスコから得られた混合物を取り出して磁製の乳鉢及び乳棒を用いて手混ぜ混合により粉砕した。
【0109】
得られた粉体を大気圧下で、管状電気炉を用いて、大気流通下、400℃で4時間加熱することにより、30質量%Co(Co(NO3)2由来)/Al2O3(30CoAlO)触媒を得た。
【0110】
得られた30質量%Co(Co(NO3)2由来)/Al2O3(30CoAlO)触媒を用いる他は実施例3と同様に、30質量%Co(Co(NO3)2由来)/Al2O3-ゼオライト(2)触媒を得た。この結果、触媒総量を100質量%として、コバルトは10.2質量%、Al2O3は23.8質量%、ゼオライトは66質量%であった。
【0111】
得られた粉末状の触媒を磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、触媒粉末をディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級してペレット状の触媒を作製した。なお、ペレットの大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0112】
実施例4:30質量%Co/Al
2
O
3
-ゼオライト(2)(ペレット混合)
アルミナ担持コバルト触媒(Co/Al2O3触媒)は、以下のように調製した。
【0113】
コバルト(II)アセチルアセトナート二水和物(東京化成工業(株))を7.38g量り取り、これを容量500mLのガラス製ナス型フラスコに投入した。ここに、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬(株))300mLを加え、攪拌してコバルト(II)アセチルアセトナート二水和物テトラヒドロフラン溶液を得た。
【0114】
一方、高純度アルミナ(住友化学(株),AKP-G15)10gを磁製の焼成皿に量り取り、箱型電気炉を用いて、大気雰囲気下、700℃で5時間焼成した。
【0115】
焼成後のアルミナから3gを量り取り、ガラス製ナス型フラスコ内のコバルト(II)アセチルアセトナート二水和物のテトラヒドロフラン溶液に加え、懸濁液を作製した。得られた懸濁液をマグネティックスターラーで、回転速度220-240rpmで攪拌しながら、約18時間放置した。
【0116】
その後、上記のガラス製ナス型フラスコをロータリーエバポレーターに接続し、40℃及び0.4気圧の条件で3-4時間かけて減圧乾固を行った後、テトラヒドロフラン溶媒を除去し、コバルト前駆体及びアルミナの混合物を得た。
【0117】
得られた混合物を、ガラス製ナス型フラスコごと、80℃に設定した強制対流式の乾燥機内で一晩静置することで完全に乾燥させた後、ガラス製ナス型フラスコから得られた混合物を取り出して磁製の乳鉢及び乳棒を用いて手混ぜ混合により粉砕した。
【0118】
得られた粉体を80mL/分のアルゴン流通下で、管状電気炉を用いて、500℃で5時間加熱することにより、コバルト前駆体中のアセチルアセトナート配位子を除去した。
【0119】
以上の操作により、得られた30質量%Co/Al2O3(30Co(a)AlO)触媒(粉体)を、磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、22-25MPaで5分加圧して、ディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級して顆粒を作製した。なお、顆粒の大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0120】
ゼオライトは、市販品であるZSM-5(ゼオリスト,CBV28014,Si/Al=140)を用いた。
【0121】
得られたゼオライト(粉体)を、磁製の乳鉢及び乳棒で再度磨砕した後、金属製の型に投入し、油圧プレスを用いて、20MPaで5分加圧して、ディスク状に成形した。得られたディスクを乳鉢及び乳棒で粉砕し、篩で分級して顆粒を作製した。なお、顆粒の大きさは、直径250~500μmの範囲に調整した。
【0122】
上記で得られた30質量%Co/Al2O3(20CoAlO)(顆粒)を1g、ゼオライト(顆粒)を2g秤量し、薬包紙上で薬匙を用いて撹拌したあと、容量30mLのガラスバイアル内でこれらを振盪して混合した。
【0123】
以上の操作により、30質量%Co/Al2O3-ゼオライト(2)触媒(ペレット混合)を得た。この結果、触媒総量を100質量%として、コバルトは10.2質量%、Al2O3は23質量%、ゼオライトは67質量%であった。
【0124】
試験例1
円筒状の反応管(材質:インコネル)内に実施例1~3及び比較例1~2で得られた触媒を担持コバルト触媒の仕込み量が1.0gになるように充填し、大気圧下で水素を15mL/minで供給しながら、500℃で1時間加熱し、触媒を還元、触媒層を形成した。
【0125】
反応管のガス入口から、内部標準としてArを含むH2及びCOの混合ガス(H2/CO=2/1)を、原料ガスの触媒(本発明の触媒)に対する接触時間であるW/F[W:実施例1~3及び比較例1~2で得られた触媒のうち担持コバルト触媒の部分に相当する重量(g)、F:原料ガス(一酸化炭素と水素との総量)の流量(mol/h)]が26g-cat・時間/molとなるように、流通させ、ガスの総流量は14.3mL/分とした。
【0126】
反応は、気相連続流通式で進行させた。
【0127】
反応管を210℃で加熱してFT反応を開始した。
【0128】
FT反応を開始してから4~50時間の間、ガス出口から排出した留出分を収集した。
【0129】
その後、熱伝導度検出器及び水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフにより、留出分の成分分析を行った。
【0130】
結果を
図1に示す。
図1において、「C20+/other」は炭素数20以上の炭化水素化合物及び含酸素化合物等の副生物の選択率の和、「b/oC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち不飽和炭化水素及び直鎖型を除いた飽和炭化水素の選択率の和、「nC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち直鎖型の飽和炭化水素の選択率、「C2-4」は炭素数2~4の炭化水素化合物の選択率、「CH4」はメタンの選択率、「CO2選択率」はCO
2の選択率、「CO転化率」はFT反応の転化率を意味する。つまり、「b/oC5-19」及び「nC5-19」の合計量が、目的とする炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【0131】
ゼオライトを含まない比較例1では、実施例1~3と比較して、C20+/otherの選択率が高くなっていることがわかる。このことから、酸触媒としてゼオライトを複合化することで、コバルト触媒上で生成した炭化水素のうち目的とする炭素数5~19の炭化水素化合物よりも長く成長した炭化水素を切断して、より短い炭素鎖の炭化水素の選択率を高める効果が得られていることがわかる。次に実施例1と実施例2を比較すると、生成物の選択率には大きな変化がない。したがって、コバルトの担持量が20質量パーセントの場合、触媒とゼオライトの混合比は影響がないことがわかる。コバルトの担持料量を30質量パーセントに高めた実施例3では、C20+/otherの選択率が低下する一方で、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率が大きく向上することがわかった。なお、ゼオライトの代わりにSiO2を用いた比較例2触媒では、比較例1触媒とくらべて各生成物の選択率の変化はほとんどなく、目的物の選択率向上のためには酸触媒としてゼオライトを機能させることが必須であることがわかった。
【0132】
試験例2
実施例3及び比較例3で得られた触媒を用いて、反応時間を50時間とした。そのうえで、反応開始から4~10時間後、11~20時間後、21~30時間後、31~40時間後及び41~50時間後にそれぞれ別途、ガス出口から排出した留出分を収集した。そのうえで、試験例1と同様に、留出分の成分分析を行った。結果を
図2に示す。
図2において、「C20+/other」は炭素数20以上の炭化水素化合物及び含酸素化合物等の副生物の選択率の和、「b/oC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち不飽和炭化水素及び直鎖型を除いた飽和炭化水素の選択率の和、「nC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち直鎖型の飽和炭化水素の選択率、「C2-4」は炭素数2~4の炭化水素化合物の選択率、「CH4」はメタンの選択率、「CO2選択率」はCO
2の選択率、「CO転化率」はFT反応の転化率を意味する。つまり、「b/oC5-19」及び「nC5-19」の合計量が、目的とする炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【0133】
実施例3の触媒は、高いCO転化率と、高い炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を、長時間にわたって維持しており、ほとんど変化がない。
【0134】
これに対し、比較例の3触媒は、4-10時間時点において炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率が実施例3の触媒とくらべて低く、C20+/otherの選択率が高い。すなわち、比較例3の触媒では、炭素鎖の過剰な成長が進んだだけでなく、酸触媒による炭素鎖の切断が十分進んでいないことがわかる。
【0135】
これは、比較例3の様な無機物のコバルト塩を仕様して触媒を調製すると、コバルトの凝集がおこり、数百nmから数十μmの大きさの粗大なコバルト粒子が生成するためである。この様な粗大なコバルト粒子は過剰な炭素鎖の成長を引き起こす平滑な金属面を多数有しているため、酸触媒であっても十分切断できない程度まで炭素鎖が成長してしまい、結果としてC20+/otherの選択率が高くなったと考えられる。
【0136】
さらに時間を減るごとに、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率の低下と、C20+/otherの選択率の増加が進んでいる。これは、時間経過とともに、酸触媒の機能が低下していることを示している。
【0137】
なお、実施例3の触媒におけるコバルトの様態については試験例3~4にて詳細に述べる。
【0138】
次に、実施例3~4で得られた触媒を用いて、同様に試験を行った。結果を
図3に示す。
図3において、「C20+/other」は炭素数20以上の炭化水素化合物及び含酸素化合物等の副生物の選択率の和、「b/oC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち不飽和炭化水素及び直鎖型を除いた飽和炭化水素の選択率、「nC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち直鎖型の飽和炭化水素の選択率、「C2-4」は炭素数2~4の炭化水素化合物の選択率、「CH4」はメタンの選択率、「CO2選択率」はCO
2の選択率、「CO転化率」はFT反応の転化率を意味する。つまり、「b/oC5-19」及び「nC5-19」の合計量が、目的とする炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【0139】
図3から、実施例4の触媒は含有する成分は実施例3の触媒と同じであるにも関わらず、4-10時間時点において炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率は実施例3の触媒のほうが高く、酸触媒による炭素鎖の切断が十分進みやすいことがわかる。
【0140】
さらに、実施例3では、時間が経過しても、炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率の低下と、C20+/otherの選択率の増加が進まないことが理解できる。これは、時間経過によって酸触媒の機能が低下しないことを示している。
【0141】
これは、実施例3の触媒の様に、コバルト触媒とゼオライトを粉体として混合した後にペレット化した触媒では、炭化水素を生成するコバルト触媒と、炭化水素の炭素鎖を切断するゼオライトの接触が十分であり、生成した炭化水素が効率的にゼオライトに供給されやすいため、酸触媒としての機能を十分に発現しやすいためである。
【0142】
なお、実施例3の触媒におけるコバルト触媒とゼオライトの接触の様態については試験例3にて詳細に述べる。
【0143】
試験例3
実施例3で得られた触媒について、水素流通下で500℃、1時間の還元を行ったのち、STEM-EDX分析を行った。結果を
図4に示す。
図4から、ゼオライト粒子の表面及び周囲に、より微細なコバルト担持アルミナ触媒がまとわりついた構造を有していることが理解できる。この結果、コバルト担持アルミナ触媒とゼオライトとが効率よく接触する結果、酸触媒の機能が効率的に発現することが示唆される。
【0144】
試験例4
実施例3で得られた触媒について、水素流通下で500℃、1時間の還元を行ったのち、大気に触れされることなく電子顕微鏡装置に導入して、コバルト触媒の表面のSTEM-EDX-EELS分析を行った。結果を
図5に示す。
【0145】
図5から、実施例3にて得られた触媒中に、コバルトは5~25nmていどの比較的小さな粒子として、アルミナに担持されていることがわかった。このような大きさにコバルトが保たれることは、炭素鎖の過剰な成長を引き起こす平滑な金属面の発生を抑制し、結果として、炭化水素の成長を適度に抑制する効果を示す。この様なコバルト上で生成した適度な長さの炭化水素が酸触媒によって切断されることで、実施例3の触媒は高い炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を示したものと考えられる。
【0146】
図5からさらに、コバルトが炭素及び/又は有機化合物に被覆された構造を観測することができた。
【0147】
この様な炭素種がコバルト表面を被覆すると、電気陰性度の効果でコバルト表面の電子が炭素種側にわずかに移動して表面の電子密度が低下する。これによって、一酸化炭素や、そこから誘導されるカルベン等の反応中間体のコバルト表面での保持力が低下し、炭化水素の成長を適度に抑制する効果を示す。
【0148】
さらに、この様な炭素種がコバルト表面を被覆すると、これらの炭素種が一種の邪魔板となって、炭化水素の成長を適度に抑制する効果を示す。
【0149】
この様なコバルト上で生成した適度な長さの炭化水素が酸触媒によって切断されることで、実施例3の触媒は高い炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を示したものと考えられる。
【0150】
試験例5
実施例3で得られた触媒を使用して実施した試験例2後に、反応管から触媒を全量回収した。その後、試験例1及び2と同じ方法で触媒を再充填、還元し、試験例2と同じ方法で反応、分析を行った。
【0151】
結果を
図6に示す。
図6において、「C20+/other」は炭素数20以上の炭化水素化合物及び含酸素化合物等の副生物の選択率の和、「b/oC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち不飽和炭化水素及び直鎖型を除いた飽和炭化水素の選択率、「nC5-19」は炭素数5~19の炭化水素化合物のうち直鎖型の飽和炭化水素の選択率、「C2-4」は炭素数2~4の炭化水素化合物の選択率、「CH4」はメタンの選択率、「CO2選択率」はCO
2の選択率、「CO転化率」はFT反応の転化率を意味する。つまり、「b/oC5-19」及び「nC5-19」の合計量が、目的とする炭素数5~19の炭化水素化合物の選択率を意味する。
【0152】
試験例5の結果から、試験例2の40-50時間で80%まで低下したCO転化率が90%まで回復したことがわかる。これは、還元処理によって触媒性能が再生したことを意味する。その後の時間経過に対する転化率、生成物選択率の変化も試験例2と試験例5でほとんど差がなかった。この結果は、実施例3の触媒が優れた耐久性をもち、容易に再活性化が可能であることを示している。