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  • 特開-印刷装置及び印刷装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131763
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/18 20060101AFI20240920BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65H23/18
B65H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042209
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菱田 豊
(72)【発明者】
【氏名】濱野 亮
【テーマコード(参考)】
3F048
3F105
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AC04
3F048CB08
3F048CC13
3F048DB12
3F048DC06
3F048EB29
3F105AB03
3F105BA02
3F105BA07
3F105CA06
3F105CA13
3F105CB01
3F105CC01
3F105CC02
3F105DA23
3F105DA32
3F105DA42
3F105DC03
(57)【要約】
【課題】搬送ローラーの回転に巻取軸が追従しやすい印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供する。
【解決手段】印刷装置は、媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、巻取軸の回転速度を検出するエンコーダーと、搬送ローラーによる搬送速度の目標速度である搬送目標速度を示す搬送目標データ、及び、巻取軸による巻取速度の目標速度である巻取目標速度を示す巻取目標データ、を記憶する記憶部と、搬送ローラー及び巻取軸をそれぞれの目標速度で回転させる制御部と、を備え、巻取目標速度は、搬送目標速度よりも大きく、制御部は、巻取目標速度で巻取軸が媒体を巻き取るように、巻取目標速度と巻取速度との偏差に基づいて、巻取軸をP制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、
前記印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸の回転速度を検出するエンコーダーと、
前記搬送ローラーによる搬送速度の目標速度である搬送目標速度を示す搬送目標データ、及び、前記巻取軸による巻取速度の目標速度である巻取目標速度を示す巻取目標データ、を記憶する記憶部と、
前記搬送ローラー及び前記巻取軸をそれぞれの目標速度で回転させる制御部と、を備え、
前記巻取目標速度は、前記搬送目標速度よりも大きく、
前記制御部は、前記巻取目標速度で前記巻取軸が媒体を巻き取るように、前記巻取目標速度と前記巻取速度との偏差に基づいて、前記巻取軸をP制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記搬送速度及び前記巻取速度の速度差と媒体に加える設定テンションとの対応関係を示す設定データを記憶し、
前記制御部は、
前記設定テンションを受け付け、
前記設定データに基づいて前記設定テンションを前記速度差に換算することによってオフセットデータを生成し、
前記搬送目標データに前記オフセットデータを加えることによって前記巻取目標データを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記搬送速度及び前記巻取速度の速度差と媒体に加える設定テンションとの対応関係を示す設定データと、
前記巻取軸が前記搬送ローラーと同速度で回転するための目標速度である巻取基本速度を示す巻取基本データ、を記憶し、
前記巻取基本速度は、前記搬送目標速度と一致し、
前記制御部は、
前記設定テンションを受け付け、
前記設定データに基づいて前記設定テンションを前記速度差に換算することによってオフセットデータを生成し、
前記巻取基本データに前記オフセットデータを加えることによって前記巻取目標データを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記巻取軸が媒体を巻き取ることによって形成されるロール体の外径を検出するセンサーを備え、
前記制御部は、前記センサーが検出する前記ロール体の外径と、前記エンコーダーが検出する前記巻取軸の回転速度とに基づいて、前記巻取速度を取得することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記巻取目標速度で前記巻取軸が媒体を巻き取るように、前記巻取軸をPD制御することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、
前記印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、を備える印刷装置の制御方法であって、
搬送速度の目標速度である搬送目標速度で媒体を搬送するように前記搬送ローラーを回転させることと、
巻取速度の目標速度である巻取目標速度であって前記搬送目標速度よりも大きい前記巻取目標速度で媒体を巻き取るように、前記巻取目標速度と前記巻取速度との偏差に基づいて前記巻取軸をP制御することと、を含むことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、媒体を搬送する搬送ローラーと媒体を巻き取る巻取軸との間で媒体にテンションを加えながら媒体に印刷する印刷装置が記載されている。この印刷装置は、巻取軸を回転させるモーターに上限トルクを設定することによって、媒体に適切なテンションを加える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-039248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした印刷装置では、搬送ローラーの回転に巻取軸が追従しにくいことがある。例えば、媒体の搬送を開始する場合、搬送ローラーが回転し始めることによって、巻取軸にかかる負荷が小さくなる。これに伴い、巻取軸が回転し始めるため、搬送ローラーの回転に対して巻取軸の回転が遅れる。巻取軸の回転が搬送ローラーの回転に追いつくことによって媒体が突っ張ると、巻取軸にかかる負荷が瞬間的に大きくなる。このとき、巻取軸の回転速度が急激に小さくなる。巻取軸の回転速度が急激に小さくなると、媒体に加わるテンションも小さくなる。このように、搬送ローラーの回転に巻取軸が追従しにくいため、媒体に適切なテンションが加わるまで時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する印刷装置は、媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、前記印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、前記巻取軸の回転速度を検出するエンコーダーと、前記搬送ローラーによる搬送速度の目標速度である搬送目標速度を示す搬送目標データ、及び、前記巻取軸による巻取速度の目標速度である巻取目標速度を示す巻取目標データ、を記憶する記憶部と、前記搬送ローラー及び前記巻取軸をそれぞれの目標速度で回転させる制御部と、を備え、前記巻取目標速度は、前記搬送目標速度よりも大きく、前記制御部は、前記巻取目標速度で前記巻取軸が媒体を巻き取るように、前記巻取目標速度と前記巻取速度との偏差に基づいて、前記巻取軸をP制御する。
【0006】
上記課題を解決する印刷装置の制御方法は、媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、前記印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、を備える印刷装置の制御方法であって、搬送速度の目標速度である搬送目標速度で媒体を搬送するように前記搬送ローラーを回転させることと、巻取速度の目標速度である巻取目標速度であって前記搬送目標速度よりも大きい前記巻取目標速度で媒体を巻き取るように、前記巻取目標速度と前記巻取速度との偏差に基づいて前記巻取軸をP制御することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】印刷装置の一実施例を示す側面図である。
図2】印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】搬送目標速度及び巻取目標速度を示すグラフである。
図4】巻取速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、印刷装置の一実施例について図を参照しながら説明する。印刷装置は、例えば、用紙、布帛などの媒体に液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
<印刷装置>
図1に示すように、印刷装置11は、筐体12を備える。
印刷装置11は、印刷部13を備える。印刷部13は、筐体12内に位置する。印刷部13は、媒体99に印刷するように構成される。印刷部13は、例えば、筐体12外から供給される長尺の媒体99に印刷する。媒体99は、印刷装置11とは別の装置から印刷部13に供給されてもよいし、印刷装置11が備える繰出軸から印刷部13に繰り出されてもよい。
【0010】
印刷部13は、媒体99に液体を吐出するヘッドである。印刷部13は、搬送される媒体99に印刷する。印刷部13は、媒体99に対して走査するシリアルヘッドである。印刷部13は、インクジェットに限らず、トナージェットによって媒体99に印刷してもよいし、ドットインパクトによって媒体99に印刷してもよい。
【0011】
印刷装置11は、支持部14を備える。支持部14は、筐体12内に位置する。支持部14は、媒体99を支持する。支持部14は、印刷部13と対向する。支持部14は、媒体99のうち、印刷部13によって印刷される領域を支持する。
【0012】
印刷装置11は、上流支持部15を備えてもよい。上流支持部15は、筐体12内に位置してもよいし、筐体12外に位置してもよい。上流支持部15は、媒体99の搬送方向において、支持部14よりも上流に位置する。上流支持部15は、媒体99のうち、支持部14が支持する領域よりも上流に位置する領域を支持する。上流支持部15は、媒体99を支持することによって、媒体99を支持部14にガイドする。
【0013】
印刷装置11は、下流支持部16を備えてもよい。下流支持部16は、筐体12内に位置してもよいし、筐体12外に位置してもよい。下流支持部16は、媒体99の搬送方向において、支持部14よりも下流に位置する。下流支持部16は、媒体99のうち、支持部14が支持する領域よりも下流に位置する領域を支持する。下流支持部16は、媒体99を支持することによって、媒体99を支持部14から排出先にガイドする。
【0014】
印刷装置11は、搬送部17を備える。搬送部17は、媒体99を搬送するように構成される。搬送部17は、供給される媒体99を搬送する。搬送部17は、媒体99を印刷部13に搬送する。搬送部17は、筐体12内に位置する。一例では、搬送部17は、支持部14と上流支持部15との間に位置する。
【0015】
搬送部17は、搬送ローラー18を有する。搬送ローラー18は、駆動回転する。搬送部17は、対向ローラー19を有する。対向ローラー19は、搬送ローラー18と対向する。対向ローラー19は、搬送ローラー18に対して従動回転する。搬送部17は、搬送ローラー18及び対向ローラー19が媒体99を挟む状態で回転することによって、媒体99を搬送する。搬送ローラー18の回転速度は、搬送ローラー18による媒体99の搬送速度と一致する。搬送速度は、搬送ローラー18の周速度である。
【0016】
搬送ローラー18は、媒体99を断続的に搬送する。搬送ローラー18は、所定間隔で媒体99を繰り返し搬送する。搬送ローラー18は、回転と停止とを繰り返すことによって、媒体99を所定量ずつ搬送する。搬送ローラー18が停止する間に、印刷部13が媒体99に印刷する。したがって、印刷装置11においては、搬送ローラー18による搬送と印刷部13による印刷とが、交互に繰り返される。
【0017】
搬送ローラー18は、目標速度である搬送目標速度で媒体99を搬送するように制御される。すなわち、搬送ローラー18は、搬送速度が搬送目標速度と一致するようにフィードバック制御される。一例では、搬送ローラー18は、PID制御される。
【0018】
印刷装置11は、搬送モーター20を備える。搬送モーター20は、搬送部17と接続される。詳しくは、搬送モーター20は、搬送ローラー18と接続される。搬送モーター20は、搬送ローラー18を回転させる。搬送モーター20は、搬送ローラー18を回転させることによって、媒体99を搬送する。一例では、搬送モーター20は、PWM制御によって回転する。搬送モーター20は、印加される電圧のデューティーを制御されることによって回転する。
【0019】
印刷装置11は、搬送エンコーダー21を備える。搬送エンコーダー21は、搬送ローラー18の回転速度を検出する。搬送エンコーダー21は、ロータリーエンコーダーである。搬送エンコーダー21は、搬送モーター20の回転速度を検出してもよい。搬送エンコーダー21は、搬送モーター20の回転速度から搬送ローラー18の回転速度を検出できる。搬送エンコーダー21は、搬送ローラー18による媒体99の搬送量、媒体99の位置などを検出することもできる。
【0020】
印刷装置11においては、搬送エンコーダー21が搬送ローラー18の回転速度を検出することによって、搬送ローラー18による搬送速度が得られる。搬送エンコーダー21により得られた搬送速度に基づいて、搬送ローラー18が制御される。
【0021】
印刷装置11は、巻取軸22を備える。巻取軸22は、回転することによって媒体99を巻き取る軸である。詳しくは、巻取軸22は、印刷部13によって印刷された媒体99を巻き取る。巻取軸22は、媒体99を巻き取ることによって、ロール体R1を形成する。巻取軸22は、印刷済みの媒体99が巻き重ねられたロール体R1を支持する。巻取軸22は、回転することによって、ロール体R1に媒体99を巻き重ねる。
【0022】
巻取軸22は、搬送ローラー18と同期する。すなわち、巻取軸22は、搬送ローラー18が媒体99を搬送することに伴い、媒体99を巻き取る。したがって、巻取軸22は、断続的に媒体99を巻き取る。
【0023】
巻取軸22の回転速度は、巻取軸22による媒体99の巻取速度と一致、又は、巻取速度よりも小さい。これは、巻取軸22が媒体99を巻き取るにつれて、ロール体R1の外径が大きくなるためである。媒体99はロール体R1の周面に巻き重ねられるため、ロール体R1の外径が大きくなると、巻取軸22の回転速度に対して巻取速度が大きくなる。巻取速度は、ロール体R1の周速度である。
【0024】
巻取軸22は、媒体99にテンションを加えながら媒体99を巻き取る。これにより、巻取軸22に巻き取られる媒体99に、皺が生じたり偏りが生じたりするおそれが低減される。巻取軸22は、搬送ローラー18よりも大きい速度で回転するように制御されることによって、媒体99にテンションを加える。
【0025】
巻取軸22は、目標速度である巻取目標速度で媒体99を巻き取るように制御される。すなわち、巻取軸22は、巻取速度が巻取目標速度と一致するようにフィードバック制御される。巻取目標速度は、搬送目標速度よりも大きい。これにより、媒体99にテンションが加わる。詳しくは、媒体99には、搬送速度及び巻取速度の速度差に応じたテンションが加わる。巻取軸22は、媒体99が搬送部17に対して滑らない程度のテンションを媒体99に加えるように制御される。そのため、巻取軸22は、媒体99にテンションを加えながら、搬送ローラー18と同じ回転速度で回転する。
【0026】
巻取軸22は、巻取目標速度で媒体99を巻き取るように、巻取目標速度と巻取速度との偏差に基づいて、P制御される。巻取軸22は、PD制御されてもよい。巻取軸22については、I制御が実行されない。これは、I制御を実行する場合、巻取目標速度と巻取速度との偏差が累積することによって、後述するモーター23のトルクが大きくなるためである。
【0027】
印刷装置11は、モーター23を備える。モーター23は、巻取軸22と接続される。モーター23は、巻取軸22を回転させる。モーター23は、巻取軸22を回転させることによって、巻取軸22に媒体99を巻き取らせる。一例では、モーター23は、PWM制御によって回転する。モーター23は、印加される電圧のデューティーを制御されることによって回転する。
【0028】
印刷装置11は、エンコーダー24を備える。エンコーダー24は、巻取軸22の回転速度を検出する。エンコーダー24は、ロータリーエンコーダーである。エンコーダー24は、モーター23の回転速度を検出してもよい。エンコーダー24は、モーター23の回転速度から巻取軸22の回転速度を検出できる。エンコーダー24は、巻取軸22による媒体99の巻取量を検出することもできる。
【0029】
印刷装置11においては、エンコーダー24が巻取軸22の回転速度を検出することによって、巻取軸22による巻取速度を得ることができる。エンコーダー24により得られた巻取速度に基づいて、巻取軸22が制御される。
【0030】
印刷装置11は、センサー25を備えてもよい。センサー25は、ロール体R1の外径を検出するように構成される。センサー25は、例えば、光学式の距離センサーである。エンコーダー24による巻取軸22の回転速度と、センサー25によるロール体R1の外径とから、巻取速度を得ることができる。
【0031】
印刷装置11は、制御部26を備える。制御部26は、コンピュータープログラムにしたがって各種処理を実行する1つ以上のプロセッサーで構成されてもよい。制御部26は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路などの1つ以上の専用のハードウェア回路で構成されてもよい。制御部26は、プロセッサー及びハードウェア回路の組み合わせを含む回路で構成されてもよい。
【0032】
制御部26は、印刷装置11を制御する。制御部26は、例えば、印刷部13、搬送部17、及び、巻取軸22などを制御する。制御部26は、搬送エンコーダー21が検出する搬送ローラー18の回転速度に基づいて、搬送モーター20を制御する。制御部26は、エンコーダー24が検出する巻取軸22の回転速度に基づいて、モーター23を制御する。制御部26は、搬送モーター20及びモーター23を制御することによって、媒体99にテンションを加えながら巻取軸22に媒体99を巻き取らせる。
【0033】
制御部26は、搬送ローラー18及び巻取軸22をそれぞれの目標速度で回転させる。制御部26は、搬送エンコーダー21が検出する搬送ローラー18の回転速度が搬送目標速度と一致するように、搬送ローラー18を制御する。制御部26は、センサー25が検出するロール体R1の外径と、エンコーダー24が検出する巻取軸22の回転速度とに基づいて、巻取軸22による巻取速度を取得する。制御部26は、取得した巻取速度が巻取目標速度と一致するように、巻取軸22を制御する。
【0034】
印刷装置11は、記憶部27を有する。記憶部27は、例えば、RAM及びROMなどのメモリーである。記憶部27は、汎用又は専用のコンピューターでアクセスできるあらゆるコンピューター可読媒体を含む。記憶部27は、処理を制御部26に実行させるように構成されたプログラムコード、又は、指令を格納する。
【0035】
図2に示すように、記憶部27は、複数のデータを記憶する。
記憶部27は、搬送目標データ31を記憶する。搬送目標データ31は、搬送目標速度を示すデータである。搬送目標データ31は、印刷設定、媒体種などに応じて異なる複数の搬送目標速度を含んでもよい。搬送目標データ31は、例えば、第1搬送目標速度、第2搬送目標速度などを含んでもよい。このように、搬送目標データ31は、複数の搬送目標速度を含むテーブルデータでもよい。制御部26は、搬送目標データ31に基づいて、搬送ローラー18を制御する。例えば、印刷品質を優先する場合には、第1搬送目標速度が適用される。例えば、印刷速度を優先する場合には、第1搬送目標速度よりも速い第2搬送目標速度が適用される。
【0036】
記憶部27は、巻取目標データ32を記憶する。巻取目標データ32は、巻取目標速度を示すデータである。巻取目標データ32は、制御部26によって都度生成される。例えば、巻取目標データ32は、媒体99が搬送される場合、すなわち搬送動作が実行される場合に、制御部26によって生成される。巻取目標データ32は、制御部26によって生成された後に、記憶部27に記憶される。巻取目標データ32は、搬送目標データ31が示す搬送目標速度をもとに生成される。詳しくは、巻取目標データ32は、今回の搬送動作において搬送ローラー18に適用される搬送目標速度をもとに生成される。一例では、巻取目標データ32は、後述する巻取基本データ33に、後述するオフセットデータ35を加えることによって生成される。巻取目標データ32は、搬送目標データ31に、オフセットデータ35を加えることによって生成されてもよい。これにより、巻取目標速度は、搬送目標速度よりも大きい速度となる。
【0037】
巻取目標データ32は、記憶部27に予め記憶されていてもよい。巻取目標データ32は、設定テンションごとに異なる複数の巻取目標速度を含んでもよい。巻取目標データ32は、複数の設定テンションとそれぞれ対応する第1巻取目標速度、第2巻取目標速度などを含んでもよい。
【0038】
設定テンションは、媒体99に加わるテンションである。設定テンションは、ユーザーによって設定される。設定テンションは、ユーザーが印刷装置11を操作することによって設定されてもよいし、印刷装置11と通信する外部端末を操作することによって設定されてもよい。設定テンションは、制御部26によって受け付けられる。設定される設定テンションが大きいほど、搬送速度及び巻取速度の速度差を大きくする必要がある。そのため、例えば、設定テンションが小さい場合に、第1巻取目標速度が適用される。設定テンションが大きい場合に、第1巻取目標速度よりも大きい第2巻取目標速度が適用される。これにより、設定された設定テンションに応じて、媒体99に加わるテンションが変動する。
【0039】
記憶部27は、巻取基本データ33を記憶する。巻取基本データ33は、巻取軸22が搬送ローラー18と同速度で回転するための目標速度である巻取基本速度を示すデータである。巻取基本速度は、搬送目標速度と一致する。巻取基本データ33は、搬送目標データ31と同じ内容のデータであってもよいし異なるデータであってもよい。巻取基本データ33は、搬送目標データ31が含む複数の搬送目標速度とそれぞれ対応する複数の巻取基本速度を含んでもよい。仮に、搬送目標速度、及び、これと対応する巻取基本速度で搬送ローラー18及び巻取軸22がそれぞれ回転する場合、搬送目標速度及び巻取基本速度が同じ速度であるため、媒体99にテンションが加わらない。
【0040】
記憶部27は、設定データ34を記憶する。設定データ34は、搬送速度及び巻取速度の速度差と、媒体99に加える設定テンションとの対応関係を示すデータである。設定データ34は、例えば、写像データであり、設定テンションの入力に基づいて搬送速度及び巻取速度の速度差を出力する。制御部26は、設定データ34に基づいて、受け付けた設定テンションを搬送速度及び巻取速度の速度差に換算する。制御部26は、設定データ34及び設定テンションからオフセットデータ35を生成する。
【0041】
記憶部27は、オフセットデータ35を記憶する。記憶部27は、制御部26が生成したオフセットデータ35を記憶する。オフセットデータ35は、巻取目標データ32を生成するためのデータである。オフセットデータ35は、設定テンションに相当する搬送速度及び巻取速度の速度差を示すデータである。
【0042】
図3に示すように、搬送目標データ31は、搬送目標速度の変化カーブを示す。搬送目標データ31は、搬送目標速度が大きくなる加速部分と、搬送目標速度が一定になる定速部分と、搬送目標速度が小さくなる減速部分とを含む。加速部分においては、搬送目標速度は、0から最大値まで線形的に変化する。定速部分においては、搬送目標速度は、最大値のまま変化しない。減速部分においては、搬送目標速度は、最大値から0まで線形的に変化する。図3に示した搬送目標速度の変化カーブは一例であり、これに限らない。変化カーブは例えば0から始まらなくてもよく、また0で終わらなくてもよい。また変化は線形でなく傾きが変化したり曲線であったりしてもよい。後述する巻取基本速度の変化カーブや巻取目標速度の変化カーブも同様である。
【0043】
巻取基本データ33は、巻取基本速度の変化カーブを示す。巻取基本速度の変化カーブは、搬送目標速度の変化カーブと一致する。巻取基本データ33は、巻取基本速度が大きくなる加速部分と、巻取基本速度が一定になる定速部分と、巻取基本速度が小さくなる減速部分とを含む。加速部分においては、巻取基本速度は、0から最大値まで線形的に変化する。定速部分においては、巻取基本速度は、最大値のまま変化しない。減速部分においては、巻取基本速度は、最大値から0まで線形的に変化する。
【0044】
巻取目標データ32は、巻取目標速度の変化カーブを示す。巻取目標データ32は、搬送目標速度又は巻取基本速度に対して、オフセットデータ35が示す速度差が加算された目標速度の変化カーブを示す。したがって、巻取目標速度は、搬送目標速度及び巻取基本速度に対して常に大きい。巻取目標データ32は、巻取目標速度が大きくなる加速部分と、巻取目標速度が一定になる定速部分と、巻取目標速度が小さくなる減速部分とを含む。加速部分においては、巻取目標速度は、0+速度差から最大値まで線形的に変化する。定速部分においては、巻取目標速度は、最大値のまま変化しない。減速部分においては、巻取目標速度は、最大値から0+速度差まで線形的に変化する。すなわち、一例では、巻取目標速度は、オフセットデータ35が示す速度差を0に加算した最小値から始まり、この最小値で終了するように変化する。
【0045】
<搬送動作>
次に、制御部26が実行する搬送動作について説明する。制御部26は、搬送ローラー18及び巻取軸22を制御することによって、搬送動作を実行する。一例では、制御部26は、搬送動作を実行する場合に、受け付けた設定テンションに基づいて巻取目標データ32を生成する。制御部26は、搬送動作において、搬送目標データ31が示す搬送目標速度で媒体99を搬送するように搬送ローラー18を回転させ、巻取目標データ32が示す巻取目標速度で媒体99を巻き取るように巻取軸22を回転させる。
【0046】
図4に示すように、搬送動作の開始に伴い、搬送ローラー18及び巻取軸22が回転し始める。このとき、搬送目標速度及び巻取目標速度が大きくなることに伴い、搬送速度及び巻取速度が大きくなる。巻取軸22は巻取速度、すなわち回転速度によって制御されるため、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22の回転が遅れにくい。したがって、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22が追従しやすい。これにより、巻取軸22は、媒体99にテンションを加えながら加速できる。
【0047】
搬送速度が定速になると、巻取速度が瞬間的に搬送速度を上回る。これにより、媒体99が突っ張る。媒体99が突っ張ると、巻取軸22が媒体99に引っ張られることによって巻取軸22に負荷がかかる。巻取軸22に負荷がかかると巻取速度が瞬間的に低下するが、巻取目標速度と巻取速度との偏差が大きくなるため、P制御によって巻取速度がすぐさま復帰する。したがって、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22が追従しやすい。巻取速度がPD制御される場合には、P制御される場合と比べて、外乱による巻取速度の変化が低減される。よって、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22がより追従しやすくなる。
【0048】
媒体99が所定量搬送されると、搬送ローラー18及び巻取軸22が停止し始める。このとき、搬送目標速度及び巻取目標速度が小さくなることに伴い、搬送速度及び巻取速度が小さくなる。このとき、巻取軸22は、媒体99にテンションを加えながら減速する。搬送ローラー18及び巻取軸22が停止すると、搬送動作が終了する。このように、印刷装置11の制御方法は、搬送目標速度で媒体99を搬送するように搬送ローラー18を回転させることと、巻取目標速度で媒体99を巻き取るように巻取目標速度と巻取速度との偏差に基づいて巻取軸22をP制御することと、を含む。
【0049】
<作用及び効果>
次に、上記実施例の作用及び効果について説明する。
(1)制御部26は、搬送ローラー18及び巻取軸22をそれぞれの目標速度で回転させる。制御部26は、巻取目標速度で巻取軸22が媒体99を巻き取るように、巻取目標速度と巻取速度との偏差に基づいて、巻取軸22をP制御する。
【0050】
巻取目標速度が搬送目標速度よりも大きいため、媒体99は、テンションを加えられながら搬送される。搬送目標速度よりも大きい巻取目標速度で媒体99を巻き取るように巻取軸22が回転するため、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22の回転が遅れにくい。巻取軸22がP制御されることによって、巻取目標速度に対する巻取速度の変動が小さくなる。したがって、上記構成によれば、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22が追従しやすくなる。
【0051】
(2)制御部26は、受け付けた設定テンションを設定データ34に基づいて、搬送速度及び巻取速度の速度差に換算することによってオフセットデータ35を生成する。制御部26は、搬送目標データ31にオフセットデータ35を加えることによって巻取目標データ32を生成する。上記構成によれば、制御部26は、設定テンションに応じた巻取目標速度で巻取軸22を回転させることができる。
【0052】
(3)制御部26は、受け付けた設定テンションを設定データ34に基づいて、搬送目標及び巻取速度の速度差に換算することによってオフセットデータ35を生成する。制御部26は、巻取基本データ33にオフセットデータ35加えることによって巻取目標データ32を生成する。上記構成によれば、制御部26は、設定テンションに応じた巻取目標速度で巻取軸22を回転させることができる。
【0053】
(4)制御部26は、センサー25が検出するロール体R1の外径と、エンコーダー24が検出する巻取軸22の回転速度とに基づいて、巻取速度を取得する。
巻取軸22が媒体99を巻き重ねるにしたがって、ロール体R1の外径が大きくなる。巻取軸22の回転速度が同じである場合、ロール体R1の外径が大きくなるにしたがって、巻取軸22による巻取速度が大きくなる。上記構成によれば、ロール体R1の外径によらず、巻取軸22による巻取速度が一定に維持される。これにより、媒体99に加わるテンションが安定する。
【0054】
(5)制御部26は、巻取目標速度で巻取軸22が媒体99を巻き取るように、巻取目標速度と巻取速度との偏差に基づいて、巻取軸22をPD制御する。
上記構成によれば、巻取軸22をP制御に加えてD制御することによって、搬送ローラー18の回転に対して巻取軸22がより追従しやすくなる。
【0055】
<変更例>
上記実施例は、以下のように変更して実施できる。上記実施例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0056】
・制御部26は、巻取軸22の回転量をもとに、ロール体R1の外径を推定してもよい。制御部26は、巻取軸22の回転量から媒体99の巻取量を推定できる。制御部26は、媒体99の巻取量からロール体R1の外径を推定できる。これにより、印刷装置11がセンサー25を備えずとも、制御部26は、巻取軸22の回転速度から巻取速度を取得できる。
【0057】
・印刷部13が吐出する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などでもよい。例えば、印刷部13が液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材又は画素材料などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液状体を吐出してもよい。
【0058】
<技術的思想>
以下に、上述した実施例及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
【0059】
(A)印刷装置は、媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、前記印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、前記巻取軸の回転速度を検出するエンコーダーと、前記搬送ローラーによる搬送速度の目標速度である搬送目標速度を示す搬送目標データ、及び、前記巻取軸による巻取速度の目標速度である巻取目標速度を示す巻取目標データ、を記憶する記憶部と、前記搬送ローラー及び前記巻取軸をそれぞれの目標速度で回転させる制御部と、を備え、前記巻取目標速度は、前記搬送目標速度よりも大きく、前記制御部は、前記巻取目標速度で前記巻取軸が媒体を巻き取るように、前記巻取目標速度と前記巻取速度との偏差に基づいて、前記巻取軸をP制御する。
【0060】
巻取目標速度が搬送目標速度よりも大きいため、媒体は、テンションを加えられながら搬送される。搬送目標速度よりも大きい巻取目標速度で媒体を巻き取るように巻取軸が回転するため、搬送ローラーの回転に対して巻取軸の回転が遅れにくい。巻取軸がP制御されることによって、巻取目標速度に対する巻取速度の変動が小さくなる。したがって、上記構成によれば、搬送ローラーの回転に対して巻取軸が追従しやすくなる。
【0061】
(B)上記印刷装置において、前記記憶部は、前記搬送速度及び前記巻取速度の速度差と媒体に加える設定テンションとの対応関係を示す設定データを記憶し、前記制御部は、前記設定テンションを受け付け、前記設定データに基づいて前記設定テンションを前記速度差に換算することによってオフセットデータを生成し、前記搬送目標データに前記オフセットデータを加えることによって前記巻取目標データを生成してもよい。上記構成によれば、制御部は、設定テンションに応じた巻取目標速度で巻取軸を回転させることができる。
【0062】
(C)上記印刷装置において、前記記憶部は、前記搬送速度及び前記巻取速度の速度差と媒体に加える設定テンションとの対応関係を示す設定データと、前記巻取軸が前記搬送ローラーと同速度で回転するための目標速度である巻取基本速度を示す巻取基本データ、を記憶し、前記巻取基本速度は、前記搬送目標速度と一致し、前記制御部は、前記設定テンションを受け付け、前記設定データに基づいて前記設定テンションを前記速度差に換算することによってオフセットデータを生成し、前記巻取基本データに前記オフセットデータを加えることによって前記巻取目標データを生成してもよい。上記構成によれば、制御部は、設定テンションに応じた巻取目標速度で巻取軸を回転させることができる。
【0063】
(D)上記印刷装置は、前記巻取軸が媒体を巻き取ることによって形成されるロール体の外径を検出するセンサーを備え、前記制御部は、前記センサーが検出する前記ロール体の外径と、前記エンコーダーが検出する前記巻取軸の回転速度とに基づいて、前記巻取速度を取得してもよい。
【0064】
巻取軸が媒体を巻き重ねるにしたがって、ロール体の外径が大きくなる。巻取軸の回転速度が同じである場合、ロール体の外径が大きくなるにしたがって、巻取軸による巻取速度が大きくなる。上記構成によれば、ロール体の外径によらず、巻取軸による巻取速度が一定に維持される。これにより、媒体に加わるテンションが安定する。
【0065】
(E)上記印刷装置において、前記制御部は、前記巻取目標速度で前記巻取軸が媒体を巻き取るように、前記巻取軸をPD制御してもよい。
上記構成によれば、巻取軸をP制御に加えてD制御することによって、搬送ローラーの回転に対する巻取軸の追従性が向上する。
【0066】
(F)印刷装置の制御方法は、媒体を断続的に搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーに搬送される媒体に印刷する印刷部と、前記印刷部によって印刷された媒体を巻き取る巻取軸と、を備える印刷装置の制御方法であって、搬送速度の目標速度である搬送目標速度で媒体を搬送するように前記搬送ローラーを回転させることと、巻取速度の目標速度である巻取目標速度であって前記搬送目標速度よりも大きい前記巻取目標速度で媒体を巻き取るように、前記巻取目標速度と前記巻取速度との偏差に基づいて前記巻取軸をP制御することと、を含む。上記方法によれば、上述した印刷装置と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0067】
11…印刷装置、12…筐体、13…印刷部、14…支持部、15…上流支持部、16…下流支持部、17…搬送部、18…搬送ローラー、19…対向ローラー、20…搬送モーター、21…搬送エンコーダー、22…巻取軸、23…モーター、24…エンコーダー、25…センサー、26…制御部、27…記憶部、31…搬送目標データ、32…巻取目標データ、33…巻取基本データ、34…設定データ、35…オフセットデータ、99…媒体、R1…ロール体。
図1
図2
図3
図4