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特開2024-131758組成物、分散液、導電性材料、電子機器、組成物を生産する方法
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  • 特開-組成物、分散液、導電性材料、電子機器、組成物を生産する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131758
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】組成物、分散液、導電性材料、電子機器、組成物を生産する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 49/00 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L49/00
C08L25/18
C08K5/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042203
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝則
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC102
4J002BM001
4J002CE001
4J002EN136
4J002GQ02
4J002HA06
(57)【要約】
【解決手段】 固体の組成物が提供される。上記の組成物は、高分子化合物の第四級アンモニウム塩を含む。上記の組成物は、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体を含む。第四級アンモニウム塩は、π共役系ポリマー及び/又はポリアニオンの第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩に含まれる第四級アンモニウムの炭素数は、18以下である。組成物の全体に対する複合体の含有量は、90質量%以上である。組成物の含水率は、20質量%以下であってよい。組成物は、粉末状の組成物であってよい。組成物に含まれる一次粒子の画像解析法による粒子径は、0.3μm以上30μm以下であってよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物の第四級アンモニウム塩を含む固体の組成物であって、
π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体を含み、
前記第四級アンモニウム塩は、前記π共役系ポリマー及び/又は前記ポリアニオンの第四級アンモニウム塩であり、
前記第四級アンモニウム塩に含まれる第四級アンモニウムの炭素数は、18以下であり、
前記組成物の全体に対する前記複合体の含有量は、90質量%以上である、
組成物。
【請求項2】
前記組成物の含水率は、20質量%以下である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、粉末状の組成物であり、前記組成物に含まれる一次粒子の画像解析法による粒子径は、0.3μm以上30μm以下である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第四級アンモニウム塩に含まれる第四級アンモニウムの炭素数は、12~18である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアニオンの質量に対する前記π共役系ポリマーの質量の割合は、1/5より大きい、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアニオンの分子量は、1万以上100万以下である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の組成物、及び/又は、前記組成物に含まれる前記第四級アンモニウム塩の少なくとも一部が解離して得られる物質と、
有機溶媒と、
を含む、
分散液。
【請求項8】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の組成物と、前記組成物の分散媒としての有機溶媒とを攪拌して得られる、
分散液。
【請求項9】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の組成物を含む導電性材料であって、
フィルム状若しくはシート状、糸状若しくは繊維状、又は、網目状の形状を有する、
導電性材料。
【請求項10】
請求項9に記載の導電性材料を備える、
電子機器。
【請求項11】
π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体、並びに、水系分散媒を含む液体である原料液を準備する段階と、
前記原料液と、第四級アンモニウム化合物とを混合して混合液を調整する段階と、
前記混合液の水分を蒸発させて、前記複合体を含む固体を生成する段階と、
を有し、
前記第四級アンモニウム化合物の炭素数は、18以下であり、
前記混合液を調整する段階は、前記ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する前記第四級アンモニウム化合物のモル数の比(前記アニオン基のモル数:前記第四級アンモニウム化合物のモル数)が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さくなるように、前記原料液と、前記第四級アンモニウム化合物とを混合する段階を含む、
前記複合体を含む固体の組成物を生産する方法。
【請求項12】
π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体、並びに、水系分散媒を含む液体である原料液を準備する段階と、
前記原料液と、第四級アンモニウム化合物とを混合して混合液を調整する段階と、
前記混合液の水分を蒸発させて、前記複合体を含む固体を生成する段階と、
を有し、
前記第四級アンモニウム化合物の炭素数は、18以下であり、
前記原料液を準備する段階は、前記複合体及び前記水系分散媒を含み、pHが2.5以下の液体を準備する段階を含み、
前記混合液を調整する段階は、前記混合液のpHを2.5超12未満に調整する段階を含む、
前記複合体を含む固体の組成物を生産する方法。
【請求項13】
前記混合液のpHを2.5超12未満に調整する段階は、前記混合液のpHが2.5超12未満となるように前記原料液に前記第四級アンモニウム化合物を添加する段階を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合液を調整する段階は、(i)前記混合液のpHが2.5超12未満となり、且つ、(ii)前記ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する前記第四級アンモニウム化合物のモル数の比(前記アニオン基のモル数:前記第四級アンモニウム化合物のモル数)が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さくなるように、前記原料液と、前記第四級アンモニウム化合物とを混合する段階を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合液を調整する段階は、前記原料液と、前記第四級アンモニウム化合物(塩化物を除く。)とを混合して、前記混合液を調整する段階を含む、
請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第四級アンモニウム化合物の炭素数は、12~18である、
請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第四級アンモニウム化合物は、水酸化物である、
請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記原料液及び前記混合液の少なくとも一方の有機溶媒の含有量は、10質量%以下である、
請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記複合体を含む固体を生成する段階は、前記混合液を噴霧乾燥させる段階を含む、
請求項11又は請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、分散液、導電性材料、電子機器、組成物を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤で表面処理された粉体粒子が開示されている。特許文献2には、カーボン材料を添加することで導電性を高めた自己ドープ型導電性高分子組成物が開示されている。特許文献3~7には、π共役系ポリマー及びドーパントポリマーを含む導電性複合体の分散液が開示されている。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 特開2021-167394号公報
(特許文献2) 特開2022-142739号公報
(特許文献3) 特開2016-130314号公報
(特許文献4) 特開2022-144277号公報
(特許文献5) 特開2022-075086号公報
(特許文献6) 特開2022-092876号公報
(特許文献7) 特開2022-128793号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様においては、固体の組成物が提供される。上記の組成物は、例えば、高分子化合物の第四級アンモニウム塩を含む。上記の組成物は、例えば、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体を含む。上記の組成物において、上記の第四級アンモニウム塩は、例えば、π共役系ポリマー及び/又はポリアニオンの第四級アンモニウム塩である。上記の組成物において、第四級アンモニウム塩に含まれる第四級アンモニウムの炭素数は、例えば、18以下である。上記の組成物において、組成物の全体に対する複合体の含有量は、例えば、90質量%以上である。
【0004】
上記の何れかの成物の含水率は、20質量%以下であってよい。上記の何れかの組成物は、粉末状の組成物であってよい。上記の何れかの組成物において、組成物に含まれる一次粒子の画像解析法による粒子径は、0.3μm以上30μm以下であってよい。上記の何れかの組成物において、第四級アンモニウム塩に含まれる第四級アンモニウムの炭素数は、12~18であってよい。上記の何れかの組成物において、ポリアニオンの質量に対するπ共役系ポリマーの質量の割合は、1/5より大きくてよい。上記の何れかの組成物において、ポリアニオンの分子量は、1万以上100万以下であってよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、分散液が提供される。上記の分散液は、例えば、上記の第1の態様に係る何れかの組成物、及び/又は、当該組成物に含まれる第四級アンモニウム塩の少なくとも一部が解離して得られる物質を含む。上記の分散液は、例えば、有機溶媒を含む。
【0006】
本発明の第3の態様においては、分散液が提供される。上記の分散液は、例えば、上記の第1の態様に係る何れかの組成物と、当該組成物の分散媒としての有機溶媒とを攪拌して得られる。
【0007】
本発明の第4の態様においては、導電性材料が提供される。上記の導電性材料は、例えば、上記の第1の態様に係る何れかの組成物を含む。上記の導電性材料は、例えば、フィルム状若しくはシート状、糸状若しくは繊維状、又は、網目状の形状を有する。
【0008】
本発明の第5の態様においては、電子機器が提供される。上記の電気機器は、例えば、上記の第4の態様に係る導電性材料を備える。
【0009】
本発明の第6の態様においては、固体の組成物を生産する方法が提供される。上記の方法において、上記の固体の組成物は、例えば、複合体を含む。上記の方法は、例えば、原料液を準備する段階を有する。上記の方法において、原料液は、例えば、複合体及び水系分散媒を含む液体である。上記の方法において、複合体は、例えば、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む。上記の方法は、例えば、原料液と、第四級アンモニウム化合物とを混合して混合液を調整する段階を有する。上記の方法は、例えば、混合液の水分を蒸発させて、複合体を含む固体を生成する段階を有する。
【0010】
上記の方法において、第四級アンモニウム化合物の炭素数は、例えば、18以下である。上記の方法において、混合液を調整する段階は、例えば、ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比(アニオン基のモル数:第四級アンモニウム化合物のモル数)が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さくなるように、原料液と、第四級アンモニウム化合物とを混合する段階を含む。
【0011】
本発明の第7の態様においては、固体の組成物を生産する方法が提供される。上記の方法は、例えば、原料液を準備する段階を有する。上記の方法において、原料液は、例えば、複合体及び水系分散媒を含む液体である。上記の方法において、複合体は、例えば、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む。上記の方法は、例えば、原料液と、第四級アンモニウム化合物とを混合して混合液を調整する段階を有する。上記の方法は、例えば、混合液の水分を蒸発させて、複合体を含む固体を生成する段階を有する。
【0012】
上記の方法において、第四級アンモニウム化合物の炭素数は、例えば、18以下である。上記の方法において、例原料液を準備する段階は、例えば、複合体及び水系分散媒を含み、pHが2.5以下の液体を準備する段階を含む。上記の方法において、混合液を調整する段階は、例えば、混合液のpHを2.5超12未満に調整する段階を含む。
【0013】
上記の何れかの方法において、混合液のpHを2.5超12未満に調整する段階は、混合液のpHが2.5超12未満となるように原料液に第四級アンモニウム化合物を添加する段階を含んでよい。上記の何れかの方法において、混合液を調整する段階は、(i)混合液のpHが2.5超12未満となり、且つ、(ii)ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比(アニオン基のモル数:第四級アンモニウム化合物のモル数)が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さくなるように、原料液と、第四級アンモニウム化合物とを混合する段階を含んでよい。
【0014】
上記の第6又は第7の態様に係る何れかの方法において、混合液を調整する段階は、原料液と、第四級アンモニウム化合物(塩化物を除く。)とを混合して、混合液を調整する段階を含んでよい。上記の何れかの方法において、混合液を調整する段階は、原料液と、第四級アンモニウム化合物(塩化物及び臭化物を除く。)とを混合して、混合液を調整する段階を含んでよい。上記の何れかの方法において、第四級アンモニウム化合物の炭素数は、12~18であってよい。上記の何れかの方法において、第四級アンモニウム化合物は、水酸化物であってよい。上記の何れかの方法において、原料液及び混合液の少なくとも一方の有機溶媒の含有量は、10質量%以下であってよい。上記の何れかの方法において、複合体を含む固体を生成する段階は、混合液を噴霧乾燥させる段階を含んでよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】複合体の有機分散液を作製する方法の一例を概略的に示す。
図2】導電性材料を作製する方法の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。
【0018】
近年、導電性材料を生産するための原材料として、導電性ポリマー組成物が注目されている。導電性ポリマー組成物は、例えば、π共役系ポリマーと、当該π共役系ポリマーをドーピングするドーパントポリマーとを含む複合体である。導電性材料は、例えば、電子機器、電磁波シールド、帯電防止フィルム、導電性塗料などの用途に用いられる。電子機器としては、電子部品、当該電子部品を含む電気製品などが例示される。
【0019】
導電性ポリマー組成物は、例えば、水相中において、酸化剤及びドーパントポリマーの存在下で、π共役系ポリマーを構成するモノマーを重合させることで、π共役系ポリマー及びドーパントポリマーの錯体(π共役系ポリマー/ドーパントポリマー錯体と称される場合がある。)として得られる。導電性ポリマー組成物を含む組成物含有液(例えば、塗工液である。)が調製される場合において、当該組成物含有液の用途、当該組成物含有液に要求される物性などに応じて、導電性ポリマー組成物の溶媒又は分散媒(単に、分散媒と称される場合がある。)として、有機溶剤が用いられることがある。例えば、塗工液の乾燥時間を短くすること、水に溶解又は分散しにくい化合物を含有する塗工液を作製することなどを目的として、導電性ポリマー組成物の水分散液の分散媒である水を有機溶媒(有機溶剤と称される場合もある。)に置換して得られる有機分散液が調整される。
【0020】
従来の有機分散液の調整手順によれば、まず、水相中でπ共役系ポリマー/ドーパントポリマー錯体として存在している導電性ポリマー組成物を疎水化させることを目的として、導電性ポリマー組成物の水分散液に各種の化合物が添加される。上記の化合物としては、有機溶媒、アミン化合物、エポキシ化合物などが例示される。導電性ポリマー組成物の水分散液に上記の化合物が添加されると、導電性ポリマー組成物が析出し、固体の導電性ポリマー組成物を含む懸濁液が得られる。次に、例えばろ過により、上記の懸濁液から固体の導電性ポリマー組成物が分離される。その後、上記の固体の導電性ポリマー組成物と、有機溶媒とが混合される。導電性ポリマー組成物の水分散液に添加される有機溶媒の種類又は組成と、固体の導電性ポリマー組成物を分散させるための有機溶媒の種類又は組成とは、同一であってもよく、異なってもよい。従来は、このような手順により、有機溶剤中に導電性ポリマー組成物が分散した有機分散液が調製されていた。
【0021】
本発明者らは、導電性ポリマー組成物の水分散液に、炭素数が18以下の第四級アンモニウム化合物を添加することで、導電性ポリマー組成物の析出を抑制しつつ、導電性ポリマー組成物と、第四級アンモニウム化合物又はそのイオンとを含む溶液(調整液と称される場合がある。)が得られることを見出した。本発明者らは、導電性ポリマー組成物の水分散液と、炭素数が18以下の第四級アンモニウム化合物とを適切な条件で混合することで、導電性ポリマー組成物の析出が特に効果的に抑制されることを見出した。
【0022】
上述されたとおり、従来の有機分散液の調整手順によれば、導電性ポリマー組成物に疎水性を付与することを目的として、導電性ポリマー組成物の水分散液に、有機溶媒と、炭素数の比較的大きな第四級アンモニウム化合物とが添加されていた。そのため、従来の手法により得られた懸濁液は有機溶媒の含有量が大きく、また、液体中に析出した導電性ポリマー組成物は比較的大きな粒子径を有していた。
【0023】
これに対して、本発明者らが見出した調整液は、実質的に有機溶媒を含まない。上記の調整液における有機溶媒の含有率は、例えば、10質量%以下である。また、本発明者らが見出した調整液は、当該調整液中で容易に沈殿するような大きな粒子を実質的に含まない。つまり、本発明者らは、導電性ポリマー組成物の水分散液に、炭素数が18以下の第四級アンモニウム化合物を添加することで、導電性ポリマー組成物と、炭素数が18以下の第四級アンモニウム化合物又はそのイオンとを含む新規な溶液が得られることを見出した。
【0024】
さらに、本発明者らは、上記の調整液の水分を蒸発させることで、導電性ポリマー組成物の第四級アンモニウム塩を含む固体の組成物が得られることを見出した。上記の固体の組成物は、例えば、90質量%以上の導電性ポリマー組成物を含む。上記の固体の組成物は、例えば、粉末状の組成物であり、その含水率は20質量%未満である。また、当該粉末状の組成物は、主として、画像解析法により得られる円相当径が0.3μm以上30μm以下の粒子により構成される。
【0025】
本発明者らは、特に、上記の第四級アンモニウム化合物が塩化物ではない場合には、噴霧乾燥により上記の固体の組成物が得られることを見出した。また、本発明者らは、上記の固体の組成物が得られた場合、当該固体の組成物が、少なくとも1種の有機溶媒に容易に分散することを見出した。
【0026】
噴霧乾燥を用いて調整液の水分を蒸発させることで、上記の固体の組成物の生産効率が向上する。本発明者らは、噴霧乾燥を用いて調整液の水分を蒸発させる実験を繰り返す中で、噴霧乾燥により固体を作製する場合、ハロゲン化物は、融着して塊になりやすいことを見出した。本発明者らは、ハロゲン化物の中でも、特に塩化物は融着して塊になりやすいことを見出した。その原因は定かではないが、酸性ガスの発生による影響が推定される。
【0027】
本発明者らは、上記の考察に基づいて、上記の第四級アンモニウム化合物が塩化物又は臭化物ではないことが好ましく、上記の第四級アンモニウム化合物がハロゲン化物ではないことがより好ましいことを想到した。また、本発明者らは、上記の第四級アンモニウム化合物が水酸化物であることが特に好ましいことを想到した。
【0028】
図1は、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体の有機分散液を作製する方法の一例を概略的に示す。本実施形態によれば、まず、ステップ122、ステップ124及びステップ126(ステップがSと省略される場合がある。)により、高分子化合物の第四級アンモニウム塩を含む固体の組成物が作製される。本実施形態において、固体の組成物は、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む複合体を含む。本実施形態において、高分子化合物の第四級アンモニウム塩は、π共役系ポリマー及び/又は前記ポリアニオンの第四級アンモニウム塩を含む。
【0029】
(I.原料液)
本実施形態によれば、S122において、π共役系ポリマー及びポリアニオンとを含む複合体の固体を生成するための原料液が準備される。原料液の組成、物性などの詳細は、例えば、下記のとおりである。
【0030】
(I-1.原料液の組成)
原料液は、上記の複合体と、水系分散媒とを含む。原料液は、有機溶媒を含まなくてもよく、有機溶媒を実質的に含まなくてもよい。原料液における有機溶媒の含有量は、10質量%以下であってよい。原料液における有機溶媒の含有量は、10質量%未満であってよい。
【0031】
原料液における有機溶媒の含有量が10質量%を大きく超える場合、後述されるステップ124において原料液に第四級アンモニウム化合物が添加されたときに、原料液中の複合体が析出し、当該複合体の沈殿物が生成し得る。一方、原料液中の有機溶媒の含有量が10質量%以下である場合には、第四級アンモニウム化合物の添加工程における複合体の析出及び沈殿物の生成が抑制される。
【0032】
原料液のpHは、酸性であってよい。原料液のpHは、1以上6以下であってよく、1.5以上5以下であってもよい。例えば、水相中において、酸化剤及びポリアニオンの存在下で、π共役系ポリマーを構成するモノマーを重合させて得られた上記の複合体の水分散液が原料液として用いられる場合、当該原料液のpHは2~3以下になり得る。
【0033】
(a.複合体)
複合体は、π共役系ポリマー及びポリアニオンを含む。複合体に含まれるπ共役系ポリマーは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。複合体に含まれるポリアニオンは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。複合体は、例えば、水相中において、酸化剤及びポリアニオンの存在下で、π共役系ポリマーを構成するモノマーを重合させること得られる。
【0034】
原料液中における複合体の含有割合は、水系分散媒100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であってよい。原料液中における複合体の含有割合は、水系分散媒100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下であってもよく、0.8質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0035】
(π共役系ポリマー)
π共役系ポリマーは、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子である。π共役系ポリマーとしては、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体などが例示される。π共役系ポリマーは、無置換であってもよく、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基などの官能基が導入されていてもよい。
【0036】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)などが例示される。
【0037】
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)などが例示される。
【0038】
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)などが例示される。
【0039】
π共役系ポリマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、及び/又は、その誘導体であってよい。3,4-エチレンジオキシチオフェンは、EDOTと称される場合がある。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は、PEDOTと称される場合がある。PEDOTは、導電性、透明性及び耐熱性に優れる。
【0040】
複合体中において、ポリアニオンの質量に対するπ共役系ポリマーの質量の割合は、1/5より大きくてよい。ポリアニオンの質量に対するπ共役系ポリマーの質量の割合は、1/2~1/3であってよい。ポリアニオンの質量に対するπ共役系ポリマーの質量の割合が1/5よりも大きい場合、上記の複合体を含む導電性材料に十分な導電性が付与され得る。
【0041】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位の重合体である。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。ポリアニオンに含まれるアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能する。これにより、π共役系ポリマーの導電性が向上する。ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、カルボキシ基などが例示される。
【0042】
ポリアニオンとしては、スルホ基を有する高分子、カルボキシ基を有する高分子などが例示される。スルホ基を有する高分子としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸などが例示される。スルホ基を有するポリメタクリル酸エステルとしては、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸などが例示される。カルボキシ基を有する高分子としては、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸などが例示される。
【0043】
ポリアニオンは、スルホ基を有する高分子であってよい。例えば、ポリスチレンスルホン酸は、π共役系ポリマーの導電性を向上させる効果に優れる。
【0044】
ポリアニオンの質量平均分子量は、0.1万以上150万以下であってよく、1万以上100万以下であることが好ましい。上記の質量平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定される。上記の質量平均分子量は、例えば、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0045】
複合体中におけるポリアニオンの含有割合は、π共役系ポリマー100質量部に対して1質量部以上1000質量部未満であってよい。複合体中におけるポリアニオンの含有割合は、π共役系ポリマー100質量部に対して100質量部以上500質量部以下であってもよく、100質量部以上500質量部未満であることが好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。ポリアニオンの含有割合が上記の下限値以上であれば、π共役系ポリマーへのドーピング効果が強くなり、複合体の導電性が向上する。一方、ポリアニオンの含有量が上記の上限値以下であれば、複合体中のπ共役系ポリマーの含有量が向上し、優れた導電性を有する複合体が得られる。
【0046】
(b.水系分散媒)
水系分散媒としては、水、水を主成分とする液体などが例示される。水系分散媒における水の含有量は、90質量%以上であってよい。水系分散媒における水の含有量は、90質量%超であってよい。水系分散媒は、有機溶媒を含まなくてもよく、有機溶媒を実質的に含まなくてもよい。水系分散媒における有機溶媒の含有量は、10質量%以下であってもよく、10質量%未満であってもよい。
【0047】
(I-2.原料液の製造方法)
一実施形態において、原料液は、水相中において、触媒、酸化剤及びポリアニオンの存在下で、π共役系ポリマーを構成するモノマーを重合させることで得られる。触媒としては、例えば、遷移金属化合物が用いられる。遷移金属化合物としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅などが例示される。酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが例示される。他の実施形態において、原料液として、市販されている複合体の水分散液が用いられる。市販されている複合体の水分散液に適切なpH調整剤を添加することで、原料液が準備されてもよい。
【0048】
(II.調整液)
次に、S124において、原料液と、第四級アンモニウム化合物とが混合される。これにより、調整液が得られる。S124においては、原料液と、1種類の第四級アンモニウム化合物とが混合されてもよく、原料液と、2種類以上の第四級アンモニウム化合物とが混合されてもよい。S124において、調整液のpHが調整されてもよい。
(II-1.調整液の組成)
調整液は、複合体の水分散液であってよい。調整液は、水系分散媒と、複合体と、第四級アンモニウムイオンとを含む。調整液中において、第四級アンモニウムイオンは、ポリアニオンに含まれるフリーのアニオン基に付加していると推定される。
【0049】
調整液は、有機溶媒を含まなくてもよく、有機溶媒を実質的に含まなくてもよい。調整液における有機溶媒の含有量は、10質量%以下であってよい。これにより、複合体の析出が抑制される。
【0050】
(c.第四級アンモニウム化合物)
第四級アンモニウム化合物としては、(i)第四級アンモニウムカチオンと、水酸化物イオンとの塩(第四級アンモニウム水酸化物と称される場合がある)、(ii)第四級アンモニウムカチオンと、ハロゲン化物イオンとの塩(第四級アンモニウムハロゲン化物と称される場合がある)などが例示される。第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウム水酸化物であることが好ましい。
【0051】
第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウムカチオンと、塩化物イオンとの塩(第四級アンモニウム塩化物と称される場合がある。)を実質的に含まないことが好ましい。これにより、噴霧乾燥により調整液の水分を蒸発させることで、粉末状の組成物が得られる。なお、第四級アンモニウム化合物は、噴霧乾燥により調整液の水分を蒸発させる場合に、調整液中の固形分の合一化が無視できる程度の第四級アンモニウム塩化化物を含んでもよい。この場合、第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウム塩化化物を実質的に含んでいないと考えられる。
【0052】
上述されたとおり、第四級アンモニウム化合物がハロゲン化物である場合、噴霧乾燥により固体が作製されるときに、当該固体の粒子が融着して塊になりやすい。例えば、第四級アンモニウム化合物が塩化物又は臭化物である場合、噴霧乾燥により固体が作製されるときに、当該固体の粒子が融着して塊になりやすい。特に、第四級アンモニウム化合物が塩化物である場合、噴霧乾燥により固体が作製されるときに、当該固体の粒子が融着して塊になりやすい。
【0053】
そこで、第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウムカチオンと、塩化物イオンとの塩を実質的に含まなくてもよい。第四級アンモニウムカチオンと、塩化物イオン又は臭化物イオンとの塩を実質的に含まなくてもよい。第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウムハロゲン化物を実質的に含まなくてもよい。
【0054】
第四級アンモニウム化合物に含まれる炭素原子の個数(炭素数と称される場合がある。)は、18以下であってよい。上記の炭素数は、4以上18以下であってよい。上記の炭素数は、6以上18以下であってもよく、8以上18以下であってもよい。上記の炭素数は12以上18以下であることが好ましい。上記の炭素数が上記の数値範囲に関する条件を満足する場合、調整液の作製工程における複合体の析出が抑制され、懸濁の少ない調整液が得られる。その結果、噴霧乾燥により調整液中の水分を蒸発させることが容易になる。
【0055】
また、上記の炭素数が上記の数値範囲に関する条件を満足する場合、調整液中の水分を蒸発させて得られた固体の組成物が、少なくとも1種の有機溶媒に分散する。例えば、上記の固体の組成物は、少なくとも1種のアルコールに分散する。例えば、上記の固体の組成物は、メタノール及び2-プロパノール(IPA)の少なくとも一方に分散する。これにより、上述された複合体の有機分散液の生産効率が向上する。
【0056】
例えば、(i)上記の第四級アンモニウム化合物が、第四級アンモニウム塩化物を実質的に含まない場合、及び/又は、(ii)上記の第四級アンモニウム化合物が、第四級アンモニウムカチオンと、臭化物イオンとの塩(第四級アンモニウム臭化物と称される場合がある。)を実質的に含まない場合、上記の固体の組成物が少なくとも1種のアルコールに分散する。例えば、上記の第四級アンモニウム化合物が第四級ハロゲン化物を実質的に含まない場合、上記の固体の組成物が少なくとも1種のアルコールに分散する。上記の少なくとも1種のアルコールは、メタノール及び2-プロパノール(IPA)の少なくとも一方であってよい。
【0057】
例えば、上記の第四級アンモニウム化合物の主成分が、炭素数が18以下の第四級アンモニウム水酸化物である場合、上記の固体の組成物は、少なくとも1種のアルコールに容易に分散する。例えば、上記の第四級アンモニウム化合物の主成分が、炭素数が18以下の第四級アンモニウム水酸化物である場合、上記の固体の組成物は、メタノール及び2-プロパノール(IPA)の少なくとも一方に容易に分散する。
【0058】
(II-2.調整液の製造方法)
一実施形態によれば、S124において、ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比(アニオン基のモル数:第四級アンモニウム化合物のモル数)が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さくなるように、複合体の水分散液と、第四級アンモニウム化合物とが混合される。上記のモル数の比は、1:0.5~1:1.2であってもよく、1:0.7~1:1.15であってもよい。上記のモル数の比は、実質的に1:1であってもよい。
【0059】
他の実施形態によれば、S124において、調整液のpHが2.5超12未満に調整される。例えば、原料液に第四級アンモニウム化合物が添加されることで、混合液のpHが調整される。これにより、十分な量の第四級アンモニウム化合物が添加され得る。例えば、ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比(アニオン基のモル数:第四級アンモニウム化合物のモル数)が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さくなる。
【0060】
より具体的には、まず、pHが2.5以下の原料液が準備される。次に、調整液のpHが予め定められた値又は数値範囲の範囲内になるまで、当該原料液に第四級アンモニウム化合物の水溶液が添加される。なお、第四級アンモニウム化合物の水溶液は、アルカリ性を示す。上記の予め定められた数値範囲は、2.5超12未満であってもよく、2.5以上11.5以下であってもよく、2.5以上11以下であってもよく、2.5以上10以下であってもよい。上記の予め定められた数値範囲は、2.7以上12未満であってもよく、2.7以上11.5以下であってもよく、2.7以上11以下であってもよく、2.7以上10以下であってもよい。上記の予め定められた数値範囲は、3以上11以下であってもよく、3以上10以下であってもよい。上記の予め定められた値は、上記の数値範囲内の任意の値であってよい。
【0061】
第四級アンモニウム化合物の添加量は、(i)調整液のpH、及び/又は、(ii)ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の割合に基づいて決定されてもよい。上記の割合は、比として表されてもよく、モル%として表されてもよい。
【0062】
一実施形態において、(i)調整液のpHが予め定められた第1の値又は第1の数値範囲の範囲内となるように、原料液と、第四級アンモニウム化合物の水溶液とが混合される。他の実施形態において、(ii)ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の割合が予め定められた第2の値又は第2の数値範囲の範囲内となるように、原料液と、第四級アンモニウム化合物の水溶液とが混合される。さらに他の実施形態において、(i)調整液のpHが予め定められた第1の値又は第1の数値範囲の範囲内となり、且つ、(ii)ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の割合が予め定められた第2の値又は第2の数値範囲の範囲内となるように、原料液と、第四級アンモニウム化合物の水溶液とが混合される。上記の割合は、例えば、第四級アンモニウム化合物のモル数を、ポリアニオンに含まれるアニオン基のモル数で除して得られる。
【0063】
第1の数値範囲は、2.5超12未満であってもよく、2.5以上11.5以下であってもよく、2.5以上11以下であってもよく、2.5以上10以下であってもよい。第1の数値範囲は、2.7以上12未満であってもよく、2.7以上11.5以下であってもよく、2.7以上11以下であってもよく、2.7以上10以下であってもよい。第1の数値範囲は、3以上11以下であってもよく、3以上10以下であってもよい。第1の値は、第1の数値範囲の範囲内の任意の値であってよい。
【0064】
第2の数値範囲は、0.125超1.27未満であってもよく、0.5以上1.2以下であってもよく、0.7以上1.15以下であってもよい。第2の値は、第2の数値範囲の範囲内の任意の値であってよい。第2の値は、実質的に1であってもよい。
【0065】
(III.複合体を含む固体の組成物)
次に、S126において、調整液を用いて、複合体を含む固体の組成物が作製される。上記の固体の組成物は、π共役系ポリマー及び/又はポリアニオンの第四級アンモニウム塩を含んでよい。上記の第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオンと、複合体のポリアニオンに含まれるフリーのアニオン基との塩であってよい。
【0066】
固体の組成物の全体に対する複合体の含有量は、90質量%以上であってよい。固体の組成物の全体に対する複合体の含有量は、90質量%超であってもよく、95量%以上であることが好ましい。複合体の含有量が大きくなるほど、複合体の有機分散体に混入する第四級アンモニウム化合物の量が減少する。
【0067】
固体の組成物は、粉末状の組成物であってよい。固体の組成物の含水率は、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、10質量%未満であってもよい。
【0068】
固体の組成物は、複数の一次粒子を含んでよい。上記の一次粒子の円相当径(単に、粒子径と称される場合がある。)は、主に、0.3μm以上30μm以下であってよい。例えば、上記の一次粒子の平均粒子径は、0.3μm以上30μm以下であってもよく、0.5μm以上10μm以下であってよい。上記の一次粒子の円相当径及び平均粒子径は、例えば、走査電子顕微鏡(SEMと称される場合がある。)を用いた画像解析法により導出される。当該円相当径及び平均粒子径のそれぞれは、画像解析法による粒子径の一例であってよい。
【0069】
より具体的には、一次粒子の円相当径及び平均粒子径は、例えば、下記の手順により導出される。まず、撮像位置を変えて、2枚のSEM画像を撮像する。次に、各SEM画像を目視により観察し、各SEM画像において比較的焦点の合っている10個の一次粒子を測定対象として抽出する。測定対象として抽出された20個の一次粒子の大きさを測定することで、一次粒子の円相当径が導出される。また、20個の一次粒子の円相当径を平均することで、一次粒子の平均粒子径が導出される。
【0070】
一実施形態によれば、調整液の水分を蒸発させることで、上記の固体の組成物が得られる。例えば、調整液を噴霧乾燥させる。これにより、調整液の水分を蒸発させることができる。その結果、上述された固体の組成物が得られる。他の実施形態によれば、調整液中に析出した固体の組成物と、調整液中の液体とを分離させることで、上記の固体の組成物が得られる。
【0071】
特に、第四級アンモニウム化合物の炭素数が18以下である場合である場合、第四級アンモニウム化合物が添加された直後に沈降するような大きな沈殿物を実質的に含まない調整液が得られる。これにより、噴霧乾燥により調整液の水分を蒸発させることができ、粉末の生産速度が向上する。また、固体の組成物を生産するための工程数が削減される。その結果、固体の組成物の生産効率が向上する。
【0072】
同様に、第四級アンモニウム化合物が主として第四級アンモニウム水酸化物を含む場合、噴霧乾燥により調整液の水分を蒸発させることができる。その結果、固体の組成物の生産効率が向上する。
【0073】
(IV.有機分散液)
次に、S128において、上述された固体の組成物と、有機溶媒とが混合される。より具体的には、上述された固体の組成物と、有機溶媒とが攪拌される。これにより、複合体の有機分散液が作製される。
【0074】
有機分散液は、(i)上記の固体の組成物、及び/又は、当該組成物に含まれる第四級アンモニウム塩の少なくとも一部が解離して得られる物質と、(ii)有機溶媒とを含む。有機分散液は、実質的に水を含まなくてよい。有機分散液における水の含有量は、有機溶媒100質量部に対して30質量部未満であってよく、有機溶媒100質量部に対して20質量部未満であってもよい。有機分散液は、公知の任意の分散剤を含んでもよい。
【0075】
有機分散液は、例えば、水性分散液と比較して、例えば、疎水性の基材への塗布性、乾燥性、油溶性化合物との混和性などに優れる。例えば、有機分散液(単に、分散液と称される場合がある。)を基材の表面に塗布した後、当該分散液を乾燥させることで、当該基材の表面に導電性被膜が形成される。基材の形状は特に限定されない。基材の形状としては、板状、フィルム状若しくシート状、糸状若しくは繊維状、網目状などが例示される。板状、フィルム状又はシート状の基材は、多孔質膜であってもよい。繊維状又は網目状の基材は、不織布であってもよい。
【0076】
分散液を塗布する方法としては、スピンコーター、バーコーター、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などが例示される。分散液を乾燥する方法としては、熱風循環炉、ホットプレートなどによる加熱が例示される。
【0077】
(d.有機溶媒)
有機溶媒としては、水溶性有機溶剤、非水溶性有機溶剤、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の混合溶剤などが例示される。水溶性有機溶剤は、例えば、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤である。非水溶性有機溶剤は、例えば、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。1種の水溶性有機溶剤が単独で使用されてもよく、2種以上の水溶性有機溶剤が併用されてもよい。1種の非水溶性有機溶剤が単独で使用されてもよく、2種以上の非水溶性有機溶剤が併用されてもよい。
【0078】
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、エステル系溶剤などが例示される。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(IPA)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどが例示される。エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが例示される。ケトン系溶剤としては、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコールなどが例示される。窒素原子含有溶剤としては、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどが例示される。エステル系溶剤としては、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなどが例示される。
【0079】
非水溶性有機溶剤としては、炭化水素系溶剤が例示される。炭化水素系溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが例示される。脂肪族炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどが例示される。芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどが例示される。
【0080】
より具体的には、有機溶媒として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(IPA)などが用いられる。有機溶媒の種類は、上述された固体の組成物に含まれる第四級アンモニウム塩又は第四級アンモニウム化合物の炭素数に基づいて決定されてよい。
【0081】
例えば、メタノールは、上記の炭素数が18以下である場合に用いられる。メタノールは、上記の炭素数が15以下である場合に用いられてもよく、上記の炭素数が12以下である場合に用いられてもよい。なお、上記の炭素数の下限値は4であってよい。
【0082】
例えば、エタノールは、上記の炭素数が12以上18以下である場合に用いられる。例えば、1-プロパノールは、上記の炭素数が13以上18以下である場合に用いられる。例えば、2-プロパノール(IPA)は、上記の炭素数が13以上18以下である場合に用いられる。
【0083】
(e.分散剤)
分散剤としては、低分子型界面活性剤、高分子型界面活性剤などが例示される。界面活性剤は、アニオン性であってもよく、ノニオン性であってもよく、カチオン性であってもよく、両性であってもよい。
【0084】
調整液は、水分散液の一例であってよい。調整液は、混合液の一例であってよい。固体の組成物は、複合体を含む固体の一例であってよい。複合体を含む固体は、高分子化合物の第四級アンモニウム塩を含む固体の一例であってよい。有機分散液は、分散液の一例であってよい。
【0085】
図2は、導電性材料を作製する方法の一例を概略的に示す。本実施形態によれば、まず、S222において、複合体の有機分散液が準備される。複合体の有機分散液は、例えば、図1に関連して説明された手順に基づいて準備される。
【0086】
次に、S224において、複合体の有機分散液を用いて導電性塗料が作製される。次に、S226において、基材の少なくとも一部に導電性塗料が塗布される。次に、S228において、導電性塗料が乾燥させられる。これにより、導電性部材が得られる。
【0087】
(V.導電性塗料)
本実施形態によれば、上記の複合体を含む導電性塗料が提供される。導電性塗料は、水系塗料であってもよく、溶剤系塗料であってもよく、反応硬化型塗料であってもよい。
【0088】
一実施形態において、導電性塗料は、例えば、(i)導電剤と、(ii)導電剤を分散又は溶解させて保持する分散媒又は溶媒とを含む。導電剤は、例えば、上記の複合体を含む。導電剤は、上記の複合体であってもよい。
【0089】
他の実施形態において、導電性塗料は、(i)導電剤と、(ii)高導電化剤及び被膜形成剤の少なくとも一方と、(iii)導電剤、並びに、高導電化剤及び被膜形成剤の少なくとも一方を分散又は溶解させて保持する分散媒又は溶媒とを含む。導電剤は、例えば、上記の複合体を含む。導電剤は、上記の複合体であってもよい。高導電化剤は、例えば、水溶性有機溶剤を含む。高導電化剤は、水溶性有機溶剤であってもよい。水溶性有機溶剤としては、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールなどが例示される。被膜形成剤としては、任意の樹脂が例示される。上記の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコールなどが例示される。
【0090】
導電性塗料は、例えば、分散媒又は溶媒100質量部に対して0.001質量部以上2質量部以下の導電剤を含む。導電性塗料は、分散媒又は溶媒100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下の導電剤を含んでもよい。
【0091】
上記の分散媒又は溶媒としては、ゾル、ゲル、液体などが例示される。上記の分散媒又は溶媒は、水であってもよく、有機溶媒であってよい。上記の分散媒又は溶媒は、単一の有機溶媒を含んでもよく、複数の種類の有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、上述された分散液に関連して説明された化合物と同様の化合物が使用され得る。
【0092】
導電性塗料は、分散剤をさらに含んでもよい。導電性塗料は、単一の分散剤を含んでもよく、複数の種類の分散剤を含んでもよい。分散剤としては、上述された分散液に関連して説明された化合物と同様の化合物が使用され得る。
【0093】
導電性塗料は、例えば、分散媒又は溶媒100質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下の分散剤を含む。導電性塗料は、分散媒又は溶媒100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下の分散剤を含んでもよい。
【0094】
導電性塗料は、導電性を大きく損なわない範囲で、各種の材料をさらに含んでよい。上記の材料としては、(i)ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、酸変性されていないポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料;(ii)炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタムなどの炭化物;(iii)窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウムなどの窒化物;(iv)ホウ化ジルコニウムなどのホウ化物;(v)酸化チタン(チタニア)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカなどの酸化物;(vi)チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸化合物;(vii)二硫化モリブデンなどの硫化物;(viii)フッ化マグネシウム、フッ化炭素などのフッ化物;(xi)ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸;(x)滑石、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、雲母などの無機材料などが例示される。
【0095】
上記の材料は、単独で用いられてもよく、複数の材料が併用されてもよい。導電性塗料における上記の材料の含有量は特に限定されるものではないが、当該含有量は、導電性塗料100質量%に対して50質量%以下であってよい。上記の含有量は、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
導電性塗料は、導電性を大きく損なわない範囲で、各種の添加剤をさらに含んでよい。上記の添加剤としては、チキソ性付与剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、粘着付与剤、加水分解防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料などが例示される。
【0097】
上記の添加剤は、単独で用いられてもよく、複数の添加剤が併用されてもよい。導電性塗料における添加剤の含有量は特に限定されるものではないが、当該含有量は、導電性塗料100質量%に対して50質量%以下であってよい。上記の含有量は、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
一実施形態において、導電性塗料が物品の表面に塗布されることで、当該物品に導電性が付与される。導電性塗料は、例えば、後述される導電性材料又は電子機器の作製に用いられる。他の実施形態において、導電性塗料が物品の表面に塗布されることで、当該物品に防汚機能又は撥水機能若しくは撥油機能が付与される。さらに他の実施形態において、導電性塗料が物品の表面に塗布されることで、当該物品に電磁波遮蔽機能が付与される。
【0099】
(VI.導電性材料)
本実施形態によれば、上記の複合体を含む導電性材料が提供される。上記の導電性材料は、例えば、板状又は線状の形状を有する。板状の導電性材料は、例えば、電子基板として用いられる。線状の導電性材料は、例えば、配線として用いられる。上記の導電性材料は、例えば、フィルム状若しくはシート状、糸状若しくは繊維状、又は、網目状の形状を有する。フィルム状又はシート状の導電性材料は、例えば、フレキシブル基板、偏光板、保護フィルム、キャリアテープ、指紋防止フィルムなどとして用いられる。糸状又は繊維状の導電性材料は、例えば、テキスタイル、カーペット、ベッドなどに用いられる。網目状の導電性材料は、例えば、電極、太陽電池などに用いられる。
【0100】
(VII.電子機器)
本実施形態によれば、上記の導電性材料を備える電子機器が提供される。電子機器としては、電子部品、当該電子部品を含む電気製品などが例示される。電子部品としては、有機EL素子、色素増感太陽電池パネル、電解コンデンサーなどが例示される。例えば、上記の複合体は、有機EL素子の透明電極層又は正孔注入層として機能する。電気製品としては、有機ELディスプレイ、太陽光発電装置、家電製品、携帯機器、通信機器などが例示される。
【実施例0101】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、下記の製造例・合成例又は実施例に限定されるものではない。また、特に断りの無い限り、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0102】
(製造例1)
6gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、120gのポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分10%、GPC-Mw30万)と、850gの水とを混合した。
【0103】
上記の混合液を攪拌しながら、上記の混合液に、64gの水に3.6gの硫酸第二鉄を溶解させて得られる硫酸第二鉄水溶液を添加した。この間、上記の混合液の温度は、30℃に維持された。次に、上記の混合液に、72gの水に8gの過硫酸アンモニウムを溶解させて得られる過硫酸アンモニウム水溶液を添加した。その後、混合液を4時間撹拌し、反応を進行させた。
【0104】
4時間の反応により得られた反応液に、160gの陽イオン交換樹脂と、160gの陰イオン交換樹脂とを添加して半日静置した。その後、ろ過により陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を除去し、固形分が1.2%となるように水を添加した。これにより、複合体及び水を含む原料液が得られた。
【0105】
(製造例2)
6gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、180gのポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分10%、GPC-Mw30万)と、900gの水とを混合した。
【0106】
上記の混合液を攪拌しながら、上記の混合液に、64gの水に3.6gの硫酸第二鉄を溶解させて得られる硫酸第二鉄水溶液を添加した。この間、上記の混合液の温度は、30℃に維持された。次に、上記の混合液に、72gの水に8gの過硫酸アンモニウムを溶解させて得られる過硫酸アンモニウム水溶液を添加した。その後、混合液を4時間撹拌し、反応を進行させた。
【0107】
4時間の反応により得られた反応液に、160gの陽イオン交換樹脂と、160gの陰イオン交換樹脂とを添加して半日静置した。その後、ろ過により陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を除去し、固形分が1.2%となるように水を添加した。これにより、複合体及び水を含む原料液が得られた。
【0108】
(製造例3)
ポリスチレンスルホン酸水溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸として、平均分子量が1万のポリスチレンスルホン酸(固形分10%、GPC-Mw1万)を使用した点を除き、製造例1と同様の手順により、複合体及び水を含む原料液を作製した。
【0109】
(製造例4)
ポリスチレンスルホン酸水溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸として、平均分子量が10万のポリスチレンスルホン酸(固形分10%、GPC-Mw10万)を使用した点を除き、製造例1と同様の手順により、複合体及び水を含む原料液を作製した。
【0110】
(製造例5)
ポリスチレンスルホン酸水溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸として、平均分子量が100万のポリスチレンスルホン酸(固形分10%、GPC-Mw100万)を使用した点を除き、製造例1と同様の手順により、複合体及び水を含む原料液を作製した。
【0111】
(実施例及び比較例)
(実施例1~11及び比較例1~4)
実施例1~11においては、原料液のpHが7になるまで、炭素数が18以下の第四級アンモニウム化合物の水溶液を原料液に添加した。比較例1においては、原料液のpHが約7になるまで、炭素数が19の第四級アンモニウム化合物の水溶液を原料液に添加した。比較例2~4においては、従来技術と同様に、原料液が10質量%を超える有機溶媒を含む原料液に、炭素数が19の第四級アンモニウム化合物の水溶液を添加した。実験及び分析は、室温(15~27度)で実施した。
【0112】
(実施例1)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)の40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加することで、原料液を中和した。つまり、原料液のpHが7になるまで、当該原料液に、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの40%水溶液を添加した。テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの40%水溶液の最終的な添加量は7.81gであった。
【0113】
次に、スプレードライ機(BUCHI製、B-290)を用いて、pH調整後の原料液(つまり、上述された調整液である。)を噴霧乾燥した。スプレードライ機の運転条件は、噴霧速度180g/h、入口温度110℃、出口温度60℃に設定した。これにより、粉末状の固体の組成物が得られた。
【0114】
上記の組成物の粒子をSEMにて拡大率8000倍で観察したところ、粒子径は、おおよそミクロンサイズ(0.5~6um)であった。また、粒子の表面は、凹凸状に陥没していた。
【0115】
次に、80gのIPA(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)の中に上記の固体の組成物0.4gを投入して得られた混合液に対して、高圧ホモジナイザー処理を5回繰り返すことで、プレ分散液を得た。その後、プレ分散液にIPA(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)を添加して、固形分濃度が0.4%となるように調整した。これにより、有機分散液が得られた。
【0116】
(実施例2)
有機分散液に用いる有機溶媒としてIPAの代わりにメタノールを用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0117】
(実施例3)
スプレードライ機の運転条件を、噴霧速度180g/h、入口温度200℃、出口温度100℃に設定した点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0118】
(実施例4)
イオン交換樹脂を用いて、C1534NBr(東京化成工業株式会社製)をイオン交換することにより、C1535NO(Dodecyltrimethylammonium hydroxide)の10%水溶液を準備した。TBAOHの40%水溶液の代わりに、上記のC1535NOの10%水溶液を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0119】
(実施例5)
イオン交換樹脂を用いて、C1330NBr(東京化成工業株式会社製)をイオン交換することにより、C1331NO(Decyltrimethyl ammonium hydroxide)の10%水溶液を準備した。TBAOHの40%水溶液の代わりに、上記のC1535NOの10%水溶液を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0120】
(実施例6)
TBAOHの40%水溶液の代わりに、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)の40%水溶液(東京化成工業株式会社製)を用いた点と、有機分散液に用いる有機溶媒としてIPAの代わりにメタノールを用いた点とを除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0121】
(実施例7)
製造例1で得られた原料液300gの代わりに、製造例2で得られた原料液300gを用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0122】
(実施例8)
製造例1で得られた原料液300gの代わりに、製造例2で得られた原料液300gを用いた点を除き、実施例6と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0123】
(実施例9)
製造例1で得られた原料液300gの代わりに、製造例3で得られた原料液300gを用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0124】
(実施例10)
製造例1で得られた原料液300gの代わりに、製造例4で得られた原料液300gを用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0125】
(実施例11)
製造例1で得られた原料液300gの代わりに、製造例5で得られた原料液300gを用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0126】
(参考例1)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にテトラブチルアンモニウムブロミドの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。テトラブチルアンモニウムブロミドの40%水溶液は、原料液の固形分と同等量になるまで添加した。テトラブチルアンモニウムブロミドの40%水溶液の最終的な添加量は9gであった。なお、テトラブチルアンモニウムブロミドの40%水溶液の添加終了時における原料液のpHは、1.8のままであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0127】
(参考例2)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にテトラブチルアンモニウムクロリドの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。テトラブチルアンモニウムクロリドの40%水溶液は、原料液の固形分と同等量になるまで添加した。テトラブチルアンモニウムクロリドの40%水溶液の最終的な添加量は9gであった。なお、テトラブチルアンモニウムクロリドの40%水溶液の添加終了時における原料液のpHは、1.8のままであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0128】
(比較例1)
TBAOHの40%水溶液の代わりに、C1943NO(Hexadecyltrimethylammonium Hydroxide)の40%水溶液(東京化成工業株式会社製)を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0129】
(比較例2)
製造例1で得られた原料液300gと、300gのメタノール(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)との混合液を攪拌しながら、当該混合液にC1943NO(Hexadecyltrimethylammonium Hydroxide)の40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。しかしながら、混合液にC1943NOの40%水溶液を添加した直後から、混合液中に異物が発生した。そこで、添加操作及び攪拌操作を中断したところ、混合液は、速やかに、凝集物の相と、液相との2相に分離した。PSS中のSSユニットと、添加物中の第四級アンモニウム化合物とのモル比は、1:1であった。
【0130】
(比較例3)
製造例1で得られた原料液300gと、300gのメチルエチルケトン(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)との混合液を攪拌しながら、当該混合液にC1943NO(Hexadecyltrimethylammonium Hydroxide)の40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。しかしながら、混合液にC1943NOの40%水溶液を添加した直後から、混合液中に異物が発生した。そこで、添加操作及び攪拌操作を中断したところ、混合液は、速やかに、凝集物の相と、液相との2相に分離した。PSS中のSSユニットと、添加物中の第四級アンモニウム化合物とのモル比は、1:1であった。
【0131】
(比較例4)
製造例1で得られた原料液300gと、300gのIPA(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)との混合液を攪拌しながら、当該混合液にC1943NO(Hexadecyltrimethylammonium Hydroxide)の40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。しかしながら、混合液にC1943NOの40%水溶液を添加した直後から、混合液中に異物が発生した。そこで、添加操作及び攪拌操作を中断したところ、混合液は、速やかに、凝集物の相と、液相との2相に分離した。PSS中のSSユニットと、添加物中の第四級アンモニウム化合物とのモル比は、1:1であった。
【0132】
(評価)
(有機分散液の分散性)
固形分濃度を調整された有機分散液を12時間静置した後、目視により有機分散液の状態を確認した。
【0133】
(有機分散液を用いて作製された塗工膜の物性)
有機分散液をメタノール(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)で2倍に希釈して、塗工液を作製した。コロナ処理が実施されていないPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)の上に、バーコーターNo.4を用いて、1mlの塗工液を塗布した。塗工液が塗布されたPETフィルムを、100℃のオーブンで1分間乾燥させた。これにより、塗工膜を作製した。
【0134】
次に、低抵抗抵抗率計(日東精工エアナリティック株式会社製、ロレスタ)を用いて、塗工膜の表面抵抗を測定した。具体的には、各塗工膜の表面にASPプローブを押し当てながら、10Vの電圧を印加した。塗工膜の表面抵抗の値が1×10Ω/□以下である場合、塗工膜の表面抵抗が良好であると判定した。
【0135】
また、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH-5000)を用いて、塗工膜のHAZE値を測定した。塗工膜のHAZE値が5%以下である場合、塗工膜のHAZE値が良好であると判定した。
【0136】
実施例1~6における有機分散液の作製条件と、評価結果とを表1に示す。実施例7~11における有機分散液の作製条件と、評価結果とを表2に示す。参考例1~2における有機分散液の作製条件と、評価結果とを表3に示す。比較例1~4における有機分散液の作製条件と、評価結果とを表3に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
実施例1~11に示されるとおり、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOTと称される場合がある。)及びポリスチレンスルホン酸(PSSと称される場合がある。)の複合体(PEDOT/PSSと称される場合がある。)の水分散液に、炭素数の比較的小さな第四級アンモニウム水酸化物を添加することで、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。また、上記の調整液を噴霧乾燥させることで、粉末状の固体粒子が得られた。さらに、上記の固体粒子を有機溶媒中に分散させることで、有機分散液が得られた。上記の有機分散液を用いて作製された塗工膜は、電子部品及び/又は帯電防止剤として利用可能な程度の導電性を有していた。また、塗工膜のHAZE値は4.0未満であり、濁りの少ない塗膜が得られた。これにより、塗工液中で固体粒子が十分に分散していたことが推測される。
【0141】
参考例1及び2に示されるとおり、PEDOT/PSSの水分散液に、炭素数の比較的小さな第四級アンモニウム塩化物又は第四級アンモニウム臭化物を添加することで、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。また、参考例1の調整液を噴霧乾燥させることで、粉末状の固体粒子が得られた。参考例2の調整液を噴霧乾燥させることで、合一化した固体の組成物が得られた。
【0142】
参考例1及び2において得られた固体粒子と、IPAとを混合したところ、目視により沈殿物が確認された。上記の固体粒子及びIPAを混合して得られた塗工液を用いて作製された塗工膜のHAZE値は、4.0以上であった。また、上記の塗工膜は、表面抵抗が低抵抗抵抗率計の測定限界値(1×10Ω/□)を超えていた。
【0143】
一方、比較例1に示されるとおり、PEDOT/PSSの水分散液に添加される第四級アンモニウム水酸化物の炭素数が19になると、調整液の作製中にEDOTの沈殿物が発生した。また、スプレードライ機を用いて、調整液を噴霧乾燥することができなかった。
【0144】
同様に、比較例2~4に示されるとおり、PEDOT/PSSの水分散液に、第四級アンモニウム水酸化物と、比較的多量の有機溶媒とが添加されると、調整液の作製中にEDOTの沈殿物が発生した。また、スプレードライ機を用いて、調整液を噴霧乾燥することができなかった。
【0145】
(実施例12~14)
実施例12~14においては、原料液のpHが予め定められた値になるまで、第四級アンモニウム化合物の水溶液を原料液に添加した。実験及び分析は、室温(15~27度)で実施した。
(実施例12)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にTBAOHの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。本実施例においては、原料液のpHが3になるまで、当該原料液にTBAOHの40%水溶液を添加した。TBAOHの40%水溶液の最終的な添加量は6.03gであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0146】
(実施例13)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にTBAOHの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。本実施例においては、原料液のpHが4になるまで、当該原料液にTBAOHの40%水溶液を添加した。TBAOHの40%水溶液の最終的な添加量は7.21gであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0147】
(実施例14)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にTBAOHの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。本実施例においては、原料液のpHが11になるまで、当該原料液にTBAOHの40%水溶液を添加した。TBAOHの40%水溶液の最終的な添加量は9.42gであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0148】
(参考例3)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にTBAOHの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。本実施例においては、原料液のpHが2.5になるまで、当該原料液にTBAOHの40%水溶液を添加した。TBAOHの40%水溶液の最終的な添加量は1.06gであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0149】
(参考例4)
製造例1で得られた原料液300gを攪拌しながら、当該原料液にTBAOHの40%水溶液(東京化成工業株式会社製)をゆっくりと添加した。本実施例においては、原料液のpHが12になるまで、当該原料液にTBAOHの40%水溶液を添加した。TBAOHの40%水溶液の最終的な添加量は10.78gであった。その後、実施例1と同様の手順により、有機分散液を作製した。
【0150】
(評価)
実施例12~14及び参考例3~4のそれぞれについて、実施例1と同様の手順により、有機分散液の分散性と、当該有機分散液を用いて作製された塗工膜の物性とを評価した。実施例12~14及び参考例3~4における有機分散液の作製条件と、評価結果とを表4に示す。
【0151】
【表4】
【0152】
実施例12~14に示されるとおり、PSSに含まれるスチレンスルホン酸ユニット(SSユニットと称される場合がある。)のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比が1:0.125よりも大きく1:1.27よりも小さい場合には、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。また、調整液のpHが2.5超12未満である場合には、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。さらに、上記の調整液を噴霧乾燥させることで、粉末状の固体粒子が得られた。
【0153】
また、上記の固体粒子をIPA中に分散させることで、有機分散液が得られた。上記の有機分散液を用いて作製された塗工膜は、電子部品として利用可能な程度の導電性を有しており、当該塗工膜のHAZE値も、4.0以下であった。
【0154】
参考例3に示されるとおり、PSSに含まれるスチレンスルホン酸ユニット(SSユニットと称される場合がある。)のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比が1:0.125の場合であっても、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。また、調整液のpHが2.5の場合であっても、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。さらに、上記の調整液を噴霧乾燥させることで、粉末状の固体粒子が得られた。
【0155】
参考例3において得られた固体粒子と、IPAとを混合したところ、目視により沈殿物が確認された。上記の固体粒子及びIPAを混合して得られた塗工液を用いて作製された塗工膜のHAZE値は5.1であった。また、上記の塗工膜は、表面抵抗が低抵抗抵抗率計の測定限界値(1×10Ω/□)を超えていた。
【0156】
参考例4に示されるとおり、PSSに含まれるスチレンスルホン酸ユニット(SSユニットと称される場合がある。)のモル数に対する第四級アンモニウム化合物のモル数の比が1:1.27の場合であっても、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。また、調整液のpHが12の場合であっても、EDOTの沈殿物を実質的に含まない調整液が得られた。さらに、上記の調整液を噴霧乾燥させることで、合一化した固体の組成物が得られた。
【0157】
参考例4において得られた固体粒子と、IPAとを混合したところ、目視によりゲル状の大きな沈殿物の塊が確認された。上記の固体粒子及びIPAを混合して得られた塗工液を用いて作製された塗工膜のHAZE値は4.0であった。上記の塗工膜は、表面抵抗が低抵抗抵抗率計の測定限界値(1×10Ω/□)を超えていた。
【0158】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0159】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
図1
図2