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  • 特開-基材レス両面粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131761
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】基材レス両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/10 20180101AFI20240920BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240920BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09J7/10
C09J7/38
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042207
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】▲黒▼田 康義
(72)【発明者】
【氏名】福本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛生
(72)【発明者】
【氏名】片岡 寛幸
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004EA05
4J040DF021
4J040JB09
4J040KA26
4J040NA12
4J040NA15
4J040NA19
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】高温時に優れた粘着性を有するとともに常温時において優れた再剥離性を有する基材レス両面粘着テープを提供する。
【解決手段】本発明の基材レス両面粘着テープは、粘着剤層を備え、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mm以下であり、厚みが200μm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備え、
180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、
JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mm以下であり、
厚みが200μm以下である基材レス両面粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、アクリル系重合体(A)を含有するアクリル系粘着剤を含み、
前記アクリル系重合体(A)は、ブチルアクリレートに由来する構成単位及びアクリル酸に由来する構成単位を含み、
前記アクリル系重合体(A)における前記ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合が80質量%以上であり、
前記アクリル系重合体(A)における前記アクリル酸に由来する構成単位の含有割合が5質量%以上である請求項1に記載の基材レス両面粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤は粘着付与樹脂をさらに含み、
前記粘着付与樹脂の含有量は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して8質量部以下である請求項2に記載の基材レス両面粘着テープ。
【請求項4】
JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が5N/25mm以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の基材レス両面粘着テープ。
【請求項5】
JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が17N/25mm以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の基材レス両面粘着テープ。
【請求項6】
粘着剤層を備え、
180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、
JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離であり、
厚みが200μm以下である基材レス両面粘着テープ。
【請求項7】
SUS板に貼り付けて80℃の温度下で24時間放置した後、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離である請求項6に記載の基材レス両面粘着テープ。
【請求項8】
車両内装部品用基材レス両面粘着テープである請求項1~7のいずれか1項に記載の基材レス両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材レス両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電化製品、車両、住宅及び建材などの製品において各種の部品を固定するために、粘着剤よりなる粘着剤層を備える粘着テープが広く用いられている。粘着剤としては、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートなどのアクリル(メタ)アクリレート由来の構成単位を主成分とするアクリル系ポリマーを含有する粘着剤が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、環境への配慮から、製品を廃棄する際に、製品に使用された両面粘着テープは分別回収されることが望ましい。このため、両面粘着テープを被着体から容易に剥がすことができるようにするために、両面粘着テープは、再剥離性を有することが望ましい。再剥離性を有する両面粘着テープとして、例えば、特許文献3に記載されている再剥離性粘着シートが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-021067号公報
【特許文献2】特開2015-120876号公報
【特許文献3】特開2009-24130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、自動車は、電気自動車へのシフトが進んでいる。電気自動車には、モーター、バッテリー、パワーエレクトロニクス部品など熱を発生する部品が使用されているため、電気自動車では、両面粘着テープは高温環境下で使用される場合が多い。また、環境への配慮から、電気自動車についても、廃棄する際に、両面粘着テープは分別回収されることが望ましい。このため、電気自動車に使用される両面粘着テープにも、再剥離性が求められている。
しかしながら、粘着両面シートに再剥離性を付与する場合、通常、両面粘着テープの粘着力を低減することになるので、両面粘着テープが電気自動車で使用される環境である高温環境下において、両面粘着テープの粘着力が弱くなるという問題が発生する。
そこで、本発明は、高温時に優れた粘着性を有するとともに常温時において優れた再剥離性を有する基材レス両面粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討の結果、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力、及び厚みの値を所定の範囲内にすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
[1]粘着剤層を備え、180℃の温度で、耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mm以下であり、厚みが200μm以下である基材レス両面粘着テープ。
[2]前記粘着剤層は、アクリル系重合体(A)を含有するアクリル系粘着剤を含み、前記アクリル系重合体(A)は、ブチルアクリレートに由来する構成単位及びアクリル酸に由来する構成単位を含み、前記アクリル系重合体(A)における前記ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合が80質量%以上であり、前記アクリル系重合体(A)における前記アクリル酸に由来する構成単位の含有割合が5質量%以上である上記[1]に記載の基材レス両面粘着テープ。
[3]前記アクリル系粘着剤は粘着付与樹脂をさらに含み、前記粘着付与樹脂の含有量は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対して8質量部以下である上記[2]に記載の基材レス両面粘着テープ。
[4]JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が5N/25mm以上である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の基材レス両面粘着テープ。
[5]JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が17N/25mm以上である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の基材レス両面粘着テープ。
[6]粘着剤層を備え、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離であり、厚みが200μm以下である基材レス両面粘着テープ。
[7]SUS板に貼り付けて80℃の温度下で24時間放置した後、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離である上記[6]に記載の基材レス両面粘着テープ
[8]車両内装部品用基材レス両面粘着テープである上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の基材レス両面粘着テープ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高温時に優れた粘着性を有するとともに常温時において優れた再剥離性を有する基材レス両面粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基材レス両面粘着テープの高温での耐平面反発性の試験方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の発明の基材レス両面粘着テープ]
本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープは、粘着剤層を備え、180℃の温度で、耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mm以下であり、厚みが200μm以下である。これにより、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープは、高温時に優れた粘着性を有するとともに常温時において勝れた再剥離性を有するものとなる。なお、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープは、基材を備えていない。
【0009】
(耐平面反発性の試験を行ったときの変位量)
本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量は0.5mm以下である。180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mmよりも大きいと、電気自動車などの中の高温環境下で基材レス両面粘着テープを使用する場合、基材レス両面粘着テープの粘着力が不十分となる場合がある。このような観点から、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量は、好ましくは0.3mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下である。本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープにおける、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量の範囲の下限値は、通常、0.0mmである。180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量は、例えば、アクリル系重合体(A)を構成する成分によって適宜調整可能であり、より具体的には粘着剤層中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合及びアクリル酸に由来する構成単位の含有割合により調整することができる。また、粘着付与樹脂の種類、量などによっても適宜調整可能である。
【0010】
(23℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力)
本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS(ステンレス鋼:Steel Use Stainless)板に対する180°引き剥がし粘着力は12N/25mm以下である。JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mmよりも大きいと、被着体から基材レス両面粘着テープを容易に剥がすことができず、基材レス両面粘着テープの回収効率が悪くなる。このような観点から、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、好ましくは11N/25mm以下であり、より好ましくは10N/25mm以下であり、さらに好ましくは9N/25mm以下であり、よりさらに好ましくは8N/25mm以下である。また、常温時における基材レス両面粘着テープの粘着力の観点から、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、好ましくは5N/25mm以上であり、より好ましくは6N/25mm以上であり、さらに好ましくは7N/25mm以上である。JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、例えば、アクリル系重合体(A)を構成する成分によって適宜調整可能であり、より具体的には粘着剤層中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合及びアクリル酸に由来する構成単位の含有割合により調整することができる。また、粘着付与樹脂の種類、量などによっても適宜調整可能である。
【0011】
(80℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力)
本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、好ましくは17N/25mm以上である。JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が17N/25mm以上であると、高温環境下における基材レス両面粘着テープの粘着力をさらに高くすることができる。このような観点から、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、より好ましくは17.5N/25mm以上であり、さらに好ましくは18.0N/25mm以上であり、よりさらに好ましくは18.5N/25mm以上であり、よりさらに好ましくは25N/25mm以上である。本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力の範囲の上限値は、特に限定されないが、通常50N/25mmである。JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。JIS Z 0237:2009に準拠して80℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、例えば、アクリル系重合体(A)を構成する成分によって適宜調整可能であり、より具体的には粘着剤層中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合及びアクリル酸に由来する構成単位の含有割合により調整することができる。また、粘着付与樹脂の種類、量などによっても適宜調整可能である。
【0012】
(厚み)
本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープの厚みは、200μm以下である。基材レス両面粘着テープの厚みが200μmよりも大きいと、被着体から基材レス両面粘着テープを容易に剥がすことができず、基材レス両面粘着テープの回収効率が悪くなる。このような観点から、発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープの厚みは、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは120μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、よりさらに好ましくは70μm以下である。また、基材レス両面粘着テープの粘着性の観点から、本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープの厚みは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは25μ以上であり、よりさらに好ましくは40μm以上である。
【0013】
(アクリル系粘着剤)
本発明の第1の発明の基材レス両面粘着テープにおける粘着剤層は、アクリル系重合体(A)を含有するアクリル系粘着剤を含む。これにより、基材レス両面粘着テープにおける180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量及びJIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力を上述の範囲内とすることが容易になる。
【0014】
<アクリル系重合体(A)>
アクリル系重合体(A)は、少なくともアクリル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。アクリル系重合体(A)は、極性基を有する重合体であることが好ましい。
極性基としては、活性水素を有し、好ましくは後述する架橋剤(B)と反応可能な官能基であり、具体的には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの官能基のなかでは、カルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基を含有することがより好ましい。カルボキシ基及び水酸基は、後述する架橋剤(B)との反応性が高く、容易に架橋構造を形成することが可能である。
【0015】
アクリル系重合体(A)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体、又は、上記モノマー(A1)及び(A2)と、(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)との共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体が好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの一方又はこれら両方を意味する用語として使用し、他の類似する用語も同様である。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中で、耐熱性を向上させる観点から、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマー(A1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(A1)の中でも、耐熱性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が2~8のアルキルアクリレートを含むことがより好ましい。アルキル基の炭素数が2~8のアルキルアクリレートは、モノマー(A1)全量基準で、例えば50~100質量%が好ましく、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは85~100質量%である。
【0017】
極性基含有モノマー(A2)のうちカルボキシ基を含有するモノマー(以下、「カルボキシ基含有モノマー(X1)」ともいう)としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では、耐熱性を向上させる観点からはアクリル酸及びメタアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、極性基含有モノマー(A2)のうち水酸基を含有するモノマー(以下、「水酸基含有モノマー(X2)」ともいう)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性を向上させる観点からは水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
極性基含有モノマー(A2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
極性基含有モノマー(A2)としては、カルボキシ基含有モノマー(X1)及び水酸基含有モノマー(X2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基含有モノマー(X1)を含むことがより好ましい。また、カルボキシ基含有モノマー(X1)及び水酸基含有モノマー(X2)からなる群から選ばれる少なくとも1種としては、好ましくは、アクリル酸、メタアクリル酸、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
上記(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)としては、モノマー(A1)及び(A2)と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル基を有する化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。モノマー(A3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
アクリル系重合体(A)に用いるモノマー成分の使用量は、全モノマー成分に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)が好ましくは80質量%以上であり、極性基含有モノマー(A2)が好ましくは5質量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)の使用量、及び極性基含有モノマー(A2)の使用量が上記範囲内であると、基材レス両面粘着テープにおける180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量及びJIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力を上述の範囲内とすることが容易になる。
【0021】
アクリル系重合体(A)に用いるモノマー成分の使用量を上記使用量とすることにより、アクリル系重合体(A)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)に由来する構成単位の含有割合が80質量%以上となり、極性基含有モノマー(A2)に由来する構成単位の含有割合が5質量%以上となる。
また、上記の通り、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)としてブチルアクリレートを、極性基含有モノマー(A2)としてアクリル酸を使用することが好ましく、したがって、アクリル系重合体(A)において、ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合が80質量%以上となり、アクリル酸に由来する構成単位の含有割合が5質量%以上となることが好ましい。
【0022】
上述の観点から、アクリル系重合体(A)に用いるモノマー成分の使用量は、全モノマー成分に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)が、より好ましくは80質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上93質量%以下であり、よりさらに好ましくは88質量%以上92質量%以下であり、極性基含有モノマー(A2)が、より好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以上15質量%以下であり、よりさらに好ましくは8質量%以上12質量%以下である。
【0023】
したがって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)に由来する構成単位の含有割合は、より好ましくは80質量%以上95質量%以下となり、さらに好ましくは85質量%以上93質量%以下となり、よりさらに好ましくは88質量%以上92質量%以下となる。また、極性基含有モノマー(A2)に由来する構成単位の含有割合は、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となり、さらに好ましくは7質量%以上15質量%以下となり、よりさらに好ましくは8質量%以上12質量%以下となる。
【0024】
また、アクリル系重合体(A)においてブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合は、より好ましくは80質量%以上95質量%以下となり、さらに好ましくは85質量%以上93質量%以下となり、よりさらに好ましくは88質量%以上92質量%以下となり、アクリル酸に由来する構成単位の含有割合は、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となり、さらに好ましくは7質量%以上15質量%以下となり、よりさらに好ましくは8質量%以上12質量%以下となる。
【0025】
(A1)及び(A2)以外のモノマー(A3)の使用量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下であり、2質量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0026】
また、粘着剤層の接着性能を良好にし、耐熱性を向上させる観点から、アクリル系重合体(A)に用いる全モノマー成分中のモノマー(A1)及びモノマー(A2)の合計量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、上限は100質量%である。
【0027】
アクリル系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が30万~200万であることが好ましく、50万~200万であることがより好ましく、50万~150万であることがさらに好ましく、60万~110万であることがよりさらに好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることで、粘着剤層の粘着性能を高めるとともに、耐熱性を良好にしやすくなる。重量平均分子量は、重合開始剤の使用量、重合温度等の重合条件を調整するか、重合方法を選択することにより調整できる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
例えば、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)を用いて測定することができる。上記装置にサンプルを流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めることができる。カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いることができる。
【0028】
アクリル系重合体(A)は、アクリル系粘着剤の主成分となるものであり、アクリル系粘着剤全量(不揮発分基準)に対して、通常、50質量%以上、好ましくは55~98質量%、より好ましくは60~95質量%である。
【0029】
アクリル系重合体(A)の製造方法に特に制限はないが、例えば、前述したモノマー成分を重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法が挙げられる。重合方法としては、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0030】
フリーラジカル重合法では、モノマー成分を重合開始剤の存在下重合させるとよい。重合開始剤としては、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、o-クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート又はジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0031】
またアゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。
重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0032】
重合を行う際には、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としてはチオール化合物が好ましく、例えば、ラウリルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸オクチル、β-メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)、チオグリコール酸ブチル;プロパンチオール類;ブタンチオール類;チオホスファイト類等が挙げられる。
連鎖移動剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0033】
<架橋剤(B)>
本発明のアクリル系粘着剤は、上記したアクリル系重合体(A)に加えて、架橋剤(B)を含有することが好ましい。架橋剤(B)は、例えばアクリル系重合体(A)が有する極性基との反応により、粘着剤層を架橋しうる成分であり、複合構成体の上記せん断強度を高めやすくなる。
架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0034】
イソシアネート系架橋剤は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、デスモジュールL75(C)(住化コベストロ製)、コロネートL-45E、コロネートL-55E(東ソー社製)等の各種ポリイソシアネート化合物、スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)等のビューレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、HL(バイエルAG社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン社製)等のイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)、コロネートL、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0035】
エポキシ系架橋剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E-AX、E-5C(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0036】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、N,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N′-ジフェニルメタン-4,4′-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
また、金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられ、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、アルミキレートA、アルミキレートM(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
アクリル系粘着剤における架橋剤(B)の含有量は、粘着剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、例えば、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、よりさらに好ましくは1.5質量部以上である。架橋剤(B)の含有量をこれら下限値以上とすることで、粘着剤層の布帛に対する接着性が良好となり、上記物性を高めやすくなる。また、アクリル系粘着剤における架橋剤(B)の含有量の上限は、特に限定されないが、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、例えば20質量部、好ましくは15質量部である。
【0038】
<粘着付与樹脂(C)>
アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)に加えて、さらに粘着付与樹脂(C)を含有することが好ましい。粘着付与樹脂(C)としては、例えば、ロジン系樹脂、重合ロジンエステル樹脂などのロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂等のロジン系粘着付与樹脂や、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系粘着付与樹脂や、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性の観点から、粘着付与樹脂(C)としてはロジン系粘着付与樹脂が好ましく、ロジンエステル系樹脂がより好ましく、重合ロジンエステル樹脂がさらに好ましい。
【0039】
粘着付与樹脂(C)の軟化点は、135℃以上が好ましい。粘着付与樹脂(C)の軟化点が135℃以上であると、基材レス両面粘着テープの耐熱性をさらに改善することができる。このような観点から、粘着付与剤の軟化点は、140℃以上がより好ましく、145℃以上がさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の軟化点は、粘着剤に適切な粘着性能を付与する観点から、165℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、155℃以下がさらに好ましい。なお、軟化点はJIS K 2207に準拠して測定することができる。
【0040】
アクリル系粘着剤中の粘着付与樹脂(C)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、例えば12質量部以下であり、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下である。上記上限値以下とすることで、基材レス両面粘着テープの耐熱性をさらに良好にすることができる。また、アクリル系粘着剤中の粘着付与樹脂(C)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。上記下限値以上とすることで、基材レス両面粘着テープの粘着性をさらに良好にすることができる。
【0041】
アクリル系粘着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、充填剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、粘度調節剤等の粘着剤に配合される添加剤が適宜配合されてもよい。
また、アクリル系粘着剤は、有機溶剤等により希釈されてもよい。希釈溶剤は、アクリル系重合体(A)を合成するときに使用した溶媒でもよいし、アクリル系重合体(A)を合成した後に加えられたものでもよい。
【0042】
[第2の発明の基材レス両面粘着テープ]
以下、本発明の第2の発明の基材レス両面粘着テープを説明する。なお、本発明の第1の発明の基材レス両面テープと同様な点については説明を省略し、本発明の第1の発明の基材レス両面テープと異なる点を主に説明する。
本発明の第2の発明の基材レス両面粘着テープは、粘着剤層を備え、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離であり、厚みが200μm以下である。これにより、本発明の第2の発明の基材レス両面粘着テープは、高温時に優れた粘着性を有するとともに常温時において優れた再剥離性を有するものとなる。
【0043】
(23℃の温度で180°引き剥がしを行ったときの剥離モード)
本発明の第2の発明の基材レス両面粘着テープでは、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離である。剥離モードが界面剥離でないと、例えば、層間剥離がおこり、粘着テープが被着体から分別しにくくなるので、基材レス両面粘着テープの回収の効率が悪くなる場合がある。なお、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードは後述の実施例に記載の方法で測定することができる。JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードは、例えば、粘着剤層中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合及びアクリル酸に由来する構成単位の含有割合により調整することができる。
【0044】
(SUS板に貼り付けて80℃の温度下で24時間放置した後、23℃の温度で180°引き剥がしを行ったときの剥離モード)
本発明の第2の発明の基材レス両面粘着テープでは、SUS板に貼り付けて80℃の温度下で24時間放置した後、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードが界面剥離であることが好ましい。剥離モードが界面剥離であると、被着体に貼り付けられた基材レス両面粘着テープを、弱い力で被着体から剥がすことができるので、高温環境下において長時間使用された基材レス両面粘着テープの回収の効率をさらに改善することができる。なお、SUS板に貼り付けて80℃の温度下で24時間放置した後、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードは後述の実施例に記載の方法で測定することができる。SUS板に貼り付けて80℃の温度下で24時間放置した後、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度でSUS板から180°引き剥がしを行ったときの剥離モードは、例えば、粘着剤層中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有割合及びアクリル酸に由来する構成単位の含有割合により調整することができる。
【0045】
[基材レス両面粘着テープの用途]
本発明の第1の発明及び第2の発明の基材レス両面粘着テープの用途は特に限定されない。本発明の第1の発明及び第2の発明の基材レス両面粘着テープの用途には、例えば、車両内装部品、車両外装部品、建築材料、航空内装部品、産業機器、放熱材部品、電車内装部品等が挙げられる。これらの用途の中で、車両内装部品用途において使用されることが好ましい。すなわち、本発明の第1の発明及び第2の発明の基材レス両面粘着テープは、好ましくは車両内装部品用基材レス両面粘着テープである。例えば、車両内装部品の固定に使用することが好ましい。車両用内装部品には、例えば、天井パネル、ドアパネル、インストルメントパネルなどの車載用パネル、車載用ヒーター、カーエアコン、ドアトリム、制振部材、エンブレム、加飾フィルム、止水部材などが挙げられる。車両内装部品は、例えば基材レス両面粘着テープを介して車両に固定されるとよい。
また、本発明の両面粘着テープは、ヒーター、エンジン周辺部、電源周辺部、各種電子部品などの高温部位に対して使用されることが好ましい。本発明の両面粘着テープは、耐熱性が高く、高温部位に対して使用しても、良好な粘着力を維持することができる。
【0046】
[基材レス両面粘着テープの製造方法]
本発明の第1の発明及び第2の発明の基材レス両面粘着テープの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法により製造することができる。例えば、まず、必要に応じて有機溶剤などで希釈された粘着剤組成物を用意し、粘着剤組成物を剥離シートなどの支持体上に塗布して、必要に応じて加熱して乾燥して、粘着剤層を形成すればよい。剥離シートに粘着剤組成物を塗布する場合には、剥離シートの剥離面上に塗布するとよい。そして、粘着剤層の剥離シートが配置されていない面に、さらに剥離シートを貼り合わせて、2枚の剥離シートにより挟まれた本発明の第1の発明及び第2の発明の基材レス両面粘着テープが得られる。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0048】
[評価方法]
各実施例及び比較例について、各物性の測定、及び評価は以下の要領で行った。
<厚み>
ダイヤルゲージにより測定した。
【0049】
<耐平面反発性の試験を行ったときの変位量>
図1に、粘着テープの高温での耐平面反発性の試験方法を示す模式図を示す。
図1に示すように、幅25mm×長さ150mmに裁断した基材レス両面粘着テープ1を用いて、アルミ板(A)(幅25mm×長さ150mm×厚み0.5mm)6とアルミ板(B)(幅25mm×長さ200mm×厚み2mm)5とを積層した。この積層体を2kgの条件でローラーを用いて圧着した後、24時間静置し、基材レス両面粘着テープ1を介してアルミ板(A)6とアルミ板(B)5とが貼り合わされた試験サンプルを作製した。この試験サンプルをアルミ板(A)6を上にした状態で治具7に挟み込み、治具7の幅を190mmにまで狭めて試験サンプルを弓状に反らせ、180℃の条件下、168時間静置した。168時間静置後の試験サンプルにおける基材レス両面粘着テープ1の浮きの高さ(変位量)を測定した。
【0050】
<23℃及び80℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力>
基材レス両面粘着テープの一方の面(測定しない側)を厚み23μmのポリイミドフィルムで裏打ちした後に、幅25mm×長さ75mmに裁断し、試験片を作製した。この試験片をSUS板にその粘着剤層(測定する側)がSUS板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせた。その後、23℃、50%RHで20分養生し、試験サンプルを作製した。JIS Z 0237:2009に準じて、23℃及び80℃の条件下、この試験サンプルを引張速度300mm/minの条件で180°方向に剥離し、粘着力(N/25mm)を測定した。
【0051】
<23℃温度で180°引き剥がしを行ったときの剥離モード>
上述の23℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力の評価で使用した剥離後の試験サンプルの剥離モードを調べた。
また、上述の23℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力の評価で使用した試験サンプルと同様の試験サンプルを80℃の温度下で24時間放置し、その試験サンプルについても、上述の23℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力の評価を行い、剥離モードを調べた。SUS板と基材レス両面粘着テープの界面で剥離が起こり、SUS板上に糊残りがないものを「界面剥離」とした。ここで、「糊残りがない」とは目視でSUS板上を観察して粘着剤成分がない場合をいう。一方目視でSUS板上を観察して粘着剤成分がある場合を、「層間剥離」という。
【0052】
<23℃の温度での易解体姓評価>
上述の23℃及び80℃の温度で測定した180°引き剥がし粘着力の評価で使用した試験サンプルと同じ試験サンプルを使用して、SUS板から基材レス両面粘着テープを剥がすことによる官能試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:剥がすときに抵抗を感じず、弱い力で基材レス両面粘着テープをSUS板から剥がすことができた。
△:剥がすときに少し抵抗を感じたが、基材レス両面粘着テープをSUS板から剥がすのに強い力を必要としなかった。
×:剥がすときに強い抵抗を感じて、基材レス両面粘着テープをSUS板から剥がすのに強い力を必要とした。
【0053】
(アクリル系粘着剤Aの調製)
反応容器のうちに、n-ブチルアクリレート100質量部及びアクリル酸11質量部を導入したモノマー成分を得た。該モノマー成分を酢酸エチルに溶解して、還流点において、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.1質量部を添加し、70℃で5時間還流させて、重量平均分子量が72万のアクリル系重合体の溶液を得た。
【0054】
上記アクリル系重合体(A)含有溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、ロジン系樹脂(TF)(重合ロジンエステル樹脂、水酸基価46、軟化点150℃、生物由来炭素含有率95質量%)を7質量部、架橋剤(イソシアネート系架橋剤)2.6質量部配合して、アクリル系粘着剤Aを調製した。
【0055】
(アクリル系粘着剤Bの調製)
アクリル系粘着剤1(大塚化学株式会社製、商品名「TERPLUS NS004」)100質量部(不揮発分換算)に対し、ロジン系樹脂(TF)(重合ロジンエステル樹脂、水酸基価46、軟化点150℃、生物由来炭素含有率95質量%)を30質量部、架橋剤(イソシアネート系架橋剤)4.4質量部配合して、アクリル系粘着剤Bを調製した。
【0056】
(アクリル系粘着剤Cの調製)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ブチルアクリレート(BA)96.9質量部、アクリル酸(AAc)2.9質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.2質量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、5時間重合反応を行い、ポリマー(X1)含有溶液を得た。
上記アクリル共重合体溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、ロジン系樹脂(TF)(重合ロジンエステル樹脂、水酸基価46、軟化点150℃、生物由来炭素含有率95質量%)を14質量部、架橋剤(イソシアネート系架橋剤)1.4質量部配合配合して、アクリル系粘着剤Cを調製した。
【0057】
[実施例1]
(両面粘着テープの作製)
支持体である剥離シート(住化加工紙社製「SLB-80WD」)にアクリル系粘着剤Aを塗布し、110℃で3分間加熱乾燥した後、支持体から剥離して、アクリル系粘着剤から形成された粘着剤層単体からなる厚さ50μmの基材レス両面粘着テープを得た。
【0058】
[実施例2]
基材レス両面粘着テープの厚みを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0059】
[比較例1]
アクリル系粘着剤Aを、アクリル系粘着剤Bに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0060】
[比較例2、3]
アクリル系粘着剤Aを、アクリル系粘着剤Bに変更し、基材レス両面粘着テープの厚みを表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0061】
[比較例4]
アクリル系粘着剤Aを、アクリル系粘着剤Cに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1~2の基材レス両面粘着テープは、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mm以下であり、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mm以下であり、厚みが200μm以下であった。このため、実施例1~2の基材レス両面粘着テープは、高温時に優れた粘着性を有するとともに常温時において優れた再剥離性を有していた。
比較例1、2及び4の基材レス両面粘着テープは、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mmよりも大きかった。このため、比較例1、2及び4の基材レス両面粘着テープは、高温時における粘着性が悪かった。
比較例3の基材レス両面粘着テープは、180℃の温度で耐平面反発性の試験を行ったときの変位量が0.5mmよりも大きく、JIS Z 0237:2009に準拠して23℃の温度で測定したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力が12N/25mmよりも大きかった。このため、常温時における再剥離性が悪かった。
【符号の説明】
【0064】
1 粘着テープ
5 アルミ板(B)
6 アルミ板(A)
7 治具
図1