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特開2024-131756セグメントの溶接治具及びセグメントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131756
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】セグメントの溶接治具及びセグメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20240920BHJP
   E21D 11/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E21D11/40 B
E21D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042201
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】鱒渕 健
(72)【発明者】
【氏名】千葉 慎也
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB01
2D155EB10
2D155GC06
2D155KB04
2D155LA11
(57)【要約】
【課題】中主桁を有するセグメントの製造時の継手板の変形を防止して継手板の寸法精度を容易に向上することができるセグメントの溶接軸及びセグメントの製造方法を提供する。
【解決手段】一対の外主桁と、当該外主桁の間に配置される中主桁と、前記外主桁及び中主桁の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられた継手板と、前記外主桁及び中主桁の外周面に取り付けられたスキンプレートとを有するセグメントの溶接治具であって、前記継手板の前記外主桁と前記中主桁の略中央部に組付けられる一対の爪部と、前記一対の爪部を前記継手板の延設方向に連絡する治具本体と、前記治具本体をは、治具本体を短手方向に貫通すると共に、前記継手板の前記中主桁との接合箇所を前記セグメントの外方から押圧する押圧手段とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の外主桁と、当該外主桁の間に配置される中間部材と、前記外主桁及び前記中間部材の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられた継手板と、前記外主桁及び前記中間部材の外周面に取り付けられたスキンプレートとを有するセグメントの溶接治具であって、
前記継手板の前記外主桁と前記中間部材の略中央部に組付けられる一対の爪部と、
前記一対の爪部を前記継手板の延設方向に連絡する治具本体と、
前記治具本体は、治具本体を短手方向に貫通すると共に、前記継手板の前記中間部材との接合箇所を前記セグメントの外方から押圧する押圧手段とを備えることを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項2】
請求項1に記載のセグメントの溶接治具において、
前記爪部は、前記継手板の短手方向の端部から挿入される溝を有することを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項3】
請求項1に記載のセグメントの溶接治具において、
前記治具本体はH鋼材で構成されることを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項4】
請求項3に記載のセグメントの溶接治具において、
前記押圧手段は、前記H鋼材のフランジ間を貫通して設けられることを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項5】
請求項4に記載のセグメントの溶接治具において、
前記押圧手段は、前記治具本体に取り付けられるボルト及びナットであり、前記ボルトの先端部が前記継手板を押圧することを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項6】
請求項5に記載のセグメントの溶接治具において、
前記ボルトの先端部と前記継手板の間には当て板が介在することを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項7】
請求項5に記載のセグメントの溶接治具において、
前記ナットは、前記フランジ間に延設された一対の保持板の間に保持されることを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項8】
請求項5に記載のセグメントの溶接治具において、
前記ナットは複数設けられることを特徴とするセグメントの溶接治具。
【請求項9】
一対の外主桁と、当該外主桁の間に配置される中間部材と、前記外主桁及び前記中間部材の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられた継手板と、前記外主桁及び前記中間部材の外周面に取り付けられたスキンプレートとを有するセグメントの製造方法であって、
前記外主桁、前記中間部材、前記継手板及び前記スキンプレートを仮固定する仮組立工程と、
前記継手板の前記外主桁と前記中間部材の間を外方に所定量湾曲させる湾曲工程と、
前記外主桁、前記中間部材、前記継手板及び前記スキンプレートを溶接する溶接工程とを有することを特徴とするセグメントの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のセグメントの製造方法において、
前記湾曲工程は、請求項1から8に記載のセグメントの溶接治具を用いて前記所定量の湾曲を行うことを特徴とするセグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの組み立て時の溶接において使用するセグメントの溶接治具およびセグメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルを構築する工法としては、シールド工法やTBM工法などが知られている。トンネルを構築する工法では、地山を掘削しつつ筒状のセグメントリングを地中に連設することでトンネルの覆工を形成している。セグメントリングは、複数のセグメントの端面に位置する継手板同士を連結することにより形成される。
【0003】
セグメントは、トンネルが延びる方向に沿った方向から見て弧状又は板状に形成されている。セグメントは、長手方向に弧状又は直線状に形成された一対の主桁、一対の主桁の長手方向の両端面に取り付けられた継手板、及び弧状の主桁の外周面に取り付けられたスキンプレートを有する。セグメントは、2つの主桁と2つの継手板とを相互に接合して枠体を形成し、その枠体にスキンプレートとを接合してなる筐体である。
【0004】
セグメントは上述したように一対の主桁、継手板及びスキンプレートを互いに溶接して接合することで構成されているため、溶接による熱の影響で変形を受けやすい。このような変形による寸法精度の低下を防止するために、予め溶接による変形を防止するための種々の方法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載されているように、トンネル周方向および軸方向に複数連結されることで地中に壁状構造の閉空間を構成し、外周面、内周面、2つの軸方向端面、及び2つの周方向端面の6面を有する円弧版状または平版状のコンクリートと鋼材からなる合成セグメントであって、前記外周面とそれぞれの軸方向端面とがなす角部を覆うと共にトンネル周方向に延在し、外周面側の第一構造部材と軸方向端面側の第二構造部材からなる2つの断面L形状の構造部材と、前記内周面とそれぞれの軸方向端面とがなす角部を覆うと共にトンネル周方向に延在し、内周面側の第四構造部材と軸方向端面側の第三構造部材からなる2つの断面L形状の構造部材と、前記コンクリートに内包されると共に、トンネル周方向に延在し且つトンネル軸方向に並べて配置される2つ以上の主桁と、前記主桁のうち軸方向外側に配置される2つの主桁それぞれと、更にその外側に位置する前記断面L形状の構造部材との間に渡って配置され、当該主桁と当該構造部材とに固着される応力伝達構造材と、前記4つの断面略L形状の構造部材により囲まれた部分に充填されたコンクリートとを有するセグメントが知られている。
【0006】
このようなセグメントによれば、製造時にセグメントの形状変形を抑制できるため、形状矯正をせずにセグメント端面の精度確保が可能となり、製造コストを低減する効果が発揮される。さらに、鋼材とコンクリートとの力伝達が良好に発揮され、セグメントの全幅が有効に合成構造として機能するとともに、セグメントの構造性能を高められることから、セグメントの桁高さの縮小化やセグメント幅の幅広化の効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-202347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、セグメントの補強のために、一対の主桁(以下、「外主桁」という)と略平行に配置された中主桁や外主桁と交差する方向に延びる縦リブが配置されたものも知られており、継手板と中主桁との溶接では、図7に示すように、継手板5が外主桁4と中主桁7の間の略中央部分(一点鎖線)が内側に凹むように変形してしまい、継手板5の寸法精度を確保することが難しいという問題があった。
【0009】
このような変形が生じた場合には、継手板を外方に引っ張って修正を行うことが行われており、当該修正作業が非常に手間のかかる作業であるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、中主桁を有するセグメントの製造時の継手板の変形を防止して継手板の寸法精度を容易に向上することができるセグメントの溶接軸及びセグメントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るセグメントの溶接治具は、一対の外主桁と、当該外主桁の間に配置される中間部材と、前記外主桁及び前記中間部材の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられた継手板と、前記外主桁及び前記中間部材の外周面に取り付けられたスキンプレートとを有するセグメントの溶接治具であって、前記継手板の前記外主桁と前記中間部材の略中央部に組付けられる一対の爪部と、前記一対の爪部を前記継手板の延設方向に連絡する治具本体と、前記治具本体は、治具本体を短手方向に貫通すると共に、前記継手板の前記中間部材との接合箇所を前記セグメントの外方から押圧する押圧手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記爪部は、前記継手板の短手方向の端部から挿入される溝を有すると好適である。
【0013】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記治具本体はH鋼材で構成されると好適である。
【0014】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記押圧手段は、前記H鋼材のフランジ間を貫通して設けられると好適である。
【0015】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記押圧手段は、前記治具本体に取り付けられるボルト及びナットであり、前記ボルトの先端部が前記継手板を押圧すると好適である。
【0016】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記ボルトの先端部と前記継手板の間には当て板が介在すると好適である。
【0017】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記ナットは、前記フランジ間に延設された一対の保持板の間に保持されると好適である。
【0018】
また、本発明に係るセグメントの溶接治具において、前記ナットは複数設けられると好適である。
【0019】
また、本発明に係るセグメントの溶接方法は、一対の外主桁と、当該外主桁の間に配置される中間部材と、前記外主桁及び前記中間部材の長手方向の両端部にそれぞれ取り付けられた継手板と、前記外主桁及び前記中間部材の外周面に取り付けられたスキンプレートとを有するセグメントの製造方法であって、前記外主桁、前記中間部材、前記継手板及び前記スキンプレートを仮固定する仮組立工程と、前記継手板の前記外主桁と前記中間部材の間を外方に所定量湾曲させる湾曲工程と、前記外主桁、前記中間部材、前記継手板及び前記スキンプレートを溶接する溶接工程とを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るセグメントの製造方法において、前記湾曲工程は、上述したセグメントの溶接治具を用いて前記所定量の湾曲を行うと好適である。
【0021】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るセグメントの溶接治具及びセグメントの製造方法によれば、セグメントの継手板と中間部材の溶接の際に、継手板を予め所定の量だけ外側に湾曲させて溶接を行うことができるので、溶接による変形があった場合でも継手板を所定の寸法精度とすることができる。これにより、溶接後の修正作業を行う必要がなくなると共に、溶接後は溶接治具を容易に取り外すことができるので、セグメントの組み立て作業を大幅に簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るセグメントの溶接治具を用いて組み立てられるセグメントの斜視図。
図2】本実施形態に係るセグメントの溶接治具の斜視図。
図3図2におけるA-A断面図。
図4】本実施形態に係るセグメントの溶接治具の底面図。
図5】本実施形態に係るセグメントの溶接治具の使用状態を説明するための図。
図6】本実施形態に係るセグメントの溶接治具の使用状態を説明するための図。
図7】従来のセグメントの製造方法による継手板の変形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るセグメントの溶接治具を用いて組み立てられるセグメントの斜視図であり、図2は、本実施形態に係るセグメントの溶接治具の斜視図であり、図3は、図2におけるA-A断面図であり、図4は、本実施形態に係るセグメントの溶接治具の底面図であり、図5は、本実施形態に係るセグメントの溶接治具の使用状態を説明するための図であり、図6は、本実施形態に係るセグメントの溶接治具の使用状態を説明するための図である。
【0026】
図1に示すように、セグメント1は、複数の鋼材を組み合わせて構成される箱形の構造であり、箱形の底部が円弧状に湾曲している。セグメント1は、例えばトンネルの覆工に用いられ、地山を掘削して形成された掘削孔の壁面に設置されるものである。セグメント1は、掘削孔の壁面に沿って周方向に複数連結されて、筒状のセグメントリングを形成する。このセグメントリングを軸方向に順次接合すると、トンネルの覆工が形成される。セグメント1の箱形の構造の内部には、例えばコンクリート等が充填され、トンネル内部の壁面を構成する。
【0027】
セグメント1は、一対の外主桁4と、一対の外主桁4の間に配置される中間部材としての中主桁7と、一対の継手板5と、スキンプレート6と、複数の縦リブ9と、を備えている。
【0028】
一対の外主桁4は、セグメント1のトンネル軸方向の両端に位置するものである。外主桁4及び中主桁7は、トンネルの断面形状に応じて円弧状に形成されている。外主桁4及び中主桁7は、板状の鋼板からなる部材である。
【0029】
一対の継手板5は、セグメント1のトンネル周方向の両端に取り付けられている部材である。継手板5は、矩形状の鋼板からなり、一対の外主桁4及び中主桁7の長手方向の両端部同士に架け渡され、固定されている。継手板5が位置するセグメント1の端部には、1つのセグメントリングを形成するセグメント1と連結するための継手が取り付けられていても良い。また、セグメント1の外周面には、シール材を取り付ける図示しないシール溝が形成されている。
【0030】
スキンプレート6は、セグメント1の地山側に面する板状の部材であり、矩形の鋼板を面方向に円弧状に曲げて成形したものである。図1に示される様に、一対の外主桁4、中主桁7及び継手板5を接合して得られた枠体の地山側の端面の開口部を塞ぐように接合される。つまり、スキンプレート6は、セグメント1を構成する外主桁4、中主桁7及び継手板5の外周側に取り付けられている。
【0031】
セグメント1の箱形状の内部には、外主桁4と交差する方向に延びる縦リブ9が立設されている。縦リブ9は、外主桁4、中主桁7及びスキンプレート6の面の法線方向に立設されており、縦リブ9のトンネル軸方向の端部が外主桁4の表面に接合されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係るセグメントの溶接治具10は、H鋼材からなる治具本体11と、治具本体11の長手方向の両端に接合された爪部12とを有している。
【0033】
治具本体11は、フランジ11a,11a間を貫通する押圧手段20を有している。押圧手段20は、フランジ11a,11aを貫通するボルト21と、フランジ11a,11a間に介在するナット22とを有している。図4に示すように、ナット22は、フランジ11a,11a間に短手方向に延設された保持板17間に保持されていると好適であり、保持板17,17の間隔は、ナット22の二面幅とほぼ同等に形成されている。このように構成することで、ボルト21のボルト頭を工具などで締め込む又は緩めることで、ボルト21の先端部の突出量を容易に調整することが可能となる。
【0034】
また、ナット22がボルト21に対して2つ取り付けられていると好適である。このように構成することで、ナット22の位置を調整することで、ボルト21の先端部の突出量を設定することができ、後述する湾曲工程の工数を削減することが可能となる。
【0035】
治具本体11は、フランジ11a,11a間に短手方向に延設された補強板14が長手方向に沿って所定の間隔で取り付けられている。また、補強板14と略平行に配置された取手15が接合されている。本実施形態に係るセグメントの溶接治具10は、取手15が設けられることで運搬性及びセグメント1への組付性を向上させている。
【0036】
補強板14は、板状の鋼板で構成されていると好適であり、取手15は、棒状の鋼材で構成されていると好適である。さらに、取手15は、H鋼の長手方向と直交する断面において、押圧手段20に対してウェブ11bを介した反対側に設けられている。
【0037】
爪部12は、治具本体11の両端に接合された板状の鋼板であって、図3に示すように、短手方向に押圧手段20と重畳するように形成された溝13が形成されている。溝13は、継手板5が組み込み可能な幅に形成されている。また、押圧手段20のボルト21の先端と継手板5が当接する箇所には、当て板16が介在していると好適である。
【0038】
また、押圧手段20の位置は、セグメント1の外周面に形成されたシール溝に接触しない位置に配置されている。さらに、溝13の深さは、図6に示すように、本実施形態に係るセグメントの溶接治具10をセグメント1の継手板5に組付けた場合に、継手板5の端部から短手方向へ略1/4程度挿入可能であれば好適である。
【0039】
次に、本実施形態に係るセグメントの溶接治具10を用いたセグメント1の製造方法について説明を行う。
【0040】
一対の外主桁4、中主桁7、継手板5、及びスキンプレート6が、互いに仮固定される(仮組立工程)。仮組立工程は、図示しないセグメント組立用治具に外主桁4、中主桁7、継手板5、スキンプレート6を載置した状態で行われる。なお、仮組立工程において、縦リブ9を仮固定してもよい。各部材間の仮固定は、例えばスポット溶接により行われる。各部材間を部分的に溶接することにより、仮組立工程に掛かる時間を抑えつつ、後工程の溶接工程で必要な組立精度が確保できる。溶接工程においては、溶接による各部材の変形が発生するため、その変形を見込んだ寸法を狙って仮組立が行われる。
【0041】
次に、図5に示すように、仮組立が行われたセグメント1の継手板5に本実施形態に係るセグメントの溶接治具10の爪部12の溝13を挿入するように組み付ける。本実施形態に係るセグメントの溶接治具10の長手方向の中心は、継手板5の長手方向の中心線と重畳するように組付けられると好適であり、この状態では、爪部12は、外主桁4と中主桁7の略中央部分に位置するように組付けられる。このとき、押圧手段20のボルト21の先端と継手板5の間に当て板16を介在させて組み立てる。
【0042】
その後、押圧手段20のボルト21を工具などを用いて回転させてボルト21の先端部を継手板5に向かって突出させる。このとき、爪部12が継手板5の外主桁4と中主桁7の略中央部に組み付けられているので、ボルト21の先端部の突出により、継手板5は、爪部12によって外方に引っ張られ、所定量湾曲する(湾曲工程)。押圧手段20による湾曲量は、後述する溶接工程による変形量を見込んで設定される。
【0043】
その後、セグメント1を構成する各部材間の溶接が行われる(溶接工程)。溶接工程においては、仮組立されたセグメント1を構成する部材同士を溶接により固定し、セグメント1の構造が完成する。溶接工程においては、セグメント1を構成する各部材同士が近接している部分を溶接する。また、溶接工程においては、各部材同士が近接している部分の全域を溶接し、各部材間の接合強度を確保する。溶接工程は、組立効率を上げるため、ロボットによる自動溶接で行われるのが望ましい。なお、ロボットによる溶接が困難な部位については、適宜手作業により溶接を行っても良い。
【0044】
なお、本実施形態に係るセグメントの溶接治具10の取り付け及び取り外しは、押圧手段20の締め込み、緩めによって行うことができるので、湾曲工程の作業工数を削減することが可能となる。
【0045】
このように製造されたセグメント1は、予め溶接による継手板5の変形を見込んだ状態で溶接工程を行っているので、継手板5の寸法精度を確保することができる。具体的には、湾曲工程なしで溶接を行う従来の製造方法では、継手板5が外側に約2.5mm程度変形していたところ、本実施形態に係るセグメントの溶接治具10を用いた湾曲工程を行った場合には、-1.5~-0.3mm程度に抑えることができ、寸法精度を確保することができることが確認できた。
【0046】
また、本実施形態に係るセグメントの溶接治具10は、保持板17,17間にナット22を配置しているので、ボルト21およびナット22が摩耗等した場合にこれらの部品の交換を容易に行う事が可能となる。
【0047】
なお、以上の実施の形態では、中間部材として外主桁と略同一形状の中主桁を用いた場合について説明を行ったが、中間部材は、長手方向に連続せずに継手板と溶接する位置のみに分割配置された補強リブを用いても構わない。また、押圧手段20のナット22を二つ設けた場合について説明を行ったが、ナット22は1つでも構わない。また、上述した実施形態では、セグメントは、円弧状に湾曲した形状について説明を行ったが、外主桁及び中主桁を長方形に形成した板状に形成しても構わない。さらに、治具本体はH鋼で構成される場合について説明を行ったが、鋼板などを組み合わせた構成としても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1 セグメント, 4 外主桁, 5 継手板, 6 スキンプレート, 7 中主桁, 9 縦リブ, 10 セグメントの溶接治具, 11 治具本体, 12 爪部, 13 溝, 14 補強部, 15 取手, 16 当て板, 17 保持板, 20 押圧手段, 21 ボルト, 22 ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7