(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131762
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240920BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240920BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01S7/497
G01C3/06 120Q
G02B26/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042208
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】近岡 篤彦
【テーマコード(参考)】
2F112
2H045
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112BA12
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA04
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA19
2F112DA25
2F112DA28
2F112DA32
2F112EA05
2F112FA23
2F112FA45
2F112GA01
2H045AB13
2H045AB25
2H045AB38
2H045BA13
2H045BA22
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA50
5J084BB02
5J084BB28
5J084CA03
5J084EA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の検出用光を用いる物体検出装置における検出精度の向上。
【解決手段】複数の検出用光を用いる物体検出装置であって、偏向器の反射面に対して第1検出用光と前記第2光源の第2検出用光とが互いに異なる方向から入射するように構成された走査光源部と、第1検出用光及び第2検出用光の何れかによる反射光を受光する受光部と、走査光源部及び受光部のそれぞれと接続された制御部とを含み、制御部は、補正条件設定時において、第1検出用光に対応した第1検出結果と第2検出用光に対応した第2検出結果との差異が最小となる場合の光軸条件を特定し、通常動作時において、特定された光軸条件を基に偏向器等の補正を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元空間に存在する物体を検出するための装置であって、
第1光源及び第2光源と、少なくとも直交する二方向に偏向可能な偏向器とを有し、当該偏向器の反射面に対して前記第1光源の第1検出用光と前記第2光源の第2検出用光とが互いに異なる方向から入射するように構成された走査光源部と、
前記走査光源部から出射した前記第1検出用光及び前記第2検出用光の何れかによる反射光を受光する受光部と、
前記走査光源部及び前記受光部のそれぞれと接続されており、前記走査光源部の動作を制御するとともに前記受光部の出力を用いて前記物体を検出するための処理を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、
補正条件設定時において、前記第1検出用光と前記第2検出用光とが共通の被検出物体を走査するように前記走査光源部を制御して、前記第1検出用光に対応した前記受光部の出力に基づく第1検出結果と前記第2検出用光に対応した前記受光部の出力に基づく第2検出結果との差異が最小となる場合の前記第1検出用光と前記第2検出用光の各々の光軸条件を特定し、
通常動作時において、前記光軸条件を基に、前記第1光源及び前記第2光源の射出パターン及び/又は前記偏向器の偏向角度範囲を補正する、
物体検出装置。
【請求項2】
前記第1検出用光を用いる第1測定範囲と前記第2検出用光を用いる第2測定範囲とが隣接しており、
前記制御部は、前記補正条件設定時において、前記第1測定範囲と前記第2測定範囲の各々の一部分同士の重複範囲を生じ、当該重複範囲に前記被検出物体が位置するように前記偏向器の動作を制御する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記補正条件設定時における前記第1検出用光及び前記第2検出用光の各々のビーム照射位置が前記通常動作時に比較して相対的に狭い間隔となるように前記偏向器を制御する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記第1検出用光に対応した前記第1検出結果と前記第2検出用光に対応した前記第2検出結果の各々は、前記被検出物体との距離である、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記光軸条件を基に、空間座標を算出するための係数を補正する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記第1検出用光と前記第2検出用光の各々がレーザ光である、
請求項1に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平07-084045号公報(特許文献1)には、複数の方向にレーザビームを照射してそれぞれのビーム方向の物体からの反射光を受光してそれぞれの距離を測定する距離測定装置において、上記複数のレーザビームを同時に走査してそれぞれのビーム方向にある物体までの距離を測定するようにした距離測定装置が記載されている。
【0003】
ところで、複数方向へレーザ(検出用光)の照射を行う場合に、それぞれのレーザの偏向器への入射光軸が理想状態からずれていると、各レーザによる照射範囲の相互間に隙間が生じる場合や、反対に照射範囲同士が一部重複してしまう場合があり、測定結果の精度低下を招く可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示に係る具体的態様は、複数の検出用光を用いる物体検出装置における検出精度を向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る一態様の物体検出装置は、三次元空間に存在する物体を検出するための装置であって、(a)第1光源及び第2光源と、少なくとも直交する二方向に偏向可能な偏向器とを有し、当該偏向器の反射面に対して前記第1光源の第1検出用光と前記第2光源の第2検出用光とが互いに異なる方向から入射するように構成された走査光源部と、(b)前記走査光源部から出射した前記第1検出用光及び前記第2検出用光の何れかによる反射光を受光する受光部と、(c)前記走査光源部及び前記受光部のそれぞれと接続されており、前記走査光源部の動作を制御するとともに前記受光部の出力を用いて前記物体を検出するための処理を行う制御部と、を含み、(d)前記制御部は、(d1)補正条件設定時において、前記第1検出用光と前記第2検出用光とが共通の被検出物体を走査するように前記走査光源部を制御して、前記第1検出用光に対応した前記受光部の出力に基づく第1検出結果と前記第2検出用光に対応した前記受光部の出力に基づく第2検出結果との差異が最小となる場合の前記第1検出用光と前記第2検出用光の各々の光軸条件を特定し、(d2)通常動作時において、前記光軸条件を基に、前記第1光源及び前記第2光源の射出パターン及び/又は前記偏向器の偏向角度範囲を補正する、物体検出装置である。
【0007】
上記構成によれば、複数の検出用光を用いる物体検出装置における検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の物体検出装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2(A)及び
図2(B)は、走査光源部の各光源及びMEMSミラーの構成例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、各光源からMEMSミラーへ入射するレーザ光の光軸ずれを測定する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(A)及び
図4(B)は、ステップS1の処理の概念図である。
【
図5】
図5(A)及び
図5(B)は、ステップS2の処理の概念図である。
【
図6】
図6は、走査周波数が相対的に下げられる処理の概念図である。
【
図7】
図7は、サブフレーム数が増やされる処理の概念図である。
【
図8】
図8は、ステップS3の詳細な処理フローチャートである。
【
図9】
図9は、偏向条件と対応する距離Dのデータ構成例を示す図である。
【
図10】
図10(A)は、各光軸方向を説明するための図である。
図10(B)は、ビーム射出方向群を説明するための図である。
【
図11】
図11は、通常モード時の動作手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12(A)は、偏向角θ
H、θ
Vの関係の一例を示したグラフである。
図12(B)は、主走査方向に測定領域が並ぶ形態について説明するための図である。
【
図14】
図14は、副走査方向に測定領域が並ぶ形態について説明するための図である。
【
図16】
図16は、変形実施例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の物体検出装置の構成を示す図である。本実施形態の物体検出装置1は、複数のレーザ光(検出用光)L1、L2を用いて対象空間へ光走査を行って反射光L3を受光し、当該反射光L3を用いて対象空間に存在する物体の位置や相対距離などを検出するためのものであり、制御部(コントローラ)10、走査光源部20、受光部30を含んで構成されている。
【0010】
制御部10は、物体検出装置1の全体動作を制御するものであり、測定制御部11、偏向制御部12、点灯制御部13、距離測定部14、通信部15を含んで構成されている。この制御部10は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムを用い、当該コンピュータシステムに所定の動作プログラムを実行させることによって実現することが可能である。
【0011】
測定制御部11は、偏向制御部12、点灯制御部13及び距離測定部14を動作させる制御を行うとともに、距離測定部14の測定結果に基づいて光源23、24の光軸を測定する機能を備える。
【0012】
偏向制御部12は、走査光源部20のMEMSドライバ21を介して、MEMSミラー25を指示された角度変化パターン(典型的には走査線間隔が均等なラスタ走査)で周期的に偏向するよう制御する。
【0013】
点灯制御部13は、測定制御部11によって指示されたパルス条件で各光源23、24がレーザ光を射出するよう制御する。
【0014】
距離測定部14は、点灯制御部13によるレーザ光の生成指示時期と受光部30の受光回路34から得られる受光信号を用いて、レーザ光の出射時期と受光時期と時間差を基に対象空間内の物体との相互間の距離を測定する。また、レーザ光の出射時期や受光時期に基づいて測定制御部11により物体の三次元位置が検出される。
【0015】
通信部15は、得られた点群情報(三次元位置の集合)を外部装置(図示せず)に送信する。
【0016】
走査光源部20は、狭角ビームのレーザ光を生成し、所定範囲の様々な方向に対して射出するものであり、MEMSドライバ21、光源ドライバ22、2つの光源23、24、MEMSミラー25を含んで構成されている。
【0017】
MEMSドライバ21は、MEMSミラー25と接続されており、制御部10の偏向制御部12による制御を受けて、MEMSミラー25の動作を制御する駆動信号を生成し、当該MEMSミラー25へ供給する。
【0018】
光源ドライバ22は、各光源23、24と接続されており、制御部10の点灯制御部13による制御を受けて、各光源23、24の動作を制御する駆動信号を生成し、当該各光源23、24へ供給する。
【0019】
各光源23、24は、それぞれ、検出用光としての狭角ビーム(拡がり角が小さいビーム)のレーザ光L1、L2を生成し、MEMSミラー25へ射出する。各光源23、24から射出されるレーザ光は、物体検出装置1の角度分解能に準ずる(同じかそれ以下)拡がり角のビームである。各光源23、24としては、例えば近赤外フォトニック結晶レーザ(PCSEL)を使用することができるがこれに限定されず、狭角ビームの検出用光を射出可能な光源であればよい。
【0020】
MEMSミラー25は、反射面を有し、直交する二方向のそれぞれに回動可能に構成された二次元偏向器である。このMEMSミラー25は、各光源23、24から射出するレーザ光L1、L2がそれぞれ異なる方向から反射面に入射し得る位置に配置されており、MEMSドライバ21から供給される駆動信号に基づいて回動することで、各レーザ光L1、L2を対象空間内で走査する。各レーザ光L1、L2は、走査光源部20に適宜設けられた開口部から外部の対象空間へ射出される。
【0021】
受光部30は、各レーザ光L1、L2によって生じる反射光L3を受光して受光信号を生成するものであり、レンズ31、光学フィルタ32、フォトディテクタ(受光素子)33、受光回路34を含んで構成されている。
【0022】
レンズ31は、反射光L3を集光する。
【0023】
光学フィルタ32は、各レーザ光L1、L2とは異なる波長域の光を遮断し、各レーザ光L1、L2と同じ波長域の光を透過させる。
【0024】
フォトディテクタ33は、光学フィルタ32を介して入射した光を検出する。
【0025】
受光回路34は、フォトディテクタ33の出力に対して所定の信号処理(例えば増幅、周波数フィルタ等)を施すことによって受光信号を生成する。生成された受光信号は制御部10の距離測定部14へ供給される。
【0026】
図2(A)及び
図2(B)は、走査光源部の各光源及びMEMSミラーの構成例を示す平面図である。一例として各図に示すように、各光源23、24とMEMSミラー25との間にミラー26、27を配置することができる。具体的には、光源23から射出するレーザ光は、ミラー26によって反射されてMEMSミラー25へ導かれる。同様に、光源24から射出するレーザ光は、ミラー27によって反射されてMEMSミラー25へ導かれる。各光源23、24は、光源ドライバ22とともに基板上に搭載されていてもよい。また、MEMSミラー25は、MEMSドライバ21とともに基板上に搭載されていてもよい。
【0027】
図2(B)から分かるように、各光源23、24から射出するレーザ光は、互いに異なる方向からMEMSミラー25のミラー面に入射する。典型的には、これらのレーザ光は、MEMSミラー25の2つの回転軸の何れか一方に対して対称な関係で入射する。後述の
図12(B)に示すように、各光源23、24は、光源23から発したレーザ光を用いた測定範囲R1と光源24から発したレーザ光を用いた測定範囲R2が境界面Bを介して隣接するように各レーザ光のMEMSミラー25への入射角が設定される。
【0028】
一例としては、各光源23、24等は、光源23からミラー26を介してMEMSミラー25に入射するレーザ光がMEMSミラー25に対して水平角20°、鉛直角20°で入射し、光源24からミラー27を介してMEMSミラー25に入射するレーザ光がMEMSミラー25に対して水平角-20°、鉛直角-20°で入射するように配置することができる。また、一例として、MEMSミラー25の駆動角を水平半角約10.4°、垂直半角約3.1°とすると、概ね水平方向75°、垂直方向12°の範囲を測定範囲とすることができる。
【0029】
各光源23、24から射出するレーザ光は、例えば波長940nm、拡がり角0.1°のパルス光である。また、MEMSミラー25は、第1軸が共振、第1軸と直交する第2軸が非共振で回動するものである。なお、各レーザ光のMEMSミラー25への入射角度は、MEMSミラー25の非回転時の反射面法線方向を基準としてMEMSミラー25から見た方向で示している。
【0030】
<機能A:光軸ずれの測定>
図3は、各光源からMEMSミラーへ入射するレーザ光の光軸ずれを測定する際(補正条件設定時)の処理手順を示すフローチャートである。ここに示す処理は、例えば、物体検出装置1の製造時、定期メンテナンス時若しくは装置起動時において適宜実行することが想定されているものであり、主に測定制御部11によって実行される。
【0031】
(ステップS1)
測定制御部11は、偏向制御部12に指示を送ることにより、測定範囲R1と測定範囲R2(
図12(B)参照)の一部範囲が互いに重複するようにMEMSミラー25の偏向角(振れ角)を設定する。それにより、偏向制御部12からの制御信号に基づいてMEMSドライバ21が動作し、MEMSミラー25の偏向角が制御される。本ステップの処理について、
図4(A)、
図4(B)の概念図を用いて説明する。なお、
図4(A)、
図4(B)の概念図では、説明を簡単にするために本来は三次元空間である測定範囲R1と測定範囲R2を平面的に示している。
【0032】
例えば、通常の測定モードでは、理想状態(原理的な状態)としては
図4(A)に示すように測定範囲R1と測定範囲R2とが互いに重複しないようにMEMSミラー25の偏向角Aが設定される。これに対して、ステップS1では
図4(B)に示すように測定範囲R1と測定範囲R2のそれぞれの一部範囲が重複するようにMEMSミラー25の偏向角A’(A’>A)が設定される。生じた重複範囲R3は光軸ずれ測定に用いられる。測定時には重複範囲R3に所定の被検出物体40を配置しておく。一例としては、MEMSミラー25の通常モードにおける水平駆動角の機械半角が10.4であり、ステップS1における水平駆動角の機械半角は13.4°である。
【0033】
(ステップS2)
次に、測定制御部11は、偏向制御部12に指示を送ることにより、通常モード時よりも高密度(すなわち相対的に狭い間隔)でレーザ光が照射されるモード(高密度測定モード)となるようにMEMSミラー25の回転動作を制御する。それにより、偏向制御部12からの制御信号に基づいてMEMSドライバ21が動作し、MEMSミラー25の回転動作が制御される。本ステップの処理について、
図5(A)、
図5(B)の概念図を用いて説明する。
【0034】
図5(A)及び
図5(B)においては、レーザ光の射出設定角度群(すなわちビーム照射位置)を黒点で示す。
図5(A)は通常モード、
図5(B)は高密度測定モードに対応している。各図に示すように、通常モード時より高密度(狭い間隔)にレーザ光が照射されるようにMEMSミラー25の回転動作が制御される。具体的には、下記の2つの処理が実行される。
【0035】
処理の1つとしては、MEMSミラー25の非共振軸の時間当たり回転量が通常モード時より小さく設定される。すなわち、
図6に概念図を示すように、走査周波数が相対的に下げられる。それにより、通常モードにおける刻み幅Δa
vよりも高密度測定モードでの刻み幅Δa
v’が相対的に小さくなる。この処理は、MEMSミラー25の偏向角(回転角)V方向の高密度化に対応する。
【0036】
もう1つの処理としては、
図7に概念図を示すように、走査周期毎の測定方向群のずらし量が小さくなるように全方向測定に要する走査周期(サブフレーム数)が増やされる。
図7において偏向範囲に描かれる複数の白丸はそれぞれレーザ光の射出対象角(すなわちビーム照射位置)を示しており、1つの測距フレームを構成する各サブフレーム1、2、・・・N
SFの間で異なる角度となっている。これら各サブフレームでの射出対象角を合成したものが上記した
図5(A)及び
図5(B)に対応する。この処理により、通常モードにおける刻み幅Δa
hよりも高密度測定モードでの刻み幅Δa
h’が相対的に小さくなる。この処理は、MEMSミラー25の偏向角(回転角)H方向の高密度化に対応する。一例として、通常モード時のサブフレーム数を16、サブフレーム間の偏向角Hの相違量を0.1°とし、高密度測定モード時のサブフレーム数を128、サブフレーム間の偏向角Hの相違量を0.0125°とすることができる。
【0037】
(ステップS3)
次に、測定制御部11は、点灯制御部13に指示を送ることにより、一方の光源(ここでは光源23)が点灯し、他方の光源(ここでは光源24)は点灯しないように各光源23、24の動作を制御する。それにより、光源ドライバ22からの制御信号に基づいて角光源23、24が動作する。そして、測定制御部11は、距離測定部14に指示を送り、光源23から射出するレーザ光L1に対応する反射光L3によって受光回路34から出力される受光信号に基づいて、測定範囲R1内における測定対象方向群について測距する。本ステップの詳細な処理フローチャートを
図8に示す。
【0038】
測定制御部11は、光源23からのレーザ光L1の射出対象となるMEMSミラー25の偏向条件(θH,θV)を設定する(ステップS31)。
【0039】
設定した偏向条件に基づいて測定制御部11から偏向制御部12に指示が出され、偏向制御部12によりMEMSドライバ21の動作が制御される。そして、MEMSミラー25が設定した偏向条件に一致する偏向状態となるタイミングに合わせて、測定制御部11は、光源23へ発光指示を行う(ステップS32)。具体的には、測定制御部11から点灯制御部13に指示が出され、点灯制御部13によって光源ドライバ22の動作が制御され、光源23がレーザ光L1を射出する。また、光源24は消灯するように制御される。
【0040】
レーザ光L1によって生じる反射光L3に対応する受光信号が受光回路34から距離測定部14に出力されると、距離測定部14は距離Dを求める。測定制御部11は、この求められた距離Dを距離測定部14から取得し(ステップS33)、この距離Dとそれに対応する偏向条件(θH,θV)を図示しないメモリに記憶させる(ステップS34)。
【0041】
全対象方向を指定回数だけ測定完了していない間は(ステップS35;NO)、上記ステップS31~S34の各処理が繰り返される。測定完了した場合には(ステップS35;YES)、測定制御部11は、偏向条件毎に距離Dを平均化する(ステップS36)。平均化された後の偏向条件と対応する距離Dのデータ構成例を
図9に示す。θ
Hとθ
Vのそれぞれの条件θ
H1(1,1)、θ
H1(1,2)、・・・θ
H1(n,m)、θ
V1(1,1)、θ
V1(1,2)、・・・θ
V1(n,m)に対応する距離D
111、距離D
112、
・・・距離D
1nmが記憶される。
【0042】
(ステップS4)
次に、測定制御部11は、点灯制御部13に指示を送ることにより、他方の光源(ここでは光源24)が点灯し、一方の光源(ここでは光源23)は点灯しないように各光源23、24の動作を制御する。それにより、光源ドライバ22からの制御信号に基づいて角光源23、24が動作する。そして、測定制御部11は、光源24から射出するレーザ光による反射光L3に対応して受光回路34から出力される受光信号に基づいて、測定範囲R2内における測定対象方向群について測距する。本ステップの処理については、点灯させる光源を光源24とした以外は上記したステップS3と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0043】
(ステップS5)
次に、測定制御部11は、ステップS3、S4で得た偏向条件毎の距離Dのデータを用いて、比較評価対象方向の類似度を評価する。具体的には、各光源23、24のレーザ光L1、L2の各々の理想光軸L
i1_ideal、L
i2_idealから光軸ずれ許容角E
Liの範疇でレーザ光L1、L2それぞれの光軸方向L
i1、L
i2を仮定し(
図10(A)参照)、重複範囲R3(
図4(B)参照)に設定された比較評価対象方向のビーム射出方向群L
o={L
o1, L
o2,…L
ox}に関して(
図10(B)参照)、対応するMEMSミラー25の反射面法線ベクトルM並びに該ベクトルMに対応する偏向角θ
H,θ
Vを計算する(或いは、予め計算しておいて取得する)。この偏向角を基にステップS3、S4での測定結果を参照し、L
i1,L
oに対応する距離群D
1={D
11, D
12,…D
1n}、L
i2,L
oに対応する距離群D
2={D
21, D
22,…D
2n}を取得する。そして、距離群D
1とD
2の類似性を以下に示す評価関数F
EVALで評価する。この評価関数F
EVALは、二乗誤差をとるものである。
【数1】
【0044】
(ステップS6)
次に、測定制御部11は、ステップS5での類似度の評価結果に基づいて、最も類似性が高くなる光軸方向Li1、Li2の条件対を探すことで、光軸を特定する。例示した式(1)の評価関数FEVALの場合には類似性が高いと値が小さくなるため、測定制御部11は、最小値をとるLi1、Li2の条件対を特定する。以上により、機能Aに係る処理が完了する。
【0045】
<機能B:発光パターン補正>
図11は、通常モード時(通常動作時)の動作手順を示すフローチャートである。機能Bの発光パターンの補正は、光源23、24が各々割り当てられた測定範囲内にレーザ光L1、L2を射出するように、光源23、24を点灯させる偏向角群を機能Aでの結果に応じて決定するものであり、
図11に示す初期設定(ステップSB1)にて実行される。なお、
図11に示す通常モードの動作については後述する。
【0046】
各光源23、24から射出されるレーザ光の光路が測定範囲R1、R2の境界面B内となる場合のMEMSミラー25の偏向角(境界面B相当角)は、各光源23、24の光軸によってそれぞれに対して定まるものであり、予め計算され記憶されている。境界面BにおけるMEMSミラー25の偏向角θ
H、θ
Vの関係の一例を示したのが
図12(A)である。曲線aは光軸ずれがない場合、曲線bは光軸ずれが偏向角θ
Hについて+0.5°の場合、曲線cは光軸ずれが偏向角θ
Hについて-0.5°の場合を示している。
【0047】
図12(B)に示すように、主走査方向50に測定領域R1、R2が並ぶ形態の場合には、機能Aでの結果を基に参照した境界面B相当角(図中、点線で示す)を基準にして、この境界面B相当角から所定の角度刻みΔa毎にずらしてパルス光射出角度を設定していくことで全体としてパルス光射出角度群(すなわち偏向角群)が得られる。この様子を示したのが
図13(A)、
図13(B)である。図中のθ
hlim-、θ
hlim+は、偏向角Hのマイナス方向、プラス方向の各々の境界値である。このようにして得られたパルス光射出角度群を用いることで発光パターンを補正することができる
【0048】
また、
図14に示すように、副走査方向51に測定領域R1、R2が並ぶ形態の場合、つまり
図12(B)の構成と比べてMEMSミラー25が90°回転した配置となっている場合にも、機能Aでの結果を基に参照した境界面B相当角を超えて測定範囲R1、R2の範囲外となる角度群を外したものがパルス光射出角度群として設定される。この様子を示したのが
図15(A)、
図15(B)である。
【0049】
<機能C:偏向角補正>
機能Cの偏向角補正は、2つの測定範囲R1、R2が離間せず、かつ2つの測定範囲R1、R2を合わせて全体として必要な範囲を測定できるように、MEMSミラー25の駆動角度範囲を機能Aの結果に応じて決定するものであり、機能Bの場合と同様に、
図11に示す初期設定(ステップSB1)にて実行される。
【0050】
具体的には、測定範囲R1、R2が主走査方向(共振動作軸の走査方向)に並んでいる場合(
図12(B)参照)には、主走査軸の駆動角度範囲を機能Aの結果に基づき以下のように決定する。
【0051】
(a)光源23のレーザ光L1により測定範囲R1の端面F1まで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA11m、
(b)光源23のレーザ光L1により境界面Bまで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA1Bm、
(c)光源24のレーザ光L2により測定範囲R2の端面F2まで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA22m、
(d)光源23のレーザ光L2により境界面Bまで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA2Bm、
とすると、A11m、A1Bm、A22m、A2Bmの各々の最大値以上を主走査軸の駆動機械半角として決定する。
【0052】
詳細には、機能Aで得られたLi1を用いると、境界面Bから端面F1にかけての領域R1への光射出に対応するMEMSミラー25の二軸の回転状態を表す角度群(AB,AF1)が得られる。偏向角θVによらず境界面Bから端面F1にかけての領域R1の間をカバーするためには、最も単純には角度群(AB,AF1)の絶対値の最大値をMEMSミラー25の偏向角度量A11m、A1Bmとすればよい。もちろん、最大値に基づいて適宜補正を行って偏向角度量A11m、A1Bmを求めてもよい。同様にして、機能Aで得られたLi2を用いることで偏向角度量A22m、A2Bmを求めることができる。
【0053】
また、測定範囲R1、R2が副走査方向(非共振動作軸の走査方向)に並んでいる場合(
図14参照)には、副走査軸の駆動角度範囲を機能Aの結果に基づき、以下のように決定する。
【0054】
(a)光源23のレーザ光L1により測定範囲R1の端面F1まで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA11s、
(b)光源23のレーザ光L1により境界面Bまで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA1Bs、
(c)光源24のレーザ光L2により測定範囲R2の端面F2まで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA22s、
(d)光源24のレーザ光L2により境界面Bまで測定するのに必要なMEMSミラー25の偏向角度量をA2Bs、
とすると、A11sとA2Bsのうち負側の値、A1BsとA22sのうち正側の値に基づいて副走査軸の駆動機械半角として決定する。つまり、副走査軸の駆動角度範囲は、A11sとA2Bsのうち負側の値、A1BsとA22sのうち正側の値、あるいは、これらの範囲を含む範囲とすることができる。この場合において、偏向角度は正の方向に変化させると符号51で示す方向に光が走査されるものとする。副走査軸は非共振動作軸なため、副走査軸の駆動角度範囲は、正負非対称に決めることができるため、上記のように決定することにより、必要以上に大きな駆動角度範囲とすることを避けることができる。
【0055】
測定範囲R1、R2が主走査方向に並んでいる態様(
図12(B))、測定範囲R1、R2が副走査方向に並んでいる態様(
図14)のいずれにしても、光源23、24の各々の光軸と測定範囲並びに関連する軸の駆動角の関係は予め計算しておき、機能Aの結果を基に参照することで実現する。
【0056】
<通常モード時の動作>
再び
図11を参照し、物体検出装置1の通常モード時の動作について説明する。物体検出装置1の測定制御部11は、偏向制御部12に指示を送り、通常設定後(ステップSB1)、レーザ光の射出対象となるMEMSミラー25の偏向条件(θ
H,θ
V)を設定する(ステップSB2)。次に、測定制御部11は、点灯制御部13に指示を送り、設定条件に一致するMEMSミラー25の偏向状態において光源23(又は光源24)に発光指示を行う(ステップSB3)。次に、測定制御部11は、距離測定部14から距離Dを取得する(ステップSB4)。次に、測定制御部11は、機能Aで得られたL
i1、L
i2の条件対に基づきθ
H、θ
V、Dを空間座標に変換する(ステップSB5)。1フレーム分が完了するまではステップSB1~ステップSB5が繰り返される。1フレーム分が完了すると、測定制御部11は、得られた点群情報(ステップSB5で得られる空間座標での位置、すなわち三次元位置の集合)を通信部15へ出力する(ステップSB5)。通信部15は、外部装置(図示せず)に点群情報を送信する。
【0057】
なお、上記したステップSB5における空間座標への変換については、例えば以下のように行うことができる。機能Aで得られたLi1の条件による光軸方向でMEMSミラー25に入射する光(光源23から発せられた光)の単位方向ベクトルをVL(Li1)とする。また、MEMSミラー25の光反射点の座標をP0とする。このとき、MEMSミラー25の偏向条件(θH,θV)で距離Dを取得した場合、これを変換した反射点の空間座標PRは、以下のように表現することができる。
PR=D{VL(Li1)-2(VL(Li1)・VM(θH,θV))VM(θH,θV)}+P0
ここで、VM(θH,θV)は、MEMSミラー25の偏向条件(θH,θV)におけるMEMSミラー25の反射面の法線ベクトルである。
【0058】
以上の実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0059】
まず、MEMSミラー25の偏向角を抑えつつ、十分な検出範囲を確保し、高解像度かつ高速に測定することが可能となる。すなわち、MEMSミラー25に対して異なる方向に配置した複数の光源23、24からレーザ光を入射させて、光源ごとに異なる範囲を測定するよう構成することで、1つの光源を用いる場合に比べて光射出可能な範囲を大きくできる。光源の繰り返し周波数により制限される時間当たりの光射出数を増やせるので、解像度を増やし、あるいは測定の周波数を上げることが出来る。
【0060】
また、測定範囲に意図しない死角や意図しない重複が生じるのを防ぐことができるので検出精度を向上させることができる。すなわち、1つのMEMSミラー25を介する複数の光源23、24で共通の対象を測定し、それぞれの測定結果が最も良好に合致する光軸条件を探すことで、光源の光軸を把握できる。光軸の把握に際する測定時のみMEMSミラー25の駆動角を大きくすることで、共通の対象を測定するための測定範囲の重複範囲を確実に発生させるとともに、通常測定時に無効な偏向期間が生じるのを防ぐことができる。また、測定を行う際に高密度(測定方向間隔を狭くする)ことで、光軸をより正確に把握できる。把握した光軸を基に、測定動作時のMEMSミラー25の駆動角を補正することで、各光源23、24による測定範囲が互い離間してその間に非測定範囲が生じることや逆に意図しない重複範囲が生じることを防ぎ、さらに各測定範囲を合わせた全測定範囲が狭まることを防ぎ、測定しているつもりなのに実際には測定されていないというような範囲が発生するのを防ぐことができる。
【0061】
また、把握した光軸をもとに空間座標を計算するので、方向誤差の発生を抑制でき。それにより座標誤差の発生を抑制することができる。また、補正能力の範囲で光軸ずれの影響(死角の発生など)をキャンセルできるので、多少の組み立てずれを許容できる。よって、物体検出装置1の製造時の歩留まりが上がり、コスト低減、資源ロスの抑制が期待できる。
【0062】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態において挙げた数値条件などは一例であってそれらに限定されない。また、光源の数が2より大きい場合にも同様にして本開示の内容を適用することができる。例えば、4つの光源を用いる場合であれば、
図16に例示するように各光源からのレーザ光L1、L2、L3、L4とそれらに対応する測定範囲R1、R2、R3、R4について、レーザ光L1とレーザ光L3、レーザ光L2とレーザ光L4、レーザ光L3とレーザ光L4、レーザ光L1とレーザ光L2という対となるように各光源を組み合わせて共通の対象を測定することで光軸ずれを把握することができる。光軸ずれに対する補正の方法は上記した実施形態と同様である。
【0063】
本開示は、以下に付記する特徴を有する。
(付記1)
三次元空間に存在する物体を検出するための装置であって、
第1光源及び第2光源と、少なくとも直交する二方向に偏向可能な偏向器とを有し、当該偏向器の反射面に対して前記第1光源の第1検出用光と前記第2光源の第2検出用光とが互いに異なる方向から入射するように構成された走査光源部と、
前記走査光源部から出射した前記第1検出用光及び前記第2検出用光の何れかによる反射光を受光する受光部と、
前記走査光源部及び前記受光部のそれぞれと接続されており、前記走査光源部の動作を制御するとともに前記受光部の出力を用いて前記物体を検出するための処理を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、
補正条件設定時において、前記第1検出用光と前記第2検出用光とが共通の被検出物体を走査するように前記走査光源部を制御して、前記第1検出用光に対応した前記受光部の出力に基づく第1検出結果と前記第2検出用光に対応した前記受光部の出力に基づく第2検出結果との差異が最小となる場合の前記第1検出用光と前記第2検出用光の各々の光軸条件を特定し、
通常動作時において、前記光軸条件を基に、前記第1光源及び前記第2光源の射出パターン及び/又は前記偏向器の偏向角度範囲を補正する、
物体検出装置。
(付記2)
前記第1検出用光を用いる第1測定範囲と前記第2検出用光を用いる第2測定範囲とが隣接しており、
前記制御部は、前記補正条件設定時において、前記第1測定範囲と前記第2測定範囲の各々の一部分同士の重複範囲を生じ、当該重複範囲に前記被検出物体が位置するように前記偏向器の動作を制御する、
付記1に記載の物体検出装置。
(付記3)
前記制御部は、前記補正条件設定時における前記第1検出用光及び前記第2検出用光の各々のビーム照射位置が前記通常動作時に比較して相対的に狭い間隔となるように前記偏向器を制御する、
付記1又は2に記載の物体検出装置。
(付記4)
前記第1検出用光に対応した前記第1検出結果と前記第2検出用光に対応した前記第2検出結果の各々は、前記被検出物体との距離である、
付記1~3の何れかに記載の物体検出装置。
(付記5)
前記光軸条件を基に、空間座標を算出するための係数を補正する、
付記1~4の何れかに記載の物体検出装置。
(付記6)
前記第1検出用光と前記第2検出用光の各々がレーザ光である、
付記1~5の何れかに記載の物体検出装置。
【符号の説明】
【0064】
1:物体検出装置、10:制御部、11:測定制御部、12:偏向制御部、13:点灯制御部、14:距離測定部、15:通信部、20:走査光源部、21:MEMSドライバ、22:光源ドライバ、23、24:光源、25:MEMSミラー、30:受光部、31:レンズ、32:光学フィルタ、33:フォトディレクタ、34:受光回路、26、27:ミラー、L1、L2:レーザ光、R1、R2:測定範囲、R3:重複範囲