(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131760
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】モータースポーツ用タイヤ調整装置及びモータースポーツ用タイヤ調整方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240920BHJP
B23B 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60C19/00 K
B23B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042205
(22)【出願日】2023-03-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月7日に鈴木隆介が筑波サーキット「REVSPEED筑波スーパーバトル」会場にて鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削ぐ試験を行った。 令和4年12月7日の「REVSPEED筑波スーパーバトル」会場における試験のときに、鈴木隆介は、斉藤辰矢(「筑波タイヤサービス」の代表)から、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の動画を撮影しSNSで公開したいという取材を受け、斉藤辰矢は、その取材で撮影した動画に基づいてツイッターの「筑波タイヤサービス(斉藤)」というアカウントによりそのモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://twitter.com/tsukuba_tire/status/1600443048667672577。 令和4年11月29日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の部品の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1597483761926836224。 令和4年12月1日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1598257926447460352。 令和4年12月22日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1605592547723603968。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月28日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1607990589248933888。 令和4年12月31日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1609123698707148800。 令和5年1月7日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1611574392936624128。 令和4年12月1日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Clnpll6Pua4/。 令和4年12月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/CmXo7aaPZHw/。 令和4年12月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部に関する漫画を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/CmXy8qKvfcW/。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月19日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co1vPctv0V7/。 令和5年2月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部に関する漫画を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co3j5j0vkqf/。 令和5年2月11日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社内にて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用して、試験を行った。 令和5年2月11日の金鈴精工株式会社内における試験のときに、鈴木隆介は、小林翔から、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の動画を撮影しインスタグラムで公開したいという取材を受け、小林翔は、その取材で撮影した動画に基づいてインスタグラムの「shokobaya」というアカウントによりそのモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co9PgAmp1PP/。 令和5年2月18日に鈴木隆介が、Attack筑波2023の会場内の展示ブースにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月24日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社がスポンサーとなっているAttack筑波2023のスポンサーページ中の金鈴精工株式会社のページにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.timeattack.co.jp/partner/kanesuzu。 令和4年12月27日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社のホームページにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.kanesuzu.co.jp/blog/20221227122026/。 令和4年12月27日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社内にて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用して、試験を行った。 令和4年12月27日の金鈴精工株式会社内における試験のときに、鈴木隆介は、田村健一から、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の写真及び動画を撮影する非公開の取材を受け、田村健一は、その取材で撮影した動画に基づいてツイッターの「Peri」というアカウントによりそのモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://twitter.com/Peri787b/status/1634502132761255937。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月7日に鈴木隆介が筑波サーキット「REVSPEED筑波スーパーバトル」会場にて鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削ぐ試験を行った。令和4年12月7日の「REVSPEED筑波スーパーバトル」会場における試験のときに、鈴木隆介は、斉藤辰矢(「筑波タイヤサービス」の代表)から、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の動画を撮影しSNSで公開したいという取材を受け、斉藤辰矢は、その取材で撮影した動画に基づいてツイッターの「筑波タイヤサービス(斉藤)」というアカウントによりそのモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://twitter.com/tsukuba_tire/status/1600443048667672577。令和4年11月29日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の部品の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1597483761926836224。令和4年12月1日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1598257926447460352。令和4年12月22日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1605592547723603968。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月28日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1607990589248933888。令和4年12月31日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1609123698707148800。令和5年1月7日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1611574392936624128。令和4年12月1日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Clnpll6Pua4/。令和4年12月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/CmXo7aaPZHw/。令和4年12月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部に関する漫画を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/CmXy8qKvfcW/。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月19日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co1vPctv0V7/。令和5年2月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部に関する漫画を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co3j5j0vkqf/。令和5年2月11日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社内にて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用して、試験を行った。令和5年2月11日の金鈴精工株式会社内における試験のときに、鈴木隆介は、小林翔から、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の動画を撮影しインスタグラムで公開したいという取材を受け、小林翔は、その取材で撮影した動画に基づいてインスタグラムの「shokobaya」というアカウントによりそのモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co9PgAmp1PP/。令和5年2月18日に鈴木隆介が、Attack筑波2023の会場内の展示ブースにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月24日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社がスポンサーとなっているAttack筑波2023のスポンサーページ中の金鈴精工株式会社のページにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.timeattack.co.jp/partner/kanesuzu。令和4年12月27日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社のホームページにおいて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の一部及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.kanesuzu.co.jp/blog/20221227122026/。令和4年12月27日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社内にて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用して、試験を行った。令和4年12月27日の金鈴精工株式会社内における試験のときに、鈴木隆介は、田村健一から、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の写真及び動画を撮影する非公開の取材を受け、田村健一は、その取材で撮影した動画に基づいてツイッターの「Peri」というアカウントによりそのモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://twitter.com/Peri787b/status/1634502132761255937。令和4年6月28日に鈴木隆介が、第6回事業再構築補助金の申請書内にて、鈴木隆介が発明したモータースポーツ用タイヤ調整装置の試作機及びモータースポーツ用タイヤ調整方法の一部の説明を行った。
(71)【出願人】
【識別番号】523079303
【氏名又は名称】金鈴精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆介
【テーマコード(参考)】
3C045
3D131
【Fターム(参考)】
3C045CA03
3C045DA07
3D131BB09
3D131BC11
3D131LA40
(57)【要約】
【課題】上記タイヤの表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整できるモータースポーツ用タイヤ調整装置及びモータースポーツ用タイヤ調整方法を提供する。
【解決手段】本発明のモータースポーツ用タイヤ調整装置1は、ブレードを第1方向に移動できる第1調整機構34と、上記ブレードを第2方向に移動できる第2調整機構36と、ブレード角調整機構38と、を備え、ブレード20がブレード角調整機構38により傾きが調整されると共に、第1調整機構34及び第2調整機構36により位置決めされ、タイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータースポーツ用のタイヤを調整するモータースポーツ用タイヤ調整装置であって、
上記タイヤの表面を削ぐブレードと、
上記ブレードを取り付けるブレード取付部と、
上記ブレード取付部を回転させるブレード回転駆動部と、
上記タイヤを保持するタイヤ保持部と、
上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転駆動部と、
上記ブレードを上記タイヤに向かう第1方向に移動できるように構成されている第1調整機構と、
上記ブレードを上記第1方向と直交する第2方向に移動できるように構成されている第2調整機構と、
上記第1方向と上記第2方向との間で上記ブレードの傾きを調整できるように構成されているブレード角調整機構と、を備え、
上記ブレードが上記ブレード角調整機構により傾きが調整されると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構により位置決めされ、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整する、モータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項2】
上記ブレード角調整機構が、上記ブレードの刃先を、上記タイヤの中心軸線と平行な角度に調整すると共に、
上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤのトレッド部に当てるように位置決めさせ、
上記ブレードにより、上記タイヤの上記トレッド部に上記中心軸線と平行方向に延びる削ぎ面が形成される、請求項1に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項3】
上記ブレード角調整機構は、上記第1方向と上記第2方向との間で、上記ブレードの刃先に沿う刃先線を、上記タイヤの中心軸線に対して傾けた角度に調整すると共に、
上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤのトレッド部に当てるように位置決めさせ、
上記ブレードにより、上記タイヤの上記トレッド部に上記中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成される、請求項1に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項4】
上記ブレード角調整機構は、上記第1方向と上記第2方向との間で、上記ブレードの刃先を、上記タイヤの中心軸線に対して傾けた角度に調整すると共に、
上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤの上記ショルダ部に当てるように位置決めさせ、
上記ブレードにより、上記タイヤの上記ショルダ部に上記中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成される、請求項1に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項5】
上記ブレード角調整機構は、上記ブレードの傾きを、水平面上において上記タイヤの中心軸線に対して-40度~+40度までの範囲内の角度とできるように構成されている、請求項1に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項6】
さらに、上記ブレードを上下方向において斜めに傾けるように構成されている第3調整機構を備える、請求項1に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項7】
さらに、上記第1調整機構、上記第2調整機構及び上記ブレード角調整機構を載せる構造体と、
上記構造体を移動可能とする可動部と、を備え、上記タイヤを保持していない状態での重量が70kg~約200kgの範囲内の重量とされている、請求項1に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項8】
さらに、液体を溜める液溜め部とを備え、上記液溜め部は、上記タイヤの下部を液体に浸すように配置される、請求項1乃至7の何れか1項に記載のモータースポーツ用タイヤ調整装置。
【請求項9】
モータースポーツ用のタイヤを調整するモータースポーツ用タイヤ調整方法であって、
上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転ステップと、
ブレードを取り付けたブレード取付部を回転させるブレード回転ステップと、
第2調整機構により上記ブレードを上記タイヤに向かう第1方向と直交する第2方向に移動させる第2方向調整ステップと、
ブレード角調整機構により上記第1方向と上記第2方向との間で上記ブレードの傾きを調整させるブレード角調整ステップと、
第1調整機構により上記ブレードを上記第1方向に移動させる第1方向調整ステップと、
上記ブレード角調整ステップにより傾きが調整されると共に、上記第1方向調整ステップ及び上記第2方向調整ステップにより位置決めされる上記ブレードにより、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整するタイヤ調整ステップと、を備えている、モータースポーツ用タイヤ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータースポーツ用タイヤ調整装置及びモータースポーツ用タイヤ調整方法、特にモータースポーツ用のタイヤを調整するモータースポーツ用タイヤ調整装置及びモータースポーツ用タイヤ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、低下したグリップ力を回復させるため、研磨位置及び研磨量を目視しながらタイヤの表面を研磨する自動車用タイヤの表面研磨装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような自動車用タイヤの表面研磨装置においては、タイヤの表面を研磨することにより低下したグリップ力を回復させるにとどまっていた。
【0005】
サーキットでのタイムトライアル走行やレース等のようなタイヤの性能を極限まで引き出したい状況でタイヤを使用したい場合がある。このようなタイムトライアル走行等の状況では、例えば0.1秒、例えば0.01秒でもタイムを縮め、速いタイムを出すことにより勝敗が決する。よって、公道走行用の条件を満たすタイヤ性能をはるかに上回る、モータースポーツ用にタイヤのポテンシャルを限界近くまで引き出すような極限のタイヤ性能が求められる。
【0006】
また、サーキット走行後のヒートサイクルによる熱劣化部分がタイヤ表面に生じ、タイヤの本来の走行性能が引き出せない場合がある。これに対し、本発明者は、特許文献1に示すような自動車用タイヤの表面研磨装置により、タイヤ表面の熱劣化部分を研磨して除去できないかの検討を行った。
しかしながら、タイヤの表面を研磨する場合に、研磨により熱が発生するため、研磨時に加熱による劣化をタイヤ表面にさらに生じさせてしまうという問題が生じることを新たに見出した。
【0007】
また、従来技術として、実際の摩耗状態を再現するようにタイヤを研磨して削る技術も知られている。しかしながら、このような研磨して削る技術により、単にタイヤの形状を測定してメーカーの設計通りの形を単に再現したのでは、モータースポーツ用にタイヤのポテンシャルを限界近くまで引き出すことができないという問題がある。
【0008】
本発明の発明者は、加熱による劣化をタイヤ表面に生じにくくしつつもさらに、モータースポーツ用にタイヤのポテンシャルを限界近くまで引き出すために、積極的にタイヤのトレッド部やショルダ部の形状を調整し、所望の走行特性を有するような形状に調整できないかという課題に対し鋭意研究を行った。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、上記タイヤの表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用の上記タイヤを、積極的にタイヤのトレッド部やショルダ部の形状を調整し、所望の走行特性を有するような形状に調整できるモータースポーツ用タイヤ調整装置、及びモータースポーツ用タイヤ調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、モータースポーツ用のタイヤを調整するモータースポーツ用タイヤ調整装置であって、上記タイヤの表面を削ぐブレードと、上記ブレードを取り付けるブレード取付部と、上記ブレード取付部を回転させるブレード回転駆動部と、上記タイヤを保持するタイヤ保持部と、上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転駆動部と、上記ブレードを上記タイヤに向かう第1方向に移動できるように構成されている第1調整機構と、上記ブレードを上記第1方向と直交する第2方向に移動できるように構成されている第2調整機構と、上記第1方向と上記第2方向との間で上記ブレードの傾きを調整できるように構成されているブレード角調整機構と、を備え、上記ブレードが上記ブレード角調整機構により傾きが調整されると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構により位置決めされ、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整する。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレードが、上記ブレード角調整機構により傾きが調整されると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構により位置決めされ、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整することができる。これにより、上記タイヤの表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するように調整できる。例えば、タイヤのトレッド部をタイヤの軸線方向と平行な直線部を形成するように調整でき、例えば、タイヤのトレッド部の接地面を増やすことができる。また、例えば、タイヤのトレッド部の一部をタイヤの軸線方向からわずかに傾けた角度の直線部を形成するように調整でき、例えば、トレッド部にキャンバ角度に合わせた直線部を形成することが可能となる。よって、タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤの熱劣化を抑制しつつ、極めて高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整できる。また、例えば、比較的容易に、タイヤの形状を自在に変形させることが可能となることにより、ドライバやチームがタイヤの走行特性を変更してトライしやすくでき、ドライバの特性やコンディションに合わせてタイヤの本来の性能を極限まで引き出すよりよいセッティングに到達しやすくできる。よって、例えば、本発明の一実施形態によれば、タイヤの表面を削ぐことにより積極的にタイヤのトレッド部やショルダ部の形状を変更するように調整し、モータースポーツ用のタイヤ形状の変更を含めてタイヤをセッティング又は調整できる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード角調整機構が、上記ブレードの刃先を、上記タイヤの中心軸線と平行な角度に調整すると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤのトレッド部に当てるように位置決めさせ、上記ブレードにより、上記タイヤの上記トレッド部に上記中心軸線と平行方向に延びる削ぎ面が形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレードにより、上記タイヤの上記トレッド部に上記中心軸線と平行方向に延びる削ぎ面が形成される。これにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に接地を向上する走行面を形成しやすくできる。さらに、回転するタイヤに上記第1調整機構及び上記第2調整機構により位置決めされたブレードが当てられるので、タイヤの走行面を所定の径を有する円に近づけやすくできる。これにより、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整できる。例えば、タイヤのトレッド部をタイヤの軸線方向と平行な直線部を形成するように調整でき、タイヤの接地面を増やしやすくでき、走行性能を向上できる。よって、タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤの熱劣化を抑制しつつ、さらに高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整できる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード角調整機構は、上記第1方向と上記第2方向との間で、上記ブレードの刃先に沿う刃先線を、上記タイヤの中心軸線に対して傾けた角度に調整すると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤのトレッド部に当てるように位置決めさせ、上記ブレードにより、上記タイヤの上記トレッド部に上記中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレード角調整機構は、上記第1方向と上記第2方向との間で、上記ブレードの刃先に沿う刃先線を、上記タイヤの中心軸線に対して傾けた角度に調整すると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤの上記トレッド部に当てるように位置決めさせ、上記ブレードにより上記タイヤの上記トレッド部に上記中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成される。これにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に所定角度の削ぎ面を形成し、タイヤの走行性能をより高い次元で調整できる。例えば、キャンバ角度に合わせた直線部の削ぎ面をトレッド部に形成することにより、タイヤの路面への接地面積をより増加させ、タイヤのグリップ性能をより向上させることができる。よって、さらに高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整できる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード角調整機構は、上記第1方向と上記第2方向との間で、上記ブレードの刃先を、上記タイヤの中心軸線に対して傾けた角度に調整すると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤの上記ショルダ部に当てるように位置決めさせ、上記ブレードにより、上記タイヤの上記ショルダ部に上記中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレード角調整機構は、上記第1方向と上記第2方向との間で、上記ブレードの刃先に沿う刃先線を、上記タイヤの中心軸線に対して傾けた角度に調整すると共に、上記第1調整機構及び上記第2調整機構は、上記ブレードを上記タイヤの上記ショルダ部に当てるように位置決めさせ、上記ブレードにより、上記タイヤの上記ショルダ部に上記中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成されることができる。これにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのショルダ部に所定角度の削ぎ面を形成し、タイヤの走行性能をより高い次元で調整できる。例えば、タイヤのトレッド部を削ぐことにより、タイヤのショルダ部の曲がりが比較的鋭角となるような場合に、コーナリング時にショルダ部が走行面にかかる(巻き込まれる)ような形で生じさせる振動や操舵性能の低下を、ショルダ部に所定角度の削ぎ面を形成することにより、抑制できる。よって、コーナリング時のタイヤの走行性能の低下を抑制でき、さらに高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整できる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード角調整機構は、上記ブレードの傾きを、水平面上において上記タイヤの中心軸線に対して-40度~+40度までの範囲内の角度とできるように構成されている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレード角調整機構は、上記ブレードの傾きを、水平面上において上記タイヤの中心軸線に対して-40度~+40度までの範囲内の角度とできるように構成されている。これにより、トレッド部に中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成できる、又はショルダ部に中心軸線に対して所定角度の削ぎ面が形成できる。よって、一つの装置により、タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤの熱劣化を抑制しつつ、極めて高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整しやすくできる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、さらに、上記ブレードを上下方向において斜めに傾けるように構成されている第3調整機構を備える。
モータースポーツにおけるスポーツ走行後(例えば競技での高速走行後1日程度まではタイヤの温度が比較的高い状態となる)や外気温が高くタイヤの温度が比較的高いとき、所定幅(例えば約80mmの幅)のブレード20の刃先全体をタイヤの表面に当て、例えば0.5mm以上の深さまで削ろうとすると、ゴムが負荷に耐え切れず、ゴムがいわゆるストリングチーズのように柔らかく裂けて裂け目が広がってしまう問題が生じる場合がある。このような課題に対し、本発明の一実施形態によれば、モータースポーツ用タイヤ調整装置は、さらに、上記ブレードを上下方向において斜めに傾けるように構成されている第3調整機構を備える。これにより、削ぐときのタイヤの表面への抵抗による負荷を抑制し、タイヤの表面が裂けることを抑制できる。また、ブレードを上下方向に斜めに傾けた場合であっても、依然として、ブレード20によりタイヤの表面にタイヤの幅方向に直線部を形成しやすくできる。よって、このような構造によれば、タイヤ削ぎの効率化と信頼性の向上とを両立することができる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、さらに、上記第1調整機構、上記第2調整機構及び上記ブレード角調整機構を載せる構造体と、上記構造体を移動可能とする可動部と、を備え、上記タイヤを保持していない状態での重量が70kg~約200kgの範囲内の重量とされている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、さらに、上記第1調整機構、上記第2調整機構及び上記ブレード角調整機構を載せる構造体と、上記構造体を移動可能とする可動部と、を備え、上記タイヤを保持していない状態での重量が70kg~約200kgの範囲内の重量とされている。これにより、モータースポーツ用タイヤ調整装置を大人2人から4人程度の人数によりサーキット等に持ち込みやすくでき、現場で上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整できる。よって、工場にタイヤを持ち帰って調整するよりも格段にモータースポーツ用タイヤの調整のしやすさや効率を向上できる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、さらに、液体を溜める液溜め部とを備え、上記液溜め部は、上記タイヤの下部を液体に浸すように配置される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、モータースポーツ用タイヤ調整装置は、さらに、液体を溜める液溜め部とを備え、上記液溜め部は、上記タイヤの下部を液体に浸すように配置される。これにより、タイヤを冷却してブレードにより削ぎやすくできると共に、例えば液体の成分によりブレードの刃がタイヤをスムーズに削ぎやすくできる。よって、モータースポーツ用の上記タイヤを、より高い精度で、所望の走行特性を有するような形状に調整しやすくできる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、モータースポーツ用のタイヤを調整するモータースポーツ用タイヤ調整方法であって、上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転ステップと、ブレードを取り付けたブレード取付部を回転させるブレード回転ステップと、第2調整機構により上記ブレードを上記タイヤに向かう第1方向と直交する第2方向に移動させる第2方向調整ステップと、ブレード角調整機構により上記第1方向と上記第2方向との間で上記ブレードの傾きを調整させるブレード角調整ステップと、第1調整機構により上記ブレードを上記第1方向に移動させる第1方向調整ステップと、上記ブレード角調整ステップにより傾きが調整されると共に、上記第1方向調整ステップ及び上記第2方向調整ステップにより位置決めされる上記ブレードにより、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整するタイヤ調整ステップと、を備えている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレード角調整ステップにより傾きが調整されると共に、上記第1方向調整ステップ及び上記第2方向調整ステップにより位置決めされる上記ブレードにより、上記タイヤの表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整することができる。これにより、上記タイヤの表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用の上記タイヤを、所望の走行特性を有するように調整できる。例えば、タイヤのトレッド部をタイヤの軸線方向と平行な直線部を形成するように調整でき、例えば、タイヤのトレッド部の接地面を増やすことができる。また、例えば、タイヤのトレッド部の一部をタイヤの軸線方向からわずかに傾けた角度の直線部を形成するように調整でき、例えば、トレッド部にキャンバ角度に合わせた直線部を形成することが可能となる。よって、タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤの熱劣化を抑制しつつ、極めて高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整できる。また、例えば、比較的容易に、タイヤの形状を自在に変形させることが可能となることにより、ドライバやチームがタイヤの走行特性を変更してトライしやすくでき、ドライバの特性やコンディションに合わせてタイヤの本来の性能を極限まで引き出すよりよいセッティングに到達しやすくできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のモータースポーツ用タイヤ調整装置、及び、モータースポーツ用タイヤ調整方法によれば、タイヤの表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用のタイヤを、所望の走行特性を有するような形状に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の外観斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の外観斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の部分側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置のブレード取付部及びブレードを分解した状態で、一方側のブレード及びブレード取付部等を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置のブレード取付部及びブレードの断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置のブレードがタイヤを削ぐためにタイヤに当たる直前の状態における、ブレード取付部及びブレードの部分拡大側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整方法の各ステップを示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置によりタイヤのトレッド部が削がれ、中心軸線と平行なトレッド部削ぎ面が形成されている状態を、タイヤの断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置によりタイヤのショルダ部が削がれ、ショルダ部削ぎ面が形成されている状態を、タイヤの断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置によりタイヤのトレッド部が削がれ、トレッド部においてトレッド部傾斜削ぎ面が形成されている状態を、タイヤの断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置によりタイヤのショルダ部が削がれ、第1ショルダ部削ぎ面と第2ショルダ部削ぎ面とが形成されている状態を、タイヤの断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置について説明する。
先ず、
図1は、本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の外観斜視図であり、
図2は本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の外観斜視図であり、
図3は本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の上面図であり、
図4は本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置の部分側面図であり、
図5は本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置のブレード取付部及びブレードを分解した状態で、一方側のブレード及びブレード取付部等を示す分解斜視図であり、
図6は本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置のブレード取付部及びブレードの断面図である。
以下、本発明の一実施形態における説明において、ブレード及びブレード取付部側からタイヤを見て手前側を前方側とし、タイヤ側(奥側)を奥側とし、ブレード及びブレード取付部側からタイヤを見て右側を右側とし、同様にタイヤを見て左側を左側として説明している。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるモータースポーツ用タイヤ調整装置1は、モータースポーツ用のタイヤを調整するタイヤ調整装置である。モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、タイヤ2の表面を削ぐように切削して調整する。モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、タイヤ2の表面を後述するブレードで削ぐように切削する。
【0023】
タイヤ2は、自動車の走行用のタイヤである。タイヤ2は、トレッド部4やショルダ部5を備えた外周部6と、外周部6を支持するホイール部8と、ホイール部8に設けられたボルト取付部10とを備えている。外周部6は、主に路面と接地するトレッド部4を備えている。トレッド部4やショルダ部5は主にゴム、例えば合成ゴムにより形成されている。トレッド部4やショルダ部5は、合成樹脂等により形成されていてもよい。タイヤ2は、4輪自動車用のタイヤであるが、2輪車のタイヤにも適用可能である。
【0024】
タイヤ2は、スポーツタイヤであり、例えばいわゆるハイグリップタイプのラジアルタイヤである。例えば、タイヤ2は、モータースポーツ、例えばサーキットでのタイムアタック走行やレース走行等に用いられるような、セミレーシングタイヤ、セミスリックタイヤ、スリックタイヤ、ハイグリップタイヤ等である。タイヤは、自動車の性能及びタイヤの走行性能の限界近くまでの性能を引き出して、自動車を走行する状況、例えばサーキットでのタイムアタック走行やレース走行等に用いられるようなタイヤである。よって、タイヤ2は、いわゆるコンフォートタイヤやいわゆるスタッドレスタイヤとは異なるタイプのモータースポーツ用のタイヤを対象としている。タイヤ2は、例えば590mm~720mmの範囲内の径を備えている。タイヤ2は、例えば150mm~340mmの範囲内の幅、また例えば220mm~310mmの範囲内の幅を備えている。
【0025】
本実施形態におけるタイヤ2は、スポーツタイヤ等であり、本技術は、後述するようにスポーツタイヤの走行性能を引き出す走行面を熱劣化を生じにくく形成すると共に所望の走行特性を有する形状に調整する。よって、本技術は、いわゆる再生用タイヤ(リトレッドタイヤ)に対するトレッドゴムを削り新しいトレッドを貼付けるための接着面をつくる技術とは異なる技術である。
【0026】
ボルト取付部10は、ボルトやナットによりタイヤ保持部に固定される。例えば、ボルト取付部10は、例えば5つのボルトにより固定されるような車両のタイヤ取付部と同様の構造を有している。変形例としてボルト取付部10は、例えば1つの固定部によりタイヤ保持部に固定されてもよい。
【0027】
モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、タイヤ2を保持するタイヤ保持部12と、タイヤ2を保持した状態でタイヤ2を予め定めた回転方向に回転させるタイヤ回転駆動部14と、タイヤ保持部12やタイヤ回転駆動部14を配置する構造体16と、を備えている。
【0028】
タイヤ保持部12は、タイヤを取り付ける取付部を形成している。タイヤ保持部12の中心軸線X1(
図3参照)がタイヤ2の中心軸線X2と概ね一致するように、タイヤ2がタイヤ保持部12に取り付けられている。タイヤ保持部12は、一般的な車両におけるタイヤ2の取付部と同様の構造を有し、複数のボルトによりタイヤのホイール部8とタイヤ保持部12とを固定している。タイヤ保持部12は、より簡易な取付部材、例えばホイール中心の穴を利用してボルトやナット1か所で固定できるようなセンターロック方式によりホイール部8とタイヤ保持部12とを固定するように構成されていてもよい。
【0029】
図2に示すように、タイヤ回転駆動部14は、タイヤ回転伝達部15に内蔵されたプーリ(図示せず)及びベルト(図示せず)を介して、タイヤ保持部12と接続されている。タイヤ回転駆動部14は、電動式のモータである。タイヤ回転駆動部14は、モータの回転をタイヤ回転伝達部15内のプーリ(図示せず)及びベルト(図示せず)を介してタイヤ保持部12に伝達している。変形例としてタイヤ回転駆動部14は、タイヤ回転伝達部15に内蔵されたギヤ等を介して、タイヤ保持部12と接続されてもよい。他の変形例として、タイヤ回転駆動部14は、ベルト(図示せず)等を介さずに、直接にタイヤ保持部12と接続され、回転を伝達してもよい。
【0030】
タイヤ回転駆動部14は、タイヤ保持部12及びタイヤ2の回転数を例えば0.5回転/分から5回転/分までの範囲内の回転数とできるように構成されている。タイヤ回転駆動部14は、減速ギヤ等を含むことができ、タイヤの所望の回転数を実現できるように構成されている。タイヤ回転駆動部14は、外部電源に電気的に接続されているが、バッテリ等で構成され、外部との配線を省略することができる。なお、タイヤ2の回転方向Bは逆の回転方向でもよい。なお、タイヤ2の回転方向と、ブレード20の回転方向とは同じ回転方向でもよい。
【0031】
構造体16は、モータースポーツ用タイヤ調整装置1の後述する構成要素を搭載する。例えば、構造体16は、第1調整機構、第2調整機構及びブレード角調整機構等を載せるようになっている。構造体16は、モータースポーツ用タイヤ調整装置1の移動をしやすくするための可動部である可動輪18を備える。構造体16は、金属、例えばアルミのフレーム及びプレートで主に形成される。よって、モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、タイヤ2を取り付けていない状態で、約70kg~約200kgの範囲内の重量、例えば約100kgの重量で形成される。従って、モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、平均的な大きさの3人程度の大人により搬送できる程度の重量で形成されると共に、平均的な大きさの大人がコンクリート面上に配置されたこの可動輪18付きの装置を押して移動できるような重量に形成されている。例えば、モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、サーキット場等において、タイヤのセッティングを行いやすくするように人の手で移動可能である。また、例えば、モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、約1m四方の大きさであり且つ約100kg程度の重要であり、移動可能な一つの装置として構成されているため、工場に限られず、サーキットに比較的容易に持ち込むことができ、現場でタイヤのセッティングを自在に調整可能である。
【0032】
モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、さらに、タイヤ2の表面を削ぐように切削するブレード20と、ブレード20を取り付けるブレード取付部22と、ブレード取付部22を回転させるブレード回転駆動部24と、ブレード20をタイヤ2の中心軸線X2から所定距離に位置決め可能な位置決め部26と、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24を制御する制御部60(
図1参照)と、を備えている。
【0033】
ブレード20は、ブレード取付部22に取付けられた状態で、トレッド部4を比較的平らにしようとする基本姿勢において、タイヤ2の中心軸線X2とブレード20の刃先20aに沿う刃先線とが、平行な2つの仮想面(第1仮想面及び第2仮想面)上にそれぞれ位置するように配置されている。ここで、中心軸線X2を含む第1仮想面E1は例えば中心軸線X2を含む垂直面であり、刃先20aに沿う刃先線を含む第2仮想面E2は例えば刃先20aを含む別の垂直面である。第1仮想面E1及び第2仮想面E2はそれぞれ、
図4において一点鎖線により例示されている。第2仮想面E2は後述する斜め第2仮想面E3はタイヤ2の接線方向に延びる面である。刃先20aに沿う刃先線は、第2仮想面E2上において斜めに延びてもよい。すなわち、刃先20aはこのような第2仮想面E2上において中心軸線X2と平行な方向以外の角度(例えば、刃先の右側が左側に比べて上方に位置するように5度傾けられた角度等)に設定されてもよい。変形例として記載するように、刃先20aに沿う刃先線は、中心軸線X2と平行な状態から、タイヤの接線方向において+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられていてもよい。
【0034】
仮想面が斜めの仮想面として設定されてもよい。すなわち、中心軸線X2を含む第1仮想面は斜め第1仮想面E4であってもよい。また、刃先20aに沿う刃先線(このときの刃先20aは、
図4の刃先の位置よりも上方のE3上に位置している)を含む第2仮想面は、斜め第2仮想面E3であってもよい。
図4において、斜め第1仮想面E4及び斜め第2仮想面E3についても例示されている。このような2つの仮想面、例えば斜め第1仮想面E4及び斜め第2仮想面E3は、互いに平行に延びている。
【0035】
さらに、ブレード20は、基本姿勢においてタイヤ2の中心軸線X2と平行方向に延びるような刃先20aを形成している。
図7に示すように、ブレード20は、ブレード取付部22に取付けられたブレード20の刃先20aがタイヤ2の表面に接するときに、刃先20aがタイヤ2の回転方向Bの上流側方向に向けられるようにブレード20が配置されている。なお、刃先20aは回転方向Bの上流側方向に向けられていなくともよい。
図5に示すように、ブレード20は、比較的薄い厚みの棒状に形成され、直線状に延びている。例えば、ブレード20は、かみそりの刃のようなブレード状に形成される。ブレード20の刃先20aは、長手方向に50mm~310mmの範囲内の長さL(
図5参照)、また例えば80mm~150mmの範囲内の長さを有している。ブレード20は、例えば1mm~3mmの範囲内の厚さA(
図6参照)、また例えば1.5mm~2.5mmの範囲内の厚さを有している。ブレード20は、刃先20aの刃物角度α1が例えば30度~60度の範囲内の角度、また例えば35度~55度の範囲内の角度、さらに例えば40度~50度の範囲内の角度、さらに例えば43度~48度の範囲内の角度となるように形成されている。また、ブレード20は、ブレード20のすくい角度が例えば25度~35度の範囲内の角度となるように形成されている。このように、刃先20aが、タイヤ表面の接線に対し比較的大きな角度でタイヤに挿入されることにより、タイヤの表面を切り裂くようにして摩擦を抑制しながら削ぐことができる。よって、削いだ面の熱劣化を抑制することができる。ブレード20は交換式のブレードであり、切れ味が落ちてきた場合には交換又は再研磨することができる。
【0036】
ブレード取付部22は、ブレード20を載せる本体部28と、本体部28との間でブレード20を挟持する押さえ部30とを備えている。ブレード20は、本体部28と押さえ部30との間に挟み込まれるように抑えられている。押さえ部30はボルト32により本体部28に取付けられている。ボルト32を締め付けることにより、押さえ部30が本体部28に固定され、ブレード20が本体部28に固定される。
【0037】
ブレード取付部22は、本体部28とブレード20と押さえ部30とが組み上げられた状態で、概ね筒形の断面の組立体を形成し、概ね円形の外周部を形成する。ブレード取付部22の中心軸線X3(
図3参照)は、タイヤ保持部の中心軸線X1やタイヤ2の中心軸線X2と平行に配置されている。また、中心軸線X3と中心軸線X2との高さ位置は同じ高さ位置とされている。ブレード取付部22は、ブレード20を中心軸線X3と平行な方向に延びるように取付けている。ブレード取付部22は、支持腕23の間で回転可能に支持されている。ブレード取付部22は、ブレード回転駆動部24の回転が伝達されることにより回転される。ブレード取付部22は、ブレード20を取り付けた状態で刃先20aがタイヤ2の回転方向Bの上流側方向に向かうように回転される。なお、ブレード取付部22の回転方向Cは逆の回転方向でもよい。
【0038】
ブレード取付部22は、ブレード20を取り付けた状態で、ブレード20がブレード取付部22の外周面から例えば0.5mm~2mmの範囲内の値の付き出し量、また例えば0.5mm~1.5mmの範囲内の値の付き出し量となるように形成されている。よって、タイヤ表面から突き出し量分の深さまでタイヤが削がれる。付き出し量が比較的小さい値とされているので、一回の切削によるタイヤ表面への負荷や摩擦を抑制し、熱の発生を抑制できる。また、タイヤ2の表面層の例えば0.1mm~1mm程度の深さまで、また例えば0.1mm~0.5mm程度の深さまでを削ぐように切削することにより、熱の影響を受けやすい表面部分のみを除去することができる。また、表面を刃により削ぐため、表面が鋭利な刃物で切り取ったように滑らかな表面を形成する。従って、サンダ等の砥石で研磨した後の表面に比べて、滑らかな表面が形成され、走行時にタイムを落とす原因となる表面の細かな凹凸を抑制できる。さらに、タイヤ2の表面層のみを限定的に除去することにより、走行使用後(例えばサーキットでのタイムトライアル走行後)に再度タイヤ2の表面層を除去することができるように、タイヤ2のトレッド層を残すことができ、使用回ごとに複数回にわたりタイヤ2の表面層を除去して走行に臨むことができる。もちろんタイヤの安全性に配慮して削りは行われる。なお、例えばブレード20及びブレード取付部22を組付けた状態でワークの直径φは約48mmとなっている。
【0039】
図3に示すように、ブレード回転駆動部24は、ブレード回転伝達部25に内蔵されたプーリ(図示せず)及びベルト(図示せず)を介して、ブレード取付部22と接続されている。ブレード回転駆動部24は、電動式のモータである。ブレード回転駆動部24は、モータの回転をブレード回転伝達部25内のプーリ及びベルトを介してブレード取付部22に伝達している。ブレード回転駆動部24は、上記ブレード取付部の回転数を、例えば100回転/分から20000回転/分までの範囲内の回転数、また例えば1000回転/分から10000回転/分までの範囲内の回転数、さらに例えば1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数とできるように構成されている。例えば、ブレード回転駆動部24により回転される上記ブレード取付部の回転数は、タイヤの回転数よりも比較的大きな回転数、例えば100回転/分以上の回転数であればよい。主にゴムで形成されるトレッド部は金属のブレードに比べれば比較的柔らかいため100回転/分以上の回転数でも削ぎのために比較的大きな回転数となる。ブレード取付部22の回転数は例えば100回転/分から20000回転/分までの範囲内の回転数、また例えば1000回転/分から10000回転/分までの範囲内の回転数、さらに例えば1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数とされている。例えば、ブレード取付部22の回転数は、タイヤの回転数よりも比較的大きな回転数、例えば100回転/分以上の回転数であればよい。主にゴムで形成されるトレッド部は金属のブレードに比べれば比較的柔らかいため100回転/分以上の回転数でも削ぎのために比較的大きな回転数となる。ブレード回転駆動部24は、ブレード取付部22の所望の回転数を実現できるように構成されている。変形例としてブレード回転駆動部24は、ブレード回転伝達部25に内蔵されたギヤ等を介して、ブレード取付部22と接続されてもよい。他の変形例として、ブレード回転駆動部24は、ベルト(図示せず)等を介さずに、直接にブレード取付部22と接続され、回転を伝達してもよい。
【0040】
ブレード取付部22に取付けられたブレード20の周速は、例えば150m/分から3000m/分までの範囲内の値、また例えば、例えば150m/分から1300m/分までの範囲内の値である。周速は、ブレードが回転している場合におけるブレードの接線方向の速度であり、刃先の速度を示している。「周速」=ワークの直径(例えばブレード及びブレード取付部を組付けたワークの直径φ=48mm)× π × ワークの回転数(例えば4000回転/分)÷ 1000、により求められる。例えば、ワークの直径φ=48mmのとき、周速=φ48mm×π×4000rpm÷1000=603.2m/分となる。また、例えば、ワークの直径φ=48mmのとき、周速=φ48mm×π×20000rpm÷1000=3014.4m/分となる。
また、例えば、ワークの直径φ=48mm且つワークの回転数1000回転/分のとき、周速=φ48mm×π×1000rpm÷1000=150.7m/分となる。また、例えば、ワークの直径φ=48mm且つワークの回転数8000回転/分のとき、周速=φ48mm×π×8000rpm÷1000=1205.7m/分となる。このように、上記ブレードの周速は、例えば150m/分から1300m/分までの範囲内の値であってもよい。
ブレードがこのような刃先の速度を有することにより、刃先20aがタイヤ2の表面内に入るときに、刃先20aの先端よりもさらに上流側の位置からタイヤ2の表面が切り分かれ易くなり、表面を削ぐときの熱の発生を抑制できる。
【0041】
図3及び
図4に示すように、位置決め部26は、ブレード20及びブレード取付部22をタイヤ2に向かう第1方向に移動できるように構成されている第1調整機構34と、ブレード20及びブレード取付部22を第1方向と直交する第2方向に移動できるように構成されている第2調整機構36と、第1方向と第2方向との間でブレード20の傾きを調整できるように構成されているブレード角調整機構38と、ブレード20の突き出し量を測定する計測装置40(
図3参照)と、を備えている。
【0042】
第1調整機構34は、ブレード20及びブレード取付部22とブレード回転駆動部24等とを載せた状態で第1方向に移動可能に形成されている。第1方向は、矢印D1に示すように(
図3参照)、例えば、タイヤ2の半径方向外側から中心方向に向かう方向である。第1方向は、例えば前後方向である。よって、第1調整機構34は、ブレード取付部22及びブレード20の第1方向、例えば前後方向、の位置を調整する。
【0043】
第1調整機構34は、操作者が手動操作できるハンドル部42と、ブレード20及びブレード取付部22とブレード回転駆動部24とを載せた状態で第1方向に移動可能な第1位置調整テーブル44と、を備えている。第1調整機構34は、ハンドル部42が回転操作されることにより、ねじ軸45(
図4参照)が回転され、第1位置調整テーブル44が前後方向に移動される。第1調整機構34は、ねじ式の位置調整機構を形成している。第1位置調整テーブル44は、例えば、第1方向に前後それぞれ約100mm移動可能である。なお、第1調整機構34は、電動駆動部により第1方向の位置が調整されてもよい。
【0044】
第1位置調整テーブル44は、ブレード角調整機構38のブレード角調整テーブルの上側に配置され、第1位置調整テーブル44の下側のテーブルに対して相対的に前後に移動するように形成されている。第1調整機構34は、ブレード20の刃先20aの位置を、例えばミリ単位、さらに例えば0.1ミリ以下の単位(例えば0.01ミリ単位)まで比較的高い精度で調整するように形成されている。
【0045】
第2調整機構36は、第1調整機構34及びブレード角調整機構38を上側に載せた状態で第2方向に移動可能に形成されている。第2方向は、矢印D2に示すように(
図3参照)、第1方向と直交する方向、例えばタイヤ2の中心軸線X2に沿う方向である。第2方向は、例えば水平面内において第1方向と直交する方向、例えば左右方向である。よって、第2調整機構36は、ブレード取付部22及びブレード20の第2方向、例えば左右方向、の位置を調整する。
【0046】
第2調整機構36は、第1調整機構34及びブレード角調整機構38を載せた状態で第2方向に移動可能な第2位置調整テーブル46(
図4参照)を備えている。第2位置調整テーブル46は、左右方向に並行に延びるレール47上でスライド可能に配置され、操作者の手動操作によりレール上を移動可能に形成されている。第2位置調整テーブル46は、例えば、第2方向にそれぞれ約450mm移動可能である。なお、第2調整機構36は、電動駆動部により第2方向の位置が調整されてもよい。
【0047】
第2位置調整テーブル46は、構造体16上に概ね水平に配置され、構造体16の上面に対して相対的に左右に移動するように形成されている。よって、第2調整機構36は、ブレード20の刃先20aの位置を、水平面上において左右方向に調整するように形成されている。
【0048】
ブレード角調整機構38は、第1調整機構34を上方側に載せた状態で自身の左右方向への傾きを変更可能に形成されている。よって、ブレード角調整機構38は、ブレード取付部22及びブレード20の左右方向への傾きを調整できる。
【0049】
図3に示すように、ブレード角調整機構38は、操作者が手動操作できる把持部48と、第1調整機構34を載せた状態で水平面上で左右方向に回動可能な角度調整テーブル50と、を備えている。ブレード角調整機構38の角度調整テーブル50は、2本の弧状の溝部51を有し、この2つの溝部51内に、第2位置調整テーブルから上方に延びる突起部52がそれぞれ通されている。従って、角度調整テーブル50は、第2位置調整テーブル46上の平面内で回動可能に形成されている。角度調整テーブル50は、さらに、目盛りを指し示す目盛指示部54を備えている。目盛指示部54は、第2位置調整テーブル46の側方且つ目盛指示部54の下方に設けられた目盛板上の目盛りを指し示すようになっている。目盛りには、後述するような例えば-30度~+30度の角度が記載されている。ブレード角調整機構38は、操作者が把持部48を把持しながら自身が回動操作されることにより、ブレード20の向き(タイヤの中心軸線X2に対する角度)が変更される。なお、ブレード角調整機構38は、電動式の回動装置により形成されてもよい。
【0050】
ブレード角調整機構38は、角度が0度となる基本姿勢(
図3において角度0度の基本姿勢が示されている)において、ブレード20の刃先20aの刃先に沿う線がタイヤの中心軸線X2と平行になるように、形成されている。ブレード角調整機構38は、角度が0度となる基本姿勢において、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線が、タイヤ2の中心軸線X2を通る第1仮想面E1(斜め第1仮想面E4)と平行な第2仮想面E2(斜め第2仮想面E3)上に配置されるようにブレードを配置している。刃先20aはこのような第2仮想面E2(斜め第2仮想面E3)上において中心軸線X2と平行な方向以外の角度(例えば、刃先の左側が右側に比べて上方に位置するように5度傾けられた角度等)に設定されてもよい。
また、ブレード角調整機構38は、ブレード20の傾きを、水平面上において例えば-40度~+40度、また例えば-30度~+30度までの範囲内の角度とできるように構成されている。ブレード角調整機構38の角度が-30度となるとき、ブレードの刃先に沿う線が、中心軸線X2に対して30度左側に傾けられる。ブレード角調整機構38の角度が+30度となるとき、ブレードの刃先に沿う線が、中心軸線X2に対して30度右側に傾けられる。ブレード角調整機構38は、このようなブレード20の角度を1度以下のレベルまで比較的正確に調整可能である。
【0051】
ブレード角調整機構38は、第2位置調整テーブル46上に概ね水平に配置され、第2位置調整テーブル46に対して相対的に角度を変更するように形成されている。よって、ブレード角調整機構38は、ブレード20の刃先20aの傾きの角度を、調整するように形成されている。他の言い方によれば、第2調整機構36は、ブレード20の向きをタイヤ2を中心として左右方向に向けることができる。また、このようなブレード角調整機構38により、タイヤ2のトレッド部4(
図8参照)やショルダ部5(
図8参照)の削ぎ面の設定角度を比較的詳細に設定できる。よって、ブレード20が、第1調整機構34及び第2調整機構36により位置決めされると共に、ブレード角調整機構38により傾きが調整され、タイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有する形状に調整する。
【0052】
図3に示すように、計測装置40は、第1調整機構34によりブレード20が第1方向に移動される量(ブレード20がタイヤに向けて突き出される量)を測定する。計測装置40は、第1調整機構34の第1位置調整テーブル44から立ち上がるように形成された第1テーブル側測定部56と、ブレード角調整機構38の角度調整テーブル50から延びる支持部に取り付けられた計測器58とを備える。第1テーブル側測定部56は、第1位置調整テーブル44の上面に取り付けられ、第1位置調整テーブル44から上方に立ち上がるように形成されている。第1テーブル側測定部56は、第1位置調整テーブル44の位置を測定するための基準部として使用される。
【0053】
計測器58は、第1位置調整テーブル44が角度調整テーブル50に対して相対的に移動した距離を計測できる。より詳細には、計測器58は、第1テーブル側測定部56が計測器58の計測器側測定部59と当接した位置から第1方向に移動した(突き出した)距離を計測できる。計測器58は、例えばダイヤルゲージである。計測器58は、計測58器内部に押し込まれる距離に応じて距離を計測する計測器側測定部59を備えている。計測器58は、計測器側測定部59が第1テーブル側測定部56に当接した位置から押し込まれた距離を表示する。計測器は、例えば、0.01mmの単位であっても距離を比較的精確に測定できる。このような計測装置40を使用することにより、削りの深さや量を所望の量に管理することができる。さらに、車両の左右のタイヤ2の削り量を同じ量とすることができる。また、ブレードを精確に位置決めし、車両の左右のタイヤ2の削り角度を左右対称にすることもできる。よって、左右のカーブに対応した走行性能を適切に設定できる。
【0054】
位置決め部26は、ブレード20をタイヤ2の中心軸線X2から所定距離に固定し且つ位置決めして、タイヤ2の表面を削ぐことができる。本来タイヤはゴム成形品であるため、製造時の形状の精度に比較的ばらつきがあるものであるが、本実施形態の構成により敢えてタイヤを削ることによりタイヤ2を概ね均一な径の円形(例えば真ん円の円形)に比較的高精度で形成することができる。これにより、モータースポーツにおける走行において、高速走行時のタイヤ2の接地がより安定し、サーキットの一周のタイムを例えば0.1秒のレベルでさらに縮めていくことに効果を奏することができる。
【0055】
制御部60(
図1参照)は、タイヤ回転駆動部14(
図2参照)やブレード回転駆動部24の回転数(及びこれらの回転数を介してタイヤ2の回転数やブレード取付部22及びブレード20の回転数)やON・OFF等を制御する。制御部60は、ダイヤル操作により回転数やON・OFF等を制御するように接続された機器を制御する。位置決め部26の各部が電動装置により構成される場合には、制御部60は、電気的にこれらの機器を制御してもよい。制御部60は、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24等と互いに電気的に接続されている。これらの電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。また、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24等をプログラムに基づいて自動制御しようとする場合には、制御部60は、CPU及びメモリ等を内蔵してもよく、その場合には、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて回転数やON・OFF等を制御するように接続された機器を制御する。
【0056】
モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、さらに、
図4に示すように界面活性剤の成分を含む液体64を溜める液溜め部62を備えていてもよい(他の図においては液溜め部62は図示を省略する)。液溜め部62は、タイヤの下方において、タイヤ2の下部のトレッド部4及びショルダ部5を液体64に浸すように配置される。液溜め部62は、上面視で四角形状に形成され、内側に例えば界面活性剤の成分を含む液体64(
図4において液面の一部を破線により示す)を溜めることができるように形成されている。界面活性剤の成分を含む液体64は、例えば、中性洗剤を水で薄めた液体、石鹸水等である。界面活性剤の成分を含むことにより、ブレードの刃がタイヤをスムーズに削ぎやすくできる。液溜め部62は、タイヤ保持部12に保持されている状態のタイヤ2の最下部が内側に収められ、液体64にトレッド部4及びショルダ部5の下端部が浸るように形成されている。よって、タイヤの表面を濡らすことができると共に、液体による冷却及び液体の蒸発に伴う冷却によりタイヤを冷却して、刃先により削ぎやすくできる。特にタイヤが比較的高温の場合には、液溜め部62によりタイヤを冷却しながらタイヤを削ぐことで、タイヤを所定の形状に形成しやすくできる。なお、界面活性剤の成分を含む液体の代わりに、界面活性剤の成分を含まない液体、例えば水等を用いてもタイヤの冷却等につき一定の効果を奏する。なお、液溜め部62は、省略されてもよい。
【0057】
次に、
図8を参照して、本実施形態におけるモータースポーツ用タイヤ調整方法について説明する。
図8に示すように、モータースポーツ用タイヤ調整方法においては、先ず、S1において、上述のようなモータースポーツ用タイヤ調整装置1を準備する準備ステップが実行される。モータースポーツ用タイヤ調整装置1において、例えばブレード20がブレード取付部22に取付けられ、モータースポーツ用タイヤ調整装置1が作動可能な状態とされる。モータースポーツ用タイヤ調整装置1の準備ステップS1が行われると、S2に進む。
【0058】
S2においては、表面を削ぐ対象のタイヤ2をタイヤ保持部12に取付ける取付ステップが実行される。取付ステップS2においてボルトやナットによりタイヤのホイール部8とタイヤ保持部12とが固定され、タイヤ2はタイヤ保持部12により回転可能に保持される。取付ステップS2が実行されると、S3に進む。
【0059】
S3においては、タイヤ回転ステップが実行される。タイヤ2はタイヤ保持部12により保持された状態で、タイヤ回転駆動部14により予め定めた回転方向に回転される。タイヤ回転ステップS3において、タイヤ2は矢印B(
図7参照)に示すような回転方向に0.5回転/分から5回転/分までの範囲内の回転数で回転される。タイヤ回転ステップS3が実行されると、S4に進む。
【0060】
S4においては、ブレード20を取り付けたブレード取付部22を回転させるブレード回転ステップが実行される。ブレード回転ステップS4において、ブレード取付部22及びブレード20は、矢印Cに示すような(
図7参照)、予め定めた回転方向に回転される。また、ブレード取付部22及びブレード20は、1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数で回転される。ブレード回転ステップS4が実行されると、S5に進む。なお、タイヤ回転ステップS3とブレード回転ステップS4との実行順は逆でもよいし、ほぼ同時に実行されるように同期されていてもよい。
【0061】
次いで、ブレード20をタイヤ2の中心軸線X2から所定距離に位置決めする位置決めステップのうち、S5において、第2調整機構36によりブレード20を第1方向と直交する第2方向に移動させる第2方向調整ステップS5が実行される。第2方向調整ステップS5においては、第2調整機構36により、ブレード20、例えばブレード20の刃先20aをタイヤの幅方向に移動させ、タイヤ2の幅方向のどの領域を削ぎ取るかを設定できる。例えば、ブレード20の刃先20aがタイヤ2のトレッド部4に対応する位置に位置決めされた場合、ブレード20はトレッド部4を削ぎ取ることになる。例えば、ブレード20の刃先20aがショルダ部5に対応する位置に位置決めされた場合、ブレード20はショルダ部5を削ぎ取ることになる。第2方向調整ステップS5が実行されると、S6に進む。
【0062】
次いで、S6において、ブレード角調整機構38により第1方向と第2方向との間でブレード20の傾きを調整させるブレード角調整ステップS6が実行される。ブレード角調整ステップS6においては、ブレード角調整機構38により、ブレード20、例えばブレード20の刃先20aの傾き、例えば左右方向への傾きを調整できる。よって、ブレード20の刃先20aがタイヤ2の表面に当たるときに、削ぎ面(削ぎ取られた面)がどのような傾き(向き)の面となるかを設定できる。例えば、ブレード角調整機構38の角度が0度となる基本姿勢(
図3参照)においては、ブレード20の刃先20aはタイヤの中心軸線X2と平行であり、削ぎ面が中心軸線X2と平行に形成される。また、例えば、ブレード角調整機構38の角度が例えば-30度の角度である場合には、ブレードの刃先に沿う刃先線が、水平面上において中心軸線X2に対して30度左側に傾けられる。よって、タイヤ2上の削ぎ面が水平面上において中心軸線X2に対して30度左側に傾けられて形成される。ブレード角調整ステップS6が実行されると、S7に進む。
【0063】
次いで、S7において、第1調整機構34によりブレード20をタイヤ2に向かう第1方向に移動させる第1方向調整ステップS7が実行される。第1方向調整ステップS7においては、第1調整機構34により、ブレード20、例えばブレード20の刃先20aをタイヤに向けて第1方向に移動させる。ブレード20の刃先20aがタイヤの表面に当接した位置から削ぎ取りが開始される(S7に続くタイヤ削ぎステップS8が開始される)。ブレード20の刃先20aが第1方向に移動した(突き出した)距離は計測器58の計測器側測定部59により測定される。計測器側測定部59は、刃先20aがタイヤの表面に当接した位置からの削ぎ取り深さも測定できる。第1調整機構34により、ブレード20の移動距離を調整できるので、ブレード20によりタイヤ2の表面をどのくらいの深さ削ぎ取るか、また、最終的にどのような径(及び形状)のタイヤを形成するかを調整できる。例えば、第1調整機構34により、刃先20aがタイヤ2のトレッド部4に向けて移動された場合、ブレード20がトレッド部4に当接し、トレッド部4を削ぎ取るようにタイヤ削ぎステップS8に進む。例えば、第1調整機構34により、刃先20aがショルダ部5に向けて移動された場合、ブレード20はショルダ部5に当接し、ショルダ部5を削ぎ取るようにタイヤ削ぎステップS8に進む。第1方向調整ステップS7が実行されると、S8に進む。なお、S5~S7までのステップの実行順は異なってもよい。また、例えば第2方向調整ステップS5において第2方向への移動がない場合等、S5~S7までのステップのうちの一部が省略されてもよい。
【0064】
次いで、S8において、第1方向調整ステップS7及び第2方向調整ステップS5により位置決めされると共に、ブレード角調整ステップS6により傾きが調整されているブレード20により、タイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有する形状に調整するタイヤ調整ステップS8が実行される。タイヤ調整ステップS8においては、ブレード20によりタイヤ2の表面が削ぎ取られ、タイヤが所定の走行性能を有するように調整される。ブレード20は、第1方向調整ステップS7及び第2方向調整ステップS5により所定の位置に位置決めされ、ブレード角調整ステップS6により所定の傾きに調整されている。タイヤ調整ステップS8において、ブレード回転駆動部24により回転されるブレード取付部及びブレード20は、所定の回転数で回転される。また、タイヤ2もタイヤ回転駆動部14により、所定の回転数で回転される。回転されるブレード20がタイヤの表面に当たることによりタイヤの表面が削がれる。よって、タイヤの表面の走行時のヒートサイクルによる熱劣化部分(硬化して劣化した部分)を全部又は少なくとも一部まで除去できる。さらに、ブレード20により、削ぎ取りに伴うタイヤの表面の加熱による劣化を抑制するようにタイヤの表面を削り取ることができる。すなわち、タイヤの表面を研磨する場合に生じる熱と比べて、タイヤの表面を削ぐ場合に生じる熱は比較的小さいので、タイヤの表面の加熱による劣化を抑制できる。
【0065】
なお、タイヤ調整ステップS8においては、タイヤ2のトレッド部及びショルダ部の下端部が液溜め部62内の液体64に浸った状態で、タイヤの表面が液溜め部62の外で削がれてもよい。液溜め部62に中性洗剤を水で薄めた液体、石鹸水等の液体をためて置き、タイヤ表面を冷却しながら表面を削ぐことにより、より効率的にタイヤの表面を削ぐことができる。このような構成により中性洗剤の界面活性剤により削ぐときの潤滑を向上させる効果を奏すると共に、タイヤのゴムが冷却されて削ぐときに切れやすくなる効果を奏する。よって、極めて高いレベルでタイヤの所望の走行特性を発揮するようにタイヤの形状を調整しやすくできる。なお、湿らせなくてもタイヤ調整ステップS8は実行可能である。
また、ブレード20は、直線状の刃先を形成しており、タイヤ2の表面は左右方向の所定幅にわたって切り取られるように切削される。これにより、タイヤ2のトレッド部4を平坦に削りやすくなっている。ブレード20によりタイヤ2の表面を削ぎ取ることにより、リトレッド用の加工面ではなく、タイヤ2の中心軸線X2から所定距離にタイヤの走行面(走行用のトレッド部4の面及びショルダ部5の面)を形成させることができる。走行面は、例えばトレッド部の路面との接地面、及び/又はショルダ部の路面との接地面である。また、ブレード20は、タイヤ2のひげのみの除去を行うのではなく、ひげの形成されているトレッド部4に所定幅の平坦面を形成するように表面を削ぎ取る。よって、ひげの基部のわずかな凹凸がトレッド部に残ることを抑制し、ブレード20により表面のわずかな凹凸も抑制されているタイムアタック走行等用の平坦な走行面が形成できる。
【0066】
モータースポーツ用のタイヤ調整方法におけるS1~S8までのステップにより表面が調整されたタイヤが製造されることから、これらのステップは表面が調整されたモータースポーツ用のタイヤの製造方法としても記載されている。
【0067】
次に、
図9乃至
図12を参照して、本実施形態におけるモータースポーツ用タイヤ調整装置により調整されたモータースポーツ用のタイヤの例について説明する。
図9おいて、削られる前のタイヤ2の断面の形状を実線により示し、削られた後のタイヤのトレッド部4の表面の形状をトレッド部削ぎ面2aとして破線により例示している。削られた状態を分かりやすく示すことが目的であるので、削りの深さ(量)はあくまでも例として示されている。
【0068】
先ず、一例として、本実施形態のモータースポーツ用タイヤ調整装置において、各部が以下のように設定され、
図9に示すように調整されたタイヤ2が得られる。
第1調整機構34及び第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のトレッド部4に当てるように位置決めさせる。より具体的には、第1調整機構34は、ブレード20をタイヤ2に向けた第1方向に刃先20aがトレッド部4の表面を削ぐことができる程度まで移動させる。また、第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のトレッド部4に対向する位置(例えばトレッド部4の中央領域に対向する位置)に位置決めさせる。ブレード角調整機構38は、角度0度の基本姿勢であり、ブレード20の刃先に沿う刃先線を、タイヤ2の中心軸線X2と平行な角度に調整する。
【0069】
このように設定されたブレード20によりタイヤ2を削ぐことで、タイヤ2のトレッド部4に中心軸線X2と平行方向に延びる削ぎ面であるトレッド部削ぎ面2a(
図8において破線により例示される)が形成される。トレッド部削ぎ面2aは、トレッド部4において中心軸線X2と平行な直線部F1を比較的広い幅W(タイヤの左右方向幅)の範囲で形成する。直線部F1は、
図9に示すようなタイヤの断面において直線状の表面部分を形成している。このような直線部F1はタイヤ2の幅方向に関しては平坦であるが、タイヤ2の外周方向に関してはタイヤの中心軸線X2を中心に真円に近い輪郭を形成している。トレッド部削ぎ面2aは、研磨された面とは異なり、比較的滑らかな表面を有する。また、表面において走行後のヒートサイクルにより硬化し且つ劣化した部分が削られることにより、比較的柔軟且つフレッシュな面が露出され、このように露出された状態のタイヤはタイヤ本来の走行性能が再び発揮されやすくなっている。さらに、モータースポーツ用タイヤ調整装置1によりサーキット走行時にタイヤ2の表面に付着したごみ等を取り除くことができるので、タイヤ表面をクリーンな状態にでき、次回の走行時にタイヤ本来の走行性能が発揮されやすくなる。トレッド部削ぎ面2aは、走行用の表面であり、例えば、路面の接地面積を増加させ、加減速時のタイヤのグリップ性能をさらに向上させることができる。例えば、トレッド部にトレッド部削ぎ面2aを形成することにより、直進時や加減速時に路面をグリップしやすい走行特性や走行性能を得ることができる。トレッド部削ぎ面2aは、モータースポーツにおいて、削りだした形状でタイヤの極限の走行性能を引き出しやすくなっている。
【0070】
次に、別の例として、本実施形態のモータースポーツ用タイヤ調整装置1により、
図10に示すようにタイヤ2を調整することで、解決しようとしている課題について説明する。
例えば、タイヤ2のトレッド部4の中央領域4aをモータースポーツ用タイヤ調整装置1により
図10に示すような直線部F2を形成するように比較的深くまで削っているような場合において、トレッド部4の中央領域4aのゴム厚みが次第に薄くなってくる。これに伴い、ショルダ部5がやや角部を生じるように尖ってくる場合がある。このようなショルダ部5は、当初のショルダ部5よりもやや鋭角な角部を形成する。このような角部がコーナリング時に曲がり方向と反対側の外側に位置する場合、角部が路面とトレッド部4との間に巻き込まれるように引っかかり振動を生じさせ、操舵性能を低下させるという課題を生じる場合がある。従って、トレッド部4の中央領域4aを削ぐ場合に、さらにショルダ部5の角部が生じやすくなるという新たな課題が生じることが分かったものである。トレッド部4を敢えて削ぐからこそ、ショルダ部5に角部が生じやすくなるという新規な課題が生じたものである。本技術はこのような課題を解決する手段を提供する。
【0071】
本実施形態のモータースポーツ用タイヤ調整装置1において、各部が以下のように設定され、
図10に示すようにショルダ部5に削ぎ面であるショルダ部削ぎ面2bが形成されるように調整されたタイヤ2が得られる。
ブレード角調整機構38は、第1方向と第2方向との間で、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線を、タイヤ2の中心軸線X2に対して傾けた角度に調整する。ブレード角調整機構38は、中心軸線X2に対して例えば+30又は-30度の角度に傾けられる。すなわち、ブレード20は、中心軸線X2に対して例えば30度右側又は左側に傾けられる。第1調整機構34及び第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のショルダ部5に当てるように位置決めさせる。より具体的には、第2調整機構36は、ブレード20をショルダ部5のショルダ部削ぎ面2bを形成したい位置に対向する位置に位置決めさせる。次いで、第1調整機構34は、ブレード20をタイヤ2に向けた第1方向に刃先20aがショルダ部5の表面を斜めに削ぐことができる位置まで移動させる。
このように位置決めされたブレード20によりタイヤ2を削ぐことで、タイヤ2のショルダ部5に中心軸線X2に対して所定角度のショルダ部削ぎ面2bが形成される。ショルダ部削ぎ面2bには、中心軸線X2に対して30度の傾きの直線部F3が所定幅で形成される。このような直線部はタイヤ2の外周方向に関しては中心軸線X2に対し真円に近い輪郭を形成している。このようなショルダ部削ぎ面2bにより、例えば、ショルダ部5に角部が形成されることを抑制し、角部がコーナーの曲がり時に路面とトレッド部4との間に巻き込まれるように引っかかり振動を生じさせたり、操舵性能を低下させたりする課題を生じさせることを抑制できる。例えば、ショルダ部削ぎ面2bを形成することにより、コーナーの曲がり時に操舵性等を向上させる走行特性や走行性能を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態のモータースポーツ用タイヤ調整装置において、各部が以下のように設定され、
図11に示すようにトレッド部4に削ぎ面であるトレッド部傾斜削ぎ面2cが形成されるように調整されたタイヤが得られる。
ブレード角調整機構38は、第1方向と第2方向との間で、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線を、タイヤの中心軸線X2に対して傾けた角度に調整する。例えば、ブレード角調整機構38は、中心軸線X2に対して+5度の角度に傾けられる。すなわち、ブレード20は、タイヤの中心軸線X2に対して例えば5度右側に傾けられる。第1調整機構34及び第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のトレッド部4に当てるように位置決めさせる。より具体的には、第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のトレッド部4に対向する位置且つトレッド部4のうちショルダ部5側にやや寄った位置に位置決めされている。次いで、第1調整機構34は、ブレード20をタイヤ2に向けた第1方向に刃先20aがトレッド部4の表面を削ぐことができる程度まで移動させる。
このように設定されたブレード20によりタイヤ2を削ぐことで、タイヤ2のトレッド部4に中心軸線X2に対して所定角度のトレッド部傾斜削ぎ面2cが形成される。トレッド部傾斜削ぎ面2cには、
図11に示すようにトレッド部4のうち一部を削ぐことにより例えば5度の傾きの直線部F4が所定幅で形成される。このような直線部はタイヤの外周方向に関しては中心軸線X2に対し真円に近い輪郭を形成している。よって、例えば、キャンバ角度(タイヤと接地面との角度)に合わせて直線部F4を形成することにより、路面の接地面積を増加させ、タイヤ2のグリップ性能をより向上させることができる。例えば、トレッド部にトレッド部傾斜削ぎ面2cを形成することにより、直進時や加減速時にキャンバ角度に対応して路面をよりグリップしやすい走行特性や走行性能を得ることができる。本技術によれば、現場でキャンバ角度を調整したときに、合わせてトレッド部4にキャンバ角度に合わせた直線部を形成することが可能となり、キャンバ角度等の調整時に一旦タイヤ調整工場にタイヤを持ち込んでタイヤを再調整してから再度サーキットまで持ち込むというプロセスがサーキットで実行でき、調整プロセスが劇的に短縮できる。
また、ブレード20が所定幅の直刃であるので、所定の傾きの直線部F4を幅方向に比較的広い領域で形成できる。例えば、5/100mmの傾きの角度の直線部F4をトレッド部傾斜削ぎ面2cにより形成できる。このようなトレッド部傾斜削ぎ面2cを全周にわたって概ね均一に形成できる。
【0073】
本実施形態のモータースポーツ用タイヤ調整装置1において、各部が以下のように設定され、
図12に示すようにショルダ部5に削ぎ面である第1ショルダ部削ぎ面2d及び第2ショルダ部削ぎ面2eが形成されるように調整されたタイヤ2が得られる。例えば、上述のように、トレッド部4の削りに伴ってショルダ部5がやや角部を生じるように尖ってくる場合がある。このような課題を解決する手段として、ショルダ部5に第1ショルダ部削ぎ面2d及び第2ショルダ部削ぎ面2eを形成させる。
【0074】
本実施形態のモータースポーツ用タイヤ調整装置1において、各部が以下のように設定される。
例えばタイヤを調整するため、S3からS8までの一連のステップを設定を変えながら複数回実行してもよい。例えばショルダ部5を2回に分けて異なる角度で削いでもよい。
例えば、第2方向調整ステップS5において、第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のショルダ部5の第1ショルダ部削ぎ面2dを形成したい位置に対向する位置(例えばショルダ部5のトレッド部4側の位置)に位置決めさせる。
次に、ブレード角調整ステップS6により、ブレード角調整機構38は、第1方向と第2方向との間で、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線を、タイヤ2の中心軸線X2に対して傾けた角度に調整する。ブレード角調整機構38は、中心軸線X2に対して例えば+10又は-10度の角度に傾けられる。すなわち、ブレード20は、中心軸線X2に対して例えば10度右側又は左側に傾けられる。
さらに、第1方向調整ステップS7により、第1調整機構34は、ブレード20をタイヤ2に向けた第1方向に刃先20aがショルダ部5の表面を斜めに削ぐことができる位置まで移動させる。
【0075】
続く、タイヤ調整ステップS8においてこのように位置決めされたブレード20によりタイヤ2を削ぐことで、タイヤ2のショルダ部5に中心軸線X2に対して所定角度の第1ショルダ部削ぎ面2dが形成される。第1ショルダ部削ぎ面2dには、
図12に示すようにショルダ部5を削ぐことにより10度の傾きの直線部F5が所定幅で形成される。このような直線部F5はタイヤ2の外周方向に関しては中心軸線X2に対し真円に近い輪郭を形成している。よって、例えば、ショルダ部5に角部が形成されることを抑制し、角部がコーナーの曲がり時に路面とトレッド部4との間に巻き込まれるように引っかかり振動を生じさせたり、操舵性能を低下させたりする課題を生じさせることを抑制できる。
【0076】
次いで、S3からS8までの一連のステップを設定を変更しながら再度実行する。
例えば、第2方向調整ステップS5において、第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のショルダ部5の第2ショルダ部削ぎ面2eを形成したい位置に対向する位置(例えばショルダ部5の外側の位置)に位置決めさせる。第2ショルダ部削ぎ面2eは、第1ショルダ部削ぎ面2dよりも幅方向の外側に形成される。
次に、ブレード角調整ステップS6により、ブレード角調整機構38は、第1方向と第2方向との間で、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線を、タイヤ2の中心軸線X2に対して傾けた角度に調整する。ブレード角調整機構38は、中心軸線X2に対して例えば+30又は-30度の角度に傾けられる。すなわち、ブレード20は、中心軸線X2に対して例えば30度右側又は左側に傾けられる。
さらに、第1方向調整ステップS7により、第1調整機構34は、ブレード20をタイヤ2に向けた第1方向に刃先20aがショルダ部5の表面を斜めに削ぐことができる位置まで移動させる。第1調整機構は、第1ショルダ部削ぎ面2dを形成した位置よりも、ブレード20を第1方向にさらに進めた位置まで移動させる。
【0077】
続く、タイヤ調整ステップS8においてにおいてこのように位置決めされたブレード20によりタイヤ2を削ぐことで、タイヤ2のショルダ部5に中心軸線X2に対して所定角度の第2ショルダ部削ぎ面2eが形成される。第2ショルダ部削ぎ面2eには、
図12に示すようにショルダ部5を削ぐことにより30度の傾きの直線部F6が所定幅で形成される。このような直線部F6はタイヤ2の外周方向に関しては中心軸線X2に対し真円に近い輪郭を形成している。このような形態によれば、例えば、ショルダ部5において2段階で傾きが異なる削ぎ面を形成でき、角部が形成されることをより抑制し、角部がコーナーの曲がり時に路面とトレッド部4との間に巻き込まれるように引っかかり振動を生じさせたり、操舵性能を低下させたりする課題を生じさせることをより抑制できる。これに加えて、さらに、第1ショルダ部削ぎ面2dを形成することにより、コーナリング時に比較的浅い曲がり角度において接地しやすい面が形成され、所定の走行性能を引き出すように、タイヤの形状を設定できる。また、第2ショルダ部削ぎ面2eを形成することにより、コーナリング時に比較的深い曲がり角度において操舵性能等を向上させやすくでき、所定の走行性能を引き出すように、タイヤの形状を設定できる。
なお、他の変形例として、S3からS8までの一連のステップを設定を変更しながら複数回実行することにより、ショルダ部5に削ぎ面が複数回形成され、ショルダ部5の最終的な形状を円弧状の形状に近づけることができる。これにより角部の形成を抑制すると共に、コーナリング時によりスムーズな走行を可能にするように、タイヤのショルダ部5の形状を設定できる。例えば、第1ショルダ部削ぎ面2d及び第2ショルダ部削ぎ面2eを形成することにより、コーナーでの曲がり時に曲がり角度に対応して路面をよりグリップしやすい走行特性や走行性能を得ることができる。
【0078】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード20が、ブレード角調整機構38により傾きが調整されると共に、第1調整機構34及び第2調整機構36により位置決めされ、タイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有するような形状に調整することができる。これにより、タイヤ2の表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有するように調整できる。例えば、タイヤ2のトレッド部4をタイヤ2の軸線方向と平行な直線部を形成するように調整でき、例えば、タイヤ2のトレッド部4の接地面を増やすことができる。また、例えば、タイヤ2のトレッド部4の一部をタイヤ2の軸線方向からわずかに傾けた角度の直線部を形成するように調整でき、例えば、トレッド部4にキャンバ角度に合わせた直線部を形成することが可能となる。よって、タイヤ2の表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤ2の熱劣化を抑制しつつ、極めて高いレベルでタイヤ2の所望の走行特性を発揮するようにタイヤ2の形状を調整できる。また、例えば、比較的容易に、タイヤ2の形状を自在に変形させることが可能となることにより、ドライバやチームがタイヤ2の走行特性を変更してトライしやすくでき、ドライバの特性やコンディションに合わせてタイヤの本来の性能を極限まで引き出すよりよいセッティングに到達しやすくできる。よって、例えば、本発明の一実施形態によれば、タイヤ2の表面を削ぐことにより積極的にタイヤ2のトレッド部4やショルダ部5の形状を変更するように調整し、モータースポーツ用のタイヤ形状の変更を含めてタイヤをセッティング又は調整できる。
【0079】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード20により、タイヤ2の上記トレッド部4に中心軸線X2と平行方向に延びる削ぎ面が形成される。これにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2のトレッド部4に接地を向上する走行面を形成しやすくできる。さらに、回転するタイヤ2に第1調整機構34及び第2調整機構36により位置決めされたブレード20が当てられるので、タイヤ2の走行面を所定の径を有する円に近づけやすくできる。これにより、タイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有するような形状に調整できる。例えば、タイヤ2のトレッド部4をタイヤ2の軸線方向と平行な直線部を形成するように調整でき、タイヤ2の接地面を増やしやすくでき、走行性能を向上できる。よって、タイヤ2の表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤ2の熱劣化を抑制しつつ、さらに高いレベルでタイヤ2の所望の走行特性を発揮するようにタイヤ2の形状を調整できる。
【0080】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード角調整機構38は、第1方向と第2方向との間で、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線を、タイヤ2の中心軸線X2に対して傾けた角度に調整すると共に、第1調整機構34及び第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のトレッド部4に当てるように位置決めさせ、ブレード20によりタイヤ2のトレッド部4に中心軸線X2に対して所定角度の削ぎ面が形成される。これにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2のトレッド部4に所定角度の削ぎ面を形成し、タイヤ2の走行性能をより高い次元で調整できる。例えば、キャンバ角度に合わせた直線部の削ぎ面をトレッド部4に形成することにより、タイヤ2の路面への接地面積をより増加させ、タイヤ2のグリップ性能をより向上させることができる。よって、さらに高いレベルでタイヤ2の所望の走行特性を発揮するようにタイヤ2の形状を調整できる。
【0081】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード角調整機構38は、第1方向と第2方向との間で、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線を、タイヤ2の中心軸線X2に対して傾けた角度に調整すると共に、第1調整機構34及び第2調整機構36は、ブレード20をタイヤ2のショルダ部5に当てるように位置決めさせ、ブレード20により、タイヤ2のショルダ部5に中心軸線X2に対して所定角度の削ぎ面が形成されることができる。これにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2のショルダ部5に所定角度の削ぎ面を形成し、タイヤ2の走行性能をより高い次元で調整できる。例えば、タイヤ2のトレッド部4を削ぐことにより、タイヤ2のショルダ部5の曲がりが比較的鋭角となるような場合に、コーナリング時にショルダ部5が走行面にかかる(巻き込まれる)ような形で生じさせる振動や操舵性能の低下を、ショルダ部5に所定角度の削ぎ面を形成することにより、抑制できる。よって、コーナリング時のタイヤ2の走行性能の低下を抑制でき、さらに高いレベルでタイヤ2の所望の走行特性を発揮するようにタイヤ2の形状を調整できる。
【0082】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード角調整機構38は、ブレード20の傾きを、水平面上においてタイヤ2の中心軸線X2に対して-40度~+40度までの範囲内の角度とできるように構成されている。これにより、トレッド部4に中心軸線X2に対して所定角度の削ぎ面が形成できる、又はショルダ部5に中心軸線X2に対して所定角度の削ぎ面が形成できる。よって、一つの装置により、タイヤ2の表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤ2の熱劣化を抑制しつつ、極めて高いレベルでタイヤ2の所望の走行特性を発揮するようにタイヤ2の形状を調整しやすくできる。
【0083】
モータースポーツにおけるスポーツ走行後(例えば競技での高速走行後1日程度まではタイヤ2の温度が比較的高い状態となる)や外気温が高くタイヤ2の温度が比較的高いとき、所定幅(例えば約80mmの幅)のブレード20の刃先全体をタイヤ2の表面に当て、例えば0.5mm以上の深さまで削ろうとすると、ゴムが負荷に耐え切れず、ゴムがいわゆるストリングチーズのように柔らかく裂けて裂け目が広がってしまう問題が生じる場合がある。このような課題に対し、本発明の一実施形態によれば、モータースポーツ用タイヤ2調整装置は、さらに、ブレード20を上下方向において斜めに傾けるように構成されている第3調整機構を備える。これにより、削ぐときのタイヤ2の表面への抵抗による負荷を抑制し、タイヤ2の表面が裂けることを抑制できる。また、ブレード20を上下方向に斜めに傾けた場合であっても、依然として、ブレード20によりタイヤ2の表面にタイヤ2の幅方向に直線部を形成しやすくできる。よって、このような構造によれば、タイヤ2削ぎの効率化と信頼性の向上とを両立することができる。
【0084】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、さらに、第1調整機構34、第2調整機構36及びブレード角調整機構38を載せる構造体16と、構造体16を移動可能とする可動輪18と、を備え、タイヤ2を保持していない状態での重量が70kg~約200kgの範囲内の重量とされている。これにより、モータースポーツ用タイヤ2調整装置を大人2人から4人程度の人数によりサーキット等に持ち込みやすくでき、現場でタイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有するような形状に調整できる。よって、工場にタイヤ2を持ち帰って調整するよりも格段にモータースポーツ用タイヤ2の調整のしやすさや効率を向上できる。
【0085】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、さらに、液体を溜める液溜め部62とを備え、液溜め部62は、タイヤ2の下部を液体に浸すように配置される。これにより、タイヤ2を冷却してブレード20により削ぎやすくできると共に、例えば液体の成分によりブレード20の刃がタイヤ2をスムーズに削ぎやすくできる。よって、モータースポーツ用の上記タイヤ2を、より高い精度で、所望の走行特性を有するような形状に調整しやすくできる。
【0086】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード角調整ステップS6により傾きが調整されると共に、第1方向調整ステップS7及び第2方向調整ステップS5により位置決めされるブレード20により、タイヤ2の表面を意図した形状となるように削ぎ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有するような形状に調整することができる。これにより、タイヤ2の表面の形状を調整する場合における熱劣化を抑制しつつ、モータースポーツ用のタイヤ2を、所望の走行特性を有するように調整できる。例えば、タイヤ2のトレッド部4をタイヤ2の軸線方向と平行な直線部を形成するように調整でき、例えば、タイヤ2のトレッド部4の接地面を増やすことができる。また、例えば、タイヤ2のトレッド部4の一部をタイヤ2の軸線方向からわずかに傾けた角度の直線部を形成するように調整でき、例えば、トレッド部4にキャンバ角度に合わせた直線部を形成することが可能となる。よって、タイヤ2の表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤ2の熱劣化を抑制しつつ、極めて高いレベルでタイヤ2の所望の走行特性を発揮するようにタイヤ2の形状を調整できる。また、例えば、比較的容易に、タイヤ2の形状を自在に変形させることが可能となることにより、ドライバやチームがタイヤ2の走行特性を変更してトライしやすくでき、ドライバの特性やコンディションに合わせてタイヤ2の本来の性能を極限まで引き出すよりよいセッティングに到達しやすくできる。
【0087】
本発明を実施するための形態は上記に限定されるものではなく、さらなる他の変形例を適用することができる。モータースポーツ用タイヤ調整装置1は、さらに、ブレード20を上下方向において斜めに傾けるように構成されている第3調整機構を備えていてもよい。第3調整機構は、ブレード取付部22の右側部分と左側部分とを支持するそれぞれの支持部の高さを変更可能な機構である。これにより、例えば、ブレード20は、ブレード取付部22に取付けられた状態で、刃先20aに沿う刃先線は、中心軸線X2と平行な状態から、タイヤの接線方向において中心軸線X2に対して+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられている。例えば、刃先20aの右側が左側に対して、やや上方に位置し、刃先20aが約5度の傾きで配置される。タイヤのトレッド部4に対してブレードは右側から左側に下るように斜めに配置される。ここで、モータースポーツにおける走行後(例えば高速走行後1日程度まではタイヤの温度が比較的高い状態となる)や外気温が高くタイヤの温度が比較的高いとき、所定幅(例えば約80mmの幅)のブレード20全体をタイヤの表面に当て、例えば0.5mm以上の深さまで削ろうとすると、ゴムが負荷に耐え切れず、ゴムがいわゆるストリングチーズのように柔らかく裂けて裂け目が広がってしまう問題が生じる場合がある。このような課題に対し、ブレードの刃先20aが中心軸線X2に対して縦方向の面(例えば第2仮想面E2)上において斜めに傾けられれば(例えばブレード20及びブレード取付部22を傾ける)、タイヤの表面への抵抗による負荷を抑制し、タイヤの表面が裂けることを抑制できる。また、ブレード20はわずかな程度の上下方向の傾きであるので、依然として、ブレード20によりタイヤの表面に平面を形成しやすくできる。よって、このような構造によれば、タイヤ削ぎの効率化と信頼性の向上とを両立することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 :モータースポーツ用タイヤ調整装置
2 :タイヤ
4 :トレッド部
5 :ショルダ部
12 :タイヤ保持部
14 :タイヤ回転駆動部
16 :構造体
20 :ブレード
20a :刃先
22 :ブレード取付部
24 :ブレード回転駆動部
34 :第1調整機構
36 :第2調整機構
38 :ブレード角調整機構
62 :液溜め部
64 :液体
B :回転方向
C :回転方向
X1 :中心軸線
X2 :中心軸線
X3 :中心軸線